コロナの濃厚接触者になって隔離されてました。
隔離期間にシングレ読もうと思ってたのに、気づいたらクロスボーンガンダムを鋼鉄の7人まで制覇してしいました()
あと、うまゆるがやりやがったことに大変驚愕、そして歓喜していますw
私たちのバトルは、ゴール板を過ぎる前に終わった。
ライスシャワーさんがオーバースピードでコーナーに突入してスリップしてしまい、スリップした先にあったガードレールにぶつかりそうになったところを、なんとか間に合った私が腕を掴んで助けたところでバトルは終わった。
目の前でスリップしていってしまう様子を見るのは恐ろしく心臓に悪くて、もう二度と見たくない。
「大丈夫でしたかライスさん。結構なスピードで突っ込んでいきましたけど」
「……うん、ライスは大丈夫。パンダさんは?ガードレール掴んでたよね……?」
「ああ、これですか」
私は焦げた跡が残り破れてしまっているグローブを見つめる。
焦げて破れた布の隙間から見える鉄板に、母さんがまるでこうなることを予想していたのではないだろうかと思ってしまう。
このグローブはもともと勝負服には無かったけど、私が碓氷に行く前に母さんが渡してきた物だ。
母さんは「碓氷は急勾配だから、危ないと思ったらガードレールでも掴んで止まりなさい。それができるように細工してあるグローブよ。ちょっと厚いし重いけど我慢しなさい」と言っていた。
事実、このグローブの布と布の間には指の可動の邪魔にならないように薄いアルミ板が布の中に入れてあり、更に遮熱シートも内側にあるため、走行中にガードレールに掴まっても軽い火傷程度で済むようになっていた。
まだ少し熱の残っているアルミ板入りグローブを外せば、そこにあったのは火傷で少し赤く変色した私の掌だった。
「ぁ……ぱ、パンダさん……手が……」
「さっきからなんかヒリヒリすると思ったら火傷かぁ。明日には水ぶくれできそうなカンジ、やだなぁ」
「ごめ……ごめんなさい……ごめんなさい!ライスのせいで……ライスのせいでパンダさんが怪我を……ごめんなさい!」
「え、いやいや。謝らなくていいですよライスさん」
涙目で頭を何度も下げてくるライスさんに、どう対処すればいいかわからず困惑してしまう。
ライスさんがオーバースピードで突っ込まなければこんなことにはならなかった、そういう風に言えば確かに間違いではない。
だけどそうはならなかった以上、私たちは目の前の現実を対処するしかなかった。
仮にあのまま私がライスさんを助けず、ライスさんのエアバッグが作動したとしたら、私はそのエアバッグに弾き飛ばされていた。
そうなった場合、私は……いや、ライスさんもどうなっていたかわからない。
私が助かるためにやったこと、そう伝えるもライスさんは依然と謝るのを辞める気配はない。
どうしたら謝るのを辞めてくれるか、疲労している頭で考えあぐねているとき、ふと一人の顔が浮かんだ。
「……シル先輩を悲しませたくなかったから」
「……え?」
「ライスさんが怪我したら、シル先輩は悲しみます。だから、私はライスさんを助けました」
「シルビアさんの……ため?」
涙目で首を傾げるライスさん。
私は内心申し訳ないと思いつつ、シル先輩の名前を都合よく使う。
「そうです。だから、私にライスさんを助けなきゃって思わせた……そうですね、この怪我はシル先輩のせいですね」
「えぇっ!?」
あまりに横暴ではないか、ライスさんはそう反論する。
確かにこじつけ気味ではあるけれど、元を辿ればこのバトルの発端は、ライスさんのお願いを断れなかったシル先輩にあると言っても過言ではない。
もしシル先輩がライスさんのお願いを断っていれば、ライスさんのトレーナーさんからの宣戦布告を私が直接断らない限り実現しなかったはずだ。
つまり、これはシル先輩のせいなのだ。
「お詫びになんか奢ってもらいましょう。シル先輩のせいですから」
「そ、それでいいの……?本当に、それでいいの……?」
「いいと思いますよ。シル先輩、バトル前に『私がバカだったんだ!』なんて言ってましたし。発端が自分にあることを自覚してるんですし、問題無いですよ」
「い、いいのかなぁ……?ライス、なんか言いくるめられてる気がするよ……?」
「……気のせいですよ」
間違いなく言いくるめてます、心の中でそう呟きつつ走った道を引き返し始めた。
私たちの頭上で滞空しているドローンに「これから戻ります」と言い、私はライスさんの先を歩く。
