毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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修行と温泉

G・I(グリードアイランド)の世界に降り立ったゴン達は目の前に広がる広大なフィールドに圧倒されていた

 

とてもゲームの中とは思えない圧倒的なリアルがそこに在ったからだ

 

G・I(グリードアイランド)が現実世界の一部で行われていると知っているビアーも流石に感動する皆に水を差す気は無いのかネタバレは自重したようだ

 

「わあ!これがゲームの中の世界なんだあ!俺はやった事無かったけど、テレビゲームって実は凄いんだね!」

 

「普通のゲームのハードルを爆上げしてやんなよゴン。これから先のゲームの開発陣が全員念能力者が前提になっちまうだろうが。一体何処の魔境だよ?」

 

「そんな事より早く行こーぜ。さっきからこっちを覗いてる奴らに下手にちょっかい出されて時間を無駄にしたくはねぇしさ」

 

「どうしたキルア?やけに乗り気だな」

 

「・・・まっ、ちょっと思うところもあってな。取り敢えず俺の頭に針を埋め込んでた兄貴はぜってーぶっ潰す。その為の修行だろ?目先は旅団だけどな。肩慣らしにゃ丁度良いぜ」

 

「そうか。キルアの家族はかつて旅団の暗殺を請け負った事も有るのだったな」

 

「そういう事―――家族だけじゃなくて家の数百人から居る執事連中も今思えば念を使えねぇ訳がねぇからな。兄弟喧嘩も本気(殺る気)でやろうとしたら一苦労だぜ」

 

「うわぁ。そんなのもう国家規模の戦力じゃん。ボク今ちょっと引いてるよ」

 

「表も裏も関係なく要人から庶民まで暗殺をしてたらその程度の力が無いと潰されてしまうんでしょうね。仕事の内容は褒められたものじゃないにしても、凄い事には違いないわ」

 

歩き出したキルアを追う形で全員がスタート地点から移動を始め、試しにバインダーの出し入れをしてみたりゴンのセーブデータの内容を確認したり(ゲームを楽しめというメッセージのみ)しながら歩を進める

 

遠くからスタート地点を見張っている者たちも子供を含むとは云え7人組のグループに真正面から近づくのは得策ではないと及び腰になったのかちょっかいを掛けてくる者は居ないようだ

 

「さて、歩きながらも早速修行に入るね。皆まだまだオーラ量は少ないし、先ずは『周』に慣れるところから始めましょうか。『周』は『纏』の応用で自分だけじゃなくて物質や道具にもオーラを纏わせる事で強度や性能を強化する事が出来るの。そんな訳で着けてる重しに意識してオーラを纏わせてみて。コツとしては自分の体の一部だと認識するのが大事かな」

 

※キルアにもお下がりの重しを渡してある

 

ビアーの言葉を受けてそれぞれが『纏』の認識を上書きする

 

「おっ!重しがズッシリしてきたぜ。確かに最近軽すぎるなとは思ってたから良い感じだ」

 

「でしょ?ついでに普段使ってる武器や道具も『周』で強化しながら進むようにね。ゴンなら釣り竿、レオリオはケースでキルアは・・・その辺に落ちてる“ひのきの棒”でも強化しといて」

 

「ねぇよ、いくら序盤でもそんなピンポイントで勇者の装備なんざ落ちてる訳ねぇだろ。つかこの世界のプレイヤーの職業は勇者じゃなくてハンターだろうがよ」

 

※そもそもスタート地点は草原なので木の枝も落ちていない

 

「だったらそこら辺の石でお手玉しながら瞬時に『周』をするのを繰り返すように」

 

「俺だけいきなり難易度上がり過ぎじゃね!?」

 

「昨日も言ったけど能力を瞬時に発動させる瞬発力は必要よ?強くなりたいなら文句を言う前にやる!大丈夫、キルアなら一段飛ばしでも習得できるから・・・多分」

 

「指導する本人が自信持ててねぇじゃん!ああ、いいぜ、やってやるよ!さっさとクリアして俺だけ先に進んでやらぁ!!」

 

