毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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今回はなんとか早めに投稿できたかな


3次試験と多数決

2次試験合格者42名を乗せたハンター協会の飛行船は3次試験の会場に向けて移動を続けていた

 

夕方辺りに乗り込んで到着は翌日の朝8時前後と告げられたのでおよそ半日の空の旅だ

 

受験者は次の試験に向けて体力・気力を回復させる為にも早々に眠りにつく者が大半であった

 

「ゴン!レツ!飛行船の中探検に行こうぜ!」

 

「うん!待ってよキルア!」

 

「・・・しょうがないなぁ。目を離すのもアレだし行ってくるよ」

 

「ええ、あまり遅くならないようにね」

 

だがそれも体力も気力も大して消耗してない規格外(こども)には当てはまらず3人は駆け出していった

 

一通り船内を見て回りキルアの家庭事情(一家全員暗殺者で彼に家を継ぐ気はないのに周囲が継がせる気満々な事)などを聞いて程無く雑魚寝部屋に戻ろうとした辺りでネテロ会長が現れ、彼らにゲームを提案する。なんとそのゲームで勝てばその時点でハンター試験を合格とするという餌まで付けてだ

 

ゲームの内容は3次試験の会場に到着するまでにネテロが持つボール(バレーボール)を奪う事

 

それを聞いたゴンとキルアは『そんな簡単な事なの?』と首を捻るがレツだけは違った

 

(いやいやいや!そんなの無理じゃん!この人って元世界最強で下手したら今でも世界最強って前にビアーが言ってたよ!身に『纏』うオーラとか『堅』特化のビアー並にブレが無いし、極まり過ぎでしょこのお爺さん!・・・そりゃこの人からボールを取れたらプロハンター間違いなしだよ)

 

ゴンやキルアと違いネテロの情報を知っていたのに加えて念能力者でもあるレツだけはこの“お遊び”の難易度の高さを漠然とだが感じ取る

 

(まぁでも折角の機会だし良いのかもね。ビアーやポンズ以外だと旅しててもチンピラくらいしか相手に出来なかったし、ネテロ会長も遊びに手は抜かなくても手加減はするだろうから全く可能性がゼロって話でも無いしね)

 

そんな訳で全員参加で広めの運動の出来る部屋に移動して最初は一人ずつという事でキルアが挑戦し、残像を見せる歩法の肢曲(しきょく)で撹乱したり非念能力者の子供としては最高峰の素早さと体術でボールを奪いに行くが届かず、最後にネテロの動きを先に封じようと彼の足に蹴りを見舞うが逆にネテロの硬すぎる足に自分がダメージを受けてゴンと交代となった

 

ゴンも持ち前の体のバネを用いた野生を彷彿とさせる曲芸染みた動きでボールを狙うが結局掠りもせずにキルアに「そろそろレツと代わってやれよ」と言われ渋々交代。続くレツも大体似たような展開となった

 

※ ゴンもレツも重しは外してそれを見たキルアは1次試験の競争で奢る件はもう良いと不貞腐れてしまった

 

そのまま再度キルアからレツまで計3回ほど廻った辺りでネテロから『3人纏めて掛かってきなさい』と言われて彼らもこのままでは(らち)が明かないと3人による猛攻を仕掛けるがネテロはその全てを軽々と躱してしまう

 

(ホッホッホ!三人とも子供としては上出来な力にスピード。体術に関しては99番(キルア)が他の二人より2枚は上手(うわて)じゃがゾルディックなら納得じゃの。247番(レツ)は 『纏』の状態でも分かる濃密なオーラ・・・勘じゃがオーラ量だけなら十二支んの中でも上位に位置するじゃろう。確か去年見たあのオーラの怪物(ビアー)の弟子でついでに義妹じゃったか?師が師なら弟子も弟子じゃ)

 

ネテロは飛び掛かって来たレツとキルアの間をするりと抜けてその後頭部にボールを投げてドリブルする事で二人を転ばせるとネテロが視線を外した一瞬の内に天井を足場にして死角である上空から急降下してきたゴンもヒョイと躱す

 

