創作ウマ娘:パンダトレノ   作:ふゆうさぎ

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悩んだ末2ヶ月近くかかってしまった…すまんかった。
どうやったらシル先輩を煩悩に負けた哀れなヤツで済ませられるか、とても難しかったです。
解決できませんでしたけど()



18話.VSライスシャワー、直前

 エイティ先輩たちとの相談を終え、再度走らせた車は遂に碓氷峠の頂上…入口に着いた。

 そこには「碓氷峠 入口」と書かれた真新しい看板と、錆だらけの門があった。

 そして、その隣には蒼い一台の車が停まっていた。

 

 

「…シルエイティ」

 

 

 ポツリと呟いたハチは、何かを思い出したように言った。

 

 

「あれですよシル先輩。間違いないッスよ。あれにライスシャワーさんがいます」

「ホントかハチ?なんでそんなことを?」

「ライスさんのライトがブルーのシルエイティモデルだったんです。間違いないですよ」

 

 

 エイティ先輩はその蒼い車、シルエイティから車一台分を空けた隣に車を停めた。

 まずエイティ先輩とシル先輩が降りて、私とハチが助手席を倒して車から降りる。

 シルエイティの中にある人影も、私たちの様子を見てか車から姿を現した。

 現れた二人と私は一切面識がないが、片方はシル先輩と、もう片方はエイティ先輩とハチと面識があるようだった。

 構図的に、シル先輩と面識のある相手がライスシャワーさんということだろう。

 

 

「久しぶりねお二人さん。この前、群馬トレセンではどうも」

「…パンダがやるって言ってくれたんだ。あんたもトレーナーの端くれなら礼くらい言っとけよ」

「あら、トレーナーの端くれじゃなくてトレーナーよ?それと、私は礼もできない大人じゃないわ」

 

 

 何やらバチバチと視線で火花を散らすライスさんのトレーナーさんとエイティ先輩をよそに、シル先輩とライスさんは互いに目を合わせることをしないで話し合っていた。

 

 

「シルビアさん…」

「ライスさん。私、お願いは叶えてあげられたけど…応援はできない」

「…うん」

「私はパンダを応援しなくちゃいけない。パンダにサイテーなことを押し付けちゃたけど、それでも私はパンダの先輩で、友人で…チームのリーダーだから。やるべきことをキチンとやらなくちゃいけないんだ」

 

 

 シル先輩はそれだけを言うと、ライスさんが首肯での返事をしたのを見て踵を返し私達の所へ戻ってきた。

 ライトの位置調整や固定用のベルトの締め調整をハチに手伝ってもらいながらしていると、シル先輩が私の正面に来た。

 そして、頭を下げた。

 

 

「悪いなパンダ…こんなことになっちゃって。改めて謝らせてくれ。…ごめん」

「謝らなくてもいいですよシル先輩。せっかくのいい経験ができる機会なんですから」

「いい経験?そりゃどういう意味だ?」

「ほら、私って秋名以外走ったことないじゃないですか。だから、他を知るっていう意味で」

「あ、ああ…?でも、秋名以外の峠を経験するのに…わざわざこんな負け確のバトルでなんて…」

「負け確ってほどじゃないですけど、やっぱ勝率は低いですよ。相手はここの熟練者なわけですし」

「…勝率が低い?」

 

 

 シル先輩が私の言葉に首をかしげた。

 私の言葉の理由を伝える寸前に、エイティ先輩と話し終わった様子のトレーナーさんが声をかけてきた。

 

 

「ねえ。今この娘(エイティ)から聞いたんだけど、パンダちゃんはここ走るの初めてなんだってね」

「はい。車とか運転できれば下見に来れたんですけど。私まだ未成年ですし」

「ま、学生だし。そこはしょうがないわよね。それじゃ、バトルのやり方を説明するわ」

「バトルのやり方?並走じゃないんですか?」

 

 

 聞くとトレーナーさんは首を横に振った。

 

 

「見ての通り、碓氷峠は道幅が狭いわ。しかも走り始めればコーナーからコーナーまでの距離は短いし、コーナーはタイトなものが多い。こんな所で並走なんて、ガードレールや岩肌への接触、何より走行中のウマ娘同士の接触はトレーナーとして当然憂慮すべきことだわ。だから私たちは予め、先行と後追いを決めて走ってるわ」

「先行後追い方式…母さんから聞いたことがあります」

「なら話は早いわね。勝敗は先行が後追いを千切るか、後追いが先行を差すのどちらか。決まらなかったらポジションを入れ替えて最初から。これを決着がつくまで繰り返すの。私たちは地元だから、ポジションはパンダちゃんが決めていいわ」

「わかりました。それじゃあ…」

 

 

 後追いで、そう言おうとした私の口は後ろから伸びてきたシル先輩の手で塞がれた。

 さらに、ちょっとこっち来い!と焦り気味のエイティ先輩に体を持ち上げられ、車の方に運ばれる。

 持ち上げられた私は車のシートに座らせられ、シル先輩とエイティ先輩が練ってくれた作戦を教えられた。

 

 

「パンダ!このルールなら一本目は絶対に先行にしたほうがいい!」

「私もシルの意見に賛成だぜ。この狭さなら差し切るなんてことは多分できないから、仮にパンダが先行を取れば二本目にもつれ込むのはほぼ確実だ。それなら練習を兼ねることもできる先行を一本目に取るのが安牌だと思うぜ」

 

 

 確かにそれなら勝率の高いバトルを展開させることができそうだ。

 私は少し考える素振りを見せてから、首を横に振ってシル先輩たちに言った。

 

 

「せっかくアドバイスしてもらったのに悪いですけど…私、一本目は後追いで行きます」

「な…」

「にィ!?」

 

