これだけだと私達も彼らを拘束する理由としては弱いからね・・・こういう時には嘘を見抜けたりするタイプの能力が欲しいと思うが詮無きことだ
私達は軽く視線を交差させてアイコンタクトを取るとそのまま仕事に移る・・・要するに待ち戦法だ。彼らが依頼を受けたハンターとして既に柵の内側に入り込んでる以上は結局のところ相手が動かないとこっちも動けないからね
「よっし!それじゃ早速だけど小瓶に入れましょっか。その日飛んでる数の1割って話だったから捕まえるのは・・・5匹ね」
ケサランパサランは大体50匹宙を舞ってるので今日は5匹瓶詰に出来る。出現期間は大体1週間前後らしいので、明日以降もこのままならば30~40匹分は捕まえられる計算だ
私はリュックからガラス瓶を2つ取り出すと一つはレツに渡す
「じゃあレツ。私は3匹捕まえるからそっちは2匹捕まえて―――手で触った瞬間死んじゃうみたいだから瓶の口で掬うように入れてね」
「OK。確か直接触れると薬の粉の効果も落ちちゃうんだっけ?」
「そっ、無駄に繊細みたいだから気を付けてね」
なんでも瓶に入れて観賞用にしようとした人達も居たみたいだけど寿命が短いのか環境が合わないのか、そんなに長生きも出来ないのだそうだ・・・死んだらそのまま薬になるけどね
そもそも観賞用に出来たところで増やす事が出来なければ(薬として)ほぼ意味がないし
「ビアーとは正反対だね」
なにおう!これでも旅の途中でも小まめに洗濯とかしてるじゃないか!・・・他に女子力っぽいのは思いつかないのは事実だけど
でもほら!寝る時に
だからセーフだよ、セーフ!
そうして私達がケサランパサランを瓶詰にしてリュックに仕舞った辺りで背後からナイフが飛んできたので振り向きつつナイフをキャッチする―――随分と早い手の平返しだけど、乱獲したい彼らからしてみれば初手で私達・・・特にプロの肩書を持つ私の無力化を狙うのは当然の流れかな?
「なっ!?バカな!この至近距離でどんな反射神経してやがる!?」
「いやいや、攻撃する時の殺気駄々洩れだったから多分今のハンター試験の会場まで辿り着ける人達なら大半以上は避けられると思うわよ?」
毒付きナイフみたいだからかすり傷を負うことで1割程度は戦闘不能になるかも知れないけど、マジでそんなレベルだ
「チィッ!なら多少傷ついちまうが仕方ねぇ。折角の臨時ボーナス(美少女三人組)なんだ。痛い目に遭って大人しくしてもらうぜぇ!」
チンピラーズがそれぞれ二丁拳銃、サブマシンガン、アサルトライフル、斧を手に下卑た笑みを浮かべる・・・一人だけ文明の利器から外れてるのはなんなの?しかもそれ戦斧とかじゃなくて木こり用の斧よね?
「へっへっへ!これだけの銃口を向けられちゃ敵わねぇだろ?その痺れ毒の塗られたナイフで自分たちを刺して大人しく捕まるってんなら俺たちも紳士らしく扱ってやるぜ?」
「この綿毛共が居なくなるまで1週間程度は俺たちのお相手をしてもらうがな。それが済んだら金持ちの変態に売り飛ばしてやるよ―――なぁに、運が良ければ拷問とかも無しに豪華な生活も送れるぜ?幸せかどうかは知らねぇがなぁ」
男衆の視線が主にポンズに向けられる。おっぱいか!やはりおっぱいか!私とレツもカテゴリー的には美少女だけど年齢的におっぱいはそこまででも無いもんね!私はポンズの半分程度だし、レツなんてまな板の如くツルツルペッタンコだ。可愛さと同時にお胸もAAランクってね
「ビアー。今回の仕事が終わるまでの間、調理その他雑用の一切はビアーの仕事だからね」
「え・・・いきなり何を言い出すの?」
「やってくれる・・・よねっ?」
分かった分かった!分かりましたからそのハイライト消した瞳で笑顔で向かってくるの止めて!夜中だったらホラー映画の人形ばりに今のレツはおっかない雰囲気ビンビンだから!
