毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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お宝羊とペット金策

私達が遺跡発掘の為に山の斜面を掘り進めて暫くが経った。単純に目的地まで最短ルートで穴を掘るだけなら一瞬だけど、遺跡全体を出土させるためには山肌全体を削っていく必要が有るし、削った土砂だって邪魔にならないように少し離れた場所に文字通り山盛りにする必要も在ったからだ

 

レツはまだまだだったけど私とサトツさんの二人はテレビの10倍速再生でもしてるかのようなスピードで穴を掘り、土を積んだトロッコを爆走させていく事で朝から始めた作業も昼過ぎ辺りには大雑把に掘り進む予定の分までは終わらせる事が出来たので、今は少しだけ遅めの昼食を食べているところだ。レツなんかは私が料理したカレーライスを腕をぷるぷるさせながら食べている

 

「腕がもうパンパンで腰も痛い・・・プロハンターって念能力以前に基礎体力もお化けなの?なんで二人とも『軽い運動をした』って顔をしてるのさ」

 

「そりゃあハンターは体が資本だからね。それにレツも最初に出会った頃なら午前と同じペースで作業してたら開始30分でダウンしてただろうし、十分基礎体力も付いて来てるんだから良い事じゃない―――もっとも、まだまだ足りてないけどね」

 

レツが愚痴を零すけど心配しなくても年末までには200kmマラソンくらいは出来るようになって貰う予定だから。サトツさんの一次試験のマラソンって原作だと80km地点で脱落者1名以外距離の情報が無いし、階段とか沼地とかを考慮したらそれぐらいは走れないとキツイと思うのよね

 

「はい、ビアーくんの言う通りですな。ハンターは何かを狩る以上は競争相手が居るものです。動植物や宝石など、珍しいものは当然早い者勝ちですし、同業者ならまだしも密猟者に出し抜かれる訳にもいきません。他にも一見体力とは関係なさそうな・・・例えばハッカーハンターなどでも特に悪質な者と敵対すれば暗殺者を送り込まれる危険性も有ります。プロハンターは良くも悪くも目立ちますので自衛の手段として一番分かりやすいのが念と体術を鍛える事なのですよ」

 

お金持ちなら念能力者の護衛とかを雇うって手も在るけど、それはプロハンターが求めるものとはズレてるもんね

 

「それにしてもビアーくんの『円』の範囲には目を見張るものがありますね。私も『円』は使えますが、遺跡内の探索程度なら兎も角、隠れた遺跡そのものを見つけ出せる程には扱えませんから」

 

「小さい頃から『円』の修行は続けてましたからね。もう少し広範囲を探れるようになったら今度は沈没船とかのお宝を探してみるのも面白いかも知れません」

 

海底は深いし海は広いから半径500mちょい程度の『円』だと取りこぼしがまだまだ多いはず。キメラアントの護衛軍のユピーが70万オーラでピトーもそれと同格だと考えてピトーの『円』の平均が1500mだとすれば、今の私のオーラ量から換算してあと300m程度は『円』の範囲を伸ばせるはずなのだ

 

・・・ずっと使い続けてるのに技量が追いついてないとか『円』の習熟の難しさよ

 

寧ろピトーの『円』の適性が頭おかしいと見るべきか・・・あれか?あの『円』は猫の好奇心のなせる業とでも言うのか?

 

「ふふふ、そうですな。若いうちは様々なものに手を出してみるのが良いでしょう。そうしているとその内自分の興味・好奇心がどこに惹かれるのかが分かってくると思いますよ」

 

そうして昼食も食べ終わって少しの休息に入ろうとしている時にサトツさんに声を掛けられた

 

「そう言えば聞きそびれていたのですが・・・ビアーくんはレストランで『ジンさん』と仰ってましたが、あのジン・フリークス殿とお知り合いなのですか?」

 

サトツさ~ん。貴方が現代の遺跡発掘の第一人者と言えるジンさんに興味が有るのは分かってますからマジメな表情で段々近づいて来るのは止めてくれませんかねぇ?下手したらセクハラに該当する距離ですよそれは!

 

「え、ええ、以前一度世界樹の天辺に登った時に偶然出会ったんですよ。ちょっと世間話をしただけで連絡先も交換してないですし、今の居場所とかも分かりませんよ?」

 

「―――そうでしたか。実は私は遺跡ハンターとして彼の仕事の美しさに心を打たれた者でしてね。機会が有れば是非とも一度お話を伺ってみたかったのですが、残念ですね。また次の機会を待つとしましょう」

 

そう言えば私も世界樹で出会った時にホームコード貰っておけば良かったわね。何だかんだで原作重要キャラと出会えて舞い上がってたのかな?

