毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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お察しかと思いますがスランプ気味ですね。でも書くぞ、少しずつでも書くぞ!書くぞオラアアアアアアアア!!(ヤケクソ鼓舞)


雪国とスパイス

ヨークシンシティを後にして季節は既に12月

 

12月に入った事でハンター試験の受験の受付も始まったのでレツとポンズも問題無く試験登録を済ませた。登録だけならネットや手紙の簡単な手続きで即刻可能だ

 

基本的に『誰でも』受験可能という謳い文句のハンター試験はその辺が非常に緩々なんだよね。表向きは存在しない都市である流星街出身の戸籍無し(シャルナーク)でも普通にライセンスを持ってたしさ

 

そんな今回のハンター試験の一次試験の会場は案の定と言うべきか原作通りにザバン市のようだ

 

そうは言ってもただザバン市に到達しても普通なら合言葉必須で地下に隠された試験会場に辿り着くのは難しい。それ故に会場に正確に辿り着くには高い情報収集能力か、各地に点在する試験会場への案内人を見つける必要が有る・・・が、そこは過去に数度試験を受けたポンズならば案内人の居場所などもしっかり把握してるから問題無しだ

 

私の知ってる一本松ルートじゃないみたいだけど、そりゃ原作で出てた案内人(魔獣)であるキリコ家族以外にも案内人は居るよね

 

キリコファミリー以外の案内人も多少は興味は有るけど、流石にプロハンターである私が二人の試験にしゃしゃり出る訳にはいかないから今回はお預けだ

 

試験官として試験に潜り込む事も考えた事は有るけど、生憎二人が試験を受けている間は別の予定が入っているから試験官ごっこ(正式)は出来ないんだよね~・・・う~ん。残念!

 

さっき12月だとは言ったけどこの世界は基本的に何所も暖かい気候で安定してるから私もまだこっちの世界で実物の雪を見た事って無いんだよね。一応降る所は降るからテレビとかなら観たこともあるんだけどさ

 

前世が四季折々の日本出身だった身としては四季の変化が無いのには未だに違和感を感じてしまう

 

「・・・と言う訳でやって来ました雪国です!まぁ言う程雪で一杯じゃないけど、そこそこには積もってるし豪雪してても困るから問題無しね!」

 

人間界の外から運ばれてきたであろう寒気がギリギリ掠める一部地域の一季節とか条件を重ねたら雪は見れるけど、お蔭でこの世界ではスキーを始めとしたウィンタースポーツの類はやってる人が少ないらしい・・・やれるだけの面積がそもそも確保出来ないからね

 

標高何千メートル級の山の山頂付近なら雪がそれなりに見られる場所も有るけど、登山家がフル装備で登るような高さまでスキーをしに行く一般人は普通は居ない

 

平地で雪が降るような地域はかなりレアなのだ・・・流石はゴン達がどの時期にどの地域へ跳ぼうと半袖短パンがデフォなだけはある

 

ホワイトクリスマスに赤い防寒着を着た煙突家宅侵入オジサン?なにそれどこの世界線の話?

 

「なにが『と言う訳』なのさ?雪を観に行こうって突然提案してきただけじゃないか」

 

「私も寒い地方ではあんまり動植物の数も豊富じゃないから来たことは無かったのよね。元が少ないから珍種はまだしも新種は先人ハンター達に殆ど見つけられてるはずだからアマチュアの私が労力と金銭を無視して探索するには向かない場所だったし」

 

あ~、そりゃポンズ姉からしたらそうかもね。催眠ガスを始めとして色んなトラップとか使い捨ての物は当たり前だけどお金が掛かる上にアマチュアだと何処かと飛び込みで契約するのも難しい

 

「は~い!雪国名物雪だるま饅頭だよ~!」

 

街中に入るとあちこちで宣伝合戦をしているようであっちで売ってるのは弾力が有って型崩れし難い白い饅頭を串で貫いた段重ね饅頭みたいだ。一番上には顔が描かれていて二段目とかにも服っぽく見える焼き色が入れてある

 

「オーソドックスな二段重ねや三段重ねから脅威の八段重ねまでご提供だ~!」

 

「ソレは八頭身って事!?」

 

