TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
二次創作SSにおいて、オリ主vs原作主人公の物語を描いた物語は珍しくない。
それこそ作品のテーマとして原作主人公陣営へのアンチテーゼが盛り込まれたSSならば、オリ主の最終目標が「原作主人公を倒すことor超えること」になる作品も多いだろう。
実際、この展開は題材的にとても美味しいのである。
序盤にせよ終盤にせよ、未熟な原作主人公に対してSEKKYOUをすることで他キャラとは一線を画すオリ主のSUGEEEを描くことができるし、巡り巡ってオリ主のSEKKYOUを受けて原作より成長し、パワーアップした原作主人公の姿を自然な流れで描くことができるからだ。オリ主の介入で物語だけではなく原作主人公にもちょっとした変化が起こったりするのは、オリ主物SSの醍醐味だよね……
その描写を上手く描くことができるのなら、オリ主vs原作主人公という展開は物語をいい感じに動かすことができる一大イベントなのだ。
もちろん、その分扱いが非常に難しい題材である。
何せオリ主の相手は原作主人公──原作を象徴する人物である以上、そのSSを読みに来た読者の人気も高い。そうなると必然的に、他の人物よりも解釈違いを起こしやすい立ち位置でもあるわけだ。
その為原作主人公の扱いの是非で読者さんたちはそのSSの方向性を色々と察してしまうものであり、納得いかない扱いであれば最悪、感想欄は大炎上することになる。
特にお互いのパワーバランス調整が難しいクロスオーバー系SSなどでは、割とよく見る現象だった。
そういうわけでオリ主が原作主人公と戦う展開は、色々と慎重になるものなのである。
──という事情もあって、今しがた決闘を申し込んだ僕は表面上こそ平静を装っているが、内心では結構ビクついていたりする。
上手くいけばそれはもう最高にオリ主することができるハイパーオリ主チャンスなんだけど、こういったハイリスクハイリターンの博打は元来僕の主義ではないのだ。
もちろん、オリ主はいつでも命懸け。自分から言い出した以上はここに来て日和ることはしないし、失敗した時のことは今の時点では考えていない。だって、絶対に上手くいくし。何故なら僕はチートオリ主だから。
何なら前世の頃から「ぼくのかんがえたさいきょうのオリ主と原作主人公を戦わせるシチュエーション」を考え続けていた僕である。昨日今日のオリ主とは年季が違うんですよ!
『エイト……汝も、悩んでいたのだな……』
? お、おう……そんなシリアスな顔で僕を見るなよカロン様。
大丈夫大丈夫、大体事情はわかったぜ。さっきダァトと、たっぷりアニメで予習してきたからね。
要は、炎の殻をいい感じに破ってあげればいいんだろう? 原作主人公にちょっとしたスパイスを加えるのは、オリ主の得意分野である。さあ、そろそろ本番を始めようぜ。
『……私の試練では駄目か?』
ダメです。
アニメでもチラッと見てきたけど、カロン様の与える試練はちょっと不器用が過ぎるというか、スパルタ過ぎるというか……絶対に勝てない敵──多分あれは、アビスが大勝利した世界線とかその辺りなんだろうけど……──あんな場所に説明も無くいきなり放り込むとか、いくらなんでも炎君が可哀想すぎると思う。
危機的状況に追い詰めて覚醒を待つという発想自体は実に少年漫画的で悪くないのだが、あの状況で彼に本領を発揮しろと言うのも酷な話だ。
SSで例えるならそう、描きたいシチュエーションが先行しすぎて状況説明から何まで圧倒的に足りなくなってしまったような展開である。わしにも憶えがある。
だからね、カロン様。こういうのはいかに上手く相手をやる気にさせてあげるか、その配慮が大事なのだよ。相手の視点に立った思いやりの気持ちである。
『思いやり、か……』
おうよ。たとえば、「ボクと戦わなければここから出られない」と言ってやったりね。
「……!」
そう言った僕の顔を、暁月炎は戸惑いの目で見つめている。
ずっとここから出られないのは現実問題、彼だって困る筈だ。彼としては今すぐにでもここから出て、メアちゃんたちのところへ行きたい筈だろうからね。
段階を飛ばして無理に事情の深いところまで打ち明ける必要はない。まずは手前の問題から、わかりやすい障害を示してやらなくちゃいけないよね。
その障害として立ち塞がる僕。
どうよ? これは戦うしかないだろう原作主人公よ!
