毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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誰か語彙力と発想力と執筆力を私に下さい・・・やはり一度広辞苑を一から十まで読んでみるべきなのかなぁ?


特訓と勝負

ゴンに課題を出して三日目の昼近く。今は港でレツの連日内容の変わる劇を横目に見つつ海を眺めていた。何故ならそろそろ荷物が届く予定だからだ

 

「あ、来た!」

 

遠目に少し大きめの船がやって来るのが見えたので少し待ち、その船が停泊するのを見計らって近づくと船員さんに声を掛ける

 

「すみませ~ん!荷物を頼んだビアー=ホイヘンスです~!この場で荷物は受け取りますよ~!」

 

船員さん達は私を見るとホッとした様子と次いで困惑した様子でこっちを見た

 

私は船に乗り込んで荷物の在りかを訊ねると6つの台車に分けて載った木箱(×6)を見せてくれたので受け取り用紙にサインしてヒョイヒョイと箱を重ねて担ぐ・・・こっち見んな!

 

「じゃ、有難うございました~!」

 

「お・・・おう・・・」

 

船を飛び降りて衝撃を与えないように着地するとレツとポンズの居る場所に運んで行ってその場に荷物を下ろす

 

「お、なんだなんだぁ?買い物かいビアー嬢ちゃん」

 

「ああ。だがなんだって小さめの木箱が6つも有るんだ?普通これくらいなら一つか二つに纏めねぇか?」

 

この三日間で島の住民や他の民家や空き家に泊まってる漁民ともかなり仲良くなったので気さくに話しかけて来る

 

「いや~、この島に来る時に乗った連絡船には重量オーバーって言われちゃったんですよ」

 

箱を開けて中から取り出したリストバンドを一つ取り出して地面に置き、持ってみるよう周囲の人に促すと最初は片手で持とうとして持ち上がらず、次に両手持ちで思いっきり腰に踏ん張りを掛けて漸く持ち上げる事が出来ていた

 

「んっだコリャ!?クソ重てぇぞ!」

 

そう。田舎扱いのくじら島への小さな定期船なんて乗れるのは精々10数人程度が限界だ。そこに私達の付けていた重しだけでも800kgとなれば制限を超えるのも当然の事だったりする

 

そこで重しに関してはくじら島へ来る前の港で輸送の手続きをする事となった訳だ

 

私達がくじら島から出ていく際は事前に船の手配をしないといけないね

 

「は~い。レツとポンズも今回晴れて50kgのバンドと100kgのベルト(総重量300kg)にチェンジだよ。靴底(50kg×2)は次の機会にしましょうか」

 

箱の中に入っていたのが800kgかって?ノンノン!新しい重しも合わせて1400kgだ―――木箱は底が抜けないようにガッチガチに頑強なやつだし、よく見ると重機で吊ったような跡も確認できるから運ぶのも色々と苦労したんでしょうね

 

「はぁ・・・またコレを付けるのね・・・」

 

「う゛っ、ここ数日付けてなかったから凄く重く感じる・・・」

 

私達が超絶重いそれらを装着していくのを見てた人達はバンドを持ち上げようとした人達を中心に信じられないような目で見て来るので後三か月程で始まるハンター試験に向けての修行の一環だと説明する。私がプロハンターって情報は案の定既に拡散してたからね

 

「プロハンターって奴らがなんであんなに優遇されてるのかちょっと分かった気がするぜ」

 

「んだんだ!俺じゃこんな重いの踏ん張っても二つまでしか持てねぇよ」

 

「海の男が揃いも揃ってなに情けない事言ってんだい!この娘たちにも負けないようにもっと大物狙って来たらどうだい」

 

恰幅の良いおばちゃんの発破に漁師の皆は「勘弁してくれよ」と苦笑いだったりそそくさと休憩を切り上げて仕事に戻ったりしていく

 

「さて!二人の重しも新調した事だし私はゴンの様子を見に行くわね。今日で課題の三日目だし」

 

レツとポンズはここ数日の日課の探索と演劇だね。昨日はノウコちゃんも含めて軽いピクニック的なのも行ったけどさ

 

それでゴンは主の住んでる沼の近くかな?川にしろ沼にしろ、水場の近くには居るでしょう

 

そうして沼に向かって走っていくと木々の間からゴンの背中が見える位置にまで来れた

 

愛用の釣り竿を握りしめて独学の気殺で『絶』に至った彼は只管に"その瞬間"に備える

 

木の枝から下にある沼を覗き込んでいる野鳥が前のめりに翼を広げようとした瞬間、竿を握るゴンの指が僅かに反応した

 

次の瞬間。水面近くを飛んでいた小さな虫を食べようと水中から勢いを付けて飛び出した魚をそれを狙っていた野鳥が強襲し、更にその瞬間を狙っていたゴンの投げた釣り針が見事に野鳥の体を絡め捕った

 

「やっっったああああああああああ!!!」

 

ゴンの目標を達成した嬉しそうな声が周囲に響きつつ、ゴンは捕まえた野鳥の傍に駆けよって糸を解いてあげると空に放した

 

「ごめんね。食事の邪魔しちゃって」

 

