創作ウマ娘:パンダトレノ   作:ふゆうさぎ

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二か月と半ぶりの投稿…間を空けすぎましたナ…
どうしてかって…?
ブルアカとリコリコにめっちゃハマってたからですよ!
千束かわいい!
サオリとハスミとツルギとハナコとミユとアルちゃんとトキとアスナとネルと…好きなキャラが多すぎるんじゃッ!



37話.VSシンボリルドルフ、後編

 コース最終盤に位置する広いコーナー。その脇に私はライスさんと共に立っていた。私とライスさんは共にパンダさんに負けた仲でもあり、共にパンダさんの勝利を願う仲でもある。

 実況はスマホで見ているため、そのうち二人がここを通過することはわかっている。今どちらが前を走っていて、どれぐらいの距離が開いているのかまで。

 

 

「ライスさんも観戦にここを選んだのですね! 流石です!」

「バクシンオーさんも。みんなは派手な勝負を見れる場所を選ぶけど、決着が付くのを見るならここしかないかなって、ライス思って」

「やはり決着の付くところを観たいですよね! ふふん、流石、RRIの一員ですね!」

「ブルボンさんのロボ呼び、そろそろ変えてあげた方が……」

 

 

 現在の二人はもつれていて、今は会長さんが前を走っている。しかし距離は全く開いておらず、パンダさんがここで勝負を仕掛けるには十分な展開だ。

 

 

「ライスさんはどうなると思いますか?」

「うーん。どっちが勝つ、とは言えないけど……このコーナーを抜けた時に前を走っていた方が勝つと思うよ」

「奇遇ですね! 私もそう思っていたところです! このコーナーより先にはパッシングポイントと呼べるような場所はありません。すなわち、ここが最後の勝負所というわけです!」

「うん。ブレーキング勝負に持ち込めるくらいスピードの乗る長い直線。そしてここは秋名山で一番広いコーナーで、ラインの自由度も高い。だから……二人もつれてる今、どっちが勝つかはわからない。強いて言うなら……イン側を走っている方が有利かな?」

「そうですね! アウト側から攻めて追い抜きが成立するのは、次のコーナーでインとアウトが入れ替わる場合……いわゆるカウンターアタックという物ですね! しかしそれは、次のコーナーも追い抜きが成立するようなものであることが前提です! この先は二つのアールが重なる複合コーナーですから、それは成立しませんからね!」

 

 

 事実、目の前のコーナーのみが広くなっていて、この先のコーナーは普通の幅に戻ってしまう。追い抜きが可能なラインはここにしか存在しないのだ。

 そのことはおそらく走者の二人ともが理解しているはず。聡明な会長さんが前を走っている以上、インは決して開けないだろう。パンダさんの勝ち目は、既に薄い。

 だが、それでも……何かが起きる。私は……いや、私たちは、無性にそう思ってしまう。今まで相手がどれだけ格上だろうと、持ち前の技術とセンスで勝利をもぎ取って来たパンダさんだから。どんな相手でも臆せずに挑んで来たパンダさんだから。

 胸にアツい何かが沸いて、汗が滲んでいた手は気づけば拳へと変わっている。これから目の前で起きる勝負に、心が躍っている。

 

 

「……不思議ですねぇライスさん。私たちのファンの方々は、いつもこんな気持ちを味わっているのでしょうか……?」

「……うん。きっとそうだよ。自分が応援するウマ娘に勝ってほしい。ここ一番の勝負所で、一緒に走っているライバルに勝ってほしい。ファンの人たちは、ライスたちがレースに勝ちたいって思ってるのと同じくらい、ライスたちの勝利を応援してくれてる」

「ふふっ……ファンの方々も凄いですね。観客の立場になって、初めて理解できました」

「見送ろうバクシンオーさん。私たちが勝ってほしいと思ってるウマ娘が、勝つところを」

「はいっ!」

 

 

 登り勾配の向こう側。きらりと光るライトが二つ、こちらに向かって大きくなる。いよいよだ。

 二人の姿が現れた。情報通り、会長さんが前を走り、パンダさんが後ろだ。

 

 

「きっ、来ました!」

「二人とも近づいたまま……!」

 

 

 会長さんは完全にインを攻めるライン取りをして走っている。後ろのパンダさんもインを突かねば追い抜きがキツイと言うことを理解してか、必死に僅かな隙間に脚をねじ込もうとしているが、会長さんはそれを完璧にブロックしている。

 パンダさんが入り込む余地は、無い。

 

 

「会長さんがインを取りました!」

「パンダさん……このままじゃ差せないよ! どうすれば……えっ!?」

 

 

 パンダさんはインを差すことを諦めたのか、会長さんよりも外側に移動した。アウトから攻めるつもりだ。

 ブレーキ体勢に入り減速した会長さんの隣に躍り出るパンダさん。二人は、並んだ状態でコーナーに突っ込んでいく。

 

 

「並んだ! だ、だけど……!」

「あ、アウトからですとぉーっ!?」

「このままじゃホントに負けちゃう……! パンダさん、どうやって……!?」

「会長さんと正々堂々コーナリング勝負となれば、身体能力の差からしても、パンダさんに勝ち目は──ーアッ! み、見てくださいライスさん! 会長さんが!」

 