「……どうしても、戦わなければならないのか?」
…………
……あれ? 思ったよりノリ気になっていないね。まあ、炎は優しいからそういう反応にもなるか。
そこまで長い時間ではなかったけど、僕たち二人もこれまで一緒に旅をしてきた仲だ。今では最初の頃のような警戒心も薄まり、少しずつ仲間意識も芽生え始めていたのかもしれない。
見た目は無愛想に見える彼だけど、あれでかなり情に厚い男だからね。急に「戦え」と言われても、すぐに応じる人間でもないか。
……実は、そんな彼の態度にちょっとだけ、喜んでいる自分もいる。
彼が戦うのに戸惑うぐらいの関係を、僕も案外築けていたんだなって。いやあ、人望が高すぎて申し訳ない。オリ主すぎて申し訳ない。
しかし、これはオリ主の決闘イベントであり、何より君自身の成長にとって必要なことなのだ。わかってくれるね。
と言うわけで僕も覚悟はガンギマリであり、喜びに綻びそうになった頬を慌てて引き締めながら、そっと人差し指を突き出した。
そして放つ、デスビーム!
人差し指から放ったそれっぽい感じの闇の弾丸は、彼の耳元を横切って彼方へと消えていく。いわゆる威嚇射撃という奴だ。スレスレの位置を外してみせたのがポイントである。
……良かった、うっかり命中しなくて。
「──っ」
「あのね……今キミの前にいるのは人々の異能を奪う邪悪な異能怪盗にして、キミたちの世界に混乱を引き起こした罪深き大天使なんだよ? そんなワルモノと戦えなくて、何の為のセイバーズだ。甘えるのもいい加減にしなさい」
「……あんた……」
こんな感じでいいかな……? うん、いいよね。いえーい僕カッコいい。悪役ムーブも板についているぜ。さす僕!
だけどSEKKYOUの塩梅って、思っていた以上に難しいね。ここは強キャラとして凄まなければいけない場面なんだけど、あまり強い言葉を使すぎると逆に弱そうに見えてしまうから難しい。
こう、上手くカッコ良く発破を掛けるには、慎重にセリフを選ぶ必要がある。
しかし彼のようなお人好しには、こうして武力をちらつかせつつ適度に強い言葉を浴びせないと本気を出してくれそうにないからね。今回ばかりは仕方が無かったという奴だ。
──と言うわけで、今の僕は鬼のエイトちゃんである。カロン様ほど厳しくはないけど、ビシビシいくよ。
あちらも僕が本気であることを察してくれたようで、炎はその身体にスッと蒼炎を纏った。
フェアリーバーストの発動である。
静から動へ、水のように自然な流れで発動してみせた辺り、一見彼は完璧にその力を制御しているように見える。最初の頃と比べると、随分と手慣れてきたのがわかるね。
──が、しかし、それがいけないのだ! ……と、ダァトが言っていた。
完全なる真のフェアリーバースト──彼がそこに至るには、今のままでは駄目だと僕たちは知っている。
……多分、そうなったのは僕のせいなんだろう。
だから、責任を取るよ。責任を取って、彼を完璧に仕上げてみせる。
「救世主なら、ボクたちに示してくれ。本当の可能性を!」
いい感じに強キャラ感を保つ為に、堂々と胸を張りながら十枚の羽をバサッと広げる。
やたら露出度の高い服装はともかく、自前の羽というのはいいものだね……僕のように華奢な身体でも、こうしてクジャクのように羽を広げることでいかにも強そうな威圧感を放つことができる。
主人公を煽って全力を引き出す。
両方やらなくてはならないのがオリ主たる者の腕の見せどころである。失敗したら大炎上案件だが、僕はそれでも突き進もう。
何故なら僕たちの存在こそが、完璧なチートオリ主である証なのだから……そうだろう? ダァト。
──エイトは本気だ。
