昔は人里から離れた山中に存在した龍皮病の村も時代の経過に伴い、人類全体の生活圏が広がる事でハンター(準ハンター)の足でとは云え今在る町から然程遠くない場所に存在していた
その村の痕跡が僅かに残るだけの跡地に在る洞窟から長身スーツの男が両腕を己の体格より一回り小さい少女と更に一回り小さい少女にガッチリ掴まえられて出てきたところだ
仮にも美少女二人による両手の花状態だと聴けば世の中の男性陣の何割かは嫉妬の炎を燃やすかも知れないが、後ろ向きに引きずられるように出てきた上で両側の少女達も必死に足を動かして転がり落ちるかのような勢いでダッシュしてる様を見れば考えを改める事だろう
体勢的に男の靴の
「ああもう、重たい!レツ、重し捨ててくわよ!」
「うん!」
レツとポンズは有事の際にワンタッチでパージ出来る仕様のバンドとベルトをレオリオの分も含めて数秒で外して総計500kg身軽になる
だが久々に外で感じる解放感も洞窟の奥から放たれる
「おいおい!逃げるのには賛成だがその前にアイツを助けに―――」
「ダメよ!私達が一緒だと助けどころか逃げるのでさえも足手纏いにしかならないわよ!レオリオ。貴方が一番弱い(『纏』が使えない)から感覚が一周廻って麻痺しちゃってるのよ。ガクガク震えてる自分の足を見なさい。多分貴方自分で立つ事も出来ないわよ」
「なっ・・・そん・・・っくぁ・・・」
両腕を掴まれたままのレオリオがビアーの心配をするが、この場で唯一の非念能力者であるレオリオはポンズに指摘されたように足に力が入らず、云う事を聞かない自分の体に焦りと自身の情けなさに怒りを覚える
顕れたドラゴンはあの場で一番の強者であったビアーに最初に敵意を一番に向けていたので他の三人はその余波しか受けていなかったのだ
もしもドラゴンがあの場の全員に
「兎に角、なにをするにしても先ずは距離を―――っ!」
全てを言い終わる前にレツとポンズはレオリオを抱えて再び全力の跳躍でその場を離脱すると同時に洞窟の入り口が爆散して中からビアーが吹き飛ばされてきた
洞窟に開いた大穴から主たるドラゴンが這い出て初めて世界の光を全身に浴びるが、その眼光は未だに目の前のビアーだけに注がれていた
「痛った~。流石に狭い洞窟内じゃ逃げ場が無さ過ぎたわね・・・まっ、三人とも逃げる態勢は整えられたみたいだから良しとしますか」
チラリと視線だけを吹き飛ばされて空中に居る時に見えた三人の逃げた方向に向けると彼女はゆっくりと呼吸を整える
「う~ん。この敵意に加えて翼まで持ってるならどう足掻いても逃げる選択肢は無さそうね・・・仮に逃げたら逃げた先が全部焦土になっちゃう。ストーカータイプのバーサーカーかな?『一人一人、地の果てまで追って確実に殺す!』的な感じ?」
洞窟を突き破ったとは云え、ドラゴンもまた狭い空間では力が乗りきらなかったのかビアーへのダメージは然程では無い。岩盤を自らが砲弾代わりとなって突き抜けたのにかすり傷で済んでいる時点でビアーの『堅』の耐久力も人外の域に達しつつあるが、彼女が全力のオーラを纏った上で傷ついたのは初めての出来事だ
今まで強者との闘いがまるで無かった訳ではなない。念を覚えて1年のカストロも十分強いと云える部類ではあるし、元幻影旅団のオモカゲはそれ以上の力を持ってはいた。しかしカストロの場合は如何に本人の資質が優れていようとやはり1年という修行期間は短く、オモカゲも彼が操る他の幻影旅団の人形の能力が原作知識で割れていた事でビアーの本気を引き出すに足る相手とは云えなかったのだ。だが、今目の前に居る
