毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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ご飯とドライブ

ヨークシンシティの9月1日

 

今日はこの街にとって特別な日だ

 

この街では競売は常日頃から行われているが、このドリームオークションでは文字通り夢のようなお宝が世界中から集まってくる。オークション期間中に出品される品々は普段のオークションで扱われる品とは一線を画しているのだ

 

勿論1年を通して観れば大きなオークションは他にも在るが、あらゆるジャンルの最高峰のお宝が一堂に会するのはドリームオークションを置いて他にない

 

だがそれは表向きの話

 

裏ではマフィア達も非合法なお宝の数々を・・・などといった事では無く、この日の夜にとある場所で行われる地下競売でA級賞金首集団である幻影旅団が全てのお宝を奪い、世界中のマフィアに真正面から喧嘩を売るに等しい所業を為す特別な日であるのだ

 

これに比べたら毎年行われてる地下競売など何でもない日常の一コマに過ぎないだろう

 

そんな運命の日と呼んでも過言ではないその日にビアー達はと言えば対旅団に向けて心身を練り上げ、綿密な計画や道具の手入れなど、あらゆる事態を想定した最高の警戒態勢を築いて―――

 

 

 

「あっ!?テメェ、レオリオ!そのポテトは俺が頼んだやつだぞ。なに先に手ぇ付けてんだ!先ずは俺に寄こせ俺に!!」

 

「あ~ん?聞こえねぇな~?―――カァアアア!やっぱビールのツマミにゃ塩味の利いたもんに限るぜ~!お子様は(ホテル)に帰ってさっさと寝たらどうだ?残りの注文は俺たちが片付けてやるぜ」

 

「この後用事も控えているのだ。ほろ酔い程度で抑えておけよ。医者志望というその頭の中にランチョンミートよりマシな記憶媒体が入っているならな」

 

「だぁれが物事を1ビットも覚えられない低能脳みそだゴラァアアアアア!!」

 

築いて―――

 

「ほらレツ~♪このスープ美味しいよ。はい、ア~ン♡」

 

「嫌だよ。ボクだって流石にそれをやられて嬉しがるような歳じゃないんだから・・・なんでそんなに泣きそうになってるのさ?何処まで本気だったの!?普通冗談だと思うじゃん!!」

 

「むぅううう。ならポンズ姉―――」

 

「却下。あっ、店員さん。この“季節のサラダ盛り合わせ” お願いするわ」

 

「うえ~ん!ポンズ姉が塩対応してくるぅうう!!こうなったらヤケ食いしてやる!食事はパワーの源。このオークション期間中は何時(・・)どんな事が起きるのか(・・・・・・・・・・)分からないんだし(・・・・・・・・)、食べられる時にはしっかり食べとかないとね!ほら、ポテトの次は唐揚げも来たわよ。男子はしっかり食い溜めしときなさい―――まさかこの中に、唐揚げ(カロリー爆弾)マヨネーズ(カロリー爆弾)掛ける事日和(ひよ)ってる奴居るぅううう??居ねぇよなアアア!!??」

 

「なんでチンピラ風になってんだよ?それと左手の皿に小分けにした唐揚げと右手のレモンをちったぁ隠してから言えってんだよ!!」

 

「大丈夫。私女の子だから!―――キルアは男の子だからね。漢は黙ってマヨネーズよ!」

 

「世の中のレモン派の男子全員を無駄に敵に回す発言してんじゃねぇよ!!」

 

 

・・・楽しく晩御飯の真っ最中だったようだ

 

 

 

いや~、っぱ唐揚げにはレモンだよね~♪

 

マヨネーズとかも否定はしないけど私の中でのベストマッチはレモンなのよ

 

さ~て。ヤーさん達の地下競売(アンダーグランド・オークション)が始まる時間はそろそろかな?始まりの挨拶とかも考えたら既に原作通り旅団のフランクリン辺りが(マフィア)を皆殺しにしている最中かも知れないわね

 

え?虐殺を阻止したり幻影旅団を捕まえに行かないのかって?

