創作ウマ娘:パンダトレノ   作:ふゆうさぎ

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※テイオーたちのトレーナーは沖野Tではありません。ルドルフのトレーナーもおハナさんではありません。



6話.再会テイオー

「「あっ」」

 

 

 二人の声が重なったのはグラウンドの端。

 食堂を後にしてから1時間程が経った頃、まだ見ていない「チーム用グラウンド」という所を見に行こうというお話になり、いざそこに着くと見知った顔がいたのだ。

 中央トレセンで唯一初顔では無い相手、トウカイテイオーだ。

 

 

「こんにちはトウカイテイオーさん」

「こ、こんにちは……え、パンダトレノちゃん?なんでここにいるの?」

 

 

 いるはずの無い人物にクエスチョンマークを浮かべる休憩中のテイオーに、近くにいたウマ娘が寄ってきた。

 

 

「どうしましたのテイオー?」

「あ、マックイーン」

 

 

 見覚えの無いウマ娘がテイオーの近くにいるのを不審がってか、芦毛の「マックイーン」と呼ばれたウマ娘がパンダたちを細目で見つめた。

 

 

「あら?こちらの制服ではありませんね。何かご用ですか?」

 

 

 耳を後ろに倒して威嚇をするマックイーンというウマ娘に、パンダたち3人は急いで自己紹介をした。

 

 

「私はパンダトレノって言います、ルドルフさんに招待されて。パンダとでも呼んでください」

「シルビアです、パンダと同じく招待されて……というか、私たちは付き添いか?」

「そうだと思うぞ、実際招待されたのはパンダだし。あ、俺はワンエイティって言います、ヨロシク」

 

 

 ルドルフさんに招待された、その一言で警戒は解かれたものの、何故?という疑問がマックイーンの頭には浮かんだ。

 

 

「会長さんから招待されて……?え、招待?見学ではなくて?」

「マックイーン、疑問に思うのはわかるけど、自己紹介先だよ」

「あ、あら、失礼しました」

 

 

 マックイーンはこほんと咳払いをして場を整えると、胸に手を当てた。

 

 

「わたくしはメジロマックイーンと申しますわ。テイオーとは同じチームに所属しておりますの。以後、お見知りおきを」

 

 

 パンダたちが頭を下げてよろしくと普通に返すのを見て、何か違和感を覚えたのか、テイオーがパンダに聞いた。

 

 

「あれ?パンダちゃんたちはマックイーンのこと知らないの?かなり有名だと思うけど」

「いや、知ってはいるけど……なぁ?」

 

 

 何やら歯切れの悪いワンエイティの返事に、マックイーンが3人に詰め寄る。

 

 

「何かありますの?」

「いや……エーット……」

こっち(地方)の評判とそっち(中央)の評判は違うし……」

「シル先輩、エイティ先輩。ここは素直に言いましょう。その方が後々楽ですから、マックイーンさんにとっても」

 

 

 マックイーンを知っているかどうかだけで相談をするパンダたちに、マックイーン本人は置いてけぼり状態だ。

 

 

「じゃ、じゃあパンダが言えよ。俺は言いたくねぇよ」

「別に構いませんけど」

「ちょっとパンダさんたち?何をお話になさってますの?私の評判一つでそこまで相談なさるのはちょっと失礼ではありませんこと?」

 

 

 腕を組んで少し怒り気味のマックイーンの前にパンダが立った。

 ようやく言ってくれるのかと少し得意気になるマックイーンとは逆に、テイオーとシルビアたちは少し距離を置いた。

 すっと息を吸って、パンダが言った言葉は空気を凍らせた。

 

 

「……スイーツお嬢様」

「……はい?」

 

 

 普段から言われる「メジロ家のご令嬢」とは乖離があるほどの言葉に、マックイーンは固まった。

 しかし、お構いなしにパンダは続けた。

 

 

「スイーツマスターメジロ。太りやすさS」

「ちょ……パンダちゃん……」

「ダイエットの達人。ダイエットに都合の良い女」

「パンダ、その辺でやめとけって」

 

 

 シルビアが制止かけたところで、マックイーンが膝から崩れ落ちた。

 やる気が下がった!というテキストが頭の上に浮かびそうなほど、マックイーンの顔に深い影が生まれてしまった。

 

 