急勾配ゆえに下るのは楽な碓氷峠だけど登りは正に地獄で、既に限界ギリギリだった私の足は段々痛みに苛まれ、登り始めてから5分程経った頃、ついに膝が笑い出す。
ライスさんの先を歩いていたはずなのにいつの間にか追い抜かれていて、だんだん距離が開き始めた。
私は一旦足を止めて膝に手をついて、肩で息をしながらライスさんを引き留めた。
「ちょ……ライスさん……まって……息が……」
「え……?ご、ごめんなさい……」
「いや……謝らなくても……いいです。私が、遅いだけですから」
息絶え絶えという言葉が似あう状況に、私は自らの実力不足を切に感じた。
私は生まれつきウマ娘にしては筋肉が付きにくい体質で、パワーが必須項目ではない下り以外のバトルでは勝負にならない。
もちろん、私が負けるという意味でだ。
「……ライスさん、凄いですね」
「え?凄いって……ライスが?」
「ええ、凄いですよ。バトル中の後姿も、今見てる後姿も。……流石、ちゃんとトレーニングしてるウマ娘だなぁって」
「えっと……ありがとう?」
首を可愛らしく傾げるライスさんに余裕を感じ取った私は、自分がいかに弱いウマ娘かを実感した。
トウカイテイオーさん、そしてサクラバクシンオーさん、私は現状最強格の二人と勝負してなんとか勝てたけど、あれは初見殺しの技を使って意表を突いてもぎ取った勝利。
「……私、ホントに弱いウマ娘なんだなぁ」
「?パンダさんは強いよ?」
小さくつぶやいたつもりが、ライスさんは聞き逃してくれなかった。
私はライスさんの言葉にかぶりをふった。
「いえ、弱いですよ。バトルじゃライスさんに最後まで追いつけなかったし、ゆっくり歩いてるだけのはずの今ですら追いつけてない。基礎的な体力、筋力が圧倒的に足りてないんです。こんな状態でライスさんに勝とうって思ってただなんて……トウカイテイオーさんとサクラバクシンオーさんにまぐれで勝って、驕っていたんだと思います」
「……でも、今回のバトルはパンダさんの勝ちだよ。だからライス、パンダさんが弱いだなんて思わないよ」
「……ありがとうございます。でも、このバトルは私の勝ちではありませんよ。追いつけませんでしたし」
「え?ライスはスリップしちゃったし、パンダさんが勝ちだと思うけど……」
「……あれ?」
私は間違いなく負けたと思っていたけど、ライスさんはそうではないらしい。
ギャラリーもおらず、客観的に勝敗を決められるのはライスさんのトレーナー、そしてシル先輩たちだけだ。
早く戻って聞こう、再度足に力を入れて一歩を踏み出した瞬間、私の膝は崩れた。
「ぁ……」
どうやら体力の限界みたいだ、まだ残っている意識が身体状況をそう自己診断する。
踏ん張る力も無くどんどん地面に近づいていく視界に「こりゃダメだ」と諦めた瞬間、少し先のコーナーから一対のライトが飛び出してきた。
前のめりに倒れる私に手を差し伸べるライスさんよりも早く、そのライトは目の前に迫り、叫んだ。
「パンダッ!」
地面に身体が当たる寸前に私を抱えたのは、シル先輩だった。
シル先輩はコーナーを抜けてすぐに完璧なブレーキングをして私の目の前でピッタリ停止し、ホールドするような形で私を抱える。
ふにゅっと柔らかいシル先輩の豊満なお胸に顔面を埋めて、私は腕をだらりと垂らす。
ピクリとも動かない脚を放って、私は全体重をシル先輩に任せる。
「お、おい大丈夫かパンダ!?」
「バトル中は大丈夫だったんですけど……帰りの登りで体力と脚が……」
「脚がどうした!?」
「……疲れました」
「……怪我とかじゃなくてよかった」
胸を撫でおろしながらシル先輩は私の腰のベルトからライトを外して、私を背負った。
外したライトは私を背負ったせいで持てないからと、隣で歩くライスさんに任せていた。
シル先輩は私よりもかなりパワーがあり、スタミナも私には及ばないもののそれなりにある。
私というウェイトを負いつつもこの急勾配を軽々と登っていくのに、私は少し羨ましいという感情を覚えた。
「……ライスさん。満足できた?」
シル先輩が突然、ずっと隣を歩いているライスさんに聞いた。
何の前触れも無く掛けられた言葉にライスさんは驚き、少し間をおいてから答えた。
「……満足は、あんまりできてないと思う。でも充実感は、すごくあったよ」
「……満足できてないのは、どうして?」
「思い返せばいろいろあるけど……一番大きいのは、ラストランのつもりだったのに最後まで走り切れなかったから……かな」