「・・・ホント、仲が良いのね貴女達は」
「そりゃあね。なんと言ってもレツは私の
折角だから目の前に迫っていたレツを"ギューっ"と抱きしめて柔らかい体を堪能する。フフフ♪仲良きことは美しきかなとも言うけどそれが可愛い女の子なら倍プッシュでしょ?私は一度死んでるから自分の外見を客観的に観る事も出来るからね。詰まりは最高と言う事だ。私達の仲睦まじい姿を見て、てぇてぇしても良いんだよ?
「ちょっと待って!?今サラッと聞き逃せない事言わなかった?法的ってなに法的って!?」
私の腕の中に仕舞われたレツが"ガバッ"と顔を上げる。まさしく驚愕といった表情だ
「いや~、プロハンターって凄いよね。身寄りの居ない女の子の保護者として家族登録するのにハンター協会に電話してライセンスをパソコンに"ピピッ"とやればそれで終わりなんだもの。本人の意思確認も必要無し!いや~、ホント大丈夫かと思う程にガバイよね」
「おい、俺たちの事を無視してんじゃねぇぞ!この状況理解出来てねぇのか!?」
流石は信頼の証たるハンターライセンス。行政の書類審査なんてほぼ素通りだ
「私が心配なのはビアーの頭のネジの緩さだよ!なに?ビアーの事を『お姉ちゃん』って呼ばなかったのがそんなに気に食わなかったの?その情熱は何処から来てるのさ!?」
勿論前世のヲタク文化からのこの世界への持ち込み品だよ。魂に手垢が染みつく程度には持ち歩いてるんだから、簡単に諦めたりするもんですか
異世界転生して可愛い年下の女の子と一緒に旅するようになったらその子が義妹に成るのなんて確定的に明らかなんだから
「良い度胸だなお嬢ちゃん達・・・如何やら手足の一本くらいは弾いちまわねぇとダメみたいだ。変態どもの中には
「ポンズお姉ちゃ~ん。私達の妹が何時までもイケズなんだけど、如何すれば良いかな?レツにもっと自覚を持ってもらう為にも私達三人でペアルックならぬトリオルックでも着る?『長姉』、『次姉』、『末妹』ってデカデカとプリントしたシャツでも着てさ」
こういうのはやはり最初は少しやり過ぎなくらいが丁度いい。レツが『姉』と呼んでくれるなら少しの間クソダサTシャツを着る事だって厭わないわよ!