 

「それなら今回は私と連絡先を交換しておきませんか?もしもこの先ジンさんと出会う機会が有ったならサトツさんの事を伝える事も出来ますし・・・風来坊で気分屋のジンさんが如何答えるかは分かりませんけど、電話で話すくらいは出来るかも知れませんよ?」

 

「よろしいのですか?」

 

「あくまでも偶然出会えたらの話ですし、新米ハンターでまだ横の繋がりの薄い私としてはサトツさんのような実力者の連絡先はそれだけで貴重ですから」

 

情報なんてのは多角的に見つめる事で見えてくるものも在る。世界中を飛び回るハンターの知り合いは(実力者限定で)多ければ多いほど良いからね

 

「私としてもビアーくん程の(オーラ)の持ち主との繋がりは得難いものです。貴女はきっと将来有名なハンターとなれるでしょう―――では早速ですが交換いたしましょうか」

 

私達はお互いの連絡先を交換するとレツも含めてサトツさんの今までの遺跡発掘の雑談を聞いて休憩時間を潰し、いよいよ遺跡を本格的に掘り起こす作業に移る事になった

 

「サトツさん!今立ってる場所の膝の上から奥行2mまではくり抜いちゃって大丈夫です!レツは3歩前進。そう、それで丁度その真下に井戸の跡があるから少しずつ表面を削って出土させて!」

 

私は『円』をこれでもかとフル活用させて二人に指示を出しながら自分も遺跡を傷つけないようにその全貌を顕わにさせてゆく。手持ちの小さいスコップと刷毛で何も知らない人から見たら慎重とは何か?と疑問に思う早さで作業を進めていくとその日の夕方辺りには土砂の重みで上層部が崩れ落ちたのであろう建物が半分以上見えてきた

 

流石に一から作業し始めて一日では終わらなかったけど次の日には地上部分の不純物は全て取り除く事が出来た。建物内には崩れ落ちた屋根の一部や壺の欠片などが散乱してたのでそれも回収して簡易で建てたテントに保管済みだ。長い年月で壊れてしまったそれらは後で高難易度パズルの如く組み合わせて補修し、当時を再現出来るようにする訳だけど、ジグソーパズルで音を上げる人には到底出来ない根気の要る作業ね

 

何本か特徴的な柱の跡が見てとれたのでサトツさんに訊いてみたところこれは古代のギャリシャ時代の建造物との事だった・・・ギリシャかな?まぁこの世界って日本ならぬジャポンも在るくらいだし、キリストとユダとか前世のものがチラホラ出て来るから別段可笑しくは無いんだけどさ

 

「それでビアー。ビアーの言っていたお宝は結局何処に在るの?」

 

そりゃあ全部掘り起こして出てきたのは遺跡と瓦礫という名の遺物だけだから当然の疑問よね

 

「地下よ地下。建物の奥の床下に秘密の階段が有って、その奥に宝物庫が在るみたいね。幸い頑丈な造りをしていた上に負荷の掛からない土の被り方をしてたのか、階段を掘り起こす必要は無いみたいだしね」

 

お宝を地下に隠すのは定番中の定番だ。私達は宝物庫に繋がる扉の在る場所に歩いて行き、慎重に扉を開けると中にガスが溜まってたりするかも知れないのでガス抜きをする

 

「―――という訳でこの長いホースを宝物庫まで『円』の感覚頼りに伸ばしたら一気に空気を送り込んで中の空気を押し出します!」

 

「ちょっと待ってビアー。なんでキミがホースの先端を握って思いっきり息を吸い込んでるのさ!空気を送り込むってソレ!?原始的手法にも程があるよっ!」

 

大丈夫大丈夫。世の中クジラ並みの肺活量の人とか居る程度にはこの世界の人間の体構造も大概だからこんな方法も使えるんだよ。マンパワー万歳。大体レツだって最初にスコップで岩盤も削り取ってた時点で普通の人からしたら十分頭おかしいバケモノだからね?

