毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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オリジナルのストーリーを書く練習と思ってゴンたちと試験の時期をずらしたけど、筆の進みが遅いorzつぅか上手く書けん・・・それは前からか


旅立ちと発掘

オモカゲとの戦いから二日後。私とレツは今私達が最初に出会った町のヘブンズ・エンジェルという洋服屋を訪れていた

 

「びゅ~てぃふぉ~♪ヘブンズ・エンジェル、スペシャルコーディネートVer.2の完成よ~♡」

 

随分と小柄で丸い体型の男の人?―――がレツに見合った服を選んでくれたところなんだけど、入る店を間違えたかな?心は乙女をここまで隠さない人とは初めて出会った気がする

 

最初はゴテゴテのロリータファッションに着替えさせられたレツだったけど、今回の趣旨に合わないという事で今はもっとフォーマルなワンピースタイプの服を見繕ってもらっているところだ。最も完全に礼服でピシッと決めてる訳じゃなくてネックレスやブローチなど装飾品がそこまで派手にならない程度に取り付けてある

 

何故今こんな風に服を選んでいるかと言えば協会からハンターが来るからだ。オモカゲが死んだ後、地下の人形たちの様子を見に行ったんだけど、扉を開けた瞬間に襲い掛かってきたのよね。恐らくオモカゲが死ぬ前に私を殺すように命令を下していたんでしょうけれど、仕方ないのでその場で全部壊す事にした

 

それで人形たちには当然『目』の在る人形と『目』の無い人形の二種類が居たんだけど、私が破壊した『目』在りの人形の一部は嵌っていたはずの『目』がその場で消え去ってしまったのよね。レツ曰く【魂呼ばい(タマヨバイ)】で奪った本来の『目』の持ち主が存命の場合はその人の下に返るんだそうだ・・・肉体と魂は惹かれ合う的な感じかしら?

 

なんにせよ、目が無くなった人達が一斉に目が復活するという怪現象に加えて人形が破壊される事で目が本来あるべき場所に戻るのなら物理的ではなく霊的な繋がりが残ってるという事。あの場で人形を破壊した私の姿は幾人かの目を通して被害者たちに伝わっているでしょう

 

ならばもうそこまで情報を出し渋る理由も無いって事でハンター協会に確認を取ってもらって幻影旅団メンバーに懸けられている賞金と実績を頂く事にしたのだ

 

レツも「兄さんの犯した罪を擁護は出来ないし、ビアーへの報酬も正直ボクじゃ払えないからね。それで良いよ」と了承してくれたのよ・・・流石に今の段階で「お姉ちゃん」呼びを蒸し返すつもりは無いしね

 

ただ最初にハンター協会に連絡を入れた時はハンター歴も浅い協専のハンターを派遣すると電話口で言われたのだが協専と聞いて協会の腹黒ネズミ副会長ことパリストンの顔が頭に浮かんだ私は「いいの?幻影旅団だよ?その真偽も判断出来て万一幻影旅団に恨みが有ったりコレクションしたいって闇のブローカーに襲われても大丈夫な人材じゃなくてホントに大丈夫?絶対?責任取れるの?」と電話向こうのお姉さんを勢いで責め立てたら暫くしてからどんな風に話が繋がったのかハンター協会最高幹部の『十二支ん』の一人で『丑』の席に座っている犯罪(クライム)ハンターのミザイストム・ナナが来る運びとなったのだ。それで流石に当事者であるレツもオーバーオールという恰好は如何かと思ったのとレツの気分転換を兼ねて何種類か服を買う事にした訳ね

 

「・・・それにしても新米(ペーペー)にダメ出ししたら最高幹部ご来臨とか本当に如何なってるのかしら?」

 

「ボクとしては新米以上に駆け出しなビアーが言うには理不尽な文句だと思ったね」

 