 

やだなぁ、前者に関してはそもそもマフィアを頑張って助けるような義理なんて無いじゃん?

 

ジュエールさんも言ってたけど、ガス抜きはしないとね。折角彼らがヘイトを買ってまで大掃除をしてくれるんなら見守るまでよ

 

そりゃクラピカが此処に居たりバショウとかも『キレイなハッパ』とかで影響与えて彼やセンリツみたいな原作キャラがバタフライエフェクト的に死んだりしたら残念には思うけど、私達はこの世界に生きるプロハンターで、動機は何であれマフィアに自分から関わっているなら自己責任でしょ

 

偶々目の前で殺されそうな場面に遭遇とかしたら助けるくらいはするだろうけど、積極的に関わるには接点とかも含めて色々と足りてない

 

後はマフィアが突然大量に居なくなれば多少の混乱は生まれるだろうけど、例の『キレイなハッパ』で割を食ってるマフィアもどうしたってそこそこの数は居るはずだし、一度分母が減ってくれた方が私の(NGL)としても安定性が上がるしね

 

マフィアが力を持ちすぎて良い事なんて無いのよ。マフィアは必要悪だけど、それも表側の人間からしたら地方のチンピラを取りまとめる程度の役割しか期待してないんだから

 

そして後者の旅団を狩り(ハント)しないの?ってことに関してだけど、幻影旅団がヨークシンに来てるなんて情報知らないんだもん

 

何を言ってるかって?よくよく思い返して欲しい

 

クラピカがハンター試験でヒソカから聞いたのは『旅団(クモ)について良い事を教えて上げるから9月1日にヨークシンで逢おう♡』という内容だけだ

 

ドリームオークションが開催されるから旅団も多分来るんだろう・・・と、それ以上の事はその情報からは分からない。てか向こうが会いたいと言った日時には既に旅団が大暴れした後とか普通思わないじゃない?せめて昨日を指定しろよって話だ

 

旅団(クモ)が襲いそうなところにアタリを付けようとしても、目玉商品なんてこの開催期間中は何処にでも転がってるようなもんなんだから、前情報無しでピンポイントに『地下競売周辺を張ろう!』とか適当な言い分を考えるのが面倒くさいのよね

 

「すみませ~ん!この【季節限定・メガ盛りメロンパフェ スーパーDX】下さ~い!」

 

・・・とまぁそんな訳で今はマフィアの命(大量)よりこのスイーツの方が大事よね♪

 

無駄な正義感だけじゃ腹は膨れないのだよ諸君!

 

ある程度腹も膨れたところでやって来たこのメロンチップスにメロンのスポンジにメロンのアイスの層の上にメロンのソフトクリームにメロンの濃縮タレを垂らしてメロンのゼリーに生メロンの切り身とメロンのポッキーをぶっ刺した酸味と甘味や苦味などの調和とかって概念に真っ向から喧嘩を売る期間限定の・・・と云うか期間限定でしか売れそうにないパフェが私の目の前に置かれる

 

別にメロンが死ぬほど好きとかじゃないけど、こういう少しふざけたメニューって時折無性に食べたくなったりしない?私はする!

 

それじゃ早速頂きま~・・・

 

 

ブォン!ブォン!!

パッパーッ!ブッブー!!

パンパンパンッ!!

 

 

「ねぇ、何だか外が騒がしくない?」

 

「・・・こんな街だしね。お祭り中だし浮かれたヤンキーがバイクでも唸らせてるんじゃない?じゃ、改めて頂き・・・」

 

 

“ブー!ブー!!”

“ガッシャーン!!”

