TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
真のフェアリーバーストはアニメ「フェアリーセイバーズ」の最終回で暁月炎がたどり着いた最強最後の戦闘形態である。
発動のきっかけになったのは彼の焔に集まった「想い」の力だ。アニメ「フェアリーセイバーズ」の最終回では邪神ケテルに挑む炎の姿に希望を抱き、勝利を願った人々や聖獣たちの想いが重なって生まれた奇跡の覚醒だった。
その姿はフェアリーバーストで纏っていた蒼炎が虹色に変わり、さらにド派手な焔のオーラになった感じで、覚醒の瞬間空を包んでいた禍々しい闇を吹き飛ばしていったその光景は、サフィラス十大天使たちさえも聖龍と見間違えるほどの神々しさを放っていたものだ。
丁度それは、今の炎が見せてくれたように。
しかし、今の彼は何かが違う。
アニメ「フェアリーセイバーズ」の原作知識を持つ僕も、僕の中にいるダァトも、今しがた発動した暁月炎の力に困惑していた。
何それ、知らん……怖っ……と言いたい。そんな気持ちである。
うん、マジであれ何? 僕知らないんだけど……
『アカツキ・エンもまた、新たな可能性を示したということだ。……これでもう、人間の世界に思い残すことはない』
ほえー……人間って凄いね。いや、彼が特別極まっているって言うのもあるのだろうけど。
フェアリーバーストを超えるインフィニティーバースト──まさしく、可能性は無限大って奴だね。僕が想定していた真のフェアリーバーストとはまた違った彼の進化には驚けばいいのやら、呆れればいいのやら……ともかく僕は、口元に浮かべた苦笑の裏で昂りを感じていた。
だってさ、これは燃えるに決まっているでしょう!
燻っていた感情の灯火が、自分自身の本当の想い……いわゆる真実の愛に気づいたことで爆発し、新たな未来を拓く──いかにも主人公、暁月炎の集大成って感じの変身である。
パワーだけではない。見た目も僕の知る真のフェアリーバーストとは大きく変わっている。
その身に纏う焔の色が蒼から虹色に変化しているのは同じだが、力動長太の氷の鎧のように、彼の全身を焔の鎧が覆っていた。そのデザインは太陽をイメージしているかのように、灼熱の色に輝いている。
その手に携える焔の剣も変化している。これは……もしかして僕の影響なのかな? 右手と左手にそれぞれ違う色の剣を携えた二刀流で、右手には紅蓮の、左手には蒼炎の剣を構えている。
カッコいいぜ。僕の影響だったら超嬉しい。この作品……ひょっとして僕の影響受けてます?
そんな感じに見た目だけでもすこぶる派手な姿なのだが、焔で作った背中の羽の形状も派手に変わっている。と言うか、僕やダァトから見たら一番大きな違いに見えるね。
虹色の光輪──僕のフェアリーバーストでは天使の輪っかをイメージしたものが頭上に浮かんでいたのだが、彼のインフィニティーバーストではその輪っかが羽として背中に広がっていたのだ。
それも、二つも並んでだ。
さながらその輪っかは、
「ボクと同じ……いや、それ以上の聖なる力を感じるよ。これがキミのフェアリーバースト……インフィニティーバーストなんだね、エン」
わかるぜ……その姿はただ厨二カッコいいだけではない。異能使いがたどり着いた新たな境地である。
思ってたのとは大分違うけど、気合いが空回りして暗黒進化してしまうようなことにはならなくて一安心である。
僕は短く息を吐くと、ちょっとだけ寂しい思いを胸に抱えながら苦笑を浮かべた。
これではオリ主の立つ瀬がない──そんな気持ちだ。もちろん嬉しいよ?