 

 会長さんは、暗くてもわかるほど険しい顔をしていた。その原因は足元……ゴム蹄鉄が滑り始めていたからだ。

 ゴムの焦げる臭いを残しながら、ズルズルと横にスライドしていく会長さん。徐々に開いていくイン側に、ライトの光が照らされる。

 パンダさんだ。

 

 

「会長さんがアンダーを出して……外に膨らんでいきますッ!」

「ラインがズレて……インが空いた!」

 

 

 パンダさんはゴム蹄鉄に鞭を入れ、アウトから攻めるラインからインから攻めるラインへと。ライトはインのガードレールを照らす。

 見たことも無いような超前傾姿勢と、超幅広のストライド。コーナリングスピードは、会長さんと互角だ。

 

 

「行ってくださいパンダさん!」

「がんばって、パンダさん!」

 

 

 徐々に開いていくイン側。そして、人ひとりが通れるほどの隙間が生まれた瞬間、パンダさんはこれが最後と言わんばかりのスパートをかける。彼女は、吠えた。

 姿勢を転倒寸前まで低くして、今にも滑り出しそうなゴム蹄鉄にありったけの力を込めて、ルドルフさんが開けてしまったインへと飛び込んでいった。吹き出るような汗を置き去りにして、彼女はルドルフさんの横を駆ける。

 時間にして10秒も無いコーナリングに、私たちは決着を見た。

 

 

「ラインが……!」

「クロスしてっ……!」

 

 

 コーナー出口。

 会長さんのラインが膨らみ、イン側に生まれた僅かな隙間を、パンダさんは駆け抜けていった。

 クロスしたラインを先に脱出したのは、パンダさんだった。

 

 

「……パンダさんが」

「……勝った」

 

 

 コーナーを抜けて温泉街に向かって小さくなっていき、次のコーナーで背中も見えなくなった二人。後を追いかける会長さんの背中には、潔い諦めが見えた。

 無理に追い越そうとせず、ただパンダさんの背中を軽く追いかけるだけ。そうして、会長さんは麓まで降りるのだろう。

 二人が過ぎ去った峠道は静かだった。熱が過ぎ去ったように滲んだ汗も引いて行く。

 吹いた冷たい夏の夜風が、勝負の終わりを告げる。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 モニターの前。ギャラリーたちは声一つ上げず、ただ映し出される結果に声を失っていた。

 ゴール地点を通り過ぎ、膝に手をついて肩で息をするパンダちゃん。やられた、そう言わんばかりの表情で空を仰ぐカイチョー。モニターの横に小さく表示されている着順は、間違いなくカイチョーが二着であることを示している。

 中央トレセンの子たちは悲しみを嘆くわけでもなく、群馬トレセンの子たちは歓喜を叫ぶわけでもなく、ただ呆然とモニターを眺めている。まるで目の前の出来事を理解できずに、思考停止してしまったかのように。

 それは隣のハチちゃんたちも同じだ。小声で「パンダが……?」「え、マジで?」と語彙力を失った会話をしている。

 勝敗が決して数分後、ハチちゃんが感極まった声で、言った。

 

 

「パンダがっ……勝った」

 

 

 その言葉が徐々に伝播していき、モニターの前にいる群馬トレセンの子たちは徐々に喜びを露わにしていく。中には、泣いている子もいた。

 中央トレセンから来た者たちの反応は、もちろん真反対。当然だが、そうなるのも無理はない。

 世間を風靡した最強のウマ娘シンボリルドルフ、それを名も無い山道を走るウマ娘が打倒してしまったのだ。このシチュエーションは、当然の結果と言えよう。

 この勝負に対して不正を疑う者は誰一人いなかった。それは、このレース自体が世間的に良しとされているモノではないことと、そもそも峠バトルにおいてルールは存在しないからだ。誰もが理解していて、だからこそ上げることが出来ない不満によって、このレースの勝利はパンダちゃんで決まった。

 

 

「……すごいよ、パンダちゃん」

 

 

 ボクが小さな拍手をモニターに映るパンダちゃんに向けると、それを見た群馬トレセンの子たちは雄たけびを上げて騒ぎ出す。レース後がうるさいのは、どこも一緒らしい。

 素直じゃない中央の子たちも、諦めたかのように拍手をして、パンダちゃんの勝利を祝福する。

 

 

「……凄い風が吹いたね」

 

 

 レース界でも、新人ウマ娘が活躍することを予感させる時に使われる言葉。この峠において、パンダちゃんはそれだ。

 カイチョーを倒したパンダちゃんが、これからどこへ向かっていくかはわからない。願わくば、また共に走りたいと思うボクがいる。

 今度は相手としてじゃなくて、仲間として。

 

 

「パンダちゃん……また走ろうね」

 

 

 峠を下る。カイチョーの下へ向かって。

 この溢れんばかりの感情を発散させながら、私は加速してく。





次回でFirst stageにあたるお話は最後になります。
もう8割くらい完成してるんで…そのうち投稿できると思います。
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