毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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やっと出来た~・・・


決着と第二ラウンド

遠くからこちらに向かって来る車の中にシャルナークとノブナガが乗っているのが見えたのでクラピカに挨拶がてら体当たりしてもらったけど、案の定避けられてしまった。動揺を誘えないかと『周』をギリギリのタイミングで差し込んではみたけど、そりゃ無理だよね

 

てか何でこの二人がこんな所に居るんだろう?そんな展開原作で有ったっけ?

 

少しだけ内心で首を捻っていると車から降りて来たレオリオが(いぶか)しむようにシャルナークとノブナガを見ている

 

「コイツ等が本当にあの幻影旅団かよ?(もろ)そうだぜ」

 

「まだ酔ってんのかバカリオ?アイツ等の立ち姿からしてもう隙が無ぇ事くらい判れよ。間違いなく超が付く一流だぜ」

 

「キルアの言う通りね。それとバカリオは後で陰獣に謝っときなさい」

 

「いやなんで陰獣に謝るんだよ!?」

 

なんでって大切なセリフを横取りするからでしょ

 

見せ場の無い完全噛ませな陰獣の最大にして唯一のイキリシーンだったはずなんだし

 

「そもそも敵を前に侮ってる時点でアウトね。取り敢えず明日のモーニングからディナーまで全部バカリオの財布から払わせるって事で良いんじゃない?」

 

「『賛成!』」

 

「無駄に生き生きしてんなよお前ら!それとさっきからさり気にバカリオっつって(おとし)めてんのちゃんと気付いてるからな!!」

 

ポンズ姉の提案に皆が異口同音に賛同する。幾らお金を持っていようとも、他人の不幸(さいふ)で食べるメシは美味い―――レオリオ=バカリオと並んで世の理だね♪

 

さて、じゃれ合いはここまでにして如何(いか)にして攻めるべきかな?数はこっちが圧倒してるけど、流石に幻影旅団相手にレツたちが圧勝は厳しいとしたら無策でGOサインを出す訳にもなぁ

 

「皆、先ずは私が―――」

 

そこまで言い掛けた所でキルア、レオリオ、クラピカ、ゴンの男子組が敵に向かって全力で距離を詰めんとする姿が目に映った

 

「はいっ!?」

 

なに血迷ってんの!?てか血走ったその瞳はなに!?

 

「「「殺す!!」」」

 

ゴン以外の三人が吐き出した言葉が殺意高過ぎ!?キミ達ハンターであってアサシンじゃないんだからさ!己を見失い過ぎじゃない!?

 

※自分の事は棚に上げてます

 

「ビアーと一緒に行動してたら全部の手柄を持ってかれちまう。その後に待ってるのは全員貢献度最下位の地獄の修行の再来だ。だから殺す。『俺が』殺す!!そして俺だけが助かるんだあああああああ!!」

 

「医者志望は引っ込んでろ!汚れ仕事なんてのは俺みたいにもう汚れちまってる手を持ってる奴が殺れば良いんだよ!だから手柄は全部俺のもんだ!!」

 

「最後に本音が漏れてるよキルア。俺だってダメだった時は借りを返すとか親父を探すとかって目的を忘れそうになる位の修行が課せられるのは勘弁して欲しいよ。アレ以上は俺が俺で無/亡/失()くなっちゃいそうだからさ!!・・・綺麗な川の向こうとか、翼の生えた人達が見える大きな門の向こうとか、何時か(あの世への)一歩を踏み出しちゃいそうでさ」

 

「貴様らの(つむ)ぐ糸は今や私にとっては天上より垂れる釈迦(シャカ)の糸だ。たとえ仲間(ゴンたち)を蹴落としてでも、私がその手柄(いと)を掴む!!」

 

なんか四人が足の引っ張り合いをしながら我先にと敵に向かって飛び込んでいくんだけど・・・・あとクラピカ。釈迦の糸はソレやると切れて地獄に落っこちるよ?