「―――いつの間に私も貴女たちの姉妹の間に組み込まれてるのよ。でもそうね、法的に姉妹ならもう諦めて『お姉ちゃん』て呼んであげたら?多分事あるごとに今回みたいに強要してくると思うからその方が楽かも知れないわよ?」
ポンズがレツを説得(?)してくれる・・・彼女としては面倒だから投げやりな意見を述べてるだけなんでしょうけどね。でもそれよりも気になる事があった
「「『姉妹の間』ってもしかして次女になりたかったの?」」
「・・・・・貴女たちホント仲が良いわね。それとレツ、貴女かなり毒されてるわよ」
ポンズも妹か~。私も人生二度目だから精神年齢的には有りなんだけど、最低でも5~6年程度は経たないとポンズの方が見た目お姉ちゃんだから違和感有るのよね
「違う。私がツッコミたいのは
ポンズは頭痛そうにしてこめかみの少し上を指で"トントン"と叩く
溜息は幸せが逃げるよ?折角幸福を運んでくれるケサランパサランが居るんだからそんな勿体無い真似はしないが吉でしょ
「よぉし分かった。元々はこの毛玉どもだけのはずだったんだ。一番舐めてる茶髪のガキくらいは壊れちまっても問題無いよなぁ!!」
あ、さっきから羽虫がプンプンと雑音奏でてると思ってたけど、そう言えば居たんだったわね。余りにも小物だから意識から外し掛けてたわ」
「途中から心の声が駄々洩れてんぞォッ!やっぱ壊す。徹底的に
「そう?でもそうなるより先にアンタ達の方が牢屋で飼われる事になりそうだけど?」
「あ゛あ゛ぁん?そりゃ大した自信だがプロでもねぇ足手纏いを連れた状況でぉおろろろろろ?」
「っ痛ァ!っとぉおおおお?」
「あぅああ・・・う゛?」
「・・・・・・・・・」
額に血管浮かべてイキッてたけど全員同時に呂律が回らなくなって顔面から地面にキスをした
彼らの背後には蜂・・・もっと言えばシビレヤリバチという即効性の麻痺毒と大型動物の分厚い毛皮だろうと貫通する針を持った蜂が4匹ホバリングしている
「確かに私はプロじゃないけど、これでもプロを目指して本試験までは進んでるハンターよ。貴方達程度なら相手にもならないわね」
キャー!ポンズさんの生蜂捌き素敵~!!チンピラーズをさっさと倒さないで様子を窺った甲斐が有るってもんよ―――さっきこめかみ叩くふりをして帽子の中の蜂に指示を出してコッソリと彼らの後ろから襲わせるとか調教技術半端ないわね
「それじゃ彼らは簀巻きにした上で町長さんに電話して引き取って貰いましょうか。まだケサランパサランは出てきたばかりなんだから、こいつ等とは別の密猟者だって居るかも知れないけどね」
なによりこんな粗大ごみの面倒なんて見れられないし
そう思って早速町長さんに電話してこちらの状況を簡潔に伝えていくと≪すぐに行きます≫と言って連行用の人員を連れてこちらに来てくれる運びとなった
「じゃあそう言う事だから町長さん達が来る前に武装解除させて縄で縛ろっか」
携帯電話をポケットに仕舞いながらそう言うと倒れていた男の内の二丁拳銃を装備してた奴が片方の銃口を私に向ける―――少し痺れ毒の効きが悪かったのかな?それとも解毒薬の類でも奥歯に仕込んでた?
「へ・・・へへっ、ただでやられるかよ。くたばりやがれ!」
まぁ腕もプルプル震えて照準ブレブレだけど、運良く彼が引き金を引いた瞬間に射線は私を捉えてたみたいで弾丸がほぼ音速で放たれた
”パシィッ!”
「・・・へ?」
「はいキャッチ。女の子への
私は片手で掴んだ銃弾を撃った男の前に放りながら告げる。拳銃の弾速は大体音速を誇る・・・・そう、
至近距離から顔面に撃ち込まれた弾丸を歯で噛んで受け止めたり鼓膜破壊級の大声だって音が届く前に咄嗟に耳をふさぐのだって朝飯前に出来てしまうこの世界で素手で単発の弾丸を掴むなんて上級者ならばその入り口程度に収まる一芸でしかない
私に銃弾を返された男はそれで心が折れたのか、今度こそ完全に顔を地面に突っ伏して脱力してしまった。これならもう抵抗もしないでしょう
