やって来たヒソカの前に年上且つ男であるレオリオとクラピカが一歩前に出てレツを庇う形で立ち塞がる。明らかにヤバイ雰囲気の男がうすら笑いを浮かべながら学園で言えば初等部くらいの女の子に近づく様は如何見ても事案であった
「なんだぁテメェ?サーカスの関係者かあぁん?生憎この姫さんはこっちが先にマネジメント契約結ばせてもらってんだ。とっとと失せやがれオゥこらああんっ!!」
純度100%の
「いいか?
「色物!?色物って言った!!?」
一般人相手なら『話が通じない暴力系男』として退散させる事も出来たであろうが、例えヒソカでなくともハンター試験を3次試験まで突破した者たちでその程度の脅しに物怖じする者など居なかっただろう
「ん~♦キミも中々美味しそうだし、新しい扉を開き掛けてもいるようだねぇ♥もっと美味しく熟れた時にキミの事も食べちゃいたいね♠」
「・・・レオリオ。人の趣味にとやかく言うのもあれだが、その道だけは止めておけ」
「俺がそんな趣味の持ち主に見えるかァアアア!!?俺が好きなのは普通にバインでボインでボキュンなお姉さんだぜ!」
「え?マジ!?レオリオって“ボンッ、キュッ、ボン”じゃなくて“ボン、ボン、ボン”なドラム缶体型が良いの?うっわぁ、それはそれでとってもイイ趣味してんな。取り敢えず絶対にウマが合わないのはよく分かったぜ。家の
「よ~しお前ら死にてぇんだな?(頭が)助かる見込みのない患者を眠らせてやるのも場合によっちゃ医者の仕事だ。
「待って待って、話が色々ズレてるから!・・・それとオモカゲですか?残念だけど知らないよ」
流石にこの場で旅団員でもあったオモカゲの話題を出されるのも拙いと感じたレツは
「クックック♣隠してもダメだよ。キミが身に『纏』う
レツの念能力の根底にはオモカゲから譲り受けた『神の人形師』の能力とオーラが在る
レツ自身の修行と『発』により多少変質はしているが、それでも現時点ではオモカゲの陰が強く残っている状態だ
オモカゲを面白い
「
ヒソカの全身から徐々に殺気が立ち昇り、全員が一気に後ろに跳んで距離をとった
(な~んてね♡あのオーラと殺気を感じて
「貴方は―――」
「ヒソカで良いよ♡」
「・・・ヒソカは兄さんとはどんな関係なのさ?」
「へぇ!『兄さん』・・・『兄さん』ね。彼にキミみたいな真面そうな妹が居たなんて驚きだね♣う~ん。ボクと彼の関係か~・・・とあるサークルの後輩とでも言えば良いのかな?尤もボクと彼は入れ替わりで入ったから一緒に活動してた訳じゃないけどね♠」
「
「そ♥
「残念だけど兄さんは半年以上前に死んだし、『サークル』については何も知らないよ」
「あらら残念♣彼死んじゃってたのか♦折角面白そうなオモチャだったからあの時は深追いはしなかったのに・・・でも成程成程。彼が『死んで』キミが彼の『財産』を受け継いだってところかな?フフフ♪
「―――分かったよ。取り敢えずあっちで話そうか」
この場にクラピカが居る上でこの先ヒソカがどの程度幻影旅団の話題を切り出すのか未知数な以上は危険を
3次試験のゴールであるこの場所は特に遮蔽物が在る訳でも無いがかなり広い空間である為、まだ合格者の少ない現在であれば内緒話の一つや二つは余裕なのだ
因みにトイレへの扉くらいは在るが食料の配給は無い。トイレの個室で美少女と変態男が二人っきりは迷うことなく却下である
「待て待てレツ!こんな怪しい奴と二人っきりとかホントに大丈夫なのかよ!?」
「その通りだ。別にレツからヒソカに対して話したい事が有る訳でも無いのだろう?聞かれたくない内容だとしても我々から離れるのは万一を考えれば賛成しかねる。なに、この中に仲間の秘密を知ったところで他者に漏らすような輩は居ないさ・・・尤も急に割り込んできた無粋な輩が今すぐお帰り頂くのであればそれが一番なのだがな」
「そうだねぇ♣キミ達は仲が良いみたいだし
・・・なんでボクがそんな事を知っていてマラソンで話していた
ヒソカは強敵と特に命を懸けて闘うのを生き甲斐の一つとしている戦闘狂だ
そんな彼が今狙っている相手の一人が幻影旅団の団長クロロ・ルシルフルである。しかし神出鬼没で常に他の団員2名以上が傍に控えているその男と