慌てて飛び去って行く野鳥に手をブンブン振っている彼に気配を出して近づくと、彼も直ぐにこちらに気付いたようだ

 

「ビアー!俺、言われた課題を熟したよ!ひょっとして見てたっ?」

 

「ええ、バッチリとね。中々いい集中力だったけど、今度は私の気配(ただの『絶』)に気づかなかったのはハンターとしては減点かな。ゴンが何かを狩る時にゴンを狩る機会を窺ってる誰かが居るかも知れないんだから常に後方への警戒心は最低限持つこと。ハンターになったら密猟者とかが敵に回るなんてザラだからね・・・でも、それとは別に課題達成おめでとう」

 

ハンターとして必要な技能の一つを習得したのだ。他の課題が山積みでも一歩前進した事には変わりない

 

「うん、有難う!俺、もっと頑張るよ!」

 

いい返事だ。ゴンは素直な性格だから、ただ褒めて伸ばすよりも悪い所はちゃんと指摘して上げた方が良い。そっちの方が色々と成長が早いと思う

 

「それで早速だけど腕相撲はするの?」

 

「勿論!あっちに手頃な岩が在るから来てよ!」

 

待ってましたとばかりに頷いて走り出したゴンの後を追いつつ途中で拾った小石をゴンの後頭部に狙いを付けて指で弾いてあげる

 

「あだっツ!?―――何するのさビアー?」

 

「さっき言ったでしょ。常に最低限感覚は研ぎ澄ましておく事って。ハンターとしてなら今ので一回死んでたわよ?」

 

レツたちの攻撃は避けなかったりもするけどアレはじゃれ合いみたいなものだし、私だってポンズが時折繰り出す痴漢撃退用スプレー(ツッコミ)とか喰らいたくない攻撃はちゃんと避けてるんだから

 

「くっそぉおおお!次は避けてやるからなあああああ!」

 

辿り着いた場所に在ったギリギリ腕相撲は出来そうな岩でゴンが肘を着いて腕相撲の姿勢になるけど、差し出された彼の手の平はここ三日間釣り竿を振り続けていたからか幾つかマメが出来てたり潰れたりして血が滲んでいた

 

たった数日でこれだけボロボロになるとはどれだけ竿を振ったんだか

 

「・・・ゴン。やる前に両手をこっちに出しなさい」

 

言われたゴンが差し出してきたその手の平にポシェットから取り出した朱い液体の入ったスプレー型の小瓶の中身を吹きかけて上げる

 

これは例の朱いスズランを簡易加工した傷薬だ。以前摘んだ朱いスズランの内数本をポンズが加工したものとなる。それを吹き付けてこんな事も有ろうとかと持ってきていた包帯を軽く巻き付けて上げれば完成だ

 

それから彼の望み通り腕相撲で連勝記録を伸ばした私は取り敢えずノリでピースサインを天に向かって掲げておく―――ィえい♪

 

「くっそぉおおお!ビアー、もう一回!」

 

「は~い、ダメダメ。接戦だったとかならまだしも今のゴンと腕相撲続けても不毛だからね。代わりと言ったらなんだけど、少し戦ってみましょうか―――私達も旅の途中だからそう遠くない内にこの島からは居なくなるしね。ハンター試験には戦士タイプの人が多いって言ったでしょ?幾つかある試験の中で何処かで一つくらいはガチンコバトルの機会って在るものだから”こんな攻撃(モノ)”も在るんだって経験で識っておきなさい・・・それともやっぱり腕相撲が良い?」

 

バトルか腕相撲かの二択を迫るとゴンはかなり難しい顔して頭を捻り始めた・・・凄く葛藤してるわね。そんなに負け続けの腕相撲の挑戦権が魅力的か

 

「なら、こうしましょうか。普通に戦うのとは別にこのリボンを奪えたら腕相撲もまた20回して上げる」

 

そう言ってポケットからリボンを取り出すとポニーテールになるように結ぶ。元々私の髪は肩口より少しだけ長い程度なので短めのポニーの完成だ。人形製作者でもあるレツと一緒に旅してるとリボンでちょっとオシャレする機会はそこそこに在ったりするのよね。レツもポンズも髪は結構長めだから弄りがいも有るし

 

「分かった!よ~しっ、今度は敗けないからね!」

 

軽いストレッチで体を素早く解したゴンが早速とばかりに正面ダッシュで距離を詰めて殴りかかって来たのを横に避けると私の直ぐ後ろに生えてた木に体を反転して壁に立つように着地し、そのまま今度は遠心力タップリの蹴りを放って来た

 

格闘技の類はちゃんと習った事も無いだろうに力のロスは存外少ない。体の動かし方には一家言有る訳ね。獣染みた動きで全身のバネをよく使っている

 

「でも、大振り過ぎるね」

 

ゴンの横薙ぎの蹴りに下側から右の手の甲を合わせ、円の動きでゴンの体を空中で"グルン"と回すと彼が体勢を立て直す前に円の中心・・・お腹に向かって左の掌底を叩き込む

 

「ぶふっ!?」

 

回転したまま後ろの木に背中を打ち付けたゴンは目を白黒させてるわね。知識としてなら知ってたかもだけど、実際に力を受け流されるのは初めての体験でしょう

 