「オラオラァ!さっさと道開けろ。ぶっ殺すぞおおお!!」

「ぶおん!ぶおおおん!轢き殺されてぇのかバカやろこの野郎めぇ!!」

「葬式してぇのかバカやろこの野郎めぇ!!」

 

 

銃声らしき音とかも聞こえるけど、きっとアレよ。運動会とかで使うスターターピストルとか爆竹とかそこら辺のオモチャの類よ

 

なんか明らかにバイクのマフラー音を口真似してる芸人(いつもこ〇から)も混じってたし、ひょっとしたら他の物騒だったり(やかま)しかったりする音は全部偽物だったりするのかも

 

「読めた!外の連中はただの大規模なデコチャリ同盟よ!」

 

この件に事件性なんてナッシング!そうと分かればこのパフェにスプーンを突き立てて―――

 

「それは流石に無理が在り過ぎるだろう。幾ら祭りの期間中とはいえ、そのようなデコチャリ如き(・・)、特殊な趣味の持ち主達が街を騒がすほどの数で一堂に会するとは思えん。さらにヤンキーの線も考えにくい。この街には今、世界中からマフィアが下は下っ端から上はボスに至るまでもが集まっている状態だ。地元のチンピラならばこそ、この時期に派手な活動は控えるだろう。いつ虎の尾を踏むとも知れないのだからな。ならばこれは・・・」

 

ああ!皆がどんどん真剣な顔つきに成ってきてる。私を気持ち良くパフェにかぶり付かせてよ!堪能させてってば!

 

「てかその前にクラピカ!デコチャリ『如き』とかデコチャリの事をバカにし過ぎじゃない?デコチャリってやつはね、垂れ流される寝てても飛び起きる大音量に都会のネオンにも負けない全方位を照らす光の衣。ペダルを廻せば羞恥心(しゅうちしん)とセンスと人間性を加速度に比例して背中に置き去りにするスーパーマシンなんだよ!」

 

デコチャリの謎具合はかのパリコレに匹敵するカオス指数を弾き出しているって何処かのデータで見たこと無い!

 

「何でキレてるのさ!?てか無いの!?それとその説明なんのフォローにもなってないからね。むしろビアーの絶対乗りたくないって強い意思が滲み出てるからね!?」

 

レツ。さり気に私の心の声にもツッコんで来るとはもうこれガチ恋レベルだよね!ツーカー的な意味で・・・“つぅと言えばかぁ”ってどんな語源なんだろ?

 

※ 「つぅことだ」と言った相手に対し「そうかぁ」と内容を聞かずに答えられる様が有力な説とされている(諸説あり)

 

「そりゃそうよ。だって私が乗ったら爆音で近隣の建物の窓ガラスは全部割れちゃうし、ライトのせいで大量の失明者の量産や木造の建物とかなら通り過ぎた一瞬でも普通に燃えかねない戦車よりも質の悪い兵器に早変わりしちゃうわよ」

 

小さな町程度なら私が少しサイクリングするだけで半壊しちゃうと思う

 

「なんでアンタは自転車に乗るだけでも『周』で強化することが前提になってるのよ?」

 

「え?だって重しに潰されない為には自転車を強化するしかないじゃん?ポンズ姉とレツがこの神字の重しを作ったんだから普通の自転車が耐えられない事くらい判るでしょ?」

 

重しそのものに『周』をしなくても素で総計400キロなのを神字で2倍にしてるからね

 

神字無しでも本体である私が一番軽いまであるし

 

兎も角、素のまま乗ったんじゃ自転車のフレームはひしゃげちゃうし、タイヤも潰れちゃうわよ

 

「お前の頭には重しを外して自転車に(またが)るって選択肢は無いのかよ?あと一応言っとくがお前は今後絶対にデコチャリに乗るなよ?フリじゃねぇからな?嫌だぜ、将来デコチャリの急患たちを面倒看るなんてよ。デコチャリの急患てなんだよ?訳分かんねぇよ」

 

確かにそれだとデコチャリ『が』急患(?)として来たみたいね・・・病院じゃなくて自転車屋に行け。その患者(マシン)に必要なのは医者(ドクター)じゃなくて修理業者(リペアマン)

 