「そん、な……わたくし、そんなに太って……ませんわ……」

「雑誌見たら結構な頻度で『また太るか!?メジロマックイーンのスイーツ食べ歩き盗撮特集!』っていう記事見ますよ?」

「わたくしのプライバシー権は息してらっしゃらないのですか!?」

 

 

 マックイーンはこれ以上何か言われたら精神が持たないと判断したのか、およよ~と言いながらグラウンドに戻っていき、それと入れ替わるように「大変です皆さん~!」と叫びながら小走りで別のウマ娘が来た。

 

 

「大変です!大変なんです!」

 

 

 白い前髪と三つ編みハーフアップのウマ娘がパンダの前を通りすぎ、トレーニング中のウマ娘とそのトレーナーの前で言った。

 

 

「大変なんですよ!サクラバクシンオーさんが地方のウマ娘さんと一対一でバトルするそうなんです!しかも、峠道で!」

 

 

 パンダの肩が跳ね上がる。

 話を聞いたトレーナーの顔はブリキのおもちゃのように、ギギギとパンダの方を向いた。

 目の前のテイオーは、どこかで見たギャグ漫画の名探偵のウサギの様な目でパンダを見ている。

 

 

「……喧嘩売ったの?」

「ち、違うんですテイオーさん。テイオーさんを倒したって言ったら、サクラバクシンオーさんが……」

「ボクが負けたって言ったんだ……ふぅーん……ねぇトレーナー!」

 

 

 呼ばれる前から既にこちらに向かっていたのか、テイオーが呼んだときにはすぐそこまで来ていた。

 もちろん、騒ぎの元凶のウマ娘も一緒に。

 

 

「あれ、テイオーさん、この人たちは?」

 

 

 テイオーの名を呼んだウマ娘を一瞥し、パンダに振り返る。

 とてもいやらしい笑みを浮かべた顔で。

 

 

「いや~スペちゃん、良いタイミングで来たね~!」

「逃げますよシル先輩、エイティ先輩!」

「並走だってスペちゃん!ちょっと行こうか!」

「えっ?はいっ!」

 

 

 今以上の面倒事にしてたまるかとシルビアとワンエイティを置き去るスピードでダッシュするパンダだが、現在進行形で活躍中のウマ娘に敵うことはなかった。

 

 

「パンダちゃん!追い付いたよ!」

「ヒェッ」

「テイオーさん、この娘誰なんですか?」

「イインチョーとバトルする娘だよ!」

「え!?あなただったんですか!?」

 

 

 全速力で走るパンダに平然と追い付き並走する二人に、絶対に逃げ切れないとパンダは諦めて踵でブレーキした。

 スニーカーの底のゴムが熱を帯び、焦げ臭い臭いと共にパンダの動きは停止した。

 テイオーたちは徐々に減速して止まったため、数十メートル先での停止だった。

 

 

「め、メチャ早じゃん……」

 

 

 膝に手をつき肩で息をするパンダにテイオーともう一人が余裕の顔で帰って来た。

 

 

「平地ならボクたちの方がプロなんだから。パンダちゃんじゃ逃げ切れないよ」

「流石ですよテイオーさん……それに……えっと」

 

 

 顔を上げたが一人の名前がわからない。

 言葉に詰まるパンダを見て、テイオーが隣のウマ娘をつついた。

 

 

「スペちゃんスペちゃん、名前」

「え?あ、そうでしたね!」

 

 

 スペちゃんと呼ばれたウマ娘はパンダに手を差し出し、自己紹介をする。

 

 

「私、スペシャルウィークって言います!テイオーさんとは同じチームにいます!」

「スペシャルウィークさん……なるほど、だからスペちゃんですか。私はパンダトレノです。皆パンダって呼んでるので、パンダで構いません」

「パンダちゃんですね!私もスペで構いません!これからよろしくね!」

「ええ。こちらこそよろしく、スペさん」

 

 

 差し出された手を握り、握手を交わす。

 長く続くかと思った握手は、テイオーのトレーナーが追い付いたことで終わりを迎えた。

 

 

「お前らっ……速すぎだって……」

「トレーナーが遅すぎなだけだよ?」

「俺は……ウマ娘じゃ……ねぇんだぞ」

 

 

 ぜぇぜぇとパンダ以上に肩で息をするトレーナーだが、無理やり息を整えさせ、パンダに視線を合わせた。

 