そんな彼はクラピカの素質と幻影旅団への敵意を聞いて“彼ならばハンター試験後から念を習得しても十分旅団の関心を引く力を付ける事も可能”だと察したのだ
『そんな無茶な』と思う者が大半で原作でも同じ時期に修行を始めたゴンやキルアと違いクラピカが旅団相手に戦えたのは重すぎる旅団特効な制約と誓約のお蔭と考える者も多いだろう
勿論それは間違いではないが、正解でも無い
彼らが念の師匠と出会って教えを受けた時期はほぼ同時期だとしてもその直後に原作のゴンは
加えて言えばクラピカはハンター試験終了から約半年後に宿敵である幻影旅団と戦争をする事を視野に入れて一切妥協の無い鍛錬を積んだはず
9月の時点で基礎力だけでも2ヵ月どころか3~4ヵ月の差が開いていても可笑しくは無いのだ
「・・・レツ、キミの死んだ兄とやらは私の
「・・・うん。兄さん・・・オモカゲは元幻影旅団だよ。クルタ族の虐殺にも関わっていたと思う―――ボクが街中で出会ったプロハンターのビアーに兄さんの捕縛をお願いして、追い詰められた兄さんはそのまま自殺しちゃったんだ」
「そう・・・か・・・そして
クラピカがトリックタワーの壁を力一杯殴りつけ、その手からは血が滴り落ちる。その上で俯いた彼の横顔から僅かに覗く瞳は滴る血と同じように朱く染まっていた
「クラピカ、大丈夫?」
「おいクラピカ。一度深呼吸しろ。冷静になれ」
「心配ない、私は冷静だ・・・レツ、今は一つだけ聞かせてくれ。私がこの試験に合格した時にビアーが話すと言っていた
クラピカの問いにレツは彼の瞳を真っ直ぐ見つめて頷く事で返す。それを見たクラピカは壁に叩きつけていたままだった拳から力を抜いて息を吐いた
「分かった。身内とはいえキミは寧ろそんな兄を止める立場だったようだ。それに初対面の時に復讐を掲げる私に何も言わなかったのも理解できる。どころか後で話してくれるつもりだったと云うのもキミの誠実さを現している―――これからも『仲間』として宜しく頼む」
「!―――うん♪」
クラピカから危ない雰囲気が消えた事で事態を見守っていた他の皆も“ホッ”と息を吐いた
「ふぃぃぃぃ、一時はどうなる事やと冷や冷やしたぜ」
「なに呑気な事言ってんのよ。そんな暇が有ったら
「なんで?ヒソカもその幻影旅団の一員なら態々敵対して欲しいなんて可笑しくない?」
「そうとも限らないよ、ゴン。ボクは兄さんしか知らないけど、どう擁護しても頭のネジは2~3本外れてたって言えるから他の旅団メンバーも同じくらいイカレテルなら破滅願望の持ち主が旅団員に居ても変じゃないから・・・普通の物差しで測ろうとしない方が良いと思う」
「あー、俺も思い出して来た。俺の親父が何年か前に旅団の一人を殺ってるんだよね。その時俺たち兄弟に『旅団には手を出すな』って珍しく釘を刺してたから実際相当なんだと思うよ」
「キルア、キミの父親が旅団の暗殺をしたのは具体的にどのくらい前か覚えてるか?」
「あ?あー、確か俺が天空闘技場から戻って来て暫く後だから・・・3年くらい前じゃね?」
「・・・そうか。クルタの集落が襲われたのが5年前だから当時の仇の内2人は既に死んでいるのか・・・いや、旅団が全員で襲ったとも限らないし、手足が何本かもげた程度では直ぐに再生してしまうのだな。やはり最低でも頭を潰す必要が有るな」
彼らもアレコレと考えたが、これ以上はヒソカの情報もビアーたちの情報も出揃うハンター試験合格後にしようとの結論に落ち着いて3次試験の残り時間はそれぞれの思い出話や馬鹿話で時間を潰し、ついに72時間が経過した
▽
3次試験終了のブザーとアナウンスが鳴り響き、最終的に合格者は25となり外への扉が開かれて全員がそれに従い三日ぶりに外の空気を吸う事となった
※ 内1名は瀕死の状態で合格し、直後に死亡
そうして外に出ると今回の3次試験の試験官であるリッポーが待ち構えており、残る試験は4次試験と最終試験のみと告げる
「次の4次試験は私の後ろに見えるあのゼビル島にて行われ、この後直ぐに船が出る。だがその前にこちらの箱からクジを引いてもらおう」
3次試験に合格した順にクジを引いていき、全員が引き終わったところで改めて説明がなされた