ハンター歴と年齢層にバラつきの在るプロのハンターにとって重要なのは実力でしょう。訊けば大した実績も上げてないハンターだったみたいだしね。それに扱うのが幻影旅団だって言ってるのにそんな人を派遣とか、絶対に電話対応したあのお姉さんとか私が倒したのが『自称・幻影旅団』だと思ってたでしょ。原作のハンター試験にもそんなの居たし

 

そんなこんなで町で服を整えたり食材を買い付けたりして例の廃教会の一室でミザイストムさんの到着を待っていると私の『円』の探知に引っ掛かる人物が居たのでそのまま待っていると部屋の扉がノックされ、牛柄の服を着た男性が入室してきた

 

「ハンター協会の者だ。君たちがビアーくんと今回の件の関係者で良いかな?」

 

後ろ手に扉を閉めてそう確認してくる彼だけど、私達としてはそれどころではない

 

「(―――ッ、ぶっはぁ!なにアレあの全身牛スタイル。上着にズボンに靴も牛柄だし帽子なんてそれに加えて角まで生えてるってアレ特注品なの?オーダーメイドなの?分かってはいたけど実際目にするとキッツイわね)」

 

「(笑ったら失礼だよビアー。で、でも十二支んはコスプレ集団ってビアーの言ってた意味が分かったよ。あの恰好で町中を普通に歩いてきたんだよね?本人がマジメな表情してるのがもうダメ。あの人絶対靴下とかパンツとかインナーも牛柄だよ。財布もスマホもストラップも牛だよ。大真面目に牛尽くしだよ)」

 

「(脱会長派も認める常識人って触れ込みだったけど、協会内の常識がかなり浸食されてるのが窺えるわね。左目とか思いっきり殴られた痕みたいになってるし、パンダじゃないんだから)」

 

「(片目だけじゃパンダじゃないよビアー。っていうか牛って散々言ってたじゃん)」

 

「(そうだった!)」

 

「「(アハハハハハッ!)」」

 

「・・・・・帰っていいか?」

 

おっと!レツの緊張を解す為にもジンさんから聞いた十二支んのネテロ会長大好きっぷりを語って盛り上がっていたから本物を前にしてちょっと心の(タガ)が外れてしまったみたいね

 

「失礼しました。十二支んのミザイストムさんですね?今回の件の関係者でもある彼女、レツとの所謂女子トークに盛り上がってしまい、入室された事に気付けませんでした。見事な気殺です。流石は二つ星(ダブル)ハンターですね。御見それ致しました」

 

「確実に私の恰好を見てから二人とも爆笑してるように見えたし、そもそもキミのこの『円』で気付けない訳がないだろう。なぜ今の流れでそこまで堂々と嘘を並べられるんだ」

 

バカな。キリっとした表情を取り繕ってマジメに挨拶したと言うのに秒でバレただと!?可能な限りヨイショもしたと言うのに・・・って、『円』がいけなかったのか。もう『円』とか『堅』とか10年近くは常時展開を意識してたから忘れてた。そりゃあ廃教会なんて伏兵が待ち構え易い場所に向かうなら少し目を『凝』らしたりもするよね

 

それか彼が私の『円』に踏み入った時に私の意識がそっちに向いた微かな揺らぎを察知されたとか?十二支んクラスなら在り得そうだ

 

「それにしても何故最高幹部の十二支んが来たんですか?私としては副会長の息さえ掛かってなさそうならそれで良かったのですが」

 

それこそなんだったらハンター協会の風紀委員(他称)のブシドラとかでも良かったのよね。あの人原作でも活躍ゼロで死んだけど人望はそこそこ在るようだったし

 

実力の方はまぁどれだけ過大評価してもグリードアイランド編のボスのゲンスルーに及ばないでしょうね。ヒソカにサクッと殺されてたし・・・付き人の二人ならどっこいどっこいって感じ?

