毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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いやぁ遅くなり申し訳ございません。先週の日曜にパソコンが昇天したりワクチン2回目売ったりパソコンがアカウントを読み込めないとかほざいたりと色々重なってしまいました。投稿で2週間も開けるとか初めてですね


兄弟子と妹弟子?

緑が生い茂る森の街道沿いから少し外れた森の奥の開けた場所で空中を赤い果実が放物線を描いて飛んで行き、その背後から羽音を響かせながら大きな影が素早くその実を器用に両手の針の間に挟み込んでキャッチした

 

≪スピィイイイイ!≫

 

一般的な蜂とは一線どころか次元さえ隔てているかのようなその巨大な蜂は甘い果実を持って大きな黄色い帽子がトレードマークの美少女の前でホバリングしてお伺いを立てる

 

「はい、良くできました。もう食べて良いわよ」

 

≪スピッ♪≫

 

ハンドサインを交えて出た許可と共に果実に口の突起を突き刺して果汁を啜るその蜂が世界一の大きさを誇り、人間含めて他者には決して懐かないとされている三叉槍大蜂(トライデント・ビー)だとは誰も思わない事だろう。そもそも体色からして通常個体とは違うし、もしも生物学者たちがこの光景を見たら混乱する事請け合いである

 

「それにしてもこの一ヵ月で本当によく調教出来たわよね。緑色の個体は警戒心が普通より薄かったりするのかな?」

 

「そんな訳無いでしょう。この子の場合は成虫に変態して直ぐに仲間から命を狙われたからこそのものでしょうね。多分(さなぎ)の状態で巣から持ち出してアヒルみたいに刷り込みで調教しようとしても無理なんじゃないかしら?それで上手くいくならとっくに論文で発表されてるはずだし、仲間意識が異常に強いこの子達が自主的に仲間を殺しに掛かって且つ運良く生き延びるのが最低条件だとすれば確率が低すぎるわね」

 

「操作系ならなんとかなるかもだけど、そんな事をするくらいなら直接操った方が早くて確実だもんね。それにこの子達の出す最大の利益が上流階級の人達が食べるハチミツである以上は戦力として群れを支配下に置いて引き連れようものなら密猟者として他のハンター達に追われる事になりそう・・・操作してると判明した時点で即アウトだよ」

 

「ハンターは癖の強い人達が多そうだからアリスタ一匹だけでも変な正義感出して奪い去ろうとするような人も居るかも知れないからその辺りは気を付けないとねぇ・・・そうなったら絶対に捕まえて迷惑料ふんだくってやるけど」

 

調教もされてない巨大な蜂を連れて町中に入る訳にはいかなかった彼女たちだが誰かが近場の町まで物資を補給に行けば良い上に重たくて大量に消費する水もビアーの水見式で毎日シャワーも洗濯も出来るとなれば不衛生とはほぼ無縁であった

 

この辺りに川などは流れてなかった上に流石にアリスタの餌を全て砂糖水で済ますのはアレだったのでこの森に留まっている

 

元々三叉槍大蜂(トライデント・ビー)の縄張りから少し外れた程度なので彼らに適した巨大な花やら果実やらが採取できるのだ。故にアリスタ一匹分の食糧を確保するのに支障は無かった

 

「操作系ねぇ・・・水見式からして私も操作系だったみたいだけど、どんな能力にしようかしら?一生ものだし、色々と迷っちゃうわね」

 

「あはは、そうだよね。ボクもまだちゃんと能力は決めてないや。強化系や放出系なんかはイメージが湧きやすいんだけど、それ以外の系統って色んな事が出来過ぎちゃうところが有るからね」

 

「確かにね。ただ私としては特質系の習得率に文句を言いたいんだけど・・・そこまで特別だってんなら六系統の中に入ってないで五系統プラス特質系みたいに独立しときなさいって感じるわ」

 

念系統が操作系及び具現化系能力者のあるある愚痴である。仮にそうなると如何に特質系と言えども不人気系統になってしまいそうだが、文句だけならタダなのだ

 

オモカゲから受け継いだ特質系能力が思いっきり両隣の操作系と具現化系ありきのレツはポンズの愚痴には苦笑いするしか無かったが、些細な事だろう

 

「で、でもほら!操作系と具現化系は後天的に特質系に変わる可能性が一番高いみたいだし、それだけの価値は有ったりするんじゃない?」

 

レツの必死のフォロー。ポンズの瞳の輝きが僅かに増した

 

「え~、でも操作系や具現化系の能力を創った後で特質系に変わっても習得率が下がって損するだけじゃない?例えばポンズが隣り合う放出系を使った複合能力とか創ってたとしても特質系になっちゃったら習得率60%なんだよ?重めの能力だったら最悪発動も覚束なくなりそうだし、特質系にクラス替えしたところで使った分の能力のメモリが補填される訳でもないはずだから特質系の能力を新たに創るとしても微妙な能力しか発現出来ないからぶっちゃけ後天的に特質系になるメリットなんてほぼ無いわよ」

 

