ガールズ&パンツァーウォーズ   作:平四郎

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お読みくださりありがとうございます。
番外編2は聖グロリア女学院の話となります。かなり独自設定強めですのでご容赦ください。




番外編2 我等の道〜This is the Way〜

困難な道でも先に進むしかない・・・

 

内憂外患!聖グロリアーナ女学院のダージリン隊長は目前に迫った戦車道大会の戦力強化を図る為、新たな戦車の購入を考えていたのだが、そこに立ちはだかる壁となる者達が居た・・・

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〜聖グロリア女学院、執務室〜

 

「それで?あの方達はなんと言ってきたのかしら?」

 

ダージリンは優雅に紅茶を口に含みながら前に立つオレンジペコに問う。

 

「はい。我が学院OG最大の勢力を誇るマチルダ会は、今回の我が学園の編成方針に対し遺憾の意を表すると共に厳重に抗議する。との事です。」

 

「要はマチルダを減らしてクルセイダーを導入した事が気に食わない。という事ですわね。」

 

特徴的な大きな黒いリボンを付けたアッサムがそのブロンドの髪同様の美しい所作で自らのティーカップに紅茶を注ぎながら呆れ気味に言う。

 

「その通りです・・・マチルダ会はこのままなら資金の援助を減額すると言ってきておりまして・・・」

 

困惑気味のオレンジペコに対してダージリンは優雅な姿勢を崩さずに応ずる。

 

「あら?自らの存在感を薄めようなんて随分と思い切った事をなさりますこと。」

 

最大派閥とはいえOG会という立場上、大幅な減額は自らの発言権の低下も意味するのでそこまで無茶はするまい。という勘定がダージリンにある。要は「やれるものならやってみろ。」という事である。無論、現役側としてもあまりに過激な対応はそれ以外のOG会や学院全体の不信に繋がる為、微妙な匙加減が必要なのも確かであった。因みに他に大所帯のOG会にはチャーチル会とクルセイダー会があり、今回はクルセイダー会の後ろ盾を得て編成を替えている。

 

聖グロリアーナ女学院はイギリスの影響を強く受けた学院であり、使用する戦車もイギリス製の戦車である。その戦術は浸透強襲戦術と言われる重装甲の戦車で敵の攻撃を正面で受けつつ、じわじわと侵攻していくものである。故にマチルダやチャーチルといったやや速度に難のあるが装甲の厚い戦車を使用していた。この戦術は確かに強力な主砲を持つ戦車が少ない相手には有効な戦術となるが、強力な主砲を持つ戦車を有する相手には分が悪い戦術となってしまう為、速度の速いクルセイダーやクロムウェルといった戦車を導入してこれらに対抗していこう。というのがダージリン率いる現役執行部の方針なのである。

 

「本音を言えばブラックプリンスかチャレンジャー、もっと言えばコメットやセンチュリオンが欲しい所なんですが・・・」

 

「それを許してくれるようなOG会でしたら現役の足を引っ張るこの様な抗議はそもそもしてこないでしょうね。」

 

先述したマチルダ会やチャーチル会クルセイダー会といったOG会は「資金も出すが口も出す。」という組織の見本の様な連中で、特に最大派閥のマチルダ会はその傾向が強く、今回の様に現役執行部の編成方針に介入し、叶えられないとなれば様々な妨害も辞さないという組織である。

 

「せめて17ポンド砲に換装出来れば良いのですが・・・」

 

「その点に関してもOG会の反対で難しいのが現状ね。全く・・・自分達が現役の時も同じ様な事を主張していたはずですのに、何故反対なさるのか理解に苦しみますわ。」

 

オレンジペコがぼやき、アッサムは溜め息と共に愚痴を吐く。聖グロの所有する戦車は全体的に火力不足であり、大戦末期に製作された17ポンド砲やそれを搭載した戦車を購入したいのだが、先述のOG会の反対により断念せざるを得ない状況にある。

 

「『それは我等の道、浸透強襲戦術ではない。』というのが彼女達(OG会)の言い分ですが、それで負けていては本末転倒というものではないでしょうか?」

 

