毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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国宝と怪盗?

カストロさんの試合が終わってから5日程過ぎたところで私もフロアマスター戦に挑んで無事フロアマスターになった・・・試合内容?ワンパンでしたが何か?

 

いやね、挑戦するフロアマスターってランダムで決まるみたいなのよ

 

指名制だと2年に1度のフロアマスターのトーナメント戦であるバトルオリンピアの優勝者や準優勝者みたいな上位層とかは普通の挑戦者は忌避しちゃって地位が不動になりがちな上に、運営側としてもビジネスである以上はそんなのツマラナイってのが主な理由みたい

 

他にも細かいルールで言えばランダムと言っても一番近時でフロアマスターの交代戦をした人は抽選から外れるとか有るみたい

 

連続又はフロアマスター成り立てで挑戦者に挑まれる事は無いって事かな・・・まぁカストロさんやヒソカみたいな例外を除けば普通の挑戦者は新人のフロアマスターを狙うよね

 

それで私が当たったフロアマスターなんだけど、昔の秘境の民族的なマスクを付けた巨漢で木こり用の斧を具現化してぶん投げてくる戦闘スタイルだった

 

何処ぞのNINJA漫画の『手〇剣影分身の術』的に投げた斧が増える仕様だったけど手元から離れた斧は脆くなってて避ける価値すら無かった

 

仮にもフロアマスターって事で先手を譲って上げたんだけど試合の後でポンズに「アレなら寧ろ普通に瞬殺した方が心が折れなかったと思うわよ?」と言われてしまった・・・解せぬ

 

ちゃんと斧の性能も出せるように首狙いの近接攻撃(フルスイング)をそのまま受けて「いけませんねぇ。ちゃんと狙って斬ったらどうです?」って煽ったのがいけなかったのかな?

 

・・・月〇天衝と比べちゃダメだったか

 

茫然自失したかのように手から零れた斧がゲームのポリゴンが砕けるようなエフェクトで光に溶けながら"シャンッ・・・"と儚い音を奏でたのも私は悪くないだろう

 

武闘家だって自称するなら上を識って奮起しないとね

 

「ビアー・・・何事にも匙加減っていうのは存在するんだよ?」

 

うっさい。一般人目線なら仮にも世界の強者ベスト50程度にはランクインしてるであろう人達がそんな豆腐メンタルで如何するのさ

 

「ベスト50ね・・・ビアーから見てフロアマスターの実際の強さのランキングはどの程度だと思ってるの?」

 

実際のランキングか~・・・先ずゾルディック家の執事(恐らく数十~百人)とかプロハンターの十二支んどころか戦闘向きじゃないハンターを考慮してもハンター協会の約半数(300人)とか幻影旅団出身の流星街も無法地帯な上で数は多いからちらほら居るだろうし、ネテロ会長の心源流やその他念も教えてる有名武術流派の師範ないし師範代以上とか?他にも傭兵団の一部とかマフィアの隠獣(十人)や隠獣候補(十数人?)とかパッと思いつくだけでも結構有るわね

 

「多分だけどベスト400~500くらいなんじゃないかな?」

 

「うわっ、訊いといてなんだけど表と裏の認識のギャップが酷いわね」

 

一般人目線なんてそんなもんよ

 

「なんにせよこれで私も晴れてフロアマスターになったし、二人も200階まで昇ってきたから天空闘技場でやる事は終わったわね」

 

そう。レツとポンズも先程190階の対戦相手をぶっ飛ばしてきたので200階闘士なのだ・・・受付してないから『仮』だしする気も無いんだけど

 

「あははは・・・確かにビアーはこれ以上天空闘技場(ここ)に留まってると取材が面倒そうだもんね」

 

フロアマスターになる前から取材陣はそれなりに突撃して来ていたのは『円』での察知や『絶』でスルーも出来たんだけど、今では行く先々にマイクを鞄に潜ませた人達が居るので隠れるのも面倒なのよね。有名税とか払う気無いからサッサと退散したい

 

「大体勝利後のインタビューには最低限答えてあげたんだから義理は十分果たしてるでしょうに」

 