「―――あはっ♪」
ビアー=ホイヘンスはこの世界に転生して念能力を磨いた。理由は楽しむ為で、愉しむ為だ。エンジョイ勢としてこの世界を満喫する。だがその為に磨いた力に見合う相手は居なかった
ただ積み重ねた力を振るいたいだけならヒソカのようになったり幻影旅団に加入する手も有っただろう。しかし元々一般人である彼女の理性が『それは愉しめない』と待ったを掛ける。別段『闘争こそが我が全て』といった意味でエンジョイしようと思って無かった彼女はすんなりソレを受け入れた―――暗黒大陸からの来訪者や、逆に暗黒大陸へ渡航すると云う未来の可能性も識っていたのもその一助ではある
レツ達と一緒に旅をするだけでも満足ではあるし、きっとそれはこの先も変わらない。しかし偶には違う刺激が欲しくもなる。普段お酒を飲まない人が宴会ではガブ飲みするように。長期休暇に何処かの温泉やレジャー施設に顔を出すように。その機会を逃さずに、全力で
彼女の性根は基本的には善性だ
だが幼い頃からたった独りで何度も倒れ伏しながらも己を鍛え上げるという行為を当然のモノとしてと行えた彼女は、ひょっとしたら前世に頭のネジを一本くらい置き忘れてきたのかも知れない
▽
ビアーとドラゴンが洞窟を突き破って相対している中でレツとポンズとレオリオは高速で森を突っ切り数百メートル離れた場所にある高台の陰に身を潜ませていた
レツとポンズは当然『絶』で気配を絶ち、レオリオも少しでも足を引っ張る事の無いように二人の『絶』を観て数十秒程掛かったが如何にか『絶』を成功させる
当然オーラの事など知らないので殆ど内に眠る野生の本能によるゴリ押しで成功させたのだ。これがポンズのように元々ハンターとして気配を殺す仕事をしていたならまだしも、医者志望の彼がこの場で完璧に精孔を閉じて『絶』を行えたのは流石と云うべきだろう
数百メートルという距離ではあのドラゴンに対して心許ないが、だからと言ってビアーを完全に放置して逃げる選択肢も取る事は出来ない。簡単にでもビアーとやり取りをして今後の行動を大まかにでも決めたいところだ。しかし田舎の更に山奥では電話が使えない上に仮に使えてもあのドラゴン相手に片手を封じさせるのは余りにもリスキーだ
闘いが始まったのか洞窟が在った場所から連続で粉塵が舞う様子が窺え、それを見たポンズは下唇を噛む
(あれじゃドラゴンの後ろから回り込んでハンドサインも無理ね。『絶』の状態でそれが出来るまで近づいたら流れ弾一つで死んじゃいかねない―――ああ、もう!不測の事態と言ってもこれがはぐれて遭難とか誰かが攫われたとかなら分かるけどドラゴンって何よ!?あんな制御不能の念獣を生み出したのは一体何処のバカな訳!!)
※ バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+バカ+・・・・・・・=ドラゴン
険しい瞳でせめて戦場の様子を把握しようとしたところでレツとポンズはビアーの広大な『円』が広がり自分たちを包み込むのを感じた
(なに考えてるのよあのバカ!『円』に割くオーラを『堅』に回しなさい『堅』に!)
