TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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原作死亡キャラ救済はオリ主の使命

 アニメ「フェアリーセイバーズ」の異世界編に、参戦するメンバーは五人。

 

 主人公の暁月炎。

 親善大使の光井灯(ケセド)。

 力動長太と風岡翼。

 そして、セイバーズ司令官光井明宏(みついあきひろ)だ。

 そう、親善大使となった娘と共に、司令自ら異世界に乗り込んだのである。そんな彼自身も元はセイバーズの戦士であり、既に全盛期は過ぎているものの今でも戦える力を持っていた。

 ……と言うか、下級聖獣ぐらいなら殴り倒せるぐらい強い。闘技大会に出ても、ハーンフ・リー未満の闘士相手なら普通に勝てそうだ。

 彼の姿は会議に潜入した時初めて見たが、ヤクザの首領の如き風貌は威圧感がパなかったのである。

 そんな彼の異能はシンプルな身体強化であり、その上KARATEを修めているのだから強さに説得力があった。

 

 

 ──しかしこの男、クライマックス付近で死ぬ。異世界編で殉職してしまうのである。

 

 

 それは物語における重要なターニングポイントとなる。

 不謹慎な話ではあるが、物語において「人の死」とは言わばアクセントだ。たとえば双子の弟の死をきっかけに主人公が野球をする決意を固めたり、心優しき人造人間の死で最強の戦士に覚醒したり、逆にトラウマを植え付けられた作中のキャラが闇落ちしたり暴走したりするきっかけになったりもする。

 アニメ「フェアリーセイバーズ」においても、元々がバトル漫画らしく人の死は描写されている。名無しのモブキャラや炎の父親をはじめ、回想で死ぬキャラもそれなりに多かった。

 

 そんな中で、最も派手に散った名有りキャラが光井明宏である。

 その回のサブタイトルの時点で既に「明宏死す! 邪神ケテル覚醒」なのだから、当時の僕が受けたインパクトは大きかった。

 

 そして明宏の死が物語にどのような影響を与えたかと言うと……味方の覚醒フラグではなく、セイバーズにとって悪い方向に働いていた。

 父親を目の前で失ったことで娘の灯ちゃんが暴走し、しかも彼女に宿るケセドの力を肉体ごとラスボスの「ケテル」に取り込まれてしまったのだ。

 

 そして遂に最終形態となったケテルが、炎たちに襲い掛かるではありませんか! 果たして、炎たちの運命はいかに!? 

 

 

 はい。

 因みに最終回のサブタイトルは「フェアリーセイバーズ」である。タイトルを回収したシンプルなサブタイトルであり、流石にネタバレは抑えていた。しかし当時のアニメは最終回だろうと堂々と勝敗を発表したりするから困る。僕は原作の漫画を読んでいなかったので、放送当時は終始ハラハラしたものだ。

 

 

 ──もちろん、結末は無事ハッピーエンドに終わっている。

 

 

 最後は主人公の炎がケテルから灯の身体(もちろん全裸。炎の焔に隠されていたが、とてもお世話になった)を抉り出し、豪快に救出してみせる。最後はラスボスを炎、灯、ケセドの三位一体の一撃で打ち破ったのだった。

 

 その後、地球へ帰還していくセイバーズの戦士たちをまどろみの中で見届けた灯の父明宏は、そこで死んだ奥さんと再会し共に冥界へと旅立っていく。

 

 未来は若者たちに託された──いい感じの特殊エンディングが流れ、物語は終了する。全26話の完結に当時の僕はただただ感動し、涙を流したものだ。今はこんなスレた大人になってしまったが、当時の僕にはそんなかわいげがあったのだ。TSオリ主である今の僕はもっとかわいいけどね! 

