毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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飴と鞭

近場の町で砂糖を買い漁り大樽に纏めて爆走でレツたちの居る森の中に戻った私だけど早速ポンズにダメ出しされる事となった

 

「あのねぇ、砂糖だけ買ってきても仕方ないでしょ。私がエサを作ってる様子を見てなかったの?さっさとこの砂糖に見合った水も確保して来なさい」

 

ポンズの鬼ぃ!私今終始ほぼ無呼吸運動で此処から町まで往復してたんだよ。正直かなりキツイんですけど!久しぶりに肺がキリキリするもん

 

「み・・・水ならこれで如何?幾らでも出せるわよ・・・」

 

微かに震える手で持ち運んでる旅用のコップに少しだけ水を入れて葉っぱを浮かべて『練』をする

 

”ブッッッシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!―――ドドドドドドドドドドドッ!!”

 

「わぁ!?ビアーストップ、ストップ!制御が緩くなってる!幾ら疲労困憊状態でもビアーのオーラで『練』とかしたら水浸しになっちゃうからぁ!!」

 

あ゛あ゛~、シャワーの如く体に掛かる水が冷たくて心地良いんじゃ~♪

 

「満足そうな顔をしないでよ!ほら、下着ちょっと透けちゃってるからはしたないって!」

 

レツの叫びが聞こえる中、もう少しだけ噴水状態となっていた私だけど流石に今は回復よりも消耗が上回りそうだったので『練』を止めて茂みで濡れた服を着替える事とした

 

そうして着替えている間に体力と気力もある程度回復したので改めてレツたちの下に戻る

 

「ふぅ、サッパリした。結構汗を掻いてたからある意味丁度良かったわね。今度はちゃんと手加減するとして・・・はい。ポンズの水、補給しておいたわよ。足りなかったら言ってね」

 

「今のが例の水見式ってやつなのね。系統別の変化は教えて貰ったけど、強化系は旅に便利過ぎない?それが有れば砂漠だろうと水も使い放題じゃない」

 

「それがそうとも言い切れないのよね。念の初心者の内は『練』を維持するだけで大幅に体力が削られるし、水量も大して増えないから普通の人なら水代をケチる為に数年は修行しなきゃいけないから割に合わないと思うわよ?」

 

念に目覚めたとして強化系だという保証も無いし、旅を目的として習得するにはちょっと如何かと思う。これに関しては偶々運が良かった程度の認識に止めてないと無駄に念ガチャでハズレを引いたと落ち込む事になるでしょう・・・って、そんな特殊な人間普通は居ないでしょうけど

 

てか私は水量が増える変化だったけど、逆に減る場合も有るんだから更に確率二分の一だ

 

「ポンズも『纏』と『絶』の切り替えにそれぞれの長時間維持。後ついでに手足の重しにも慣れてきたみたいだし、今日はその子の世話に集中するとして明日から『練』の習得に移りましょうか」

 

ポンズの念の系統も気になるところだしね。やはりそこだけでも早めに把握しておかないと、どんな能力を創るか妄想の一つも出来やしない

 

「あら、それは楽しみね・・・それはそうと確か次の町ってそんなに大きくはなかったはずだけど、よくそれだけの砂糖を購入出来たわね。在庫まで根こそぎ買い取ったの?」

 

ポンズの視線が私が持ってきた大の大人一人くらいは余裕で入れる大きさの大樽に向けられる。

この世界は科学技術こそ前世の地球と大差はないけど一つ一つの町や村の大きさや物流などでは一歩劣っている。理由としては空路である飛行機が基本飛行船オンリーだったり、野生の魔物の危険度から下手に町の規模を拡大するのが難しかったりとかが挙げられる

 

インターネットとか世界規模で共有してる技術は有るけど地域によっては馬車や木造の帆船とか今も現役の場所が結構有るからね

 

「あはははは・・・流石に全部は買わせて貰えなかったから他にも三か所ほど町や村を梯子する事になっちゃったのよね。この辺って大きな街とか無いから大変だったわ」

 

三叉槍大蜂(トライデント・ビー)の住む森の為なんでしょうけど、ここら辺は自然豊かな田舎なので物資に乏しいのだ。お店の人も在庫の放出まではしてくれなかった・・・町の人が買えなくなったら困るもんね

 

そう言って私が苦笑してるとポンズに信じられないようなモノを見る目で見られた

 