1・箱の中にはこの場に居る受験者たちの番号が入っており誰がどの番号を引いたのかはセンサーで箱に記録されている事
2・自分が引いたクジの番号がそれぞれのターゲット番号である事
3・奪うのはナンバープレートで自分自身のプレートは3点、ターゲットのプレートも3点。それ以外を1点とし、試験終了の1週間後に6点分のプレートを集めている事
「説明は以上だ。では、精々頑張りたまえよ諸君」
◇
ゼビル島へと向かう船上では重々しい雰囲気が漂っていた。これから1週間の間狩ったり狩られたりのサバイバルを今この瞬間に顔を突き合わせている者同士で行うのだから順当な反応だと言える
ターゲットがナンバープレートだと知れた時点で受験者の大半は胸に取り付けてあったプレートのナンバーが判らないようにポケットやバッグなど、思い思いの場所に隠している
だがそんな状況でもナンバープレートを隠そうともしない者たちも居る
自分の実力に絶対の自信を持っている者やどこか能天気な者たちだ
「あ~あ、み~んなプレート隠しちまいやんの。お蔭でターゲットが誰か判んねぇよ。ゴンとレツはターゲット分かるか?」
「う、うん。その・・・俺は
「うげっ!?マジ!?お前クジ運悪過ぎ・・・狙うのか?」
「これが正面からの戦いだと勝つのは難しいのは俺にも何となく判るけど、プレートを奪うだけならまだチャンスは有ると思うんだ―――だから、やるよ」
「そっか。まっ、頑張れよ。それでレツは何番だったんだ?」
「ボクは371番だったよ。そういうキルアは何番なのさ?」
「371?知らねぇな。俺も199番を引いたんだけど、誰か分かるか?」
「さっぱり。時間が有ったから3次試験の合格者の顔くらいは覚えてるけど、流石に番号までは見てなかったよ」
「だよな~。まっ、やっぱテキトーに狩るしかねぇか」
子供組がターゲットの話で盛り上がっている中、青年組の方は少々ぎこちない空気となってしまっていた
「くおおおおおおおお!!俺のターゲットがポンズなんてプレート奪える訳ねぇ!俺の武器なんてナイフ一本だぞ!どうしろってんだよ!」
「なんだ情けないぞレオリオ。我々は仲間でもあるがこの試験ではライバルでもあるんだ。こうなる可能性くらいは考えておくべきだろう」
「お前はコイツ等の
レオリオはポンズの力を直接見た訳では無いが、普通のナイフが刺さるとは微塵も思っていなかった・・・尤も今のレオリオの怪力ならポンズの『纏』までならば本気で押し込めばジワジワとなら刺さるだろうが
「私とて一緒に草むしりをした仲だからな。力が強いのはよく知っているさ。まぁこれでターゲットがビアーなどと言われたら困ってしまうが・・・一度だけ手合わせをお願いした時は本気を少しも引き出せないまま一方的にやられてしまったのでな」
「なんにせよ。私の事を狙うと言うならこっちも容赦しないわよ。とはいえ私も多少は気が咎めるし、大人しく他のプレートで3点分集めるのをお勧めするわ」
「くそっ!これが強者の余裕ってやつか!・・・そうだぁ・・・落ち着け俺~・・・俺の目的はなんだ?ハンターとして活動する事じゃなくてライセンスを貰う事だ。ここで意地張っても仕方ないだろう・・・スゥ・・・ハァ・・・ま、まぁ俺も紳士の端くれとして女性に手を上げるなんてのは良くないからな。今回は見逃してやるぜ!」
白い歯を輝かせながらウィンクしつつ親指を立てるレオリオにクラピカとポンズは冷ややかな目を向ける。最後の一言さえ無ければ彼らもそんな目は向けなかっただろう
約2時間の船旅を終えてゼビル島へと辿り着くとクジと同じく3次試験を突破した者たち順に島内に入る権利が有ると説明される。1人が入ってから2分おきに順次島内に足を踏み入れ、1週間のサバイバルが幕を上げた
当然島内では様々な駆け引きや戦闘が行われる
例えば途中新人潰しのトンパ(16番)がルーキーでありターゲットでもあるレオリオを騙す為に他の受験生と手を組んでクジの交換を行い、態と下剤を飲んで弱った風を装い接近すると有無を言わさずにレオリオにボコボコにされた一幕が有ったりした
