毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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う~む。暑くなってきましたね~
第二ラウンド前半戦です


仕込み杖と機関銃

ビアー達と幻影旅団が睨み合う中、最初に動いたのは尤も好戦的な性格の持ち主であるウボォーギンだった。恵まれた体格と鍛え抜かれた肉体に凶暴なオーラを纏わせながら繰り出される突進は何の技もないただの体当たりでも大半の念能力者を轢き殺せてしまうだろう

 

そんな敵陣に頭から突っ込むような真似をしながらも決して彼はビアー達のことを女子供と見て侮ってる訳ではない

 

粗暴な彼も幻影旅団のメンバーに半端な実力の持ち主など居ないといった程度の信頼は持ち合わせている。ならば答えは一つ。目の前のガキ共は決して油断出来ない強敵であるという事だ

 

「最高じゃねぇか!だからこそ、こんなツマんねぇ真似すんじゃねぇよ!!」

 

荒野を駆けるウボォーギンが僅かに跳躍気味の一歩を踏み出す

 

彼が大股で飛び越え、踏む事を良しとしなかった地面には先程のゴン達の戦闘の間にポンズが調教した痺れ槍蜂たちに運ばせたトラップが設置してあったのだ

 

自身の操る蜂を強化する【装甲蜂(アーマー・ビー)】を(もち)いれば少数でも重いトラップを運ぶだけの運搬能力は確保できるのだ

 

「素人が!そんな見え見えのトラップなんざに引っ掛かるかよォオオ!!」

 

夜の荒野に隠すように設置されたトラップ群だが、彼らの目は騙せなかった

 

相手が幻影旅団であってもダメージが通るように神字が組み込まれた特製のトラップは目を『凝』らせば暗闇でも何処に在るのか丸わかりだったのだ

 

「ええ、だから態々(わざわざ)引っ掛かってくれなくても結構よ」

 

 

”ボッッゴオオオオオオオオオオン!!”

 

 

ウボォーギンが地雷の傍を通り過ぎようとした瞬間に触れてもいないトラップが作動して神字ブーストの掛かった爆発を起こす

 

「うおおおお!!?」

 

別にトラップにレーザーのようなセンサーが付いていた訳ではない。単にポンズが手元のリモコンを操作して遠隔でトラップを起動させたのだ

 

「普通この手のトラップにこんな機能は付いてないから改造させてもらったわ。神字まで組み込んでの使い捨てなんてコスパ悪いからあまり使いたくないのだけどね・・・後、そこも危ないわよ」

 

“カチッ”

 

幾ら神字で強化されているとはいえ、直撃もしていないトラップではウボォーギンに大したダメージは与えられない。精々初見に限り(ひる)ませるのが関の山だ

 

だからこそポンズは神字の分かり易いトラップの一歩先に通常のトラップを設置していたのだ。ウボォーギンの足元から僅かな異音の後、立ち昇る煙が噴射される

 

「今度は毒?いや、催涙ガスか!」

 

僅かにガスを顔に受けたウボォーギンが後ろに跳躍して距離を取る

 

幻影旅団ならば通常のトラップなどたとえ引っ掛かった後からでも回避できる瞬発力と反射神経を持つが、それも万全であったならの話だ

 

「ふ~ん、そう。頭のイカレたA級の賞金首の集団相手だから毒も効かない可能性も考えてたんだけど、焦って逃げる程度の効果は期待できそうね・・・ただ直接的なダメージは望み薄かしら。バズーカが効かないとか無線で言ってたから驚くほどじゃないけど、やっぱり面倒臭いわね」

 

淡々と目の前の状況を分析するポンズの様子にウボォーギンはこめかみに青筋を浮かべる。明らかに戦闘タイプでは無さそうなポンズの小細工(ごと)きで出鼻を(くじ)かれる形となったのが(しゃく)(さわ)ったのだ

 

だがその程度で冷静さを欠く程に彼の戦闘経験値は低くない

 

相手の僅かなアクション一つを見逃しただけで銃弾よりもよっぽど厄介な攻撃を喰らう可能性が高い念での戦闘で視野が狭まる事は死にすら直結するからだ

 

取り敢えず彼の頭の中の絶対殺すリストにポンズの名前(顔)が強めに印字された

 

「じゃ、私が見えない分は先に掃除しちゃいますね」

 