「そりゃ金のなる木が目の前に生えてるのに果実一つで満足するような人達がマスコミとかに成れるはずも無いでしょう」

 

だからこそもう次の町への旅に出たいんですよ

 

立ち去る前にカストロさんに挨拶だけしておこうと今は部屋に向かっているところなのだ。血反吐は出てたし胸を切り裂いて蹴り飛ばした時も肋骨が折れるような感触もしてたけど、五日も経過すれば大分回復してるはず―――高位強化系念能力者の自然治癒力を舐めたらいけない。カストロさんは既に4万オーラとプロハンターでもオーラ量だけなら中堅クラスに匹敵する

 

今の時点でも世界の強者ランキング150~200前後は有るでしょう―――スペックだけならもう少し上だと思うけど、試合で指摘したように念の初心者として未知への対応が遅いからね

 

そうして辿り着いたカストロさんの部屋の扉をノックすると数秒後に扉が開かれた

 

「これはこれは皆さまお揃いで。ささっ、どうぞお入りください」

 

「おっ邪魔しま~す」

 

「お邪魔します」

 

「失礼するわ」

 

中に通された私達だけど如何に高級ホテルでも一人部屋に客間も無いので適当に椅子を搔き集めて座り、カストロさんもベッドの端に腰かける形となった

 

カストロさんは見た感じ頭とか腕とかに包帯巻いているけど普通に動いてはいる

 

「取り敢えず、怪我の具合は如何ですか?」

 

「はい。幸い四肢などは裂傷が主で骨折などはしていなかったので日常動作に支障はありません。肋骨などは折れていたので一応腹回りにはサポーターを巻いておりますが、後数日も有ればそれも必要無くなるでしょう。寧ろビアーさ・・・んは如何でしたか?試合の事とは言え乙女の肌に傷跡を残す結果などになれば少し自決(気落ち)してしまいそうでして」

 

「まっさか~、カストロさんもそんな甘さで格闘家やってるはずも無いでしょうに・・・私の怪我なんてその日の風呂上りには消えてましたよ」

 

かすり傷程度なんて数時間で元通りだ。骨折とかしても2~3日でくっ付くんじゃないかな?綺麗に折れてたなら1日でくっ付く自信が有る。まぁ全身ボロボロの重症とかだったら回復に回せるエネルギーが不足してもう少しは時間が掛かるかもだけど、単発の怪我ならそんなもんでしょう

 

「・・・あなた達食事にボンドでも混ぜて食べてるの?」

 

大丈夫。操作系念初心者のポンズでも2年も有れば食事ボンド疑惑体質に成れるから

 

「そんなものなりたか無いわよっ!!」

 

頭を抱えて"ウガーッ!"と吠えるポンズの背を押してカストロさんに別れを告げつつ私達は天空闘技場を後にする・・・ただ私達が去ってからカストロさんは最初に部屋に入る前にもしていた『点』の精神統一をするのが分かったんだけど、武人なのに座禅を組むとかじゃなくて教会とかで見かけるような祈りのポーズだったのはなんでなんだろう?実はどこかの宗教関連の家で育ったりしてたのかな?

 

疑問もそこそこに街から離れたところでアリスタやルルを解放してあげると2匹とも嬉しそうに飛び回る・・・ルルは兎も角アリスタにはやっぱり窮屈な思いさせちゃったしね

 

「よ~し!早速次の町へ行く・・・前に、はいコレ」

 

二人より三歩前進してから毎度恒例(?)の重し(バンド)重し(ベルト)を二人に向き直りながら見せつけると新しい旅立ちに明るい顔をしてた二人のテンションが一気に下落した

 

「ビアー・・・一応聞くけど今回のはどの程度の重さなの?」

 

「バンドは35kgでベルトは60kgね。合計で200kgよ。この重さに慣れたら私のと同じ50kgのバンドと100kgのベルトをしてもらう予定だから頑張ってね」

 

50kgの靴底は如何しようかな?まぁその辺は追々考えれば良いか

 

それじゃあ元気一杯、精孔全開で行きましょうか!