なお、トンパはクラピカのターゲットであった為に、トンパと手を組んでレオリオの背後で機会を窺っていた猿を相棒としている調教師のソミー(118番)を倒し、そのプレートとトンパのプレートの交換を持ちかけた
「確かにプレートは一枚ずつだが、俺とお前じゃその価値が違う。『はい、そうですか』と頷くのもシャクに障るな」
「分かっている。この試験は1週間以内ならば幾らでも他の受験者から奪われる危険がある。よって我々も同盟を結ばないか?私はレオリオの残り2点分のプレートの確保に協力しよう。私としてもお前と行動を共にしていればプレートを狙われる確率を減らせるし、休息も在る程度確保できる。お互いにメリットが有ると思うが?」
こうしてレオリオとクラピカの同盟が結成された
なお、下剤を飲んだうえで気絶したトンパの未来は明るくは無かったようだ
◇
キルアはターゲットが判らないので適当に島内の様子を見て回っているとイモリ(198番)に尾行されるが当然それに気付いている。だがまだ始まったばかりでプレートも集めようと思えば何時でも集められると自負しているキルアは当初の予定通り島内の散策を優先させた
◇
ポンズは何度かハンター試験を受験していた経験から他の受験生のプレートも把握しており、彼女のターゲットの蛇使いバーボン(103番)を尾行中だ。原作の彼女は洞窟に入ったバーボンに催眠ガスを送り込み、しかしその前に彼が仕掛けた大量の蛇にまで催眠ガスが届かなかった事で追い詰められたが、念を会得しアリスタも頭の上に乗せた彼女の索敵は洞窟の隙間の蛇たちにも気付くことが出来た
≪スピィィィ!≫
「分かってるわ。勿体無いけどこっちの神字を書き込んだ方のガスを改めて噴射してついでに出来るだけ洞窟の奥に投げ込みましょうか。最初のガスで少なくともターゲット自身は無力化出来てるはずだから音を気にする必要も無いしね。アリスタは木々の上の方から周囲の監視をお願い」
≪スピッ!≫
◇
ゴンはターゲットであるヒソカを探す為に血を好む好血蝶を使って探索を開始、ほどなく見つけたヒソカを追跡し、ジッと機会を待つ事にした
◇
最後にレツは槍を持った武人の男、ゴズと対峙している
「子供が相手は気乗りはしないが、油断もしない!だが、プレートを置いて逃げると云うなら追いもせん!如何に?」
「ふ~ん。気乗りしないのにボクを狙うって事は普通にボクがターゲットなんだね。因みにそっちは何番?」
「・・・私は371番だ」
「うわっ、お互いがお互いのターゲットじゃん。なら戦いを避ける選択はボクの中からも消え去ったよ―――じゃあお手柔らかにね」
「・・・・・」
全く引く気のないレツを前にしてゴズは無言で戦意を昂らせた
4次試験開始から早速狩りに動く者。様子見に徹する者
各々が狩る者や狩られる者としてハンターとしての資質と実力が試されるのであった
▽
▽
▽
ハンター試験の4次試験であるゼビル島での受験者同士をターゲットとした1週間のサバイバルも終わりの時を迎えた
島全体に響き渡るアナウンスで1時間以内に6点分のプレートを持ってスタート地点に戻るよう指示が出される
6点分のプレートを集めた猛者たちは隠れていた場所から最後の襲撃を警戒しつつも堂々とした面持ちは崩さずにスタート地点へと歩みを進める
今更ながらに点数が足りないと襲ってくるような輩なら返り討ちにしてやるとの自信が有るからだ
1時間後、スタート地点にはレツ、ポンズ、ゴン、キルア、レオリオ、クラピカ、ヒソカ、ハンゾー、ポックルの計9人が集っていた
原作で4次試験合格者であった格闘家のボドロは途中レオリオとの一対一の決闘を申し込まれて律儀に応じた彼の敗北となった
合格者はこの島に来た時のように船に乗り込むと一番近い飛行船を着艦出来る場所であるトリックタワーの在る島まで舞い戻り、そこから最終試験の会場まで空の旅だ
「皆様、大変お疲れ様でした。最終試験の会場に到着するのは3日後の予定となっております。各自、十分な休息と空の旅をお楽しみ下さい」
ビーンズの言葉にシャワーを浴びに行ったり食堂に突撃したりと思い思いに飛行船の各所に散らばって行った受験者たちだが、そんな中で何時もの
「どうしたゴン?