 

「皆して旅団より修行の方が嫌なんだね。目的すり替わってない?特にクラピカ」

 

「方向性は合致してるから別に良いんじゃないかしら?私やレツは仮に貢献度最下位でも適当にビアーとデートでもしておけば有耶無耶(うやむや)に出来るけど、あの子達はそうもいかないものね」

 

ああ、街を出る時にキルアとレオリオが私に『落ち着け』、『前に出るな』的な事を言ってたのは徹頭徹尾自分の為だった訳ね

 

それとポンズ姉は私をそんな単純な女だと思ってるの?・・・採用で

 

ちょっと妄想に意識が行きそうになるのを流石に抑えてゴン達の方を見ると隙だらけの団子状態で突っ込んで行く彼らを殺しに躊躇(ちゅうちょ)など無い旅団員が黙って見ているはずも無く、ノブナガが前へ出て納刀した刃を腰だめに構え、居合の体勢となる

 

「悪りぃがこっちはお使いの真っ最中でよ。コントに付き合ってる暇は無ぇんだ。続きはあの世で閻魔(えんま)相手に披露(ひろう)してな」

 

先程自分たちを襲ったオーラの出どころである私を警戒しつつも先ずは近場の敵から斬り捨てて数を減らそうって魂胆なんでしょう

 

ゴン達がもつれ合いながらも十分高速と呼べるだけの速度でノブナガの刀の間合いに立ち入ると同時に閃光のような速度で刀身が鞘から解き放たれ、横一文字に斬撃が繰り出される

 

 

“ギギイイインッ!!”

 

 

その一撃はゴンとレオリオによって止められた

 

動体視力に優れるゴンが背中から素早く抜いた釣り竿で受け止めて威力を削ぎ、直後に追い付いたレオリオのナイフが完全に刃を受け止めた感じだ。お互いの足を引っ張ってる無理な体勢にもかかわらず攻撃を受ける瞬間にはほぼ密着してる状態の中で仲間の服を掴んだり腰を回転させたりして力が入り易い状態へと変化させている

 

「無駄に洗練された無駄のない無駄な動きね」

 

「ここ半年は模擬戦でビアーやビスケに一纏めにぶっ飛ばされ続けてたからね。どんな体勢からでも立ち直れるスキルはチーム単位で磨かれてるはずだよ」

 

「私は別に曲芸を教えたつもりは無かったんだけど、アレも一つの生き残る手段ってやつかな?」

 

ゴン達の連携は阿吽の呼吸に近いものが有るからね

 

毎日フラフラの極限状態の所に死を予感させる攻撃を雨あられと降らせ続けたら仲間の力も最大限引き出す立ち回りは必須だっただろうし

 

「クッソ!そんな木製の『ボロのつりざお』で俺の刀と拮抗してんじゃねぇよ!」

 

「これは親父の使ってたやつで沼の主だって釣り上げたんだ!見た目は少し古いけど、間違いなく『いいつりざお』だよ!」

 

「いやゴン。オーラを流さなくてもトン単位の重量に余裕で耐えられるのは頭可笑しいからな?どう考えたってソイツは『すごいつりざお』だろ」

 

まさにレオリオの言う通り

 

ゴンの釣り竿ならホエルコじゃなくてホエルオー(クジラ型/約0.4トン)も複数同時(サビキ)釣り出来るでしょ・・・改めて思うけど初期装備の性能じゃない

 

そんな彼らの会話の間に同じく団子になっていたクラピカの右手の中指から密かに鎖が伸びてノブナガを足元から拘束に掛かった

 

敵の意識がゴンやレオリオ、それに持っている得物に向いている隙に捕えんとする動きはどれだけ 巫山戯(ふざけ)ていても(クモ)相手には容赦ゼロといった心持が見て取れる

 

「っとぉ!危ねぇ危ねぇ。やられるとこだったぜ。こりゃこっちのガキ共も油断しない方が良いなぁ・・・にしてもどんな集団だよ?」

 

