2週間ぶりです。
ようやくアルバイトも始まり、社会復帰を目指しての一歩を踏み出せた所で投稿です。
ウナ丼さんのRZ34レビュー動画を見てモチベーションが上がったので、バイトもこの小説の投稿も両方頑張ります!
えいえいむん!
土曜日、夜9時。
既に辺りは暗く、交通量の少なくなった道を私たち4人を乗せたエイティ先輩の車、180SXが駆けていく。
運転はもちろんエイティ先輩で、助手席にシル先輩、後部座席には私とハチが乗っている。
私は車に乗る前に勝負服に着替えたから後で着替える手間は無く、ライトはラゲッジスペースに置いてある。
特段話すこともなく、運転に集中しているエイティ先輩の気を散らすことの無いように、私はシル先輩に話しかけた。
「シル先輩。この勝負のスタート地点って旧道の方のテッペンからですよね?」
「ああ。ライスさんがそう指定してきたからな」
「昔の走り屋さん達って、碓氷峠のテッペン行くのに碓氷峠を直接通ってたって母さんから聞いたんです。もう芝になってる今って、どうやって行くんですか?」
「芝が敷かれる前は軽井沢までの一番の近道は碓氷峠だったんだけどな。今碓氷峠のテッペンに行こうとすると、高速を除けばどうしても今走ってるこの道、国道18号の碓氷峠バイパスを通らなきゃいけないんだ。」
「へぇ……どのくらい距離って違うんですか?」
「実距離はわからない。だけど、碓氷峠を使えばまっすぐ駅まで来れるのを、駅の向こう側まで行って折り返して駅に行く道だから、実際はかなり遠回りしてると思うな」
「……ガソリン食いますよね?」
「エイティ、この車って」
「ハイオク」
「だそうだ。割り勘だけど少し高くなるな」
「えぇ~……今月ピンチなんですけど」
こんな他愛もない話をしている中、流れていく景色はどんどん山の中へと進んでいき、曲がりくねった道が多くなり始める。
時間も遅く、対向車もいない道をエイティ先輩の車が駆けていく。
喧しいと思うエキゾーストに、乗せてもらっているんだからと思うことで口を噤み、視線を外から内に、ハチの方に向ける。
ハチはハチで何か考え事でもしているのか、先程からスマホの画面をスクロールしてばかりだ。
「ハチ、何見てるの?」
「!い、いや。なんでもないよ」
「何でもないってことは無いでしょ。トレーニング内容の確認?」
「……そんなところ」
「ふぅん……」
また妙にはぐらかされてしまった。
最近のハチはどこかよそよそしい。
いつも隠れて何かをしていて、私のみならず、シル先輩たちがそれを聞いても必ず濁されてしまう。
今だって、スマホの画面に明らかにスケジュール的なのが映っていたのに濁されてしまった。
少しもやっとするが、それについてはこのバトルが終わった後にしよう。
しばらく無言の時間が続き、それは周りが明るくなり始めるまで続いた。
ぽつぽつとしか無かった街灯が一気に増え、目の前には軽井沢駅まで曲がって何メートルという標識が現れた。
エイティ先輩は「なかなか遠かったな……ちょっと疲れたぜ」とつぶやき、信号で止められたタイミングでペットボトルをあおった。
そんなエイティ先輩にシル先輩がねぎらいの言葉を投げかけると、エイティ先輩は少し目を細めて、視線を正面からシル先輩に移した。
「シル。今日はどっちを応援するんだ」
「……突然どうしたんだよ。運転手なんだから、ちゃんと前見てくれよ」
「こんな時間に車なんか前にも後ろにもいやしない。答えろよ」
「……どっちって言われても。私はただ、バトルの仲立ちをしただけで……」
「……」
エイティ先輩は無言で視線を正面に戻し、青になった信号を軽井沢駅に向かう方向へと曲がる。
集中力が切れかけているのか、それともシル先輩の言葉が気にくわなかったのか、エイティ先輩の運転が少しだけ荒くなった。
ハチも突然のことに驚いたのか、エイティ先輩を見てから私に「喧嘩か?」と目で聞いてきた。
私はわからないと首を横に振ることしかできなかった。
「パンダの立場はどうなるんだよ、ええ?」
「……それは」
「シル。お前、ライスちゃんの前だからっていい顔したくてダチをないがしろにしてないか?」
「そ、そんなこと!」
「ホントに無いって言えるのかよ」
エイティ先輩は緩やかにブレーキを踏み、ハザードを焚いて路肩に車を停めた。
そして顔をしっかりシル先輩に向けた。
「お前、本気でパンダが勝てるとでも思ってんのか?」
「……」