 

はい、そんな感じに最低限の安全を確保したら早速お部屋探索の時間だ。もしかしたら少しだけカレーの匂いが漂ってるかもだけど、きっとそれは気のせいでしょう。一応ブレスケア噛んだし

 

そうして私達はいざ慎重に奥へと進んでいく。最悪崩落しても脱出は出来るけど、遺跡が傷つくので衝撃を与えないようにゆっくり歩いて行くと小部屋に辿り着いた

 

中には朽ちた槍や錆びて折れた剣に虫食い状態の布らしきものなど、流石に年月の重みに耐えかねた遺物が散乱していたけど、穴が開いて中身が零れてる宝箱の中の宝飾品なんかはかなり保存状態も良い物が揃っていた

 

「う~ん。やっぱり木材とか鉄製品とかはダメになってるのが多いわね。何本か折れてないのも在るけど使い物にはならないし・・・考古学的観点からみたらお宝なんでしょうけど」

 

「あはは、別に剣とか貰っても困るけどね。それでビアーの言っていたオーラの籠ったお宝ってこの宝石たちの事?ボクも目を『凝』らしてみればオーラが感じ取れるのが幾つか混じってるのは分かるけどさ」

 

レツが『凝』をしながら宝石やら金の腕輪やらが置いてある場所を見渡しているけど、私が『円』で感じ取ったお宝は別にある

 

私は(おもむろ)にボロボロの布が被さったソレをゆっくりと布を剥がしてその下に埋まっていたモノを顕わにすると、強いオーラを発する黄金色の毛皮が目に飛び込んできた

 

「おお!オーラに守られていたからか劣化した様子も無いこれは!・・・羊の毛皮・・・よね?」

 

最後に疑問形になってしまったのは毛皮の背中に当たる部分に小さな羽が生えていたからだ。黄金色の羊というだけならまだしも、翼の生えた羊なんて言われると自信が持てなくなってくる

 

でも古代ギリシャ。毛皮。翼の生えた金の羊。お宝と複数のワードが頭の中で結びつくと一つの答えが出てきた

 

「ひょっとしてだけど・・・【金羊の皮(アルゴンコイン)】・・・?」

 

「ビアー、なに?その【金羊の皮(アルゴンコイン)】って?」

 

「ああ~、簡単に言えばギャリシャ神話に出てくるお宝の名前ね」

 

そう言いつつ私はその皮を持つと地面に向かって"ポイっ"と放り投げる

 

「って!貴重な神話級のお宝をなんでいきなり投げ捨ててるのさ!」

 

「いや~、もしかしたらドラゴンが召喚されたりしないかな~って思ったんだけど、そんな事も無かったわね」

 

何処ぞの聖杯求めて戦争してる世界のコルキスの王女様も竜召喚のスキルが無かったから羊の皮をモフモフする以外に使い道が無かったらしいし、仕方ないか

 

「なんでドラゴン!?羊の皮ってドラゴン喚べたりするの!?」

 

因みにこのハンターハンターな世界にはドラゴンが普通に居たりするけど、ドラゴンをおびき寄せようと思ったら加工した皮より丸々と太った羊をそのまま用意した方が良い気がするけどね

 

するとレツが「全くビアーは何を考えているんだか・・・」と文句を言いつつ【金羊の皮(アルゴンコイン)】を拾い上げると首を傾げる

 

「あれ?ねぇビアー。なんかこの毛皮、持ってるとちょっとだけオーラを吸収されるんだけど、そういう効果も有るの?」

 

え?極上のモフモフを堪能して精神が満たされた結果にHP回復とかはするかもだけど、MP吸収とかは無かったはずだけど?さっきの私は毛皮をすぐに投げちゃったし、私自身のオーラが多いから気付かなかったのかな?

 

考えているとレツの持つ皮が光輝いて光の粒子が舞い踊り、それが収束するとぬいぐるみのような小さな翼をパタつかせた黄金の羊が現れた

 

≪メェェェ?≫

 

クリっとしたお目目で空を飛びながら周囲を見渡してから最後にレツを見据えるとその胸に飛び込んで頭をグイグイと擦り付けるように甘える羊。をい羊、そこ代われ

 

「えっ、ええええええ!?なにこの子!?何処から出てきたの?どういう存在!?」

 

「ふむ。これは珍しい。如何やらその【金羊の皮(アルゴンコイン)】とやらには念獣を使役出来る効果が在ったようですな。きっとその皮の持ち主のオーラを糧に出現し、主人と定めるアイテムなのでしょう。当時の具現化系の能力者辺りが遺したものだと考えるのが妥当なところですか・・・念能力は死後も世界に留まり続ける事が稀に在りますからな。大抵は呪いのアイテムなどに見られる現象ですが、それが全てではありませんし」

 

グリードアイランド編の指定ポケットカードにも幾つか似たようなのが在ったっけ?あそこで出て来るお宝も一から十までゲームマスターが念能力で創り出したとは到底思えないし、きっと彼らが集めたお宝をゲーム内でコピーしたものとか有るんでしょうね・・・原作ビスケが手にしてた唯一無二の鉱石であるブループラネットとかカード化限度枚数が幾つか在る時点で唯一無二じゃないし、ビスケが持ち帰ったのが本物なら次にグリードアイランドをクリアした人はブループラネットは指定できないとか有りそうね