「ただ威力の高い攻撃を放っても今みたいに小技で簡単にいなされるわよ。奇襲とかならまだしも正面戦闘の場合は小技やフェイントで相手の体勢を崩したり、虚を突いたりしないとね。特にジャンプ中は無防備になり易いから」

 

私?そんな面倒な戦術の組み立てをあまり考えなくても良いように相手の反応出来ないスピードとパワーで小技(ジャブ)を一発でそのままノックダウン・・・そんな領域目指してます

 

「まだまだっ!!」

 

再び迫って来たゴンは今度は初手大振りは止めて細かい攻撃で攻め立ててきた

 

何十発も打ち込んできた攻撃の中で顔面に飛んできたパンチを身を低くして躱しながら右こぶしを腰だめに構えるとゴンも残った方の腕で胴体にガードを作る

 

「―――ッガぁ!?」

 

ガードに回したゴンの腕を左手で素早く掴まえると同時に放った曲線を描いた右フックがゴンの側頭部にヒットしてたたらを踏ませ、ローキックで吹き飛ばすと三回くらい地面を転がってから漸く止まった

 

「今のがフェイントだね。『自分がこう動いたら相手がこう動く』って予測を立てて出来た隙に攻撃を加えるの・・・さて、まだやる?」

 

「勿論っ!」

 

結局その後はゴンが倒れるまで・・・と云うか倒れても少しするとまた起き上がって立ち向かってきて夕方辺りとなり『今日はそろそろ終わりかな』と心の中で呟いたところで重大な事に気付いてしまった

 

「―――あっ」

 

「っ隙あり!!」

 

構えが解けかけた私にゴンが裏拳を放って来た・・・いや、裏拳にしては距離が近いわね

 

「おっと!」

 

咄嗟にバック転の要領でリボンを狙った攻撃を避けつつゴンの顎先を少し捻りを加えつつ蹴ってやると脳を揺らされたゴンは地面に倒れた

 

「ゴン。意識は有っても体は動かないでしょ?今日は此処まで。何故なら手加減した上でもかなりボコボコになったゴンの顔面をミトさんに何て言い訳するのか考えなきゃいけないから!」

 

ゴンの体を起こして近くの木に背を預けさせながらそう告げる。最初は何とかまだ闘えると意思表示しようと口を開き掛けてたゴンの顔が私の言葉で蒼く染まった

 

島に来たばかりの女の子にいきなりボロボロになるまで格闘技の稽古を付けて貰いましたとか逆に稽古を付けて上げたとか結構不自然だ―――『俺、ビアーを見てプロハンターに成りたくなったんだ!』とか顔面が腫れたゴンが告げるとか私がミトさんに恨まれコース直行じゃない!

 

そりゃゴンは元々あと数か月もすればプロハンターに成りたいと告げるつもりだったんでしょうけど、ここでミトさんに下手にバレたら『うちの子に近づかないで!』的な対応をされかねない。最終的には説得できるかもだけど、私達だって旅をしてる身だ。そこに時間を費やしたくはない

 

ぶっちゃけて言えば島を出る船の手配はもう済ませてあるからね。こう言ってはアレだけどくじら島に長く滞在する理由が無いから

 

二人揃って頭を捻っているとゴンの手に巻かれた包帯が解れているのが目に入った

 

包帯の下はかなり荒れが引いているから明日には完治しそうだ。ゴンの手足や顔面みたいな目立つ場所だけでも例の傷薬で治す?どう考えても間に合わない

 

薬の効能を『周』で引き上げる?他人の体に吹きかける液体じゃ意味がないでしょう

 

「そっか!液体じゃ無ければ良いんだ」

 

持ってきていた残りの包帯に朱いスズランの薬を染み込ませるように吹きかけた私はゴンの顔面や手足の腫れている部分に巻き付けてミイラ状態にしていく

 

「もがっ!もがが~!!?」

 

「五月蠅い!」

 

”ズビシッ!”

 

なんか叫んでたゴンの首にチョップをかまして気絶させると薬の染み込んだ包帯に『周』をしてゴンの傷を急速に治療していく。飲み薬など副作用の有る薬の性質を強化するとかは怖くて出来ないけど、基本良い効果しかないこの朱いスズラン製の薬なら大丈夫ダイジョーブ。ゴンの怪我も深いものは無いからね。偉い、私!

 

ドラゴンと戦った時の傷もこうやって『周』が利く感じの外部治療をすれば数時間以内には治ってたかも知れないのに・・・不覚!

 

それから1時間としない内にゴンが起きた(起こした)

 

「・・・あれ?ビアー?なんか俺ビアーに縛り付けられてたような?」

 

「気のせいよ。それよりゴンが眠ってる間にちょっとお高い薬で傷を消しておいたけど体に違和感は有る?」

 

言われたゴンは立ち上がって体の調子を確認するのに軽く飛び跳ねてみていた

 

「うん!何処にも痛みも無いよ!こんな傷をすぐに癒せる薬も有るんだね!」

 

悪い、ゴン。それは薬だけの効果じゃないよ

 

私にお礼を言って笑顔で走り去っていくゴンを見送ったら私も宿に戻り、日課のオーラの全消費からシャワーを浴びて眠る事にしたのだった

 

 

 

次の日はゴンの攻撃をいなしたりしてた初日とは打って変わって私が一方的にゴンを攻め立てる展開とした。技術ではなくパワーで圧倒する!