実際に勝負するのは自分達なのに、卒業生とはいえ外野から『伝統の戦術で勝たねばならぬ。』と言われて様々な要請を却下されている現状を納得出来るものではない。無論、負けたら現役世代の責任となるのは言うまでもなく、その理不尽さにオレンジペコは呆れていた。

 

「我等の道・・・フフッ。」

 

ダージリンの呟きは何処か侮蔑した様な響きがあった。そんな彼女をアッサムが訝しげに声を掛ける。

 

「ダージリン?」

 

「失礼。彼女達の言う『我等の道』が少々見当違いなものでしたから。」

 

「見当違いとは?」

 

オレンジペコの問いにダージリンは優雅に紅茶を口にした後に答える。

 

「『我等の道』とは浸透強襲戦術(戦い方)の事ではない。という事よ。『どんな状況も耐え忍び、最終的な勝利を得る事こそが我等の道(This is the Way )。』」

 

「「はい。」」

 

ダージリンの言葉に頷くアッサムとオレンジペコ。3人は静かに闘志を燃やそうとしてい・・

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・バタン!!!!!!

 

まるで重戦車が近付いて来る様な地響きが執務室に轟き、そしてそのドアが豪快に開け放たれた!!

 

       「ローズヒップ!只今到着!!ですわ!!!」

 

ローズヒップは元気良く登場して中を見る。そこには目を丸くしているオレンジペコ。澄まし顔で紅茶を飲むダージリン。そして・・・

 

「ローズヒップさん・・・・『廊下は走るな。』といつも言ってますわよねぇ・・・」

 

引き攣った笑顔で怒りが爆発寸前のアッサムが居た・・・・・。

 

「ふぅ・・・だから言ったのに・・・。」

 

硬直しているローズヒップの背後に立ったルクリリが額に手をつき溜め息を吐いた。

 

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〜聖グロリア女学院、学院長室〜

 

ローズヒップへの調教(おしおき)をアッサムとルクリリに任せ、ダージリンはオレンジペコを伴い学院長室へと来ていた。学院長で姉でもあるサティーンに報告する事がある為であった。

 

「そう・・・前学院長が・・・」

 

「はい。彼が再びこの学院の長となるべく、複数の幹部と接触しているのは間違いありません。」

 

前学院長アルメクは実務能力でいえば現学院長サティーンを凌ぐ存在であった。だが、彼は数々の不正に手を染め、それを糾弾される形で2年前に学院を追放されていた。そんな経緯を持つ者が再び動き出したというのである。

 

何故?という問いには簡単に答えが出る。彼は経営能力、即ち集金分配能力が極めて高いのである。学院の幹部連中はもちろん、数あるOGグループもその恩恵に預かっていた者は多い。その甘い蜜を忘れられない連中が、清廉で不正を許さないサティーンの方針に不満を持ち、現体制を覆そうというのはよくあるパターンではあった。そしてもう一つ。

 

「結局裁判も有耶無耶の内に訴えが取り下げられて終わってしまいましたものね。。」

 

「彼は中央にも複数のパイプを持っていますもの。多少の事なら揉み消せる。という事でしょう。」

 

オレンジペコの言葉にサティーンが諦念に達した様に応じる。

 

「過ぎた事は仕方ありません。問題は今後起こるであろう彼等の逆襲にどう対処していくか?でしょう。」

 

ダージリンが今後の対応を協議する事を促す。

 

「そうね。でも、世論の手前、昨日の今日でいきなり復帰します。とは言って来ないでしょう。多少の時間はあるはずよ?先ず貴方達は大会を優先させなさい。この問題は私たち大人の方で対応します。」

 

生徒であるダージリン達を気遣うサティーン。だが、その優しさが甘さとなり相手につけ込まれる隙になり得るのである。しかしこれを指摘してもサティーンは方針を変えないであろう事もダージリンは理解していた。ならば取るべき道は一つ。

 

「かしこまりましたわ。必ず優勝してみせ、その成果を持ってして旧体制派を黙らせてご覧にいれますわ。」

 

何か言いたそうなオレンジペコを目で制しダージリンは戦車道大会の優勝をサティーンに誓う。

 

「お願いね。ダージリン。」

 

「はい。お任せを。失礼します。」

 

そう言ってダージリンは頭を下げ学院長室を退室した。

 

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〜学院長室前廊下〜

 