(そしてこの405番(ゴン)はジンの息子だの。成程、体術では99番に劣り、当然念を知っとる訳でも無い・・・が、しかし長時間翻弄して(おちょくって)おるのにブレない好奇心と集中力。高いモチベーションを維持したまま狩りに邁進できるのはハンターとして得難い資質じゃ。他にも将来性の有る新人(ルーキー)が居るようじゃし、まったく今年は豊作豊作♪)

 

その後暫くしてゴンがブーツを半ば脱ぐ事で蹴りの間合いを伸ばす奇策と3人の連携プレーで一度はボールを奪える直前までいく

 

ゴンとキルアがボールに向かい、レツはネテロの進行方向を塞ぐように立ち塞がるがネテロの大人げない本気の踏み込みからの超加速ジグザグ走法でボールを奪い返され、振り出しに戻るのだった

 

「まっ、努力賞といったところじゃな」

 

それを聞いたキルアは苛立ちを隠さずに舌打ちをする

 

「っち!行こうぜゴン、レツ。この爺さん始まってから右手と左足使ってねぇんだ。今のままじゃ何時間どころか何日粘ってもボールなんか盗れっこねぇよ」

 

「えっ!?そうだったの!う~ん。俺はもう少し遊んでいくよ。時間はまだあるし、ネテロさんに右手くらいは使わせてみせるよ」

 

「・・・あっそ、好きにすれば?レツは如何するんだ?」

 

「・・・そうだね。ボクも明日の試験に備えてそろそろ寝ておきたいけどその前に一度だけ試しておきたいのが有るんだ。ゴン、ちょっと離れててくれる?」

 

「え?うん、分かった」

 

これを最後としたレツとネテロが正面から向かい合う

 

「ほぅ、ここへ来てお主一人で大丈夫かの?」

 

「ボクも如何しようか迷ってたんですけど、ネテロさん、さっきボールを奪う時に若干『流』れてましたよね?」

 

※ 『練』こそ使ってないが『纏』のオーラが足に集中していた

 

「う、うむ」

 

(ちと大人気(おとなげ)無かったかの。しかし本当にゲームで合格させると審査委員会とかが特に五月蠅いからのぉ。パリストン()とか嬉々として弄りに来るわい)

 

勿論ネテロは約束を反故にする気は無いので条件を達成出来たらプロハンターにはなれるし手加減もする。しかし暇つぶしのゲームで面倒くさい事後処理なんかもしたくないと云う中々のクソジジイっぷりである

 

「この技。試す前に(ビアー)と別れちゃったからハンター試験が終わるまでは使えないかなって思ってたんですけど、ネテロさんなら大丈夫ですよね」

 

レツがそう言って腰に下げてあるピー助のキーホルダーに手を添えると莫大なオーラが(ほとばし)った

 

「ひょっ!?(いやいやいやいや!どんなオーラじゃ!つーかこんなのをビアーの嬢ちゃんに試そうとしとったの?儂が言うのもなんじゃが頭のネジぶっ飛んどるのォ)」

 

―――限定・【人形受胎(ドールキャッチャー)】第二演目、『二人羽織(ににんばおり)』(ボソッ

 

小さく呟いたレツが前傾姿勢となり伏せ気味となった顔を上げると血のように赤く染まった縦に開いたドラゴンの眼光を覗かせる

 

全ての闘志と殺気はネテロに向けられているが、それでも感じる威圧感にゴンは無意識に口の端を吊り上げ、元々部屋を出ようと扉の近くに居たキルアはそれ以上後ろに下がる事はしなかったものの血が(にじ)むんじゃないかと云う程に拳を強く握って腰を落とした

 

秒にも満たない間にそれぞれがそれぞれの反応を示す中、レツがネテロに向かって右手を突き出しつつ一直線に距離を詰める。その手はナニカを掴むように五指を開いた状態でネテロが左手に持つボール・・・よりも少しだけ横に逸れた場所に向かって行った

 

「ぁあああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」

 

(獣染みた咆哮(ほうこう)。理性がトンどる訳じゃないようじゃが完全な制御も出来とらん。なにせコイツ(たま)(たま)でも儂の心臓/命(タマ)を獲りに来とる!)