「・・・噓でしょ?この先々の町や村を回るのに何十km走る必要が有ると思ってんのよ。それをこの短時間で此処まで戻って来るとか、車のアクセルを全開で踏み込んでも足りないわよ」

 

え?車でアクセル全開にしても精々時速300kmくらいでしょ?そんな一般人でも頑張れば目で追える程度の速度が全速力な訳ないじゃん

 

みんな大好き猫娘ことネフェルピトーとか2km先の目的地まで描写からして2秒程度・・・秒速1kmで時速なら3600kmくらいのスピードが出せるんだよ?最終決戦の時とかそれ以上の跳躍をしてたっぽいし、現時点で時速300kmとか余裕で出せないとこの先厳しいと思うのよね

 

「ソニックブームは出してなかったからセーフでしょ!」

 

してたら劇場版エヴァ〇ゲリオンの全力疾走の小規模再現になってたかも知れないけどね!

 

「普通は人間が走るという行為でその単語が出て来るはず無いって分かってる?」

 

そんな常識は念能力者には通用しないんですよ。この世界って人によっては頑張ればテレポートだって出来る世界なんだから、高速移動くらい普通、普通

 

『テレポート』はもとより『こうそくいどう』も念能力(エスパー)技なんだよ?だから大丈夫だって

 

「ほらほら、そんな事よりその子・・・暫く介護するなら『その子』ってのも味気ないわね。名前付けない?」

 

今もチロチロとポンズの用意したエサを舐めてる巨大蜂の様子を訊こうとしたけど途中で呼び名の方が気になってしまったので二人に提案する

 

「あっ、それは良いかもね!ルルと仲良くもなるかも知れないし、ボクは賛成だな」

 

「・・・はぁ。下手に名付けとかすると変に愛着も湧いちゃうわよ?まだこの子を如何するかも決めてないのに気が早過ぎるんじゃない?」

 

「良いじゃん。一期一会なんて言葉も有るんだし、折角面白い出会いをしたならそれを大事にしないと損しちゃうってね」

 

私とレツの賛成2票を受けてポンズも「仕方ないわね。ならしっかりとした名前を考えましょう」と乗り気に気持ちをシフトしてくれた

 

「それじゃあ色々と候補を出していきましょうか―――二人とも、何か案は有る?」

 

「はいはい!じゃあスピアーで!」

 

質問に早速とばかりにレツが手を挙げながら元気に答えてくれたのでこちらも笑顔で判定を下す

 

「うん、却下で」

 

「え~、ならコクーンは?」

 

「却下」

 

「じゃあビードル。これで如何!!」

 

「却ぁぁぁぁぁぁっ下!!」

 

どんどん正解から離れていってる上にその正解(スピアー)も認められないよ!

 

ほら、そんなに頬を膨らませても抗議しても無駄だからね

 

「む~、ビアーにはこの名前の一体何が不満なのさ。どれも結構カッコイイ感じの名前だと思ったんだけどなぁ?」

 

不満とかじゃなくてその一線を越えたくないだけだよ。でもそんな理由は語れないから如何言おうか悩んでいると思わぬ援護が齎された

 

「レツ。この子はメスだからビアーとしてはそこが引っ掛かってるんじゃない?」

 

「え!?この子ってメスだったの!?」

 

「ええ。と言うか毒針を持ってる蜂って基本は全部メスなのよ。あの針は産卵管が変化したものだからね。オスの蜂に毒針は無いわ」

 

ポンズ、ナイッスゥウウウウ!レツは今の説明で「へぇ」って感心してるみたいだけど私も心の中で『へぇボタン』を押させて貰うわ―――蜂の社会では戦士は全て女とか何処のアマゾネスだって言いたいわね。オスの肩身が狭そうだわ

 

「だから此処はもう少し女の子らしい名前を付けるべきね・・・アピトなんて如何かしら?」

 

「却ぁぁぁぁぁぁっ下!!それもダメぇえええええ!!」

 

態とか?二人とも態とやってるのか?その名前は『転生したら粘性体だった件』の世界の巨大蜜蜂の名前だから!その名前を付けたらこの子が将来中途半端に擬人化しそうだから却下だよ!!

