私達が作戦の決行日を決めてから3日後
天気予報の通りにこの日は大雨が朝から降りしきっていた
雨は良い。犬などの嗅覚から視覚、聴覚、ついでに言えば触覚までも鈍らせて私達のような侵入者の存在を希薄にしてくれる
勿論プロのハンターであってもその影響は受けるけど、念能力者で狩猟が基本活動のハンターと非念能力者のゴロツキやマフィアなんかとではその度合いに天と地程の差が出る
「それで本日は此処、NGLにどのようなご用件で?」
まぁ今の私達はNGLの正式且つ唯一の出入り口とされている河の上に
「下見だ。近々新たな薬となる植物を栽培するに適した地を各地で選定しておる。今の段階では詳しくは話せないが、もしやすれば国交事業として願うやも知れぬ。機械文明を取り込めない事を差し引いてもその価値は十分有ると思っている」
「・・・成程。確かにこの検問所から然程離れていない場所で栽培した食物などを細々と交易品として扱っているのは事実です。御覧の通りこの検問所には外交の為のパソコンや入国者を調べる金属探知機等、決して安いとは言えない金額が動いていますからな。この国の自然調和を保つ為にも希少で高価な薬草の類を一部でも任せて頂ける可能性が有るのでしたら、お断りする理由もございませんね。自然を愛する我々が自衛する為の唯一の機械文明なのですから、そこを出し惜しむような真似はしたくありません・・・尤もこの検問所は便宜上ロカリア共和国からの貸し出しでございますのでNGL自体に機械文明は一切無いのですがね」
そう言って笑う担当の人は一見悪人には見えないけど、このNGLに入国する表向きは唯一の場所を任されてる人は高確率で黒なんだろうなぁ
まぁそれは良い。麻薬工場と構成員に出来ればトップのジャイロを捕まえられさえすれば末端が多少逃げたところで問題はないからね
そんな訳で色々と文明の利器を私達が持ち込んでないかなどを検査されてからいざ入国だ
天然素材の服を着る必要が有って検問所に売店も有ったけど、ボトバイさんとかが着れるサイズの服が置いてあるのか分からないし、そもそも服をその場で着替えるのも手間だったから服は事前に購入済みだ―――すぐ隣がNGLなだけあってか私達が居たパタ市にも天然素材の服を販売しているお店は何店舗か存在していたのよね
「交通手段である馬は1日1万2000ジェニー!なんらかの形で馬が死亡または回復不能の怪我を負った場合は500万ジェニー支払って頂きます!こちらの帳簿にご記入いただき、出国の際に纏めてお支払い願います!もう此処はNGL国内で通貨は持ち運べませんので!」
まぁそうだね。代表のボトバイさんもライセンスを預けざるを得なかったみたいだし・・・私達?私達のライセンスは銀行の金庫からアジトの地下まで、思い思いの場所に隠してるよ
いくらなんでも入国希望者全員プロハンターとか怪しいからね。形としてはプロハンターの助手として付いてきたアマチュアたち(精鋭)って感じだ
NGLも表向きはクリーンなエコ団体を謳ってる以上はハンターライセンスによる入国は基本断れないけど、ライセンス自体の持ち込みは不可能だからね
私達がこぞってハンターライセンスを預けるとかしたら流石に下手な事を考える輩が出てこないとも限らない。盗まれたなら取り返すのはそれ程難しくないだろうけど、何かの拍子に壊れちゃったら目も当てられないからね・・・まぁそんな時は困った時のグリードアイランドだけど
確か壊れた物を修理出来るアイテムとか有ったはずだ
ゲーム内で修理した物が現実にどこまで反映されるのかは謎だけどね
未開部族との交渉やNGL国内の道案内という名目の監視役を最初は振り切らないように程々に奥へと進み、ある程度の所まで来たら一気に引き離しに掛かる
私達はボトバイさんのハンドサインで
何気に初めての乗馬だったけど、オーラの籠ったゴッドハンドで撫で撫でしてあげたら全力でこっちに寄り添ってくれたから癖も無く乗りこなせたわね
ビバ!はんどぱわー!!