 

ハートキャッチ(物理)した後ならばボールキャッチ程度は赤子の手をひねるよりも容易い難易度になる事だろう(当たり前)

 

(流石に真面に迎撃したら痛いし、百式観音は巨大過ぎてこのような狭い室内で使うのには向いとらん。ここは・・・逃げちゃえ!)

 

ネテロはレツの手が届く直前で全力で上体を逸らす事でその攻撃を避け、自身の直ぐ上を通過するレツとネテロの視線が一瞬交差する

 

「あっ!」

 

「あん?」

 

”ドガアアアアアアンッ!!”

 

アイスブルーの瞳に戻っていたレツの少し焦ったような声と共にネテロの後ろに在った壁が突き破られた

 

「むお!?いかんっ!!」

 

「レツ!」

 

「おい、なにやってんだよ!」

 

各々がレツが通り抜けた穴(瞬間的に突き抜けたので大して大きくはない)や隣の小窓などに駆け寄って眼下に広がる夜の暗闇に目を向けるがそこにレツの姿は確認出来なかった

 

上空数千メートルから放り出されたら死ぬしかないとしても今すぐに飛行船を地上に下ろして捜索するべきだとゴンがネテロに詰め寄ろうとしたところで部屋の扉が開かれた

 

「いや~、ビアーだったら嬉々として受け止めたりするところだったから大丈夫って勝手に思い込んじゃってたよ―――取り敢えずネテロさん。空気が漏れてるその穴どうすれば良いかな?」

 

「ぬっ、そうじゃな。幸い此処はトレーニングルームじゃからの―――そっちの扉の部屋が器具とか置いてあるからマットでも引っ張り出して穴を塞ぐように立てかけて置けば暫く持つじゃろう・・・それにしてもよう戻ってこれたの」

 

「え、あはは、少し気流で船の後ろに流されたけど落ちきる前になんとか船体にしがみ付けたんだよ。そこから急いで帰って来たんだ」

 

※ 実際はガチで堕ちたところでピー助を一瞬顕現してそれを足場に船に戻った

 

「そっかぁ、レツが無事でホント良かったよ」

 

「ったく、冷や冷やさせんなよな・・・で、あの爺さんに突っ込んでいったのは何だったんだ?」

 

「ええっと、アレはちょっと自分のリミッターを外す技だよ。ほら、聞いた事無い?火事場の馬鹿力とかあんな感じ・・・お蔭で今も結構全身痛いからボクはもう寝るよ」

 

「へー!凄い技なんだね。よ~し!俺も負けてられないぞ~!!」

 

「―――アレ(・・)を避けた爺さんにまだ挑むのかよ。3次試験で落ちても知らないぜ?もういい、行こうぜレツ。試したい事は試せたんだろ?」

 

「う、うん。でももうちょっとゆっくり歩いて貰っても良い?全身が筋肉痛みたいで実は歩くのもヤバイかも」

 

「・・・前言撤回。お前もそうとうアホだな」

 

「だ、大丈夫。(肉体活性(『練』)疲労回復(『絶』)を用いれば)朝までにはある程度回復するから―――それじゃゴンも程々にね」

 

「うん!おやすみ、二人とも!」

 

レツとキルアが退室した後、ゴンは諦めずに挑戦し続けて空が白んできた辺りでネテロの不意を突いて右手と左足を使わせる事に成功してその場で寝落ちした

 

 

 

 

受験者42名を乗せた飛行船は異様に切り立った山の上に建てられた円柱状の建物の屋上に着陸し、到着のアナウンスを聞いた受験者達は全員外へと出て『此処はどんな場所だ』と周囲を

見渡している

 

そんな彼らに最後に飛行船から降りたビーンズより説明がなされる

 

「皆様。ここ、トリックタワー屋上が3次試験の開始位置となります。ルールは簡単。72時間以内に生きて地上まで下りて来る事!―――では、皆様のご健闘をお祈りしております」

 