 

「ゴン!伏せなさい!」

 

短い忠告の直後に私の放った斬撃が大木に三本の傷跡を刻んで僅かに繋がった部分が自重で倒れる

 

「わわわわわっ!」

 

「相手が丸腰に見えても打撃しかしてこないとは限らないわよ!素手でもモノは引き裂けるし暗器を隠し持ってたりもするんだから!」

 

・・・訂正。技術を見せつつパワーも見せつける。回避能力と格上相手でも一瞬の隙を見逃さないように集中する胆力。なにより世界の広さの一端を知ってもらう為だ

 

『堅』の全力パンチとかは流石にこの狭いくじら島の自然の中で披露出来ないけどね

 

休まずに攻め立てた事でゴンが一旦大岩の後ろに身を隠す

 

身を隠すと云うよりは盾にすると言った方が良いかな―――私はソっとゴンの居る位置の反対側の岩に片手を添える

 

「う~ん。こんなものかな?」

 

下半身のバネを使った寸勁で岩に衝撃を叩き込むと岩が凹み、直後にゴンのくぐもった声が岩の向こうから響いてきた

 

「痛った~!なんだ今の?」

 

「今のは”鎧通し”とか”浸透勁”とかって呼ばれる衝撃を離れた位置に叩き込む技だね。私もあんまり使った事ないから岩にダメージが分散しちゃったけど」

 

背中を摩るゴンに今の隙に正面に回った私が解説をしてあげる。見れば岩には他にも何か所か亀裂が奔ってるし、十全に衝撃を狙った場所に届けられなかった証拠だ

 

流石に難易度の高い技を一発再現はキツいわね。何度か使っていけば精度も上がるでしょうけど

 

私を認識したゴンが素早く横に避ける

 

”ゴバンッ!!”

 

直後にゴンの胸の在った位置を私のハイキックが通過して背後に在った大岩が粉々に砕かれた。念無しとは云え先の鎧通しで全体に罅の入った岩程度は難なく破壊出来る

 

「あんな大きな岩を・・・スッゲェや!」

 

「一撃でダメなら二撃三撃と叩き込めば良いだけの話よ。『雨垂石を穿つ』ってね・・・まっ、私のは雨垂れのレベルは超えたと思ってるけど」

 

五大厄災レベル相手でも雨垂れよりはダメージは通ると思いたい。五大厄災半歩手前のキメラアントとか同じ種族でも階級によって戦闘力に差があり過ぎるから余り参考にならないし

 

単体ではキメラアントの王の方が五大厄災より強い説まで有るからね・・・まぁ戦闘能力と危険度を一概に同じ括りには出来ないけど

 

そこからも攻撃を暫く続けていくと少しずつゴンが私の攻撃の合間に反撃をする回数が増えてきた。殺されるとまでは思って無いだろうけど、一瞬でも気を抜けば死ぬ思いはすると云う緊張感が段々とゴンの集中力のギアを引き上げたんでしょう

 

ゴンの成長に合わせてこっちもスピードを上げてるから気付いてないと思うけど、彼は体で覚えるタイプだから問題無しだ。ギアの引き上げを2回、3回と繰り返せば相手に合わせてより素早くより深く集中出来るようになる

 

私としても偶にはレツやポンズ以外とも組手とかで体を動かしたいので、ゴンが成長してくれるのは願ったりだしね―――あの二人は能力が基本遠距離向きだからゴンみたいに積極的に攻勢に出ようとはしないからさ

 

また夕暮れ近くになった事で決着を付ける為にゴンを一本背負いの要領で沼の方に投げ飛ばすと後方に跳躍し、『練』を発動して身体能力を爆増させる

 

沼の中央付近に落ちそうになっていたゴンに拳を突き出して衝撃波を叩き込めばそのまま沼の反対側の浅瀬辺りに墜落した

 

水飛沫を上げながら沼に落ちたゴンはプカプカと浮いて空を見上げて呆けている

 

「ゴン。今のが私の全力のパンチだよ。直接当てなくても近くに居るだけで危険だから遠くに飛んでもらったけど、どうだった?」

 

「・・・・っ・・・・・・・っ」

 

う~ん。衝撃が全身を叩いたからまだ体が麻痺してるか。鼻血垂れてるし、口はパクパク動いてるけど声が出てない

 

取り敢えずゴンを沼から引き上げると『周』の事を隠す為にも首トンで気絶させる。それからまた傷薬を染み込ませた包帯でグルグル巻きにして怪我を治すと(おもむろ)に近くに落ちてた野球ボールくらいの石をゴンの額に落ちるように投げてあげる

 

危険を察知したゴンが"パチリ"と目を開けるけど、落ちてきた石を避ける事は出来ずに額に直撃を喰らってしまう

 

「――――――ッ~~~!!」

 

「気付けたのは良いけどその後の反応がまだまだね。避けられないと意味は無いよ」

 

額を抑えて転げ回るゴンをその場に置いて今日も帰る・・・途中でゴンが後ろから気配を消してリボンを奪いに来たので空中でとっ捕まえて大車輪の如く振り回すと沼に向かって投げ込んでおいた

 

甘いぞゴン。終わったと私が判断した瞬間から私の『円』は広がっているんだよ

 

WHAHAHAHAHAHAHAHA!!