 

「キミは・・・いや、そうだな。私が偶々ハンター協会に出向いていた時にあの幻影旅団を狩猟(ハント)したと言っているのが聞こえてな。私も犯罪(クライム)ハンターとして一早く情報を耳に入れたいと思って詳しい事を聞いたという訳だ。まぁ元メンバーで確認もしっかり取れてないという事だったが、そこにキミの名前が挙がっていたからな」

 

「私の名前ですか?正直私はハンターとして大した功績も派手な行動もしてないと思いますけど」

 

「なに、この前協会でジンと出会ってな。キミの事も話していたのだ。そこで折角の機会なので直接苦言を呈しておこうと思ってな」

 

はい?私さっきも言ったけどまだこれといった活動も人脈も無いんだけど・・・なにか注意されるような事した?

 

「如何やらジンとはやけに意気投合して盛り上がっていたそうじゃないか。だがハッキリと言っておく。我々十二支んは決して会長のファンクラブ集団などではない!」

 

いや、そりゃジンさんが居る時点で違うでしょうけど、その牛柄スタイルでそれ言います?―――もういいや。多分深く追求しても暖簾に腕押しで平行線を辿る事になるだろうから時間の無駄ね。レツもどんな顔して良いのか分からないって表情してるし

 

気を取り直して仕事の話に移る事にした私達は部屋を移動してオモカゲの遺体を入れた棺桶の在る部屋に移動して蓋を外す。地下の霊安室なら二日程度なら腐ったりしないからね

 

「・・・成程。確かに蜘蛛の刺青だな。一時期旅団が活動していた中で起こっていたと思われる被害者の特徴とこの者の念能力とやらの詳細も齟齬は無い。しかし、できればもう一押し真偽を確かめるものが欲しい。本人からの証言は取れないからな」

 

彼はそう言うと懐から黄色いカードを一枚取り出した

 

「今回俺が此処に来たのは俺の能力が相手の嘘を見抜く事にも応用できるからでもある―――警告する。俺の質問に対して嘘をつくな」

 

瞬間、この部屋の空気が"ピン"と張ったような感覚がした

 

「俺の『警告』を無視した場合は一定時間身動きが封じられる。嘘をついたならこれで分かると言う訳だ。安心してくれ、変な事を聞く気は無い。質問は一つ、この男は本当に元幻影旅団のメンバーなのか如何かだ―――発言を許可する」

 

ミザイストムさんの視線がレツを向くと彼女も一つ頷いて返答する

 

「はい。間違いありません」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

二人の視線が絡み合う事数秒。何も起こらない事で彼は取り出した黄色いカードを仕舞い、部屋を覆っていた感覚も無くなった。能力を解除したんでしょうね。それにしても相手に宣言したルールを半ば強制する能力とは厄介よね・・・流石に色々と制約が有りそうだけど、確か能力名が【密室裁判(クロスゲーム)】だったはずだから密室でないと発動しないとか、相手に課すルールも裁判の範疇から逸脱したものは宣言出来ないとか有りそうね。『呼吸するな』とか『俺の靴を舐めろ』とか変なルールは組み込めない感じ?

 

さっきのレツに対する『虚偽の発言の禁止』ってルールにも彼女には黙秘権という抜け道が在った訳だし、そういったマイナス要素も再現されてそうな能力ね

 

「良いだろう。この者を幻影旅団の元メンバーと特別捜査権を持つ俺が正式に認める。それとこの遺体を俺が持ち帰るのではなく火葬したいとの話だったな?」

 

「はい・・・兄さんのやった事は許されない事だけど、せめて私くらいは見送ってあげたいんだ」

 

「・・・関係者だと聞いてはいたが、まさか妹だとはな。分かった。写真と毛髪などのサンプルは採らせてもらうが後は好きにするといい―――レツ君と言ったか。キミは今後の身の振り方は決めているのか?キミくらいの年では職を探すのも大変だろう。親戚など頼れそうなアテが無いなら俺の方で孤児院などを紹介しても良いが」

 