ビーンズはそれだけ告げて飛行船に乗り込むと、飛行船は空の彼方へと飛んで行った

 

一見すると下に降りる為の階段や梯子(はしご)の類は見当たらず、トリックタワーの外壁から下を覗き込めば地上(山頂)は遥か下だ。万が一落下すれば命は無いだろう

 

だがそこは様々な一流が集まるハンター試験。僅かな取っ掛かりだけを頼りに命綱無しで崖を上り下りするロッククライマーがタワーの外壁をスルスルと降りていく

 

しかしタワーを1割も下りない内にタワー周辺の森がざわめき、そこから飛び出した人面鳥とも言える巨大な怪鳥がその受験者を丸のみにしてしまった

 

「・・・どうやら、正規ルートは別にあるようだな」

 

「トリックタワーって言うくらいだもの、きっと愉快な仕掛けが盛りだくさんなんでしょうね」

 

「・・・ある意味で今のも仕掛けの一つか?悪趣味が過ぎるぜ」

 

その様子を見届けた年長組の感想もそこそこにレツたちは全員で下に降りる為の道を探す

 

「ねぇポンズ。ボク達なら飛び降りる事も出来るんじゃないの?」

 

「・・・止めておいた方が無難ね。地上に降りてもさっきの怪鳥以外にもタワー周辺の人間を襲うような怪物が沢山居る可能性は十分有るわ。ゴールはタワー内の一階でしょうけど、この建物の分厚い壁をモンスターに襲われながら破壊するのは骨だわ。慌てて下手に大穴でも開けたら怪物も一緒に引き連れちゃうわよ」

 

「そっかぁ・・・ビアーなら如何してたかな?」

 

「飛び降り一択でしょう。あの娘ならモンスターに丸かじりされてもノーダメージなんだから『円』で扉を探ってノックして「入れて下さ~い」とでも言うんじゃない?」

 

「モンスターに(かじ)られながらね。それか(よだれ)とかが汚いとかって威圧で全部気絶させるとかかな?」

 

床を叩いたり変な出っ張りやスイッチなどが無いかとそれぞれが探っている中で一番先に声を上げたのはゴンであった

 

「皆!ちょっとこっち来て!!」

 

ゴンの話では他の受験者が一度限りの回転式の床に降りていくのを見たとの事だ

 

それを聞いた彼らが示されたのと同じ長方形の石の床を調べていくと程無く密集した箇所に5つの仕掛け扉を見つけ出す事が出来た

 

「その扉はルーキー(あなた達)で使いなさいな。ここで経験者(わたし)がガッツクのも何だか格好悪いしね―――それじゃ、ゴールで会いましょう」

 

ポンズはそう言い残すと別の扉を探しに去って行った

 

「なんだよ水くせぇな。仲間にルーキーも経験者も無ぇだろうによ」

 

「だが助かるのも事実だ。制限時間が設けてある以上は時間のロスは可能な限り避けたいからな。礼を言うなら地上で言うとしよう」

 

(ポンズの場合はアリスタや念で持ち運んでる沢山の小道具を使うならこういう時はソロの方が都合が良いんだよね)

 

結局ゴンたちも素直に5つの扉から1つずつ選んで先に進む事にした

 

そうして彼らは一時の別れとなる

 

「この扉の内幾つかは罠かも知れない。そうでなくとも過酷な試験が待っているだろう。だが、それぞれ乗り越えて再び地上で会おう!」

 

クラピカの言葉に全員が自信に満ちた笑みで返し、同時に仕掛け扉の上に飛び乗ってトリックタワーの屋上から姿を消した

 

意を決して一歩を踏み出した彼らの再会は2秒後には叶う事となる

 

彼らが辿り着いたのは一つのまとまった部屋で唯一有る扉の前には〇と×のボタンが付いた人数分の腕時計と[多数決の道]と書かれたプレートがあった

 

誰もが短すぎた別れに苦笑しながらも腕時計を装着し、第一の質問である『扉を開けるか否か』を全員一致で〇を押す

 

「ったく、こんなもん〇以外を押す訳ねぇだろうがよ」

 