でもそんなクラピカの鎖がノブナガの足に巻き付く寸前に高速ステップで後ろに下がられる事で回避されちゃったわね

 

流石に侍スタイルだからか一手で間合いを支配出来るように短距離の瞬発力は鍛えてるみたいだ

 

「あのヤバイオーラ出してる女の子は前にニュースで見た事有るよ。一つ星(シングル)犯罪(クライム)ハンターだったはず。他のメンバーは多分弟子かなにかじゃない?」

 

「はっ!お仕事で俺らを狩り(ハント)しに来ましたってか。まぁデカイ街だし、プロハンターがダース単位で転がっててもそこは不思議じゃねぇけどよ。今までにもプロハンターは何人か殺してきたが、ここまでじゃ無かったはずだがな」

 

そりゃ凡百のハンターと(トガ)神に定められし才能の持ち主であるゴン達を比べたらダメでしょうね。ノブナガ達にしてみたら知る(よし)もない事だけど

 

「お喋りはそこまでにしてもらおうか幻影旅団。貴様らに用意された道は二つだ―――1.大人しく捕まる。2.意地汚く抵抗し、全身を砕かれて捕まる。後者の方は命の保証はし兼ねるがな」

 

クラピカが左手の指を1本、2本と立てながら提案をする。でも相手がなにを選ぶかはこの場の全員が既に理解している

 

「なら、答えは決まってるかな」

 

「ああ―――答えは3!テメェ等全員ぶっ殺すだ!!」

 

ノブナガとシャルナークが今まで以上に強いオーラを纏い、それに呼応するようにゴン達も本気の『練』をする。先程の様子見とは違う心身の(そろ)った完全な臨戦態勢だ

 

「よかろう。答えは2だな」

 

「3だっつってんだろ!!」

 

そうして彼らのセカンドインパクトの衝撃が夜の闇を震わせた

 

 

 

「・・・で?ビアーは何をしてるのかな?」

 

「ん~?アリスタのツヤツヤでひんやりしたボディを堪能してるかな。基本的に暑い地方が多いし、ルルの極上もふもふボディよりもこっちが恋しくなる時も有るんだよね~アリスタ~♪」

 

≪すぴ~・・・≫

 

何で半目になるかなアリスタは?てか(まぶた)の概念有ったの?

 

「ポンズも!なに普通にビアーの横でルルを抱えてるのさ!?向こうで皆が死闘を繰り広げてるんだよ。落ち着き過ぎでしょ!!」

 

まぁそうね。今はキルアがノブナガを後ろから手刀で刺そうとして更にその後ろからシャルナークが針を刺そうとしてるところね

 

あっ、キルアが手刀を繰り出した手とは逆の手で素早く取り出した激重合金の武器(ヨーヨー)(50kg)でシャルナークの手を引っ込めさせたわね

 

その代わりノブナガを殺るチャンスは逃したみたいだけど

 

「だって私は手を出すなって言われたし、他の旅団員も居るはずなんだから周囲の警戒はしないとだしね。それに念での戦闘において観察も立派な戦いだよ?固有能力は兎も角基礎能力がどの程度かもある程度は推し量れるからね」

 

一応万が一の時には割り込めるように注意はしてるしさ

 

そりゃ私が出張った方が早く片付くのは確かだ。実際さっきはそうしようとしてたしね。でも今後もしも原作通りに暗黒大陸(キメラアント)の脅威が襲って来る可能性を考えたらここは彼らの貴重なレベルアップのステージに成り得るのも確かなのよね

 

実戦に勝る経験は無いって言うけど、正にその通り

 

特に念能力が絡むと倍率ドンで本人の成長に繋がるからね

 

修行で基礎は叩き込んだ。後はそれを実戦の中でどれだけ自分のスタイルに無駄なく組み込み、発揮できるかだ

 

「私の場合は単にあんな殴り合いに付いて行ける自信が無いだけよ。まっ、私は正面戦闘が苦手でも自信の喪失には繋がらないから別に良いんだけどね」

 

