毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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新年あけましておめでとうございます。

いや~原作突入してないと中々筆が進まないですねぇ・・・ええ、今回は難産でした。原作無しのオリジナルタグで書いてる人達マジリスペクトですわ


スズランとドラゴン

〈龍皮病〉・・・と呼ばれる病気が在る。その病気は人間の皮膚がその名の通りドラゴンの皮膚。大きな(ウロコ)に覆われる病だ

 

ドラゴンの鱗と聞けば強靭な防御力や力強さをイメージする人も居るかも知れないが、実態はあくまでもそれっぽく見えるだけの皮膚の病気・・・奇形への変化とちょっとした硬質化に過ぎない

 

腕や足の一部に鱗のような形の大きな爪のような組織が形成されるようなものだ

 

当然体の一部が多少硬くなったところで何の役にも立たないどころか、本来鱗が生える構造をしていない人体にそんなものが後付けで生えても私生活で少し間違って鱗の先がどこかに引っ掛かってしまえば、爪を剥がれるような激痛に見舞われると云う身体的に何の恩恵も得られない病気なのだ

 

龍皮病は現代でも症例が極めて少なく、一部の特殊な趣味の持ち主が大枚を叩いて買い付けるレベルであり、現代より更に昔ともなれば鱗の生えた人間は周囲の人間たちから疎まれ、蔑まれ、忌み嫌われる排斥の対象となる。殺されるか、村から追放されるかの二択と言ってもいい

 

文明の発展してない時代における追放は実質『私達の知らない場所で野垂れ死ね』という宣言だ

 

人間は文明と群れ、この二つの要素を失った状態で厳しい自然界に放り出されたら途端に弱者に成り下がる

 

現代の情報化社会に生きる者たちの持てるような研鑽されたサバイバル知識が有れば。それか頑丈なナイフの一本でも有れば独りでもまだ足掻けたかも知れないが、投げられる小石に耳の奥にまで染みつくような罵声で心身共に疲弊した状態の人間が質素な服に無手のままで外の世界に放り出されたとして、一体何日生き残れると云うのか

 

昔、とある村の青年が龍皮病を(わずら)った。親しかった者達は家族や恋人も含めて『敵』となった

 

しかし青年がただ一人で村人相手に異を唱える事も怒りから反旗を翻す事も出来るはずもなく、その青年は村を追放された

 

本来であればそのまま失意の内に死ぬはずだったその青年は何の因果か奇跡(呪い)のような偶然を引き寄せる。いや、惹かれ合ったというべきか

 

森の奥で出会ったのは自分と同じように体の一部に竜のような鱗が生えた女性だった。訊けばその青年と同じ経緯で近場の別の村から追放されたばかりだと言う

 

二人はすぐに意気投合した。理不尽から来る失意によって押さえつけられていた怒りが、不満が、激情が口から次々と吐き出されその全てをお互いが肯定していく時間を二人は心底幸せだと感じた

 

二人はお互いを励まし合い、誰にも見つからない、迫害されない為の場所を探して人の居ない場所を求めて鬱蒼(うっそう)とした森の奥の洞窟を見つけ、そこを拠点とした

 

洞窟は一見そこそこの広さだったが、奥に続く狭い通路を抜けた先にはかなりの広さの空間が存在していた。加えて木の実などの食料にも恵まれていたそこに住み着いた二人はやがて、子宝にも恵まれる事となった

 

だが険しい山中を超えた先で見つけるに至ったその場所に余所の人間が来る事は無く、結果として血縁者同士での結婚からの人員拡充が必然となった―――龍皮病を患った者は殺されるか追放される。しかし龍皮病の二人が結婚し、子供たちの血が濃く混じり合った事でポツポツと龍皮病が彼らの固有のモノとして定着していく

 

村として発展すれば何時しか他の人間に住処がバレたかも知れないが、血が濃くなる弊害で彼らの人数が然程増えなかった事で『龍皮病の村』は細々と歴史を重ねていく

 

彼らの村には一つの伝承が在った。即ち『我らは偉大で強大なるドラゴンの末裔たる竜人である』

 

彼らの村を興した最初の二人は時に『トカゲのようだ』とも罵られた皮膚を寧ろドラゴンのようだと自分たちに言い聞かせ、子供たちに質問された時には彼らの脳内で作り上げられた壮大なカバーストーリーをそのまま伝えたのだ。その時にはもう、その二人すらも妄想と現実の境界が曖昧になっていた

 

だが二人の子孫は始まりの二人から強靭だと聴いたドラゴンの鱗と自分たちの鱗に差異が有る事に気付く。そして考えた末に自分たちはドラゴンとしての血が薄まってしまったが為に不完全なのだと結論付けた。村を創った彼らの祖たる二人はドラゴンの鱗を持っていた。だが今の自分たちには持つ者と持たざる者が居る―――その日の内に持たざる者はドラゴンの血と力を受け継げなかった不出来な者として殺された

 

一時村の存続も危うくなったが、残った彼らはドラゴンの末裔たる証である鱗を持つ者を多く産み落とさんとした

 

より硬い鱗を持つ者。より広い面積が鱗で覆われている者。それに加えて強者である者は優遇され、その者らが死した時にはドラゴンの証たる鱗の部分を剝ぎ取って直接その身に取り込んだりもした。かくして村の意思は一つの方向に固まる

 

 

―――何時しか世界最強(ドラゴン)に返り咲く―――

 

 

元来、龍皮病はただの病だ。幾ら血を濃くしようとドラゴンに変身したりはしない

 

だがこの世界においてはそれを可能とする力が有った

 

