どうせこれから自由時間の少ない寮生活になるので…それと、単純にネタが無くて停滞してるよりかは完成している限りでも投稿すべきと考えたからです。
休日のある日、中央トレセンの校門前に学校を前にしては相応しくない音を出す一台の車が現れた。
お出かけをしようとしていたウマ娘たちはその車が教員たちの誰かの車だろうと思ったらしいが、車窓の向こう側にいた人物が全く見たことの無いウマ娘だったことに困惑していた。
その見たことの無いウマ娘とは…私、シルビアの事だ。
私は今日、ここ中央トレセンに通っているウマ娘とデートする予定となっていて、そのお迎えでここにいるのだ。
そのウマ娘とはもちろん
「あ、シルビアさん~!」
天使…もといライスちゃんである。
大きな耳を揺らしながら、ワンピースを靡かせ手を振りながら私の車に駆け寄ってくる。
私も窓を開けて軽く手を振って返すと、ライスちゃんは満面の笑みを返してくれた。
「どうぞライスちゃん。入って入って」
「お、お邪魔します…あれ、以前よりもきれいになってる?」
「おっ、早速気づいてくれたんだ。これ父ちゃんの車だからさ、ライスちゃんが乗るならって純正戻しとクリーニングやったんだ」
「えっと…ライス、車のことはよくわからないけど……きっとすごいことだよね!こんな短期間にこんなにきれいにしちゃうんだから。それにライスのためにだなんて……ありがとう、シルビアさん」
「いやいや、それほどの事でもないよ。ほら、乗ってよ」
「うん、お邪魔します」
バケットから純正に戻ったシートにちょこんと座ってちゃんとシートベルトをしたのを確認して、私もシートベルトをしてギアを一速に入れた。
残念ながら見つからなかった純正マフラーに代わってレプリカマフラーを付けている父ちゃんの車、S13シルビアはブゥンとやかましい排気音を立ててノロノロと動き出す。
安全運転で行こうと事前にメールでライスさんには伝えているけれど、流石に運転しててこの遅さは恥ずかしくなってきてしまう。
広大なトレセン学園の敷地を抜けると、私はアクセルを踏み込んで一気に法定速度ギリギリにスピードを引っ張っていく。
ライスさんが「ひゃあっ」と少し呻いたけれど、それすらも可愛いライスさんはやはり天使だと思う…そんなことを考えていると、いつの間にか見覚えのある車が後ろからついてきているのに気が付いた。
ルームミラーを目を凝らして見てみれば、あれがエイティの家に置いてある180SXだということに気が付いた。
私はライスさんにばれないように舌打ちして、法定速度を無視してアクセルをさらに踏み込んだ。
「きゃっ…!し、シルビアさん!スピード出しすぎだよ!?」
「ごめんライスさん、ちょっと後ろがうっとおしくてね。あいつだけ撒いたらすぐにスピード落とすから」
「後ろ…?あの車……あれ?あの車の運転手って、以前シルビアさんと一緒にトレセンに来てた」
「そ、私の同級生。私たちの邪魔しに来てるみたいだからさ。ちょっと飛ばすよ!」
「う、うん!」
ガオッっと先ほどとは打って変わった音がS13シルビアを突き動かし、そして180SXを突き放した。
しかし、それに合わせるように180SXの方も加速してきて、あっと今に追いつかれる。
「あいつっ、人の心とか無いのか!?」
ギャギャギャとタイヤを鳴らして対向車も誰もいない交差点を曲がり、すぐに加速しようとするがS13シルビアはなかなか加速してくれない。
私は焦りルームミラーを見るとすぐ後ろには180SXがいて、向こうもノロノロと走っていた。
どうしてどちらの車もこんなに遅いのだろうと思ったが、そんなことよりも。
「あいつ~!」
私はハザードランプをたいてドアを蹴とばすように開け、すぐに180SXのもとに駆け寄る。
向こうも私の車のすぐ後ろにハザードランプをたいて停車した。
車からエイティが出てきてすぐに怒鳴ろうとしたが、それよりも先にエイティが私の携帯を見せつけてきた。
どうしてエイティが私の携帯をと思ったが、ポケットをまさぐっても私の携帯が無いことがそれを物語っていた。
そして、エイティの青筋の浮いた顔も。
「えっと……ありがとなエイティ!じゃあな!」
「待てよシル…なんか他に言うことあるんじゃぁねぇのか?ンン?」
「え、エーット……?」
「邪魔しに来やがってとか思って突き放したんだろうが!このやろう!」
「お、おいやめろ!せっかくセットした髪が!」
「自業自得だバカ!誰がお前の女のためにわざわざ群馬から東京まで車で来てやってると思ってんだ!」
私の髪をくしゃくしゃにしてエイティは怒った様子で180SXに乗り込んでいった。
少しバックして私の車の横をすり抜けていくと、止まることなくそのまま姿を消していった。
悪いことしちゃったなと頭を掻きながら、車に戻る前にエイティに謝罪メールをしておこうと携帯の画面を点けると、真っ先に現れたのはエイティからのメール通知。
どうせ私に文句の一つや二つ書いたんだろうなと思い、私はそのまま画面を消してポケットに突っ込んで、車に戻った。
「ごめんねライスさん。悪いのは私だったみたい。忘れ物届けてくれたんだけど、怒って帰っちゃった」
「え!ご、ごめんなさい!ライスがシルビアさんを誘ったから…」
「いやいや、絶対に違うって!これは私が悪いのであって、ライスさんはこれっぽっちも悪くないよ!」
「で、でもライスが誘わなければシルビアさんはお家から出ることもきっと無かっただろうし、だから忘れてきちゃったのはライスのせいで…」
「違うよ!悪いのは私!……本当のことを言うと、ライスさんとこうやってお出かけするのがすごく楽しみで…浮かれてたんだ。だから、忘れたのは私自身のせい。ライスさんは悪くない」
全力で首を振ってライスさんが悪くないことを身体で伝えていると、高速でスライドする視界の中にライスさんが微動だにしていないのが映った。
自分のミスを、知らなかったとは言え人のせいにする私に呆れてしまったのだろうかと、首を振るのを止めて見ると、そこには少し紅くなっているライスさんの顔があった。
「ぇ、ぇっと……その……ライスも、楽しみにしてました……」
「…ええと……行こうか」
「う、うん…」
互いに火が出そうなほど紅くなる顔を見られないように背けながら、私はライスさんとお出かけしに街に繰り出していったのだった。
ここでエイティのメールを見なかったことを、のちに後悔することなど知る由もなく…
登場車紹介
パンダトレノ・インプレッサ(GC8 WRX H6年式)
ハチゴー・カローラレビン(AE92 GT-Z 前期型)
シルビア・シルビア(S13 K's 後期型)
ワンエイティ・180SX(タイプX 後期型)
シンボリルドルフ・RX-7(FC3S GT-X 後期型)(トレーナーの物)