キルアは適当な小石を三つほど拾い上げて早速お手玉しようとするが“ボウン!”という小気味いい効果音と少量の煙と共に小石は全てカード化してしまった

 

「ゲイン!―――こんなもんまでカード化すんのかよ!一々面倒くせぇなあ!!」

 

すぐに実体化の呪文を唱えて元の小石に戻したキルアが不満を口にする

 

確かに全てがカード化していたら日常生活もままならないだろう

 

「大丈夫よ。レストランとかの食事とかは無駄にカード化しないから」

 

「当たり前だ!もしもそうなら神ゲーに見せかけたデバッグも済んでねぇバグだらけのクソゲーじゃねぇか!」

 

事実、基本は運営が誰かも分かってない為にプレイヤーは文句も言えない仕様である

 

「え~!キルアだけ先のメニューで修行なんてズルいや。俺もお手玉にしようかな~?ね?良いよねビアー?」

 

「う~ん。使い慣れた道具にオーラを通す感覚も知ってて損は無いからゴンとレオリオは片方の手に道具を持って余った方の手で片手ジャグリングしましょっか」

 

ゴンの発言で自分まで修行の難易度の上がったレオリオが「余計な事言うな!」とゴンに詰め寄るが結局置いて行かれるのが嫌なレオリオはジャグリング修行を実行する事となった

 

一番の年長者として自分だけ楽な修行に流れるのはプライドが許さないのだ

 

「最後にクラピカだけど、前に具現化するなら鎖にするって言ってから受注しといた鎖は実はもう此処に在るから選んでくれる?」

 

「選ぶ?」

 

疑問が顔に浮かんでいるクラピカの前にビアーが両手にそれぞれ一本ずつ鎖を持ってよく見えるように差し出し、慈愛の女神のような声音で語りかける

 

「クラピカ。あなたが落としたのはこの普通の鎖ですか?それともこの重しと同じ特注合金製の激重鎖ですか?」

 

「金の斧と銀の斧・・・か?実質である三択にもなってない上に落としてすらいないのだが、まぁ良いだろう―――あの旅団(クモ)を冥府の奥底に縛り付けようと云うのだ。普通の鎖ではなく、そちらの合金製の鎖を貰おう」

 

「そんな簡単に決めて良いのかしら?ちゃんとメリットとデメリットを把握した上で決めた?」

 

ポンズの指摘にクラピカは頷いて答える

 

「当然だとも。重ければ威力は出てもスピードは落ちるだろう―――つまり私が筋トレ(強く)為れば問題無いのだろう?」

 

「・・・クラピカ。貴方もビアーと出会って何処か壊れちゃってたのね」

 

以前ビアーと模擬戦をして渾身の一撃を指で摘まむだけで受け止められたせいかクラピカのパワーに対する重要度の値が高くなってしまっているのだ。重しを着ける事で今まで鍛えてきたはずの己の筋力が数倍に跳ね上がり、戦闘力が爆上がりした事を考えれば妥当かも知れないが

 

そんな経緯で一行はまだ覚束ない『周』で結果として下手くそな変則的お手玉をしながら町へ向けて歩いて行く

 

普通にジャグリングをする者や竿をヒュンヒュンしならせたりナイフをクルクル回したり鎖を舐めたり嗅いだりしながらもう片方の手でジャグリングを続ける者達が真剣な表情で歩を進める

 

ビアーも触発されたのかリフティングも取り入れたパフォーマーのような全身ジャグリングで先導していく―――奇異の目で見られる?知るか!こちとら真剣なんだ!!

 

そんな何処までも人目を惹きながらも何処までも周囲が眼中に無い異様な集団に道中にスペルを掛ける者も町中(アントキバ)に着いた後も声を掛けようとする者も居なかったのであった

 

・・・レツとポンズだけは普通に『円』の修行だったので見た目は大人しいものだったが、もはや逆に恥ずかしかったと後に彼女たちは溢すのだった

 

 

 

 

アントキバを軽く案内がてら注目を集めつつ練り歩き、最低限の買い物を済ませてからマサドラに行く途中の原作ゴン達が修行していた岩石地帯の手前である山までやってきた

 

アントキバからこの山までは精々10キロ程度なのに皆既に疲労困憊(ひろうこんぱい)といった感じだ

 