ウボォーギンの隣に降り立った見た目は黒髪メガネのいかにも文系少女といった彼女はその手にギョロ目の付いた掃除機を具現化する

 

「いくよデメちゃん―――この一帯に散らばるトラップ群を全部吸い取れ!」

 

その言葉と共に出目金と掃除機をミックスしたようなデメちゃん(それ)のスイッチをONに入れると強烈な吸引力が場を支配する

 

指定されたモノ以外には影響は無いのだが、戦場全体から隠された様々な種類のトラップが宙へと舞い上がり、質量も大きさも無視して掃除機の吸い込み口へと飲み込まれていく様は圧巻とも呼べる光景だった

 

「はい、お掃除完了。ただデメちゃんは具現化されたモノや操作されてるような念を籠められたモノは吸い込めないから強力な方(神字トラップ)はそのままだから気を付けてね」

 

「ハッ!残りは全部(『凝』で)丸わかりなんだから十分だぜ!」

 

そう言うのと同時に再びビアー達に突進をかますウボォーギンは彼らの間合いに踏み込む一歩外から殴り掛からんとしていた拳を大地に叩き付け、盛大に粉塵を巻き上げた

 

舞い上がるのは細かい煙だけではなく、小石から岩までもが爆心地を中心に散弾銃のように周囲に破壊を撒き散らす

 

並みの念能力者ならば凶器に変貌した石たちに全身を撃ち抜かれて死んでいただろう

 

だがこの場に並み程度の念能力者は居らず、ウボォーギンもそれを分かっているのでこれはあくまでも牽制(けんせい)と分断の為の一撃だ

 

ビアー達の立ち位置の中心付近を狙った攻撃によって其々(それぞれ)がバラバラの位置に退避する。後は旅団の仲間たちが闘いたいと思った相手の前に移動すれば良い

 

分かれ方は次の通りになった

 

 

ゴン&キルア    VS フェイタン

クラピカ&レオリオ VS フランクリン

レツ&ポンズ    VS シズク

ウボォーギン&マチ VS ビアー

 

 

 

・・・一人だけ対戦表の立ち位置が可笑しい?それはきっと気のせいであろう

 

 

 

ゴンとキルアの前に立ちはだかったのは全身黒尽くめ服を着た小柄な男だった。身長は未だ12歳の二人とさして変わらないだろう。だがその身に纏うオーラの薄暗さは今この場に居る旅団員の中でもトップかも知れない

 

「ゴン、気ぃつけろよ。本職だったから判る。アイツは暗殺者の類だ。あの体のどこから毒付きの武器やらなにやらが飛び出てくるか分かったもんじゃねぇぞ」

 

「それってキルアみたいに爪がいきなり伸びたりもするのかな?」

 

「流石にそれは無いとは思うけど、念を含めたら何でもありだからな。全方位に警戒しとけよ」

 

「うん。分かったよ」

 

キルアが元ではあるが同業者の臭いを嗅ぎ取っている中、対するフェイタンは武器である番傘を軽く弄んでいる

 

「一応訊いておくけド、陰獣やマフィアとの関係はどの程度ね?」

 

「そんなもん無いやい!」

 

「・・・マッ、良いネ。最後に誰か死んでなければソイツに喋らせるヨ」

 

もうこれ以上の会話は必要ないとお互いが認識してから数秒、先程から続く衝撃でゴン達の近くの斜面から小石が崩れる音を合図にしてキルアとフェイタンが初手として10人以上に増えた

 

暗殺者の扱う奥義とも呼べる歩法の一つである【肢曲(しきょく)】だ

 

「悪いね。肢曲(ソイツ)は昔から見慣れててさ。結局それは目の錯覚でしかないんだよな」

 

傍目には分からないように動きに緩急を付ける事で相手の認識を騙すこの技は、実際に増えている訳でも幻を生み出している訳でもない

 

「だから鏡写しみたいにこっちも動けば実質止まって見えちゃうんだよね」

 

一般人でも目の前を通過する電車やスロットの絵柄を首を振りながら視線で追いかけると解像度高く見る事が出来るのと同じ理屈だ

 

実際、二人の姿が増えて見えているのはゴンだけである

 

だからこそキルアは正確にフェイタンに向かってヨーヨーの攻撃を繰り出す事ができた

 

当然フェイタンはそのヨーヨーを番傘で弾くが、籠められたオーラから予想される威力よりも2段も3段も上の激重ヨーヨーによって僅かに番傘を持った腕が硬直する

 