ビアーの意思がハッキリ乗ってることで『円』を一瞬で感知したが、そのビアーのこちらに向ける意識が途切れ途切れとなっている
「(チラチラと余所見し過ぎでしょ!そんなに私達が逃げずに隠れたのが不満だったの!?)」
「(・・・ううん。ポンズこれ、(ビアーのこっちに向ける意識に)長いのと短いのが有る。間違いない、トン・ツーだよ)」
『円』は隠密性の高い応用技であるが逆に態と相手に『円』を気付かせる事も出来る。それを用いてビアーは長音と短音の組み合わせである原始的通信手段のモールス信号を再現したのだ
加えて何時もは全力で精度を上げた『円』を張っているが、今はレツとポンズだけを感知出来れば良かったので戦闘も一時的に防戦一方で逃げ回れるだけの余力は残していた
ビアー程とは言わなくとも広大な『円』の使い手でなければ殆ど使い道が無い技だ。100の力で1の効果を得るようなオーラ量のゴリ押しでの交信手段に内心呆れ果てながらも解読に移る
レオリオも自分には判らないが二人が何かしらのサインをビアーから受け取っていると『トン・ツー』などの単語から察して口を閉じる。目は戦場を向いてビアーがライトか何かでチカチカやってるのかと思って必死に目を凝らしているが残念ながら何も捉える事は出来なかった
(全っ然判らねぇ・・・)
彼を責めてはいけない
史実通りなら彼がこの戦場を十全に体感するには最低でも一年の月日が必要だったのだから
「(信号は≪倒す≫、≪逃走不可≫、≪逃げろ≫の三つ。逃げられないから自分はドラゴンと戦うけど、私達は逃げろって事みたいね)」
ビアーからの信号を解読したポンズがその場で片手を上げて振る事でビアーにメッセージを受け取った事を示すと彼女の『円』が解かれていく
ここから先はわき目も振らずに戦うつもりなのだろう
「(・・・さて、そういう事みたいだけどあなた達は如何したい?)」
ポンズが二人に問う。彼女は別に適当に手を振っただけでビアーに対してOKサインを返した訳ではない。勘違いした向こうが悪いのだ
「(決まってるよ。ビアーを助ける。仮にビアーが直ぐに敗けちゃうようなら逃げ切る前に追いつかれるし、戦いが長引くようなら私達が騒がなくても危険生物が居る事は直ぐに広まる事だと思う。それにビアーを見捨てて逃げた上で死なせちゃったら絶対に後悔する・・・それにそもそもの話、ビアーは勝つよ。だからボクは少しでも怪我が少なくなるように援護する。それだけだよ)」
「(ふふっ、それだけじゃないでしょう?ここからでもビアーが楽しんでるのが伝わってくるものね。大好きなお義姉ちゃんを盗られて嫉妬してるんじゃないの?今の貴女、心配してると云うよりはイライラって感じのしかめっ面してるわよ)」
「(・・・別にそんな顔してないよ。それよりレオリオさんは如何するの?出会ったばかりだし、ここで逃げても幻滅はしないよ?一早く近場の町に警告をするのも大事なんだし)」
「(おいおい、この漢気レオリオ様を
命を諦めきれないから、怪我や病気を見過ごせないから医者の卵なのだ。年下の女の子が不安を押し殺して勝利を信じ、援護すると云うなら自分のやるべき事は戦いの後に備える事だとレオリオは確信する・・・確信する事で今の自分では戦闘ではどう足掻いても手助け出来ないその事実に煮えくり返る心に蓋をしながら
「(それで、助けると言っても何か案は有るの?見ての通り生半可な策じゃ逆にビアーの足を引っ張るだけよ)」
「(大丈夫。あの子を見てて気づいた事が有るから隙を作るだけなら十分だと思う・・・ボクの
こうしてビアーのあずかり知らない所でレツの念使いとしての初のお披露目が決定した
▽
レツ達に『円』で連絡を取った後、ビアーとドラゴンは二人が闘い始めた洞窟からは既に離れた場所で激突していた
周囲に被害が
一時的に『円』にオーラを割き、戦場を選択しながらもまだビアーが大した怪我を負ってないのは目の前のドラゴンの戦闘経験が皆無でただ暴れるだけだったからだ。その為、戦場の誘導自体は難しくは無かった
「それは良いけど硬過ぎね。なんでクレーター作れるパンチでほぼノーダメなのよ」
完全に攻撃が通ってない訳ではないが今のペースだと目の前の竜を斃し切るのに一万発近くは急所にぶち込まないとダメだと理解する
拳の一撃が小型ミサイルに匹敵する幻影旅団の