「そんな事より外の騒ぎだろ。マフィアの連中があれだけ怒り狂って堅気(かたぎ)への迷惑度外視で動いてるって相当だぞ。幾ら警察や市長とかと癒着しててもマフィアが暴れてるのを公安が無視や隠蔽(いんぺい)できる範囲にも限度が有るんだからな」

 

くぅ。なんとか話題を逸らせたと思ったけど、やっぱり現在進行形で外が喧しいと焼け石に水にしかならないか

 

「だが、たとえ世界中のマフィアと全面戦争になろうとも意にも介さないだろう連中がこの街に来ている可能性が高い事を我々は知っている。どうあれ真偽を確かめる為にも彼らの後を追う必要は有るだろう」

 

クラピカは財布から札束を抜き取ると机に叩き付ける

 

「すまないが急ぎの用が出来たので会計はここに置いておくぞ。残りはキミのチップとしてくれ」

 

近くに居た店員にそう告げると他の皆も椅子から立ち上がり出口へと向かう

 

「ほらビアー。さっさと行くよ」

 

「待ってよレツ!一杯、せめて一杯だけでも!!」

 

「そこは普通一口じゃないの!?なんで全部食べる気満々なのさ!?」

 

「なら、ポンズ姉の帽子の中に仕舞えば―――!!」

 

「グラスはお店のだから勝手に持ち出したら泥棒でしょうに。それに私の帽子は時間が停止してる訳でも無いから溶けるわよ?あと流石にそんなモノを入れたらあの子達(シビレヤリバチ)が群がって終わりよ」

 

うぅ・・・確かに一瞬で(たか)られる様子しか想像できない

 

詰め寄った勢いのままポンズ姉に片腕を掴まれた私は店外へと連行されて行く中でも遠ざかるパフェに未練がましく手を伸ばす

 

「私のメロンパフェ~~~ッ!!」

 

店の外へと出てゆっくりと閉まっていく扉を見届けた私はやっと伸ばした手を下ろし、対幻影旅団へと頭を切り替えていくのだった

 

 

 

 

「さて、どう(コロ)す?」

 

私のパフェを廃棄物にした罪は重いよ?

 

 

“バヂ~~~ンッ!!!”

 

 

私の今後の作戦を練る為のシンプルな第一声はポンズ姉が私の頭をハリセンでぶっ叩く事で応えた

 

スチール製のハリセンが引き起こした余韻の残る金属音が木霊(こだま)する

 

「何時までパフェの事引きずってるのよ!さっさと切り替えなさい」

 

「パフェなんて一言も言ってないじゃん!?冤罪(えんざい)よ、冤罪(えんざい)!」

 

あとそのハリセン強度強化とか衝撃強化とか色々神字が盛り込んであるみたいだけど、何時の間にそんな小細工したの!?

 

「あ~、ビアー。お前さんはこのパーティーで最大戦力且つリーダーでも有るんだ。あまり先走った行動をしない為の場を(なご)ますジョークの類だろうよ。先ずは冷静になろうぜ」

 

「レオリオの言う通りだぜ。俺たちは強くなったけど、念での実戦経験は明らかに不足してるんだ。お前がそんなんじゃ勝てるもんも勝てなくなるっての」

 

うん?言ってる事は決して間違ってないんだろうけど、二人のセリフのこの違和感は何なの?

 

なんだか腑に落ちない感じを抱きながらも黒い高級車の群れの後を追う事になった

 

「出来れば向かう途中でも情報は出来るだけ欲しいわね。適当にマフィアの車を奪ってしまいましょうか。あの様子なら全体通信のチャンネルは繋げてる可能性は高いわ・・・レオリオは一杯程度ならまだ酔ってないわよね?」

 

「ああ、残念な事にほろ酔い以下ってかそれももう覚めちまったよ。運転は任せな」

 

「よっしゃ!ゴン、お前が適当な最後尾辺りを走ってる車の足を止めろ。俺とレツがその瞬間に中の奴を気絶させて放り出すからよ。俺が運転席側やるからレツは助手席側な」

 

「O.K。ならあの車にしようかな」

 

