毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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新年あけましておめでとうございます




くじら島と先行プレイ?

四方を海に囲まれ、デフォルメされたクジラのような形をした小さな島であるくじら島は今日も多くの漁師で賑わっていた

 

純粋な島民は少ないが漁師たちが集まる水揚げ場であるくじら島で働く漁師は半分島民のようなものでほぼ全員が顔見知りだ。それには漁師だけではなく純粋な島民(漁師)の奥さんなども魚の仕分けを手伝う為に港に集まる事でよりアットホーム感が増していると言える

 

そうして働く女性陣の中で原作主人公のゴンの育ての親で従弟叔母(いとこおば)でもあるミトは時折水平線の先に目を向けていた

 

「ねぇねぇミトお姉ちゃん。ゴン兄ちゃんが帰って来るのって今日なんだよね!」

 

そんなミトの足元にミトと同じく数少ない島民の一人であるまだ幼いノウコが駆け寄ってキラキラとした瞳でミトを見上げ、ミトもそれを受けて優しく微笑んだ

 

「ええ、そうね。それにお友達も一緒に連れてくるそうだから今晩は腕によりを掛けないとね」

 

「うん♪お母さんも張り切ってたよ!」

 

お互いに笑顔を向ける二人に近くで魚の仕分けをしていたオバサンが声を掛ける

 

「あら、ねぇミトさんにノウコちゃん。船、見えてきたわよ。アレじゃないかしら?」

 

その言葉に二人が水平線に視線を移すと明らかに漁船のものとは異なる大型の帆船の姿が小さく視界に収まった

 

「あっ、帰って来た!お~い!ゴン兄ちゃ~ん!レツお姉ちゃ~ん!ポンズお姉ちゃ~ん!ビアーお姉ちゃ~ん!!」

 

港の端まで走って行ったノウコは大きく手を振ってぴょんぴょんと跳ねるが流石に声が届くはずも無い。それでもそんな事関係ないとばかりに船が接岸して目的の人物たちが船から降りてくるまで特等席で自分の存在を主張し続けていた

 

 

 

くじら島にやって来た私達はその場に居た皆に歓待されていた

 

前回この島に滞在した時もレツは人形劇をしてたし私もゴンと勝負をして彼らに審査(ジャッジ)してもらうプチイベントを提供したりしてたから降りた瞬間から結構揉みくちゃにされちゃった感じだ

 

はっは~!魚臭いぞアンタ等―――今日も大漁だったようで何より!!

 

「いや~、ゴンは兎も角嬢ちゃん達ともこんなに早く再会できるとは思って無かったぜ」

 

「んだんだ。それにそこの新顔たちも含めて全員プロハンターなんだろ?一体いつからこの島は超人集まる魔境になっちまったんだ?」

 

「ゴンが漁師や釣り師になる未来はもう無いか~。まっ、何っ時も冒険に目ぇ輝かせてたから分かっちゃいたんだけどな・・・っと、睨まないでくれよミトさん」

 

前にくじら島を後にしたのが10月の上旬辺りだったから大体4ヵ月くらいと半年も経ってないからね。ゴンに至っては1ヵ月程度だ

 

まだ幼いノウコちゃん以外、寂しさも何も有ったものじゃない

 

そのノウコちゃんは早速とばかりにルルに抱き着いてご満悦だ。可愛い

 

後くじら島はフリークス家が在るってだけで十分魔境だと思う

 

因みにくじら島に来るにあたってゴンにはしっかりと電話で私達も一緒に帰る旨を伝えて貰い、ついでにノウコちゃんの家にも少し泊まれないかもミトさん経由で聞いて貰ったのだ

 

流石に私達全員がゴンの家に押し掛けたら部屋数が足りないだろうし、何よりノウコちゃんが拗ねる事請け合いだ。ついでに言えばミトさんが9人分のご飯を作る事への負担も・・・ミトさんなら逆に張り切りそうね

 

ともあれ最初は私達女性陣はノウコちゃんの家にお邪魔させてもらうって事だ

 

因みにこの島に来るまでの10日間程でゴン達の『練』の持続時間は最低ラインと設けた10分を超えて20分程になり、『纏』『絶』『練』へ1秒以内の切り替えはゴン、キルア、クラピカが『練』以外をクリア。レオリオは『絶』と『練』が目標まで届いていない

 

まぁこれに関しては移動も終えて腰を据えて修行出来るようになった今なら数日で皆クリアするでしょう。と云うか皆の『練』の持続時間が10分を超えた辺りでテクニックを磨くのに注力していれば課題はクリア出来てたと思うんだけど、旅団と戦うならどれだけ最低でも1時間は『練』を維持出来ないと見向きもされないだろうからそのまま鍛えさせたのよね

 

勿論相手次第だけどそれくらい有れば必殺技を中てれば十分痛手を与える事も可能でしょう

 

原作クラピカのように命を懸けた『発』で戦うなら兎も角、ほぼ基礎スペックのみで戦うならその程度は本気で赤点ギリギリの最低ラインだ

 

しかもこれは『流』だとかのテクニックを考えない上での話だしね・・・もしも私と同じスタイルでと云うならオーラ量の合格基準を3倍に引き上げなくちゃいけなくなる

 

後は皆の水見式もやったけど案の定ゴンは強化系でキルアは変化系、クラピカが具現化系でレオリオが放出系だった。その結果を受けてレオリオは力が抜けたのかその場に崩れ落ちてたわね

 

実際ただのオーラ砲なんだから他系統でもメモリにそこまで影響は無い可能性も有るけど、メモリの概念っていまいち分からない部分が多いから余計な事は言わないでおいた

 