 

 シル先輩とエイティ先輩は一度顔を合わせて、困惑したままの顔で私を見た。

 二人の頭に浮かんでいるクエスチョンマークは、額から流れる汗と共にどんどん増えていく。

 

 ウマ娘の峠バトルでは、初めてのコースなら最初は前を取って抜かれないように走りコースを知ることが定石だ。

 逆を言えば初めてのコースで最初に後ろを取るということはつまり、コースを熟知している先行者に千切られてしまうというリスクが大いにあるということだ。

 シル先輩とエイティ先輩のこの反応は、これを知っているからだろう。

 でも、私にはいいバトルをするための案があったから後ろを取ったのだ。

 私は後追いを選ぶことをトレーナーさんに伝えるためにシートから立ち上がる。

 それじゃ行ってきます、と言い残し歩き出そうとしたところでシル先輩に呼び止められる。

 

 

「待ってくれパンダ!」

 

 

 駆け寄ってきて私の腕を掴んだ。

 

 

「私…ようやく目が覚めたよ。お前が後追いを選んだ理由は…私の顔を立てるために負けるためなんだよな。バトルの話を受けてくれた時から、わざと負けるために…こんなイヤな役を引き受けてくれたんだんだよな…?」

「それは…相手が目の前にいますから、今は答えませんよ」

「でも私は…こんな取り返しのつかないことをしてしまった。浮かれすぎて…バカになっちまってたんだ!…後悔してるよ」

「…?」

「俺たちの…秋名の誇りのお前が…こんなわけのわからないくだらないバトルで負けるところなんて見たくないよ…!」

「…???」

 

 

 だんだんシル先輩の言いたいことがわからなくなってきた。

 私は本当は、このバトルはシル先輩の言う通り良いバトルを展開しつつ負けるつもりだった。

 それはもちろん、初めて訪れたシル先輩の春に泥を付けたくなかったという心遣いだ。

 だけどその心遣いを、シル先輩はまさかイヤだと言ってきた。

 私は頭を抱えて、シル先輩に確認する。

 

 

「えっと…シル先輩。それってつまり…負けなくてもいい、ってことですか?」

「…な…ぬ!?」

 

 

 シル先輩が驚いた様子でのけぞる。

 エイティ先輩も今の会話が聞こえていたのか、私の言葉に頭を抱えてシートに寝込んでしまった。

 

 

「え?違うんですか?」

「い…いや。違くはないけど」

「?負けなくてもいいんですよね?」

「え、勝てるのかパンダ」

「いえ、わかりませんけど」

「え、えぇ…?」

 

 

 微妙に歯車の合わない会話。

 勝てるかわからないのに負けなくていいのかと聞く時点で、会話的に見ればだいぶ矛盾している。

 だけど、負けなくていい=勝ちではないことを、今の困惑した状態のシル先輩たちでは理解することはできないだろう。

 

 私はトレノの文字の刺繍が入ったキャップを髪をかき上げてからかぶり直す。

 腰のライトが動かないことを腰を左右に動かして確認して、リトラクタブルライトの動作確認とライトの点灯確認を済ませた。

 

 

「向こうも同じ2本足で走るウマ娘なんですから、向こうが走れるスピードでこっちが走れない道理はありませんよ。一か八かではありますけど、まあやってみます。見ててくださいよ」

 

 

 ぽかんとするシル先輩たちをよそに、私はライスさんのもとへと今度こそ歩いていく。

 ライスさんたちも既に準備を終えていたようで、ようやく来たわねとトレーナーさんに言われる。

 

 

「作戦会議が遅くなってすみません。私、後追いで行きます」

「…へぇ。面白いじゃない。わかったわ」

 

 

 トレーナーさんはライスさんのライトのベルトの締めとライトの点灯確認を済ませると、インカムを渡した。

 峠バトルにインカムとは?と聞いてみると、トレーナーさんはこう答えた。

 

 

「私は普段からライスのコドライバーみたいなことをドローンとインカムを使ってるのよ。このバトルでもいいかしら?」

「コドライバー…ラリーとかで運転手を助手席でサポートする方の事ですよね?」

「よく知ってるわね。曲がり始めるタイミングとか、ブレーキングのタイミングとかをドローンでリアルタイムで見ながら指示するってコトをしてるのよ」

「へぇ…面白いことしてるんですね。それでライスさんが全力を出せるなら、私は構いませんよ」

「…強気ね。ありがとうパンダちゃん」

 

 

 トレーナーさんはドローンを自動追従モードにして私の視界に映らない程度の高さまで飛ばした。

 インカムの音量も調節が完了したのか、トレーナーさんはライスさんにサムズアップを飛ばす。

 それを見たライスさんは頷き、私を碓氷峠のスタート地点へと案内した。

 

 

「じゃあ…始めるねパンダさん」

「…はい。よろしくお願いします」

「最初はゆっくり行くから、慌てないでついてきてね。一個目のコーナーを立ち上がった所から全力走行…そこからが勝負だよ」

「…わかりました。始めましょう」

 

 

 私は深呼吸をしてライトのダイヤルを回す。

 ウィーンと短いモーター音でリトラクタブルライトが展開し、パッとライトが点灯する。

 ライスさんも小さなツマミを捻り、蒼い車をモチーフにしたライトを点灯させた。

 

 互いにふぅ、と小さな息を吐いて、碓氷峠に向かって小走りで入っていく。

 遠くない一つ目のコーナーがあっという間に目の前に迫り、私の意識は一気に戦闘モードへと突入した。





碓氷峠バトルの描写は実際に碓氷峠行ってきてから書きます。
まあ今日行くんですがw
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