それなりの大きさの山なら十分更地に出来る。ドラゴンの耐久力は山並みで攻撃力は小規模噴火が連続で襲ってくるレベル・・・どう考えても拳一つで立ち向かう相手ではない
しかし一般人と違い念能力者ならば
「それにこの子。どんどん疾くなってきてるんだよね~」
闘い始めた当初はドラゴンも大振りな攻撃や最大まで溜めた直線のブレスなどの分かり易い攻撃が多かったが闘争本能で塗り固められたドラゴンは攻撃をコンパクトにしたりブレスを横なぎに放ったりと戦い方を学習し始めてきたのだ
その上、レツ達への連絡も終えたビアーはこれからドラゴンを斃す為に積極的に攻勢に出なければならないが、相手の懐に入って全力の攻撃を繰り出す行為はそれそのものが大きなリスクとなる
(だからと言って全力以下の攻撃力じゃそれこそ無駄撃ちになっちゃう。リスクを恐れず前に出る事が最高の安全策に繋がる)
ビアーが全力でオーラを練り上げて
ビアーの踏み込みと同時に地面が爆散し、後方に粉塵を巻き上げる
オーラを全身に纏っている状態でも直接的に敵意や害意を向けなければ物理的な破壊力は伴わない。そうでなければ一定レベル以上の念能力者はただ『練』を維持するだけでさながら蟻地獄に飲まれるエサ達のように世界の中心に向かって重力の導きのまま落下していく事になってしまう
即ち彼女の足元が爆発するように弾けたのは単純な身体能力によるものだ。『絶』状態の彼女の単純な膂力は現段階では精々ゾルディック家の試しの門を4の門(片腕16t)まで開けられる程度しかない。しかし一点豪華主義の強化系能力で引き上げられたビアーの身体能力は通常時のソレを遥かに凌駕する
念能力を覚えたての人間でも身体能力を数倍に引き上げる事が可能とされる世界でオーラと強化系に全振りし、十年の時間を費やしたその倍率は見当も付かない
亜音速で飛び出したビアーだが
その攻撃自体はビアーもこれまでの戦闘で幾度か見たものだが、戦いの中で成長するドラゴンは今回も変化を付けてきた
(疾い!ノータイムの速射砲!)
今までは喉元に最高威力となるまでブレスを溜め込んでいたので威力は有っても予備動作が判別し易く避ける事も出来たが、今回は少量でもダメージを与える事を優先した攻撃だった
(それでも性質は炎。この威力なら衝撃波で受け流せる!)
踏み込みで地面から離れていたビアーは方向転換が出来なかった事で迎撃を選択。人間の小さな体で突風を引き起こす為に遠心力をたっぷりと乗せた振りの大きい動作で前方を薙ぎ払う
眼前に迫っていた炎の塊がビアーから逸れながら空中に溶けていくが、腕を薙ぎ払ってがら空きとなった彼女の胴体にドラゴンの頭突きが突き刺さった
「かっはっっっ!?」
(私の跳躍に対して炎を
ドラゴンの体長は約30メートル。凡そ同じ大きさとされる恐竜のスーパーサウルスの体重が推定で30トンから40トン。素早く動く筋肉が詰まっている事を考慮すればドラゴンの方は50トンは有るだろう。肉体の強化率では劣るもののそれだけの質量がビアー以上のオーラ量で強化されてぶつかれば、空中で踏ん張りの効かない人間一人がどれだけ遠くへ飛ばされるか
今は地面と平行だったが角度次第ではギャグマンガの如く星となっていたかも知れない
「―――ケホッ!森のクッションが無かったらサッカーボールの気分が味わえたかもね」
吹き飛ばされた事で背後の森に突っ込み、数十本の木々をなぎ倒した事で漸く停止した
「じゃあ今度はこっちの番よねっ!」
すかさずビアーが大地を蹴り、今度は方向転換も出来るように超低空の跳躍染みた走りでドラゴンに迫る。更にその速度は先程までより確実に素早くなっていた―――ドラゴンが体の動かし方を最適化するなら、彼女もまたそうするまで
すぐさま復帰したビアーにドラゴンが再度速射のブレスを見舞うがそれを即座に地面を蹴って躱し、続く連続ブレスも小回りの利いた動きで避けつつ彼我の距離を詰めていく
ビアーも本気の実戦は初めてなので戦いの中で体術における己の課題が見えて来ていた。もっとも彼女はパンチやキックなどの基本的な武術における体捌きは天空闘技場で凡その理は掴んでいた。カストロを体術で翻弄したのが良い証拠だ。では『全力』の実戦において何が彼女の体捌きに陰りを
(うん。走る時にそこに『周』をすれば地面が爆散しない。今までは砂地どころかフローリングを靴下で走ってた感覚で全然踏ん張りが利かなかったからね。これで格段に動きやすくなった!)