まぁポンズ姉は基本は完全に相手を遠隔で無力化しての勝利を狙うタイプだもんね

 

今だって普通にしているようで色々と仕込み(・・・)という名の戦いを既に展開してるし

 

レツの場合はピー助を扱った際のオーラの消耗が激しいから余り序盤では切れないカードだ

 

具現化系で武具を具現化出来る訳でもないレツが殴り合いに参加するのは下策なのは彼女も分かってるからハラハラしながらも無暗に突っ込んで行ったりはしない

 

「まぁアレね。獅子は我が弟子()千尋(せんじん)の谷に云々(うんぬん)ってやつよ」

 

「・・・そのセリフを何時もビアーがボクの劇を観てる時みたいな目で言わなかったら少しは信用できたかもね」

 

「そうは言うけど今回はクラピカにとっての人生の節目とも云えるし、状況がそれを許す限りは静観するのも手でしょ?」

 

かつてオモカゲと戦った時に彼が私に転生者(観客)としての目とこの世界の住人としての目の両方の性質を持っていると言っていたけど、それは確かにその通りだと思う

 

結局前世で異世界の記憶を持って生まれた以上は完全に異端として振舞うのも完全にこの世界の住人だと開き直るのも何処かで違和感を感じてしまう

 

転生者(観客)であり現地人(舞台役者)―――どっちか一つじゃない。それが『私』だ

 

「さぁ、ここから先はハイライトだよ」

 

 

 

 

ビアー達が軽く話し合っている間にゴン達と旅団(クモ)の戦いは佳境を迎えんとしていた

 

それも当然。彼らは常人の数倍どころではない速度で攻防を繰り広げる事が出来るからだ

 

客観的な時間の流れは等価でも、彼らの主観では既に濃密な時が流れている

 

両陣営とも全身に細かい傷を負い、そこからジワジワと血が滲んで着ている服に黒茶色のシミを浮かばせている

 

始めの内こそ経験の差から旅団(クモ)の二人が優勢に成りかけたが、ゴン達のコンビネーション。旅団(クモ)の二人がヤバイと本能で感じるクラピカの鎖のサポート。『もう二度と針(アンテナ)なんぞ喰らわねぇマン』なキルアのシャルナークメタな立ち回りで押し留め、その後は果てしなく基礎を磨いたゴン達の他人から見たらワープ進化でもしてるかのような実戦の中での急成長で歴戦の猛者である幻影旅団がジリ貧となってきている状態だ

 

念での実戦経験がほぼゼロだったであろう原作クラピカが旅団屈指の戦闘力を持つとされるウボォーギン相手に勝利出来たのだから、この状況は順当とも云えるだろう

 

命がけの実戦は通常の修行の何倍もの経験値が入る?なら数十倍の修行をすれば問題無い

 

ただそれだけのシンプルな話である

 

「全く嫌になっちゃうよね。どんどん動きのキレが増していってる。若い子の成長は早いな~」

 

「俺らも十分若いだろうが!なに年寄りみてぇなこと言ってやがる。てかそのベビーフェイスじゃ余計説得力無ぇぞ」

 

「逆にノブナガはジジ臭いよね」

 

「はんっ。サムライってのは貫禄が有ってなんぼなんだよ。それよりお前だ。さっきからアンテナ全部避けられてんじゃねぇか」

 

「まぁね。正直こうしてアンテナと携帯持ってたら相手が念使いなら誰でも警戒させちゃうのが欠点だよね~。なによりあの銀髪の子がどれだけフェイント入れても欠片もアンテナから意識を逸らしてくれないのがね~・・・嫌な思い出でも有るのかな?」

 

シャルナーク。ドンピシャ的中である

 

キルアはビアーに頭の針を取られて以来、頭の中に思い描く仮想敵はイルミが第一となっていた

 

もちろん単に操られていたのがムカついたというのも理由ではあるが、何よりも『妹/弟』の為ならば将来必ず衝突するのが目に見えていたからだ

 