「それじゃゴン、他の3人は任せたからね。私は私でやる事有るから課題を全員がクリア出来たら伝えに来るように」

 

「うん!ついでにキルア達にこの島の案内もしておくよ―――ビアー達はホントに俺たちと一緒じゃなくて良かったの?」

 

「私達は以前案内されたばかりだしね。ポンズ姉は以前の続きで動植物の調査をするから案内に付いて行く訳にもいかないし、レツは本職が人形師だからね。現に今も公演をまた観たいってリピーターの声が聞こえてくるし、そりゃあやるでしょ」

 

「見たい見たい!前は特訓とかビアーとの勝負でレツの人形劇をしっかり観た事無かったしさ!」

 

そう云えばゴン達とは原作開始前に出会いはしても基本的にゴタゴタしてたからレツが彼らに人形劇を披露(ひろう)する機会って無かったわね

 

「ゴン。レツの公演の投げ銭は一口最低1万ジェニーからだからね!赤スパ以下は受け付けないよ。ああ、でもトイチで良いなら分割払いもOKだからね★」

 

「しないよ!そんな阿漕(あこぎ)な商売!ビアーはボクに如何して欲しいのさ!?」

 

「いや~、ほら、私が二つ星(ダブル)に為るには弟子の誰かが星を獲得して貰う必要が有るからさ、人形師はハンター業とは言えないし、金の亡者(マネー)ハンターとか目指してみない?」

 

「興味ないどころか凄く嫌な副音声が聞こえてきたんだけど!?金の亡者(マネー)ハンターならレオリオが居るでしょ!―――守銭奴(マネー)ハンターかも知れないけど!!」

 

「いいえ無駄よレツ。レオリオからは私からしてもお金の匂いがしないわ。(先見の明とか無さそうだから)金のなる木(マネー)ハンターも無理でしょうし、(お宝やギャンブルで一発当てる)一攫千金(マネー)ハンターとか逆に破産する未来しか見えないわ」

 

「「確かに」」

 

「お前ら副音声で会話とか器用な真似すんな~」

 

私とレツが腕を組んでシンクロしながら(うなず)いてるとキルアが呆れたような声を出す

 

ふふん!(うらや)ましいかね?これが姉妹ぱわーってやつなのさ!

 

「・・・キルア、今の会話って如何いう意味だったの?」

 

「いや、俺だってレオリオのヒエラルキーの低さとニュアンスと会話の流れでアタリを付けただけだからな。大して意味があるもんでもねぇよ」

 

「当の本人が居なくて良かったな」

 

あ、本当だ。レオリオは女性だけの漁船のグループに紳士オーラ(笑)で話しかけて・・・船長さんに「私、見た目も年齢も性格も年下(少年)が好みなの」と言われてフラれてるわね

 

「ッ!・・・なんか今背筋がゾワッとしたぜ」

 

キルア、海の女は肉食系だろうけど喰われないようにね。もしもそうなったら謎の電波を受信したキルアのお母さんが理屈も空間も捻じ曲げてでも登場し兼ねないから

 

そんなこんなで歓迎もそこそこに皆それぞれの仕事や持ち場に戻っていって私達も解放された辺りで別行動だ

 

フリークス家組とノウコちゃん家組だけど先ずは旅の荷物などを置く為にもノウコちゃんを連れ立って目的地に着くとノウコちゃんのお母さんのネズハさんが出迎えてくれた

 

「いらっしゃい。また会えて嬉しいわ。部屋は以前泊って貰ったのと同じだから分かるわよね?夫ももうすぐ帰って来ると思うし、そうしたら皆で昼食にしましょうか」

 

この一家の大黒柱のナーバラさんは漁師なので朝は凄く早い代わりにお昼前には帰って来る場合が多いみたい。季節によって狙う魚も変わるから必ずしも一年通して一貫してるって訳じゃないようだけど、やっぱり基本は明け方漁に合わせた時間帯みたいだ

 

「有難うございます。お世話になります!―――よし、ノウコちゃん。お昼まで一緒に遊ぼっか」

 

「うん♪アリスタちゃんにも会いたい!」

 

両手を上げて万歳の体勢で喜びを示すノウコちゃんも一緒に宛がわれた客室で手荷物などを下ろすとアリスタも部屋に出して(針には安全カップを付けた)ルルとアリスタのちょっとしたボール遊びやトランプなんかでも遊んで時間を潰しているとネズハさんが昼食に呼びに来て途中で帰って来てたナーバラさんも含めて食卓を囲んだ

 

「―――そんな訳でレツとポンズ姉も無事プロハンターになった感じですね。ついでに私も一年間色々としたお蔭か先日一つ星(シングル)犯罪(クライム)ハンターになりました。これがその認定カードですね」

 

「・・・可笑しいな。そちらの二人がハンターカードを少し見せてくれる程度の事は有るかもと思っていたけど、なんでこの場にそれ以上の物が有るんだい?」

 

それはくじら島に一番近いハンター協会の支部にカードを届けて貰ってこの島に来る道中でそれを受け取ったからかな

 

ついでに言えば前回の反省を生かして(?)この島に来る時に乗っていた船は事前に予約した大型船で重し運搬対策もバッチリだ

 

「あははは、まぁ色んなマフィアとか潰しましたからね。加えて伝説を相手取ったのが大きかったのかも知れません」

 

NGLの案件は流石に話せないのでその直前のゾルディックの事を引き合いに出す

 