思わず二度見しちゃったけど、幸いAA(アスキーアート)が現実を侵食しに来た訳じゃないみたいなので振り向いた顔を戻してまた歩く

 

「思った以上に店舗の前とかで販売してる人が多いね」

 

「そうね。売る物によっては手袋も真面に着けられないって云うのによくやるわ」

 

こんな寒い中でも客の呼び込みの声がそれなりに聞こえるのは雪が降る時期は此処に住む人達にとって最大の書き入れ時だからだ

 

因みにシーズンでなくとも避暑地としても結構お金持ちとかが別荘を持ってたりもするみたいね

 

そんな中で表通りと繋がる脇道への細めの道から男数人の酔っ払った声が聞こえてきた

 

「おうおうお嬢ちゃん。俺らよ~、女の子の遊び相手にさっき逃げられちまってよ~・・・ヒックッ!どうだい?俺らと一緒に一杯やらないかい?寒い時はコイツで体を温めるに限るぜぇ?」

 

「そうそう!それ以外の方法でも一緒に体を温め合おうぜぇ。男女が揃ってヤル運動会ってやつだ!ギャハハハハハハッ!」

 

「今ならこの白い粉も付けるぜぇ?な~に、ちょっと脳みそパチパチするだけさ。ちゃんと代金も払えるように俺らと遊んだ後でお店も紹介してやるからよぉ。紹介料は今持ってるお財布の中身だけで良いからよ」

 

話の内容からしてただの酔っ払いよりもうワンランク質の悪い奴らみたいね

 

三人の男がポンズ姉くらいの年齢の黒髪ツインテールに両耳にイヤリングをした女の子に絡んでいる。表通りに近い場所で絡んでいるから既に他の一般客や店員が不穏な空気を感じて衛兵を呼びに行ってるわね・・・アルコールと薬物で思考回路が鈍ってるんでしょ

 

「まったく!本当に町中でも町の外でもあの手の人達は何時だって湧いて来るんだから!」

 

レツがプンスカ怒りながら絡まれてる女の子を助けに向かおうと足を向けるけど、それを私は引き留める

 

「待った。態々助ける必要は無いよ」

 

「え?それって一体如何いう・・・”ドガッ! バギッ! メシャッ!!”」

 

レツの質問が終わる前に打撃音が響くと絡まれていた女の子が大の男達をそれぞれ拳や蹴りの一撃で地面に沈めているところだった

 

「ええぇ・・・うん。確かに手助けは必要無かったみたいだね。それにしてもビアーはあの子が強いってよく判ったね」

 

「レツも『円』(感覚)を磨けばその内判るようになるわよ」

 

強いと言ってもチンピラに負けない程度だから出会った当初のポンズ姉(素手)くらいでしかないけどね。それでも十分一般人とは一線を画しているけど

 

「ちょっとそこの貴女達。仮にも助けようとしたならコイツ等を縛る程度は手伝ってくれない?怪しい薬まで持ってるならただ放置する訳にもいかないでしょ」

 

如何やら私達の会話は聞こえてたみたいで事後処理に手を貸せと言われてしまった

 

仕方ないと肩をすくめた私達はテキパキと取り出したロープで気絶した男達を縛ったりナイフなどの凶器を取り上げたりしていく

 

「・・・貴女達随分と手際が良いわね」

 

そりゃあ犯罪者は実質私達の路銀代わりだからね。財布の中身をひっくり返すのも手慣れたものだ

 

因みにマフィアとかの組織の金庫はお小遣いかな?―――犯罪者(おまえ)財産(もの)私達(オレ)所有物(もの)的な?

 

そうして全員を縛り上げた辺りで衛兵というか警察が来たので引き渡す事となった

 

最初は大の大人数人を地面に転がしてるのが年端もいかない女の子たち(警官視点)だった事で何故か私達まで一緒に事情聴取を受けそうになったけど、周囲で遠巻きに見ていた人達も危険が去った事で状況を説明してくれたので私達は「あまり危ない事をしないように」と少しだけ忠告を貰って解放という形となった

 

「下手に連行されなかったのは幸いだったわね。それはそうとそこの貴女!」

 

「へっ?ボク?」

 

チンピラを倒した女の子に突然指先を突き付けられたレツは戸惑いの表情だ

 

