TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 88話で明かされるエイトの正体とは……!?


ヒロイン論争、勃発

 秘技、【今さっき知った事実を訳知り顔で打ち明けるの術】──。

 

 

 ……いいだろ、オリ主だぜ?

 そうとも、ダァトから詳しい事情を聞き、さらに原作アニメ「フェアリーセイバーズ∞」をリアルタイム(物理)で視聴してみせた今の僕は、完璧なる原作知識を持ったチートオリ主である。

 もちろんネタバレとなる先の展開は視ないでおいたから、原作知識を使った未来予知はできないけどね。

 

 しかし、メタ視点を持つオリ主しか持ち得ない圧倒的知識量を振り翳してマウントを取る感覚……やっぱ気持ちええわ! この気分の高揚は「待たせたなみんな!」って感じである。

 

 思えばフェアリーワールドに来てからこれまで、「∞」独自の展開ばかりだったせいか人間世界で猛威を振るった僕のフェアリーセイバーズ知識はあまり役に立っていなかったからね。ダァトのところで真の原作アニメを視ることができたのは、僕がこの物語をリードする面で非常にありがたい展開だった。

 

 ふふふ、そういうわけで今の僕は色々理解してしまった悟りのエイトちゃんである。

 それはつまり、元々チートオリ主だった僕がさらに完璧になってしまったということだ。やれやれ、これだからオリ主は……フハハ敗北を知りたい。

 

 ……ごめん、やっぱり知りたくないです。

 SSにおけるオリ主は無敗伝説を築くよりも程々に負けた方が良いという意見ももちろん理解しているが、僕は無敵のミステリアスなヒーローキャラで行きたいからね。負けるミステリアスキャラってなんか嫌じゃん? やるとしてもそういうのは最後の最後で良いと思う。

 そんな僕が目指すところは常勝無敗のチートオリ主である。だからあの世界のアニメスタッフさん! 僕をアニメに出すのはいいけど、囚われのヒロイン扱いなんてするなよ!? そんな弱々しい扱いは絶対するなよっ!

 

 はい。フェアリーセイバーズのヒロインは灯ちゃんであり、フェアリーセイバーズ∞のヒロインはメアちゃんである。新作リブートアニメなんてそういうのでいいんだよ。

 

 でもなぁ……向こうの掲示板とかで不毛なヒロイン論争とか起こっていたらやだなぁ……現実ではみんな仲良しなのだから、どうかファン同士でも争わないでほしいものだ。

 

 

 ──さあ、それはさておき原作介入である。

 

 

 休憩を切り上げた僕は、佳境に入ってきたアニメの視聴を止めるなり今が仕掛け時と判断し、原作主人公である暁月炎のもとへ向かったわけだ。不思議なことに、久々に顔を合わせた気分である。

 ダァトとの対面で色々な疑問が解決した今の僕は最高のコンディションである。そんな僕はダァト由来の天使パワーを使うことで、こうしてサフィラの領域で彼と対峙し、ついでにカロン様とも対面することができた。おっすおっす。

 

 まあ、ここはサフィラを通した精神世界のような場所であって、現実の世界ではないんだけどね。

 アニメで確認できた情報だが、今頃現実世界の僕の身体はどこかのベッドの上に寝かせられており、炎も同じくどことも知れぬ場所で眠っている筈だ。

 

 そんな今の僕たちが動かしている身体は、実を言うとこれは、僕たちそれぞれの意思が具現化した思念体みたいな存在だったりする。

 肉体と同じく五感はしっかりあるので知らなければ気づくことができないほど精巧にできているが、その本質は精神であるが故に現実よりも心の状態がダイレクトに反映された姿になっているようだ。

 

 

 ──たとえば今の僕の姿が、ダァトの姿になっているのとかもその例である。

 

 

 ……うん。これは想定外だったけどね。

 いや、理屈としてはわかるよ? 心の状態、すなわち気の持ち方がダイレクトに反映されるこのサフィラの領域では、精神の影響がもろに出るわけだ。

 そんな中で「僕はダァトで、ダァトは僕」という事実を知った今、この世界では僕の思念体がダァトの姿をするようになったのもまあわからなくはない。

 

 名付けてこの姿、エイトちゃんダァトフォームである。うん、これはこれで超カッコいいね。カッコいいんだけど……

 

 身体のパーツに関しては大した変化は無い。ダァトと僕は顔も体型も同じだし、はっきり違うと言えるのはこの羽が異能で作ったなんちゃってウイングではなく、自前の十枚羽であるということぐらいだ。