「いや、これは気疲れも入ってるんじゃないかなぁ?ボクも正直ドッと疲れたし」

 

「町から離れて正気に戻ったが故の反動が来ている感じみたいね・・・まっ、自業自得よ」

 

「畜生。反論できねぇ・・・」

 

ポンズ姉の解析にレオリオが力なく肩を落とす

 

キルアは頭が痛そうにしててゴンも苦笑いだ。最後にクラピカは―――

 

「ふむ・・・味は鉄に近いがやはり少し違うな。オーラを通しても重し(バンド)と違って重量に変化は無い。これは重い素材で作られただけであって、その在り方はあくまでも鎖であると云う事か。さて、次は臭いだな。これはビニール袋にでも入れて吸引すべきだろうか?」

 

・・・うん。片手でジャグリングを継続しながらも鎖に夢中だね

 

流石クラピカ。マルチタスクもお手の物だ

 

傍目(はため)からしてぶっちぎりで変人だったのはクラピカだったまである

 

つまり相対的に見て周囲に居た私達はまともに見えていたって仮説が成り立つのだ!!

 

「なぁ、コイツって何時もこんな感じなのか?」

 

「大体はそうかな。ビアーの半分はおちゃらけで出来てるから」

 

「その時点でろくな人間じゃねぇな。因みに後の半分はなんなんだ?」

 

キルアの問いにレツとポンズが視線を交差させる

 

「「オーラ」」

 

当たり前の質問過ぎて一瞬引っ掛けかと疑ってしまった二人であった

 

そうして主に『周』の修行を続けながらも山の中を暫く進んで行くと前方から複数の気配が近づいてきた。様子見なども無い突撃の気配に皆が臨戦態勢に入り、数秒後には目の前にこの山を根城にしている山賊たちが土下座姿で飛び掛かって来たのだ

 

『―――どうかお助け下さい~~~!!!!』

 

うん。流石に皆ぽかんとしてるわね

 

「・・・ねぇビアー。あの姿勢って以前(『待機と勉強』)にビアーがやってたやつだよね?」

 

「そうよレツ。あれこそが島国ジャポンの最高ランクの相手を立てる表現方法。DO☆GE☆ZAよ。中でも彼らが今披露してくれたのは最上位の更に上澄みであるスライディングDO☆GE☆ZA。しかも集団で敢行してるから敬意度は倍プッシュ。一糸乱れぬコンビネーションも流石ね―――因みに私が知ってる最上級は熱した鉄板の上でやる焼きDO☆GE☆ZAね」

 

日本について変な事吹き込むなって?HAHAHAHA!この世界のはジャパンじゃなくてジャポンだもんね!なんの良心も痛まないよ

 

「前に食べたお汁粉もそうだけど、ジャポンって怖い所なんだね」

 

「ハンター試験でハンゾーさんからジャポンに行ったら名所を案内するって名刺渡されてたけど、観光はしない方が良いのかな~?」

 

「大丈夫。ジャポンの人達だって何か有っても謝れば大抵の事は許してくれる気質の人達みたいよ?謝罪の場合最上位のやり方はHARAKIRIね♪」

 

切腹とも云う

 

「死ぬわ!しかもそのやり方じゃ即死は出来ねぇだろうから散々苦しんでから死ぬわ!!もっと普通の謝罪はねぇのかよ。大丈夫かジャポン文化!?」

 

「なら一段下のエンコ詰めが有るわよ。謝罪の意を表すのに指を切り落とすの。基本は第二関節を切り落とすから両手両足で最大20回。第三関節分まで周回すれば40回まで謝れるわね」

 

重めのミスをしても40回も謝れる(許されるとは言ってない)なんて実は寛容なのかな?