「貴女みたいな小さい子がああ云う危ない男達の間に割って入ろうとしちゃダメでしょ!酔っ払いでなくともあの手の輩は話し合いなんて通じないんだから!場合によっては人身売買の標的にだってなり得るんだからね。あの場合は警察とか周囲の大人に頼るとかしないと!そもそも・・・」

 

なんかレツに顔を近づけつつも説教タイムに入っちゃったよ。多分だけど戦闘力の無いレツが正義感だけで男達に立ち向かおうとしたとか、そんな風に認識してるみたいだ・・・さっきのレツもそうだったけど、そりゃ普通は一目で相手の力量をある程度把握とか無理だよね

 

野生児のゴンなら直感で多少は判別しそうだけど、レツとか戦闘職の人間じゃないし

 

そんな事を考えていたら女の子の視線がこっちにも向いてきた

 

「貴女たちもよ!さっきは止めたみたいだけど、この子と常に一緒に居る訳でも無いでしょう?その間に今みたいなトラブルに自ら首を突っ込んだら如何するのよ!ただ止めるだけじゃなくて何がダメだったのかを・・・」

 

Oh・・・思いっきりこっちに飛び火してきちゃった。善意からの発言だし言ってる内容も間違ってないんだけど、私達が揃って例外的な人種だから結論として的外れになっちゃってる

 

レツとかピー助の力も使えば正面戦闘じゃフル装備の一個大隊が相手でも殲滅できそうなんだよね・・・手加減という文字が存在しないから地獄絵図になっちゃうし、相手が初手で全保有ミサイルぶっ放とかしたら流石に分からないけどさ

 

ピー助単体なら兎も角レツ自身は大型のミサイル一発でも致命傷だろうし、小型ミサイルでも当たり所が悪かったら最悪死にそうだしね

 

何処かの筋肉ダルマと比べたらオーラ量はまだしも肉体強度や強化率は劣ってるから

 

ともあれ黒髪ツインテちゃんがクドクドと私達(主にポンズ)に向けて説教してたのをいい加減止めようとしたら今度は私の顔を見て訝し気な表情となる

 

「あら貴女・・・何処かで出会わなかったかしら?」

 

ほへ?

 

「いえ、覚えがないんですけど・・・?」

 

「そうだったかしら?でも確かに何処かで・・・ああ!貴女今年のハンター試験を受験してた子でしょ!私も試験会場に居たのよね―――あの時は私もピリピリしてたし、あの『新人潰し』と少し話した後は一人で百面相してたから声を掛けなかったんだけど、成程ね」

 

なんか一人で勝手に納得してるみたいだけど、ハンター試験の受験生だったのか

 

ルーキー・・・じゃないわよね?トンパ情報だと今年のルーキーは私とカストロさんとヒソカの三人だったみたいだから年齢から推察するなら去年辺りに初受験(試験会場到達)したのかな?

 

「まったく、いきなり落とし穴だなんてふざけた試験だったわね。去年は二次まで進んだのにあんなにアッサリ落とされると嫌になる。貴女も一緒に落とされた口かしら?でもしょげる必要は無いわよ。私達くらいの年代はまだまだ成長の余地が有るんだし、諦めなければその内合格も・・・」

 

今度は私がハンター試験に落ちた前提で話を進め始めたんだけど、この人結構思い込みが激しいタイプなのかな?

 

確かにハンター試験をルーキー且つ小学生くらいの子供が合格するなんて早々無いけど自己完結で結論を直ぐに出しちゃうのは視野を狭める事に繋がる―――狩人(ハンター)としてはマイナスだ

 

軽く溜息をついた私は懐からプロハンターの証であるハンターライセンスを取り出して見せて上げる。防寒着で袖もぶかぶかしてるから通行人の目に入らないようにするのは簡単だ

 

「え・・・それってまさか!!」

 

「オモチャじゃないですよ後輩女子。私はビアー、貴女の名前は?」

 

ただプロハンターとだけ名乗っても疑われそうなのでライセンス有きで少し圧(笑顔)を掛けて会話の主導権を握る事にする

 

「あ・・・アニタよ・・・」

 

あっれれ~?さっきまでの勢いは如何しちゃったのかな~?そんなに目を泳がせててもそっちは何も無い路地裏だよ~?人と話す時は相手の目を真っ直ぐ見て話そっか♪

 