いきなり格段に機動力の上昇したビアーの動きに初見で対応し切れなかったドラゴンの眼前まで辿り着いた彼女は最後の噛み付きを一気に体勢を低くし、スライディングの要領で己を喰い千切らんとした顎の真下に滑り込み回避すると短く呼気を吐き出し、折りたたまれた膝のバネの力を真上に解放して捻じり込むような昇拳を放つ
「
顎と拳がぶつかった瞬間、少女の拳から発せられたとは思えない重低音が響いて拡散した衝撃波が遠くの木々を揺らし、ドラゴンの頭が狼の遠吠えの時のように仰け反る
安定した足場から放たれた一撃は初めてドラゴンに"痛み"を覚えさせる程度の威力は有った。だが渾身の一撃を放つことが出来た当の本人は苦々しい表情を隠さない
(重っ!硬っ!今のでも首しか動かせなかった。ひっくり返った亀みたいにしてやるつもりだったのに、やっぱり単純にオーラが足りてない。それにコイツ相手だと柔らかい山をサンドバッグにするのと違って拳への負担が大きいから斃し切る前に私の手足がミンチになっちゃう!)
人間の拳はより硬い物を連続で殴るのに向いているとは言えない。かと言って手頃で頑丈な武器も無い上に踏み込みの一瞬だけ『周』をすれば良い移動と違って常に武器にオーラを纏わせるのは消耗を加速させる・・・普通ならば莫大なオーラ量のゴリ押しで問題にもならないのだが、基礎スペックで上を行かれてるこのドラゴン相手には致命傷だ
強烈なアッパーを喰らい若干前足が宙に浮かびかけたドラゴンだが、大きく強靭な鉤爪で地面に踏ん張りそのまま首をビアーに向かって鞭のように叩きつけた
顎下という急所を相手に差し出す行為だが自身のダメージよりも
”―――ドムンッ・・・・・・ッ!!”
ビアーがドラゴンの顎と大地の間に挟むようにして叩きつけられた衝撃が一拍遅れた形で周囲に響き渡り、土煙を巻き上げる
当然そこで攻撃が終わる事は無く、叩き付けと同時に口元にチャージしていたブレスをビアーがまだ土煙の奥に居るのを凶悪な眼光で確認しながら至近距離で撃ち放った
多少ドラゴン自身の顔面も立ち昇る火柱に包まれたが火への耐性の強い(とイメージされている)ドラゴンはノーダメージだ
ブレスによって焦がされた大地は炎が晴れると一部がガラス化した大穴以外に何も無かった。ドラゴンの動体視力をもってすればビアーが煙に紛れて逃げたとしても、それを感知出来たはずだ
生まれて初めての闘いらしい闘いに勝利したと思ったドラゴンは勝利の咆哮を上げようと天を仰ぐが、その大きな顎から歓喜の声が零れる前にかの竜の尻尾の先端が何者かに掴まれた
「最悪だよ。土が口に入ったし、もう頭の天辺から爪先まで土塗れじゃん。サッカーボールじゃなくてミミズの気分を味わったよ・・・まぁ土に埋まって陰獣のミミズが頭を過ったから脱出出来たんだけどさ」
ドラゴンが己の尻尾に目を向けると、人間一人が這い出てこれる分の穴の隣で尻尾の先を掴んでいるビアーが目に入った
ドラゴンの叩き付けで地面に埋まった彼女はブレスの気配を感じて咄嗟に地面の奥深くに土中潜行したのだ。原作のゴンとキルアはまだまだ念初心者の頃にスコップに『周』をするだけで硬い岩盤もプリンのように掘っていた(あれは彼らの腕力も多分に関係しているだろうが)
ドラゴンのブレスが放たれる直前にビアーは倒れたまま足元の土を『周』で固め、あたかもプールの端で壁を蹴るかのようにして土の中を
泳ぐと云うよりは蹴りなので某海賊漫画のコックの『
これまた何処ぞの世界の鬼の背中を持つ
「さて、亀と竜の違いは有るけどボスの尻尾を掴んだなら振り回して投げ飛ばすまでが、菌糸類王国の配管工のお約束よね!」
推定50トン?下手したら60トン?そんなもの念を使えないただの人間でも(才能の暴力のマッチョなら理論上)振り回せる程度の重さでしかない
「人は何故酔うと分かっていても遊園地のコーヒーカップを全力で回したがるのか?―――己の限界を超えてる間はハイに成れると魂が知っているからだぁあああああ!!(意味不」
ビアーが強化された
(あれ?でもこの後如何したら良いの?)