ミザイストムさんが片膝をついてレツと視線の高さを合わせてそう提案する。手慣れている感じだけど犯罪(クライム)ハンターとして活動してる彼は身寄りの無くなった子供たちとの接点も多いんでしょう

 

「お気遣い有難うございます。でも、暫くはビアーと一緒に行動する事にしたので私は大丈夫です。一応今までも大道芸で日銭は稼げていましたし」

 

「―――そうか。いや、問題ないならそれに越した事は無い。では早速だが遺体を運び出して火葬しても構わないかな?ああ、部外者の私が居てもアレなので遠くから見させてもらう事にするよ」

 

レツとしてもオモカゲとの別れは済ませてあったので早速外に運び出して予め組んであった木やら可燃物の台座の上にオモカゲを載せると火を放ち、大方燃え尽きた辺りで残りを土に埋めたら終わりだ。その間レツは一言も発しなかったけど、私もミザイストムさんも黙って見ていた

 

さて、そんな簡易の葬儀が終わりを告げた後、ミザイストムさんがレツに気付かれないように話し掛けてきた

 

「ビアー君。幻影旅団の元メンバーを狩猟(ハント)した事でキミの口座には4億ジェニー程振り込まれるだろう。A級賞金首の彼らは基本生死問わず(デッドオアアライブ)だからな・・・正確にはそこから俺の派遣料やら手続き料が引かれるが詳細は後で確認して欲しい。不明な点が有ったら電話してくれ。これが俺のハンターコードと会社の番号だ」

 

ミザイストムさんが名刺にハンターコードをメモして渡してくる。そう言えば警備会社の社長さん兼弁護士でもあったっけ?―――それにしても幻影旅団が4億とか安すぎとも感じるけど、面子を潰された絶対旅団殺すマンと化したマフィア連合が懸けた賞金が1人頭20億だったし、表の賞金としてはまぁ妥当なのかな?割に合わない事に変わりないけどね・・・この世界だと幻影旅団(オモカゲ)の遺体をオークションに出したりしたら良い値が付きそうってのが割と狂ってるけどさ

 

ミザイストムさんは色々と兼業してるハンターで忙しいからかレツにも短く別れを告げるとそのまま私達の前から去って行き、その小さくなっていく牛柄を見送っていった

 

「・・・あの人って法廷でもあの恰好で被告人の弁護をしてるのかな?牛の帽子でキリっとキメながら”異議あり!”とか言ってさ」

 

「ぶふっ!―――ビアー、天丼は止めてよ。やっと治まってきてたのにッ」

 

うん。こうしてちゃんと笑えるならレツも大丈夫そうかな?

 

「それじゃあ私達もそろそろ出発しよっか?」

 

「―――うん、そうだね。兄さんの願う形とは違うけど、立派な人形師になりたいって想いは棄ててないからね」

 

人形師として劇もやるなら、これから色んなものを見たり聞いたりして視野を広げ肌で感じる事は、彼女の劇にも創り出す人形たちにもより深みを与えてくれるでしょう

 

さてさて、お次はどんな体験や出会いが待っているのかな?

 

 

 

 

ビアーとレツの二人が旅立って幾つかの町を経由した後、彼女たちはとある山岳地帯の一角で汗を流していた。その土地に人知れず湧いていた天然の温泉で美少女二人がその玉のような肌を自然の中で惜しげもなく晒し、朱く染まった頬に首筋から流れる汗がお湯の中に溶けていき、彼女たちの旅の疲れを拭い去っている・・・という訳ではなく

 

「ひぃいいん!ビアーっ、あとコレどの位掘ればいいの~!?」

 

「あと、100mはザックザク掘っても大丈夫だからさっさと掘る!ほら、スコップの『周』にムラが出来てきてるわよ!」

 

とても泥臭い汗を流しているところだった(レツ限定)

 

「ホッホッホ♪いやぁ偶には職場に花が在る状況というのも良いものですな」

 

加えて更に一人。見事なカイゼル髭を生やした高身長のスーツ姿の男も如何やってか泥一つ服に跳ねさせないで彼女たちの隣でスコップを振るっていたのだった

 

