第五話は表題の通り聖グロ戦その1です。
試合とは勝利だけが目的ではない
交流試合来たる!
久々に大洗市街で行われる戦車道の試合に市民達は突然の告知にも関わらず大いに盛り上がっていた。その期待を受ける彼女達は今・・・・
〜大洗学園艦居住区〜
早朝、武部沙織は低血圧で朝が極端に苦手な親友の冷泉麻子を起こしに来ていた。
「ほおらー麻子ー。おーきーなーさーいー!」
「うー・・・ねむい。」
布団を引っぺがそうとする沙織に頑強に抵抗する麻子。遅刻回数200回オーバーは伊達ではない・・・・。そんな彼女達の耳に轟音が鳴り響いた。外を見るとそこには主砲から煙を吹いているⅣ号戦車の姿があった。キューポラから上半身を出している西住みほが笑顔で
「おはようございます。」
と挨拶をした。
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〜大洗港〜
大洗で久々に行われる戦車道の試合という事で見物しようと市民達が会場に向かおうとする中に当の大洗学園の戦車道チームの姿もあった。彼女達に激励の声を掛けてくる人達。みほはキューポラから顔を出してそれに手を振るなどして応えながら昨日の作戦会議を反芻していた・・・・。
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・・・・・・河嶋桃の立てた作戦は、戦車一台が囮となり聖グロリアーナの戦車隊を四台が待ち伏せしているポイントまで誘導して袋叩きにするというモノである。作戦自体は悪くはないが、相手はダージリン率いる聖グロである。この程度の作戦、看破されてしまうかも?というみほの懸念を聞いた桃が怒り
「私の作戦は完璧だ!西住、志願ご苦労!貴様達が囮役だ!」
と言われそのまま囮役になってしまった。その後、聖グロから帰ってきたケノービ先生とスカイウォーカー先生も加わり、隊長を決める事になったのだが、真っ先に生徒会長の角谷杏が辞退(拒否とも言う)し、では!と河嶋桃が挙手をしたがこれにスカイウォーカー先生が
「却下だ」
の一言。硬直から立ち直った桃が理由を問うと、スカイウォーカー先生は彼女を見据えたまま
「さて、学園唯一の戦車道経験者という事で君には隊長となってもらったわけだが、まず明日の試合をどう捉えているかね?」
「えっと、どう・・・とは・・・?」
ケノービ先生の問いに困惑するみほ。そんな彼女に対し穏やかな笑顔でケノービは話をする。
「うむ、君を除いてこの学園の生徒達は文字通りの素人だ。そんな我々が聖グロリアーナに勝つ確率はどれくらいだと思う?」
ケノービ先生の質問にみほは考えるまでもなく答える。
「正直言ってとても難しいと思います。」
その答えにスカイウォーカー先生が苦笑して言う。
「はっきり言って良いんだぞ。『無理だ。』とな」
「そ、そんな無理だなんて・・・・」
「なに、今回は我が学園最初の練習試合だ。君以外戦車道の経験は皆無。なのに相手は名だたる強豪校ときた。負けて当然さ。だから絶対に勝とうとかそんなガチガチに構えなくても良いというだけさ。」
今まで黒森峰の勝利だけを目指す戦車道を受けて来たみほに、スカイウォーカー先生の考えは異質なモノであった。ケノービ先生が後をとる。
「まあ、そう言う事だ。とはいえ、やるからには勝ちたい。と思うのも普通の事だと思う。その上でどんなやり方を選ぶのか?が隊長となった君の役割だよ。」
「私の役割・・・ですか?」
「そうだな・・・。君がこれまでやってきた黒森峰のやり方を取るのも良し。また全く違うやり方を取るのも良し。君が一番望む戦車道を探してみたらどうかな?」
「私の望む戦車道・・・・」
「君が大洗に来る事になった経緯は知っている。そんな君にもう一度戦車道を取らせる事になったのは申し訳なく思っている。この通りだ。」
「すまない」
そう言ってケノービ先生とスカイウォーカー先生はみほに頭を下げる。
「そ、そんな頭を上げて下さい。」
困惑し恐縮するみほ。
「その上で難しいかも知れないが、先にも言った君の望む戦車道で皆を導いて欲しい。」
「導くだなんて・・・私に・・・」
「そんなに堅苦しく考えなくても良いぞ。
「戦車道を楽しむ・・・」
「君一人で考え込む事もない。何かあったら周囲の皆に相談していけば良いだろう。無論、私達でも構わないがね。」
戦車道を楽しむなんて発想は今まで考えた事も無かった。どうしても勝つ方法を考えてしまうみほ。だったらむしろ明日の作戦の事を聞いてみようと思い質問してみる事にした。
「あのう・・・明日の作戦の事なんですけど・・・」
「ふむ、伺おう」
二人に明日の作戦を説明し、みほ自身の懸念も伝える。
「なるほど。君の懸念はもっともだ。聖グロリアーナのダージリンなら看破してくるだろう。」