「っぐ・・・貴女性格悪いわね。はぁ・・・問題無いのは分かったから私ももう行くわね。また遭わない事を祈っておくわ」

 

ばつが悪いのか寒さとはまた違う理由で頬を僅かに染めたアニタさんは私達の間を通り抜けてそそくさと人混みの中に消えていった。こっちとしても引き留める程の理由も無かったので、誤解さえ解けて説教などから解放されたならオールオーケーだ

 

「去年と一昨年の受験者だったんだね。ビアーもポンズもあの人の事は覚えてなかったの?」

 

「2年前よ?成長期の内は結構雰囲気も変わるし一次試験だけでも毎年数百人は居るんだから一々覚えちゃいないわ」

 

「私も(ゴン達が居ないと分かって)周囲には気を向けて無かった上に一次の落とし穴で速攻脱落しちゃったって言われるとちょっと覚えてないなぁ」

 

でもな~んか何処かで見た事有るような・・・?いや、原作にあんな娘居なかったはずだし私の勘違いか

 

 

 

そうして軽くお店を見て回りつつ私達の持っている旅の荷物などを置いたりする為にもこの街にある一番豪華で大きいホテルの前までやって来た

 

寒い地方特有のお土産やらアクセサリーやらで一つ一つのお店を廻るには時間が掛かりそうだったからね。じっくり観光するのはホテルの後で良い

 

「まったく、ビアーが計画性なく決めるから高級ホテルのスイートルームしか空き部屋が確保出来ないなんて事になるんだよ?・・・ヨークシンのマフィアの財産(臨時収入)でお釣りじゃ済まない額は手に入れたけど、無駄遣いは感心しないよ」

 

「そんなに言わなくても良いじゃない。それに無駄って程には無駄じゃないわよ。こんな寒い地域で普通の宿に泊まったら蜂のアリスタにはキツイでしょ?冷暖房フル稼働してるホテルならそんな心配も無いしね」

 

「それもそうね。私の帽子の中に常に閉じ込めておくのも可哀そうなのは事実かしら」

 

ホテルでチェックインを済ませて最上階の部屋に案内された私達は凍結防止対策をされている大きな窓から一面の銀世界を目にする

 

「わあああ♪雪が白いのは十分分かってたつもりだったけど、一望すると流石に壮観だねぇ♪ほらルルも見てみてよ!」

 

≪メェエエエエ♪≫

 

窓に駆け寄っておでこと両手をへばり付かせながら外の様子を食い入るように見るレツがルルを顕現させて腕に抱えると今度は二人(?)で瞳を輝かせながら外を見つめる。窓ガラスの反射で後ろからでも笑顔がよく見える。瞳の中で星が舞っている姿はとってもキュートだ

 

ポンズ姉はレツのそんな久しぶりの年相応な姿を見て苦笑しつつ帽子からアリスタを出して荷物を片付けながら防寒着をハンガーに掛けてゆく

 

「ほらレツも部屋の中なら防寒着は脱がないと直ぐに暑苦しくなっちゃうよ♪」

 

「うわっ!そう言いつつ抱き着いて来るビアーは何なのさ!―――脱ぐ!脱ぐから放してってば!・・・まったく、忠告した当人が更に暑苦しくして如何するのさ?」

 

「あははは♪ごめんごめん。ルルもアリスタと遊んでらっしゃいな」

 

≪メェエエッ!≫

 

≪スピッ!!≫

 

此処に近付くにつれてアリスタはポンズ姉の帽子の中に避難してたから久々の暖かい空間は心地がいいみたいだ

 

二匹の為にも天井も高い部屋の中を飛び回らせつつスイートルームの内装に目を向ける

 

一言で表すなら高級感の漂うノスタルジックって感じね。ホテルの一室だから薪をくべる暖炉みたいなのは無いけど、雪国のレンガとかを基調とした落ち着いた色合いと寒さを通さないようなちょっとした重厚感が有る。その上でスイートルーム宜しくふっかふかの椅子とかソファーとかの家具が設置されている感じだね

 

窓の方も分厚いカーテンは当然完備されているし、バスルームには小さいけどサウナまで設置してあった・・・う~ん。流石はスウィ~トだねぇ

 

一泊するだけでルルのハンカチ一枚分の価値が有るとは侮れない

 