 

 

 

 ……そういうわけで、物語の盛り上がり的に彼の死は重要な意味があったわけだ。

 

 しかし、それが主人公たちの目的に必要だったかと言うと、もちろん否である。彼だって満足して死んだわけではないのだから当然だ。

 

 僕はチートオリ主である。故に、この世界で僕がやるべきことは決まっていた。

 

 

 即ち「原作死亡キャラ生存」──古くから定められている、オリ主最大の使命である。

 

 

 もしもあのキャラが生き残ったら……そういったIFを自分自身で成し遂げることは、二次創作最大の醍醐味なのではないかと思う。

 それは原作沿いオリ主SSにおいても同じであり、このポイントを押さえている作品は非常に多い。正義のオリ主パワーにより原作死亡キャラを救済するIFは長い長い二次創作界の歴史の中、今も産声を上げ続けているのだ。

 救済対象になるキャラはやはり美少女が多いが、僕はできるTSオリ主なのだ。女だけを助けて、良いおっさんを見殺しにするわけにはいかない。

 炎がいるとは言え、残される灯ちゃんがかわいそすぎるしね……鬱展開や曇らせは、僕好みのSSではないのだ。

 

 フフフ……ということで、異世界まで待ってください。本当のオリ主ムーブを見せてやりますよ。

 

 眼鏡の代わりにシルクハットのつばをクイッと持ち上げながら、僕は不敵に笑む。

 今までは下準備を優先してきたが、異世界編では僕も本気を出す。と言うか今後はケセド不在の影響がさらに強くなる為、僕が積極的に介入しなければ炎たちが終わってしまう危険があるのだ。

 

 それで、肝心の救済方法であるが……僕は明宏を押しのけ、親善大使護衛隊五人の枠に入り込もうと考えている。

 炎、長太、翼、メア、僕。このイカれたメンバーをフェアリーワールドの神様に紹介してやろうと言うのだ。これだけで明宏の死亡フラグは完全に折れるし、戦力もアップ。あちらにとっても断る理由は僕の胡散臭さしかない。

 異世界に突入する際、最悪擬態の異能を使ってでも明宏と成り代わる。明宏は置いていく。この戦いに付いていけないことはないけど、ね。

 

 僕は前に原作キャラ不在設定からの成り代わりについて肯定的な意見を語ったが、それは僕自身原作キャラの立場に成り代わる予定があったからでもある。

 タグ的には「明宏不在」になるのかな……いや、存在を抹消するわけじゃないから許してほしいな、女神様っぽい人。

 対象の原作キャラを救済する結果につながるのなら、消極的な不在要素もアリだと僕は思うのだ。メアが灯ちゃんのポジションを奪ったのも、異世界編最大の曇らされキャラだった彼女のことを思うと救済されたと言えなくもないし……

 

 なお、ケセド君は見せ場とか以前にかわいそうだったので昨日の夜僕は泣いた。おのれPSYエンス! 僕が第一クールにいたら無敵のオリ主パワーで何とかしたのに。流石に手持ちの異能では彼を救済することは不可能だった。

 

 僕は彼のことをすこぶる気に入っていた。昨夜は泣きながらハープを奏で、夜空にレクイエム(ケセドのキャラソン)を捧げたぐらいである。いっぱい悲しい……メアちゃんの身体には彼の残滓が残っているとは言え、本人は既に死んだようなものなのであまりにもあんまりだ。

 

 その時、僕の泣き顔を通りすがりの幼女に見られてしまったのは少し恥ずかしかったが、小さい子だったので適当に誤魔化して親元へ送り返してあげた。

 コクマー戦ではなるべく死人が出ないようにこっそりと流れ弾を処理していたんだけど、避難時のいざこざまでは防げなかったようだ。まあ、それはしょうがないよね。

 

 

 ……それはともかく。

 

 あの時、風岡翼に「五人目の戦士には、T.P.エイト・オリーシュアをよろしく」と書いた手紙を渡すことができたのは僥倖だった。

 しかし良かった。彼が匿名の名探偵だという設定を覚えていて。

 作中随一の便利キャラである風岡翼は、SSにおいても変わらず便利キャラだったらしい。彼なら明宏にもきっといい感じに僕の参加を認めさせてくれるだろう。

 仮に拒否られたとしても、僕は彼らに付いていくけどね。

 オリ主的な考えを抜きにしても、フェアリーワールドがどんな世界なのか気になっているのだ。

 ふふ、今のうちに着る物とか買い溜めしておかなきゃね。確かすっごい綺麗な泉とかあったし、水着も用意しておこう。TSオリ主には水着イベントが必須なのだ。キミたちもそう思うだろう? 