 

 だけどさー……着ている服まで変えることはないでしょうよー! 特に脚とか肩とか背中とか、やたらと露出が多くて落ち着かない。落ち着かないのである。

 

 そんな自分自身のイレギュラーな変身に内心狼狽えていた僕だが、炎の手前クールな仮面は剥がさない。そう言う意味での精神状態は、この世界でもダイレクトに反映されないようで何よりだった。精神世界だろうと、隠し事が無くなるわけではないのよね。

 

 そんな世界で炎と再会した僕が、ダァトから聞いたフェアリーワールドの昔話をそっくりそのまま話し終えた頃には、僕も今の自分の姿に慣れていた。

 ……ゴメン嘘。肩周りや胸元はともかく、腿のところの肌寒さがまだちょっと慣れないや。カッコいいことにはカッコいいのだが、やっぱこの衣装えっちだよダァト……僕の中にいる彼女にそんな感想を溢した後、僕はカロン様をチラリと一瞥して炎と向かい合った。

 

 

 ──さて、僕がここに来た目的は一つ。今一度オリ主として、原作主人公である彼をいい感じに導く為だ。

 

 

 それはアニメ「フェアリーセイバーズ∞」を視て、ある重大な問題に気づいたことが発端だった。物語の中で僕自身は概ね満足の行くムーブができたと思っているが、それは僕ではなく彼ら主人公陣営の問題である。

 そう……一アニメとして彼らの状況を見た時、「なんかよくわからないけど事態が大きく動いている」という漠然とした物語になりかけているように感じたのだ。

 

 何と言うか……ケテルに深い因縁のあるメアちゃん以外──特に主人公である暁月炎が置いてきぼりになってはいないかと。

 

 もちろん作中でも彼はしっかり活躍しており、バトルシーンも豊富だったのだが、立ち位置としてはメアちゃんの保護者的なポジションに落ち着いており、僕としてはもう少しパンチが欲しいと思ったのである。

 具体的に言えば、ケテル陣営の動きやフェアリーワールドの成り立ちに関して、主人公陣営の情報があまりにも不足しているのではないかという懸念だった。それに関してはまあ、僕だってついさっきまで知らなかったのだから彼らが情報不足なのも当然と言えば当然な話である。

 

 ──因みに並行して進行している地球サイドのお話では、最後のサフィラス十大天使であるイェソドさんが明宏や灯ちゃんたちに色々開示してくれたので、視聴者的にはそこで概ねの事情がわかる造りになっていた。その辺り、意味深に語るだけで深いところまでは何も教えてくれないホドさんにも見習ってほしかったものである。お前が言うな? ……はい、ごめんね。

 

 いやね、僕自身もちょっとこう、意味深なミステリアスムーブをやりすぎたかなーと反省しているのだ。これでも。

 

 もちろん後悔はしていないが、客観的に見ると無駄に謎を引っ張り続ける長期アニメの引き延ばしムーブみたいになっていたからね。それはそれでミステリアスでカッコ良かったけど、やり過ぎると「どうせ何も明かさないんだろ?」と視聴者さんたちも冷めてしまうからさじ加減が難しいね。

 

 ……なので、そういう意味でもここらで炎たちにも重要な話を打ち明けるのは良い頃合いだと判断したわけである。

 

 もちろんこの時、僕自身も今しがた知ったばかりであるということに気づかれてはならない。エイトちゃんは物知りなので、最初から知っていたのである。そういうことになった。

 

 しかし、こうして絵本の読み聞かせみたいな語りで世界の根幹に関わる重大情報をぶちまけるのは中々気持ちいいものだ。何と言うか、世界を手のひらで転がしているみたいな気分になって楽しいよね……中々乙なものである。

 

 

 ──そんなこんなで僕が語り終えると、炎はカロン様の話と違ってちゃんと理解してくれたようだ。

 彼は難しい顔で沈黙を破り、第一に問い掛けてくる。

 

 

「……俺たちの異能は元々、あんたの力だったのか?」

 

 

 数ある語りの中で、最も反応が大きかったのがその事実である。

 ダァトとカロン様の昔話については黙って聞いていた彼だが、その後のアフターエピソードとしてついでに語ったその話──今から100年ぐらい前、「消えかけのダァトから託された力をアイン・ソフが人間世界に振りまいた」という情報には特に目を見開いていた。

 言われて僕はハッとした。

 

 ……ああ、これは僕の落ち度である。ごめんね……

 

