思った以上に書くのに時間かかった。
なんでかって?リコリコを全話見たから…書きたくなるのが創作者でしょう。
ごめんなさい。
雨の中のバトルが幕を開けて十数秒、私とパンダトレノさんのポジションは明確に分かれた。
私が先行で彼女が後追い、私にとっては理想の展開であり、彼女にとってはいつも通りの展開であることは間違いない。
濡れた前髪が額に張り付くことで暴れなくなり、視界を邪魔する物は雨以外無くなった。
「(この雨の中、直線でも全力で走れるウマ娘はそういない。安全マージンを無意識に取ってしまうから)」
その証拠に後ろを走るパンダトレノさんは全くと言っていいほどスピードを出していない。
私は雨の降っていない日の八十パーセントほどのスピードしか出していないけれど、彼女が私に迫ることは現状は無いだろう。
直線の続く今は、パンダトレノさんとの距離は開く一方だ。
「(緩いコーナーじゃ全く差が縮まらない。タキオンさんの言う通りですね)」
最初の緩いコーナーを過ぎた辺りでタキオンさんと立てた作戦のどれで行くかを決める。
先行して逃げ切る、最初の直線だけでここまでの差が出来てしまった以上、この作戦以外を取る選択肢は無い。
「(もう少しで最初の三連S字コーナー。ここは緩いからノーブレーキで行ける……雨だけど、行けるはず)」
目の前に迫ったS字コーナーを前に、私はノーブレーキで突っ込もうと足の回転を緩めずにいた。
しかし、芝がライトで照らされて反射される様はあまりにウェットで、コーナーでゴム蹄鉄が滑ってしまうビジョンが脳裏をよぎる。
無意識のうちに、私はブレーキをかけていた。
「(雨の日は得意だと思っていたのに……今日は思った以上の土砂降りですね。これは、少しマズいかも……)」
しっかり減速して三つのコーナーを抜けて、後ろを見やる。
まだコーナーを抜けきっていないが、パンダトレノさんのライトはさっきよりもほんの少しだけ近くなったように見えた。
ほんの少しだけれど、間違いなくコーナーで差を詰めてきているということだ。
マズい、そう思わずにいられなかった。
「(これは……誤算ですねタキオンさん。あなたの予想は外れましたよ)」
バトル前日になるまでに公開されていた天気予報は快晴で、雨など降る様子は全くなかった。
立てた作戦の全てがウェットではないことが前提であったため、前日に予報された雨で急に細部を変更して練習できるほど、私たちに臨機応変さはない。
私自身、もともと雨は得意な部類ではあったものの、それは全てレース場並みの平地であることが前提。
妙義山は秋名山と比べて緩い勾配ではあるものの、平地とのそれは比べ物にならない。
スピード域は、峠の下りにおいて安全意識の枠を簡単に飛び越えてしまう。
「(まだ距離はあるけど……こんな安全な走り方をしてて、コース中盤のコーナーが連続する区間でどうなるか……)」
容易につく想像を頭から振り払い、目の前のコーナーを無難に走る、それは速くも無いが確実な走り方。
そんな走りが後ろを走るウマ娘に通用するかなど、考えなくともわかることだ。
今はとにかく後ろとの差が縮まるのを最低限に抑える、その一点だけに集中を置かなくてはならない。
決して難しいことではない、しかし簡単なことでもない。
ミスをしない堅実な走り……そして、スピードを出せる区間ではしっかり加速すること。
それらがこのバトルでは必要なことだ。
「(少し先にある急なコーナーを超えたらコース中盤。パンダトレノさんとの差はまだ十バ身近くあるけど、終盤まで連続するコーナーで逃げ切れるかどうか……)」
道中にあるきのこ館への入口を通り過ぎ、九十度コーナーを二つ抜ける。
その先に現れる中盤を示す急なコーナーに、私はしっかりブレーキをしてアプローチした。
直線とは言い難い緩い曲がりの道をしっかり減速してコーナーに入ることで、コーナリング中に滑ることはまずない。
こんな雨の中ですべき走りは、確実な時計が出るグリップ走法一択。
例外は無い。
「(こんな雨で滑りやすくなった芝を、わざと滑らせて走るおバカはいないですよ……)」
急なコーナーが姿を現し、踵を使うグリップ力の強いブレーキングで減速し、コーナー内で加速する体勢を取った。
ここは難しいと言うほどでは無いものの、とにかく長い曲線なのだ。
最初にブレーキングをして後は加速してくという形を取らなければ、コーナリング中にブレーキングをするはめになってしまうのだ。
そしてこのコーナーが過ぎれば、短いが直線がある。
僅かでもそこで差を付けるためには、このコーナーでの脱出速度が重要になる。
「(雨の日はコーナリングの難易度が跳ね上がる。だけど、基礎的なことをキチンと押さえれば確実に曲がれる……間違えさえしなければ、勝てるはず……)」
コーナーに脚を踏み入れ、スリップしない程度のスピードで脚を回していく。
加速していくのが顔に当たる雨粒でわかるが、それはレース場の時よりも遅い。