 

 いやあ楽しみだな異世界訪問……あっ、この世界も前世からしたら異世界だったわ! 馴染んでるなー僕も。ふっ……僕の心も転生オリ主的な現象「肉体に精神が引っ張られている」のだろう。やれやれ、また一つ、オリ主らしいことをしてしまったようだ。

 

 そういうわけで僕は、彼らの準備が終わるまでの間荷造りをしておくことにした。

 その為にはまず何でも収納できる四次元ポケット的な異能を誰かから盗んでおきたいな。

 ん? どこでもハープの強みが無くなるって? あれの一番の強みはカッコ良さだからいいのだ。性能も良いし、しかも錆びない。SSR異能である。

 僕はオリ主として常に意識を高く持っているつもりだが、根本的にカッコ良さは全てにおいて優先されるものと思っている。

 

 

 ……え? 普通にセイバーズと行動して良いのかって? メアちゃんの影としてどうたらこうたら高説していたのは何だったんだって? まあ、待ちたまえよ。忘れてはないが、その段階はもう過ぎたと思うのだ。出会って間もない頃ならともかく、そろそろ僕とメア(オリキャラ同士)が一緒にいても、知らない人がわちゃわちゃしているようには見えないんじゃないかなーって。

 先ほどの会議でメアの中にケセドの心があることを知った僕は、彼女のことを「知らないオリキャラ」ではなく「ケセドの代行者」として扱うことにした。そんな彼女と行動する僕は、丁度良く名探偵が疑ってくれたし聖獣側の観測者的な感じでフカしておこうかな? これなら敵か味方か謎のお姉さんポジを守りつつ、いい感じにオリ主できる筈だ! 

 

 ふふ、我ながら完璧なムーブよ……流石は僕、T.P.エイト・オリーシュアである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それは、昨夜の出来事である。

 

 

 

 先の戦いで明保野市が受けた被害は大きかったが、人的被害だけはどういうわけか奇跡的に最小限に留められたのは不幸中の幸いか。

 しかし、それでも全員が何事も無く済んだわけではない。

 避難所に向かう道中で親元とはぐれた子供もおり、今も幼い子供が涙を浮かべて両親を探し回っていた。

 

「ヒグッ……おとーさん……おかーさぁん……!」

 

 それでも闇雲に泣き喚くことなく懸命に捜索を続ける少年は、五歳になったばかりとしては聡明な子供なのだろう。大人でもパニックになりかねない状況でも、彼は自分にできることを必死に行っていた。

 

 ──ふと何処からか、彼の耳に音楽が聴こえてきたのはその時である。

 

「……?」

 

 聴いたことのない音楽だ。

 緩やかなメロディーに乗せて、誰かが歌っている。

 綺麗な声だ……ただ純粋に、少年はそう思った。

 灯の光に吸い寄せられるように、少年は透き通るような音色につい誘われてしまった。

 そんな彼がたどり着いたのは、廃虚となった町の瓦礫の山である。

 

 その頂上に一人、ちょこんと座り込みながらハープを演奏している女性の姿があった。

 

 

「おや?」

「……っ」

 

 ひとしきり歌い終えると、そこでようやく少年の存在に気づいたようだ。

 満月の輝く快晴の夜空から目線を外し、女性は少年の姿を見下ろしてきた。

 

「これは失礼。せっかく観客が来てくれたのに、気づかなかったよ。こんばんは」

「こ、こんばんはっ」

 

 急に話しかけられた少年は慌てて挨拶を返すと、彼女は「よく言えました」と言ってにっこりと笑う。

 彼女は近くに埋まっていた屋根の破片を足場にすると、器用にもそれをソリのように扱い、ロングスカートの裾を膝上まで翻しながら瓦礫の山を滑り降りてきた。

 

 そうして少年の前に立った女性は、腰を屈めてお互いの目線を合わせる。そこまで近づいてようやくはっきりと女性の顔が見えた少年は、彼女の翠色の瞳がほんのり赤くなっていることに気づいた。

 

「キミ一人かい? 迷子になったのかな?」

「……うん」

「そっか……じゃあ、ボクと一緒だね」

「えっ?」

 

 はぐれた親が見つからず、困り果てていた少年は彼女の言葉に首を傾げる。

 思ったことをそのまま、口に出して訊ねた。

 

「オトナなのに、マイゴなの?」

「うん、実はそうなんだ。ボクは今まで、ずっと迷子なんだ」

「そうなんだ……」

 