 

「そういうことに……なるね」

 

 

 うーん……僕的にはサフィラス十大天使の誕生に関わるかつての大戦の話の方が興味深かったのだが、彼の立場から考えると確かに異能の起源の方がよほど大事な話である。

 

 そりゃあね……特に彼の場合は「異能社会での無能力者」という立場で苦悩する灯ちゃんのことをずっと見ていたのだから、その事実には思うところがあって当然だろう。

 その上、彼の父親だってPSYエンスという「異能が生み出した闇の勢力」によって命を奪われた被害者である。

 彼自身もセイバーズとして数々の異能犯罪と対面してきたのだから、異能社会に対する危機的感情は一際強い筈だ。

 

 これは……この話は、軽々しく口にしていい話ではなかったね。

 己の失態に気づき、僕は深々と頭を下げた。

 

 

「そうだね……ボクは取り返しのつかないことをしてしまった。キミたちの世界に力を与えたことで、キミにもたくさん嫌な思いをさせたね……本当に、ごめん……」

『…………』

 

 

 ……これ、今まで深く考えていなかったけど、もしかしたら僕たちとんでもなく罪深い存在なんじゃない?

 

 いや、異能が生まれなかったら人間の世界は平和だったのかと言われると、それは別の話ではあるけどさ。

 うわー……今になって怖くなってきたよ。大丈夫かなこれ……炎君、僕のアンチになる? ボクのことを全ての元凶として断罪する……? 嫌だなぁ……

 

 

「顔を上げてくれ、エイト。あんたが何をそんなに申し訳なく思うのか、俺にはわからないんだが……」

 

 

 えっ。

 

 

「あんたは俺たち人間を含めた大勢の命を守る為に、ずっと戦ってきたんだろう? そんなあんたが、なんで俺たちに謝る必要がある」

 

 

 …………

 

 

「それに……フェアリーワールドを見て、アビスのことを知った今、俺には人間の世界に異能を与えたことが間違っていたとは思えない。神様だって、必要だと思ったからそうしたんだろう?」

 

 

 ……確かにそれはそうだけど、異能に苦しめられてきた人をあれだけ見てきたんだよキミ? そんなキミから見たら、ボクたちは言わば、全ての異能犯罪の元凶だ。

 キミの境遇を思えば、キツい言葉の一つや二つ掛けてくるのが当然だと思っていたんだけど……

 

 

「いや、その理屈はおかしいだろう。異能は心の在り方によって力を変える……力をどう扱うかは、俺たち一人一人の在り方次第だ。包丁を作った人間に、刃傷事件の責任が行くわけでもないだろう」

 

 

 むー……そう言われてしまうと僕としては反論できない。僕も正直、立場が違ったらそう思っていただろうし。

 ね? そういうわけだよ、ダァト。だから君も、あまり気に病むな。

 

 しかし凄いな、炎は。こんな事実を知ったらもっと感情的になってもいいのに、男の子の成長は早いものである。お姉さん感激……あっぶね! 思考がダァトに寄りすぎた。

 

 いかんね……ダァトとしての思考に寄っちゃうと、どうにも自罰的で母性的というか、天使らしくなってしまう。これは良くない。アイデンティティーの危機である!

 僕はチートオリ主だ。この物語の中心人物として世界を振り回すエイトちゃんは、そこまで善人でも慈悲深くもない。どちらかと言うと常にわがまま放題でダークな存在である。

 よし、復唱OK。

 

 

「そうか……ふふ。ボクは自分に甘い女だからキミの言葉を受け入れてしまうけど……それでいいんだね? 本当にいいんだね、エン?」

「少なくとも、俺はあんたに思うところはない。……いや、一つあるな」

「え……?」

 

 

 な、なんだよ……不穏なこと言うなよー。

 僕だってすっきり気持ち良くオリ主したいのだから、罪とか罰とかそんなに背負わせないでほしい。ダァトは僕だから彼女の過去を背負うのも嫌ではないけど、それはそれとして僕自身は綺麗な身でいたいのである。

 あっ、でもこの「†罪深き原初の天使†」という設定は使えるぞ! そんなことを考えながら立ち直っていく僕に対して、炎は口元を緩めて言った。

 

 

「ありがとう。今日まで俺たちは、貴方のおかげで戦うことができた。大切な者を守る為の力をくれて……ありがとう」

 

 

 ……うん。

 

 