「まぁまぁ。最初の扉だしチュートリアル的な感じだったんじゃないの?」

 

だがレツの楽観的な言葉も虚しくこの先のルートで如何でもいいところにまでウザイ程に〇×の選択を迫られる事を彼らはまだ知らない

 

暫く右に行くか左に行くかなどの多数決を熟した彼らの前に底の見えない大きな穴とその中央に位置する四角いリングのようなものがある場所に辿り着いた

 

どうすれば先に進めるのかと彼らが部屋の中を見渡しているとこの3次試験の試験官でリッポーと名乗った男の説明がスピーカーで響き渡る

 

≪諸君らがこれより先に進む為にはこの刑務所に収監されている囚人達と戦ってもらう必要が有る≫

 

彼らの居る反対側の道から手錠を付けた5人の囚人たちが姿を見せる

 

≪戦えるのは一人につき一回。多数決である故に3勝すれば先に進める。引き返すのは無しだ。ルールは自由で舞台に上がった後で彼らが告げる。勿論ふざけたルールは却下するから安心したまえ。それと彼らは雇われの試練官を請け負う代わりに1時間につき1年、刑期が短縮されるようになっている。精々足を掬われないように気を付けることだね≫

 

「―――成程。先を急ぎたい我々とは逆に向こうは時間稼ぎも有効な手となる訳だ」

 

「それにふざけたルールが無かろうと相手は犯罪者。ルールの穴を突くような戦法をこそ事前に練ってあると考えるべきだと思うよ」

 

「よし!ならここは俺が―――」

 

「いや、私が行こう。相手の出方が分からない以上、初戦はリスクが大きい。力押しではどうにもならないような勝負を仕掛けられたら如何する?私ならば冷静さも分析能力も格闘能力も少なくともキミよりは上のつもりだ」

 

レオリオが先陣を切ろうとしたところをクラピカが論理的に制すると総合力の高い自分が出るべきだと語る

 

「うわっ、酷過ぎ・・・」

 

「・・・クラピカ。ぜってーアイツ友達居ねぇぜ」

 

「なに言ってるの?クラピカと俺たちはもう友達でしょ?」

 

若干レオリオとクラピカの友情に亀裂が入りかけたが結局レツとゴンが間に入って(なだ)めた事でギリギリそれは回避され、本人の希望通りにクラピカが一番手となった

 

なお、原作で幻影旅団(クモ)の名を騙った事でクラピカに半殺しにされた囚人試練官の一人(マジタニ)はここが運命の分岐点だったらしい

 

相手方の一番手は筋骨隆々で如何にも軍人か傭兵といった具合のスキンヘッドの男だった。その男とクラピカが部屋の中央に行く時だけ一本の橋が伸び、二人が中央のリングで対峙する

 

そしてクラピカには試合のルールとして片方の負けの宣言か死亡で決着とするデスマッチを提案され、クラピカもそれに同意した

 

(ふっ、軍隊格闘技を叩き込まれた俺は人体を如何に素早く的確に破壊出来るかを心得ている。初手で負けの宣言が出来ぬように喉や、血文字が書けぬように指も潰した後は残り時間たっぷりと甚振ってやろう)

 

デスマッチという方式は片方が明確に格上か有利を獲る事が出来たならば幾らでも引き延ばしが可能なルールだ

 

(ハンター試験を2次試験まで突破した奴らだ。純粋に腕比べを楽しむ場合も視野に入れていたが、5人中4人が子供。しかもその内3人は10歳から12歳といったところか?俺が収監されている間にハンター試験の敷居も随分と低くなったようだな)

 

勿論そんな事は無く、単に彼らが例外なだけなのだが彼はそんな勘違いのツケを戦闘開始の直後から体験する事となる

 

彼の作戦で先ずは速攻を掛けるつもりであったので格上のクラピカ相手では必然的に速攻でカウンターの裏拳を顔面で受け止めるハメとなってしまったのだ

 

歯が2~3本折れてバウンドしながら地面に転がった囚人試練官(ベンドット)にクラピカが静かに語りかける

 