このホテルに辿り着いたのが午前の11時を少し過ぎた辺りだったので少々部屋の中を堪能して時間を潰した私達はホテルの中のレストランに向かうことにした。因みに三食の代金はホテル代に含まれているので食べなきゃ損だ!(抜けきらない庶民感)

 

別にこのホテルはサザンピースみたいなドレスコードが明記してある訳じゃないけど時折すれ違う他のお客さんはキッカリピッチリした服を着ているのが殆どだ

 

汚いとかじゃないけど旅用のお洒落感の少ない服を着ている私達は少数派だね・・・そりゃ普通のお金持ちは旅先まで歩いて来る事なんて無いか。街中を少し観光するだけなら防寒着(高級)を羽織れば良い話だしね

 

だからこそ少し周囲を観察すれば機能性重視の武骨さも漂う服を着ている人は目立ってしまう

 

・・・具体的には肩口くらいの長さの黒髪ツインテール女子とかね

 

「どうも、さっきぶりですねアニタさん♪」

 

「っきゃああ!!?」

 

背後から声を掛けると声量こそ抑えられていたものの何とも可愛らしい悲鳴を上げて驚かれてしまった。人って意識外からの刺激に過剰反応しちゃうよね

 

「あ、貴女たち・・・如何してここに・・・?」

 

「いやぁ、私の思い付きでこの街に来ようとしたらこのホテル以外に空きが無かったので成り行きで此処に泊まるしか無かったんですよ。アニタさんも此処のお客だったんですね」

 

「そう・・・このホテルはそんなお手軽に泊まれるような値段じゃないんだけど、プロハンターなら納得ね。私は父さんが貿易商の社長で稼いでいてね。骨休めと言うか家族旅行と言うか・・・まっ、大体そんなところよ」

 

ほうほう!ケンカ慣れしてる口より先に手が出そうな活発系女子のアニタさんがまさかの良い所の社長令嬢とは思わなかったわね

 

こんなホテルに泊まってる以上はそれなりに儲けてる商会っぽいかな

 

「アニタ、待たせて悪かったね。おや?そちらのお嬢さん達はお友達かな?・・・・・う゛っ、うぅぅ、海賊相手に暴れたりウチのむさい連中を鍛錬と称してどつき廻すばかりだった娘に同姓の友人が出来るなんて、一体何度夢に見た光景だろうか?」

 

食堂の手前の廊下の脇で話してたんだけど、私達が泊まってる部屋とは別方向の廊下からやって来た黒髪短髪の男性が片手を上げながら近づいてきて、アニタさんと一緒に居た私達を見つけると途端に男泣きをし始めてしまった

 

「父さん。恥ずかしいから止めてよね!本当に父さんは思い込んだら一直線なんだから!」

 

アニタさんが父親にプンスカと怒り(恥ずかしがり)ながら詰め寄っている

 

「親子だねぇ・・・」

 

「絆を感じるね・・・」

 

「貿易商としてそれは如何なのよ?」

 

ポンズ姉の冷静なツッコミが空気に溶けていったのを最後に社長と社長令嬢がこちらを向く・・・お金持ちではあるんだろうけど、それなりに日に焼けててそんな風には見えないや。書類仕事一辺倒じゃなくて現場に出るタイプかな?

 

貿易商でさっき海賊なんてワードも出てたから海の男的な側面が強いとか?

 

この世界って空路が足の遅い(=燃費が悪い)飛行船が基本だから交易は海路と陸路が2強でワンランク下に空路って感じなのよね

 

「ああ、すまないね。つい嬉しさが極まってしまったのだよ。だが娘から軽く訊いたが外でも出会って、このホテルでも出会うとは中々面白いと思わないかい?このまま他人として別れるのは惜しいと思うのだよ。良かったら卓を共にしてこの縁を旅のスパイスとしようではないか」

 

突然の食事のお誘いだけど、アニタさんも居るなら下手なナンパとは違うか・・・と云うか彼の瞳の中に『娘の友達候補を逃がさん!』って文字が見える気がするんだけど、ここまで親に交友関係を心配されるアニタさんぇ・・・

 