現実の世界に帰りたければボクと戦えと、そう言った彼女の言葉が冗談で言っているのでないことは目を見ればわかった。その瞳に込められた覚悟の強さも。
かくして、暁月炎とT.P.エイト・オリーシュアによる戦いが始まった。
蒼炎で構築した羽を広げながら、炎は先ほどまで立っていた花畑の遙か上空を飛び回り、十枚羽の少女と何度目になるかもわからない交錯を繰り返し、白熱した空中戦を繰り広げている。
だが、彼の振り抜いた焔の剣は未だ、一度として彼女の身に届かずにいた。
炎の焔の剣に対抗するように、エイトはその両手に闇の力で生成した二本の剣を携えて応戦している。
そんな彼女が初めて披露した二刀流の戦闘スタイルを前に、炎の繰り出す一閃はことごとくいなされていたのだ。既存のどの型にも嵌まっていないその剣捌きに、炎は何か雲を掴むような感覚を抱いていた。
「どうした? 剣の腕はキミの方がずっと上の筈だ。なら、もっと攻め込める筈だ!」
「くっ……!」
師たる光井明宏から様々な武術の指南を受けてきたとは言え、炎が修めた剣技はそのほとんどが実戦で鍛え上げた我流のものである。
そんな彼の焔の剣に対して、彼女は随分と高い評価をしてくれているらしい。
……確かに、剣と剣で打ち合った感触から察するに、純粋な剣技の技量で負けている気はしない。
しかし、彼女に接近戦を仕掛ければ仕掛けるほど、この背筋に得体の知れない悪寒が走るのである。
彼女の底知れない実力に対して、本能的な部分が警鐘を鳴らしているのだろうか? だとすれば、なんて情けない臆病者だと、炎は自分自身に対して嫌悪感を抱いた。
そしてそんな消極的な姿勢を、今の彼女は見逃さなかった。
つばぜり合っては離れてのヒットアンドウェイの戦法を取る炎に対して、エイトは自身の周囲に無数の闇の球体を生成すると、それをガトリング弾のようにばらまいて乱射してくる。
炎とは対照的に、彼女の攻撃は常に積極的だった。
おびただしい闇の弾丸の嵐を前に、炎は自分の意思ではまともに近づくこともできず、防戦一方を余儀なくされる。
堪らず回避に専念する彼に対して、エイトが冷徹に評する。
「まともに近づくことができなければ、近づけるようになるまで弾幕の隙を窺う……冷静な判断だ。人間の異能使いが相手なら、それが定石なのだろうね。どんな異能使いも、このペースで力を使えばいつかはガス欠するから。だけどお生憎様、ボクたちはキミの思うような
「……っ!?」
エイトは自身が放つ闇の弾幕の嵐に自らその身で飛び込んでいくと、弾幕と一体となって炎のもとへ急迫していく。
まばたきすら許さず詰め寄ってきた彼女が、炎の肩に蹴りを入れてすれ違い様に突き飛ばしていった。
落下していく炎の姿を熱い眼差しで見下ろしながら、漆黒のドレスの裾を靡かせた少女が叫ぶ。
「それでも……キミなら出来る筈だ! 好きな世界を、好きな人を守る為にキミが作り上げた力は、どんな理不尽だって乗り越えられる!」
知ったような口を利くその言葉は、まるで不甲斐ない戦いを見せる炎を鼓舞しているかのようだった。
そんな彼女の姿を見上げながら、炎は──そんな目をさせたくないと、そう思った。
その感情は不思議と炎の中で戦意を昂ぶらせてくれた。或いはこの戦いに負けたくないと思う以上に、彼女のことを失望させたくなかったのかもしれない。
「……前に言ったな。今、それを教えてやる!」
認めさせたいと──いつか自分が、彼女に向かって叩き付けた言葉を思い出す。
フェアリーワールドを訪れた直後であるあの頃の炎は、まさか彼女の正体がここまでの大物とは思っていなかったが、彼女が聖獣側の存在で、人間のことを見極めたがっているのだということは薄々察していた。