その村の人間は別に念能力を意図して使えた訳ではない。しかし全員が同じ意思と遺志の下で同じ土地で小さな閉じた集団が血の継承を行った結果、怨念とも云える執着もまた蓄積されていった

 

比較的短いサイクルで世代が積み重ねられつつも村人の数が30を超える事はなく、時代が流れて比較的近代となった時、積もり積もった思念をその日生まれた赤ん坊が適合・吸収する形となった

 

洞窟の奥で決して邪魔が入らぬように狭い入り口を岩で塞いだその場所でかの子供(ドラゴン)が生まれた

 

変化系と具現化系の力で肉体改造がなされ、強化系の力で最強の肉体が十全に補強される。深緑を思わせる硬い鱗に鋭い鉤爪。歯は肉を食い千切るに特化した牙へと変わり、二本の角が後ろに流れるように生えている。縦に開いた瞳孔はそれだけで他の生物を威圧する鋭さを持っていた

 

人間の赤子とは違う形で且つ在り得ない硬さを誇るその子供を産んだ母親は自分が一族の悲願を達成したと識る前に力尽きたが、周囲に集まっていた村人たちは誰一人として気にしない

 

目の前の奇跡に滂沱の如き涙を流している彼らにとって些事も良い所だからだ。仮に気付いた者が居たとしても称賛以外の感情も言葉も掛ける事は無かっただろう

 

生まれたばかりのその子を村では最年長の男が脇の下を持って天に掲げるように抱き上げる

 

直後に変化系と放出系の力から来る竜の炎(ドラゴンブレス)で上半身を焼かれ、満足そうに燃え尽きていった

 

生まれたばかりの赤ん坊は当然十分な知性も理性も育っていない。そこへ積年にして積念の『最強(ドラゴン)であるべし』という感情のみがインストールされたら如何なるか?

 

その場に暴れ竜(バーサーカー)が顕現し、周囲に居た人間を全員”人間だったモノ”に変えるのは至極自然な行動であったのだ

 

彼らが碌に抵抗もしなかった事で生まれてから3分と経たない内にその場における最強を証明したその”ドラゴンのようなナニカ”はそこで目的を見失う

 

もう戦うべき敵は居ない。洞窟の入り口は閉じられていた為、赤ん坊であるそのドラゴンにとってその閉ざされた場所が世界の全てだったのだ。皮肉にも村が続けてきた『閉じた世界』も偶然か必然か、そのドラゴンモドキは受け取ってしまったのだ

 

それからドラゴンにはずっと独りの時間が続く事となる。腹が減れば周囲の者たちの亡骸を喰らい、彼らの思念まで取り込んで更にオーラは強くなった

 

食糧庫も兼ねていた洞窟の奥にはそこそこの食糧が在った為、暫くは食べては寝る生活が続いた

 

ドラゴンは生まれてから直ぐに強くなるという思念でも在ったのか体も大きくなり、様々な能力も向上する。本来好奇心旺盛な子供ならば適当に洞窟の中で暴れていれば入り口が崩れて新たな世界を感じ取り、外へ出ていく事も出来ただろうが、好奇心を闘争心で塗り潰された上でその相手が居ないドラゴンは洞窟の中ではただただ大人しかったのだ

 

やがて食料も無くなり、ドラゴンは餓死することになった。生まれ持った使命である最強を証明したドラゴンは特に抵抗しなかったが一つだけ未練が在った

 

少数の村人とそれを支える食料ではドラゴンの体格は『念』ありきでも精々十数メートル規模にしかならなかったのだ―――自分は既に他の生物を圧倒するという意味では最強だ。しかし自分の強さの頂点(ピーク)はこの程度ではないのだと本能で理解した

 

その想いを抱いたままで死んだかの竜は、死後さらに強まる念によって理想(大人)の姿へと変貌した

 

死者の念が寄り集まって出来たドラゴンは死後の念と相性が良かったのだ

 

死者の念により頭から尻尾の先までの全長で30メートルの体格へと成長した自分の姿に満足したドラゴンはそのまま目を閉じる。自分は最強となり、完全に念の体・・・図らずも念獣ならぬ念竜となった事で自分を蝕んでいた空腹も感じなくなった

 

大きな体も丸まってしまえば何とか洞窟内にも収まる程度だ。後はもう死者の念が風化するまで、ただ惰眠を貪るだけで良かったのだ

 

それからそれなりの年月が経ち、ドラゴンを現世に縫い留めていた自称竜の末裔達の残留思念も薄れて極狭い世界でその存在を完成させていたドラゴンが第二の生も完結させんとする直前、なんの因果かその封印がこじ開けられた

 

「よいしょっとぉ!・・・洞窟の奥に洞窟かぁ。表には微かに人が住んでたっぽい痕跡が在っただけだけど、こっちはなにか残ってるかなぁ?」

 

「在っても金目のモンは何も無さそうな感じだったがなぁ。ちょいと見たならまた別の場所を探そうぜ。上手くいきゃあ一攫千金でウッハウハよぉ!」

 

「はぁ・・・レオリオさんって悪い意味でギャップが酷いよね」

 

「確かに色々と損な性格はしてるわね」

 

この世界の者達(自分たち)以外を無意識に排斥していた一種の結界とも云えるその『場』も半分は別の(たましい)を持つ者には効果が薄かったのか、頭にスズランの髪留めを付けた茶髪の少女が大きな帽子を被った緑髪の少女と金髪を動きやすいように後ろで束ねた少女、更には長身スーツに小さめのグラサンに赤と黒の菱形模様のアタッシュケースを片手に持った男を伴って洞窟に入ってきた