その理由をキルアは仲間には話していない。今話したところでどうしようも無い事であるのに加えてビアーの耳に入れば『妹の為にゾルディック家と敵対する?O.K~。なら取り敢えずオーラ量を今の10倍にするところから始めよっか♪』・・・となるに決まっているからだ

 

「それと能力の事ならノブナガだって人の事言えないでしょ?(ほとん)一対一(タイマン)でしか使えないんだから素で戦うしか無いし・・・ほんと何で旅団の特攻兼盾役なのに真逆な能力創っちゃうかな?」

 

「うっせぇ!フェイタン(ブチギレ無差別広範囲オーバーキル)よりはマシだろうが!!そもそも盾役つっても護衛みてぇにピッタリ張り付いて御守りする訳じゃねぇんだから問題無ぇだろ・・・で?実際問題これからどうするよ?目の前のガキ共も中々だが特にさっき化け物みてぇなオーラ発してたあの嬢ちゃんとかが気が変わって参戦して来たら流石にキツイぜ」

 

「う~ん。そうだねぇ。そろそろ(・・・・)だし、頭数くらいは減らしとかないとね。ノブナガ、下手したら死ぬけど俺に任せてくれる?」

 

「聞いたのは俺だからな。策が有るならさっさとやれってんだ」

 

「O.K~」

 

失敗が即敗北に繋がり兼ねない事を告げる側も聞く側もレストランのメニューを注文するような気軽さで話を進め、仲間の了承を得たシャルナークがポケットから2本目のアンテナを取り出すと直ぐ横に居たノブナガにそれを突き刺し、返す手首のままに自分自身にもアンテナを突き刺した

 

《自動操作 ON》

 

シャルナークが右手に持っていた小悪魔を模した携帯の画面が切り替わると同時にノブナガとシャルナークの全身から今のゴン達をすら遥かに凌駕する膨大なオーラが駆け巡った

 

これがシャルナークの持つ奥の手

 

アンテナを刺して操った者の能力を限界を超えて引き出す、反動を(かえり)みない短期決戦仕様の能力だ

 

そこら辺の一般人の力を限界以上に引き出しても大した事にはならないが、壊れても良い赤の他人たる上質な念能力者(おもちゃ)なら十分な戦力になる

 

同じ操作系のイルミがビアーとの戦いで使った凶悪な針ですら限界まで頑張らせる事は出来ても限界を遥かに超えた力を強要は出来ない。一度に操れる人数が最大2人という制約の代わりに火事場の馬鹿力すら超越した力を強制出来る操作性を持つのがシャルナークの【携帯する他人の運命(ブラックボイス)】だ

 

なんらかの理由で敵対する相手を操れない時などに自身に用いたりもするが、元々が操作系で近接戦に不向きなシャルナークを強化するのは苦肉の策だ

 

確かに強化系であるノブナガを強化するだけでも十分かも知れない

 

相手がゴン達だけならそうしていただろう

 

しかし此処で下手に出し惜しみをすればあの女(ビアー)の邪魔が入る隙を与えてしまう可能性を考えるとこの一手に全力を()すべきと判断したのだ

 

能力の触媒である携帯電話の事前設定で自動操作時の殲滅目標を目の前の4人に絞り、敵の全滅ではなく半壊に重きを置く

 

ビアーは確かに戦闘に直接参加してはいない。しかし彼女の見せた圧倒的な存在感(オーラ)が彼らの行動を縛る(かせ)となっている

 

だが一気に決着を付けたいのはゴン達もまた同じであり、旅団(クモ)の二人にとっての計算外が有るとすればやはり自身の能力が既に知られていた(・・・・・・・・)事であろう

 

念能力者同士の戦闘において相手が何か妙な動作等をしたら様子を注意深く観察し、対処するというのは重要な項目だ。分かり易い例としてはカウンタータイプの『発』の持ち主などが挙げられる

 

下手に手を出そうものなら手痛い反撃を喰らってしまう

 