 

「しねぇ~!!絶対にそんな謝り方なんてしねぇ~!!そんときゃさっさと海外にでも高飛びして雲隠れさせて貰うぜ。そんなイカレた種族のルールに付き合ってられるかってんだ」

 

敬意も謝罪も真面に払えないなんてレオリオは本当に我儘ね。切腹なんて武士のお家芸だったってのに・・・現代価値観からするとマジで狂ってるわよね。文明の進歩万歳だわ

 

「ねぇ。そろそろこの人達どうにかしない?さっきから「どうかお助けを」ってセリフをループ再生してるんだけど?それにさっきから咳が酷いし、風邪って設定なのかな?」

 

ああ、こっちがリアクションを起こさないからずっと土下座のままだったわね

 

「そのゲームキャラのイベントは済ませてあるから無視で良いわよ。一度バインダーの全アイテムと手荷物を明け渡して呪いを解くアイテムを持って再度訪れるとランクAの指定ポケットカードが貰えるようになってるの―――奪われた物は帰ってこないからゴンの釣り竿とかレオリオの医療器具とかクラピカの(オモチャ)も完全にロストしちゃうからね」

 

原作ゴンなんて初期装備の釣り竿を此処で失ってたはずだ。幾らなんでも勿体無さすぎる

 

「さっきまで居たアントキバで迷子の犬を探して貰える“呪われた幸運の女神像”とか他幾つかの呪いのアイテムを同じくアントキバの主に月例大会で入手できる指定ポケットカードの『聖騎士の首飾り』で呪いを解くとこの山賊たちが流行り病とかじゃなくて呪われてるんじゃないかって匂わせ情報を入手できるのよ」

 

ふっ、これが先行プレイの力ってやつさ

 

・・・答えを知ってると逆算が楽だよね~♪ちょっと金策で町で買ったリンゴ1個を片手にこの山と町をシャトルランして幾つかの『奇運 アレキサンドライト』はお金に変換させて貰ったからこれでもうBランクの指定ポケットカードは何時でもマネーパワーで入手可能だ

 

病気と聞いて診察に赴こうとするレオリオの首根っこを引っ掴んで山賊たちをスルーし、目的地である岩石地帯までやって来た私達は道中のモンスターを躱しつつモンスターの縄張り外の安全な空白地帯に拠点を置く

 

「ゲイン!」

 

バインダーを開いてフリーポケットから椅子やらテーブルやら小道具やらを実体化する

 

更に指定ポケットのページも開いて2枚取り出すとそれらも実体化する

 

「ジャジャーン!ナンバー003、『湧き水の壺』とナンバー009、『豊作の樹』!一日で1440ℓの水が溢れる壺に毎日色んな種類の果実がこれでもかって程に生る樹よ。壺の方は蓋をしておけば供給も止まるから拠点が水浸しになる心配はしなくて良いから好きに使ってね」

 

樹を見上げれば分類上野菜のメロンやスイカやイチゴなんかも生ってるけど、気にしたら負けだ

 

丸々と肥えて瑞々(みずみず)しいイチゴを手に取ると口の中に放り込む―――う~ん♪甘くて美味しい♡

 

後はフルーツの王様=パイナップルは歓迎するけど、果物の王様=ドリアン(超臭い果物)が実らない事を祈るだけだね。アレって臭い指数が納豆の10倍程度は有ったはずだし

 

「おおお!!?マジかよ。これだけでも夢のアイテムじゃねぇか!」

 

「確かにこれは驚きだな。樹もそうだが特に壺の方はともすれば環境さえ変えかねないぞ」

 

水は全ての資本と云っても過言じゃないからね

 

仮にこの壺を砂漠や荒野のような乾燥地域の原住民に渡したなら神の壺として崇められて、欲をかいた誰かさんが持ち逃げしようとして争いの果てに壺が壊れる未来まで見えるようだね!

 

「なんでアンタはそんなネガティブな方向に思考を飛ばしてんのよ!」

 

私の頭から“バシンッ!”と鈍い衝撃音が響く

 

ポンズ姉のスチール製ハリセンが振り抜かれた音ね。やっぱり収納系の『発』は便利だわ

 

「それじゃ皆今日のところは此処に来るまでの修行を続けつつ腕立て腹筋なんかの基礎トレに励んでて頂戴(ちょうだい)。私はまた少し外れるからレツとポンズ姉はゴン達の事もお願いね。夜が遅くなる前には帰って来るつもりだけど、晩御飯は食べちゃってて良いからね」

 

バインダーから食料のカードを取り出してポンズ姉に預けると岩石地帯を後にする

 

呪文(スペル)カードが無い以上は結局最初は自分の足で走るしかない

 

なに、これも修行だと思えば問題は無い。クリアが目的でない以上、移動用スペルは甘えだ

 

「私は放たれた一発の弾丸!―――私は!今!風に為るぅううううううう!!!」

 

地図は頭の中に在るから目的地まであらゆる障害を物理で飛び越えて最短で進めば最速で辿り着くんだよ!