「いくぞ!」
そんな新たな力、インフィニティーバーストへと覚醒した炎は見た目に違わず今までとは異次元の実力を見せつけてくれた。
単純な戦闘能力もさることながら、彼の放つ虹色の光はアビスにとって強力な特効能力があるのだろう。光が空を覆う闇を切り払った途端、カイツールの力が目に見えて弱まっているのがわかる。
……いや、弱まりすぎだろ。
元々概念染みていたと言うか、存在そのもののランクが違う感じだったものが、炎の虹色の焔を受けたことで戦いが成立するレベルまで落ちてきた感じだ。
それでも依然として大天使以上の強さを持つとてつもない存在には変わりないが……今のカイツールが酷く弱体化しているのがわかる。
大きさも半分ぐらい縮んでいるしね。それでも全長100m以上あるのは相変わらず大怪獣染みているが。
フェアリーバーストを超えたインフィニティーバースト──やはりあの力には、アビスに対して永続的なデバフが働く何かがあるらしい。
そりゃあ聖龍さんも期待するわけだと、僕は神様が無能ではなかったことを改めて理解する。
『元々は、ダァトにも備わっていた力だ』
おっ、解説サンクスカロン様。
流石ダァト。さすダァである。
元々聖龍が人間世界に振り撒いた異能の力はダァトの力だったものだからね。だからこそダァトにはフェアリーバーストを使うことができたし、僕にもこうして発動させることができた。
しかし、今の炎が使っている力はダァトとも僕とも違う全く新しい未知の力だ。
やっぱり炎はすげぇや。最後までヒーロー性たっぷりだもん。
『よく、未来を導いた』
「ふっ……ボクはその時その時で好き勝手に、やりたいことをやってきただけさ。頑張ったのはボクではなく、彼ら自身だよ」
カロン様にとっても想像以上だったのだろう。炎の覚醒を見て、彼をそのように導いてみせたオリ主の功績を称えてくれたが……実際のところどうなんだろう?
彼のことだから、僕がいなくても最終的には勝手に覚醒したのかもしれないし、IFの話はわからない。
ただ僕としてはこの満足感、充実感には思う存分浸らせてもらっている。炎はわしが育てた。
いやあ、一時はやりすぎて失敗しちゃったかなぁ……と心配したが、流石は僕だ。
無事に未来を導けたのかはさておき、原作主人公の師匠ポジとしては概ね理想的な、いい感じの立ち回りができたと思う。300オリ主ポイントである。
その甲斐もあって覚醒した炎の力は見事にカイツールを抑え込み、戦いは優勢になっていた。
いいぞー頑張れー!
「カイツール……お前の暗躍もこれまでだ!」
『ダァトのマガイモノが……ズにノるなァァァッ!!』
「っ!?」
うおっ!? すっごいデッカい叫び。ここから聴いても頭の中がキーンって来たわ。
……ん? 今のカイツールの声?
『そのチカラは、ワレワレにアタえられるハズだったものだ! ニンゲンゴトきが……ダァトをモホウするなァァァッッ!!』
おおー……わかる! 僕にもアビスの言語がわかるぞ! なにこれすごい。
フェアリーバーストを発動する為に、引き出したダァトの力が馴染んだからかな? 炎たちには依然SAN値が削られるようなおぞましい叫びにしか聴こえていないカイツールのアビス語が、今の僕にははっきりと理解することができた。バイリンガルエイトちゃんである。
……しかし言葉を発していたということは、やっぱり彼らにも知性と言うか、心があったんだね。
そういう意味では深淵の世界でダァトが行ってきた対話の旅も、決して無駄ではなかったのだろう。
そんな感慨に浸りながら、現在怒り狂っている様子のカイツールの姿を眺めていると、異変は起こった。
インフィニティーバーストの光の波動を受けてシワシワになっていた黒龍の姿が、さらに急激に縮んでいったのだ。
「なんだ……?」
これには炎も怪訝な顔を浮かべている。
それは彼の攻撃によるダメージと虹色の光による弱体化を受けたことで、彼の身体がさらに縮小されている……わけではない。
それにしてはカイツールから感じられる力は大して弱まっておらず、寧ろ強まっているように感じた。
ああ、凝縮しているんだ。
カイツールはインフィニティーバーストの光で不安定になった自らの力を維持する為に、自らの肉体を小型化することで自身の中で巡っているエネルギーの効率化を図ったのだ。
元々が生命ですらなかった不定形存在だからこそ可能な、状況に応じた変幻自在な肉体変化である。