「どうなんだよシル!はっきり言ってみろよ!」
「そ……れは……」
突然の罵声に私の背筋がピンと伸びる。
ハチはお尻まで跳ねさせていた。
エイティ先輩の表情はあくまで冷静だが、ハンドルを握る手に力が込められているのを見れば、その心境は容易に想像できる。
シル先輩はエイティ先輩の言葉に何も返すことが出来ないのか、うつむいて表情を隠してしまった。
そんなシル先輩の姿にやれやれと肩を落としたエイティ先輩は、シル先輩の言葉を待たずに続ける。
「勝てるわけねーんだよ、碓氷なんてあんな難しいコースを生まれて初めて走るパンダが。そりゃ、パンダのすげー才能とテクニックは今までずっと見てきたから私だってわかるよ。でも、それとこれは話が違うことぐらいお前だってわかるだろ!」
勝手に負け確宣言をされてしまうが、仕方のないことだと私自身も思っている。
碓氷峠がどういうコースなのかを自分で調べてみたけど、初めてでバトルをするのは無謀とも思えるようなコースだった。
エイティ先輩の言葉は、的確だ。
「いくらパンダが才能に溢れていようが、テクニックが凄かろうが、慣れって問題はどうしようもねー。いくら秋名で敵なしだったパンダだって、練習もなしでぶっつけ本番なんてよ……勝負にならねーって!いくら色ボケしてるお前だって、それくらいの事わからねーわけないだろ!?」
黙ってゆっくり頷くシル先輩に、エイティ先輩はため息をついた。
それが呆れとかではなく、単に理解を示したシル先輩をこれ以上説教しなくても済むという疲れによるものだというのは、後ろから聞いていた私とハチもわかった。
「そりゃさ、惚れた男……じゃないな、シルは。誰だって惚れた女には弱いさ。別にそれ自体に文句つける気はないけど……だけど、大切なことを忘れんじゃねーぞ」
「大切なこと……」
「ダチを売るようなことをするなってこと。ダチを大切にしろってことだよ」
「ダチを……」
「そうだ。これは正に売るって行為そのものだぜ。だからさシル……もうこんなこと終わりにしようぜ」
「……」
「……悪いけど俺は……シルがここでバトルを辞めるって言ってくれなきゃ、俺はお前と友達やめるからな……!」
「!……そう、だよな……」
シル先輩は俯いたまま鼻をすすり、しばしの沈黙の後に「わかった」と一言言い顔を上げた。
エイティ先輩はその返事に一安心したらしく、シートに背中を体重をかけるようにもたれこんだ。
そして、ほんの少し休んだ後に私たちに顔を向け言った。
「……聞いての通りだパンダ。今回のバトル、なかったことになったから」
シル先輩は車から降りて、助手席を前にスライドさせた。
降りろ、ということなのだろう。
「パンダたちは駅で待っててくれ。ライスちゃんたちには俺たちで話つけてくるから」
シル先輩の行動を見て意図を汲んだのかハチはすぐに降りたが、私はその場を動くつもりはなかった。
怪訝そうに私の顔を覗いてくるエイティ先輩の名前を呼んで、私はこう告げる。
「エイティ先輩……悪いですけど、私、バトル辞めるつもりないですから」
私の言葉を聞いた瞬間に、シル先輩とエイティ先輩は大きく口を開けて呆けてしまった。
聞いているのかわからない二人だけど、私は言葉を続けた。
「これは私が走りたいと思ったから走るんです。これは……私の意志です!」
自分でもわかるほど、私は碓氷に来てから燃えている。
過去一番と言っていいほどだ。
シル先輩を騙したライスシャワーさんが許せないというのはもちろん、この燃えている感情の内訳の一つとして挙がっているのは間違いない。
だけど、それ以上に燃えているものがある。
正体はわからないけど、確かに胸の中を熱くする何かがあるのは確かだ。
碓氷に来て、体が反応したとも言えるこれを言葉にするならば、ウマソウルとやらが、因縁でも感じているのかもしれない。
例え負けることが目に見えているバトルだとしても、全力で挑むだけだ。
その為の私のココロのエンジンは、十分に温まっている。
ウマソウル(4-AG)
なんというか…ほぼ原作まんまの回でした。
ハチに関しては前々回の件があるのでこんな感じになってます。
それと、感想欄で接触等についてのご意見がありましたが、そのあたりはちゃんと考えていますのでご安心下さい。(ガムテープデスマッチはそこが問題で飛ばしました)
今回これについて説明しようと思ったのですが入る余地が無かったので、次回辺に説明入れたいと思います。