あれだけ金持ち連中の前でイルミをボッコボコにしたから地方にも伝わってるよね?―――てか時期的に被っちゃってたから私のシングルへの昇格がNGLの後になっただけで、普通に考えたらA級賞金首(オモカゲ)伝説の暗殺一家(イルミ)で功績は十分だったと思う

 

「あのゾルディック家を相手にして護衛対象どころかその場に居た客達まで守り抜いたらしいじゃないか。失礼を承知で聞きたいんだがもしかして噂ほど大した事がなかったりしたのかい?」

 

あー、私みたいな小娘が撃退したとなれば当然湧いて出る疑問ではあるかな

 

ここでイルミが軍隊相手でも一個大隊(500~600人程度)程度なら普通に勝てそうとか言っても正直伝わらないよね

 

「そうですね。本人はコンクリの壁をぶち抜く位の力はありましたけど、なにより一番驚いたのは変装技術でしたね。道具とかも使わないで目の前で顔の骨格ごとゴキゴキと音を立てながら変形させる様子は気持ち悪いレベルで凄かったですね。アレならついさっきまで一緒に居た友人とかが少し離れた間に別人に入れ替わって襲ってくるなんて芸当も可能ですから何ならあれだけでも伝説を名乗れますよ」

 

正直戦闘力に関したら一方的に(なぶ)った印象が強いから一般人が現実的に恐怖を感じそうな能力を語ってみたら案の定嫌そうな顔をされた

 

「誰も顔も見たことのない暗殺一家・・・成程、それほどの変装術が有ればターゲットを仕留めるのも追手を撒くのも簡単になるのか・・・ゾッとする話だな」

 

いや、多分潜入も脱出も基本は堂々としてると思います。道中のあらゆる障害が障害になってないだけでね

 

そんな風に別れてからの私達の活動を話題の中心にして盛り上がり、昼食を食べ終えたらレツは港に人形劇をしに行くとの事でついでにルルも一緒に連れて行ってもらう

 

そしてポンズ姉と『私』が森に調査に行くと言えば当然―――

 

「あたし、ルルちゃんとレツお姉ちゃんと一緒に行く!!」

 

・・・となる訳だ

 

ノウコちゃんが懐いてるナンバー1と2だもんね。ふっ、計画通り

 

―――悲しくなんかないよ?ホントだよ?

 

ま、まぁそんな訳(震え声)で二手に分かれて人目に映らない森の中に潜るとポンズ姉に例のブツを取り出してもらう。皆ご存じ(読者目線)テレビゲームとは名ばかりのアトラクションゲームであるグリードアイランドだ。私が最初に見つけた時にはディスクのみだったけど、今はちゃんと対応ハードであるジョイステーションにセット済みである

 

そのままだと最大2人までしかセーブ出来ないからマルチタップって特殊機材も付けて8人プレイにも対応完了ってね!

 

「本当に1人で行くの?死ぬ危険も有るゲームならあと数日程度待ってから全員で行った方が良いと思うんだけど?」

 

「ポンズ姉は心配し過ぎだって。死ぬ危険も有るゲームではあっても実際にゲームオーバーになってる人ってそこまで大量には居ないみたいだし、少なくとも理不尽系即死トラップとかが有る訳じゃないだろうし、何より修行地として何処が適してるのかの下見は大事でしょ?なにせ9月には幻影旅団とやり合う事になるかもなんだし、時短出来そうな所はしていかないとね」

 

「・・・今更だけど何でこのゲームを修行地に選んだのよ?」

 

「そりゃあゲームって楽しいでしょ?今までは旅しながらだったけど、腰を据えて修行に打ち込むなら別の刺激が欲しかったからね。キツイだけの修行より高いテンション維持できる方が修行も効率良いでしょ?―――“好きこそ物の上手なれ”ってね!」

 

ゲームは多人数プレイもソロプレイもどっちも大好物だ。折角なら先行プレイして皆に中級者マウントを取ってドヤりたい・・・てか私がグリードアイランドについて『色々』と知っている理由付け的な意味も有ったりするのよね

 

そんな訳で善は急げ

 

森の中だからコンセントを刺す場所なんて無いけどこのゲームにそんなものは関係無い

 

両手をジョイステーションに(かざ)したら準備完了だ

 

「それじゃ夜までには帰還手段を見つけるのを目標にするけど、帰れなかったらノウコちゃんには夜行性の珍しい生き物を見つけたから観察の為にも今夜は帰れないとでも言っておいてくれる?」

 

「はぁ、あの子はアンタにもちゃんと懐いてるんだからそれを伝えて泣きそうな顔されるのは私なのよ?アンタが普通の念能力者が(つまづ)く程度のログアウト方法に辿り着けないとは思って無いけど、本当にさっさと帰って来なさいよ」

 

「了解!草の根を分けてでも速攻で帰って来るからね!」

 

「ニュアンス的に使い方間違ってるわよ、その言葉!」

 

細かいところまで一々反応してくれるポンズ姉は本当に揶揄(からか)甲斐(がい)が有るね

 

「それではゲームの世界へいざ、しゅっぱ~つ!!」

 

「聞きなさいよ、このおバk―――」

 

ポンズ姉のセリフを最後まで聞く前に発動した『練』によって私はその場から消え去り、次の瞬間には近未来チックで幾何学(きかがく)的な紋様に包まれた空間に立っていた

 

「お~!ここがグリードアイランドか~。やっぱりちょっと感慨深いものが有るわね・・・それはそうと帰ったら初手でポンズ姉から拳骨落とされそうだけど、それは仕方ないか」

 

寧ろ拳骨で済ましてくれないかな~?