 

態とらしい高笑いをその場に残してその日も終わりを告げるのだった

 

 

 

朝、何時もの場所に行けばゴンが入念にストレッチをしていた。私が来た事で早速始めようとするゴンを手で制する

 

「始める前に言っとくと今日で最後だからね。この島を出るのに手配してた船が明後日の朝辺りに用意出来るって連絡が有ったから」

 

なんだかんだで辺境だから普段とは違う船を用意するのに時間が掛かった。お役所仕事だからね。ぶっちゃけお金を積めば即日解決できる話ではあったんだけど、急ぐ理由も無かったから―――明後日でくじら島に来て八日程・・・旅の滞在期間としては普通でしょう

 

「え~!明後日なら明日も出来るじゃん!」

 

「残念だけど明日はノウコちゃんって先約が居るの。ゴンも一応お兄ちゃん枠なんだし、もうすぐハンター試験でこの島から暫くは離れる予定なんだから譲って上げなさい」

 

ゴンとノウコちゃんの私(達)の取り合い・・・もしかしてモテ期到来?

 

「絶対違うけどね!」

 

「なにが違うの?」

 

「何でもないっ!!それより納得出来たなら掛かって来なさい。今日は長物を中心にぶっ飛ばして上げるから!」

 

昨日倒した木を切り裂いて棒状にした得物をクルクル廻して構える。昨日の岩を壊した鎧通しのように覚えた技も実際に使ってみないと細かい調整が出来ないので、ここ数日はゴンを相手に覚えた技を私用に最適化しているのだ。今までほったらかしにしてたので、良い機会だと思ってね

 

「それじゃあ行くわよゴン―――棒術は全てに通ずる!」

 

斜に構えた体勢から一気に棒の間合いまで詰めると連続突きを繰り出す

 

「突けば槍!」

 

「うわったっ!?」

 

上半身に向かって高速で突き出された点での攻撃を何とか避け、最後の突きも上体を逸らす事で鼻先を掠めるに留めたゴンが天を向いている間に引き戻した棒を彼の足を横から打ち据えるように回転斬りを見舞う

 

「払えば薙刀!」

 

「こんんのぉおおお!!」

 

まだ上体も起き切ってない崩れた体勢からそれでも私の方に向かってジャンプし、下段の薙ぎ払いを避けつつ長物の間合いの内側に入って拳を叩きつけようとしたゴンに私も棒の持ち手を手首のスナップで”手の中で投げる”事でクロスレンジでも十分に力が乗る位置に調整する

 

「持たば太刀!!」

 

「ぐええええっ!?」

 

無理な体勢から放とうとしたゴンの拳より先に私の逆胴が決まり、私の額に迫っていた拳はブレて顔の横を通過する

 

「ゲホッ、ケホッ!痛ってぇええええ・・・・でも・・・へへへ、コレな~んだ?」

 

打たれたお腹を片手で摩りながらも突き出してきたもう片方の手の中には私のポニーテールを結んでいたリボンが握られていた

 

「あっ!」

 

完全に殴りかかって来てたのに私の攻撃で軌道がズレたその瞬間に根性と本能で指先を伸ばしたって事!?今の一撃もクッキリと青あざが残るくらいの威力では叩いたんだよ!?ギリギリ内臓が傷つかないように加減はしたけど、それでも体が爆発したような衝撃が奔ったはず・・・両腕爆破されても蹴り入れる子だったかこの子は

 

「この二日間。散々殴られたからね。最初の内は一瞬意識が途切れてたけど、今なら指先くらいは動かせるようになったんだ。それにビアーは色んな動きをする時、始めの1~2回はほんの少しだけ俺を見てない感じがしたからさ」

 

確かに自分の動きを把握する為に自分の内側に意識を割いてたけど、そんな僅かな差を感じ取るとかゴンの集中力をまだ甘くみてたかも

 

まさか最終日の初っ端からリボンを盗られるとは思わなかったなぁ・・・くそぅ、ゴンの頑張りも有るけど私自身の未熟さから来る凡ミスとかこの悔しさは残り時間目一杯ゴンを甚振る 導き、成長させる喜びで相殺するしかないか

 

覚悟しろよゴン。昨日より5割増しで厳しく教育してやるからな?