ゴンは背中から愛用の釣り竿を取り出すと“ヒュンヒュン”と先端を(しな)らせるとそれっぽい車たちが道路の角を曲がっていく場所の一台に狙いを定めて釣り針を車に引っ掛けて力任せに引き寄せる。その引っ張られた勢いで軽く浮いた車体が目の前に来たらその下に潜り込んでキャッチすればゴンの仕事は完了だ。ゴンが支えてる間にキルアとレツが素早くドアを開けると未だに謎のジェットコースター体験で目を白黒させている強面(こわもて)スーツの人達を首トンで気絶させて車外に放り出す

 

「ゴン。もう下ろして良いぞ」

 

「了~解!」

 

いや~、レツもチンピラを気絶させ続けてきた経験のお蔭で首トンなんて地味に高等な技術も普通に使えるようになったんだね~。お姉ちゃん嬉しいわ~♪

 

「取り敢えずビアーの機嫌を直すにはレツかポンズを活躍させておけ(・・)ばO.Kってか?」

 

「その微妙なオヤジギャグは狙ってんのか?だとしたら寒いぜ中年(レオリオ)

 

なんかキルアとレオリオが殴り合いを始めたけどその間にゴンがもう1台を釣り上げて仕方ないのでキルアの代わりに私がヤの付く自由業な人達を道端の邪魔にならない場所に放り投げる

 

お祭り期間中だし、酔っぱらって寝てたとでも思われるでしょう・・・組織の人達には後で(超)怒られるかもだけど、死ぬよりはマシだったと思って貰うしかないね

 

ワンチャン大混乱で有耶無耶(うやむや)に流されるかも知れないし

 

そんなこんなで女子チームと男子チームでそれぞれ車に乗り込んで郊外へ向かう黒塗りの車の団体客の中へと紛れ込んで後を追う事にした。クラピカは勿論私達の車で運転役だ。拒否権は無い

 

(しばら)く車で移動しながらも狙い通り現場と直接繋がってるチャンネルが有ったのでそちらの内容に耳を傾けると荒野で戦闘が起きていて、敵の一人の大男が単身で仲間たちを紙屑のように千切っては投げを繰り返してる所らしい

 

うへ、幾ら好きな漫画のワンシーンでもスプラッタの真っ只中には向かいたくないなぁ

 

そんな風に気が進まないでいるとクラピカとポンズ姉のマジメ組は無線から聞こえてくる内容を分析してるみたいね

 

現場は大分混乱してるのか、まともな報告とかは無しに叫び声と銃声ばかりだから聞きにくいったらありゃしない

 

「拳銃やサブマシンガンみたいな一発の威力の低い弾では効果は薄いみたいね。危険度A級の念の使い手なら妥当なところかしら?」

 

「待て。ただの弾丸程度であれば念能力者なら大半は防御可能なのではないか?具現化系の私でも小銃くらいの威力ならば問題無いと思うのだが―――」

 

「そうね。間違ってはないわ―――ただし『凝』を使った上で単発ならって条件が付くけどね・・・ずっと半ば隔離状態で修行漬けだったから無理もないけど、この一件が片付いたら天空闘技場の200階クラスの試合を観戦してみると良いわ。一般的(?)念能力の中での上澄みがどの程度のレベルか知れるから」

 

まぁただの200階クラスとか才能の暴力であるゴン達主人公組からしたら念に目覚めて10日辺りで大半は追い抜いてるでしょうからね

 

ポンズ姉がクラピカの常識を若干修正してると無線から大男がバズーカ砲を片手で防いだという情報と陰獣が動くから今向かってるマフィアは邪魔だから引き返せとの指令が下っていた

 

先行している人達はどうせ全滅するし逃げられないって事なんでしょう

 

「ビアー、陰獣って何の事かな?」

 