「―――忠告しておこう。貴様の刑期があとどの程度残っているのかは知らないが、他者を甚振る事をまるで(いと)わないお前のような何の反省もしていない輩を再び世に放つのは賞金首(ブラックリスト)ハンターを志望する身としては見過ごせない・・・両腕の関節を砕いて筋を絶ち、リハビリをしても一般人以下の動きしか出来ないようにすれば犯罪を起こそうなどという気力も削がれるだろう。それが嫌なら真っ当に下された罰を享受する事だ」

 

「っぐ!クソッ!ま、まいった。俺の敗けだ」

 

ベンドットは仮に72年刑期が短縮されても120年以上の刑期が残っている。そんな彼にとって今回の試験で出る恩赦はそれ程重要な意味を持たない。ハンター試験で毎回トリックタワーの囚人たちが使われるなどと云う事は無い以上は72年という破格の恩赦の後で幾つか小さな恩赦を重ねて漸くヨボヨボの足で人生の最後にシャバの空気を一吸い出来るかといったところだ。再起不能系の怪我は全く望むところではない

 

(直立不動のまま飛び掛かった俺を軽く殴り飛ばした。あの細身でなんて腕力してやがる!アレを相手に粘ろうとしても本当に今言った事を軽く実践されかねない。退屈しのぎになればと思ったが、これ以上は割に合わない。残念だがここまでだ)

 

戦場を渡り歩いた経験から戦いにおける損得の計算が早く、意固地になった者から死んでいくと解っている彼は早々にギブアップを宣言した

 

続く第二試合ではゴンが出場し、爆弾魔の雇われ試練官の『吹き抜けで風が強い中、どちらが用意された蝋燭(ろうそく)の火を消さずにいられるか』という勝負でゴンは持っていた蝋燭に仕組まれた火薬で勢いよく火が燃えるのを利用して瞬時に相手に近づき火を直接吹き消す事で勝利した

 

もう後がないと思った囚人試練官たちは時間稼ぎには適さないが確実で残忍な1勝で受験者達の気力を削ぐ方針に切り替える

 

一番奥に座っていた巨体な男がゆったりとした動作で前に出た

 

「よし、じゃあ次は俺な。2番目にどっちが出るかでゴンとジャンケンしたんだ。3番目は俺で良いだろ?」

 

「勝手に決めんな!そろそろ俺も一丁暴れてやろうと思ってたんだからよ」

 

「ボクはキルアで構わないよ。その代わり4番手は貰うからね。レオリオには大将戦をお願いしようかな」

 

「俺が『大将』・・・よし!お前ら安心して負けて良いぞ!俺様が大将である以上、既に2勝した俺たちの勝利は揺るがねぇっ!!」

 

((・・・ちょろ))

 

あはは・・

 

やはり私が初戦で正解だったな

 

だが次の対戦相手が手錠を外され、顔を隠していたフードを取り払うとレオリオの表情が一変する

 

出てきたのはザバン市において史上最悪の連続殺人犯とされた懲役968年と彼らの中で2番目に懲役の長いベンドットの199年を優に超える“解体(バラし)屋ジョネス”だ

 

「あんなイカれ野郎と戦う必要はねぇ。ルールは『まいった』無しのデスマッチに決まってる!ここは戦う前に棄権して―――」

 

「ふ~ん」

 

だがキルアは気のない返事でリングへの歩を進める

 

「キルア!聴いてたのか!?そいつと戦うって事は!」

 

「聞いてたよ。何を心配してるのかは予想が付くけど俺にはカンケー無いね。まぁ見てなよ」

 

生死だけが勝敗を決めるデスマッチで勝利すると云う事はこちらが相手を死に至らしめる必要がある。子供が・・・いや、大人が背負うにも本来大きすぎる重荷となる。なにより負けてしまった時は人間だった事さえ認識出来ない肉塊になるまで解体(バラ)されてしまうのだから

 

しかしそんな杞憂は案の定デスマッチとなった彼らの試合開始から1秒で消え去った

 

キルアが一瞬でジョネスの横を通り過ぎ、彼が振り返るとその手には脈打つジョネスの心臓が握られていたからだ

 