 

その日。何時もは夕日が落ちる頃には家に帰っていたゴンが戻ったのは日付が変わる直前であり、怪我こそ無かったものの(・・・・・・・・・・・)ミトには色々と怒られたゴンであった。―――因みにあの日は何度も綺麗なお花畑と川の在る場所に行く夢を見たと後に本人は語った

 

なお、ビアーの朱いスズランの小瓶は空になったらしい

 

 

 

 

くじら島の港。時刻は朝の9時。朝早くから漁に出ていた人達もそれなりに戻って来ていて魚の仕分けで賑わっている中、私とゴンは(もり)を片手に海を見つめていた

 

「ビアーお姉ちゃんもゴンお兄ちゃんも頑張って~♪」

 

「ゴ~ン。相手がプロハンターだからって地元のお前が負けんじゃねぇぞ~!」

 

「ビアー、クジラとか港に収まりきらないのは流石にアウトだからね~!」

 

「負けたら無駄に使った(朱いスズランの)傷薬の料金徴収するわよ~!」

 

「二人とも、デカイ奴頼むぜ~!」

 

そんな私達の背中に皆の声が掛かる。今日のイベントの一つとしてゴンと狩り(ハント)で勝負すると云う提案を出したのだ。ノウコちゃんとだけ遊ぶなんて言ってないしね

 

「ルールは昨日説明したように今から11時までの2時間の間により大物を狩った方が勝利!審査員はその時港に居る人達ね」

 

「うん!今日こそは勝つからね!」

 

昨日は怪我から回復させた後、腕相撲20回だけはその場で消費したもんね。勝敗?それ聞く?

 

制限時間の2時間の間はノウコちゃんはレツとポンズが一緒だ。レツとは人形劇を港でやっていた関係で結構一緒だったけど、今日はポンズも居るからか今はポンズの膝の上に座りつつ声援を送ってくれている

 

私もゴンも水着なんて持ってないのでラフな格好だ。濡れても透けないように白系統は避けた・・・この島水着とか売ってないんだよね。ダイビングスーツは在ったけど

 

ゴンと言えば釣り竿のイメージが有るけど2時間と云う時間制限の中で数ではなく大物勝負なら直接銛で狙った方が良いと判断したのか、ゴンも潜る気満々だ

 

「じゃあノウコちゃん。スタートの合図お願い」

 

「うん!―――よ~い・・・始め~♪」

 

その声を皮切りに私とゴンは船の出入りの邪魔にならない位置から海へ飛び込んだ

 

少し泳いでから私とゴンはそれぞれ別々の狩場に向かう事にする

 

ククククク・・・ゴンよ。悪いけど今回この勝負を持ちかけたのは私がこの島を探索してる時に『円』によって既に大物を発見していたからなのだよ

 

勝負と云う形式でこの島に眠るお宝をゲットする為にね!

 

『円』をもう少し鍛えたら本当に一度くらいはシーハンターなトレジャーハンターを経験してみても良いかも知れないわね

 

さぁ、目指すは沖合約500メートルの水深70メートル!ドラゴンとの闘いで『円』の範囲が広がって無かったらギリギリ見逃してた距離だ

 

素潜りする深さじゃないけどプロハンターなら問題無し―――レッツダイビングッ!!

 

流石に水上を走るのは止めておいてゆったりと水中の景色を楽しみつつ泳いでいく

 

私が目指す場所までは水深もそこそこで結構な種類の魚が泳いでいるのが見えるわね。なんか胴体の後ろ半分が紐みたいに細いウナギ的なよく分からない魚も居るけどアレって実は結構高級魚だったりするのよね。昔図鑑で見た覚えがある

 

(・・・と言っても3メートル程度だし無視だ無視。細長い魚じゃ高評価も期待出来ないし、そもそもターゲットは既に決定している)

 

程無くして辿り着いた場所から下を見つめて銛の具合を確かめる・・・私の『円』ならどこぞのシーハンターみたいに深海を泳ぐクジラを貫く事も可能だけど、勿論やるつもりはない

 

・・・そう言えば私のハンター試験の試験官の一人だったあの人って深海のクジラを如何やって探知してたんだろう?深海の定義って水深200メートル以下だったはずだから『円』で探ってたなら割と凄いんじゃない?それか深海まで銛は届くけど当てられるか如何かは運任せだったりしたのかな?だとしたら結構カッコ悪い

 

一度潜ってから勢いを付けて水上もとい空中に飛び出した私は握った銛で標的・・・の近くの水底の岩盤に向かって投擲する

 

真っ直ぐに岩盤に突き刺さった銛は地中で運動エネルギーを拡散させて地面を砕く。直接海底を拳や蹴りで破壊しても良いんだけど、折角持って来たなら一度くらいは使いたいじゃない?

 

空中から重力に従って落下した勢いのまま銛の軌道を追うように潜水した私は地面から引き離された目の前の大岩を持ち上げると島に向かって水中散歩だ。息継ぎ無しにスタート地点の港からは少しズレた浜辺に海中から迫り出すように陸に上がった私は巨大なソレを適当に陽の当たる場所に置くと私自身も近くの川にダイブして海水を洗い落とした後で服を乾かす

 

基本この世界は暖かいから残り時間だけでもしっかり乾いたので良しとして獲って来たモノを再び担いで港まで運ぶと島民や出稼ぎの漁民の皆さんが出迎えてくれた

 

「おお~!こりゃあタイタンズハンドじゃないか!海底から引っぺがして来たのか!?」

 

「確かシャコ貝の親玉だったな!7~8メートルは有るぞコイツぁ!もしかして数百年は生きた個体なんじゃねぇのか?」

 

