創作ウマ娘:パンダトレノ   作:ふゆうさぎ

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筆の乗りが悪くて放置するのも悪いんでできたところまでで投稿します。



12話.迫る青

「ってことで、ライスちゃんの連絡先ゲットしたのよ!どう?羨ましいでしょ!」

「へぇ……シル先輩がナンパですか」

「シル先輩流石っす!」

「シル……GLは私の趣味じゃねえぞ?」

「エイティ、お前の趣味は今はどーでもいいんだよ」

 

 

 バイト先であるガソリンスタンド、客足の無い暇な時間で私たちはシル先輩に休日の間にあった出来事を聞かされていた。

 内容は、飯を奢ってもらった上に目的地まで送ってもらったお礼をしたいと中央トレセンの生徒のライスシャワーさんに連絡先を貰った、ということだ。

 しかもこれは事務用ではなく個人宛の連絡先、シル先輩が浮かれるのもわからなくはない。

 

 

「それにしても走り屋仕様の車によく文句も言わずに乗ってくれましたね」

 

 

 私が聞くと、シル先輩は鼻を高くしながら「よくぞ聞いてくれた」とでも言わん顔で、そのままの言葉を言ってきた。

 

 

「よくぞ聞いてくれたなパンダ!ライスちゃん、『揺れるのはお姉さまの車で慣れてるから大丈夫だよ。それに、シルビアさん運転上手で安心できるよ』……なぁーんて言ってくれたんだぜ!あのライスちゃんがだぞ!?しかもとびきりの笑顔で!信じられるかよ!クゥーッ!」

 

 

 ハチと一緒にクゥーッと叫び謎のポーズをするシル先輩。

 このハイテンションに「はぁ……そうですか」としか返せなかったのは、私がそもそもそのライスさんという人のことを知らないからだ。

 エイティ先輩に至ってはシル先輩の姿に浮かれすぎだと呆れ返っていた。

 

 

「んでぇ?浮かれてるところ悪いけど、ライスちゃんと次会うのはいつなのよ」

「……どうせエイティのことだ。邪魔する気だろ」

「人の恋路を邪魔するほどいい性格はしてねぇって。単純にどんな感じでお前がデートするんだろうなーって、見に行ってやろうと思ってヨ」

「こいっ!?そういうやつじゃ……って、やっぱ邪魔するつもりじゃねえか!」

 

 

 この野郎と額に青筋を浮かべたシル先輩がエイティ先輩に飛び付き頭をもみくちゃにしている。

 そんなシーンを店長が一喝したのは、わずか数秒後のことだ。

 

 バクシンオーさんとの一件以降、私にはバトルを申し込む輩が少なくなかったが、丁寧に配達帰りに千切ってやった。

 どれもバクシンオーさんやテイオーさんのようには早くなく、ただいつも通りに走っていたらいつの間にか消えていた、その程度だった。

 何人かをそんな感じで千切った後、バトルの申し込みはピタッと止まり、私の家電に知らぬ誰かから電話がかかってくることは無くなった。

 バトルなんてしたことの無かった私からすれば、ある意味いつも通りの生活に戻ったと言えるが、しかし心のどこかでは、また誰かと燃えるバトルがしたいと願っている気がして止まないのだ。

 

 

「なぁパンダ」

「ん……なにハチ」

「どうせお前、ライスさんの事知らないだろ」

「どうせって何よ。……まぁ、知らないけど」

「少しはテレビ観ろよ。……シル先輩とエイティ先輩には言ってないけど、実は私もライスさんに会った」

 

 

 私の首がプラズマダッシュモーターが内臓されているかのように高速でハチの方を向き、少し焦ったような顔を捉える。

 あまりにニュルンと私の首が動いたせいか、ハチの口から「うわっ」と出たのは聞かなかったことにする。

 

 

「……取られたってこと?」

「そんなカンケーじゃないって。だって私が会ったの金曜日の夜だし」

「先輩より先じゃん。連絡先とかは」

「貰ってないっての。てか、そういうお話じゃなくって。……パンダ」

「何?」

「……近いうちにまたバトルの申し込みが来るかもしれないから、気を付けた方がいい」

 

 

 ハチの真剣なまなざしが私の目を穿つ。

 しかもハチの肌には初夏には似合わぬ色の汗が垂れていて、私はそれがどういう事かを聞こうとした所で、突然頭頂に激しい衝撃が加わった。

 痛みに耐えれず頭を抱えてうずくまるが、それはどうやらハチも、そして先ほどまでじゃれていたシル先輩とエイティ先輩も同じようで、私たちに何が起きたのか、すぐに理解できた。

 

 

「お前たち……少しは駄弁ってもいいが、今はバイト中だろうが。客が来たらすぐ動けるようにはしとけよ」

「は、はい……」

 

 

 店長の大きなげんこつが私たち4人を襲ったのだ。

 あれ絶対に人間の出せる威力じゃないでしょなんて言えるわけもなく、私たちは帽子を整え、来たお客に「っしゃーせー」というだけのバイトをこなしていくのだった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 夜の碓氷峠、そこではある一人のウマ娘がタイムアタックを行っていた。

 道脇で応援で盛り上がるギャラリーを横目に、そのウマ娘はインカムからの情報をもとに加速して、減速して、数多くのコーナーを駆けていく。

 

 

『もうちょいでC121!対向ウマ無し、全力で行きな!』

「うん、お姉さま!」

 

 

 C121、碓氷峠で最も難しいと言われるコーナーだ。

 入り口は広いのに出口は狭く、抜けられるラインは多いが、最速のラインは一本しかない。

 オーバースピードや追い抜きを敢行すれば、もれなくガードレールとランデブーする魔のコーナーなのだ。

 しかし、このウマ娘は

 

 

『ライス、ゴーッ!』

 

 

 直前で減速をして、インカムからの掛け声と同時に足の回転速度を限界まで叩き上げ、一気に加速してコーナーを駆けていく。

 インのギリギリを通り、出口のアウトのギリギリを加速しながら駆け抜けるという、このコーナーにおいて危険という概念を持っていればできるバズが無いことを、このウマ娘はやってのけるのだ。

 その光景にギャラリーたちも歓喜し、叫ぶ。

 

 

「流石碓氷のブルーインパクトだ!こんなバカみたいなスピードでC121を走るやつは他にいねぇよ!」

「信じらんねーよ、あんなスピードで突っ込むのを見ると、こっちがヒヤヒヤしちまうぜ」

「絶対にあの子以外ここをあんなスピードで走れるウマ娘はいないだろうな……いや、だが……」

 

 

 歓喜の中、一人が賛美に淀む。

 この一人が言った「だが」は、この界隈にいる者ならば噂程度に誰もが知っていることだ。

 秋名のウマ娘、表のウマ娘界隈には決して出回らないようにメディアすらもが結託して隠している峠レースのダークウマ娘。

 

 

「もしだ。もしも秋名のウマ娘があの子……ライスちゃんとやったら、果たしてライスちゃんは勝てるんだろうか」

「お前……ファンは信じる物だ。だけど……」

「信じきれないのはわかる。噂じゃトウカイテイオーの次にはサクラバクシンオーも破ったウマ娘だ。これが本当なら、おそらく相当の身体能力の持ち主だろう」

 

 

 観客は黙って頷くしかない。

 目の前で消えていくテールの残光は不安げに消えていき、彼女の今の心象を現しているようで、それは観客にも不安を撒いていった。

 




ぜんっぜん筆がぁ…
やっぱ家出るのは性に合わないのかもしれない…
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