 

ドラゴンの存在はほぼ消えかけていた。念獣としての体は無意識に物質化を解いており、満足感からくる微睡(まどろ)みの中に在った事で意思を感じる事も出来なかったのだ

 

だが、生まれてから3分で満たされた自分の存在意義にケチを付ける存在が現れたとなればその限りではない。自分以外の存在が居るなら先ずは証明しなければならない

 

―――自らの最強を、闘争と相手の死をもって

 

 

グルォオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 

世界最強を自任するドラゴンは生まれてから二度目の雄たけびを上げながら顕現した

 

このドラゴンを井の中の蛙と呼ぶ者は居るかも知れない。しかし井戸の中に居たのが凶暴なドラゴンと知った上で大海(外の世界)を態々教えてやろうなどと云う酔狂者がどれだけ居ると云うのか?

 

「ぐあっ!うるせぇ・・・っておいおいおい!何なんだコイツはっ、いきなり顕れたぞ!?カメレオンみたいな擬態能力か?こんなバケモノが持ってていいようなシャイな力じゃねぇだろう!」

 

「やばいよコレ。純粋に敵意しか感じない!」

 

「呆けてないで走る!今の衝撃で洞窟が崩れるわよ!ビアーも―――」

 

「きゃああああ♪本物のドラゴン初めて見たぁあああ!見て見て!口元から火ぃ垂れてる。アレ絶対炎吐くって!生物としての常識にケンカ売り過ぎじゃない!?」

 

「如何見ても既存の生物じゃない(念獣)でしょう!―――レツ!レオリオもこの馬鹿は置いて逃げるわよ!ここに居たら死ぬわ!」

 

「いやアイツは!?」

 

「「良いから!!」」

 

彼らの視線が交わった瞬間に戦い?の咆哮(ゴング)は鳴り響いた

 

斯くしてとある山中で、(ビアー)(ドラゴン)がぶつかり合う事となった

 

彼らが何故こんな辺鄙な場所に居たのか。話は5日程前に遡る

 

 

 

◁◁◁

 

クラピカと別れてから暫く。今まで通りに時折湧く山賊や強盗を広範囲の『円』(相手にとっての強制絶望エンカウントUP)で見つけたらボコボコにするのを繰り返しながら幾つかの町を経由した

 

ゴロツキ達も何人かは街道を張って獲物を見繕わなきゃいけないから『堅』と『周』の併用で狭まった私の今の『円』でも十分射程圏内だ。遠くから望遠鏡で覗いてる奴だって地形によっては居るけど素人の張り込みなんて普通に視線を感じるからね

 

見られたところで気付く訳が無いってのが前世の常識だけど、この世界だと垂れ流しの生命エネルギーなんてものが在るから、そこに監視者の意識が乗って対象に運ばれてしまうんでしょう

 

だから『絶』すら使わないで遠くから監視するなんて、風上で香水付けまくった上で風下に居る犬とかに”自分は隠れてますよアピール”するようなものだ

 

ハンター相手だと頭隠して尻隠さずと言うか、隠れ方が雑いと言うか・・・まぁそんな感じだ

 

美少女が先導を務める電車ごっこ(お縄連結)の牢屋行きを終点(次の町)まで運行した後は町中散策タイムである

 

「わわっ!なにコレ、ゲーミング色トカゲの姿焼きだってさ」

 

散策途中に屋台で売っていた料理に目を惹かれてマジマジと覗き込む

 

光沢のある七色に光るトカゲが串焼きになって何とも食欲をそそらない!―――代わりに凄く興味は惹かれるわね

 

「お!嬢ちゃんコイツは初めてかい?このトカゲは焼くと色の場所ごとに肉質がロースやらヒレやらホルモンやらレバーやらとあらゆる肉の味に変化する珍味ってか珍品なんだ。後ろの連れの嬢ちゃんたちも如何だい?1本200ジェニーだよォ!」

 

なにその何処ぞのグルメバトル漫画のジュ〇ル・ミートのダウングレード版みたいなの?

 

「おじさん。それ3本頂戴!」

 

「まいどあり!お会計600ジェニーだ」

 

私は600ジェニーを財布から出すと屋台のおじさんに支払い、ぶっちゃけ毒々しいそのトカゲたちを受け取るとレツとポンズに1本ずつ渡す

 

「うわぁ・・・近くで見るとまた凄い色合いだね」

 

「説明を聞く分には味はトカゲよりも牛に近いみたいね。塗ってあるタレも普通に焼き肉のタレがベースみたいだし。ただ見た目が酷過ぎるから都市のスーパーとかには並ばないわね。これは」

 

うん。確かに都会育ちの奥様方がこんな色のトカゲを買う様子が想像できないわね

 

各々が鮮やか過ぎる色合いを十分に堪能したら三人同時にトカゲに噛り付く

 

・・・・うん。さっき思った通りにジュエル・〇ートの劣化版だよコレ!あっちは全ての肉の旨味が融合してるって感じだったけど、このトカゲは全種類の肉をミンチにして混ぜ合わせたかのようなコレジャナイ感バリバリだ!