如何してこんな事をしているのかについては話は一日前に遡る

 

 

▷▷▷

 

「う~ん♪やっと町に入れたねぇ。レツの服も結構ボロボロになっちゃったし、また旅用の丈夫なのを何着か買っておきましょっか」

 

「うぅぅ・・・足が痛い。疲れた。ねぇビアー。ボクは人形師を目指してるのになんで町から町への移動の全てで山賊とエンカウントしなくちゃならないのさ?この短い間に今までに作ってきた人形の数以上に男の人の顔面を殴る事になるとは思わなかったよ」

 

私とレツは先程町の入り口でレツも口にした山賊を引き渡してから中に入ったところだ。まぁたんまりと金銀財宝を蓄えてるような山賊やら海賊がそうそう転がってる訳もないので臨時収入は宝石が数点程度だったけどね。捕まえたらレツとしてもそんな人達と何時までも一緒に居たくないって事でこの町まで丸二日ほど訓練がてら走ってきてたりする―――勿論レツの限界ギリギリのペースに抑えたし、私もレツを汗だくのまま旅をさせるのも悪かったから川で水浴びとかはサービスしておいた。具体的には縄で縛った盗賊たちを更に即席で掘った穴に落として逃げられないようにしてから二人で水浴びだ。最悪逃げられても構わないし、地図を確認して5km以上離れた川までレツを担いで往復とか前世基準では意味不明な事をしてたけどさ

 

それから最初に盗賊や人攫いなどを相手にする時はレツに戦いに慣れさせる意味で『纏』だけ許可した状態で最初は1人、次は2人とザコ敵と戦って貰ったのだ。『練』とかで殴ったら死ぬか念能力に覚醒しちゃうからね・・・『纏』だけだと攻撃力は上昇しないからレツは相手が動けなくなるまで只管にグーパンを叩き込む必要は有ったけどさ

 

・・・最後の方とかレツの瞳のハイライトが消えてた気がする

 

なんで私がレツにこんなバイオレンスな事をさせているのか?それには当然理由がある

 

「なんでってレツは出自が特殊なんだから未来まで使える身分証明書代わりにハンターライセンスを取得した方が良いって結論になったからじゃない。外見上歳を取らないらしいレツじゃライセンス無しだとお店の開業・経営もままならないし、自衛の手段は特に必須なんだから」

 

ハンターライセンスは信用の証と同義だし、ハンター十か条に『同胞のハンターを標的にしてはならない』という一文がある事からもプロハンターがレツを狙う事への一つの抑止力にもなるからね

 

それでも狙うようなら正式に返り討ちだし、アマのハンター相手だとしてもプロのハンターとは信用・信頼が違う。アングラな奴らが狙ってくるかも知れないけど、裏社会の戦闘のプロである陰獣を退けられる程度の実力が有ればプロハンターの証は将来的に有利に働くはずだ

 

「それについては納得したけど、正直最初は走り込みとか組手とかそんな感じのもっと普通の鍛錬からだと思ってたんだよ」

 

「え?だから走り込み(犯罪者とランニング)とか組手(ナイフや銃装備の賊との殴り合い)とかじゃない。オモカゲの念を受け取ってると言ってもそれはあくまで『神の人形師』としての力でレツ自身の『纏』や『練』や基本応用技の技量はお粗末だったからね。オーラ量のゴリ押しでレツの未熟な『纏』でも下手なナイフくらいは余裕で弾けたし、自分でもオーラの操作が上手くなった自覚は有るんでしょう?」

 

「そりゃあね!誰だって銃口向けられたら必死にもなるし、彼らを捕まえて一緒に走ってる時だって何時後ろから襲撃されたらって不安になっちゃって『纏』を解こうなんて思えなかったよ!お蔭様で最近は寝て起きても『纏』を維持したままだよ!」

 