「ら、ラストラン!?」
シル先輩が最後の言葉に驚く。
なんで、迫るようにシル先輩がそう聞くと、ライスさんは少し苦笑いした。
「驚くことじゃないよシルビアさん。ライス、トゥインクルシリーズで走るのが目標でトレセン学園に入ったんだ。だから、優先順位はもちろんレース場でのレース。峠は……辞めなきゃ」
「……そう、なんだ」
残念そうに俯くシル先輩をよそに、ライスさんは言葉を続けた。
「でもライス、今回のバトルで引退は辞めたよ」
「え……?引退しないって……両立させるってこと?」
「ううん、完全な引退はしないっていう意味だよ。トゥインクルシリーズを頑張るために、3年間は離れちゃうけど、それが終わったら帰ってくるつもり」
だってパンダさんに負けたままじゃ嫌だし、そうライスさんはシル先輩の肩に顎を乗せている私に向かって笑いながら言った。
私はだんだん閉じ始めてきている瞼をなんとか抑え、ライスさんは負けではないと伝えようとする。
だけどそれより早くライスさんは自身が耳に嵌めていたインカムを外し、私の耳に着けてきた。
少しノイズが走ったあと、インカムの向こう側から聞こえてきたのはライスさんのトレーナーさんの声。
『あー。パンダちゃん聞こえてる?』
「……聞こえてます」
『あら、随分眠そうね。それじゃ手短に伝えるわ』
「……なんです?」
『今回のバトル、パンダちゃんの勝ちだから。それじゃ』
ブツッという音と共に通信が切れる。
本当に手短に伝えられた言葉に、私は首を傾げた。
「……私の、勝ち?」
「そうだよパンダさん。ライス、次は負けないから!」
ライスさんは胸元で両手ガッツポーズを作り頑張るアピールをする。
3年もトレーニングを積めば間違いなく私なんかが敵う相手ではなくなっているだろう、私は自分の能力を鑑みてそう思わずにはいられなかった。
私は気合だけで開けていた瞼をゆっくり閉じて、シル先輩の背中の揺れに心地よさを覚えながら、疲れ切っている意識を手放した。
* * *
私たちがスタート地点に戻って来た時、パンダは私の背中で眠りについていた。
初めてのコースであれだけの走りをしたんだから無理もない、ここにいる全員がそう理解してくれていたため、誰も騒ぎ立てることはしなかった。
私はエイティの車の後部座席にゆっくりとパンダを降ろして、静かにドアを閉める。
ライスさんのトレーナーは、それを見届けてから口を開いた。
「お疲れ様ライス。最後、いい走りだったわ」
「でも……滑っちゃった。ゴム蹄鉄の状態を把握しきれてなかったせいで……ライス、やっぱダメな子だ」
「ライスはダメな子なんかじゃない。私が折れずに最後まで指示を出せていれば、勝てた可能性は十分にあった。負けたのは、あの時諦めてしまった私のせい」
「お姉さま……完敗だね、ライスたち」
「……ええ、そうね」
トレーナーはライスさんを抱きしめて、ライスさんの震える肩を隠した。
私たちはそれを見ないように、パンダが中で眠っているエイティの180SXの方を向く。
クォーターガラスの向こうで涎を垂らしながら眠りこけているパンダを見ながら、エイティが言った。
「……まさか本当に勝てるとはな。俺、正直信じらんないぜ」
「下見もしてない初めてのコースで、そのコース最速のウマ娘に勝てるなんて……誰が想像できるかよ」
「私も同意見ッス。パンダが地元以外でここまでやれるとは、私も思いませんでしたよ」
「ハチもそう思うか。やっぱ、パンダは凄いウマ娘なんだろうな。……だけど、私たちから見ても、そろそろ限界ってところだろうな」
「……だろうな。多分だけど、パンダ自身もそう思ってるはずだぜ」
パンダは圧倒的才能と走りの勘で今まで勝利してきた。
だけど、それが通じないところまで来ている……いや、来てしまった。
そうであれば、パンダがするべきことは一つで、私たちがやることも一つだ。
「……パンダの強化トレーニング、するか」
エイティの一言に、私とハチも頷く。
トウカイテイオーさん、そしてサクラバクシンオーさんの二人には溝落としで動揺させ、その隙を突くという技が通じた。
だけどここから先に現れるであろうパンダへの挑戦者は、それを知った上で挑戦状を叩き付けに来るに違いない。
もしそうなったら、パンダの基礎能力では一切太刀打ち出来なくなってしまう。
「でも、誰にトレーニングしてもらう?峠向きトレーニングなんて……」