 

目指すはボード地方の首都、ユールだ!

 

 

 

 

・・・と、そんな訳でやって来ましたユールです。え?道中なにも無かったかって?天空闘技場の在る暴力上等な人達が集まる街の近くに拠点を構える山賊なんて物好きは居なかったわよ。犯罪がしたいなら寧ろ街中じゃないとね。基本山賊や盗賊の出現場所なんて地方の町や村周辺なんだから

 

街に入ってホテルにチェックインした私達は旅の荷物を置いて街の散策に出るが如何にも街全体が浮ついた雰囲気が有ったのでお店でたこ焼きと云う名のチップを払いつつ聞いてみると今日は夏の花火大会が有るらしかった

 

「辺りが暗くなって19時から20時まで海上で花火をしこたま打ち上げるんだ。屋台も港の傍に密集してるからすぐに分かると思うぞ。今は3時過ぎだが屋台はもう組み立ててるだろうから下見もしたければ出来るしな」

 

「情報ありがとうございます。う~ん。でも祭りが夜となると何かこの街の時間を潰せるような観光名所とか有ります?」

 

お!このたこ焼きの辛子マヨネーズ良い味出してるわね

 

「そうだな。お嬢ちゃん達が旅人だってんならユール国宝館に行ってみたらどうだ?18時に閉館だから時間を忘れるってこたぁ無ぇし、じっくり見て回れば時間も潰せると思うぜ?まぁ俺みてぇに興味が無い奴だと素通りしちまって時間つぶしにゃならねぇかもだがな!」

 

「ガハハ」と笑うたこ焼き屋のオジサンに軽く礼を告げて他に行く当ても無かった私達はオジサンお勧めのユール国宝館に向かう

 

お祭り会場の港と思しき場所からもそれほど遠くない所に建っている大きめの博物館だ

 

入り口で入館料を払って中に入ると矢印の案内に従ってこの国の歴史的価値の有る遺物の展示品を一つ一つ眺めていく

 

強化ガラスのケースやショーウィンドウの中に飾られてるのは緻密で精密な絵柄や加工が施された昔の食器や椅子、絵画、銅像など様々だ。それぞれのケースの前には説明文のプレートが置いてあるので今もこのちょっと形が崩れてる銅像が昔の王様がモデルだと理解できる

 

流石に数百年規模で昔の物だとチラホラと一見しただけではよく分からないのが混じってるわね

 

レツとポンズはと言えば如何してるかと周囲を見渡すと二人とも別々の物を見ているようだ

 

「わぁ!この人形って目の部分に宝石入れてるの?・・・流石貴族、この頃はガラスの生産・加工技術が無かったにしても贅沢な使い方してるね」

 

「これが当時の狩猟用の罠・・・大がかりなようでいて機構そのものは単純だから森で道具が無い時なんかは応用も出来るかしら?」

 

・・・レツは兎も角ポンズは美術品に向ける目じゃないわね、アレは―――仕事脳過ぎる

 

そんな感じに時にバラバラに、時に一緒に飾られた物を見て回っていって館の中央くらいに辿り着いたら思いっきり自己主張するキラキラと輝くお宝が鎮座していた

 

黄金の輝きを放つそれらは天井のガラスから降り注ぐ太陽光で一層煌めいて見えるのだろう・・・今は夕方だからそんな事も無いが

 

広い空間の中央に三つのガラスケース。その中身は黄金の剣と兜とハイヒールだ

 

「ええっと何々?14世紀に黄金を只管求めた王様の指令で作られた『純金の処刑刀』に『純金の戦兜』に『純金のハイヒール』ね」

 

「ええ・・・純金ってそれ強度とか大丈夫なの?」

 

金は化学変化を起こしにくい物質だけど同時に柔らかい金属だもんね。金貨とかも普通は純金じゃなくてある程度混ぜ物しないと模様とかも潰れちゃうし、確かに純金の刀とか硬い骨を斬ったら一発でひん曲がっちゃいそうだ

 