 

「パンダトレノ……君は本当にサクラバクシンオーに、テイオーに勝ったって言ったのか?」

 

 

 奇妙な髪型からは考えられないほどの真剣な顔に、パンダは誤魔化すことなく頷いた。

 トレーナーはそれにため息をついて頭を掻きむしった。

 

 

「あ~っ!せっかく理事長に頼み込んで箝口令敷いてもらったのに!」

 

 

 頭を抱えて嘆く姿にパンダは素直に「すみません……」と謝ることしかできなかった。

 

 

「テイオーは今大事な時期なんだ。下手に事を大きくするのは避けたかったんだが……まさかそっちの方から漏れるとは」

 

 

 トレーナーはがっくりと肩を落とした。

 その姿を心配そうに見つめるスペは、ふと何かを思い出したようで、「あ」と呟き、全員の視線を集めた。

 

 

「そうだ。さっき聞いた話なんですけど、実はもうちょっと詳細があるんですよ」

「詳細……?なんだスペ、言ってみてくれ」

「はい、トレーナーさん。ある子が言ってたんですけど、『テイオーさんに勝ったかどうかは走ればわかる、だから勝負だ!』ってサクラバクシンオーさんがパンダさんに言ってたそうです」

「え?スペちゃん、それってつまり……」

 

 

 テイオーが抱いた疑惑は、何気なく答えるスペが言葉で代弁した。

 

 

「たぶんですけど、パンダちゃんが負ければテイオーさんが負けたことにはならなくなると思います」

 

 

 テイオーがトレーナーとパンダを見る。

 パンダはスペの言葉に特に気に障った様子も無かったが、トレーナーはどこか嬉しそうに拳を握っていた。

 しかしそのトレーナーの様子を見たパンダの隣の二人は黙ってはいなかった。

 

 

「なんだよあんた(トレーナー)、パンダに八百長してくれとでも言うつもりか!?」

「いくらなんでもそりゃ無いぜェ。だってトウカイテイオーが負けたのは事実だろ?」

 

 

 シルビアとワンエイティが食い下がるが、トレーナーがそれを一蹴した。

 

 

「事実であろうと何であろうと、その事実に表立たれるのが困るのは間違いなくテイオーだ。君たちは大事な時期にいるテイオーに仇をなすつもりか!」

「それは……だけど!」

「俺たちにだってプライドってのが……」

「いいですよシル先輩、エイティ先輩。私は構いませんから」

 

 

 頭から湯気が立ちそうになるシルビアとワンエイティを抑制して、一歩前に出る。

 

 

「すみませんでした、調子に乗ってしまい」

「え……いや、俺はそんなつもりじゃ」

「いえ、これ以上お邪魔するわけにはいきませんので。失礼します」

 

 

 パンダはトレーナーに一礼すると、すぐに踵を返した。

 シルビアとワンエイティはトレーナーを一睨し、パンダの背中を追った。

 

 

「おいパンダ、どうすんだよ」

「どうすんだよ、とは?」

「あんなこと言われて、まさか出ないつもりかってことだよ」

「あぁ……いえ、悩んでますよ。正直、テイオーさんの邪魔はしたくありませんから」

 

 

 チーム用グラウンドを出て校舎の廊下へと入る。

 目的地はハチのいる食堂だ。

 3人の足取りは重くはないが、少なくとも軽いとは言えない物だった。

 

 

「出なければ中央の奴らからバ鹿にされるぜ、もう顔が割れてんだ」

「エイティ先輩……確かにそうかもしれませんね。出て負けた場合はどうなると思います?」

「事の発端がハチだし、ハチに矛先が向けられるだろうな」

「やるなら『出ない』が最善策だろう。今日はまだ水曜日だから時間はあるけど、ここまで大事になれば峠を閉鎖してやることになると思う。そうなるとバトルするのは土曜日の夜になるはず。それまでにはどっちか決めて、せめて私たちには連絡してくれ」

「エイティ先輩、シル先輩……」

 

 

 シルビアはパンダの肩に手を置いた。

 

 

「相手が相手なんだ。逃げたって私たちは文句なんて言わないよ。ただえさえ私たちはトウカイテイオーにお前が勝ってるのを見たんだ。これ以上の高望みはしないさ」

「そうだぜパンダ。俺らはお前たちの先輩だぜ?こういう時は頼っとけよ」

「ありがとうございます……ふふ、頼れる先輩で良かったです」

 