 

軽くそんな事を考えつつ目の前に在った扉を開けて通路を進むと別の部屋に辿り着いた

 

「ようこそ、G・I(グリードアイランド)へ」

 

その部屋の中央ではこれまた近未来チックな浮遊する椅子に座った女の子が出迎えてくれた

 

確かこの子(年上)もゲームマスターの一人なのよね

 

名前は・・・ダメだ。流石にEで始まるところまでしか覚えてないや

 

ゲームタイトルである GREED ISLAND のEの部分をもう一人の双子と担ってるんだったわね。もう一人の双子も・・・う~ん。やっぱり思い出せない

 

「それではこれよりゲームの説明を「お姉さん、名前教えて!私ビアー!!」・・・私のキャラクター名はイータと設定されております」

 

おお!ちゃんと答えてくれた。イータさんね。思い出そうにも思い出せない疑問が解消されて喉に引っ掛かった魚の小骨が取れた気分だよ・・・若干呆れてるように見えるのは気のせいだよね?

 

「それではこれよりゲームの説明を致します。ビアー様はゲームの説明をお聞きいたしますか?」

 

ここは素直にYesを選択すると目の前に指輪が出現してそれを嵌めるように促される

 

その後の説明を纏めればこの世界のクリア条件はアイテムをカード化し、指定されたカード100種類を集める事で指輪を嵌めている間は指定ポケットカード100種類となんでも入るフリーポケット枠45種の計145枚のカードを収められるバインダーを出し入れ出来る『ブック』を唱える事で使える事

 

カード化されたアイテムを実体に戻す『ゲイン』の魔法が使える事。また、バインダーから出した状態で60秒経っても実体化する事

 

一度実体化したカードは二度とカード化は出来ない事

 

全プレイヤーで共有するカード化限度枚数が設定されており、レア度の高いカード程に入手(カード化)が難しくなる事

 

死んだらそのプレイヤーの持つカードのデータは全て消える事

 

・・・とまぁそんな感じね。これ以上の詳しいルールはゲームを進行していく中で自分で見つけてくれとの事らしい

 

確かに実際のテレビゲームとかでもありとあらゆる操作説明を最初にするなんて事はシンプルな格ゲーとかでもない限りほぼ無いから妥当でしょうね

 

イータさんの説明が終わると下りの階段が現れた

 

「どうぞ、G・I(グリードアイランド)の世界をお楽しみくださいませ」

 

「また来るね~!イータさ~ん!!」

 

階段を下りつつ手を振るとイータさんも手を振り返し・・・てはくれなかった。ちぇ、流石にゲームキャラって設定が第一って感じか

 

階段を下りたら見渡す限りの草原にたった今私が降りて来た小屋がポツンと建っている

 

「天気は快晴!覗き屋の視線もバッチリ!とりま近場の奴とっ捕まえて近場の町まで行こうかな」

 

二方向から感じる視線の内片方を直感で選び、そっちに向けて歩き出す

 

それにしてもこのスタート地点を見張ってる人達って何がしたいんだろう?

 

グリードアイランドはそんなにパカパカとプレイヤーが出入りできる難易度には設定されてない。なにせ世間では死亡(ゲームオーバー)を除いて一人の帰還者も居ないなんて噂されている位だ

 

自由に出入りできる人達は必然的にこんな距離で監視の視線に気付かれるような人達の手には負えないって事だし、本命であろう初心者(ビギナー)に監視系統のこの世界特有のスペルカードを使うにしたってその相手が運良く手にするカードなんてSSランクを頂点に上から4番目のBランク辺りが精々でしょう―――その初心者(ビギナー)がAランクやSランクのカードを自力で入手できる実力が有るなら敵に回す方が彼らからしたら恐ろしいはず・・・どう足掻いてもクリアは無理じゃないかな~?

 

それに繰り返すようだけどこのゲームに新人プレイヤーなんて滅多に入って来ないってのにずっと監視を続けていくとか、労力に対して得られるリターンが少なすぎる。なんとも暇な人達も居るもんだ。修行せい、修行を。絶対そっちの方が有意義でしょうに

 

「さてっと、夕方には帰るって言っちゃったし、少し急ぎますか」

 

歩きつつ視線を感じる方向を注視していく中で1キロ以上先の林の中に微かな人影を見つけた私はダッシュでその場を後にした

 

 

 

 

 

俺の名はニッケス。この史上最悪のデスゲームG・I(グリードアイランド)のプレイヤーの一人だ

 

このゲームのクリア報酬に500億ジェニーという莫大な金額を提示している世界有数の大富豪であるバッテラ氏に雇われた一人だ

 

だが選考会の狭き門を潜り抜けた俺、いや、俺たちの大半がこの悪辣極まる難易度を誇るゲームを前に二の足を踏む状況となっている。この間もランクAのカードである『金粉少女』の情報が手に入った事で勇んだ仲間が自力でカードを手に入れようとして立ちはだかる罠の数々に這う這うの体で逃げ帰ったくらいだ

 

そう、俺と俺の仲間たちはこのゲームの中では弱者でしかなかった。念能力を得てから覚えていた“俺は強い”なんて今までの幻想は粉々に砕かれたさ

 

だけど、俺はそれで諦めなかった。自分たちが弱い事を理解した上でこのゲームで勝てる方法を必死になって考えた。俺たち人間の最大の武器は考える事なんだからな!俺はこのゲームに対して心までは折れちゃいなかったんだ

 

そうして思いついたのはこのゲームの中ではプレイヤーであれば実力に関係なく振るえるスペルカードの存在だった

 