「あ、クラピカ・・・うん。俺のターゲットってヒソカだったんだけど、一度は隙を突いてプレートは奪えたんだ。でもその事に浮かれていたら俺がターゲットだった人に背後から毒矢で撃たれてあっさりプレート奪われちゃってさ。しかもそのプレートはヒソカが取り返して「貸しだ」なんて言って渡してくるし、突き返そうとしたらぶん殴られちゃって一発殴り返せば受け取るって言うヒソカに結局何も出来なかったんだ。それにビアーにもプロハンターになるには常に背後にも気を付けろって言われてたのにそこを疎かにしちゃったりって・・・あははは、なんか色々情けない事になっちゃって・・・凄く・・・悔しかったんだ・・・」
「ならば修行あるのみだな・・・私もビアーと一度戦って思い知ったよ。幻影旅団を捕らえる為に鍛えていたつもりが、まだまだ井の中の蛙だった事をな。だがゴン。悔しさを忘れないのも大事だがそれで自分を卑下はするなよ。人は幾ら強くなったところで完璧には成れない。だからこそ、支え合う仲間が大切なんだ・・・私もこの試験でゴンにも、他の皆にも沢山助けられている。その事も決して忘れないでくれ」
「―――うん。有難う、クラピカ」
「こちらこそ有難う、ゴン。最終試験は共に合格しよう・・・勿論レオリオやレツ達も一緒にな」
「うん!!」
ゴンとクラピカが友情をより深めている一方でとあるシャワールームではレツとポンズが同じ狭い空間で湯に打たれていた
「ちょっ、ポンズ!髪くらい自分で洗えるって!」
「ダメよ。ハンター試験が始まってからの汚れが結構溜まってるんだから髪の長い私達は誰かに洗って貰えるならそれがベストなんだから・・・まぁどっちもシャワールームの優先権を譲らなかったついでなんだけどね」
「何時もの癖で自然と同じ部屋に入っちゃったもんね。一人一人が泊れる部屋数が有るんだから片方が隣に行けば良かったのにさ」
「・・・それにビアーと一緒だと山の中でも毎日お風呂に入れる水量を確保出来ちゃってたからね。二人揃ってシャワーで頭が一杯だったんだからバカな話よ」
今はポンズがレツの髪の毛を洗って上げているところだ。肌色と白い
「レツ、あんたは4次試験はどうだったのよ?」
「ボク?ボクはボクを狙ってた人が偶々ターゲットだったから比較的楽だったよ。槍使いの人でもしも念(『纏』)無しだったら厳しかったかも・・・ただ何度倒しても中々諦めなかったんだ。でも「またもや幼い少女に負ける事など認められん!」って言ってたんだけど実際はもう諦めちゃってて、終盤は自尊心を取り繕う為だけに形だけ向かってきてたんだよね。だから「オジサンはもう死んでるよ?・・・『目』が」って
「・・・あんたも相当ハッキリ言うわね」
「『目』に関して嘘を言いたくはないからね」
「と云うか「またもや」って絶対去年試験を受けたビアーの事よね・・・ほら、これで終わりよ」
「んっ・・・有難う。次はボクが洗うよ。ほら、座って座って」
「それじゃ、お願いするわね」
久しぶりのゆったりとした休息に鼻歌でも歌いそうなくらいに上機嫌な二人に後でアリスタが揉みくちゃにされたりするのはまた別の話
最後にレオリオとキルアは解散と同時に食堂に突撃してフードファイトを繰り広げていたようだ
そうして各々が十分一息ついた辺りで飛行船のアナウンスでネテロ会長が受験者一人一人に面談をする旨が伝えられた
聞かれた内容はハンターの志望理由、今一番注目している受験者、今一番戦いたくない受験者の三つで番号の若い順から面接室に呼ばれて答えていき、それを基にネテロは最終試験の内容を決定する・・・なお、同行していたサトツ、メンチ、ブハラの試験官たちはソレを見て『マジか』という反応だったという
そうして迎えた三日後
受験者たちはとある街のハンター協会の所有するホテルの広々とした一室に案内されていた
そこでネテロから告げられた最終試験の内容は一対一で戦うトーナメント形式で負けた者が繰り上がっていく順当に行けば不合格者は一人だけとなるシステムだった