「な・・・か、返・・せ・・」

 

「良いよ~。ジャンケンで勝ったらね―――はい、ジャンケンポン!」

 

理解出来ないまま勝てば返して貰えるとの希望(エサ)に反射で伸ばしていた手をチョキに変えたジョネスはキルアのパーに勝利した

 

「あ~!また負けた~!俺ってジャンケン才能無いのかな?まぁいいや、ほらよ!」

 

放られた心臓はジョネスの両手になんとか収まり、その先(・・・)を考える余裕が出来てしまったジョネスが最後に「ぁう」と小さく絶望の声を上げて絶命した

 

こうして3勝0敗のストレート勝ちによって彼らは無事、先に進んだのだった

 

 

「暗殺一家のエリートぉおおお!!?」

 

先の道に進みながらもキルアが躊躇(ちゅうちょ)なく、それも尋常ではない手段で人を殺した事を問い詰めたレオリオの口から驚愕の声が漏れる

 

クラピカも声は出さないものの驚きの表情は隠さなかった

 

「そっ、言ってなかったけど、俺の名前はキルア・『ゾルディック』。そこそこ有名だと思うんだけど、知ってる?」

 

「そりゃお前・・・知ってるなんてもんじゃねぇぞ。伝説じゃねぇか」

 

「ああ、一度命を狙われたが最後。決して逃れる事は出来ないとの話だったな・・・最近までは」

 

「ん?最近?」

 

「む?知らなかったのか?ああそうか。キルアは家出したのだと言っていたな。少し前にゾルディック家の暗殺者がとあるプロハンターに撃退されたとのニュースが有ったんだ」

 

「へ~!誰だろうな?次男(ミルキ)かな?次に会う機会が有ったら全力で揶揄(からか)ってやんなきゃ♪」

 

「おう、そのニュースなら俺も知ってるぜ。てか当事者がここに居るんだから訊けば良いだろう・・・で、実際どんな感じだったんだ?レツ?」

 

「はっ?レツがって如何いう意味だよ?」

 

「ああもう!レオリオってばなんで言っちゃうのさ!身内が友達の身内をボコボコにしたとか知られるの気まずかったから黙ってたのに!!」

 

「お、おう、そりゃすまん」

 

「良いよ良いよ。どうせ俺もハンターになったら家族全員牢屋にぶち込んでやるってのも面白そうだと思ってた訳だしさ―――非道な行いを止められない家族を止める為に息子が悲壮な覚悟の下で家族と刃を向け合う・・・泣ける話じゃね?」

 

「そんなニヨニヨ笑いながらで無ければそうも思ったかもね・・・ボクやポンズと一緒に旅してたビアーが前にイルミって人を倒したんだよ。長い黒髪で針を武器にしてた」

 

「え゛!?マジ!?イルミ兄倒したの?そのビアーって奴何者だよ。嘘じゃねぇだろうな?依頼主が殺されて依頼が直前で取り消されたとかさ」

 

「ううん。ビアーがイルミって人を倒した後で依頼主に依頼を取り下げさせた形だったよ。その後殺したり牢屋に送ったりするのは禍根を残すからってビアーがゾルディック家に梱包して送り返してたから・・・ほら、これがその時撮った写真。蓋を閉める前と閉めた後でリボンも巻いた状態の2枚が有るよ」

 

「ぶっはーっ!!?イルミ兄ボコボコにされてんじゃん!しかもピ、ピ、ピンクのリボンでラッピングして実家に送るとか、や、ヤベェ腹が捩じ切れる!」

 

その後、暫くして笑いの波から脱したキルアが詳しい話を聞き、ビアーがゴンやキルア達の一つだけ年上と知ったキルアは流石に仰天していた

 

「一つ違いなんてほぼタメじゃん!それでイルミ兄倒したのかよ。今までプロハンターとか気にして無かったけど、そのビアーって奴には興味出て来たぜ」

 

ビアーの話もそこそこに、そこから先はトリックタワーの名に恥じない様々な罠を多数決と身体能力をもってして突破していき、キルア以外の身体能力が向上しているのに加えて原作で足を引っ張るトンパがレツに代わっている事で屋上でのスタートから凡そ8時間弱で最後の扉まで辿り着いた