うんうん。寝てても『纏』とは修行の成果が出ているようで何よりだ。レツも幻影旅団員の血を分けた兄妹というだけあってかオーラの操作技術や体力の向上も早い。『神の人形師』の力は違和感なく使えそうだとレツは言っているけど、記憶の在る人形を無理やり従わせるあの能力をそのまま使う気はないようで取り敢えず今は基礎を固めているところだ

 

幻影旅団の団長であるクロロも念能力を後天的に変化させてたのでレツもオモカゲの能力を軸にして、もっと別の力として発現させる事も出来るのではないかと検討中だ

 

生きた人形であるレツはひょっとしたら技術は兎も角として体力やオーラ量は変化しないかもとの危惧は在ったけど、杞憂のようだった。最も『今の肉体年齢における限界値』は有るかも知れないけど、私達くらいの年齢なら生身で試しの門を3か4までは開けるようにもなるでしょう

 

取り敢えず最初にホテルにチェックインしてシャワーで汗を流して着替えた後は町を散策して適当な広場でレツの人形劇も披露していく。彼女も私と一緒な時点で男の子の恰好だとかは無意味だと悟ったのか、劇をやるときも普通に女物の服を着るようになったわね

 

「う゛うぅっ・・・人形劇(こうしている)時だけは自分が人形師なんだって再認識できるよ。人形と戯れている時だけがボクの癒しの時間。そうだ、そうだよね。それならもういっそのこと人形に囲まれた人形と暮らす人形王国を―――」

 

「はいストーップ!」

 

レツがここ最近のデンジャラスなサバイバル殺伐旅行のせいでダークサイドに堕ちそうになっていたので頭にチョップを入れて現実に引き戻す

 

「あ痛!?・・・はっ!ボクは今なにを?」

 

幸い人形劇はひと段落して投げ銭貰ってる時だったから良かったんだけどさ―――そんな感じにレツの半分メンタルケアを含めた人形劇が終わり、レストランで食事をとってるとレツから今後の行動についての話を振られた

 

「それじゃあ、食べ終わったら何時ものように町中を二人で見て回るところから始めるの?」

 

「そうだね。レツはまだ(武装した)チンピラ複数人を倒せる程度だし、もう1~2か月程度は一緒に行動した方が良いでしょうね。でも今回は何時もと違って役所に行こうと思ってるのよね」

 

「役所?なにしに行くのさ?」

 

「土地の所有権とかを軽く調べておこうかと思ってね。実はこの町に来る道中で強い気配を感じたからそっちに(『円』の)意識を伸ばしてみたんだけど、どうにも遺跡が埋まってそうな感じだったから、問題無ければ掘り出そうと思って」

 

念能力における『円』の探知の仕様は様々で個人の資質や解釈に依存してる面が大きいと私は思っている。キメラアント編の猫娘ことピトーは地面の下に『円』を伸ばせないと言っていたけど私は普通に伸ばせたし、蟻の王の『円』は部下の能力を取り込んで細かい粒子を広げる特性からか布や箱で包まれたその中身まではハッキリと知覚出来ていなかったのに対して私は3Dスキャンのようなイメージで『円』を形作ったからか箱の中身とかも大体分かる・・・勿論万能ではなくて、例えばリンゴと梨とか片栗粉と幸せな気分になれる粉の違いとかは分からないけどね

 

そして私が感じ取った強い気配とはオーラの籠った物品だ。以前にも価値のある品物はオーラを纏っている事が多いと説明したように『円』を正しく使えば財宝(トレジャー)ハンターとしてかなりのアドバンテージになる

 

「へえ、遺跡の発掘とか私の思い描いていたハンター像そのままだね。面白そうだよ!」

 

「まぁ今回は私は遺跡じゃなくてその物品目当てだから遺跡ハンターというよりはトレジャーハンター寄りなんだけどね。遺跡全体のちゃんとした発掘、修繕とかは他の専門家にでも任せるつもりよ。ジンさんの残した遺跡発掘マニュアルに沿って作業すれば問題も無いだろうし」