更に、この世界のカード化限度枚数というルールを逆手に取ってスペルカードを独占・支配して機を見計らい一気に指定ポケットカードを所持している奴らから奪ってしまおうという何とも途方もない計画だ。その為には最初に声を掛けて集まった俺を含めた10人だけでは足りない。大量の仲間が必要だったが、幸いバッテラ氏が懸賞金という餌を用意してくれていた事で仲間を集める事が出来た。まだ目標人数には足りないがそれでも今の時点で50人近い仲間たちが居る

 

間違いなくこのゲームをプレイしているプレイヤーの中で最大の人数を誇る派閥だ

 

今日もこうして何人かで手分けして各町でこのゲームの難易度を知って(くすぶ)ってる奴やスタート地点のシソの木で勧誘を掛ける為に動いている。他のメンバーは主に資金集めとその資金を使ってのスペルカード購入で動いて貰っている

 

正直このスタート地点の見張りが一番地味な仕事ではあるが、少しこのゲームをプレイしてこの世界の嫌らしさに触れた直後の初心者が一番勧誘し易いので外す訳にもいかないポジションだ。数が多い事で色んな役割を余さず出来るのが俺たちの最大の強味だからな

 

おっと!これは珍しい子供、それも少女のプレイヤーだ

 

プレイヤーの姿を全て知っているなんて言う気は毛頭ないが、それでもあんな子供が何度も出入りしているとは思えないのでほぼ間違いなくビギナーだろう

 

あれだけの年齢でこのゲームの開始条件である『練』を習得しているとは末恐ろしいが、正直実力に関してはあまり期待は出来ないだろう

 

念が使えれば身体能力は飛躍的に跳ね上がるが、俺たち大人の念能力者相手では何のアドバンテージにもならない。念能力者である事が前提のこの世界では猶更だ

 

だが問題は無い。元々俺たちの計画で仲間の最大の役割はフリーポケット数の確保にある。それに少女であれば何かサポート系の『発』を持っているかも知れない。そうであれば(おん)の字だ

 

・・・方角的にはこちらに向かってきているな。少々心苦しいがここは一度場所を移動して他のプレイヤーがスペルでも掛けてくれるのを待つことにしよう

 

そう思いつつ望遠鏡を覗きこんでいた俺だが次の瞬間少女の姿が搔き消えた

 

「なに!?」

 

思わずレンズから目を離して肉眼でシソの木の方面を見た俺だが移動用スペル特有の対象が流れ星のようになる現象は見られない。一瞬スペルを使ったのを見過ごしたのかと思っての行動だったがよくよく考えたらゲーム外に出るとフリーポケットのカードデータは破棄されるので初心者で無かったとしてもスペルカードでの移動は有り得ないのだ

 

俺はもう一度レンズを覗き込んで草原のあちこちを見渡すが遠くは見れても視野は狭い望遠鏡で一度見失った対象を再度見つけるのは困難だ

 

「あの~、すみません。ちょっと道をお聞きしたいんですけど?」

 

俺の後ろから女の子の声が聞こえる。迷子か?

 

「悪いが今忙しい。余所を当たって・・・ん?」

 

あまりにも普通に声を掛けられた事で疑問を持つまでにタイムラグが生じてしまい、警戒に移る前にこちらも普通に振り返ってしまうと先程まで望遠鏡で探していた茶髪の少女が俺のすぐ後ろに立っていた・・・これ、如何いう状況だ?

 

 

 

私を・・・と云うかスタート地点を監視していた内の一人に近づいて声を掛けるとキョトンとした顔で振り向かれた

 

はて?なにか記憶の片隅に引っ掛かるからもしかしたら原作キャラのモブの一人かな?でも流石にモブキャラなんてモブ・オブ・ザ・キングのモタリケ君くらいしか覚えてない

 

「え~っと・・・あなた誰でしたっけ?」

 

「気のせいでなければ初対面な上にその言い回しはかなり失礼だぞ?」

 

それは確かにそうだけど、林の中から女の子を覗き見してる方がよっぽど失礼だからその反論は満場もとい私場一致で却下します。私の意見が正しい。私は何も間違えない(鬼のラスボス風)

 

「それにしても瞬間移動の類の能力か?だがマーキングも無しにこれだけの距離を跳べるはずが無い。一体どんな手品だ?」

 

あれま、なんか勝手に勘違いし始めたんだけど、私としてはさっさと最寄りの町の場所を話してくれないかなって感じだ

 

う~ん。でも改めて考えたら良くも悪くも初心者狩りをしようとしてる人相手じゃ見当違いの方向とか教えられるかもだしなぁ

 

「という訳で・・・え~っと、ここから北北東にちょっと行った場所に懸賞の町アンキトバね。それでマサドラと港の位置関係がこんなもんか・・・」

 

「なっ!?またワープで俺の背後に!?それにそれは俺の地図か。一体何時の間にマーキングを施したって言うんだ!!?」

 

『円』で持ち物検査して置いてあった荷物の中から地図を発掘して繁々(しげしげ)と眺めていると振り向いた彼に今度は驚愕の目で見られた

 

「ククククク♪貴様が深淵を覗き込む時、深淵も貴様を覗き返しているのだ」

 

勘違いが未だに継続中みたいなのでこちらもノリで両手を尊大に見えるように広げつつ適当なセリフを言ってみる。折角のゲームの中なのでちょっとしたロールプレイだ

 

「―――っ!そうか!視線を媒体としたマーキング!!敵に見られているという不利な状況そのものを誓約とした『発』か」

 