「陰獣はこの世界の6大陸を10地区に分けてそれぞれの地区のマフィアを統括してる10人のマフィアのボスである十老頭(じゅうろうとう)がその地区最強の念能力者を集めて組織した10人からなる実行部隊ね。最強マフィアランキングトップ10って感じかな?普通のって言ったら変だけど、普通のフロアマスターよりは強いんじゃない?仮にも裏稼業の人達なんだから実戦経験も豊富でエグイ手段も辞さないでしょうし」

 

原作じゃ幻影旅団の強さを引き立てる噛ませ犬としてあっさり死んでたけど、あれは単に相手が悪過ぎただけでしょう

 

人間サイドで陰獣を超える実力を持った集団とか旅団以外じゃ十二支んとゾルディック家くらいのものでしょうし、十二分過ぎる程に上澄みでは有ると思う

 

「暗に自分は普通じゃないって言ってるよね。それ」

 

「ふふん♪レツ君。まさか私が普通の枠組みに収まっているとでも?」

 

まぁそれくらいの自覚は有るかな。そう言えば私ってフロアマスターになってから一度も戦ってないけど、そろそろクビになってたりするのかな?どっちでも良いけどさ

 

取り敢えずレツのジト目にはドヤ顔しながら応えておいた。頑固にならない程度の自尊心は念においても重要だよ

 

レツに説明している間に私達を実質先導していた他のマフィア達も指令だからか状況を聞いて死にたくないと腰が引けたのか、その場で停車したりUターンで街中に戻ったりで残るは私達の乗っている2台だけとなった。私は車の窓を開けて窓枠を使って頬杖をつくと外の風景を黄昏(たそがれ)てるような顔で流し見る

 

「う~ん。夜風が気持ち良いねぇ♡」

 

「いや、なに急に夜中のドライブデートみたいな事言い出してるのさ?」

 

「そりゃあ先行してる車が居なくなったから戦闘音を聞き逃さない為にも・・・ね♥」

 

「意外と物騒な理由!!?」

 

夜の荒野に風景を楽しむも何も無いからね

 

なにせG.I(グリードアイランド)でずっとそんな場所で修行してたから

 

「むっ、前方からまた引き返して来た車が居るようだな。いや、タイミングからして現場から逃げる事が出来た者たちか?」

 

クラピカの言葉に釣られて前を見ると確かに遠くから車のライトが猛スピードで近づいて来てるのが見えた。状況的に幻影旅団から全力で逃げてるようにも見えるでしょうけど―――

 

「ん~、クラピカ」

 

「なんだ?」

 

「道路上に『クモ』が居るみたいだから殺意(アクセル)全開で踏みつぶしちゃって」

 

「・・・無論だとも。正確に踏み抜いてやろうではないか」

 

は~い。緋の眼(赤信号)ぶっ千切って交通事故一件注文(オーダー)入りま~す

 

クラピカがアクセルをベタ踏みした加速感を味わいながら数秒後、2台の車は正面から衝突したのだった

 

 

◁◁◁

 

世界中のマフィアが協定を結び、普段お互いの組に銃口を突き付け合う彼らがこの時だけは外のイザコザを忘れて競売を愉しむという不可侵の聖域とも呼べる地下競売(アンダーグラウンドオークション)。そのオークション会場に忍び込み、マフィアの幹部から下っ端まで全員を皆殺しにした13人から成る危険度A級の盗賊集団である幻影旅団のメンバーの内6人はしかし、目的物であるその日の競売品を手に入れる事が出来なかった

 

別に金庫の鍵や暗証番号が判らなかった訳でも襲う会場を間違えた訳でも無く、金庫の中身を直前に陰獣の一人が場所を移し替えた為である

 

それは幻影旅団の襲撃が事前に漏れていた訳でも、元々競売品を他所に移す予定が組まれていた訳でも無かった

 

前者においてはチームではなく、一人一人がA級首扱いとされる破格の盗賊集団である彼らが行動を察知されるようなヘマはしない為であり、後者においては本来マフィア関係者以外は近寄る事も出来ない『信用』で成り立つ領域内で一度金庫に入れた品物を移動させる行為は前提である『信用』に響くものであり、普通であれば在り得ない事なのだ

 