「戦い方は自由じゃが勝利の条件は相手に敗けを認めさせる事のみ!それ故相手を死に至らしめてしまった場合はその者が即時失格となり、残りの者が自動的に合格となる訳じゃ!」
“戦う相手の心を折れ”―――ネテロを良く知る者達からは『性格が悪い』と言われるのも納得の勝利条件だ
最初にゴンとハンゾーが闘い、試合の内容は一方的にハンゾーがゴンを数時間
その後でゴンがそんな勝ち方は嫌だと駄々をこねるのをハンゾーが殴り飛ばして気絶させる一幕があったが割合する
その後の試合展開だが大半が仲の良いルーキーと云う事もあってか第一試合のように陰惨な内容にはならなかったが(遠慮なくどつき合ってボロボロとかにはなったが)中にはあっさり負けを認めたりで順調に推移していき、最終的にはポックルの敗北宣言で最終試験の幕は閉じた
そうして最低限の怪我の治療を終えた後で合格者全員がプロハンターとハンターライセンスについての簡単な講習を受け、それぞれの目的に向かってその建物を後にする
そこでゴンは不本意な合格を『真の合格は自分で決めれば良い』と諭してくれたサトツに最後に挨拶をする
「サトツさん!有難う!俺、絶対親父みたいな立派なハンターになって親父に逢いに行くよ!」
「ええ、頑張って下さい・・・ところで『立派なハンター』という事はそれなりに有名な方なのですか?もし宜しければお名前をお聞きしても?」
「うん。親父はジン・フリークスって言うんだけど、サトツさんは何か知ってる?ビアーは世界樹の天辺で出会ったって言ってたんだけど」
「なんと!ゴン君がジンさんの息子とは驚きましたね・・・残念ですが私もそれ以上の事は知りません。ただそうですね・・・ジンという人物が世間からどう認知されているのか、客観的な視点が知りたければ電脳ページを
「ううん。有難う!この後早速調べてみるよ。あっ!レツとはもう話したの?」
「ええ、ビアーくんにも宜しくと伝言を頼んでおきました。直接会えなかったのは残念ではありますがハンター試験中ではさもありなん。私もこの後は修繕を依頼していた遺跡の様子を見に行ったりとで仕事が入っていますからね。やり甲斐のある仕事ですよ―――ゴンくんもしっかりと
サトツの冗談(?)にゴンも苦笑いで返す
「あははは・・・出来るだけ早く見つけてみせるよ。それじゃ、もう行くね。さようなら~!!」
走り去りながらも大きく手を振るゴンにサトツも目尻に喜色を滲ませながら小さく手を振り返す。そんなサトツの背後からメンチが近寄って来た
「あらら、案外普通に送り出すのね。サトツってばあのゴンって子を結構気に入ってたみたいだし、念の師匠を名乗り出たりとかするかもって思いながら見てたんだけど」
「必要ありませんよ。彼は既に良い出会いに良い仲間たちが居ます。私が何か特別な事をせずとも素晴らしい成長を魅せてくれるでしょう・・・ただ気になる点が有るとすれば、もしも彼に念を教えるのが
「なにそれ、どんな心配の仕方よ・・・まぁ良いわ。同じ試験官をやった仲だし、今度機会が有れば美味しい料理を提供してあげる。それじゃね♪」
「オイラもその時はお勧めの料理を紹介するよ。皆でいっぱい食べた方が美味しいしね~」
「ええ、その時を楽しみとさせて頂きます・・・ただ、出来れば豚の丸焼きは遠慮させて下さい。流石に食べきれる気がいたしませんので」
「大丈夫、大丈夫。その時は全部オイラが食べるからさ。また会おうね~!」
こうして受験者たちと同じように試験官たちもまた新たな出会いと友情を確保したのだった・・・なお、
▽
最終試験が行われたホテルの中庭にゴン達が集まって情報交換と今後の方針について話している
「9月1日。ヨークシンシティで待つ・・・か。ヒソカの野郎は確かにそう言ったんだな?」
「ああ、あそこではその日、世界最大のオークションが執り行われる。世界中の名品や珍品が集まるのだから、
「今日が1月の23日だからあと8ヵ月と1週間はあるね」
「7ヵ月だよ、ゴン。それに