 

「これは・・・美味しくない訳じゃないけどさ・・・」

 

「ええ。せめて実際の虹のように味の違う部位が分かれていたら良かったんだけど、ごちゃ混ぜになってるわね」

 

「料理に使うにも頭を悩ませる食材よね。味そのものはどの部位も普通だし、屋台のおじさんが珍味じゃなくて珍品って言ったのも頷けるなぁ」

 

ご当地名物には成れても決してそれ以上には成れない食材だ

 

そんな何処に向かって進化したのか理解に苦しむトカゲの姿焼きを平らげていると、歩いていた道の先の方が騒めいているのを感じる

 

ただレツの人形劇みたいに大道芸とかそういうポジティブな何かでは無さそうだ。(はや)し立てたり歓声を上げたりとかじゃなくて、コソコソと声を小さくして通りの先をチラチラ見ている

 

「なにか在ったのかな?」

 

「ちょっと『円』一極に切り替えてみるわね」

 

私も気になったので『堅』と『周』を解いて『円』の範囲を一気に広げると騒ぎの原因を探知する

 

「! 行くよ!」

 

「え?ま、待ってよ!」

 

状況を把握した瞬間には駆け出していた。レツとポンズも一拍遅れて付いて来てくれる。数百メートル程度だと大した説明をする前に到着しちゃうので本当に必要最低限だけを後ろの二人に伝える

 

「馬車!下敷き!暴れ馬二頭!」

 

「私とビアーで馬の世話をするわよ!レツは馬車!」

 

ポンズの振り分けと同時に跳躍した先に辿り着くと私が言ったように横転した馬車に小さな男の子が挟まれ、馬車が倒れた事で興奮したのか馬車から外れた馬が一頭は馬車の周囲の人々を威嚇して回り、もう一頭は倒れた子供の近くで地面を踏み鳴らしていた

 

そのせいで周囲の大人も迂闊に近寄れないみたいだ。馬の蹄・脚力・体重はどれも普通の人間なら大人でも致命傷。下手に近寄った結果”最後の引き金”を自分が引いてしまうリスクを思えば及び腰になるのも無理はない。かと言って勇気だけを胸に無策で突っ込んだらそれは無謀というものだ

 

怪我人が居る以上は最速で馬を引き離す必要が有るとして私は瞬時に馬の真下に移動して馬を持ち上げて数メートル馬車と子供から距離を取る

 

馬の体重なんて大体470kg前後だから何処ぞの暗殺一家の正門に比べたら四分の一にも届いてない。私に運ばれた馬も興奮してたのが自分の体がいきなり訳の分からない移動をした事で一瞬キョトンとしたようだ。そりゃ突然横スライドしたら驚くよね

 

だけどここで何もしなかったらまた暴れ出すかも知れないので追撃をかます!

 

「よ~しよしよしよし、キミ可愛うぃ~ね~♡もう大丈夫だから落ち着いて~♪どう~どう~!」

 

ちょっとオリエンタルでラジオしてる人の片割れが憑依しちゃったけどオーラを纏った手で渾身の(こころ)で可愛がってやる

 

私に撫でられた馬はすぐにリラックスモードに入ってお座りする程度には警戒を解いてくれた

 

―――元来臆病とされる馬が公衆の面前にもかかわらずだ

 

オーラは悪意をもって『発』っすればそれだけで『纏』を使ってない相手の心身を圧迫する

 

『極寒の中裸で』とは翼を授ける師匠であるレッドブルさんの例えだったけど、それならば逆に善意や愛情などを籠めたオーラは砂漠のオアシスのような安心感を相手に与える事も可能なのではないかと思ったのだ。どころか私のオーラの暴力をもってすれば砂漠の中の高級ホテルのスイートルームにも匹敵するだろう。これが私のナデポ♡スキルだ

 

・・・まぁ本能に忠実な動物くらいじゃないと効かないと思うけどね。訓練された動物の理性や人間の知性が間に挟まると効果は半減しそうだし、人間相手だと相性によっては反転するかも

 

仮に嫌いな相手が癒しオーラ放ってたら拒否反応示すよね?

 

ポンズの方も小動物(蟲)専門とは云えポピュラーな馬の扱い程度はお手の物なのかまだ興奮状態ではあるものの暴れる事は無くなったようだ。あと十数秒も経てば完全に落ち着くでしょう

 

「待ってて!今持ち上げるから!」

 

レツが子供に声を掛けながら馬車の端を持つと暴れ馬が大人しくなった事で正気に戻った周囲の大人たちも動き出そうとする

 

「おい、俺らも手伝うぞ!子供が一人で馬車を持ち上げるなんて出来ねぇ。なんとか隙間を作るから誰かその間に倒れたガキの方を―――」

 

「えい!」

 

”ヒョイ!・・・ズシンッ!!”

 

「『ぅえええええええええええええ!!?』」

 

女の子が横転した馬車を一人で隙間を作るどころか元の形に戻したのを見た周囲は驚愕に固まる。気持ちは分かるけど怪我人優先だよ!

 

・・・と思ったところで群衆の中で一人だけ倒れた男の子に真っ直ぐ進む影が在った

 

「おいボウズ、大丈夫か。声は聞こえてるか?・・・気絶してるか。怪我は額を切ってるが傷は浅せぇな。だが衝撃が脳に響いてたらヤベェ。内臓もあの分じゃ傷ついてねぇだろうが、挟まれてた足が折れてやがる。ッチ、粉砕しちゃいねぇだろうな!?」

 

応急セットと呼ぶには本格的な道具が入ったアタッシュケースを開けてテキパキと子供の容態を診る長身スーツの男―――いやなんでレオリオが此処に居るのさ!?

 

いやでもそうか!原作開始時にクラピカとレオリオが同じ船に乗っていたのを思えばルクソ地方とレオリオの実家だか活動拠点だかが近い位置に在った事は予想出来たか。実際くじら島もそう遠くない位置にあるのは地図で確認済みだし!