 そっか……キミはそういう奴だもんね。

 この世界が優しいことばかり、綺麗なことばかりではないことを知っている。知っている上で、それでも他の誰かに優しくできる人間だ。いい奴だよ。

 そういうところがきっと、多くの人々を惹きつけてきたのだろう。もちろん、前世の僕も前々世のボクも──今の僕もね。

 

 

「そのお礼……知識の大天使ダァトとして頂戴しておくよ。……ありがとね、エンくん(・・)

「……くん?」

「ふふっ、なんでもない」

 

 

 僕の中にいる彼女の心がスッと軽くなったのがわかり、僕も彼にダァトとして感謝の言葉を返しておく。その際目聡い彼は僕の変化に気づいたようだが、いーっと口チャックの仕草で詮索を拒否しておいた。話さないよーだ。

 

 うん……実を言うと色々知ってしまった今の僕は、ダァトと溶け合っている感じなんだよね。二重人格というわけではないが、心が二つあるような状態である。今は慣れていないので片方に寄りがちだが、すぐに安定すると思う。

 そういう事情があるので変な意味ではないが、彼が彼女のことを肯定してくれると僕も嬉しいのである。

 ふふ……あっ、やべえ溢れた笑いが止まらない。別に隠す必要は無いのだが、ちょっとミステリアスキャラの仮面が剥がれそうなぐらい今の僕は破顔していた。多分これもダァトのせいだぜ。炎もカロン様もそんなに見るなよー。

 

 

 

 ──良かったね、ダァト。

 ──うん、良かった……

 

 

 

 

 

 気を取り直して、ナーバスな会話は一区切りにしよう。

 もちろん、僕が彼にダァトから聞いた重大情報を打ち明けたのはこうして懺悔するのが目的なわけではない。

 状況整理としてしばらくの間、僕は彼からの質問をダァトの知識で華麗に捌きながら、彼に天使的豆知識を与えていくハイパー質疑応答タイムを行っていた。

 僕の前世のこととかは余計な混乱を生むし色々と台無しになるので一切触れることはなかったが、実際明かさなくても何ら不便の無い情報だったので彼からも特に疑問を持たれることもなかった。

 

 僕が意図的にそう仕向けたところもあるが、どうやら彼は話を聞いて、僕のことを「深淵の世界で死にかけたダァト本人が、人間の世界でT.P.エイト・オリーシュアを名乗って活動していた」──のだと思っているようだ。すなわち、ダァト本人=エイトという認識である。

 まあそっちの方がずっとシンプルな設定でわかりやすいし、あながち嘘でもないのでこの際そういうことにしておこう。

 横で何やらカロン様が口を挟もうとしていたが、ややこしくなるので貴方はちょっと黙っていてください。前世の僕のことまで彼に教えなくていいからね!

 

『わかった』

 

 素直なカロン様カワイイヤッター。

 人間との会話は人間だった前世を持つ僕の方がずっと慣れているからね。適材適所という奴なので、カロン様の説明が彼に上手く通じなかったのも決して彼女がコミュ障だからではないのだ。多分。

 

『……エイトは凄いな』

 

 ふふん、それほどでもあるよ!

 

 

 

「……そうか。じゃあ異能を盗んでいたのも、失った元の力を取り戻す為だったんだな」

「そういうことになるね。そして今、このサフィラの領域にダァトの意識は蘇った」

 

 

 さて、一通り主人公への情報開示を終えたところで、ここからが一番の最大ムーブだ。

 それはいよいよ佳境に差し掛かった僕たち(・・・)の物語において、一番の山場になるのではないかと予想するハイパーオリ主ポイントである。

 

 

 すなわち──

 

 

 

「アカツキ・エン……ボクはキミに試練を与える。ボクと戦え。ここを出て、仲間たちを助けに行きたいのならね」

「──っ!」

 

 

 挑発的な笑みを浮かべた後でキリッとした決め顔で言い放ち、僕は十枚の羽をマントのようにバサリと広げて手招きする。

 

 

「キミが未来を導く存在になり得るか否か……ボクの全てを懸けて、見極めさせてもらう」

「……あんた……」

 

 

 ……そう、それはチートオリ主がお送りする一世一代の大舞台──オリ主vs原作主人公の申し込みであった。

 

 

 決闘、いいよね……エターフラグ序盤の壁と言ってはいけない。

 セッシー、ギーシュ……僕はやるよ、やってみせるよ。僕はこの定番の展開で、原作主人公を「真の覚醒」へと導いてみせるっ!!

 

 

 




 ヒロイン論争、決着。
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