雨のダウンヒルの時計がいかに遅いものかがよくわかる。
「(もっとスピードを出したいのに……出せないのがもどかしい。だけど、ここで焦らないことが……)……っ!?」
コーナー終盤、さっきまで聞こえなかった音が後ろから聞こえてくる。
パシャパシャと、雨の芝を走る音が。
「(思ったよりも……速かったですね……)」
コーナーを抜けて直線に躍り出ると、抑えていた脚の回転を上げて一気に加速する。
私の脚元を照らしていた、後ろからの光を突き放すために。
* * *
土砂降りによってドローンの動きも不安定で、カメラが捉える映像も不鮮明なものになっていた。
限られた情報の中で今どちらが優勢かを見ようとするが、映っているのはパンダ君の背中だけ。
カフェがどこにいるのか、わからない。
「パンダ……頼むから転ぶんじゃないぞ……」
パンダ君の仲間たちは祈るように手を合わせて画面を見つめている。
この雨では芝の状態は相当悪いはずだ。
見た目以上に滑りやすくなってるであろう芝にゴム蹄鉄はしっかりグリップはしないだろう。
「(カフェ自身、雨のレースは得意だと言っていたが……パンダ君はどうだ。得意なんて次元じゃないぞアレ)」
画面の向こうで走っているパンダ君の姿は、正直普通ではない。
雨だと言うのに平気で脚を滑らせているではないか。
この雨の中で脚を滑らせると言う行為はもはや自殺行為だ、彼女もそれをわかっているはず。
わかっているはずなのに……彼女は思い切り脚を滑らせ、その摩擦で減速して加速していく走法……ドリフト走法をやってのけている。
この目で見たモノが信じられないと思ったことは今までだって何度もあった。
しかしそのどれもを解明して、理解して信じられるようになってここまで進んで来たつもりだ。
だがどうだ、彼女については理解できても信じられる気がしない。
「(彼女……なぜあそこまで無謀な走りができるんだ? いや、彼女にとっては無謀でもなんでもないのか……? だとしたら、それは一体何故?)」
私は自身のタブレットの電源を入れて、パンダ君についてまとめてきた資料をスクロールして確認するが、雨の日についてのデータはやはり無い。
あの走りの裏付けは一体どこにあるんだ、そう悩むのも束の間、隣に答えがあるのではないかと声をかける。
「ハチゴー君たち。聞きたいことがあるのだが、いいかい?」
「聞きたいこと? 何ですか?」
「パンダ君についてだ。彼女はこの雨を全く恐れていない。雨の日が得意なカフェですら苦戦しているのに……君たちは何か知っているかい?」
「何か知ってるっていうか……あれがパンダの全てですよ。ね、シル先輩、エイティ先輩」
ハチ君が先輩二人に同意を求めると、二人してそれに首肯した。
驚くことにハチ君たちはパンダ君の強さの秘訣を知っているのに、全く驚きもしない。
それは何故か、ハチ君たちの付き合いがそれを物語っていた。
「パンダが速いのは、何年も毎日休まずに秋名湖のホテルまで配達をしていたからですよ」
「配達……? 何か重い物を背負ってやっていたのかい?」
「特別重い物とかじゃないですけど……ただ、とにかく毎日。雨が降ろうと雪が降ろうと……休校になるレベルの台風が来ようと、アイツは配達してました」
「……なんだって。そんな……つまり、彼女の強さは……この雨でも走れる理由は……」
「そうです。単なる慣れですね」
私はあまりに単純明快でありながらも、果てしない継続によって付いたと推測されるパンダ君の力を前に膝を着く。
まだレースは中盤に差し掛かったばかりだというのに、私の頭には既にカフェが勝つというイメージは無くなっていた。
何年も雨の日も雪の日も秋名山を走っていたならば、あのコーナーの速さにも説明が付く。
中盤はコーナーが連続する低速セクション。
パンダ君の速さが最も炸裂する区間だ。
「(カフェ……このバトルに勝つにはもうブロックするしかない。今の私たちに……彼女に勝つステータスは、無い……)」
先ほどまで見えすらしなかったカフェの背中が、パンダ君のライトによって照らされる。
直線で作ったアドバンテージなど今は無く、カフェにできることはとにかくミスをせず走ることだけだろう。
パンダ君が意表を突くような走りさえしなければブロックできるはず……希望的なその想いすら、画面の向こうのカフェに届くことは無い。
私はこのバトルの観客で、カフェは選手だ。
いくら私が思えどカフェの走りを変えることはできない……その無力さに、ただ拳を握ることしかできなかった。
3月中に仕事決めなきゃマジで車検と自動車税が払えなくなる…アカンって。
ワイのスイスポちゃんにやりたいことまだたくさんあるのに…フロントとリアにタワーバー入れて、カーボンボンネットに変えて、エアクリをキノコに変えて…
多分7万もあればいけるな…カーボンボンネットなんて中古でゴロゴロ転がってるし。
そのためにも働かなきゃならん!
頑張らねば…