頭良いなアイツ……いわゆる第二形態への変身という奴か。
「ここからだよ、エン」
大ボスとの戦いは第二形態を引きずり出してからが本番なのがお約束である。RPG的に考えて。
自己評価が極端に低いところがある炎の性格上「勝てんぜ……お前は」という感じに慢心することは無いだろうけど、僕はここが正念場だぞ、と後方師匠面で戦いの様子を見守った。
「これは……?」
「まさか……!」
縮んだとは言え100m以上はあった黒龍の姿が空から消え去り、カイツールの姿は2mにも満たない大きさへと凝縮されていく。
それほどの急激な変化を受けても、その身に内包する力は黒龍形態の時から何ら低下していない。
寧ろ小さな身体に闇が凝縮されたことで力の密度が高まり、さらにパワーアップしているように思える。
そんなカイツールの新たな姿を見て、イェソドとティファレトの大天使コンビが目を見開いていた。
何故なら変貌したカイツールの新たな姿は、彼ら大天使の姿を模した十枚羽の天使の姿をしていたのだ。
「……やはり、そう来たか」
その変貌を前にした炎は一瞬眉を動かしたが、二人ほど驚いてはおらず落ち着いている。
まあ、これまでにも伏線はあったからね。翼に倒された彼の分体はラファエルさんの姿を模倣した天使の姿をしていたし、本体である彼がこの場で真の戦闘形態として大天使の姿を映し出すのも意外な展開ではない。
意外ではないのだが……
……なんか僕に似てね? と、その姿を見てエイトちゃんは思ったわけでして。
『ミろ! これがワタシがマナんだココロだ! ワタシがシッたアイだ! ワタシはキサマらよりもダァトをアイしている! ダァトがエラんだのはワタシだ!』
…………
えっ。
ええー……
……そんなこと、高らかに言われましても。
マジかよカイツール……お前そんなこと考えてたの?
てか何言ってんの君? しかもなんでよりによって、君の言葉がわかるようになった時に限ってそんなこと言うんだよー。
……どうしよう? どうするダァト? カイツールあんなこと言ってるけど……えっ、嬉しいけどちょっと困る?
……ああ、君はそういうスタンスなんだね、把握。君も難儀だね……
かつて、ダァトは彼らアビスに心を、感情を与えた。
「魔王」との戦いの後、彼らには感情が芽生え始めていた。それは彼女にとって希望だったのだろう。
生物ですらなく、あらゆるものを喰らい尽くすだけの現象のような存在である彼らにも、人間や聖獣たちが持っているような他者を思いやる優しさを教えてあげることができれば、いつの日か彼らとも共存することができるのではないかと考えたのだ。
しかし……その結果はご覧の有様だ。現実の何と非情なことか。
深淵のクリファのような上位個体たちには確かに人間のような心を持つことができるようにはなったのだが、アビスの本質故に妙な形に歪んでしまっていた。
「ダァトは……悔やんでいたよ」
『……そうか』
そんなことになってしまったアビスたちのことを、ダァトは心の底から哀れんでいた。
もちろん、だからと言って今彼らによって振り撒かれている被害を許すことはできないけど、それでも彼女はアビスたちに同情し、後悔していたのだ。
自分がもっと上手くやっていたら、彼らに祝福を与えることができたんじゃないかってね。
まあ、僕に言わせてもらえばそれは……
『もう、十分だ。ダァトは十分献身した』
同じ意見を、カロン様が返す。その言葉は、彼女のお姉さんとしての立場から向けたものなのだろう。
僕──の中にいるダァトを見つめる儚くも美しいその瞳は、僕にはとても悲しんでいるように見えた。慣れないと無表情に見えるけど。
『このフェアリーワールドの成り立ち故に、彼らの目覚めは決して避けては通れない災いだった。ダァトはそれでも……永き時の間、彼らの侵攻を食い止めてくれた』
憂いを帯びた彼女の表情は、妹を一人深淵の世界へ行かせるしかなかった懺悔の気持ちが表れているように見えた。
僕はそんなカロン様の心中を察し、あえてダァトの言葉で返してあげた。
「好きで選んだ道だよ、姉さん。それに、彼らとの触れ合いは楽しかった。「ダァト」は、心からそう思っているよ」
『……そうか』
僕はダァトで、ダァトは僕だからね。
彼女がカロン様に対してどう感じていたのかは僕にもはっきりわかるし、僕も同じ気持ちだった。
カロン様がダァトに対して申し訳なく思っているのと同じぐらい、ダァトもカロン様に対して申し訳なく思っていたのだよ。