そんな彼女に対して、あの時の炎は確かにこう言ったのだ。
「人間の世界には、確かにろくでもない者もいるが……そんな者たちばかりではないということを、わからせてやる」と。
──他ならぬ、自分たち自身の行動で。
それはきっと、今がその時だということなのだろう。
彼女と本気で戦う覚悟を決めた炎は目つきを変えると、全身に纏った蒼炎の光をさらに強く、強く解放していく。
その光景はまるで青空に浮かぶ青い太陽のようであったが、エイトが放つ闇の攻撃は、それ以上の力を以て彼の焔を圧迫していった。
「っ……これが、原初の大天使の力か……!」
炎が繰り出す蒼炎の攻撃に対して、闇は日食の如く真っ向から飲み込んでいく。
確かにこれは、まともな相手ではない。フェアリーバーストの全力を引き出してもなお、人間と大天使では元々のポテンシャルが違いすぎるのである。
それも、彼女は異能の起源たる原初の大天使ダァトだ。炎たち異能使いが持つ力など、言ってみれば所詮は彼女から授かった力のほんの一部に過ぎない。
そう……初めから、勝負が成り立つ存在ではなかったのだ。
あの破滅的な世界で見た、「巨大な闇」と同じように──
「俺は……!」
立て続けに直面した絶対的な力の差を前に、炎は自身の心が軋み始めていることを自覚していた。
彼女ら超常の存在は「試練」と一言で言ってくれるがなるほど、これほど過酷な試練もないだろう。
諦める気は全く無い。しかし炎には、今ここにある絶対的な力の差を乗り越えるだけの方法が思いつかなかった。
しかし、T.P.エイト・オリーシュアは言い放つ。
「違う! キミのフェアリーバーストはまだ、この程度ではない!」
蒼炎の剣を手に飛び掛かっていく炎の斬撃を、こともなげに闇の剣で弾き返しながらエイトが叫ぶ。
それは異能の起源として、先達として……彼の力の使い方の拙さを指摘し、指南しているかのようだった。
──そんな彼女が自らの手で炎を打ちのめしながら、悲しそうな目を浮かべて言い放つ。
「かつて、キミの心には恐れがあった。この力に飲み込まれてはいけない……この強大な力を制御しなければならないという意志で、その力を使っていた」
「……っ」
それは、暁月炎が初めてフェアリーバーストを発動した時の心情だった。
PSYエンスとの戦いの中で、彼は父の仇と対面した。
その時の彼の心は激しい憎しみと怒りに染まり、一度は暴走状態に陥りかけたのだ。
だが彼は、最後の一線は踏み越えなかった。自分がそうなることで、他の誰かが傷つくことを恐れたからだ。
──心が激しい憎悪に支配されそうになった時、脳裏に浮かんだのは光井灯の悲しそうな顔だった。
そうだ……こんな俺を支えてくれた人たちがいたから。
「あの時のキミは、その恐れに打ち勝った。いつ如何なる時も誰かを守りたいと願うその高潔な精神で、バースト状態の力を制御することができたんだ」
「……それの、何が悪い!?」
炎の纏う蒼炎の輝きがほんの少しだけ強くなる。
この力がどうやって生まれたものなのか、今一度思い出したからだ。
スピードもパワーも上昇し、十枚羽のエイトの動きに追いすがり、再び闇の剣とつばぜり合う。
しかし次の瞬間には目の前に飛び込んできた彼女の姿がブレており、後頭部に重い衝撃が走った。
蹴られたのである。つばぜり合ったと思った瞬間、炎が追いつけない速さで背後に回り込んで、彼女はその脚を振り上げていた。
体勢を立て直しながら、急いで振り向いて剣を構え直す。そんな炎の姿を見下ろすエイトは、またしても悲しそうな顔を浮かべていた。
「キミは……背負いすぎなんだ。何でもかんでも一人でやろうとするから、周りが見えていない」