勘違いが加速したこの人が耐えられそうなギリギリのラインでオーラの圧を強めていくと彼は冷や汗を流し始めた。これ以上やるとスペルで逃げられそうね

 

「そう。これぞ私の念能力。『後ろの正面だ~れ?(私メリーさん)』―――私は既に貴様の命を二度見逃してやった。命の代価としてこの地図を貰ってやろう!!」

 

「・・・地図で良いのか?」

 

「地図で良いよ」

 

特に深い設定も考えて無かったロールプレイなんて長く続けても苦痛なだけで一瞬で面倒臭くなった私は謎の凶/強キャラムーブを放り投げる

 

「俺の命2個と地図が等価・・・」

 

なんか凄く落ち込みだしちゃった彼を尻目にアントキバに行ってそのままスルーしたら今度は魔法都市のマサドラに向かう

 

途中山賊に地図と上着だけは盗まれながらもモンスターの跋扈(ばっこ)する岩石地帯まで辿り着いた

 

道中のモンスターをフリーポケットの45枚分狩って埋めるとマサドラまで再出発。マサドラで手に入れたカードを交換所(トレードショップ)でお金に換えて全額預ける

 

さて、ここからがズルの時間だ

 

「国外に出る方法なら3000ジェニーになります」

 

「OK、支払いは引き落としで」

 

※NPC説明中

 

「・・・という訳だ」

 

ふむふむ。G・I唯一の港町の所長から金で買うかスペルを狙うかって訳ね。まぁここでは説明されないけど所長をぶっ飛ばす一択だけどさ

 

説明を聞いて交換所(トレードショップ)を後にした私は直ぐにUターンしてショップの中に入る

 

「国外に出る方法教えて!」

 

「国外に出る方法なら3000ジェニーになります」

 

「OK,支払いは引き落としで」

 

 

「国外に出る方法教えて!」

 

「国外に出る方法なら3000ジェニーになります」

 

「OK,支払いは引き落としで」

 

 

「国外に出る方法教えて!」

 

「国外に出る方法なら3000ジェニーになります」

 

「OK,支払いは引き落としで」

 

 

以下、計50回

 

「・・・という訳だ。それと、お客さんには儲けさせて貰ってるからな。次からはレアな裏メニューも紹介するぜ」

 

「っやったあああ!!長かったぁああ!!」

 

思わずガッツポーズを取った私だけど、これくらい許されるよね

 

同じ交換所(トレードショップ)で50回以上買い物をするとランクB以下の指定ポケットカードはお金で買えるようになるって設定、私の覚え間違いだったら完全に徒労に終わるところだった

 

「ちょっと一覧見せて」

 

「はいよ」

 

出された買い物リストに目を通すとどれもこれも最低1000万ジェニーは超える指定ポケットカードが全部で34種に1枚だけDランクの『聖騎士の首飾り』がそれでも100万超え

 

※ランクCの指定ポケットカードは元々存在しない

 

「買えな~い!!」

 

少なくともこんな序盤の町周辺じゃ金策がダル過ぎる。岩石地帯のモンスターをどれだけ狩れば良いのかって話だ

 

岩石地帯まで大体70キロ

 

私なら高速周回も可能だけど、普通のプレイヤーじゃ色んな意味で無理ね

 

「くそう。リアルマネーで課金OKなら5億ジェニーも有れば事足りるのに」

 

ヨークシンの超高級ホテルに25年は泊まれる程度の金額・・・凡庸な念能力者じゃ割に合わなすぎるわね。しかも買えたとしても他のプレイヤーに狙われる危険性も大になるし

 

まぁ元々この場でカードを買おうとか思って無かったので漸くその場を後にした

 

「さ~て、修行地候補の岩石地帯とモンスターは把握したから後は港町に行けば今日の目標は達成かな~?流石に旅団戦までにカード集めを並走するのは無理が有るし、大人しく帰りますか」

 

グッと伸びをしながら外の空気を吸い込んだ私はマサドラを後にして耳だこになる位に説明された港町へ駆け出した

 

道中のモンスターも倒してはみたけど岩石地帯よりは好戦的なヤツとのエンカウント率が高かったので初心者の基礎修行の地域には向いてないわね

 

そんなこんなで港町に到着する頃には既に夕方となっていた。距離的にはそこまででも無かったけど、やっぱり初めての道のりは時間を食うわね。次回以降は無駄を省けるけどさ

 

船着き場を歩いているとショップで聞いた意地悪な所長とやらが居る建物に辿り着いたので中に入ると葉巻の甘ったるい香りが鼻を刺激する

 

「ああん?なんだぁオメェはぁ?俺は今忙しいんだ。とっとと出ていきな」

 

机の上にドカッと足を置いてウィスキーの瓶と葉巻の吸い殻で部屋中汚してる人が忙しかったら世の中の大半の人が過労死するわね

 

「国外に出たいんだけど?」

 

「なんだぁ?旅行客かぁ?だったら出すもん出して貰わねぇとなぁ。100万ジェニーと言いてぇとこだが今は気分が良いんでな。300万ジェニーに負けといてやるよ。俺様って奴ぁ優しいだろう?ゲッゲッゲッゲッゲ!」

 

その値段で払ったら私が一方的に敗北者(ルーザー)じゃない。何処の世界の常識よ?

 

もう良いからサッサとぶっ倒してチケットを手に入れましょうか・・・って、あれ?