それから程無くして町長さんが数人の部下を連れてやって来たので捕らえた彼らを引き渡すと町長さんが恐縮した感じに話しかけてきた
「いやぁお手数お掛けしました。ハンターの募集も急募という事もあり今回お集まり頂いた方々の犯罪歴や身元などもこちらでも確認はしたのですが、彼らが裏の組織と繋がっているなどと言う情報は出てきませんでした。一体どのような抜け道を使ったのやら、しっかりと訊き出さないといけませんね・・・嫌と言う程」
それ多分本来の言葉の意味とは違う意味で言ってますよね?町長さん今すっごい冷たい目をしてますよ・・・町の大事な収入源に手を出されたなら当然か
「今回彼らに払うはずだったお金ですが、そのまま貴女方の報酬金に上乗せ致しましょう。なんであれこちらのミスで余計な仕事を増やしてしまいましたので、迷惑料として受け取って下さい」
いやそれ町長さん的には最初に払うはずだったお金から変動してないじゃないですか
「もう一声!」
「・・・では更にそこから報酬を1割アップにさせて頂きます」
それを聞いた私は後ろの二人に振り返る
「だってさ。如何する?私としては舐められる訳にもいかないけどガッツきたい訳でもないからこれで良いかと思うんだけど」
それこそ色々と理屈を並べ立てれば3割アップとかそれ以上も狙えるかもだけど、そこまでやって評判を落としたいかと言われると寧ろ割に合わないし
「ボクは良いと思うよ。ボクたちは別にマネーハンターって訳でもないからね」
「私も構わないわよ。お手軽な臨時ボーナスとしては上々だと思うしね」
"プスッ"と一刺し(×4)しただけで報酬が約2.5倍だもんね
そんな感じに私達は臨時ボーナスを手に入れて町長さんと別れた後はケサランパサラン達が出現しなくなる約1週間の間、平穏無事に過ごす事が出来た
町長さんとの定期連絡では如何やら捕まえた彼らは毎年この仕事を受けているプロハンターを事故に見せかける形で負傷させて急募に潜り込むという計画的犯行だったようだ
身元などもちゃんと本人のもので裏の組織がこういう表の仕事で悪事を働かせる初回限りの
因みにプロハンターを狙ったのは組織とやらでももっと実力の有る人達で、狙ったのもプロハンター本人じゃなくてその仲間のアマチュアハンターを狙って土砂崩れを装い、巻き込む形で倒したようだ
その程度でプロハンターがやられるか?とも最初は思ったけど、一口にプロハンターと言ってもヒソカに2点付けられる人とかも居るし、私の頭の中の基準が最高クラスの力や才能を持った人達ばっかりだから違和感を感じるだけで冷静に思い返せばやられるのも無理はないのかも知れない
少なくともサトツさんなら同じ状況でも無傷で仲間を救出して事故の不自然さに気付いてその足で犯人を叩きのめすくらいは出来ただろう
捕まえた彼らが所属していたらしき組織とやらは怪我させられたプロハンターが知り合いのプロハンターに応援を頼んでキッチリとケジメを付けさせるとかって話らしいし、仮にも念能力者が複数で逆奇襲を仕掛けるなら私が出る幕も無いでしょう。万が一死んでも町長さん的には今度はケサランパサラン保護のために一年の猶予が出来るんだから今度はしっかりと協専にでもお願いしてハンターを派遣して貰えば良いだけだしね
さて、そんな感じに外野の方は勝手に事後処理してくれるという話なのでケサランパサランが出てこなくなったのを確認した私達は再び町長さんとご対面していた
机の上にはケサランパサランがフヨフヨ浮いているガラス瓶が二つに薬となる白い粉だけが入っているガラス瓶が十二個置かれている
ケサランパサランは瓶詰にして2~3日で死んで粉になってしまうので、この場には最終日に捕獲した分だけがまだ原形を保っていると言う訳だ
「はい。確かに受け取らせて頂きました・・・ところで先程から気になってたのですが、後ろのタンスのような巨大な箱は一体なんなのでしょうか?」