知らぬは当人ばかりと云うか私達がそれぞれ微妙な表情をしているのを頭の上に?マークを浮かべて一歩引いた立ち位置から成り行きを見守っているつもりの中心人物(アニタさん)をチラ見した後、少しだけ息を吐く

 

「―――構いませんよ。エスコートはお任せしても?名無しさん(ミスター)?」

 

「おっと!これは失礼。私はアニタの父のパーシナモン。お手をどうぞ、レディ」

 

軽いおふざけに乗っかりつつ名乗ってくれたパーシナモンさんの手を華麗にスルーして食堂に入るとこちらの人数を確認したウェイトレスがそれに合わせた個室に案内してくれる

 

背後から片手を差し出した状態のまま物悲しい空気を漂わせている誰かさんは無視で良いよね!

 

「自分からネタを振っておいてそれは酷いんじゃないかしら?」

 

聞こえませ~ん。それならポンズ姉が私の代わりにオジサマのエスコートを受ければ・・・うん。断じて許さん!!

 

案内された先の席で私達三人とアニタさんたち親子二人が対面に分かれて座ると程無くして料理が運ばれてきた

 

ルームサービスで料理を頼むことも出来るけど、あれって別途で料金が掛かるのよね

 

「ではささやかな出会いへの感謝とこれが良き交流へと変わる希望を籠めて・・・乾杯!」

 

「「「「乾杯!!!」」」」

 

パーシナモンさんの音頭を取ってくれたので皆でグラスやジョッキをカチ合わせる。私達は当然ただのジュースだ

 

軽くお互いの自己紹介が終わると当然と云うべきか驚かれた

 

「なんと!キミ達だけで親御さんの姿が見えないと思ってはいましたがプロハンター御一行とは思いませんでしたな。それに未だ12歳のビアー君が二人も弟子として指導している状態だとは・・・いやはや、この業界でも色々な人達と出会ってきたつもりでしたが皆さん程面白い経歴は中々聞きませんね」

 

「ホントよね。私も父さんに付いて船で色んな国を廻る関係上プロハンターの資格が在った方がビザとか捕まえた海賊の引き渡しとかプロハンターが護衛として乗っているって周囲への牽制とかで役立ちそうだから試験を受けたんだけど、流石にそう簡単にはいかないのよね」

 

「そっか。アニタさんはハンターになりたいと云うよりは仕事で有利になるからハンターライセンスが欲しいって感じなんですね」

 

目標がハンターって感じじゃなくて手段として権力(ライセンス)が欲しいって事か

 

「そうね。まっ、ライセンスが有った方が良いなんてのはどの職業にも言える事でしょうけど、私はそこら辺の武器を持ったゴロツキ程度は普通に倒せたからハンター試験に手が届きそうと思ったのがきっかけだったわね」

 

「ははははは・・・それで書置きだけ残して一昨年にハンター試験に出向いたと聞いた時は心臓が止まりそうだったよ・・・思い返せばアニタが初めて海賊に勝手に立ち向かった時も似たような気持ちだったなぁ・・・」

 

「一人だけ安全な船室でジッとしてるなんて性に合わなかったのよ。ああでもしないと船団の皆は絶対に私に戦わせてくれそうにないんだもん」

 

「仮にも社長令嬢を武器を持った賊の前に出す船員は居ないでしょうね・・・同情するわ」

 

「それは・・・その時心臓が止まりそうになったのはパーシナモンさんだけじゃなさそうだね」

 

アニタさんの悪い意味でのアグレッシブさにポンズ姉とレツも苦笑いだ

 

「そういえばパーシナモンさんは貿易商を営んでいるみたいですけど、どんな商品を扱ってるんですか?」

 

貴金属や食材に既製品。運送業が扱うものはそれこそ一口で表せるものじゃない

 

私の質問にパーシナモンさんはほんの一瞬唇を結んでからお酒で喉を潤すと答えてくれた

 

「・・・私達はスパイス鉱山から採れる香辛石を世界に輸出しているんだよ」

 

・・・え?それって確か依存性の高い麻薬みたいなモノじゃなかったっけ?

 

私とポンズ姉の表情が少し硬くなったのをレツとアニタさんが不思議そうに見つめるのだった

 

 

 

・・・いや、アニタさんも解らない(そっち)側なんかい!!

 




アニタは旧アニメオリジナルキャラですね

この先の展開?知らん!!
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