 

・・・遥か後方から「風か弾丸かどっちかにしなさい!」ってツッコミが聞こえた気がする

 

ポンズ姉のツッコミは私にとっての“行ってらっしゃい”に為りつつあるわね

 

 

 

 

ビアーが地面を踏み込む時の連続した重低音を耳にしながら彼女が走り去った方角を見詰めていた者たちはそれぞれが呆れや羨望などの思いを描く

 

共通しているのは漠然(ばくぜん)とした凄いと云う感覚。一言に纏めるなら“(おそ)れ”であろうか

 

もしもゴン達が『凝』を習得していたなら巨大なオーラのドームが移動している様がその目に映った事だろう

 

流石にこのゲームの中で全てのオーラを『円』に回す真似はしてないが、ビアーからしてみれば僅かなオーラでも大多数の念能力者の『練』を遥かに上回るオーラなので問題は無いと云える

 

「弾丸って言ってもビアーの体当たりは88ミリ砲(アハトアハト)より高威力だよね」

 

「そうね。それに風も音速超えてるからソニックブームだし、普通に殺人風ね」

 

一般人なら一瞬でミンチになる事請け合いだ

 

固体(ミンチ)よりも半液状(ミートソース)の方が表現としては近いかも知れない

 

「それじゃあ貴方たちも修行に戻るわよ。今は『周』をマスターして無駄にオーラの消耗をしないようにね。分かってるとは思うけど、それを『練』で増幅したオーラで重しを強化すれば基礎体力の向上にも繋がるわ。半年で幻影旅団と戦うなら死ぬ気で修行しないとホントに死ぬわよ」

 

「ハッ。死ぬような修行なんて今更だぜ。言われなくてもやってやるよ」

 

(ガジガジ)私も異論は無いが(ペロペロ)・・・ビアーは何をしに行ったのだ?(レロレロレロレロ)

 

「さぁ?あの子って説明が簡潔な事が多いから後で纏めて知る方が手間が掛からなくて良いのよね。その代わりツッコミ疲れはするハメになるんだけど―――あと喋る時に口に物を含まない!ぺっ!しなさい。ぺっ!」

 

「ビアーの行動力って基本的に明後日の方向に向いてるからね。それなのにちゃんと合理性や利益も内包してるのがある意味で(たち)が悪いんだけどさ。それとポンズも今のはなんだか世の教育ママみたいな言い回しだったよ」

 

買って貰ったばかりの(オモチャ)を口に入れて遊ぶ幼児への対応だ

 

なお、四六時中鎖と(たわむ)れろと言ったのは彼女たちである。1分1秒でも早く強くなりたいクラピカはTPOに配慮する気など無いのだ

 

今もポンズ達の会話を聞きながらも鎖と鎖をぶつけて鳴った音に耳を傾けている

 

ある意味果てしなく真面目なのに何処までも不真面目に見える悪い例である

 

「こんなデカイ子供要らないわよ」

 

「じゃあ恋人とか?」

 

外見だけで言えば恋人とかが居ても可笑しくない年頃の美形二人だ。勿論本気ではないが、ニマニマと揶揄(からか)うように言うレツにポンズはやれやれとばかりに首を横に振る

 

「―――無いわね。考えてみなさい。だって性別不詳(クラピカ)よ?女の子だった(万が一の)時どうするのよ?」

 

「確かに」

 

「待てキミ達。なんだか私の尊厳にも関わりそうな変な納得をするんじゃない」

 

流石に聞き流せなかったのかクラピカが鎖を弄るのを止めて抗議の声を上げるが無視される

 