「説明書いてあるわよ。『純金の処刑刀』は王侯貴族の斬首の為という名目で作られたけど罪を裁くのが当の王族だから使われたことは無し。『純金の戦兜』は王様が戦場で被ろうとしたけどそんな流れ矢も下手したら貫通しそうな兜を被らせる訳にはいかないから直前で金メッキの鋼の兜を被せて騙してたんだってね・・・そっちの壁際にメッキの剥がれかけた同じ形の兜が有るからそれじゃない?最後の『純金のハイヒール』は娘の為に作らせたけど重くて足音が五月蠅い上に靴擦れを起こし、更にヒールも変形してこけて激怒。以降王女がこれを履く事は無かったそうよ」

 

ダメじゃん!黄金大好きだか知らないけど黄金に目が眩み過ぎだよ当時の王様!てかよくそんなエピソードまで残ってたわね。絶対に黄金王(笑)的な感じで周囲から密かにバカにされてたでしょ

 

よく見たらハイヒールから微妙に負のオーラ漂ってるし、多分『これを履いてパーティーに出ると必ずコケる呪い』とか掛かってるでしょ

 

そんな色々と残念な国宝も見つつゆっくりと時間を潰した私達が館の外に出ると辺りが薄暗くなって逆に港の方から人々の喧噪と屋台の光が浮かび上がる中々良い時刻となっていた

 

「良し!それじゃあ花火の時間までは屋台を見て回りましょっか!」

 

しかし意気込んだところでポンズから待ったが掛かった

 

「今回は二手に分かれましょう。アリスタは花火は初めてのはずだから宿から花火を見学させてもらうわ―――レツもお祭りで人目が溢れてる中でルルを出す訳にもいかないでしょうから本体を預けてくれる?」

 

「ええ!そんなポンズだけなんて悪いよ。それなら適当に屋台の物を買って皆で宿から一緒に・・・アイタッ!?」

 

レツがポンズに詰め寄ろうとするのを当のポンズにデコピンされる事で防がれる

 

「私はこれでもアンタ達より旅人歴なら数年は先輩なのよ。小さい子達(ルルとアリスタ)の面倒はお姉さんに任せて貴女たちは存分に花火も屋台も満喫してきなさい」

 

片目を閉じて諭すように告げるポンズ・・・ヤヴァイ!ポンズのお姉さん属性にプラス10点が加算されたよ

 

「その代わりお土産は色々買ってきてね。焼きそばに唐揚げにわた飴にケバブ。それと久しぶりにバナナチョコとかも食べたいわね。あっ、クレープは全種類揃えるのは常識よ。あとは貴女たちに任せるわ」

 

お、おう・・・ポンズは割とエンジョイするタイプだったのね

 

「は、ははは・・・」

 

レツも苦笑いしか口から零れない中ポンズにルルを預けて改めて私とレツで港の方に足を向ける

 

通りを真っ直ぐ進むとすぐに屋台群の端が見えてきた。この辺りだとあの国宝館が一番大きい建物みたいだし、出し物が花火って事だからあの辺りが一種の境界になってたのかもね

 

色々な脂っこい匂いと甘い匂いに夜の少し冷えた潮風が混ざり合って鼻腔をくすぐる

 

行きかう人々の恰好は流石に浴衣の人とかジャポンでもないので見当たらないけど、醸し出す空気は前世と同じだ

 

取り敢えず最初に目に映った屋台の林檎飴を片手に歩を進めると大小のビカビカと七色に光る風船を持った魚の着ぐるみが居た。後ろに風船屋が在るからそこの宣伝かな?