「皆さんどうかされましたか?小休止でしたらもう少し先に進んだ場所に大きな
「いや、雨が降った状態だからこそ視れる土壌の様子というのも在る。折角の雨ならば出来るだけ多くの候補地を廻っておきたいのでな」
ボトバイさんの適当な理由付けにならば何故馬から降りるのかと疑問を顔一杯に広げた案内役の人達(男女一人ずつ居た)を余所にして雨で冷えた体を屈伸などで解していく
「じゃあ先頭は俺が走るから皆は後ろから付いて来てくれ」
そう言って前に出たのは河上さんだ。彼は後ろの私達の準備も整っているのを確認すると分かり易く前傾姿勢となり、一拍置いてから普通の馬なんか目じゃない速度で走りだした。直ぐ後ろに他のハンターも追従する
「次までに馬を最低でも3倍速で走らせられるように調教しておいて下さいね~!」
私も置き台詞を残しながらダッシュし、直ぐに一瞬の内に先行した皆に追いつく
「あ~♪雨の中でも走り易くて助かりますね~!」
私達は土砂降りの雨の中を駆け抜けている最中にもかかわらず雨粒が体を打ち付ける感覚がない。それと云うのも先陣を切った河上さんのお蔭だ
「お褒めに与り光栄ってか?嬢ちゃん―――事前に告げたが俺は水流操作系の能力だから雨を避けるなんて朝飯前さ。川底から湖の底まで調査するのに便利だぜ・・・流石に海の底は水圧が凄すぎて俺の力じゃ出力不足だがな」
「確かにそれなら魚に変身できる能力の方がまだ現実的ですね」
潜水艦に変身する能力とかだとほぼ確定で
小型潜水艦とかでも結局深海で人間を生かすという自然の摂理・生態とは逆の『不自然』を形にする訳だからね。その点魚に変身するならそういった無駄な機能は初めから搭載されてない分、オーラの消耗も最低限で抑えられる・・・魚の姿のままで海底の調査は出来てもお宝を引っ張り上げたりとかは難しいでしょうけど、そこはどっちを取るかって好みの話だ
「まぁ人魚に変身出来たらそれがベストな気もしますけど」
一応この世界人魚は居るっぽいから、ちゃんと変身出来たら一番良いまである
「勘弁してくれ。嬢ちゃんなら似合うかも知れんが、いい歳したオッサンが人魚に変身とか色んな意味で遠慮したいからな」
上半身ムキムキの男の人魚は確かに夢が無いなぁ。私だって今は良いけど流石に50年後に人魚に変身したら色々と痛いだろうし、仮に念能力を別に作れたとしても人魚は候補外だなぁ
まぁクジラ並みの肺活量と深海の水圧にも耐えられる肉体強度を獲得出来れば良いんだから、オーラのゴリ押しで如何とでもなるんだけどね・・・うん!やはりオーラしか勝たん!!
・・・と言うか深海ってだけなら確か水深200以下が深海だったはずだからプロハンターなら大半とは言わないけど上位陣は普通に生身で深海(200m前後)探索は出来そう
「何処に敵が潜んでいるのか分からんのだ、無駄話は切り上げて集中するように」
雑談をしていたらボトバイさんからお小言を頂いてしまったので『円』で入って来る情報により意識を割きながら前進する。巡回してる人間とかなら問題なく発見出来るけど、地面に埋めてあるようなセンサーとかの小型機械だと見落としかねないからね
NGL上層部の居る地区以外で機械の類は流石に設置してないと思うけど、たった一度のミッションなんだから慎重過ぎるくらいで丁度良いとも言えるしね
案内役の人達は十分に引き離す事に成功したので先頭を走る河上さんもスピードを普通の馬くらいに落として此処から先は慎重(?)に進む
数時間程走るとNGLの云うところの特別自然保護区であるビラの群生地の境目まで辿り着いた
境目には等間隔に木製の進入禁止の立札と杭が打ち込まれ、その間を荒縄で結び、同じNGLの何も知らない国民が間違っても迷い込まないように区切ってある
森の中とはいえ肉眼で見える範囲にビラの木はまだ見えないけど、もう少し奥に進めば沢山生えているんでしょうね
「ビアーくん。キミの『円』で何を感じる?」
ボトバイさんがいざ特別保護区という名の敵陣真っ只中に潜入する前に意見を求めて来る
『円』の範囲も熟練度も私が上だと年齢やハンター歴などを気にせずに判断してくれるトッププロは確かに有難いわね。これが精神がまだまだ未熟だけど実力と実績だけは有る人とかだとプライドが邪魔してくるでしょうに