 

遺跡の発掘とか細かくやろうとすればかなりの時間は掛かるはずだから、取り敢えず一度世界を見て回りたい私としてはそこまで時間を費やしたくないのよね。遺跡の第一発見者の欄に名前が載れば十分でしょ。お金は有るから初期費用くらいは受け持っても良いし・・・と言うかある程度は散財しないと貯まる一方になりそうなのよね、ハンターって

 

そうして話していると近くに座っていた人が立ち上がって私達のテーブルの前までやってきたので見上げると思わずストローで吸っていたクリームソーダを吹きそうになった

 

「失礼します、お嬢さん方。その話、私にも詳しくお聞かせ願えないでしょうか?」

 

いきなり会話に入ってきた男性にレツは警戒を隠さずに「貴方は?」と問うと彼も一歩下がって深々と頭を下げて自己紹介してくれた

 

「これは重ねて失礼を。私、プロのハンターで遺跡の発掘・修繕を主に行っている者で名をサトツと申します。この町にはこの近辺に遺跡が眠っている可能性があると様々な資料から導き出して調査に来た次第です。お嬢さん方が見つけたというその遺跡。後に専門家に任せると言うのであれば、是非とも私にお任せ頂ければと思いまして声を掛けさせてもらいました」

 

「(ねぇビアー、大丈夫なの?先ずはこの人が言ってる事が本当か裏を取らないといけないし、それくらいなら最初からハンター協会に適当な人を派遣してもらった方が早いんじゃない?)」

 

レツが小声で当然と言えば当然の提案をしてくるけど、私として問題無しとしか言えないのよね

 

「大丈夫よ―――サトツさん。私は貴方の事はプロハンターになるにあたって(原作キャラは)ネットで調べた事が有るので知っています。ですが、私が見つけた遺跡がサトツさんがこの町で見つけようとした遺跡と同一のものかは保証出来ませんよ?それでも良ければこちらから仕事を頼みたいくらいですが」

 

「これはこれは、私などを知っていて下さったとは光栄ですね―――ええ、勿論構いませんよ。その場合は私はこの町で二つの遺跡を発掘できるという事でもありますし、私の探している遺跡が別物で且つ見つからなかったとしても遺跡の調査そのものは成功と言えるでしょう。なにも見つからない事の方が多いこの手の調査で最初から見つかった状態からスタートを切れるのは幸運と言う他ありません」

 

「では宜しくお願います。私は今年プロハンターになったビアーで、こっちは人形師のレツ。今はプロハンターも兼任しようと奮闘中です」

 

断る理由も無かったので私は立ち上がって右手を差し出すとサトツさんも握手を返してくれた。

レツも私が彼の事を知っていたと聞いて警戒を解いたようで私の後で彼女も握手を交わす

 

「後輩と後輩候補のお二人ですか。これは私も先輩として気合を入れなければいけませんね」

 

そんなこんなで3人で場所を確認して特に掘っても問題ない所だと分かったらその日は装備を整えて、翌日に目的の場所までひとっ走りすると私達は山の傾斜の前に辿り着く

 

「ねぇビアー、ホントにこの奥に遺跡が埋まってるの?」

 

「まぁね。きっと大昔に地滑りにでも飲み込まれたんでしょう。かなり奥だから長い年月の中で脆い地盤が全部被さったんじゃない?―――さて!それでも念能力者が3人も居るならこんな山奥に重機を引っ張って来るよりスコップの方が圧倒的にコストも掛からなければサクサクも掘れるんだし、始めましょっか!」

 

「重機よりも早いって・・・念能力者集団のプロハンターが実績を上げまくって世間から優遇されるのも分かる気がするなぁ」

 

「フム、そうですな。しかし特権を与えられているからこそ、誠実さを持って仕事に挑まなければなりませんよ」

 

こうして私達共同の発掘作業がスタートしたのだった

 

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