 

〇を押せば5人全員で先に進めるが攻略に45時間は掛かる道

 

×を押せば2人を壁の手錠に繋ぐと残り3人が先に進め、ゴールまで3分で行ける道

 

ここまでの道のりで特にタイムロスもしていなかった彼らは全員一致で〇押して扉を開いた

 

「あ~あ、すぐ隣にゴールが在るようなもんなのにさ~。てかさっきの扉が最後の多数決って試験に向けた突貫工事が間に合ってない感アリアリじゃん。な~にが『多数決の道』だよ」

 

「ならこの壁壊して隣の道に出ちゃう?さっきの部屋に色々な武器が置いてあったからハンマー代わりにも使えると思うし、この5人なら1時間掛からないんじゃない?」

 

「お!それ採用!この先もどうせ単純な罠くらいしか残ってないし、とっととゴールしちまおうぜ。45時間もダラダラ進むのも怠ぃ~しよ」

 

「・・・そうだな。下手に進んで罠で怪我を負う可能性も考えたらここで壁抜きをする方が遥かに効率的でローリスクだ。私もその意見に賛成だ」

 

「俺も良いぜ。とっととゴールしちまおう。次の試験が3次試験の後で直ぐに始まるかも知れねぇとなれば余裕は幾ら有っても良いもんだ」

 

「俺も賛成!じゃ、また5人一致の多数決だね」

 

彼らはそれから30分もしない内にゴールまで3分で行ける道への穴を開け(レツは『周』は自重した)滑り台となっているそこを下り、ゴールまで辿り着いた

 

≪受験番号99番、247番、403番、404番、405番。3次試験通過第5~第9号。所要時間8時間59分!≫

 

「やった~!着いた~!!」

 

ゴンが万歳して全身で気持ちを顕わにする中、それを見たポンズが近づいて行く

 

「待ってたわよ。まさか5人一緒の道だったなんてね」

 

「あ、ポンズ!ポンズももうクリアしてたんだ」

 

「ええ、あなた達の少し前にね。合格第4号が私よ。他のメンバーは見ての通り44番(ヒソカ)191番(ボドロ)295番(ハンゾー)ね」

 

去年までの彼女ならば待ち戦法が基本で自分からどんどん先に進む攻略系の試験はもっと慎重にクリアしなくてはいけなかったが、今のポンズが単独で念もアリスタも有りで動いたならばサクサク攻略できるのも当然である

 

なお、非念能力者でありながらポンズよりも早かった二人だが、忍者であるハンゾーは元々罠の類を突破するスペシャリストでこの試験自体との相性が良かったからで、ボドロも格闘家のスキルで突破出来るものが多い道を選べたクジ運の良さから来るものであった

 

彼らが和気藹々(わきあいあい)とお互いの試験の内容を語ろうとする中で薄く笑みを(たた)えた変態ピエロ(ヒソカ)が近づいていく

 

 

 

 

 

 

「やぁ♡楽しそうだね♣ちょっとそこの247番の子に聞きたい事が有るんだけど、良いかな?―――オモカゲって言ったら心当たりが有ったりしないかい?」

 

突然出された兄の名前にレツの瞳が揺れ動くのだった

 




人形受胎(ドールキャッチャー)】『二人羽織(ににんばおり)

・レツが語ったように火事場の馬鹿力では当然なく、人形に溜め込んだオーラを自身に上乗せする事で自分の限界値を超えたオーラを発する事が出来る

・普通のドールキャッチャーが人形の『発』を扱えるようにするものなら二人羽織は『発』+『オーラ』

・『目』有りの人形を憑依させる場合レツの瞳が変化する(ただの副作用)

限定と言っていたようにピー助の各種ドラゴンの能力を使わずに強化系の部分だけを『発』している分負担を軽減させているが、それでも一瞬で自身にもダメージが入る。また普通ならば問題無いが『目』だけでもドラゴンとなっているのも負担の増加に繋がっている(その代わりよく見える)
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