「何を言って……」
「キミはあの時のツバサと一緒だ。自分自身を許していないから、キミ自身の力と一つになれない」
「……っ」
異能は心の在り方によってその力を変える──これまでの経験から炎はそのことをよく理解しているつもりだった。
理解した上で、自分自身の異能と向き合ってきた筈だ。
しかし、彼女から言わせてみればそれは、歪な向き合い方だったのである。
そうだ。俺は……
「キミの中にあるその力を受け入れて。乱暴に、従わせようとしないで……キミ一人で頑張りすぎなくていいんだよ、エン」
本当の意味ではまだ、自分自身の力を受け入れていなかったのだ。
セイバーズという自身の立場があり、なまじ精神力が強靱だったからこそ、彼の中ではもう一歩というところで理性というブレーキが強く働いていた。
そんな彼の心を見透かしたように、エイトが言う。
──力を抑えつけて制御するのではなく、あるがままを受け入れるのだと。
しかし、そんなことをすればかつての長太やメアのように、見境なく力を撒き散らすことになる。
暴走する異能の力──バースト状態が引き起こす凄惨な事件は何度も見てきたものであり、炎は自分がそれに陥ることを恐れていた。
そんな彼に向かってエイトは、優しく説き伏せるように言った。
「キミの中でキミ自身の力と和解するんだ。キミがその力の全てを受け入れて、本当の意味で一つになった時……キミは誰よりも強くなる。ボクやケテルよりもね」
そう断言する澄んだ翠色の眼差しは、暁月炎という人間に対して確かなものを見ているようだった。炎自身よりも、深く理解しているかのように。
それこそ、まるで未来でも見えているかのような口ぶりである。
尤も彼女ならば、未来視ぐらいしていてもおかしくはないなと……その強さ、底知れなさから炎は思った。
──そんな彼の前で、彼女が魅せる。
「見ておけ、エン! これがキミが描くべき、未来への可能性の一つだっ!」
決意の目を浮かべたT.P.エイト・オリーシュアが、十枚の羽を大きく広げて一気に上昇していくと、一瞬にして雲を突き抜けていった彼女の姿がまばゆい太陽の光と重なり合う。
そして次の瞬間、紫色の稲妻を帯びた凄まじい量の闇が、巨大な繭を作っていくかのように彼女の姿を包んで覆っていった。
──そして、弾ける。
「っ……ぐあああああ!?」
闇の繭から放たれたビッグバンのような大爆発の煽りを受けて、炎の身が吹き飛ばされていく。
それでも墜落だけはすまいと食いしばり、体勢を整えた炎は、彼女のもとに視線を戻した。
闇の繭が豪快に弾け飛ぶと、その中から一人の少女が姿を現す。
そこにいたのは闇と──光を併せ持つ、大天使を超えた領域に立つ者の姿だった。
「……エイト、なのか……?」
降臨、という二文字がこれほど似合う存在はいないだろう。
あまりの神々しさに、思わず目を奪われた。
そんな炎の高く頭上にて、
片方の六枚は漆黒で、もう片方の六枚は純白。衣装の他に目立つ特徴の変化と言えば左右で色が分かれている十二枚の羽であったが……そこに加えて今の彼女の頭上には、流麗な円を描く虹色の光輪が浮かんでいた。
「そう……これがボク、T.P.エイト・オリーシュアの全力。「心」と「力」……その二つが重なり合ったボクの、ボクたちのフェアリーバーストだ!」
炎の前で披露したその力は、手本として見せるにはあまりにも遠く──ヒトが踏み入ってはならない領域のように、感じてしまった。
……だが、やるしかない。
彼女をここまでさせたのだ。
この試練にもはや退路は無く……炎は彼女の全力を相手に今、己の限界を超えることを誓った。
次回はとある世界線回です。