町長さんが言った通り私達の後ろには冷蔵庫くらいの大きさの木の箱が鎮座している
今まで黙っててくれたけど、この部屋に入る時に私が背負ってる箱をマジマジと凝視してたからね
「これは今回のケサランパサランの増殖用のケースですね」
ケサランパサランは貴重な薬の材料になるとは何度か説明したけれど、一年に一回、ガラス瓶14個程度の量では当然ながら到底それを必要とする患者に行き渡るはずもないのでお値段は必然的に天元突破でお高くなってしまう
他にも絶対量が少なければ研究に回せる量も当然少なく、新薬の開発にも挑めないなどこの町にしたって独占出来る事以上にデメリットの方が多い
それ故に毎年薬用に捕獲する分とは別に数匹を捕まえてガラスケースの中に時に果物、時に肉、時に花、時に腐葉土etc.etcと、エサなり環境なりを弄ってなんとか増殖させられないか毎年データを採っていたみたいだ
しかしそれではダメなんだよね。経過観察をするためにもガラスケースに入れてたんだろうし、勿論過去のデータを見れば木の箱に入れた場合だって有ったけど、ケサランパサランの繁殖方法は”空気穴を開けた桐の木箱の中に着色料無しの
幾ら何でもそこまでピンポイントでの試行錯誤にはまだ到達して無かったみたいなので、今回私が代わりにやっておいた―――ルルの時もそうだけど、このハンターハンターの世界を描いたのは私の前世と同世界の人間なので流用されている設定は数多く存在するのでこの方法が正解である可能性は十分に高かったのだ
「では初日に2匹だけ突っ込んだこの箱の中身の御開帳といきますね」
私が桐箱の扉を開けると私以外のその場の全員が絶句した
「これは!?なんという数!ギッシリ詰まっているではありませんか」
ぎゅうぎゅう詰めとまではいかないけど、それこそ50匹以上には増えたケサランパサランを見ればそりゃ驚くか―――フフフ、これが所謂知識チートってやつだ。褒めてくれても良いんだよ?
白粉はもう殆ど残ってないからそろそろ粉と化しそうだけどね
扉を開けた事で室内に漂い始めたケサランパサランを皆でガラス瓶に詰めた後は証明の為にも最初に渡したケサランパサランの生き残りの瓶の中身を桐箱の中に白粉を補充した上で解放してあげる
こうなると流石に一日は待って本当に増えるのか確認する必要が有ったので最初に支払われる予定だった報酬分だけ貰ってその日は解散する事になった・・・なお町長さんは桐箱の置かれた部屋から極力動かずに庁舎で寝泊まりしたそうだ
「それじゃ、仕事も無事に終了した事を祝って乾~杯♪」
庁舎から出た私達はポンズさんも誘ってレストランの一室で料理を堪能する事とした。乾杯と言っても皆ジュースだけどね
「正直到底無事に終わったとは言えないと思うんだけど・・・貴女があの箱を開けた時は自分の目を疑ったわよ?大体なんで貴女はケサランパサランを増やす方法を知ってたのよ?」
「それは企業秘密って事で。ハンターなら手の内を易々とは明かさないのは理解出来るでしょ?」
ポンズのジトっとした視線を受け流してそう返すと彼女もそれ以上深くは追求して来なかった
うんうん。聞き分けの良い子は好きだよ
「ならせめてアレを如何やったのか教えなさいよ」
「アレ?アレってなに?」
「弾丸を無傷で掴んだやつよ。達人なら反射神経と握力で掴むことは出来るかも知れないけど、無傷って事は無いでしょう。弾丸の速度と回転の摩擦で手の平は裂けるはずよ。実はその手って防弾仕様の人工皮膚でも張り付けてたの?貴女があの時何時までもバカやって動かないから私もこの子達という手札を晒す事になったんだし、それくらいは良いでしょう?」
彼女は帽子の中から一匹の蜂を取り出して指先に乗せながらさっきとは違うジト目を向けて来る
レツとイチャつきたかったのは事実だけど、流石にバレるか。弾丸を素手で掴んだ様子を見れば本来なら一瞬で対処出来たってのは分かるもんね