彼(?)は誤解を招きたく無いのならせめて一人称を『俺』に変えるべきだろう・・・そっちが正解なのかは議論の余地が有るだろうが

 

それからは暫く地味な筋トレの時間が過ぎる

 

(もっと)も地味なのは見た目だけでゴン達は慣れない『周』を切らさないようにしつつの修行で肉体的よりも精神的な疲労が酷いのだが

 

「はいはい。ずっと『周』だけって訳にもいかないから状態切り替えていくわよ―――『絶』『練』『纏』『周』『練』『絶』『周』『纏』『練』しながらの『周』!そのまま片手倒立3分維持左右でやりなさい。終わったら5分休憩。その間はお手玉(『周』)して遊んでて良いわよ」

 

「「「「鬼か!!」」」」

 

「ビアーと一緒だと旅の途中でも最低1日2回はぶっ倒れてたのよ?それはここ数日であんた達も体感してきたでしょうが―――大丈夫よ。(あきら)めの境地を超えた先に、無我の世界は広がってるわ」

 

「最初はオーラを出し切った後は体が動かないと思うけど、馴染んできたら回復も早くなるしね。と云うか早く回復しないと旅で歩くのもしんどいからさ。『纏』も『絶』も寝ながらでも維持出来ないとこの先キツイよ」

 

遠い目をしたポンズとレツの姿にゴン達も押し黙る

 

修行バカ(ビアー)の弟子でもある彼女たちが楽な修行をさせて貰えているはずも無かったのだ

 

ポンズの才能で旅をしながら月平均40分『練』の持続時間を伸ばす?どう考えてもハードスケジュールである

 

初期の頃はゲr・・・それはそれは美しいゲーミング色の(よだれ)少量(大量)口から零れる事も有ったりもしたのだ。美少女の体とは不思議な不思議な性質である―――ツッコミ不要

 

レツはまだしもポンズは本気で鍛えないと原作のインフレで普通に死にかねないとのビアーの優しさと気遣い溢れるスパルタだとはビアー本人以外、誰も知らない

 

そんなこんなで日も沈み、死屍累々の有様となっていたところに汗だくのビアーが帰って来た。限界ギリギリまで全力ダッシュを敢行したのだろう

 

「ただいまー!ってアレ?皆まだ晩御飯食べてなかったの?」

 

「あ、お帰りビアー。うん、皆意地っ張りな上に途中からランナーズハイみたいな感じになって止め時を逃しちゃってね。水を沸かしてご飯(レトルト)を煮込む間に例の壺の水で汗を流してからご飯を食べようって話になったんだ。オーラ量の関係でボクだけは皆に比べて疲労はまだ軽かったからボクが夕飯担当だよ」

 

そう報告するレツも生命エネルギーはまだしも基礎体力のトレーニングの影響でよく見れば腕がぷるぷると震えているのはご愛敬だ

 

「・・・あら、ビアー・・・思ったより早いお帰りね。ちょっと待っててくれる?私から水浴び済ませちゃうから・・・男子どもは覗いたら殺すわよ」

 

レツの次にオーラ量の多かったポンズが未だ倒れ伏すゴン達に警告するが立ち上がるのも億劫(おっくう)な彼らにそんなつもりは無い

 

・・・と云うかそもそもそんな邪心を秘めてるのはレオリオくらいしか居ない

 

しかしそこでビアーからの待ったが掛かった

 

「じゃあ丁度良かった。水浴びよりもこっちにしましょ。―――ブック!これを獲りに行ってたんだよね。ナンバー004『美肌温泉』」

 

「「温泉!?」」

 

肌の悩みは未だ抱えていない二人だが疲れ切った体に温泉というキーワードはよく響いたようでビアーの持っているカードに詰め寄る

 

「そっ、そこら辺の岩山を砕いてサークル状に設置して石壁にすれば周囲からは見えなくなるし、皆で一緒に入りましょ」

 

「皆っ、つまり混浴!!?よし!直ぐやろう。今やろう。全力で下準備を手伝わせて頂くぜ★」

 

一瞬で気力がMAXまで回復したレオリオがキビキビとした動きで立ち上がるがクラピカ達は冷めた表情だ

 