 

 パンダの一言でシルビアとワンエイティは照れたのか、若干紅くなった頬を指で掻いていた。

 喋るのが少し照れ臭くなった二人はパンダに話しかけることなく、時間は流れ食堂へと着いた。

 

 

「ハチー、いるー?」

 

 

 パンダが食堂の扉を開けると、最初に耳に飛び込んできたのはハチと誰かの喋り声だった。

 

 

「誰かと一緒にいるのか?」

 

 

 パンダに退いてもらいシルビアが中を覗くと、ハチがいる席には午前ぶりに見たルドルフの姿があった。

 何を話しているのかと耳をハチたちの方に向けると、その内容はパンダとバクシンオーのバトルについてだった。

 

 

「パンダの脚質は追い込みと差しです。3000mくらいの距離だと差し、それ以上の距離だと追い込みってカンジです」

「バクシンオー君は峠ステージの直線においてはレース場のターフ以上の加速力生むハズ。しかもダウンヒルでスタミナの温存が利くとなると、後半で距離を詰めるのは差しや追い込みのパンダ君でも難しいかもしれないな」

「短距離ならそうなると思います。でもパンダはステイヤー気質です。バクシンオーさんの得意距離に合わせるのは不公平なんじゃないですか?」

「その通りだ。故に私は秋名山のこの展望台の先のヘアピンの終わりから、4連ヘアピンの終わった先にある自然公園の駐車場までの2400mが良いのではないかと思っている。ハチ君はどう思う?」

「良いと思います。スプリンターは後半の粘り、もしくはスタミナの配分が必要になって、ステイヤーは常に長距離の時よりも速度を上げて走らなくちゃいけませんし……あれ、シル先輩?」

 

 

 ルドルフと地図を広げて話していたハチが、食堂の入り口で耳をハチたちに向けていたシルビアに気づいた。

 

 

「あぁ。一通り回ってきたよ」

「おかえりっすシル先輩。それにエイティ先輩にパンダも」

「ただいまだぜハチ、良い子にしてたかァ?」

「もちろんっすよ。ルドルフさんも来てくれましたし」

 

 

 シルビアとワンエイティがルドルフに「ウチのハチお世話になりました」と親のように頭を下げるが、ルドルフがやめてくれと首を振った。

 

 

「ハチ君から君たちの話も聞かせてもらった。中央しか知らない私からしたら、君たちの世界の話は大変興味深かったよ。私は個人的にも君たちと管鮑(かんぽう)の交わりとなることを望みたい、是非また中央に遊びに来てくれ」

 

 

 ルドルフがパンダに握手を求め、パンダは戸惑いながらもそれに応じた。

 

 

「かん……?よくわかりませんけど、機会があったらまた連絡します。こちらにも遊びに来てくださいね。温泉とかありますから、是非ご友人やトレーナーさんと一緒に来てください」

 

 

 トレーナー、その言葉に一瞬耳が反応したルドルフだが、それをすぐに隠すように笑顔を繕った。

 

 

「……あぁ。今度暇ができたら後輩や生徒会の仲間たちと行くとするよ。その時は、案内を頼めるかな?」

「もちろん。喜んでさせてもらいます」

 

 

 手を離し「それでは、失礼します」と一礼し、パンダたちはルドルフに背を向けた。

 食堂から出るとき、4人のしんがりにいたハチはルドルフに振り返って再度一礼し、パンダたちを追いかけた。

 

 パンダたちが去り、一人食堂に残されたルドルフは席に座り一息つく。

 頬杖をついて誰もいない正面の席を見つめた。

 

 

「……スプリンターとステイヤーの峠バトル、か」

 

 

 飲みかけの水を一気にあおり、空のコップの底を覗いた。

 

 

「トレーナー君……このバトル、君がいたら喜んだろうな」

 

 

 食堂は職員たちの駐車場が見える位置に建てられている。

 ルドルフはトレーナーと、今いる席でよく食事を共にしたのを思い出しながら、駐車場に停まっている埃だらけのRX-7 FC3Sを眺めた。




私はFDよりもFC派です、FDももちろんカッコいいけどね。
でも一番好きな車はS30Zです。
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