「感知圏内に人の気配は有りませんね。その代わり木々に張り付く不自然な四角い物体・・・センサーらしき物が沢山です。更にその奥には高圧電線とかを始めとした様々なトラップが仕掛けてあるみたいですね。無断で奥へ立ち入った者は最初から生かして返す気も無いって事でしょう」
爆弾とかの破裂音が響くようなトラップは少なめかな?毒矢とか毒の煙幕とか虎ばさみとか、そういった類の罠が多い気がする
「うむ。我々ならば突破は難しくないが、初めは身を潜めて近づきたい。抜け道は有りそうか?」
「う~ん。グルっとこの地区の外周を一回りすれば正規ルートも割り出せるんでしょうけど、そっちは流石に人目が多そうですしね。木々の上をジャンプで移動するのが一番無難でしょう。上はセンサーが無い訳じゃないみたいですけど穴だらけですしね」
「そりゃ普通は嬢ちゃんみたいな隠されたセンサーから地面に埋まった地雷まで丸裸にする奴が潜入するのなんて想定しねぇよな。初見でセンサーを全看破してサクサク進める奴なんて俺たちプロでも普通は居ねぇよ。それこそ探知系の能力者でもなけりゃな」
「いやいや河上さん。私が使ってるのは念能力者なら基本全員が使えるただの『円』ですよ?」
「本質が同じでも規模が違げぇよ。そいつは水たまりと湖を『同じ』って言ってるようなもんだ。普通そんなん真似出来るか!」
そうかな?たとえ凡才でも10年も頑張れば煙オジサン並のオーラは手に出来る計算なんだから、一般的な『円』の達人の領域である半径50メートル程度には手が届きそうだけどな
毎日の『纏』と『練』は念能力者なら基礎中の基礎なんだし、寧ろプロハンターの大半が達人級でも可笑しくないと思うんだけどなぁ
「人間そこまでストイックに修行と生活を両立出来ねぇよ。逆に嬢ちゃんはなんで24時間修行みたいな事を続けられるんだ?」
「え?勿論新しい事が出来るようになるのが愉しいからですよ。折角『こんな世界』に生まれたんです。だったら人間を『究めて』みるのも面白そうじゃないですか」
「・・・ははっ!イカれてやがるな嬢ちゃん。人間を『極める』?嬢ちゃん位の歳でどんな発想したらそんな思考回路に行き付くんだか―――だが成程な。『好きこそものの上手なれ』。それが嬢ちゃんの強さの秘訣って事か」
そうそう。人生なんて愉しんだ者勝ちですよ・・・流石にヒソカみたいなのはアウトだけど
そんな訳でこの先は私が先行する形で木々の上層を次々と飛び移ってセンサー&トラップ地帯を抜けると乱立するビル20~30階くらいの岩山が見えてきた
その岩山には不揃いなアーチ状の穴が大量に開いている
「色んな大掛かりな機材を感じるのであそこが麻薬工場で間違いないですね・・・てか、あんな風に穴を開けても普通の人達じゃ出入りとかも出来ないんじゃないかな?」
「いや、あれは出入りの為の穴では無いだろう。少しでも人目を欺く為にも岩山をくり抜いているのだろうが、それ故に設計がおざなりとなったのだろう。奴らの製造している麻薬に奴ら自身がやられない為の換気を主目的とした穴であると考えられる」
成程ね。『キレイなハッパ』とは真逆にジャイロが世界に悪意を振りまく為に作った麻薬だ
人体への影響とか寧ろ悪いに越したことは無いって話だし、確かに換気は大事だ
「よし。敵アジトの全体像を掴めたなら次は我々の仕事だな」
「ただオレの『壁』は体力とバレないようにする事を踏まえたら大した高さにはできねぇからな」
今この場に居るのは私とボトバイさんと河上さん以外にあと二人、ボトバイさんかチードルさんが呼んだであろう人達が居る
カストロさんとグラチャンさんは別行動で検問所を超えた辺りで別れてたんだよね
調査という名目だから別行動自体は特に変には思われなかったしね
え?向こうが2人でこっちが4人なのは変だって?―――嫌だなぁ、私みたいなキッズが真面な調査隊員に数えられるとでも?体験調査か何かだと思われてるよ
因みに名前はテラースさんにリァッケさんだ。うん。二人とも知らないキャラだね!(確信)
※リァッケは公式キャラ
作戦を共にするのにあたり軽く能力を説明してくれたんだけど、先ずリァッケさんの念能力は『
もう一人のテラースさんは大地を操作する能力で今回は敵アジトの外周を土壁と
「では別れる前にこちらを渡しておこう。向こうの二人にも間違いなく渡しておいたからな」