勿論相手に時間を与える事で発動条件を満たしてしまう場合も有るが、戦闘経験豊富な実力者であれば相手の能力を見切って受け流す事も容易となっていくものだ

 

だが相手の手札さえ事前に把握出来ていたならば最速で最善の手を打つ事が可能だ

 

達人同士の戦闘で数瞬という大きな隙を(はぶ)けるメリットは果てしなく大きい

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

最初に動いたのはレオリオだ。両手を振り上げながら片膝を着いて深く腰を下ろし、そのまま握った両の拳を地面に叩き付けた

 

レオリオの腕力とオーラで地面を叩けば本来なら小さくクレーターが出来、大量の粉塵が巻き上がるだろう。だがその衝撃は彼の放出系の能力によって地面を伝い、ノブナガとシャルナークの真下から二人の顎をかち上げる昇拳として出力された

 

遠くに居る相手にオーラを飛ばして攻撃するだけならただの念弾で事足りるが、この能力の攻撃における利点は術者(レオリオ)膂力(りょりょく)を上乗せ出来る所だ

 

シャルナークのアンテナが刺さる事で莫大なオーラを纏う二人でも不意打ちを喰らえば僅かに体が宙に浮く程度の威力は十分に叩き出せる

 

歴戦の猛者である旅団(クモ)の二人は本来であれば避けられたはずだが自動操作により戦闘モードに切り替わって動き出すまでの数瞬は逆に無防備となってしまう

 

無論、生半可な攻撃ではダメージにならないので通常であれば問題には成り得ないのだが―――

 

「いっけえええええええええええ!!」

 

ゴンが振り抜いた釣り竿から放たれる浮きと釣り針が空中に浮いて踏ん張りの利かない二人の首を絞めるように巻き付き、ゴンの渾身の一本背負いで二人は天空高くに放り出される

 

《敵 視認しまシタ。始末シまス》

 

シャルナークの携帯から殲滅のスイッチが入った事を告げる音声が流れるが、空中に投げ出された二人に動く(すべ)は無い・・・普通人間は空を走れないのだ

 

「よくやったゴン。釣り竿貸せよ」

 

「うん。今のキルアは電気ウナギもビックリだもんね」

 

「他人が聞いたら意味分かんねぇぞ、その例え」

 

ゴンから投げ渡された釣り竿を受け取ったキルアが修行で得た能力を解放する

 

「『雷掌(イズツシ)!!』」

 

キルアの能力はオーラを電気に変える変化系の能力であり、今のは手に溜めた電気(オーラ)で攻撃する技だ

 

事前に拷問レベルの電気を体に浴び続けて充電するという誓約と制約が有るが、一度体内に溜めた電気を放出する分にはオーラの消費が極めて少ない利点もある

 

キルアが解放した文字通り雷にも匹敵する電撃が釣り竿の糸を駆け上がり、未だ空中に留まるノブナガとシャルナークに直撃した

 

これも敵を斃す事のみを目的とした自動操作の弊害だ

 

ノブナガが素の状態であれば自分たちに繋がる糸を刀で切断する事も出来ただろう・・・(もっと)もその時はキルアはレオリオを踏み台とした大跳躍でもして頭上から雷を落としていただろうが、刀を避雷針替わりに投げ捨てるなり何なり、まだやりようは有ったはずだ

 

「「!!!!ッ・・!!・・・・・・ッ!!!!!」」

 

体中を駆け巡る電撃を受けながらも無機質な目でゴン達を見据えていた二人だがアンテナも抜けてないのにその目に理性の光が戻る

 

「えっ!?うわちゃちゃちゃちゃっ!!!?」

 

「ぐっ!?ぬうううううううう!!?」

 

キルアの電撃によってシャルナークの携帯がショートしたのだ。確かに彼の携帯も莫大なオーラの『周』によって守られていたが、キルアの電撃とはあまりにも相性が悪過ぎた

 

「これで終わりだ」

 