 

「おい!この辺りに病院は無ぇのかっ!?」

 

レオリオが群衆に向かって声を張り上げて質問を飛ばすとその内の一人が答えてくれた

 

「小せぇ町だからな。この先四つ目の角を右に曲がって左手側に緑の屋根の診療所なら在る。本格的な病院に連れていくとしても車で片道2時間は掛かるし、そもそもこの町で車なんて持ってるのは町長や衛兵の詰め所とかが共同のモンを使ってる程度だ」

 

そりゃ馬車走らせてるくらいだもんね。救急車を呼ぼうとするなら往復4時間か

 

「なら取り敢えずは診療所だな。小さいっつっても此処よりゃあ幾らかマシだろう。おい、金髪馬鹿力の嬢ちゃん。足の添木代わりにするから外れた車輪の棒を二本ほどへし折ってくれねぇか?」

 

「その呼ばれ方凄くイヤだ!でも了解。ちょっと待ってて」

 

う~ん。私達三人の中じゃレツは一番非力なんだけどなぁ。まぁ周囲の人達からしてみたらその認識は仕方ないけどね

 

ポンズの方も馬を落ち着かせ終わったようで手綱を引いて近寄ってきたのでこの子達の持ち主である行商人っぽい人を探すとそれらしき人が近づいてきた

 

馬車が倒れた時に腕を打ったみたいだけど、怪我はその打撲だけで済んだみたいだ

 

どうにもボール遊びをしていた子供の飛び出しが原因らしいが周囲の人達がなにも言わないって事はそうなのかな?

 

レオリオが子供の足と額の傷の応急手当をし終わってから衛兵の方にも誰かが伝えていたのか、担架を持った人達が駆け寄って来た

 

それから行商人は事情聴取の為に衛兵の詰め所に馬と一緒に連れていかれ、レオリオは診療所に自分の施した処置を伝えて引き継ぐ為に子供に同行。私達も関わった手前診療所までは見送る事にして、彼らの後ろを付いて行く事になった

 

「大丈夫だ。血は沢山出てるように見えたかも知れねぇが、額の怪我はそんなもんなんだ。呼吸も乱れては無かったし最後の方には(うめ)くような反応も有った。今日明日中には目も覚めるだろうぜ」

 

私達が子供で怪我などの耐性が無いと思ったのか出来るだけ安心させるような事を述べていくレオリオ―――こういうちょっとした気遣いを何時でも自然と出来るのは彼の美徳なんでしょうね。実際には出会ったばかりだけど、さっきと今のこの様子を見るに間違ってないと思う

 

実態は野蛮人の聖地でボコスカ()ってたのは言わぬが花と云うやつだろう

 

「にしても嬢ちゃんたち何者だ?金髪の嬢ちゃんが馬車を持ち上げたインパクトに隠れちまってたがそっちの二人も暴れ馬を一瞬で鎮めるとか凄かった・・・ってか茶髪の嬢ちゃんは見間違いでなけりゃぁ馬を持ち上げてなかったか?もしかしてそっちの緑髪の嬢ちゃんも?ゴリラ姉妹か?」

 

ああ、うん。デリカシーに欠けてるのもレオリオっぽいや

 

怪力とかなら事実だし気にしないけど、ゴリラは無いでしょう。それにこの世界でゴリラの称号を授かって良いのは一人(ゴレイヌ)だけなんだから

 

「そう言えば自己紹介もまだでしたね。私はビアーって言います。この子がレツでこっちがポンズ。貴方のお名前は?」

 

張り付けたニッコリ顔で圧を掛ける

 

「お、おう・・・俺ぁレオリオってもんだ。宜しくな」

 

「はい宜しくです―――因みに雑学なんですけどゴリラって握力400kgから500kg、高くて600kgは有るみたいなんです・・・その身で試してみますか?」

 

握手を求めるように片手をレオリオさんに差し出すと彼は引き攣った顔に一筋の汗を垂らす

 

「い、いや、遠慮させて貰うぜ・・・あと悪かった」

 

素直に非を認められるのは良い事だよ。そうじゃ無かったら握った掌を指先から丁寧に圧壊していって赤黒くパンパンに膨れたゴム手袋にしなきゃいけないところだったからね」

 

「心の声が内側に収まってねぇぞぉおお!!なんだそのエグイ制裁は。俺の手を挽肉ソーセージに加工するつもりか!てか『しなきゃいけない』って謎の使命感は一体どこから受信してんだ!」

 

「そりゃあ勿論ボケとツッコミとト〇シ神からかな?」

 

「なんだトガ〇神って!?知らねぇよそんな神様!!」

 

この世界の創造神(ガチ)です。メガネを掛けた犬の姿をしています

 

私は敬虔な信徒のように祈りのポーズ(歩きつつ)で慈悲深い表情を浮かべ、優しい声を出す

 

「さぁレオリオよ。貴方もトガ神に祈るのです―――アイドルの追っかけばかりしてないで世界の運営(執筆作業)をちゃんとしろと。祈りが届けばトガ神は貴方にも(王位継承戦での)活躍の場を設けて下さるでしょう」

 

きっと・・・多分・・・恐らく・・・メイビー・・・

 

「敬ってるようで神の名前を略すんじゃねぇよ。てかこの世界大丈夫か?なんだその妙に人間味の強ぇ神様は?敬うより寧ろ友達になりたいわ!」

 

「・・・いきなり仲が良いよね、あの二人」

 

「ビアーはどっちかって云うとボケが好きだから、声を大にしてツッコんでくれる相手には好感触なんじゃない?」

 

あれこれ話している内に目的地の診療所に辿り着いて、レオリオが現場で判断した分の男の子の怪我の度合いと処置を手早く医者の人に伝える

 