だが今回はその普通から外れた情報がマフィアの耳に入っていた

 

マフィアの大口の顧客を複数抱え、十老頭の中にもファンが居る的中率100%の予知能力者が今年のオークションで良くない事が起きるのだと予言したのだ

 

だがあくまでも予言であって幻影旅団が襲って来るなどの極めて具体的な内容として伝えられた訳では無かった上にマフィアの面子の問題も有り、オークションそのものが中止になるまでには至らなかったのだ

 

だが一度計算違いが挟まった程度で諦めるはずもないのが幻影旅団

 

競売品の行方を知ってそうな司会進行役(オークショニア)を拷問にかけて十老頭直轄の陰獣が動いているという情報を搾り取った彼らは真正面からケンカを売られて怒り狂っているマフィア相手に暴れていれば陰獣を誘い出せると考え、実際に現れた4人の陰獣を旅団の中でも特に粗暴で凶暴なウボォーギンが返り討ちにしたのだ

 

しかしその時陰獣の一人が死の間際に相手が幻影旅団であるとの情報を残りの陰獣に伝える事に成功し、ウボォーギン自身も相手の能力で体内にヒルを入れられ、死なない為に丸1日はビールを飲み続けて体内の栄養バランスを故意に崩す事でヒルを無害化しなければならないハメとなった

 

そして彼らは残りの陰獣が襲って来るのをその場で暫くは待つ事とした

 

「おう!残りの陰獣も俺が相手するぜ。悪りぃが誰かビール盗って来てくれよ」

 

「はっ、さっきまでは毒で体も動かなくなってたってのによく言うぜ。勝ったっつっても4人相手にその体たらくつぅのに6人相手じゃ次は死ぬんじゃねぇか?」

 

まだ自分一人で戦うとするウボォーギンに刀を持った武士風の男であるノブナガが(あお)りを入れる

 

今、陰獣の毒にやられていたウボォーギンが普通に動けているのは生物と念能力以外の全てを吸い込む掃除機を具現化出来る文系メガネの美少女であるシズクのお蔭ではある

 

能力次第だが陰獣が後2~3人居たら負けていた公算はかなり高いのは間違いではない・・・尤もそれはウボォーギンが本当に独りだけの孤立無援状態で戦っていたらの話ではあるが

 

「あ゛っ!?舐めてんじゃねぇぞノブナガてめぇ。次の陰獣が来るまでの暇つぶしにお前をボコボコにしてやろうか?」

 

「別に構わんぜ。もっとも陰獣と戦うのは俺になってるだろうけどなぁ」

 

常人であれば失神する程の殺気が両者の間に飛び交い次の瞬間には相手の間合いに踏み込まんとする直前にウボォーギンにも劣らない大男がノブナガの頭に拳骨を落とす

 

「痛ってぇな!なにしやがんだフランクリン!!?」

 

「お前らの無駄なケンカでこっちにまで迷惑かけるんじゃねぇよ。お前とシャルで街までビール盗って来な」

 

「うえっ!そりゃ単独行動させる気は無かったけど、俺で決まりなの?」

 

ウボォーギンに入れられたヒルの正体を看破する知識とそれに劣らぬ知能を有するシャルナークは指名に嫌な顔をする

 

「お前さっきトランプゲーム(ダウト)で敗けてたじゃねぇか。罰ゲームだと思ってお使いに行ってこい。後酒の肴も良いの見繕って来いよ」

 

「あっ、なら私もビール以外にチューハイとか欲しいです」

 

「あたしは酒は要らないけど、果物を幾つか盗ってきて」

 

「俺は肉だ!肉盗ってこい!」

 

フランクリンの言葉にシズク、糸使いのマチ、ウボォーギンがそれぞれの希望を述べる。完全にパシリである

 

「フェイタンは何か食いたいもんとか無ぇのか?」

 

最後にウボォーギンが希望を口にしていない小柄な男に聞くが、彼は首を横に振る

 