 

「え・・・でもこの子って確かに凄く可愛いですけど多分それだけですよ?仮にも念獣ならそれだけのものを作るなんて在り得ます?」

 

確かに子羊くらいの大きさでレツに抱きかかえられて気持ち良さそうに目を細めている様子を見るに、少なくとも戦闘には使えなさそうね

 

「レツ。念能力ってのは自分で形作るものも在れば本人が無意識に作ってしまうものも在るからその子がなんの能力も持ってなかったとしても、別段変という程ではないわよ」

 

無意識に念を作るのはビスケの肉体変化とかネオン・ノストラードの占いとか蟻の王の食べた相手のオーラの吸収とかが例に上がるわね

 

「まぁ念能力者が遺した念以外に考えられる可能性が在るとすれば2つかしらね?」

 

レツが「2つ?」と首を傾げてこっちを見るのでこちらも真剣な表情でその可能性を語っていく事にする

 

「そう、2つ―――1つは人類の集合無意識の結晶である可能性。人間は念能力が使えなくてもそれぞれが微量のオーラを体から垂れ流しているから、その流れ出た生命エネルギーが伝説や伝承を基にして"こういうのが在るかも"って意識・・・概念が長い年月の積み重ねによって物品としてこの世に具現化した場合」

 

ふっふっふ!私の説明を聞いたレツが驚愕で目を見開いてるわね。サトツさんは表情が固定されてるからよく分からないけどこの『全人類一体型』と言う複数人の念を組み合わせたただの相互協力(ジョイント)型の念なんかでは及びもつかない規模の話はビックリしてるでしょう

 

「ビアー・・・そんな話聞いた事も無いんだけど、ホントに在る事なの?」

 

「さぁ?」

 

「へっ?」

 

同じ目を見開くでも今度はハニワみたいなマヌケな表情になったわね

 

「いえね、もしかしたらそんな事も考えられるんじゃないかなぁ?って感じの事をもっともらしくキメ顔しながら語ってみただけで―――"メギャッ!!" ぶふぉ!!?」

 

今私の人体から鳴ってはいけない類の音が鳴った!

 

「ちょっとちょっとレツさん!?さっき自分で愛らしいと言ったばかりの子羊を凶器としてフルスイングするとか私貴女をそんなバイオレンスな子に育てた覚えはないんだけど!?」

 

ご丁寧に羊の硬い蹄の部分が私の頬を貫いたんだけど、そんなモフモフの塊をよく咄嗟に凶器として扱えたわね。子羊がお目目廻して半ば気絶してるじゃない

 

「寧ろそんな風に育てられた覚えしかないよ!ビアーと旅してから何回ボクの拳がゴロツキの血で濡れたと思ってるのさ!―――はぁ・・・それで?最後の1つってのは何だったの?」

 

う゛っ、レツの視線が氷点下まで下がってる。正直もう黙ってたいけど、一度吐いた言葉は飲み込めないからなぁ

 

「ええっとですね、レツさん。3つ目の可能性はその子が生前毛皮を剥がれる時に死にたくないという生存本能が念を覚醒させて、結果、自分の剥がれた皮を依り代に念獣という形で魂をこの世に―――"バゴォッン!!" はぐぇええっ!!?」

 

今度は下から上にかち上げる挙動で蹄が顎に飛んできた!念獣じゃ無かったら蹄が粉砕されてたところなんですけど!?

 

「こんな可愛い子にそんな過去がある訳ないじゃないか!物騒な妄想は禁止だよ!」

 

レツさん。今この場で一番物騒なのは貴女様ですよ?さり気に私を殴る時に羊の蹄に『凝』してたよね。念獣だからこそ出来る芸当なんだろうけど、ホントよく咄嗟に出来たわね

 

木っ端の念能力者なら今の一撃でノックダウンからの病院送りは確実だったと思う

 

≪きゅうぅぅぅ・・・≫

 

ああ~、子羊ちゃんが完全にダウンしちゃってる―――と、そんな感じにレツと戯れていたらサトツさんが私達に聞こえるように態と大きく咳払いを入れた

 

「お二人とも、この場所が崩れかけの地下室である事を失念していませんか?」

 

「「御免なさい!」」

 

二人揃ってサトツさんに頭を下げると中の様子を写真に撮ったり、動かしても大丈夫そうなのを一通り外に運び出したら早速彼に黄金の羊の皮を譲ってもらえるように交渉する

 