「よろしかったのですか?ダージリン様?」

 

退室し、しばらく歩いているとオレンジペコがそう確認してきた。彼女も不安を持っているのであろう。

 

「こんな言葉を知っているかしら?『凧は追い風ではなく、向かい風のときにもっとも高く上がる。』」

 

「えっとウィンストン・チャーチル卿の言葉でしたっけ?」

 

こんな時にそれですか?という内心の突っ込みを押し隠しつつ答えるオレンジペコ。

 

「学院長も私達もここを乗り越えてこそ『我等の道』を歩めるというものよ。」

 

「はい・・・」

 

とは言っても不安な表情のままのオレンジペコ。

 

「大丈夫です。確かに学院長の言う通り、今直ちに表立って仕掛けて来るのは彼等にとっても悪手になるでしょう。対外的にもですし、内向きにも戦車道大会中の妨害行為との誹りを受ける事にもなりますから。」

 

「ですが、学院長個人に対する妨害行為、又はスキャンダル的なゴシップ記事等を狙われる可能性があります。学院長の身辺警護などはどうするのですか?学院長の先程の感じですとダージリン様が護衛に就くのはもちろん、GI6等の生徒を護衛につける事にも難色を示しそうですが?」

 

旧体制派が学院長に対して妨害行為を仕掛けてくる事を懸念するオレンジペコ。

 

「その問題は民間の警備会社に警備依頼を出す事にします。」

 

「民間の?大丈夫なのですか?」

 

「ドロイドはどうにも好きになれませんし、それに信頼の置ける所ですから問題はないわ。」

 

「ダージリン様がそう仰るのでしたら・・・」

 

「ではちょっと出掛けて来ますので後はよしなに。」

 

「え!?今からですか?教練はどうするんですか?」

 

ダージリンの突飛な行動に驚くオレンジペコ。

 

「直ぐに帰ってくるから懸念は無用よ。もし遅くなったらその時は貴方とアッサムで上手く纏めておいてくださいまし。」

 

そう言ってダージリンは彼女の前から去っていってしまった。オレンジペコはすでに嫌な予感しかしていなかった・・・・。

 

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〜F.S.S社〜

 

F.S.S社〜Fett.Security.Service〜元傭兵のジャンゴ・フェットが立ち上げた民間警備会社である。「あくまで警備会社であり、民間軍事会社〜private military company〜ではない。」と宣うのは社長でもあるジャンゴ・フェット自身である。実際、業務内容はその名の通りの要人警護、現金輸送等の警備業務も請ける事はあるが、そういった所謂3号警備(貴重品や危険物運搬警備)、4号警備(身辺警備)といった仕事は、通常には大半は大手の警備会社が受註しており、F.S.S社が普段行っている業務は施設警備(商業施設やスタジアム等の巡回)や雑踏警備(工事や駐車場の交通整理)がメインの普通の警備会社である。

 

 

「育児休暇・・・ですか?」

 

ダージリンは思わず聞き返した。

 

「はい。我が社の社長、ジャンゴ・フェットは子息のボバ・フェットの為、そしてもう1人貴女に候補にと挙げて頂いたディン・ジャリンも最近迎えた養い子の為に育児休暇を取っております。」

 

応対する秘書兼副社長のフェネック・シャンドが冷静に事情を説明する。ジャンゴ曰く「こういう事は社長自ら率先して取らないと部下が取りづらくなる。」とのことである。

 

「では(わたくし)の依頼は請けてはもらえないと?」

 

ポーカーフェイスを装ってはいるが声に苛立ちが滲んでしまっているダージリン。そんな彼女にもシャンドは冷静に応じる。

 

「その点はご安心ください。然るべき者を手配しております。コーディ、入りなさい。」

 

シャンドの指示で1人の女性が入室して挨拶する。

 

「失礼致します。」

 

コーディと呼ばれた彼女は入室した後一礼し、直立不動の姿勢を取る。

 

「彼女の名はコーディ。貴女の依頼をジャンゴに伝えたところ、このコーディを派遣するよう言いつかりました。寡黙で腕は確かですし、私も今回の依頼には適任だと思っております。」

 

「コーディです。」

 