「他人がワタシの目の届かない場所で用意シタ食べ物なんて気持ち悪くて食べたくないね。干し肉手元にあるからこれで十分よ」

 

それぞれの希望を聞いた(聞かされた)シャルナークとノブナガはマフィアの乗って来た車でまだ無事だったものに乗り込むとヨークシンに向かって走り出して行った

 

その先に陰獣よりも遥かにヤバイ化け物が居るとも知らずに

 

 

シャルナークとノブナガの二人が車を走らせて数分。彼らは前方から迫って来る二つの車のライトを視認した

 

「お~お~、まだ態々(わざわざ)殺されに来る暇な奴らが居るのか。ご苦労なこった―――それともあれに残りの陰獣が乗ってやがんのか?」

 

「う~ん。陰獣って線は薄いんじゃないかな?さっきの4人も自分の足で来てたみたいだし、マフィアが威嚇(いかく)しながら街中を突っ切ってた時と違ってその後からだと車じゃ渋滞に引っ掛かりそうだしね」

 

「確かにあいつらもそこそこには良い腕してたからなぁ。街からなら走った方が早いし隠密にも向いてるか」

 

「そういう事。それにお使いサボって陰獣と遊んでたりしたらまたウボォー辺りがギャーギャーと五月蠅くなると思うよ。向こうから襲ってきたら仕方ないけど、取り敢えずここはスルーで良いんじゃないかな?」

 

「けっ、わーったよ」

 

どうせ仲間の下へ向かっているのなら始末はそっちに任せれば良いと知らぬふりを決め込もうとした二人だが、お互いの車が直線の道で向かい合うと同時に先頭を走っていた車が急加速を始めた

 

「ありゃ、このタイミングじゃ車はもうダメかな?」

 

明らかにこちらにぶつけようとしている以上、完全には避け切れないと悟ったシャルナークが呑気(のんき)な声を出す

 

「問題ねぇ。後ろの二台目か、最悪街の車を掻っ払えば良いんだからな」

 

そう言いつつ目前まで迫った車から逃れる為に超スピードの中でドアを開けて飛び降りる体勢に入り、その足に力を籠めようとしたその瞬間に自分たちを轢き殺そうとしている車体が異常で強大なオーラを纏った。

 

「うお!?」

 

「げえっ!?」

 

驚愕しながらも体は無駄なく回避行動を取った事で逃げるのには成功した二人だが、彼らの背後から車と車のぶつかる音が耳を打った

 

 

パリンッ

 

 

「うおおい!可笑しいだろ!?普通そこはガシャン!とかズドン!とかだろ!!?」

 

「あははは、ガラス細工が砕けるような儚い音だったね」

 

着地した彼らが音の方を振り向くと一瞬で膨大な力が伝播した影響で文字通り粉砕された車だったモノが宙を舞っている様子が目に映った

 

念を使える彼らでもあんなものを喰らえば強化系のノブナガでも良くて粉砕骨折。操作系のシャルナークならば“ゾリッ!”と削れていただろう

 

そう思わせられる程にバカげたオーラが練り込まれていたのだ

 

歴戦の猛者である彼らでも過去に類を見ないほどの圧倒的なオーラ量だった

 

警戒を車の方に移すと停車した2台の車から向こうも素早く人が降りて来て対峙する事となった

 

「なぁシャル。一応訊くがアイツ等が陰獣だと思うか?(ちな)みに俺は思わねぇ」

 

「残念だけど俺も同じ意見だよ。流石に残りの陰獣が年端も行かないような女子供ばっかりって事は無いでしょ。そもそも7人居るしね」

 

「やれやれ、とんだお使いになっちまったぜ」

 

静かにオーラを練り上げる二人はこの状況を不幸などとは思わない。殺し殺される裏の世界に身を置く以上は実力こそが全て。負けたら自分の力はそれまでだったというだけの話だからだ

 

 

対幻影旅団の始まりを告げる戦いが始まろうとしていた

 




“パリンッ”・・・以外に“シャンッ”・・・とかも考えましたね
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