「ええ、勿論構いませんよ。第一発見者は貴女なのですからその権利が在ります。後で記録だけ残しておいて下されば問題ありません。しかし宜しかったのですか?あの部屋の宝物にはまだ幾つか高値で売れそうな物は残っていましたが」

 

「別にお金が欲しくて遺跡を掘った訳じゃありませんでしたからね。念獣が召喚出来るアイテムとか私の好奇心を満たすには十分過ぎる成果でしたよ―――私の取り分がまだ在るって言うなら遺跡修繕の費用なり歴史の資料なりに使ってやって下さい」

 

金羊の皮(アルゴンコイン)】は凄いアイテムだけど、今のところモフる以外に使い道は無いから競売にかけても1億からのスタートになるかも怪しいのよね・・・ただ、仮に私達があの子を手放した場合はどこぞの”かわ美ハンター”が競り落とす気がするので、それは余りにも惨いと思うし、念獣を表に出さなければ荷物としても大して嵩張らないしね

 

「―――分かりました。遺跡ハンターの名に恥じない扱いをするとお約束しましょう」

 

サトツさんの目を真っ直ぐ見ながらそう言うと彼も一つ頷いてから承諾してくれた

 

「ねぇビアー。それならこの子に名前を付けてあげようか。何時までも『この子』って呼ぶ訳にもいかないでしょ?」

 

確かにね。これから一緒になるなら呼び名は大切だ。私はレツが抱きかかえていた子羊を"ヒョイッ"と持ち上げるとそのまま腕に抱くとさっき気絶した後そのまま眠っていたのか私の胸元で寝息を立てていた

 

―――ック!なにこのアニマルセラピー効果に極振りしたような生物(念獣)っ!モッフモフで柔らかくて顔を埋めるとお日様の匂いに包まれて獣臭さとか1ミリも感じないんだけど!

 

このまま思考停止してモフモフタイムに突入したい衝動をなんとか抑え込んで、どんな名前が良いのか考えていく

 

「う~ん。黄金・・・羊・・・ゴールデン・・・ウール・・・うん。『ルル』!この子の名前は『ルル』にしましょう!」

 

「ルルか・・・悪くはないかな?―――サトツさんはどう思います?」

 

「そうですな。この手のものは第一発見者に命名権が在るものですのでビアーくんが名付け親で問題ないと思います」

 

「いや、そういう事を聞きたかった訳じゃないんですけど・・・」

 

レツに感想を求められたサトツさんが天然の入った返答をして若干呆れられてるけど、二人もそれで良しという事で翼の生えた黄金の子羊の念獣はこの日から『ルル』と名付けて私達のマスコットになった・・・それから夜に寝るときにどちらがルルを枕にするかで暫くいがみ合ったけど、日替わりでモフモフする事とルルを使えない時は本体である毛皮を敷く事でなんとか妥協した

 

 

 

 

「それでは私達は目当てのお宝も手に入れた事ですし、そろそろ旅に戻ろうと思います」

 

「ええ、私の手配した遺跡の修繕・記録係のチームも明日には到着の予定ですからね。後は細かい作業ばかりですし、大丈夫ですよ―――今回は大変実りある成果と出会いが在りました。また何時しか出会う時が有れば、ゆっくりとお茶でもしながら語り合いましょう」

 

サトツさんに私達の旅立ちを告げるとそう言ってから今度はサトツさんの方から右手を差し出してくれた

 

「はい、是非」

 

「大変だったけど、でもとっても楽しかったです!」

 

私とレツが順番に手を握り返して最後に軽く別れの言葉を告げるとサトツさんに見送られながら私達はその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

後々の話だけどルルにはあのモフモフの毛糸を切り離して毛皮と同様に現実に残す事が出来る能力が有ったみたいでサトツさんにはルルの毛で織ったウールソックスとハンカチをプレゼントしておいた・・・私達も自分の分を用意したけど汚れ知らずで触り心地最高という事に目が眩んで全身金色装備一式を業者に頼んで作ってもらったところで目が覚めた

 

「・・・ねぇビアー。コレどうしようか?」

 

「売りに出すしか無いんじゃない?」

 

その後ルルの毛糸の『ゴールデン・ウールシリーズ』は一部の富裕層に大変好まれる事になって私達の収入源の一つになったのだった

 




ウールシリーズは少量生産で注文すれば黄金枕や掛布団なんかもあります。ソファーのカバーやカーペットなんかも全てそれで揃える猛者も未来には居たとか居なかったとか・・・
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