 

少し見てたら屋台の方のオジサンが話し掛けてきた

 

「お!どうだいお嬢ちゃん達。この光玉のオモチャを入れた風船、買っていかないかい?普通の大きさの風船はそこそこ売れるんだが大きい方は中々売れなくてよ。まだ祭りも出だしだからお嬢ちゃん達みたいなのが持ってたらそれだけで売れ行き良くなる気がするんだよなぁ。今なら半額にしとくぜ。如何だい、買ってかないか?光玉も上手く活用すればインテリアにだって使えるぜ?」

 

上手く活用すればインテリアって多分大半の人がそんなセンス発揮しようともしないと思う

 

「大きい風船ですね。1mちょいは有りそうですけど流石に邪魔じゃないんですか?」

 

「あ~、かもなぁ。今年から屋台を出したんだが、もしかしたら失敗だったかも知れん。まぁ地元の祭りの雰囲気の盛り上げに貢献しろってせっつかれたから他の屋台と被らないようなもんを赤字に為らない程度に出したんだがなぁ」

 

成程。各地の祭りを追っかけて屋台で稼ぐ本業の人達とは違って利益は度外視な訳ね

 

オジサンが失敗って言ってるのはアレでしょうね。風船を持っている人達が時折吹く海風に風船が横に流れて微妙に通行人の邪魔になってる。小さい風船はまだ大丈夫にしても大きい風船だと普通にウザいレベルだ

 

「って、そこが分かってるなら売りつけようとしないでよ」

 

「なっはっは!本当に不評か如何かなんて祭りが終わってみないと分かんねぇだろ?売上は別として商売としてやってる以上は売り切りてぇじゃねぇか。間違ってデカイ方も通常サイズと同じ数だけ発注しちまったんだよ」

 

知らねぇよそんな事!

 

仕方ないので普通のサイズのお祭り風船は買ってあげて食べ歩きしたり射的やら輪投げやらのミニゲームをしながらグルグル廻っていると人の流れが変化し始めた

 

「あっ、もうすぐ花火の始まる時間みたいだね」

 

「そう。なら私達も適当に腰かけられる場所を探しましょうか」

 

とは言え当然都合よくベンチやら良い感じの段差やらが空いている訳も無く、二人で暫くキョロキョロした後で常人のジャンプ力では届かない建物の屋根の上に腰を据えると、ほぼ同時に花火が上がり始めた

 

お腹の奥に響くような轟音と共に極彩色の炎が夜の闇に花開く。『芸術は爆発だ』ってセリフの正しい使い時はここなんでしょうね

 

暫く色とりどりの花火にレツと歓声を上げたりどのタイプの花火が好みか語り合ったりしている内に花火の時刻も終盤に差し掛かろうとしていた

 

「って、ああっ!ポンズやルル達へのお土産まだ買ってない!!」

 

急遽頭に冷や水ぶっかけられたような気分になり、チマチマと食べていたイカの姿焼きの残りの足を飲み込みながら立ち上がる

 

レツも私の言葉に口元をわなわなと震えさせている

 

「不味いじゃんビアー!花火が終わったら残り物を売ってる屋台はまだしも直ぐに閉めちゃうところだってきっと在るよ!いや、そもそもクレープとか作り置きとか出来ないし!」

 

「レツ、ゴミ貸して!それでレツはクレープ屋に直行して全種類購入!確か隣が唐揚げ屋だったからそれもお願いね。私はゴミ捨てとそれ以外を回るから!」

 

クレープなんて柔らかい物を持って走り回る訳にもいかないし、作るのにも時間が掛かるはずだからね

 

言うが早いかすぐさま行動に移した私達は花火そっちのけで屋台を廻り、なんとか花火終了前に頼まれた分は揃える事が出来たので帰る為にも立ち並ぶ屋台の端・・・最初に風船を買った場所で合流した。少し遠いが丁度最後の花火が打ち上がったようで≪これにて花火大会を終了します≫的なアナウンスが聞こえて来る

 

「おうおうあの時の嬢ちゃん達、晩飯の代わりにしちゃ買いすぎじゃねぇか?」

 

二人で一息着いてると光る風船の屋台のオジサンが私達の両手の荷物を見て話し掛けてきた

 

「別に私達用の物じゃないんで心配無用です。逆にそちらはあの大きな風船は・・・置いてないですね。売れたんですか?」

 

屋台の後ろに鎮座してたのも売り子の着ぐるみの人の手にも風船が無い

 