ぶん回しハイなんてものは当然長く続くはずも無くすぐに正気に戻るビアーだが、ドラゴンを大地に叩きつけてもダメージはゼロな上、下手に遠くに飛ばす訳にもいかない。次の行動を決め兼ねた事で生まれた僅かな猶予期間にドラゴンは背中の翼を広げて初めて大きく羽ばたき、遠心力を振り切ってビアーごと地上から浮き上がる
「あわわわわわっ!ちょっ、飛ぶのは無しだって!ク〇パにも羽は生えてないんだから!!」
当然知ったこっちゃないドラゴンはビアーに向けてブレスを放ちビアーも衝撃波で炎を散らす為に尻尾を手放す。しかし自由落下中の彼女へ一度放した尻尾がうねりを上げて迫り、再度彼女に痛撃を与えて地面に叩きつけた
「痛っ。ドラゴンの鱗での鞭打とか実質
ビアーの腕と額から血が流れる。顔面に迫った攻撃を腕でガードしたが相手のパワーに押されて腕が半ば弾かれてしまったのだ
「って、ヤバッ!?」
愚痴を零してる間にチャージを完了したドラゴンのブレスが放たれるが、その攻撃は明後日の方向に着弾した
「? なんで外して・・・ああ、目を廻してたのね」
生まれて初めての円運動で三半規管を激しく揺さぶられたドラゴンは初飛行と相まって狙いを定められなかったのだ。地面に着地して両者とも息を整える
(やっぱりこのままじゃダメだ。取り敢えず本気を出した時の"柔らかい世界"にはある程度適応出来たけど、私の全力の攻撃に相手がほぼノータイムで反撃してくるようだと技後硬直を突かれちゃう・・・なら、答えは一つ。今よりもっと精孔を全開にして体内のオーラを外へ押し出す!『堅』でも20時間は全力を維持できるんだから潜在オーラは短期決戦仕様とするには在り余り過ぎてるからね。死なない為には今ここで顕在オーラを高めるしかない。今までだって顕在オーラを高めようとはしてたけど、今なら最高の
Q:オーラが足りない場合の対処法
A:死ぬ気で捻り出せ
・・・と云う馬鹿みたいに単純な回答だ。オーラの攻防力を変化させる『流』ならば今のビアーのオーラ量でも十分なダメージ数値を叩き出せるだろうが、制約と誓約で縛られている以前に彼女の根幹に根付いている想いは"毎日ひたすら『纏』と『練』こそが強化系最強への道"である
ドラゴンはビアーのように長年修行を積んできた訳では無い。だが奇しくも自立した
(精孔をもっと広げる。毛穴までひっくり返るくらいの意気込みで限界を超えるんだ!・・・念能力強化に全振りしてて良かった。意気込み一つで下手したらハゲてたかも)
変化系が隣に在るので割とシャレにならない可能性である
「何より!『纏』と『練』を続けてきた私がオーラ量で劣っているってのが気に食わない!こうなったらとことん付き合って貰うよドラゴン君。その硬い鱗ごと殴り壊してやるからね!」
―――ビアーとドラゴンのオーラが更に高まり第二ラウンドが始まろうとしていた