テラースさんがそう言って背中に背負っていた袋から取り出したのは思いっきり機械製品のゴツイ無線機だ。私達がNGLの国境を超える時に無線機を地中を操作してベルトコンベアのように動かす事で検問所をすり抜けたって寸法ね
本当にこの世界は“セキュリティに万全な対策を!”とか無理な話よねぇ
「グラチャン君。カストロ君。聞こえるかね?」
≪よぉボトバイの旦那。感度良好だぜ。こっちは監視役を撒いて既にスポットで待機中だ≫
「うむ。こちらはたった今奴らのアジトに到着し、テラース君とリァッケ君が包囲網を敷きに行ったところだ。予想通り川の上流に麻薬工場を発見した。そちらとこちらでは距離が有るからな。そちらはもう始めてくれて結構だ」
≪了解、リョーカイ。サーフィンの時間だ。土産を大量に持っていくぜ≫
≪ご武運を、ビアー様。直ぐに御身のもとへ馳せ参じますが故≫
ボトバイさんが向こうに作戦開始を告げて通信を切ると私に視線を向けて来た
「カストロ君はキミが絡むと時折『様』付けしたりとキャラがぶれるようだな」
「・・・無視しといて下さい」
ボトバイさんの口からキャラぶれなんて言葉聞きたくなかったよ・・・アレか?普段自分たちもキャラ付けを頑張ってるからつい口をついて出ちゃったのか?
そのまま10分ほど待っているとテラースさんとリァッケさんが私達の居る崖の上の方まで戻って来て更に10分くらい経つと川の下流の方から地鳴りのような音が響いてきた
下の方に居る見た目だけはただのオールで漕ぐような木造船に偽造した船に麻薬を積み込んでいた人達や見張りの人達も音のする方が気になったのか作業の手を止めてよく見ようとしたり、川の近くに集まったりし始めた
だけどそんな彼らの表情は数十秒後、驚愕に変わる
「つ、津波だぁああああああ!!?」
その一言が全てを現していると言っても過言じゃない
この場所はNGL国内としてはかなり内陸なので津波なんて普通は有り得ない
ましてやサーフィンと言われて人々が思い浮かべるような高波が山の奥に迫って来るなんて世界の終末と言われたら一般人なら納得し兼ねない状況だ
「ヒャッホオオオオオオオッ!!おーい、カストロォオオオ!!中々良い筋してんじゃねぇか!どうだ?俺と一緒にサーファーとして世界を獲ってみねぇか!!」
「お誘いは嬉しいですが私の歩む道、目指すべき光は既に決まっていますので」
「そいつぁ残念だ。ならそろそろゴールみてぇだし、最後に大技で〆ようぜ!」
「望むところ!!」
聴覚が強化されている私にはテンションの高い二人の会話が聞こえて来る
何処から調達したのかカストロさんもサーフボードに乗ってグラチャンさんの操る波を駆る
呼吸を合わせた二人はグラチャンさんが即席で創り出した渦のトンネルの中心を片腕同士を繋いだ状態でクルクル廻るトリックを決める
渦のトンネルを抜けた二人は再び荒波に乗り、クロスするようにジャンプすると空中でハイタッチを交わしていた・・・もうお前ら親友になれよ
才能だけなら作中でも屈指のカストロさんならこの短い間にサーフィンをマスターしても可笑しくは無いけど、先ずはそうなった経緯を教えて欲しい・・・いや、やっぱ良いわ
グラチャンさんの雨の日しか発動しない能力である『
原作では地下教会で使用された『
だからこそ事前にテラースさんにこの辺りを囲う壁を立てて貰ったのだ
一区画を瞬時に水没させられる『
土壁は一定以上の水が溜まらないように高さ1メートル程度でその上に鉄格子のような土の枠が付いている造形となっている
格子が付いているならよじ登って脱出出来そうだけど、土壁の直ぐ外周に張られたリァッケさんの『
仕上げに水を呼び込んだ川の方面をテラースさんの土壁(大)で塞げばあら不思議、たった3分で陸の孤島の出来上がりだ
「全く、グラチャンがあまり派手に暴れるもんだから同じ水タイプの念能力者として手を抜けないじゃねぇか」
“やれやれ”といった風を装ってるけど、そんな河上さんはとてもイイ笑顔だ
眼下に造られた即席湖に飛び降りると水がどんどん形を変えて終には水の龍の姿となる
「古来より鉄砲水や濁流は水神の、即ち龍の怒り、龍の似姿として畏れられた―――私は河上神!この名に恥じぬ使い手となるのが俺様の
なに急にテンションMAXになってんのあの人!?