 

しかしそんな吠える私にレツとポンズの冷たい視線が突き刺さる

 

「ビアーったらさっきから却下してばっかじゃん。なにか良い名前でも有るの?」

 

「そうね。私達の案を無下に出来るだけの素晴らしい名前の候補でも浮かんでるんじゃない?」

 

ぐっはぁ!なんか私の名付け候補のハードルが爆上がりしちゃったんですけど!?ヤバイよ、なにも考えてないよ。ていうかツッコミでそれどころじゃ無かったよ

 

「え・・・あ・・・ア・・・アリスタ・・・なんて如何?」

 

「アリスタか。悪くはないけどそれならさっきポンズが言ったアピトも同じだよね」

 

「なら今のところ候補はアピトとアリスタね。他に意見は有るかしら?」

 

むむぅ・・・このままだと二分の一の確率でアピトになっちゃうかも知れないわね

 

「二人とも、アリスタって言うのはね。ルルと同じギャリシャ神話出典の養蜂とかの神様の名前(アリスタイオス)から取ってるのよ。ルルの友達としてって言うならそんな繋がりの有る名前も良いと思わない?(威圧)」

 

笑顔で二人に迫る。”ズズイッ”と迫る。二人が後ずさっても迫る。もっと迫る

 

「ま、まぁ良いんじゃないかな?私はアリスタでも構わないよ・・・ポンズは?」

 

「え、ええ。元々言い出したのは貴女たちなんだし、二人が『アリスタ』で納得してるなら問題ないんじゃないかしら?」

 

良し、勝った!

 

「アリスタ~♪キミの名前はアリスタだよ~♪」

 

≪スピッ!?ビィィィィィィ!!≫

 

妙に大変な名付けの修羅場を切り抜けられたせいかハイテンションなままアリスタの胴体を両手で持って所謂『高い高い』の恰好になる

 

”ドスッ!” ”ドスッ!!” ”ドスッ!!!” 

 

≪ビィィィィィィ!!?≫

 

アハハハハハ♪キミの持つ三本の針なんて私にとっては爪楊枝以下さ

 

「ねぇポンズ・・・アレって・・・」

 

「ええ、図らずも自然の厳しさと言うか上下関係を叩き込む感じになってるわね」

 

「(針を)叩き込まれてるのはビアーの方だけどね」

 

「物理ダメージがそのまま精神ダメージとして叩き返す(カウンター)状態になってる事に目を瞑ればね・・・ちょっと涙目になってるし、そろそろ救出しましょうか」

 

自慢の針でどれだけ突いてもビアーの堅牢な防御を欠片も突破出来ないことで最初の猛攻は既に鳴りを潜めてしまっているので、これ以上は可愛そうだと二人は判断した

 

「う~ん。でもやっぱりキミはレツが最初にカッコイイ感じの名前を付けようとしてたように見た目は少し恐目だし、アリスタってのは少し可愛過ぎかなぁ?そうだ!レツ、人形作成に使ってる布でピンクのやつが余ってたわよね?野生の三叉槍大蜂(トライデント・ビー)と差別化する為にもそれでリボン結んで上げたいから貸してくれない?」

 

そうすれば名前と見た目のギャップも少しは縮まると思うしね

 

「あ、うん。分かったからその子を一度放してあげたら?怪我した状態で暴れたせいかグッタリしちゃってるからさ」

 

おっと!すっかり怪我の事が頭から抜け落ちちゃってたわね

 

「ほらビアー、その子を貸しなさい」

 

ポンズが"ヒョイッ"とアリスタを後ろから抱き抱えるとアリスタの頭を撫でつつ私から距離を取ると何故か心底"ホッ"としたかのような思念を感じられた

 

確かに怪我してる子を少々乱暴に扱い過ぎたのだと反省した私はアリスタの首回りにレツから受け取ったピンクのリボンを優しく結んで上げたんだけど、如何してかその間アリスタはポンズの腕の中で石化したかのように微動だにしなかった・・・やっぱり疲れてたのかな?

 

「(多分下手に動けば絞殺されると思ったんじゃない?)」

 

「(かもね。寧ろ首と胴体が泣き別れるとか感じてそうな怯え方だったわ)」

 

 

 

 

 

 

こうして奇しくもビアーはポンズのアリスタの調教に費やす時間を短縮したのだった

 




そんな訳で飴(ポンズ)と鞭(ビアー)でしたね。天使と悪魔でも良かったですがアリスタからしてみたら得体の知れないナニカだったでしょうww

針を持ってる蜂はメスだけですがポケモンのスピアーはオスでも普通に毒針使ってくるんですけどねwwてか産卵管云々言い始めたら両手の針はなんなんだって話になっちゃいますしww
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