丁度その辺りで男の子の意識もハッキリとした状態で戻ったので一安心だ・・・起きた瞬間痛みを認識して泣き叫んでいたのは仕方ないものとする

 

―――鎮痛薬打って貰ってたし後は我慢だ男の子

 

レントゲンやら脳波測定やらをやるにしても私達に出来る事は無くなったので、邪魔にならない内に診療所を後にする

 

「えっと、レオリオさんはお医者さんなんですか?」

 

「おっ、そう思ってくれたなら嬉しいが生憎とまだ医者の卵ってかその手前みたいなもんでな。今は医大に入る為に資金集めをしてる最中なんだ」

 

レツがレオリオの医療道具箱(アタッシュケース)を気にしながら質問すると彼は頭を掻きながらテレ臭そうに答える

 

ハンター試験=資金集めですね、分かりま・・・んん?

 

「資金集めですか?こんな田舎で?」

 

先程の町民とのやり取りを観るにレオリオはこの町の住人という訳では無い

 

医大の為に勉強するにもハンター試験に向けて体を鍛えるにも向いてるとは言えない場所だ。まだ万札1枚を武器に都会のカジノに乗り込んだ方が可能性はあるでしょう

 

・・・息抜きの旅行と言われたらそれまでだけど

 

するとレオリオはニンマリといやらしい感じの笑みを浮かべる

 

「へっへっへ。実はここだけの話、この辺りで良~い金になりそうな情報を得てよ。金を工面する本命前の肩慣らしっつ~か景気づけにちょっくら宝探しをしてみようかとな。上手く行きゃあ医者の勉強のお供に水道水で割った焼酎なんて生活からもオサラバ出来るぜ。そうなったら俺のモチベーションも右肩上がりってなもんよ」

 

お酒って勉強はもしかしたら捗るかもだけど、代わりに翌朝大半の記憶が吹っ飛ばない?

 

レツとポンズもレオリオの最初の印象は真剣に怪我人を手当する格好いい姿だったのに、今の彼のニマニマ顔を見て”うわ~”って感じになってる

 

一応ハンター試験の練習に辺境の宝探しと云うのは理解できるけど、事情を知らなければただの無謀で無鉄砲で無計画な残念な人にしか見えないわね

 

医大を受ける為に医大受験より遥かに難しいハンター試験を受けようとしてる時点でかなりぶっ飛んではいるけどね。とは言え『彼の目指す医者』の為にはプロハンターとの兼任が半ば必要条件みたいなところは有るか・・・少なくとも超奇特で大富豪なスポンサーを探すよりは健全だね

 

高笑いをしていたレオリオがそこでふと私の頭に視線を移した

 

「お、そいつはスズランの髪飾りか。こりゃあ幸先が良いねぇ」

 

「? 如何いう意味ですか?」

 

確かにスズランの花言葉は『幸福』だけど、花言葉なんて基本はポジティブなものばかりだからそんなに注目する程に特別な花と云う訳では無いはずだよね?

 

「実は俺が今探してるのがそのスズラン・・・正確には『朱いスズラン』を探してるんだ」

 

「『朱いスズラン』ですか?薄ピンクの花とか赤い種とかって意味じゃなく?」

 

他にも赤いスズランとも呼ばれる別の花(ベニバナイチヤクソウ)とかも有ったはずだけど違うよね。普通に在る花で一攫千金を狙えるような花じゃないし

 

「ああ、鮮やかで深い色合いの朱いスズランらしくてな。これが高価な薬の材料になるんだ。止血剤に造血剤、動脈硬化の軟化に血糖値改善とおおよそ血液に関する様々な症状に効果が有るんだが、いかんせん栽培に成功したって話は聞かなくってな。その上普通のスズランに紛れて極稀に咲いてるだけみたいなんだ。要は四つ葉のクローバーを探すのと同じだな」

 

話を聞く分には四葉のクローバーよりよっぽど見つけ難いみたいだし、仮に一株見つけた程度じゃ精々数万ジェニー程度にしか為らないんじゃ?・・・焼酎の水割りからオサラバするには栽培を成功させる必要が有るわね

 

「・・・栽培に成功したらお金が手に入って高いお酒を飲める上にその薬で悪酔いも回避なんて一石三鳥を狙ってたりします?」

 

「ったりめぇよ!その為に俺は此処に来たんだぜ。森の奥に季節外れのスズランが咲いてるって情報を得て挑戦してみる価値は有ると思ってなぁ!ガーッハッハッハッハッハッハ!」

 

欲望を前面に押し出してるけど医療の発展に関係のあるものを選んでるのは彼の根幹がしっかり定まってる影響なのかな

 

―――まるでソレを感じさせない欲に濡れた笑い声も本心なんだろうけど

 

思わずジト目でレオリオを見ているとレツが耳元で囁いてきた

 

「ねぇ、ビアーはその『朱いスズラン』の栽培方法は知らないの?ほら、以前の『幸福のタラクサクム(ケセランパセラン)』の時みたいにさ」

 

「残念だけど初耳ね。私だってそうホイホイと謎知識を蓄えてる訳じゃぁ―――「ケサランパサランだと!?ならお前さんが栽培法を見つけたっていうプロハンターなのか!」」

 

Oh・・・レツの質問に答えていたらレオリオが喰いついてきた。ケサランパサランの事を十二支んのチードルさんに託してから大体3ヵ月ちょい。(今は9月初頭)トリプルハンターの莫大な権力とかを考慮すれば素早く検証と発表がなされたと思うし、医学界に私の名前がそれなりに知られてるのも可笑しくないか