腕を組み顎の髭をさすりながらケノービ先生が肯定する。
「だが、この作戦自体はシンプルで悪くはない。第一、初心者だらけのメンバーで複雑な作戦を実行するのは難しいぞ」
「そう・・・です・・・よね・・・」
素人集団である大洗学園に聖グロリアーナが看破出来ない程の作戦行動は難しいと指摘するスカイウォーカー先生。その指摘ももっともな事で聖グロリアーナの裏をかく作戦を実行出来るかは・・・・。思案に耽る彼女にケノービ先生がアドバイスする。
「ではこう考えたらどうかな?作戦が読まれている事を前提に
「次の手段・・・」
「まず自分が相手の囮作戦を見破った際にどう動くかをイメージするんだ。そして今度はその見破った相手にどう対処するかを考える。将棋や囲碁をやる者がよく自分一人で駒や碁石を動かしているだろう?あれと同じさ。」
「私なら・・・」
「そしてその動き方をあらかじめ西住君から皆に伝えておけば、皆もそこまで慌てずに動く事が出来るはずだ。」
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「・・ずみどの?西住殿?」
秋山優花里の声にハッとするみほ。どうやら考え込んでいてボーっとしている様に見えたらしい。
「大丈夫ですか?何か考え事でも?」
そう問うてきた優花里に大丈夫と言おうとしたが、
(秋山さんは自身が戦車好きと言っていてスペックはもちろん戦史等にも明るい。なら
と思い直した。
「はい、秋山さん。今日の作戦の事で・・・・」
みほは優花里に作戦が読まれる可能性があると言った。
「なるほど。そういえば西住殿は昨日それを言いかけて生徒会の河嶋殿にキレられてましたね。「私の作戦は完璧だー!」って。」
「完璧な作戦などあり得ない。特に実行する私達が素人なら尚更だ。」
戦車を運転しながら麻子がやや眠たそうな声で指摘する。
「みぽりんは何か考えてるの?その・・・作戦がバレてる場合の時とか?」
「はい・・・考えてはいるんだけど・・・」
沙織の問いに遠慮がちに頷くみほ。
「でしたらその際は遠慮なくその策を実行して下さい。隊長は西住さんです。私達は西住さんに従います。」
「その通りです!」
「そうだよ!自信もってみぽりん!」
「西住さんの指示に従う。」
Ⅳ号の仲間達に励まされたみほは、この仲間達とならやっていけるかもしれない。と希望をもって前を向いた。
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〜大洗女子学園対聖グロリアーナ女学院 練習試合集合地点〜
「おはようございますサティーン学院長。本日は学園長のパルパティーンが所用の為、私が代表として挨拶させて頂きます。」
「おはようございますケノービ先生。本日は宜しくお願い致します。」
二人ともやや照れながら挨拶を交わす。尚、パルパティーン学園長の所用とは本日の為に大洗の商工会や観光協会の者達と共にこの試合を観戦に来たお客への対応に奔走しているのである。
試合前の挨拶の為、両校の隊長、副隊長、車長(リーダー)が審判の前に整列している。ダージリンが大洗の戦車を見て
「
と評し笑いを堪えていたが、それには理由がある。Ⅳ号戦車は外見は普通だが中はクッションや芳香剤、更には鏡と女子用控室とも言える仕様になっていた。バレー部(仮)の八九式は戦車の至る所に『バレー部復活!』の文字が描かれていた。歴女チームの3号突撃砲は真田の赤備えカラーに新選組のダンダラ模様のコラボ、正面に金の鷲のエンブレム車体後部に幟旗。一年生チームのM3中戦車(Lee)は全身ピンクの塗装。生徒会の38(t)に至っては『金』であった・・・。戦車好きの秋山優花里はこれに悶絶していたが西住みほは「楽しくて良い」と評していた。
ケノービとアナキンもこれには何も言わなかった。これは彼らの前世における『クローン大戦』にて乗機である『デルタ7ジェダイ・スターファイター』や『イータ2ジェダイ・インターセプター』のカラーリングを各々で変えていたし、クローン達もそれぞれの機体に独自のノーズアートを施すなどしていたからである。
審判の試合開始の宣言で互いに礼をしそれぞれの配置場所へと向かう事になっている。ケノービは皆を集めて最後の打ち合わせを始める。
「皆、知っての通り今日の相手は強豪校中の強豪校だ。胸を借りるつもりで頑張ってきてくれ。試合中の指揮に関しては西住君に一任する。」
「はい。皆さんよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるみほに皆も「よろしくお願いします」と頭を下げる。ケノービが頷き話を進める。
「では西住君。今回の作戦についての最終確認を。」
「はい。今回の囮作戦ですが、やっぱり読まれてしまう可能性が高いと思います。」