私がこの提案の問題点を挙げると、提案者のエイティは首を傾げてしまった。
肝心なのはそこだろう、そう心でツッコんでいると、後ろから声がかかる。
「パンダちゃんの峠向けトレーニングなら、一人アテがあるわ」
ライスさんとの話が終わったトレーナーが、後ろから私の肩に腕を乗せて言ってきた。
私は突然のことで驚き仰け反ってしまったが、すぐにトレーナーの手を取った。
「トレーナーさん!?それホントですか!?」
「ホントよ。でもアテっていうのが3年も前にいなくなったトレーナーだから……たぶん、資料しか残ってないと思うわ」
「3年も前の……それ、よかったら頂けませんか?」
「残念だけど、トレーナーのトレーニング資料はトレセン学園の所有物だからそう簡単には持ち出せないわ」
「お、お願いしますトレーナーさん!」
そうに言うトレーナーに頭を下げると、隣のエイティとハチも同じように頭を下げた。
ハチに至っては脳みそがシェイクされてるんじゃないかと疑ってしまうほど何度も。
「ライスちゃんのトレーナー、頼みます!」
「私からもお願いします!パンダを強くしてやりたいんです……!」
トレーナは私たちの懇願に困惑した様子を見せて、すぐに笑った。
笑う要素なんてあったか?そう思いつつ顔を上げると、トレーナーはメモ帳に何かを書き込んでいた。
そのページを千切り、私に差し出してきた。
そこに書かれていたのは電話番号だった。
「私から持ち掛けた話よ?だからそんなに畏まらないで」
「トレーナーさん……」
「それ私の仕事用スマホの電話番号、シルビアちゃんの電話番号はライスから聞いてるから大丈夫よ。今は持ってないから、その電話番号から電話来たら私だと思ってね。トレーニング内容とかは仕事用スマホでやらないとたづなさんに怒られるから……あの人、怒らせるととんでもなく怖いんだから」
何かを思い出して身震いするトレーナーに「あれは自業自得だよ……」と呆れ気味のライスさんは、少し本当の姉妹のように見えた。
トレーナーさんの過去に何があったかはわからないけど、私はトレーニング資料を入手できる可能性を示してくれたことに再度頭を下げた。
「ありがとうございますトレーナーさん……うちのパンダのために」
「いいのよシルビアちゃん。それに、お礼を言いたいのは私たちの方だわ」
「……?」
「ライスから聞いてると思うけど、今日のバトルは峠バトルに区切りをつけるためにやったの。結果的に私たちが負けて悔いを残しちゃったけど……でも区切りはつけれた。これで私たちは……トゥインクルシリーズにちゃんと向き合える。半端な気持ちで勝てるほど、ここから先は甘くないから……だから、このバトルを実現させてくれてありがとう、シルビアちゃん」
トレーナーが話したことは、ライスさんから聞いた話と同じだった。
だけどライスさんを担当するトレーナーとしては、ライスさんが感じている以上にこのバトルを重く捉えていたに違いない。
私はトレーナーの言葉にどう返せばいいか言葉が見つからず、代わりにライスさんと和解したときに言おうと思っていた言葉を言った。
「私、ライスさんのことずっと応援します!レースのある日は学校サボってでも、現地で応援します!だから……えっと……ライスさんのこと、お願いします!」
何様だよと言われそうなことを突拍子も無く言ってしまい、顔が紅くなるのを自覚した。
かつてライスさんと初めて会った時のような、あの熱さも。
「……ふふ、ありがとうシルビアちゃん」
トレーナーさんは私の言葉に満足そうに笑みをほころばせる。
これで今日は解散になるだろう、そう思った矢先だ。
「そうだ!皆、来週の土曜日空いてるかしら?」
突然のトレーナーからの質問に、私はさっきの話のトレーニング資料について何かあるのだろうかと思ったが、トレーナーの行動はそれを否定した。
トレーナーは車に一旦戻り、助手席に置いてあるカバンから何かのチケットを6枚私たちに見せてきた。
「軽井沢のプール施設のチケットよ。今回のバトルをこれで労いましょ!」
次回でライス編を終わらせたいと思います。
本当は今回のお話も2分割させるつもりだったのですが、引っ張り過ぎも良くないと思い1話にまとめました。
この作品の設定の一つの「腰ライト」と言うものを頑張ってイラスト化したので、これからはこんな感じの着けてるのねと思っていただければ幸いです。
【挿絵表示】
よくやったぞうまゆる!!!(まだ喜んでる)