 

「この場合コイツを倒してカード化すればそれがチケットなのか、ボコボコにして何処かに仕舞ってあるチケットを差し出させるのか、どっちなのかな?」

 

「ああん?何をぶつくさ言って“バギンッ!!”―――ヘブンっ!!?」

 

取り敢えずカード化しないだろう威力で顔面にグーパンを叩き込む

 

「私、国外へ出る為のチケットが欲しいな~?」

 

「て、てめぇ!俺様にこんな真似してただで済むと思っ“バキャッ!!”―――あぶんっ!!?」

 

「通行チケットくれないかな~?」

 

「て、てめぇ!俺様にこんな真似しt“メシャッ!!”―――おぶんっ!!?」

 

「私、島の外へ行きたいの♪」

 

「て、てめぇ!俺様にk“ゴズッ!!”―――ぐぶんっ!!?」

 

「出せ♪」

 

「て、てめぇ!おr“グシャッ!!・・・ボウンッ!!”」

 

流石ゲームのNPC、ものの見事にセリフが変わらなかったわね

 

取り敢えず追い詰めても意味が無いみたいだったので最後に踵落としで強制土下座させてあげると踏みつぶして床に埋まった後頭部の感触が消えて、足をどかすと1枚のカードが落ちてたので拾い上げる

 

「通行チケット、当たりね。でもBランクで限度化枚数150枚なんだ。Cランクのモンスターカードが50とかだったから必ずしもランクが高い方がカード化し難いって訳じゃないのね」

 

チケットを手に国外行きの船の手続きを行ってるという設定の建物に入ると幾何学模様に覆われたスタート地点と瓜二つの部屋に繋がっていて、中央には最初にゲーム説明してくれたイータさんと髪型以外はそっくりな人が迎えてくれた

 

「国外へ出られるのですね?選択できる港は50以上設定されておりますので、ご希望の港を選択してください」

 

「港じゃなくて『離脱(リーブ)』を使った時みたいにゲームの前に戻して下さい。あと名前教えて!」

 

「申し訳ございません。この場はあくまでも港である為、選択可能な行先は同じ港に限定させて頂いております。それと私のキャラクター名はエレナとなっております」

 

「え!ガチ?」

 

「ガチです」

 

即レスで返された。てか今ちょっと素で返したでしょ

 

「な、ならくじら島って選べますか?」

 

「申し訳ございません。選べるのは各国の主要な港が中心となっておりまして、くじら島は登録されておりません」

 

ジンさん、生まれ故郷の島くらい登録してても良いじゃないの!!確かにそういう事やりそうな人じゃないけどさぁ!!

 

「なら、くじら島から一番近い港って分かりますか?」

 

「それでしたらドーレ港になります。そちらで宜しいでしょうか?」

 

あ~、原作でゴン達が最初に着いた一本杉のある港ね。ハンター試験の中継地点にも使われる程度の規模なんだし、そうなるか・・・くじら島に来る時は別のもっと小さめの港から船に乗ったんだけど、そっちは選べなかったかぁ―――残念!

 

「それではまたのご来島をお待ちしております」

 

了承の意を伝えると次の瞬間には潮の香漂う別の港町・・・ドーレ港に到着していた

 

よし!じゃあ改めてくじら島に帰りますか!

 

・・・と意気込んで便の予定を確認しようとして数分後

 

「くじら島?この港からは定期便は出てないよ。今はもう夕方で受付終了してるからな。チャーター便の手続きを明日の午前中に済ませておけば明後日には送ってやれるぜ。朝一に出りゃあ夕方前には着くはずさ」

 

遅っ!この港からくじら島までの距離なんて帆船で1日・・・200~250km程度でしょ?陸続きなら20分掛からない距離だってのに!

 

久しぶりのネズハさんの夕食が食べられないのも悔しいけど、何より今日の夜はノウコちゃんを抱いて寝るレツを私が更に後ろから抱いてその私を更にポンズ姉が抱きしめて寝るマトリョーシカ式てぇてぇ睡眠法を実践する約束だったのに!!

 

(そんな約束してないよ!!?)

 

・・・なんか今時空を超えてレツからのツッコミが聞こえた気がするけど、多分気のせいね

 

それはそれとして―――

 

「如何しよう?」

 

殆ど夕日が地平線に沈んで街の街灯がほのかにその存在を主張し始める様子を背景に海の先のくじら島に向かってポツリと(つぶや)いた

 

 

 

お昼を食べ終わった後、ビアーやポンズとは別行動でノウコちゃんと一緒に港に足を運んだボクは恒例・・・と言ったらアレだけど人形劇を披露する事になった

 

実は最初に港で皆に出迎えられた時に「またやってくれ」ってリクエストも貰ってたんだけど、ボクの劇を楽しみにしてくれる人が居るのは人形師冥利に尽きるね

 

ゴン達も観たいって言ってくれてたけど、今日のところは島の探検がメインなので彼らはまた後日だ。暫くは一緒だから焦らなくても最前席でじっくり楽しめるからね

 

出来るだけ仕事の邪魔にならない場所とタイミングを見て劇を披露して終わったらここ数か月の旅の事なんかを話題にトークしたり、逆に一部の漁師の人達がビアーの見つけた巨大真珠を見て空いた時間や休日に海に飛び込むようになって家族に怒られて止めるまでがワンセットだったりとかって話を聞いたりした

 

時間を空けて(しめ)にもう一度人形劇をしたら解散だ―――とは云ってもまだまだ日は高いからノウコちゃんとルルを連れてちょっとした花畑みたいになっている丘まで移動し、小道具として持って来たフリスビーをノウコちゃんに渡すと意図を察した彼女が思いっきりフリスビーを宙に放り、それをルルがキャッチする・・・そこ、犬とか言わない