「いや、それがよぉ。そのバカ(着ぐるみ)が最後の方に全部の風船持って売ろうとしてたんだが、花火に夢中になって手放しちまったんだよ。今頃風船どもは海風に揺られて向こうの空を遊覧中だ」

 

あ~、そりゃ着ぐるみの手で油断してたら風船の持ち紐くらい放してしまうわよね

 

私達が来た博物館の在る方に目を向けると確かに遠くにボンヤリと光る風船群らしきものが見える。光玉(オモチャ)を入れて重くなってた分、上空高くすっ飛んだ訳ではないみたいね

 

「ビアー、花火が終わったなら早く帰らないとポンズがお腹空かしてると思うよ」

 

レツに促された私はオジサンに別れの挨拶をしてホテルに舞い戻った

 

ただ、如何やらポンズはお土産はルルとアリスタの分が含まれてたようで実際に食べたのは半分くらいだったわね。クレープとか大半はアリスタが食べてたし、ルルは肉料理(ケバブ)をガッツいてたから

 

・・・それで良いのか草食動物(ひつじ)。いや念獣だけど

 

食べ終わったら女子としてカロリーを消費する為にも日課の『纏』と『練』をして(私とレツはもっと前から『円』とかで消費継続)お風呂で(最後は滝のように流れた)汗を浄化するとフカフカのベッドにダイブする

 

「それじゃあ皆お休み~」

 

「うん、お休み」

 

「お休みなさい」

 

≪メェ~≫

 

≪スゥゥゥ・・・ピィィィ・・・zzz≫

 

約一名(匹)とっくに寝てたような気もしたけどそのまま睡魔に身を任せる事にした

 

あ~、相変わらずルルの枕は最高なり~♪

 

 

 

花火祭りの翌朝。起きると何やら外の様子が少し騒がしかった

 

その時は特に意識してなかったんだけど、ホテルで朝食を済ませて皆で外へ出て少し歩けばその理由も自然と耳に入ってくる

 

「ユール国宝館の”純金シリーズ”が盗まれたねぇ・・・?」

 

例の『純金の処刑刀』に『純金の戦兜』に『純金のハイヒール』が昨日の閉館後に盗まれたそうだ

 

仮にも国宝盗難と云うだけあって情報は一気に拡散したみたいで号外や新聞、主婦の噂話がそこら中で飛び交っている

 

「”純金シリーズ”って気が抜ける呼び方は止めてくれないかしら?」

 

良いじゃん。馬鹿っぽい感じがして寧ろ合ってると思うんだけど?

 

「ええっと?盗まれたのはやっぱりその三点のみで各種セキュリティーに侵入の痕跡無し。ケースもそのままの状態にも関わらず国宝が無くなって代わりにコンクリートのブロック片が入れてあったんだって。それでそのブロック片にはコピー用紙が貼られててかなり挑発的な文章が書いてあったみたいだよ」

 

レツが配られてた号外で今解ってる分を読み上げる

 

「なにそれ?怪盗気取りって事?」

 

「うん。警察も今は愉快犯も視野に入れて調査しようとしてるみたい」

 

「今時そんなバカをやる人もまだ居るってのが驚きね」

 

レツもポンズも思わず呆れ顔だ。そんな二人に一つの提案をする

 

「ねぇ、昨日はこの街は物資の補充と少しの散策で出ていこうって話だったけど、予定に怪盗狩り(ハント)を追加しても良い?」

 

VS怪盗!エンジョイ勢からしたらなんて愉快な響きだろう

 

私の笑顔を見た二人は諦めたように視線を遠くに飛ばしている。うんうん。人生諦めが肝心だよ

 

私は二人を引き連れて臨時休館となったユール国宝館の入り口に真っ直ぐ向かうと門の警備をしてる人に権力の暴力(ハンターライセンス)を突き付ける

 

「どうも、プロハンターです。一度現場を見せて貰えませんか?」

 

ハンターライセンスを前にすれば警察の張る進入禁止エリア(黄色いテープ)もなんのそのってね!―――折角手にした権力を何時使うかって?今でしょ!

 




純金の処刑刀は原作にも出てきましたね
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