ビアーの冷めた忠告。ポンズの瞳からハイライトが消えた

 

そう。可変式万能型特質系(原作クラピカ)のような例外中の例外を除けば後天的に特質系になるのはメリットよりもデメリットの方が先に来るのだ

 

後天的に特質系に変わる事を祈って基礎修行に時間を費やしてメモリを温存する方法も有るには有るが酷いギャンブルである。よほどの物好きでないとそんな選択はしないだろう

 

「ビアー・・・」

 

≪すぴ~・・・≫

 

≪メェエエ・・・≫

 

「な、なんでそんな目で見るのよ?ていうかルルは兎も角アリスタは絶対に話の内容は理解せずに雰囲気だけで追従してるわよね!空気読むの得意か!!」

 

アリスタはこの一ヵ月で今居る群れの中のリーダーはビアーで大まかな決定権を有している事は理解していたが同時に日常におけるヒエラルキーは低いとも認識していた。出会った初日の夜にルルのご機嫌取りに全力を挙げていた姿が恐怖一色だった心に困惑が混ざり、更に日が経つにつれて『あれ?コイツ実は危険度は低い?』と刷り込まれていったのだ。そのお蔭で今ではビアーを前にしても無駄に怖がる事は無くなったのである

 

≪スピッ!≫

 

「わわわ!私の頭は休憩場所じゃないってば」

 

仕方ないとばかりにアリスタはビアーの頭の上に乗っかってリラックスする事でご機嫌取りをする。その後直ぐに抱き抱えられたが同じことだ

 

成体となってから直ぐに本来の仲間に追われながらも生きる事を諦めなかったアリスタは今の群れで自分と似たポジションのルルと同じになる事が一番良いのだと察していた

 

同じ甘えるでも天然(ルル)計算(アリスタ)の違いは有るが・・・もしもハリーがポッターしてる世界ならルルは穴熊の寮でアリスタは蛇の寮に入るに違いない

 

―――アリスタは『媚びる』を覚えた

 

 

 

アリスタの回復と調教がひと段落してから旅を再開し、頭にドが付くような田舎の風景も鳴りを潜めて暫く、私は約半年ぶりくらいに『野蛮人の聖地』こと天空闘技場の有る街までやって来ていた

 

ん?季節は夏かって?いやいや、ハンター試験だろうと世界の何処に行こうと短パンだったゴンを見れば判るかも知れないけどこの世界は全体的に気候が暖かめで安定しているのだ

 

勿論中には寒い所も在るし雪だって降るが前世の地球と比べても少ないと思う。理由としてはこの人間界が巨大な世界の一部でしかないって事なんだろうね―――割と赤道寄りの

 

暗黒大陸の事は学校の授業やそこらの本屋とかでは調べられないけどハンターを始めとした世界中を飛び回るような職業の人なら先ず可笑しい事に気が付く。何故なら世界地図の最西端から最東端に移動しようと思ったら普通に考えたら西回りの方が近いのに態々大陸横断して東回りをしないといけないからだ

 

世界は丸いという認識は有るにも関わらずである。仮に世界が平面だという認識だとしてもそれならば世界地図の外側を見てみたいと思うのがハンターだ。十二支んの(カンザイ)が暗黒大陸を知らなかったのは正しく馬鹿(カンザイ)だったからだろう

 

さて、再び天空闘技場まで足を踏み入れた理由は勿論お金稼ぎ・・・ではない

 

私は兎も角としてレツやポンズも普通に旅を続けるだけのお金くらいは持っている。その上で何故ここに立ち寄ったかと言えば200階クラスの念能力者同士の試合の観戦が主な理由だ

 

正直に言えば天空闘技場の闘士で十二支んや幻影旅団クラスの達人たちが暴れているなんて事は『ほぼ』在り得ないが様々な念能力を実際にその目で観て能力の考察、ダメ出し、念能力はこんな事も出来るんだと言う自己の価値観の拡張には役に立つ

 

念の知識のない人だと下手に参考にすれば歪な能力を創ってしまうだろうが、六系統の相関図をしっかり把握してるなら問題は無いでしょ

 

「それじゃあ早速だけど選手登録に行きましょうか!」

 

・・・ほらそこ。『なに言ってんのコイツ?』みたいな顔しない

 

「ねぇ、聞いていた分だとボクたちは試合を観に来たんじゃ無かったの?」

 

「勿論そうだけど、それだけだと暇じゃない。試合なんて一日に一試合か二試合くらいしか組まれる事も無いんだし、『纏』も有るなら大怪我もしないでしょ。最悪観たい試合と被っても売り場に行けばDVDにも落としてもらえるしね」

 

ハンター試験を最低限突破出来るだけの体術は持ち合わせてくれないとね。念能力で捻じ伏せるのは流石に最終手段でしょ

 

基礎トレーニングは何処でも出来るけど、違う相手との模擬戦は積極的に取り入れないと道場主とか賞金首とかにでもならないと向こうからやって来る事は無い。山賊狩りとかだと素人剣法とか我武者羅に拳銃ぶっ放すとかばっかりだし、あまり質の良い経験値は入らないのよね