 

「え、ええ。改めてプロハンターのビアー=ホイヘンスです。でもさっきも言いましたけど朱いスズランの事は何にも知りませんよ?」

 

「いやいや、流石の俺でもガキの知識を全盗りで発表して大儲けとかは考えてねぇよ・・・にしてもそうか。実は俺は体力には自信が有ってな。プロハンターになってハンターライセンスの力で授業料を免除しようと思ってたんだ。お前さんみたいな小さい子供でも受かっちまうとはこりゃハンター試験も合格間違いなしかもなぁ!!」

 

あ~、勘違いするのも無理はないかもだけど隣のポンズの機嫌が急降下の兆しを見せ始めてる。ハンター試験に見合わない実力の自信家は毎年大量に居るけど、流石に目の前で高笑いで楽勝宣言されたらマジメにハンター目指してるポンズは腹が立つよね

 

確かにレオリオは原作ハンター試験の最初のマラソンで2番目に早く脱落しかけた訳だけど、勉学の傍らで体を鍛えて最終試験の格闘家のボドロより能力は上とネテロ会長にも評価されてた(直接戦闘は経験でボドロが上)訳だし、周囲と隔絶した力を持っていたと考えたらハンター試験も楽勝だと勘違いしちゃうのも無理はないかも

 

仕方ない。これは一度ワカラセて上げないとね

 

「レオリオさん。実はこの二人も来年のハンター試験を受ける予定で、その上私達三人の中で一番非力なのはレツなんです。それとこっちのポンズは今度が三回目の受験になるんですけど、それでも楽勝だと思います?馬車も持ち上げられないレオリオさん」

 

何一つ嘘は言ってないよ。馬車も簡単に持ち上げられないようじゃ失格確実なんて事も無いけど

 

案の定彼は抱いていた自信に罅が入ったのか少し後ずさりしている

 

「嘘だろ・・・プロハンターってのはそんなバケモノ共から更に選りすぐられた本物の怪物の集まりって事かよ。ッチ、試験が始まるまではマジメに鍛えた方が良いか?」

 

お!ティンと来た。クラピーに重しをプレゼント・ふぉ~ゆ~した後に原作勢からそんなセリフを言われたら期待に応えるしかなくなるじゃない

 

「そういう事ならゴミ処理・・・じゃなくてレオリオさんにコレをプレゼントです」

 

クラピカの時と同様にバッグの底から使わなくなったレツとポンズの重り第二弾を取り出す。これは両手足とベルトがそれぞれ20kgだから二人分で200kgだね・・・改めて思うと私って少し前まで680kgを装備してたのか

 

「今ゴミ処理って言わなかったか?」

 

「ちょっとビアー!態々私達のライバルに重し()を送るような真似しなくても良いじゃないの」

 

レオリオの疑問(そらみみ)もそこそこにポンズが突っかかってきた

 

「レツとポンズも今の重り(一人分200kg)にも大分慣れてきたでしょ?新しい重しを発注しようかって思ってたんだけど、それだと流石にバッグの容量圧迫しちゃうのよね。かと言って捨てるのも勿体無いし再利用(リユース)ってやつだよ。3Rは大事なんだよ?・・・それに二人はそれ以外にも念能力(アドバンテージ)を持ってるんだから良いじゃない」

 

暗に念まで習ってて自信が無いの?と告げるとポンズも渋々引き下がってくれた。人生、広い心を持たないとね

 

「って!おいおい何だこの重り!?クソ重てぇぞっ!!」

 

「いや待ってよビアー!新しい重りって今身に着けてるのでもまだまだ十分重いんだけど!?」

 

「安心して。発注して届くとしても一ヵ月は掛かるから、その頃にはギリギリ私のと同じ重りを装備出来ると思うからさ」

 

「訊けって!つかこれより重い重しを付けた上でレツは馬車を一人で持ち上げてたのかよ!?」

 

「あ、そんな訳なんでその重りは差し上げますね。それを全部付けた上で普通に動けるようになれば試験の合格率7割は固いはずですよ」

 

「まだ貰うとは一言も言ってねぇぞ!しかもそれでも合格率7割なのかよ!?」

 

まぁ試験官運が悪かったらとか単純な身体能力以外が試される試験だったらとか考えたらそんなもんでしょう。メンチとかメンチとかメンチとか・・・

 

「まぁまぁそれよりお()探しってのも面白そうだし、折角だからスズラン探しもご一緒しても良いですか?沢山の目が在った方が都合が良いでしょ?」

 

国宝館の時もそうだったけど私達の旅路は基本寄り道上等だ。目的地が有る訳じゃなくてあっちこっちにフラフラする事自体が目的みたいなところが有るからね。原作キャラなんてエサが目の前に在れば蜜に吸い寄せられるハチのように付いて行くぜ☆

 

「ぬっ・・・そりゃあプロのハンターも含めて人手が多けりゃ俺だけより格段に見つかり易いだろうけど、その場合情報提供者は俺なんだ。金儲けの為でも有るし、儲かったならその金額の三分の二・・・いや!四分の三は俺が貰うぜ」

 

「構いませんよ。お金じゃなくて道楽目的ですし―――レツとポンズもそれで良い?」

 

「うん。人形劇は焦る理由も無いしね」

 

「私も未登録の小動物を探すなら森の中の方が都合が良いから付いて行くわよ。・・・ただ今回は勝手に話を進め過ぎね。後で私達になんか奢りなさい」

 