突然の電撃と強化の反動による筋肉痛とオーラの枯渇による虚脱感。更には踏ん張りの利かない空中で仲間と一緒に首に強靭な糸が絡まっている状態という五重苦により、クラピカの放った捕らえた相手を強制的に『絶』にする【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)】を避ける事が出来ず、幻影旅団(クモ)の二人は完全に無力化されたのだった

 

 

 

ゴン達が旅団の二人を捕らえたので私達も彼らの下へ歩いて行く

 

「お~、なんだかんだで大きな怪我も無く勝利出来たね~」

 

「そうね。最後は本当に酷いハメ手だったけど、今回は相手が相手だもの。態々(わざわざ)魅せ試合(プロレス)する必要も無いわ」

 

「あはは・・・ポンズはスマートな仕事人タイプだもんね」

 

確かにポンズ姉は漢気溢れる殴り合い!!・・・とかは興味無さそうね

 

そうして軽く会話しつつもゴン達の所に辿り着くとなんかギャイギャイと言い争っていた

 

「最後の一連の流れの出だしを作ったのはどう見ても俺だろう!俺様がMVPだ!!」

 

「それなら俺だってレオリオの何十倍もコイツ等を飛ばして一番長く足止めしたもんね!」

 

「ハン!ゴンのやった事なら俺のヨーヨーだって出来たっつーの。隙を作った上で能力解除させた俺が一番に決まってんだろ!」

 

「見苦しいぞお前たち。経過以上に結果こそが重要なのは論ずるまでもない事だ。今もこうして旅団員を捕らえている私の戦績に勝るものはない・・・だが経過も勿論(もちろん)大事な要素ではある。2番目以降の順位はお前たちで存分に話し合って決めると良い」

 

なんか皆してさっきまでの見事な連携は何だったのかと言いたくなるような、いがみ合いっぷりだね。まったくこの醜い争いの発端は誰なんだか

 

「あんたよ」

 

「ビアーだよ」

 

シンプルな返答!そんな訳ないじゃん。(ひど)冤罪(えんざい)だよ!!

 

「・・・さて、負けを認めて大人しくなったと云うのであれば仲間の情報を吐いてもらおうか。素直に喋るのならこれ以上傷つく事は無いかも知れんぞ?」

 

おふざけを止めてクラピカが鎖に繋がれた二人に軽い脅しを掛けるが彼らは至って冷静だ

 

「けっ、俺らがそんなもんに屈するほど軟弱に見えんのかよ?」

 

「そうだね。疑うんなら拷問でもしてみる?お互い疲れるだけの結果に終わると思うけどね」

 

幻影旅団はキルアの家みたいに拷問の訓練とかしてる訳じゃないはずだけど、声音(こわね)にも瞳にも一切の動揺は見られない。多分言う通りに徒労になっちゃうんでしょう・・・本当にイカレた精神性ね

 

「・・・真面(まとも)じゃねぇぜ。で?これから如何するんだ。敵はこの先にまだ居るんだろ。一度退いてコイツ等だけでも持ち帰るか?クラピカの鎖で縛ったまま先に進む訳にもいかねぇだろ」

 

「そうだな。私のこの鎖は切り離して使う事は出来ない。仮に出来たとしても、たかが念が使えないだけのコイツ等を我々の目の届かない場所で放置するなど危険過ぎるだろう」

 

旅団(クモ)の二人を連れた状態じゃ進むも退くも一長一短で皆すぐには決めかねているみたいだけど、如何やら問題が向こうからやって来てるみたいだから悩む必要は無くなったかな

 

遠くから荒々しい気配を隠さずに高速で走り寄って来た人物が大きく跳躍し、近場の三階建てくらいの岩場の上に着地した

 

「よおおおお!!こっちで陰獣より面白い連中と遊んでるってぇ?って、オイオイオイ。ノブナガもシャルもやられちまってんじゃねぇか。ざまぁねぇなあ!!」

 

無駄に声が大きい筋肉ゴリラ(ウボォーギン)のセリフの後に他の旅団員も次々と降り立って来た

 