「おっ!俺もプロハンターになったら聞きたい事が有ったんだ・・・まぁレツやポンズでも良いのかも知れねぇが、もうすぐ合流出来るってんならその時でも良いな。内容次第じゃ医大に向けた勉強にだけ集中するよりも価値があるかもだからな」
「俺は修行してヒソカに一発お返ししてやらないとだから兎に角強くなりたいかな?前に一度ビアーに鍛えて貰ったし、一度お願いしてみるつもり。キルアは如何するの?」
「俺か?あ~、元々ハンター試験はただの暇つぶしだったからな~。イルミ兄がミイラみたいに包帯グルグル巻きで転がってるのは見てみたいけど、その為に実家に帰るなんて論外だしな~・・・俺もそのビアーって奴がどれだけ強いのか試してみたいかもな」
「じゃあキルアも暫く一緒だね!・・・あっ!そうだ。このホテルってパソコン有るかな?さっきサトツさんに親父の事を電脳ネットで一度調べてみると良いって言われたんだよね」
キョロキョロと周囲を見渡すゴンだが少なくとも中庭から見えるような位置にパソコンは置いてないだろう。それを見たポンズは仕方ないとばかりに皆の視線がゴンに集中している間に帽子から素早く持ち運び式のノートパソコンを取り出す
「パソコンなら私が持ってるわよ。調べて上げましょうか?」
「お前・・・そのパソコンどっから出したんだよ?」
「企業秘密よ」
キルアの問いかけを華麗にスルーしてポンズは電脳ネットを立ち上げる。会員費は必要(ハンターライセンスで無料)だが深い情報を調べられる電脳ネットのページでプロハンターの項目を出す
「ゴン。父親の名前はジンで良いのよね?別に愛称とかじゃなく」
「うん。ジン・フリークスで間違いないよ・・・どう?」
しかしそのページを開こうとクリックした途端に特大の?マークと警告音と共に極秘指定人物との文字が画面中央に現れた
ネット上におけるあらゆる情報が検索できないように遮断される極秘会員に個人がなるには一国の大統領クラスの権力と莫大な金が必要だとクラピカは語り、それを聞いたゴンは武者震いのようなゾクゾクとした感覚が背中を走った
「ふ~ん。ゴンの親父は一般人じゃどう足掻いても手が出せない相手って事か・・・じゃあさ、ついでにビアーって奴も調べてよ。この中で出会ってないの俺だけだから結構気になってんだよね」
「ビアーを?良いけど私達が語った以上の情報は流石に出てこないと思うわよ・・・って!なによコレは!?」
ジンの次にキルアの頼みでビアー=ホイヘンスの項目をクリックしたポンズは思わず驚きの声を上げる。何故ならばそこには先程ジンのページを開いた時と同じく警告音と?マーク。そして極秘指定人物の文字がそこに刻まれていたのだから
「あの子・・・ちょっと目を離してる隙になにが有ったのよ?」
「ビアーらしいと言うかなんと言うか・・・絶対に当初の予定より面倒に巻き込まれて力技で解決させたんだろうね」
ビアーと付き合いの長い二人は顔を見合わせて“やれやれ”とばかりに肩をすくめるが、キルア以外の他のメンバーはただただ驚くばかりだ
「まっ、詳しい事情は本人に聞きましょうか」
ハンター試験が終了してからポンズが仕舞っていた携帯の中身を確認するとメールでビアーの用事が終わったので最終試験の場所の確認とそこへ向かう旨の内容が
トリックタワーからそう離れていない場所が最終試験会場だと原作知識で知っていたビアーは最寄りの街へと既に移動中であり、最終試験から遅れて3日後、ビアーとレツたちは合流したのだった
「レツ~!ポンズ姉~!なんか私女王様になっちゃった~!!」
「『いや如何いう事だよ!!』」
その日、一同のツッコミが空の彼方まで届いたという
最終試験のトーナメントはゴン、ハンゾー、ポックル、レツがAブロックでヒソカ、クラピカ、ポンズ、キルア、レオリオがBブロックですね。レオリオのチャンスが一回分少なくなってます
1~2次は彼らの出会いで3次で腰を据えて話せる時間があったので少し長くなりましたが4次と最終はホントにあっさり終わりましたね・・・主人公不在じゃこんなもんか