さて、彼女は勘違いをしているけどあの時の私は別に特別な道具とかを使った訳じゃない
念能力で強化された肉体で弾丸を受け止めただけだ。それを如何伝えたものか・・・そもそも伝えても良い内容なのか、適当に誤魔化すべきなのか
少しだけ考えてみる―――ポンズは原作でも可愛いし可愛いし可愛いし、性格も悪くないのでかなり好きなキャラだ。加えて今回実際一緒に仕事して会話も交わしてそれなりに仲良くなったので原作のように蟻に殺されるとか普通に嫌だと感じる
―――うん。魔改造しよう。折角好きにこの世界を生きてるんだし、推しキャラに肩入れ程度はしても良いよね。流石にゴンたち程の資質は見込めなくても今から修行を始めれば順当に行ってキメラアント編までに蟻の兵隊長を倒せる程度には出来ると思うし、将来的に
「教えても良いけどその場合は私の弟子って扱いにさせて貰う事になるね。裏ハンター試験に関わる技術だからさ」
「ちょっと待って!裏ハンター試験ってなんなのよ!?」
流石にハンター試験という単語は見逃せなかったのかポンズが喰いついてくる。プロハンターを目指してるなら当然よね
「ビアー。それって話して大丈夫なの?」
「ええ、表の試験を合格した者にアレを教えるって言うのはあくまでも一つの建前でしかないからね。犯罪者や悪人に教えたり、一般人相手に広く門徒を募ったりしなければ誰に教えるのも自由よ。証明のしようも無いしね」
念能力を覚えてから表の試験を受けた方が楽なのでは?と思う人も居るだろうけど、実はそれも微妙だったりするのよね。ハンター試験の予選落ちする程度の人達の場合『纏』を覚えるだけで数年は掛かるだろうし、念能力の事を信じられずに途中で放棄する人も多いだろうしね
それと比べたらポンズは若くして本試験を勝ち進む実力は有るんだから念能力→表の試験の方が効率は良いでしょう。彼女が苦手としているガチンコバトルも『纏』が使えるだけで勝率に雲泥の差が出るでしょうしね
「それで如何する?この技術は戦闘だけじゃなくて幻獣ハンターにも大いに活用出来るからお勧めなんだけど、覚える気は有る?どうせ本試験を合格したら強制的に覚えさせられる技術だよ?」
「・・・そうね。幻獣探しとは違うけど未知が目の前に在るなら手を伸ばしてみたいわね。良かったら私にソレを教えてくれないかしら?」
寧ろ覚えて欲しいからメリットを提示してグイグイ迫ると彼女としても断る理由は無かったのか了承の意を示してくれたので私は再度ジュースのコップを掲げる事とした
「よし!決まりだね―――それじゃあ改めてポンズさんの弟子入り&パーティー加入とレツの私の義妹法的加入を祝って乾杯っ♪」
「お、お~・・・?」
「いやいやちょっと待って!すっかり忘れたけどビアーにはその義妹手続きについて言いたい事が山ほど有るんだけど!?」
私がポンズの持つコップに自分のコップを"カチン"とぶつけているとレツがツッコんできた
成程。私と正式に姉妹になれた事が嬉しいって事ね
「そんな事一言も言ってないし!!」
「確かに言ってはないわね。でもそう思ってはいると・・・そういう事ね!」
「思ってなんかも・・・い、いないしっ・・・」
おんやぁ?なんで今言葉に詰まったのかな?
「今の反応、どう思いますか。ポンズ姉?」
「私まで巻き込まないでよ・・・まぁ満更でもなかったって事じゃないの?」
「//////////っ!/////////っ!!」
レツが顔を真っ赤にして今度は声にもならなかったのか私を"ポカポカ"と叩いてくる
そんな彼女を私とポンズの二人で揶揄いながらホテルに戻った私達はポンズに念の概要を教え込んでその日は過ぎていった
後日、この町から出立する前にまたもや大物と出会うとは思っていなかったが
はいそういう訳でポンズ加入ですね。ゴン達を如何するかは決めかねてますが、旅の仲間は後一枠増やす予定です