5人全員居るわね。マフィアの無線で相手は7人って言ってたのは聞こえてたし、ノブナガとシャルナークも含めて7人だ

 

「シャル、おめぇか?」

 

「うん。さっきの戦闘で自動操作の設定を弄った時に一緒にメールしててね。あの時は奥の手が上手くいってたとしても多分あの娘たちにやられてたと思うからウボォーのビールの回収係は引き継がなきゃいけなかったしさ。現場を見てもらうのが一番じゃない?」

 

「ちょっと待ってよ!助けてもらう為に仲間に連絡したんじゃないの!?」

 

レツがシャルナークの会話の違和感にツッコミを入れるけど、言われたシャルナークはキョトンとした表情だ。そして数瞬後には笑い出す

 

「アハハッ、まさか!・・・なに?俺たちが人質に使えるかもって期待でもした?う~ん、そうだね。もしもノブナガが今向こう(ウボォー達)側だったらどうする?」

 

「あん?んなもんコイツ等をぶっ殺すに決まってんだろうが。盾にされたり巻き込まれて死んだらそれまでだろ―――全部終わった後に生きてたら助けてやるよ。それで十分だろぉが」

 

仲間の命が掛かっていようが何はともあれぶっ殺す

 

改めて通常の倫理観からは外れた連中ね

 

「O.K~。よく分かったわ。クラピカの鎖もフリーにしなきゃいけないし、貴方たちは適当な場所に捨て置くとしましょうか」

 

「待てよビアー。幾ら弱っててもコイツ等を近くに置いたまま戦いたくなんてねぇぞ。あんな事言ってたけど、簡単に手が届く場所に仲間が放置されてたら心変わりして連れ出して逃げるかも知れねぇし、そもそもさっきの意見がコイツ等の総意とも限らねぇんだぜ?」

 

キルアの指摘は(もっと)もだ。事実、原作でも旅団内で意見の衝突はよく有ったからね

 

「大丈夫。言ったでしょ?必要十分(適当)な場所に捨てるってね」

 

私はオーラを『練』り上げて足を持ち上げる

 

「皆10歩下がってね―――巨人の一口(タイタンバイト)!!」

 

私が足刀で地面を鋭く切り裂くように叩く事で【じわれ】を起こす。上空から見下ろせば巨大な口のようにも見えるでしょう

 

地隆降陣(ちりゅうこうじん)の一種ではあるけど、何処も隆起も降下もしてないから英語表記にしてみた

 

「おわああああああ!!?」

 

「うっそぉおおおお!!?」

 

口の中に飲み込まれたノブナガとシャルナークだけど、ただ穴に落ちただけならクラピカの鎖が無くなれば普通に這い上がって来れるでしょう。でも大地を削りきったんじゃなくて単に割っただけのコレはその圧力で自然とその口を閉じていった

 

「クラピカ。もう鎖は消して良いわよ。あの二人も地上に戻って来るのにそこそこの時間は掛かるでしょ。その間にアイツ等を片付けましょ」

 

普通は死ぬだろうけど、幻影旅団なら大丈夫でしょ。死んでもどうせ生死不問(デッド・オア・アライヴ)だし

 

「・・・相変わらずふざけたパワーだな。もはや地面を操る『発』に近いではないか」

 

「小道具を強化すれば超大型機器以上の出力を叩き出せるんだから実質なんでも有りだぜ」

 

「はいはい。オーラ量の偉大さ議論はまた後でね・・・それじゃそろそろ戦争(ケンカ)を始めましょっか」

 

なに?そんな議論をした覚えは無いとか背後から聞こえるけど恥ずかしがらなくても良いんだよ?

 

最強談義は何時だって心躍るものなんだからね!

 

 

 

 

 

さあ!今夜のクライマックスの始まりだ!!

 

 




レオリオの能力とかちょっと独自解釈も混じってますね

ビアーが最初から出張ったらどうしても他の活躍を描きにくいので最初だけゴン達に頑張ってもらいました。ノブとシャルだけじゃねww
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