水の龍は岩山の穴から下の様子を
必死に龍に向かって銃弾を乱射している人達も居るけどアレはあくまでも龍の形を模しただけの水だ。効く訳がない
「あ~、彼は水龍を操る時は自己暗示で一種のトランス状態になるのだ。『神』に近づく行為であるからと言っていたな」
「あのタガの外れ方はどっちかというとハンドル握ると性格が変わるのに近い気がしますけどね」
因みに工場内に直接龍を送り込んで水浸しにするのはあそこに有る資料とか精製された麻薬が大量に水に溶けたりするのを避ける為とかの理由で見送りとなっている
地上からの脱出を封じ、空からの脱出はNGL(機械禁止)の特性からして有り得ない
ならば最後に悪人たちを捕らえるのは直接乗り込んで片っ端から殴り倒すシンプルな手法だ
工場に改造された岩山は二つ。無線で私とカストロさんが片方を受け持ち、もう片方をボトバイさんとテラースさんで制圧する事になった
水タイプの二人はテロリストたちにシャバで味わう最後のウォーターショーを存分に堪能させる(強制)役割だ
水面に浮かぶ僅かな足場を飛び移って私達が担当する岩山の入り口の一つに辿り着くと早速制圧を開始する。私が敵を手刀や腹パンで動けなくしてカストロさんが近場の穴から外に捨てる感じだ
カストロさんと手分けして一旦全員気絶させてから後でゆっくりと縛り上げても良いんだけど、それだと態々工場内を往復しなきゃいけないから面倒なのよね。外の水場に放り投げたらあっちの二人が水流操作で最後に一か所に搔き集めてくれるから楽だったりするし
私は『円』を使って抜け道なども含めて取りこぼしの無いように捜索しながら制圧を進めていくけど、やはり大半の構成員は外の様子を見たついでに龍に飲まれたのかあまり数は残っていなかった
「う~ん。外がド派手だから思った以上にこっちは暇な感じになっちゃったね。カストロさんは向こうではどんな感じでしたか?」
「はい。ビアーさんの教えの通りあれから鍛えた『円』で川辺を探索したところ、程無くロカリア共和国へと続く運搬用の地下通路を発見致しました。作戦開始と同時にグラチャン殿が通路が水没するだけの水を流し込み、そのまま川を遡った次第です。最初はグラチャン殿のサーフボードの後ろに乗らせて頂いていたのですが、積み荷を運ぶ最中であった敵船を飲み込んだ際に波に巻き込んだ木々を飛び移りながら最低限救助するとグラチャン殿に何故か気に入られまして、色々とトリックを指導して貰いました。技術も知識も何処で何が役に立つのか分かりません。覚えておいて損は無いと思いましたので」
その割には結構ノリノリだったように見えたけどね?