そう。私が見つけてきたのは”巨人の掌(タイタンズハンド)”と呼ばれる世界一大きい(人間界限定)貝だ。記録では一番大きいので20メートル級の物も見つかっていて、それでも尚成長途中だと云うのが学者たちの見解らしい・・・恐らく上手く育った個体は最終的には島か大陸級にデカくなって巨大人魚の住処として使われるんでしょう(暗黒大陸感)

 

尤も人間界じゃ成長の止まった世界樹みたいに本当の意味で大きくは成らないと思うけどね。この貝だってあの場所ではこれ以上の成長は見込めなかったでしょうし

 

皆が私が獲って来た貝をペシペシと叩いたり口々に感想を言い合ったりしていると制限時間ギリギリでゴンも港に上がって来てここまで泳ぎながら引っ張って来た魚を引き上げる

 

「おっとゴンの方は八つ目青アンコウか!こっちもデケェぞ!大きさじゃ嬢ちゃんのタイタンズハンドと良い勝負じゃねぇか?」

 

「へへへへ!コイツを見つけられてラッキーだったよ。何時もは海のもっと深い場所を泳いでる魚だからね。海面近くまでやって来るのは産卵の時だけだもんね」

 

「腹が膨れて卵がパンパンに詰まってやがるな。大人になると身の方は味気が無くなっちまうが、卵は珍味だ。これだけでも200万ジェニーは堅いぜ・・・ゴン。それにミトさん。良かったら俺に220万ジェニーで売ってくれねぇか?知り合いの海鮮屋に300・・・いや、最近仕入れられてねぇつってたから上手くいけば350でも買ってくれそうな奴が居るんだよ」

 

なんだか値段交渉が始まったけどまだ審査が残ってるのでその話は後回しにしてもらう。実際ゴンは大金に頭が付いて行かずに「200万ジェニーって何ジェニー?」とか言ってるし、後ろに見えるミトさんは何処からか取り出した電卓を高速で叩いている

 

まぁ彼女なら後で「ック!これはゴンの稼いだお金!」とか言ってすぐに正気に戻るでしょう

 

「はいはい!それじゃあ審査して貰う前に私の獲って来た貝の真の価値をお見せしますよ~」

 

このまま審査に入ったら何だかゴンが勝ちそうな雰囲気が広がり始めてたので手を叩いて皆の注目を集めると貝の閉じた口の隙間に手を掛けると一気に押し広げる

 

「オ~プン☆セサミ~ッ!!♪」

 

”グバンッ!”と音を響かせながらも開かれた巨大貝の中身に群衆が色めき立つ

 

もう予想してた人達も居るかもだけど、中から現れたのはスイカよりも一回りは大きい真っ白い球体だ。陽の光を反射して美しい虹色の光沢を周囲に魅せ付ける

 

真珠は貝殻を持つ生物なら形とかは如何あれ基本生成出来るけど、天然の真珠は貝の体内に異物が入り込む事で生まれる・・・貝にとっては体の中で生まれる厄介なシコリみたいなものだ

 

養殖の真珠は貝の体内に核となる異物を針とかを使って手作業で埋め込む訳だけど、巨大な真珠を作ろうと巨大な貝に異物と認識されるだけのモノを埋め込もうとしたら突っ込んだ棒ごと挟み千切られるので現実的ではないわね。他にも試すには数が少ないとかそもそも海から取り出せないとか言い出したらキリがないけど

 

だから天然でこれだけ巨大で形の整ってる真珠はかなり珍しいという事だ

 

前の世界でも大体これくらいの大きさの真珠(約100億円)とかも在ったけど、正直美しいとは云えなかったからね。真球であり真珠層も付いているコレは売りだしたら凄い金額になる事間違いなしでしょ!

 

奇しくも卵に真珠と獲物の中身勝負になったけど、結局大きさでも価値でも私の圧勝でゴンとの勝負は幕を閉じた

 

「あ~っ、また負けちゃったよ」

 

「お疲れゴン。勝ちは譲れなかったけど残念賞としてコレを上げるよ」

 

袋に入れたソレ等は当然使わなくなったレツとポンズの重り(総計400kg)だ。半分はコレを渡す為にゴンに勝負を吹っ掛けたまである

 

渡すタイミングは何時でも良かったけど、昨日までは重しは寧ろ邪魔だったから今日渡す事にした

 

・・・そう言えばゴンが400kgを身に着けたらレツとポンズの300kgを超えちゃうよね?二人の厚底改造ブーツ(一足100kg)も直ぐにまた注文する事にしよう」

 

「「絶対止めて!」」

 

は~ん?聞こえんな~!―――あと心を読むな

 

「途中から口に出てたわよこのおバカ!」

 

ポンズに頭を叩かれながらもその後はお昼を食べてノウコちゃんにゴンも交えてオセロなどの室内遊戯から外を駆け回ったりしていく。流石に例の真珠は放置すれば変な事を考える人が出てきそうなので基本は私が持ち運ぶ事になったけどね

 

ノウコちゃんとか価値まではよく分かってなかったから遠慮なしにペタペタ触ってたけどさ

 

下手したらくじら島の利権ごと買い取れるかも知れないんだけどね。因みにゴンは渡した重りを早速付けて私達の後を必死の形相で付いて回っていたけど、汗だくで最後にはへたばっていた

 

取り敢えずその重しを付けた状態で以前と同じだけ動けるようにするのが最低目標だからね?