 いつも優しいお父さんとお母さんがいない夜は、こんなにも寂しい。それがずっと続いているなんて、とてもかわいそうだと少年は目尻を下げた。

 

(そっか、だから……)

 

 聡明な少年は、女性の目が赤くなっている理由を理解した。

 

「だから、泣いていたんだね」

「えっ?」

「ほら、やっぱり泣いてる!」

 

 今度は、女性が驚く番だった。

 彼女自身、自分で気づいていなかったのだろうか。女性はその指で目元を擦ると、拭き取った雫に目を見開き──微笑みを浮かべた。

 

「ふふ、そっか……恥ずかしいなぁ。これは一本取られたね」

「わわっ、な、なんだよー!?」

 

 そう言って女性は自らの帽子を少年の頭に被せると、うりうりと押し付けながら照れくさそうに笑った。

 イタズラにムッとした少年が帽子のつばを起こして文句を言ってやろうと顔を上げるが、その時に見えた女性の顔はどこか寂しそうだった。

 ……何となく、文句が言いづらかった。

 それは、照れ隠しの仕草がどことなくおとーさんに似ていたからだ。目の前のおねーさんは女の人なのに、変だなぁと思った。

 

「ねえ、おねーさんは女のひとなのに、どうしてボクっていうの?」

「……キミは鋭いことを聞くね。だけど、お姉さんから一つだけ忠告しておくよ」

「?」

「女の子の秘密は、秘密のままにしておいた方がいいってこと」

 

 少年の頭から帽子を回収し、被り直す。

 

「だから、ボクが泣いているところを見たことも、秘密だよ?」

「あ……う、うん……」

 

 少年の鼻先を指先で突きながら言い聞かせる。

 その仕草はイタズラを叱る時のお母さんと似ていて、少年は思わずコクリと頷いてしまった。おとーさんみたいだと思った直後に、今度はおかーさんみたいだと思ったのである。変な感覚だった。

 

 いい子だ……そう言って、女性は少年を抱き上げた。

 

「わっ!?」

「歩き回って疲れただろう? 抱っこしてあげるから、一緒にお母さんたちを探そうか」

「……ありがとう、おねーさん」

「よろしい」

 

 少年を抱きかかえる彼女の腕はおかーさんのそれよりもずっと細くてすべすべしていたが、力は強かった。

 何の揺れもなく、とても居心地が良い。

 もたれ掛かるように、少年はその頭を彼女の胸に預けた。

 

「おねーさん、ゆれないねー」

「こう見えて、力は強いんだ。レディーのエスコートはお手のものさ」

「れでぃー?」

 

 知らない人に付いていってはいけませんと、両親や幼稚園の先生からいつも言われている。

 しかし、この時の少年は疲労困憊だった上に、彼女の穏やかな雰囲気に安心を感じていたのだ。

 それに……あんなに綺麗な歌声をしていた人が、悪い人なわけがないと心ながらに思ったのである。

 

「ん……」

「おやすみ、お嬢さん」

 

 僕は男の子だよ……と、心の中で訂正を要求する。少年は髪が長いからか、周りから間違えられることが多かったのである。そういう時はいつも怒って反抗するのだが、不思議とこの人には言い返す気になれなかった。

 それは眠気か、それとも母性のせいか。

 その身体を包む柔らかな感触と、ゆっくりと歩を進める彼女の足音が心地良い子守唄のリズムになり、気づいた頃には少年の意識はまどろみに落ちていた。

 

「……おかーさん……」

 

 リラックスした顔で溢した少年の寝言に彼女はピクリと反応するが、すぐに微笑みを返した。

 

「それも、いいかもね……」

 

 誰にも聞かれることのなかった呟きは、満月の夜空に消えていった。

 

 

 それから少年が目を覚ますと、彼の身体は既に母親の腕の中だった。無事で良かったと、父と母が喜ぶ。

 二人は避難の時にはぐれたことをしきりに謝ったが、少年にわだかまりの心は無かった。

 

 

 ──何というか、すこぶる寝覚めが良かったらしい。

 

 

 

 




エイト「(おかんポジか……)それも、(オリ主ムーブとして)いいかもね……」

 人気な男オリ主は割とそういうタイプが多いのではと勝手に思っています。ソースは累計ランキング
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