まあ、要するに似たもの姉妹ってことだね。
尤も普通の人間として生きた僕から言わせてもらえば、二人とも何もかも背負いすぎだったんじゃないかなとは思っている。その為に生まれてきた特別な存在なのだとしても、二人とも僕を見習ってもう少し適当に生きれば良かったのに、ってね。
『……我らにも、その未来があったのだろうか』
「さあてね。パラレルワールドみたいな話になってしまうけど、世界は広いからね。もしかしたらそんな世界線も、どこかにはあったのかもしれない」
そんな雑談に講じながら、僕たちは彼らの戦況を見守る。
僕──ダァトの姿を模倣した第二形態を披露したカイツールは、黒龍の時よりも凝縮された力でインフィニティーバーストの炎と互角に渡り合っていた。
主人公の新フォームお披露目会でも自重しないな彼は……流石は深淵のクリファでも上位の力を持つカイツールである。単純なパワーやスピードでは、虹の光による強力なデバフを受けてなお今の炎を上回っていた。
だが、僕の心に緊迫感は無い。
それは世界の命運を賭けた戦いで主人公が負ける筈が無いというメタ的な信頼もあったが、それ以上に今の炎には身勝手な信頼を置くことができる安心感があったからだ。
今の彼はインフィニティーバーストという何が起こるかもわからない安定を捨てた力を纏っている筈なのに、僕には彼の姿が今までよりもずっと安定しているように見える。
たとえステータス的な意味ではカイツールが上手でも、最後に勝つのは彼だと──強いのは暁月炎だと確信できるほどにね。
対峙した二人の精神状態を見比べても、それは明らかだった。
力では自分の方が上回っている筈なのに、一向に炎を殺すことができない状況に、カイツールの方が動揺し始めていたのだ。
『ナゼだ……! マガイモノのキサマがナゼワタシとキッコウする!? ワタシのホウがダァトにチカヅイているとイうのに!』
……うん。そういうところだよね。
なんかズレてるんだよなぁ君は。昔からそうだった……らしい。
彼が何を思って暴走しているのか、その事情に僕自身は詳しくないが、彼の言葉を聞く限り何かダァトから教えてもらった感情が空回りしているのがわかる。
多分、ダァトの力に似ている炎のインフィニティーバーストよりも今の自分の方がダァトに近いとマウントを取ろうとしているのだろうけど……残念ながら彼が似せているのは、申し訳程度の姿形だけだ。
その姿も大天使のシルエットを象っただけの歪な闇って感じであり、決して彼が擬人化美少女と化したわけではない。残念ながら。
目も口も無いし、その姿は彼の本質を包み隠せないほどに禍々しすぎる。
いや姿で全部判断するのもどうかとは思うよ? だけど見た目は醜くても心は……という展開を期待できるほど、やらかしたことを思うに性格も良くはない。
申し訳ないが、エイトちゃんはそんなんじゃないよ~。
そんな彼の攻撃──これも僕──いや、ダァトの戦法を真似た闇の二刀流剣術を蒼炎と紅蓮の剣で捌きながら、炎が呟く。
「アイツは、ここまで見通していたんだろうな……」
ん?
『ナゼだ……ナゼだァァァ!』
「終わりだカイツール。お前の技はもう見切った」
狼狽えるカイツールに向かってきっぱりとそう言い放つと、炎はスピードで上回るカイツールの攻撃を軽々といなし、返す刃で敵の胸を斬りつけていく。
これが人間ならその一撃で絶命していたところだろうが、カイツールは痛みに呻きながらも再度闇の剣を振り回してきた。
しかし、その攻撃はいずれも炎には届かなかった。
始めは拮抗していた戦闘も徐々に擦過傷さえ与えることができなくなり、今や完全に炎の方がリードしている。
それはインフィニティーバーストの力がさらに強くなったわけではなく、もっと単純な戦闘経験によるもののように見えて……なんだか僕には、カイツールの動きが手に取るように読まれているように感じた。
「お前が真似たその技も、俺はとっくに見飽きている」
『──ッ!』
「お前が模倣したその姿の本物に、散々痛めつけられたからな。自慢じゃないが」
『……ダァ……ト……ッ!』
あー……なるほどね、そういうことか。
姿を真似しただけではなく、カイツールの戦い方はダァトとそっくりなんだ。
だから直前に僕と戦った経験は、炎にとって最高の予行演習になったというわけか。
フフフ……そういうことだよ炎! 僕はこの展開を見通していたのさ!