うっ、確かにレオリオとの会話を優先して完全に二人には事後承諾の形で話を振っちゃったわね。気付かない内にテンション上がっちゃって理性のネジが緩んでいたか。反省反省

 

それでも一緒に朱いスズランを探す事は誰も異論は無かったので明日から本格的に活動を開始する事になった

 

私達もこの町に着いたばかりで食料その他の買い足しとか色々準備も有ったし、レオリオも似たようなものだったからだ―――この町には食堂兼任の小さな宿屋が一件しか無かったので自然と同じ場所に泊まる事になって翌朝に再集結となった

 

森の中ではアリスタとルルもバッグから出して朱いスズラン探しに協力して貰う。クラピカの時はルルをいきなり顕現させる訳にはいかなかったけど、今回はバッグから出した形なので非念能力者のレオリオに見られても大丈夫。この世界はハンター達が次々と新発見をしてるところからも分かるように、ルルもその場で出したり消したりをしなければ普通の珍獣(?)だ

 

ルルは兎も角アリスタにはレオリオも最初はビビってたけど、私達がアリスタをぬいぐるみのように抱っこしたりスリスリしたりと云った様子を見せ付ければ納得してくれたみたい

 

初日は町の周辺を探索して二日目、三日目、四日目は野宿も伴ってどんどん森の奥へと突き進んでいく

 

因みにレオリオは私が渡した重しも取り敢えず100kg分だけ装備したみたい。きっと自分より小さい女の子に力で負けてるのが気になったんだと思う。猫背で息を荒げながらも必死に付いて来てたけど、ちゃんと花探し出来てたのかな?

 

そうして途中幾つか普通の白いスズランは見つけこそしたけど、お目当ての朱いスズランは見つからないままとある崖の近くに出る。するとそこには洞窟の入り口とその周辺に朽ちた家の残骸にも満たない痕跡らしきものを発見したのだ

 

「これは・・・昔誰かが此処に住んでたみたいだね。風化してるけど石の槍っぽいものの先端とか有るし、人間か手を持った知恵有る魔獣かは居たんでしょう」

 

その場に落ちていたモノでギリギリ元の形が判別出来るモノを見てそう判断する。それでも残ってるのが石槍って比較的近代にもかかわらず原始人的な生活をしてたのかな?まぁこんな辺境に住んでたなら可笑しくないか

 

「見て皆!あっちにも似たような痕跡が有るよ。少なくとも十人以上は住んでたんじゃないかな」

 

「だが今は誰も居ねぇみたいだな。何処かに移り住んだのか冬の寒さや猛獣、はたまた病気なんかで全滅したのか・・・どっちにしろ文明のレベルは高くなかったみてぇだから宝石の詰まった宝箱とかは期待出来そうに無ぇな。次行こうぜ、次」

 

金目の物は無さそうと思った時点で興味を失ったのかレオリオがその場を去ろうとするけど、流石にそれは遊びが無さ過ぎだよレオリオ氏!

 

「いやいや、これ見よがしに洞窟有るじゃん!確かにあそこにスズランは無いかもだけどせめて中くらい見させてよ。効率厨になると心まで老けるよレオリオさん」

 

「それは暗に俺が体の方は手遅れで老けてるって言いてぇのか!これでも俺ぁまだ十代だぞ!」

 

「「「嘘だっ!!」」」

 

おっと、思わず二人と一緒にツッコんでしまったけど、レオリオは二十代後半の顔をしている―――なんだったらギリ三十代と言われても納得出来るぞ

 

「嘘じゃねぇよ!それと三人揃って否定されるとかかなりメンタルにクるから止めろ!!」

 

レオリオが煤けた態度で「なんだよ。どいつもこいつもよぉ・・・」と愚痴ってるけど、年齢より上に見られるのは彼にも問題が有ると思う

 

「やっぱりそのスーツがダメなんじゃない?もっと若者風のカジュアルな恰好してればマイナス5歳程度には見えると思うけど?」

 

それでも二十代の枠組みからは外れないけどな!

 

「そうだね。スーツってそれだけで大人のイメージまで一緒に着ちゃうからね」

 

「探索の恰好じゃないわね。せめてネクタイくらいは外しなさいよ」

 

「好き勝手言いやがって―――こういう恰好の方が交渉事をする時なんかは舐められ難くなるんだよ。ああ、そうだよ!俺は自分が老け顔なのは自覚してるしそれを逆手に取ってもいるが、他人に指摘されるのはムカつくんだよ!」

 

あ~、分からなくはないかな?取り敢えず三人で軽く謝ってから話題を洞窟に戻す

 

確かに分かり易い金貨とかは無いかも知れないが、洞窟の中なら保存状態の良い土器とかが残ってるかも知れないし、壁画でも描かれていればこの場所にも十分価値はあると云える

 

そう説得して少しの間だけならとレオリオの同意ももぎ取っていざ洞窟の中へ

 

そうして『円』で感知した洞窟の奥のさらに奥の空間に繋がる穴を塞いでいた岩を除けて中に入ると、突如として強大な気配と巨体な体躯のドラゴンが私達の前に姿を現したのだ

 

ドラゴンが吠えてテンションが上がって奇声を発しちゃったけど、後ろで皆の気配が全力で洞窟の外に向かっているのを感じて正気に戻り、改めて私に敵意ビンビンのドラゴンの内に秘めたパワーを観察する―――そして結論として浮かんできた感想は一つ

 

 

 

 

―――あ、コレ死ぬかも

 

 

斯くして私がこの世界に転生して初めての、生死を懸けた闘いが始まろうとしていた

 




原作前にヤベェの引き当てちまった主人公ですww
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