 

そんな訳で二人を引き連れて天空闘技場の受付で番号を貰う

 

レツとポンズは流石にまだゾルディック家の試しの門を開けられるだけの筋力は付いてないのか一撃で巨漢が場外に吹っ飛ぶ程度の威力だった

 

※1の門を開ければ対戦相手が場外の壁にめり込む

 

う~ん。まだ二人には技術を補えるだけのパワーは無いから実力的に150階クラス程度かな?150階に昇るまでにはパワーも上がって170階相当にはなってるかもだけど

 

まぁハンター試験までには後半年程度は有るからガチンコバトルも大丈夫そうかな

 

「このっ!畜生このガキっ!こっち向きやがれ!!」

 

実はさっきから後ろからブンブンと拳を振り回す音が聞こえている

 

私達は3人同時に登録したからリングの多い一階でほぼ同時に呼ばれたので私は対戦相手をガン無視してレツとポンズの試合の様子を見ていたのだ

 

この程度なら『円』を使うまでも無く避けられる。文字通りに眼中に無かった訳だが二人の試合が終わったところで私も後ろを振り向いて殴りかかってきていた男の額をデコピンして気絶させた

 

「余裕溢れる素晴らしい動きだった・・・ん?キミは以前200階まで昇っているね。190階まで行きなさい」

 

審判役の人がそう言って切符を切ってくれたのでそれを受け取ると二人と合流する

 

「二人とも何階からだって?」

 

「50階に行きなさいだってさ。ポンズは?」

 

「私も同じよ。まぁ似たような試合内容だったしね。そういうビアーは如何だったのよ?」

 

「私は以前200階に行った記録が残ってたから190階だね。ただ天空闘技場のホテルは100階以上の闘士しか泊まれないから数日は街のホテルを使う事になるけどさ」

 

別にチマチマと3人一緒に行く理由も無いし、そもそも3人も同じ階だと普通に私達同士がぶち当たる可能性も有るからね

 

そんな訳でそれぞれが指定された階の控室に行くと無傷だった私達はもう一試合組まされてレツとポンズは60階。私は200階の闘士になった。まぁ200階クラスってファイトマネーも出ないんだけどね。それでも高級ホテルにタダで泊まれる訳だし200階クラスの試合を観に行くのに一々地上のホテルから移動とか面倒なのだ

 

あの二人なら100階までなら一日一試合でも4日で辿り着けるしね

 

 

 

はい、そんな訳でレツとポンズが試合でぶつかる事も無く100階までやってきたのでホテルの一室に集まってます

 

因みにアリスタは街とかに入る時は大き目のリュックサックに入って貰ったりしてる。ホテルの中とかでちゃんと出してあげるけどアリスタが窮屈な思いをしなくて済むような移動手段はなんとか確保したいところなのよね。プロハンターの強権を使えば町中に普通に連れ込む事は出来るだろうけど、一般人が阿鼻叫喚になるのは流石に避けたい

 

幾ら大丈夫だと言ってもメートル級の蜂が目の前に居て平常モードを維持できる一般人は普通は居ないからね

 

「この子が三叉槍大蜂(トライデント・ビー)としては小さめの個体で良かったわ。体長1メートルはあくまでも平均だから下手したら20cmくらいは大きい場合だって考えられたんだから・・・これが色違いだからなのか単純に個体差としての小ささなのかは分からないけどね」

 

「アリスタは88cmだったっけ?確かに大きいリュックでもギリギリだよね。それ以上となると特注しないと中々手に入らないと思うよ。今だって触覚ははみ出してるくらいなんだし」

 

アリスタは今はホテルの開け放たれた窓から羽を伸ばす為に大空に向かって飛び立っている。100階以上の高さで夜という条件下ならば早々見つかる事も無いでしょう

 

ルルも空を飛べるから最初は窓の周辺を2匹で追いかけっこしていたけど(捕食者と獲物に見えたとは言わない)今はアリスタ一匹で空の旅だ。ルルはそこまで本体から遠くには離れられないしね

 

「何はともあれ二人とも100階突破おめでとう。明日からは当初の予定の200階クラスの観戦も織り込んでいこうか。それと二人にプレゼントも有るからね」

 

そう言ってゴソゴソと本日届いた荷物を漁って取り出した物を二人に見せる

 

「ジャーン♪両手足20kgのバンドと同じく20kgのベルトだよ。全部合わせて100kg!試合の時とお風呂や寝る時以外はこれで過ごしてね♪」

 

数瞬後、乙女に渡すプレゼントをなんだと思っているのかと二人にどつかれるビアーであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビアー様、お待ちしておりました。こうしてまたご尊顔を拝謁出来るとは光栄の至り!世の為人の為ビアー様の為。このカストロ、日夜精進を続けてございますれば!」

 

[やせいの カストロが あらわれた(パート2)]

 




カストロをどう動かすのかの展望はなにも考えてません。多分考えても実際書いてる内に明後日の方向にすっ飛んでいくので考えるだけ無駄でしょうww

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