「レオリオ・・・先ずは女性陣からという意味に決まっているだろう」

 

「ば~か」

 

「お風呂だって!泳いでも良いかな~?」

 

完全なる無邪気が一名紛れているが、さっきまで疲労困憊(こんぱい)で倒れてたのに泳ごうと言う辺り子供の遊びに対する体力は無限と云う事なのだろう

 

「レディーファーストの精神は良い心がけだけど、そんな気遣いはしなくて良いわよ。何時でも汗を流せるように気軽に入りたい時に入れば良いわ」

 

「「な、なに~~~!!?」」

 

今度はスケベ心を持つレオリオだけでなく、ませた子供でもあるキルアも同時に反応する。尤もキルアの方は“正気か?”という意味合いが強いのだが

 

「それじゃ場所を造って来るからちょっとだけ待っててね~♪」

 

走り去ったビアーが近場の岩山を2メートル前後の大きさに砕いて並べていく

 

岩山の下の部分はあえて残してかまくらのようにくり抜き、温泉の場所と隣接させる事で外からは絶対に見えない簡易の脱衣所まで設置する徹底ぶりだ

 

然程(さほど)時間を掛けないで戻って来たビアーに連れられて他の皆が既に実体化してあった温泉ゾーンへ辿り着いた

 

「はい!男湯と女湯。両方用意したわよ!いや~、バインダーに最初から1枚はカードは入ってたんだけど、指定ポケットのカードって同じナンバーの箇所にしか入れられないから態々獲って来る必要が有ったのよね。フリーポケットだと島外に出るとデータ消えちゃうしね」

 

温泉を囲っている岩には直接〔男〕と〔女〕と掘ってある。これで『間違えました』なんて言ったら磨り潰されるだろう・・・何処がとは言わないが

 

レオリオはその場でガックリと(うつむ)いてしまったが、気にする者は誰も居なかった

 

レツやポンズもビアーがそんな事(混浴)なんて許す訳がないと確信していたから特に何も言わなかったのだ

 

「・・・ちょっと待ってくれ。男湯と女湯は分かる。入浴時間をずらせば良いとも思うが、在って困るものでも無いからな。だが、その奥に在る三つ目の温泉に私の名が掘ってあるのは如何いう意図なのだ?」

 

「え?だってクラピカの性別ってクラピカでしょ?」

 

「何故私一人の性別が独立したカテゴリーとして分類されているんだ!!」

 

レオリオとキルアが笑いを堪えて変な表情となりながら激昂するクラピカの肩を左右それぞれで“ポンポン”と叩く

 

「良かったじゃねぇか男女(クラピカ)。一人だけの貸し切り温泉とかお前だけ好待遇で羨ましいぜ、この野郎。おっと!“野郎”はもしかしたら失礼だったかな。じゃ、俺らはこっちみたいだからお前も一人、いや、独りでしっかり疲れを取れよ」

 

「あ~あ~、俺も専用の温泉欲しかったな~(棒読み)・・・で、結局どっちなんだ両性類(クラピカ)?」

 

揶揄(からか)っている事を欠片も隠しもしない非常にウザイ二人の態度にクラピカの瞳が朱く染まっていく

 

「・・・旅団(クモ)の前にお前たちを地獄に縛り付けてやろうか?」

 

オーラを使い果たしていたにもかかわらず今日一番の『練』による威圧を見せ付けるクラピカはもう爆発寸前だ

 

「よく分かんないけど、クラピカも一緒に入ろうよ!皆一緒の方が楽しいよ!」

 

「ゴン・・・」

 

そんなおっかないクラピカにも無知で無邪気な声を掛けるゴンのお蔭でクラピカも気が抜けたのかオーラを収めた。やはり天然(てんねん)は強い

 

結局クラピカ専用の温泉は使われる事は無く全員湯上りでサッパリしてから晩御飯を胃の中に流し込み、吐かない為にも暫くはオーラの精密操作の修行に時間を費やしてゆくのだった

 

・・・なお、クラピカがどっちの温泉に入ったかは明言を避けるものとする

 

 




作者は普通にクラピカは男だと思いますねw
次回からビアーも本格的に修行に移っていきます
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