 

やっぱり小さい頃は外で体を動かす方が健全だからね・・・小さい頃から人形と道具で圧迫された室内で人形作りに没頭してたボクが言える立場じゃないけどさ

 

そうして暫くはルルを四方八方に走らせたり時に天高くにフリスビーを放って空中ダイレクトキャッチをさせたりボクとノウコちゃんでキャッチボール(フリスビー)をして運動した後、今は花畑に座って花冠を作っているところだ

 

ボクも花冠は正直作った事が無かったからノウコちゃんが最初の一個を作って寝ているルルの頭に載せて、今はそれぞれが作った花冠をお互いの頭に載せて貰っているところだ

 

満足そうに笑いながら「レツお姉ちゃん可愛い!」って言ってくれるノウコちゃん、持ち帰って良いかな?やはり妹/義妹は愛でるもn・・・っは!?いけない。何故か今ビアー化してた気がする

 

何時も年下扱いで甘やかされていたから新鮮な気持ちに流されるところだったよ

 

ポカポカとした陽気に寝ているルル。久しぶりに力一杯動いた多少の疲労感が合わさってウトウトとし始めたノウコちゃんをルルを枕代わりに横にならせて上げると直ぐに寝息を立て始めた

 

あんまりガッツリ寝ちゃうと夜に眠れなくなっちゃうけど、夕方までそんなに時間が有る訳でもないから仮眠程度なら問題ないかな?薄手のものだけどボクの着ていた上着を掛けてあげると付けてたポーチから彫刻刀を取り出した

 

 

「そんな約束してないよ!」

 

―――っは!?ボクは急に何を叫んでいるんだろうか?

 

いけないや。ちょっとモノづくりに没頭し過ぎてたのかな?

 

「・・・ぅうん。レツお姉ちゃん、どうしたの?」

 

おっと、今のでノウコちゃんも起きちゃったみたいだけど、元々そろそろ起こそうとしてたから丁度良かったや

 

「何でもないよ。もう夕方だから帰らないとね。でもその前にノウコちゃんにプレゼントだよ」

 

「あー!ルルちゃんとアリスタちゃんだ~♪有難うレツお姉ちゃん!!」

 

そう。ノウコちゃんが寝ている間にボクは木彫りのルルとアリスタを作ったんだ。以前くじら島から去る時にビアーはハンカチを渡してたけど、それだとルルだけなので折角だから2匹セットの置物をとふと思い立ってね。スタンドの裏側の部分には【ルル&アリスタ】と名前も入れてある

 

これでも伊達にずっと人形作りをやって来た訳じゃないから削り出しによる造形はお手の物だ。小道具を『周』で強化すれば力を入れなくてもスイスイ削れるからね。最初の内は切れすぎや削れ過ぎで難しかったけど、慣れたらこっちの方が早くて楽なんだよね

 

夕方でノウコちゃんの家に帰るまでに直ぐに薄暗くなってきそうな事もあって手を繋いで帰り、玄関のドアを開けて中に入るとネズハさんの料理の美味しそうな匂いが漂ってきた

 

「あら、ノウコにレツちゃんもおかえり。晩御飯はまだ作り始めたばかりだから先にお風呂に入ってきたら?」

 

如何やらビアーとポンズもまだ帰って来てないみたいなのでネズハさんに進められたままお風呂に入らせてもらう事にした

 

宿の娘と客が一緒にお風呂に入って客であるボクの方が寧ろ頭とか洗って上げてる訳だけど、その辺りは気にしたら負けだ。この辺のルーズさも民泊ならではって感じなのかな?

 

お風呂から上がってテーブルに半分程度料理が載せられていく中、ポンズとアリスタも帰って来た

 

「ポンズちゃんもおかえりなさいね。あら?ビアーちゃんは一緒じゃないのかしら?」

 

ポンズが一人だけって事はビアーはゲームの世界からログアウト出来なかったのか。まぁ元々帰還が困難とされているゲームだし、難易度はまだしも帰還の方法を探るのに時間が掛かっちゃってるんだと思う。念能力は千差万別で脱出に特殊な『発』が必要なゲーム設定にはされてないはずだから基礎スペックが十分なら問題無く帰れるはずとはビアーの推測だ

 

「ええ、ビアーは今h「ただいま!お風呂空いてますか!!」・・・なんでずぶ濡れなのよ?」

 

ポンズのセリフを遮る形でドアが開いて玄関に濡れネズミ状態のビアーが入って来た。磯の臭いがするから海水かな?

 

「泳いだ!」

 

「簡潔過ぎて意味が分からないよ!」

 

そのまま上がられても困るからツッコミと同時にタオルをビアーの顔面に叩き付けておいた

 

晩御飯までもう少しだったのでビアーとポンズがシャワーだけ頂くと言って二人でお風呂場に向かったんだけど、少しするとポンズの「ドーレ港から泳いだ?バカなの?」という声が微かに聞こえてきた

 

念で強化されてるボクで漸く聞こえる程度の声量だったからこの一家には聞こえなかったみたいだけど、本当に何を如何したらそんな遠泳をするハメになるんだか

 

「ホント、ビアーは目が離せないなぁ」

 

半日離れてただけで全然点と点が繋がらない行動力を見せ付けるんだから困ったもんだよ

 

後で何をしてきたのか詳しく報告して貰わないとね

 

 

 

 

 

―――あ、今“ゴチンッ!”って頭に拳骨を落としたような音もした

 




キリが悪く1万6000字程度になりましたねw
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