そういうことになった。
やれやれ、未来まで見通してしまうとは流石チートオリ主である。これは作中最強キャラ説でちゃったりする? かーっ。
……いや、こればかりは全くの偶然なのだが、せっかく格を上げてもらえたので僕はしたり顔で応えてあげた。いいよね、本人のいないところで評価してくれる男の子って。
さあ、いよいよ年貢の納め時だぜカイツール。最高に高めた異能の力で最強の力を手に入れた今の炎は無敵だ。相手が悪かったね。
そんな僕の分析を証明するように、カイツールの剣戟をかわした炎がすれ違い様、闇で作られた彼の不格好な羽を切り飛ばしていった。うわっ、容赦無い。
「だが……アイツの技は、強さは! こんなもんじゃなかったッ!」
『ガッ……!?』
そ……そう褒められると照れるなぁ。そこまで格を上げてくれなくてもいいんだよ炎?
叫びながら、静かに燃える蒼炎と熱く猛る紅蓮の剣がカイツールの身体を打ち付けていく。目にも留まらぬ早業は、ここから見ているだけでも何かこう圧倒される剣戟だった。
「上辺だけを取り繕った力では、何も怖くない。お前の力には、技には……何の中身も感じない。空っぽなんだよ」
おやまあ……随分と手厳しい。確かにその通りではあるんだけどね。
もちろん、模倣することが悪ってわけではない。それを言われてしまうと全世界の二次創作にブッ刺さってしまうからね。
何事も上達への近道は上手い人を真似ることだという意見もあるし、偽物だからって理由で何もかも否定されるべきではないだろう。炎が言いたいことも、多分そういう話ではない。
模倣するにも、その行為に対するカイツールの信念というか、ポリシーを感じないのだ。
「ラファエルに、聖龍に、最後はダァト……お前自身はどこにいる? お前たち自身は何を生み出すことができる?」
『……っ』
「破壊しか生み出せないお前たちを変える為に、エイトは……ダァトはお前たちを導こうとした。その気持ちにこんな形でしか応えられないのなら、俺がお前を焼き尽くす!」
『ぐ……あああああああああアアアッッ!!』
……どうやら僕が思っていた以上に、ダァトの昔話は炎の心に響いていたらしい。人柱になったダァトとカロン様のことを哀れんでくれているのか、彼に対して表情以上にご立腹の様子だった。
あはは、優しいなぁエンくんは……
精神の在り方が大天使すぎる彼女と違って遠慮も容赦もする理由も無い人間の炎は、言葉のナイフでズバズバとカイツールをぶった切ってくれた。それはもう、「これは翼の分! ケセドの分! メアの分! ダァトの分!」と言わんばかりに。
それを見て僕はダァトの引け目もあるので立場上「見ろよカロン様! カイツールボコボコで気分ええわ!」とは言わないが、僕が言いたかったことも全部代弁してくれたので気持ちは少しスッキリした。
やっぱり、こう言うことを言ってくれる存在が必要だったのかもしれないなぁ……アビスにも。
尤も発狂するカイツールにどこまでその言葉が伝わったかはわからないが……厳しくも優しいヒーロー然とした炎の姿に、僕はファンとして──いや、友人として嬉しく思った。
──さて、それじゃあ僕も、ここらで主役らしいことをしないとね。
既に勝負は決したと判断した僕は、映し出したビジョンをそのまま放置しながら傍らを向く。
そんな僕の様子に応えるように、そこには既に僕がこの場で対峙するべき相手──女神様っぽい人ことカロン様の姿があった。
『エイト……汝は……』
「さあ、こっちの話もそろそろ進めようか、カロン姉さん。ボクたちの物語を、ね」
原作主人公の活躍の裏で、世界にとって重要なイベントを回収する。
どことなく外伝主人公みたいな立ち回りになるが、これもまたオリ主らしいムーブなのではないかと思う。
と言うわけで……こっちの決着をつける為に話そうか、カロン様。
僕は脳内で名探偵が推理ショーを始める時に流れるBGMを垂れ流しながら、ここまでの「物語」を知る「仕掛け人」について、真実を問い詰めた。
僕をこの世界に転生させてくれた──心優しくも、とても不器用な女神様の、本当の思惑を。
次回はカロン様サイドの事情が明かされます
派手な原作主人公の裏でもう一つの最終決戦に挑むのは結構オリ主っぽいのではないかとワイトは思います