 

「ねぇビアー。この真珠は如何扱うつもりなの?」

 

「ん~、持ってても荷物になるしオークションに出しちゃうよ。今はヨークシンの年に一度の最大規模のオークションが終わってからそんなに時間も経ってないから数十億ジェニーは安くなるかもだけどさ」

 

来年のオークションには幻影旅団が関わってくるはずだから態々変に時間を取られたりするかも知れないその時期に売りに出すのも嫌だもんね

 

ネットで告知して即金で大金を用意して集まれる人達だけでも十分じゃないかな。オークション自体は年中やってる訳だし、自分の興味の有る枠くらいは好事家ならチェックしてるでしょ

 

「それならこの島を出たら一度ヨークシンに寄るのね?告知すると言ってもまさか地方のセキュリティーも整ってない小さなオークション会場に国宝級のお宝を出品する訳にもいかないでしょ?」

 

「うん。そのつもり。だから少しの間はヨークシンに留まる事になると思う」

 

「別に構わないわよ。少し腰を据えて(『発』の)修行もしたかったから丁度良いわ」

 

その日は丘の上の家まで這って帰るゴンを見送って宿に戻り、寝る時にはノウコちゃんが枕持参で「今日は一緒に寝ても良い?」と訊いてきたのを快く了承する

 

「さぁノウコちゃん!遠慮せずベッドに入って入って♪」

 

「うん♪お邪魔するねレツお姉ちゃん(・・・・・・・)!」

 

・・・え

 

ベッドに座って両手を広げた私の歓迎の言葉にノウコちゃんは自然とレツの布団に潜り込んでいった・・・・・そうだよね!ノウコちゃんが人形劇を演りに港に出向いてたレツに一番懐くのは当然の事だよね!

 

「うえぇええええん、ポンズ姉ぇぇぇええええ!!今日は一緒に寝ようよおおおお!!」

 

その場の気分で(嘘)泣きながら既に布団に入っていたポンズのベッドに突撃する

 

「ああもう暑苦しい!大体そんな歳でもないでしょうアンタはっ!」

 

ポンズが抱き着く私の顔面を手の平で押し返してくる。きっと私の顔は不細工になっていると思う

 

それと『そんな歳』って私はまだ12歳だやい!前世ならまだ黄色い帽子に真っ赤なランドセル背負ってる子供だよ!

 

「今日ルルは私と寝る予定だったから今ならルルもついて来るよ?」

 

「よし来なさい。お姉ちゃんが慰めて上げるわ」

 

「・・・レツお姉ちゃん。ポンズお姉ちゃんとビアーお姉ちゃんは何をしているの?」

 

「・・・欲望に忠実なただのじゃれ合いだからノウコちゃんは気にしなくて良いよ」

 

ベッドに入ってからも自然と眠くなるまで雑談を交わし、ノウコちゃんが最初に寝息を立て始めたのを皮切りに私達も順次眠りについて行くのだった

 

 

 

 

朝、港には私の手配した連絡船が来ておりそれに乗り込もうとしている私達を手の空いてる島民や漁民の皆さんが見送りに来てくれていた

 

「ビアー!また会おうね!次に出会った時は絶対に腕相撲で勝ってみせるからね!」

 

次に出会うとしたらハンター試験の直前か直後の何方かかな?・・・うん。流石に敗けないや

 

「また・・・また遊びに来てね!きっとだよ!」

 

ノウコちゃんはちょっと涙目だ。こうして別れを惜しんでくれる人との出会いも嬉しさと悲しさを孕んだ旅のスパイスの一つなんでしょう

 

「勿論また来るよ―――はいコレ、プレゼントだよ」

 

屈んでノウコちゃんとの目線の高さを合わせた私はポシェットからビニール包装されたハンカチを渡す。渡したハンカチはルルの毛で織った『ゴールデン・ウールシリーズ』だ

 

汚れない特性の為に着色とかは出来なかったけど、ギリギリ脱色は出来たので『ゴールデン・ウールシリーズ』は金の布地に白のアクセントが基本となっている。渡したハンカチもデフォルメされた羽の生えた羊がロゴマークとして付いている

 

※ハンカチ一枚20万ジェニー

 

「わ~♪この子ルルちゃんだ~♪有難う、ビアーお姉ちゃん!」

 

涙目だったノウコちゃんが渡したハンカチを見て直ぐに笑顔に変わりお礼を言う

 

うんうん。やっぱり最後には笑って別れる方が良いからね

 

船に乗り込んだ私達は船が島から離れていく間にも皆に大きく手を振られながらくじら島を後にしたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ!お次はこの世界でも最大規模の都市、ヨークシンシティだ。くじら島に続いて原作の舞台を下見していきましょうか!

 




細長い魚や青い魚は新アニメの最初の方の冒頭シーンに描かれてたやつですね
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