さてさて、そんな話をしつつ工場内の敵をなぎ倒して来た私達だけど、途中から敢えて後回しにしてきた一室がある
外が大変な事になっている状態でも決してその部屋の扉を開けるでもなく護衛らしき人達が奥に居る人物を守ろうとしている様子が窺えた部屋だ
他の全てを制圧してから私とカストロさんは閉じられたその部屋の前まで辿り着いた
「ビアー様。此処は私が。この地のボスと対面するならば扉を開けるような雑事は従者が務めさせて頂きます―――ふがああああっ!!?」
なんか恭しく訳の分からない事を言いながら両開きにスライドさせるタイプの扉を無理やりに開けようとするカストロの後頭部を引っ掴んで顔面めり込み型ドアノックを決めてやると確かに扉は
鼻血をドクドク流しながら白目を剥いているカストロを部屋の端に乱雑に捨てると部屋の中で扉に向かって銃を構えてた人達も困惑しているようだ
「おい、ザイカハル。アイツは襲撃者なのか?それとも襲撃者(カストロ)を撃退してくれた味方なのか?」
「俺が知るかよ!おいジャイロ!俺たちに秘密で雇った切り札みてぇのが居たりすんのか!?」
扉が無理やり開かれたら即発砲する気満々だったであろう彼らも混乱してボスに意見を求めてる
うん。やっぱりコイツがジャイロで間違い無かったか
高そうな椅子に座って部屋の中央に居るその男は先程からゆったりとした空気でこちらを見て来るばかりだ
「キミは・・・いや、キミ達は何者かな?」
「ただの超人バケモノ集団、プロハンターだよ」
「なら死ねぇえええええ!!」
答えた瞬間さっきザイカハルって呼ばれてた人がアサルトライフルの引き金を引こうとしたので瞬時に近づいて銃口をグリャリと折り曲げる
そのまま引き金を引いてしまった彼は手元で銃が爆発して金属片が体に刺さりながら後ろに吹っ飛んでいった
「痛てえええええ!!?痛てえよおおおおおっ!!?」
「ザイカハル!?クソっ!このバケモンがアアアアア!!」
もう一人居た護衛が仲間が奇しくも私から離れた事で銃口をこっちに向けるけど、向け終わった頃には私も既に相手の懐に飛び込んで掌底で派手に吹き飛ばして気絶させる
「最後に何か言う事ある?」
敢えて派手に部下を叩きのめしてみたんだけど、特に動揺している様子は見せないなぁ
でもだからと言って現実逃避している雰囲気でもない
「諦めないさ。私がする事は、ただそれだけで良いのだから」
どこまでもブレない『目』でただ真っ直ぐ前を見つめているNGLのボス・・・きっと今も私と会話しながらも私の事なんて見えちゃいないんでしょうね
コイツの瞳に映るのは自らの悪意が世界へ広がる未来予想図だけだ
「―――そっ、精々生きてる内に出所出来るように模範囚でもやってるのね」
手刀でジャイロの意識を刈り取るとボトバイさんに連絡を取る
如何やら向こうも全員の制圧・捕縛が完了したみたいだ
外に出るとテラースさんが溜まった水が
気絶している人達は工場内に有った縄とかを使って全員縛り上げる事でミッションコンプリートだ
「・・・諸君!よくやってくれた!これよりNGLの各村の代表を招集し、今後の方針を決めねばならん。今回の事は隠し通せるものではない上に放っておけば他国からの強制介入も起こり得る。我々が全てを決めてはそれは独善であり独裁だ。先ずは大使館の者たちに話を通す―――あそこに居るのが全員黒である事は無いと思われる上で仲間が壊滅状態だと知れば知らぬ存ぜぬで我々に協力する以外に道は無いからな。見張りの為にも私が大使館で睨みを利かせる事としよう。ついでにこの場に有る重要そうな資料も持ち出して解析も私が行おう・・・それはそうとカストロ君は何故ノビているのかね?」
「無視しといて下さい」
気にする必要は無い。良いね?
「う、うむ。では河上君とカストロ君に
テロリストたちは沢山居るのでテラースさんのベルトコンベア式地面操作で一気に運ぶ感じだ。ここまで彼の能力を温存してきたのは彼には最後まで頑張って貰う必要が有ったからだったりする
「さ~て、後始末も頑張っていきましょうか!」
取り敢えず気合を入れて拳を天に突き出す
まっ、そうは言っても私がやる事なんて殆ど無いんだけどね♪(フラグ)
・テラース
『ジ・アース』 操作系
大地を自在に操る
制約
手足が地面に直接触れている必要がある
離れた場所の地面を動かす程にオーラの消費量が増大する
・リャッケ
『
このテープに近づいたり破壊したりしようとする意思を奪う
制約
1.相手の生命エネルギーを発動対象としている為に『絶』や『隠』を用いれば突破可能
※本人曰く黄色いテープはコッソリ潜るモノ
2.具現化系なので自身から切り離すと強度が普通のテープくらいに落ちる
3.切り離したテープは24時間で自動消滅する
・河上神
『
周囲の水を自在に操る
制約
雨を避ける程度なら問題ないが、大量の水を操るには水に直接触れる状態が必要。それ故にグラチャンのように遠くの水を呼び込む真似は出来ない
誓約
河に毎日1時間は祈りを捧げる必要が有る