その一言にさっそく発案者が声を荒げる
「なんだと!?作戦は完ぺ「だからです。」な、なに?」
そんな桃に対して完璧だから読まれるというみほ。
「完璧な作戦というのは逆に言えば
「だったらどうするんだ!?今更作戦を変えるとでも言うのか!?」
苛立ちそのままをみほにぶつける桃。
「いえ、作戦はそのまま実行します。」
「な、なにぃ?」
「今更作戦を変える訳にもいきませんし、何よりこの作戦は私達と聖グロの実力差を埋められる
「う、うむ。わかってるじゃないか。」
照れて片眼鏡に手をやる桃。そんな彼女を横目に見つつ生徒会長の杏が質問する。
「んでも作戦読まれちゃってんだよね?そこんとこどうすんの?」
「はい。あわよくばここで出来るだけ相手を叩いておきたいのですが、それが出来なくても相手をそのまま大洗の市街地に誘い込みます。」
「なるほど。地の利を得ようと言う訳か。」
ケノービが頷く。
「はい、そうです。こちらが有利な点をどんどん利用しましょう。」
みほの作戦説明に感銘を受ける大洗の生徒たち。それぞれ頷き「いけるかも」といった声も上がる。
「では皆、時間だ。健闘を祈る。
ケノービの言葉にキョトンとする一同。
「ふぉーす?何ですか?それ?」
一年生チームのリーダー、澤梓の質問に皆が頷く。
「なに、ちょっとしたおまじないみたいなものだよ。」
ケノービは笑顔でそう答えた。
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〜予想会敵ポイント〜
囮作戦の要であるⅣ号は聖グロが通るであろうポイントで停車している。現在、みほは優花里を伴って偵察に出ていた。
「来ました!西住殿!・・・・マチルダ4、チャーチル1。聖グロの全車両です!」
「では、Ⅳ号に戻りましょう!」
そう言って二人はⅣ号へと駆け戻り作戦を開始する。
「冷泉さん、エンジン始動して下さい。」
「はい。」
「華さん、砲撃準備。目標は先頭のチャーチル戦車です。」
「はい!」
照準を合わせ先頭のチャーチル戦車に向けてトリガーを引く華・・・・轟音とともに放たれた砲弾は惜しくも命中とはならなかった。聖グロの戦車隊が一糸乱れぬ回頭を見せこちらに向かってくる。どうやらエサに食いついた様だ。
「冷泉さん!敵が来ます!砲撃に当たらない様にジグザグ運動で指定ポイントまで行ってください!」
「りょーかい」
程なくして追撃しているマチルダ、チャーチルからの砲撃が開始される。そんな中みほはキューポラから身を乗り出して後背からの砲撃を冷静に見極めている。逆にその姿を見ていた沙織の方が青ざめた顔でみほに叫ぶ
「み、みぽりん!危ないよ!?」
そう言われて顔を出すだけにとどめるみほ。運が良いのか麻子の操縦技術が高いのか一発の被弾もなく、まもなく指定ポイントに着くというところまで来た。
「会長、間もなくポイントに到着します。」
「はいよー。ご苦労さん。」
・・・・Ⅳ号から高台にいる大洗の戦車隊が見えたと思った瞬間、その大洗の戦車隊からの一斉砲撃が始まってしまった。
「は、早い!?私達と聖グロの見境がついてないのですか!?」
至近弾で揺れる車内で優花里が叫ぶ。
「ええー!?ちょっと待ってよー。我味方!我味方!」
沙織が無線機にそう叫ぶが砲撃が止む気配がない。
「どうしましょう?後ろの聖グロに反撃しますか?」
そんな中、華が反撃するか聞いてくる。
「いえ、ここで砲塔を旋回させると弾が当たってしまうかもしれません。ここは味方との合流を急ぎましょう!冷泉さん!」
「ほい」
落ち着いて操縦している麻子がみほの指示に従って味方のいる高台へと向かう。ここまで双方命中弾無し。囮作戦第一段階は失敗と言ってもよかった。みほが通信機を入れる。
「皆さん。作戦の第二段階に移ります。大洗市街地に向かって移動を開始して下さい。」
「(ゴン!)ごめんねー西住ちゃん。かーしまがテンパっちゃてさ。」
何やら鈍い音が聞こえ、杏がみほ達に謝罪する。程なくして味方からの砲撃が止み、各々大洗市街地へと向かおうとしていたが、生徒会の38(t)の履帯が外れ動けなくなり、1年生チームはなんと戦車から降りそのまま逃げ出してしまい、聖グロの放った砲弾が命中し、M3は撃破されてしまった。38(t)は運良く見逃されたようだが、しばらくは行動不能。大洗の戦車隊は現状3台だけになってしまった。だが、みほは落ち着いて皆に指令を出す。
「BチームとCチームは待ち伏せをお願いします。これより『もっとコソコソ作戦』を開始します!」
大洗女子学園にとって地の利のある市街地にて第2ラウンドが開始されようとしていた・・・・・・。
次回予告
聖グロリアーナを市街地に誘い込んだ大洗女子学園。戦いは隊長車同士の一騎打ちへと進んでいくのであった。