そう言って彼女は敬礼する。ダージリンはその名に聞き覚えがあるような気がしたが、よくは思い出せなかった。

 

「この件に関してはフェット社長や貴方の推薦だろうと、はいそうですか。と承諾するわけにはまいりません。実力を試させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

コーディに対し確認を取るダージリン。その視線は鋭いものになっていた。

 

「無論です。自分もそう簡単に信用されるとは思っておりませんでした。」

 

それを平然と受け、ある意味失礼なこの件をコーディは了承する。

 

「結構です。シャンド副社長、よろしいですね?」

 

「はい。気に入って貰えるものと思っております。」

 

「では、参りましょう。」

 

そう言ってダージリンは席を立った・・・・

 

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〜訓練所〜

 

ここはダージリンも使う表向きはサバイバルゲーム場になっている訓練所である。射撃訓練所はもちろん、屋内外のサバイバルゲーム場も戦闘訓練に使用しても耐えられる造りになっていた。

 

「マンダロリアンアーマーにジェットパック・・・フル装備とは光栄です。」

 

装甲服を身に纏いヘルメットを左手で抱えたコーディがダージリンの姿を見て敬礼する。

 

「私を失望させない様に励んで下さいね。Mr.コーディ。」

 

コーディの言う通り、ダージリンはマンダロリアンアーマーを纏い、更にその背にはジェットパックが装着されていた。

 

「では、今回の模擬戦を説明します。ダージリン様は襲撃者として私を撃てれば勝利。コーディはそれを防ぎ切る事が勝利条件となります。制限時間は15分。よろしいでしょうか?ダージリン様。」

 

シャンドの問いかけに無言で頷くダージリン。

 

「では5分後に開始としましょう。」

 

ダージリンはジェットパックを使用して飛び去り、ポイントを見定めて襲撃の為に身を潜めた。

 

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〜模擬戦終了後〜

 

結果としてダージリンはコーディを学院長の護衛とする事に同意した。コーディがシャンドを守り切った事もさることながら、決してこちらの挑発や陽動に乗らず、防御に徹する姿勢を評価したのである。その戦術は何処か姉の想い人(ケノービ)を彷彿とさせるものがあったが、それが何故なのかはダージリンはもちろんのこと、前世の記憶を持たないコーディも知らない事である。

 

「先程の非礼をお詫び致しますわ、コーディ。今回の件、請けて下さいますか?」

 

そう言って右手を差し出すダージリン。その手をしっかりと握り返してコーディが素直な感想を述べる。

 

「いえ、貴女が本気を出せば私は敗れていたでしょう。サティーン学院長の身辺警護、謹んで受けさせていただきます。」

 

「ありがとう、コーディ。改めて宜しく頼みます。」

 

「はい、ベストを尽くします。」

 

ダージリンの手を離したコーディはそのまま見事な敬礼を見せた。

 

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〜聖グロ艦への帰途〜

 

「それにしてもフェット社長もジャリンも殿方なのに揃って育児休暇なんて意外でしたわ。」

 

「ダージリン様、今の時代においてその認識はいささか問題があるかと?」

 

「コホン。そ、そうでしたわね。わたくしとした事が失言でした。」

 

聖グロへ帰る機内で思わず漏らした言葉に、自身の認識の古さをコーディに指摘され、赤面し咳払いした後、自らの非を認めるダージリン。確かに男のクセに〜とか、女のクセに〜等と言うのは問題発言として捉えられかねない。

 

「いずれ戦車道も『乙女の嗜み』としてではなく、男子も含めた総合的な大会になるかもしれませんよ。」

 

「それはある意味では面白い事になりそうですが・・・・」

 

男だから〜とか女だから〜と言って縛りつける考え方は否定されつつある。自分がやりたい事をやりたい様にやる。という時代が来るかもしれない。

 

「とは言ってもそうなるのは当分先の話になるでしょう。」

 

「そうですわね。」

 

と、互いに苦笑する2人だった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、ダージリンが聖グロに帰艦した時、戦車道の教練はローズヒップの暴走でグダグダになっていたのだが、それはまた別の話である・・・・・・・

 

 




※ダージリンvsコーディの模擬戦を割愛したのは時勢的なものとして書きづらい市街地戦となってしまう為です。申し訳ありません。
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