その隙にキルアの匠な糸の手(さば)きで番傘にヨーヨーが巻き付いた

 

そうして動きが止まることで本体が(あら)わになったフェイタンにゴンが距離を詰める

 

「やっ!」

 

短い掛け声と共に突き出された拳をフェイタンは武器を握ったまま避ける

 

彼の持つ番傘は仕込み杖となっており、キルアのヨーヨーに動きを阻害される事無く刀の部分を抜き放ち、その動作でもってゴンの拳を避けるとついでとばかりに目の前のゴンを蹴り飛ばす

 

「ゴンッ!!」

 

「大丈夫!ビアーみたいな一発でやられちゃうような重さは無いよ!!」

 

模擬戦でビアーと戦う事は幾度となく有ったが、彼女の『本気』と対峙した事はない

 

濃密過ぎる修行で日々進化とも呼べる成長を続けるゴン達だったが、模擬戦では常にそんな彼らの限界ギリギリ攻防力を要求してくる余裕がビアーには有るのだ

 

それと比べたら基本戦闘のみとはいえ、ガードしても腕が痺れる程度の威力しかないのは有難いとすら呼べるものだった・・・判断基準が狂っている

 

「生意気ネ。直ぐにその口を利けなくシてやるヨ」

 

「はんっ!俺らの口を開かせたいのか閉じさせたいのかハッキリしろってんだよ」

 

軽口を叩いた後、キルアの持つ二つのヨーヨーがフェイタンに迫る

 

中距離攻撃の出来るキルアが先制し、その間にゴンが殴り掛かるのが基本となる連携だ

 

ゴンにも中距離武器たる『すごいつりざお』は有るが、ショートレンジにも対応できるヨーヨーと違って小回りが利かないので小柄で素早い近接タイプのフェイタン相手だと相性が悪い。それ故にゴンは今回の戦闘では素手喧嘩(ステゴロ)が基本となる

 

「そっちの銀髪ハお友達盾にシてオモチャ振り回すだけか?大した友情ネ」

 

「残念だけど、そんな安い挑発(エサ)に喰い付いてやる程には腹空かしてねぇよ」

 

「俺たちちょっと前までレストランに居たもんね」

 

お蔭で満腹ゲージは満タンだ!!

 

「皮肉だバカ!会話の流れで分かれ!!」

 

「ならそのヨーヨーは食玩カ?そのレストランの名前を教えるネ」

 

「なんでお前が喰い付いてんだよ。天然入ってんのか!?仮にハッピーセットとかの付録が50kgヨーヨー(こんなん)だったら一瞬でハッピー崩壊するわ!!」

 

子供に手渡した瞬間足の上にでも落ちようものなら粉砕骨折待ったなしである

 

キルアが予想外のツッコミを入れざるを得ない使命感に駆られている中、キルアのヨーヨーの隙間を走り抜けてゴンが再びフェイタンに正面から殴り掛かる

 

実戦経験がほぼゼロにもかかわらず相手が刃物で斬り掛かってくる事に微塵も恐れを見せずに冷静に攻撃を見切って反撃を繰り出してゆく辺り、胆力は既に大人顔負けである

 

()れども如何(いか)に精神面で五分の域に立とうとも戦闘技術と武器の差は大きい。剣道三倍段などは短い武器(徒手)長い武器(刀剣)の力関係を示す上で有名な値だ

 

キルアのヨーヨーの援護を受けた上でもゴンの全身に切り傷が増えていく

 

そんな半ば拮抗染みていながらもゴン達にとってはジリ貧な状況を崩す次の一手を打つのはカウンタータイプのフェイタンとは、当然ならなかった

 

「決めろ!ゴン!!」

 

キルアの叫びに呼応するようにゴンが右こぶしを左手で包むようにして腰だめに構える。明らかに大技を放とうとする予備動作にフェイタンの警戒度の比重がゴンに傾く

 

「残念こっちでした―――『雷掌(イズツシ)!!』」

 

「ッッ!!?」

 

そこへヨーヨーを伝ってキルアの電撃が弾いた刀から全身を駆け巡る

 

キルアの掛け声とゴンの予備動作はフェイタンに隙を作る為の布石。更にはそれで出来た僅かな穴をキルアの電撃が極大までに押し広げる

 

「衝っ撃ぃのーーー!!」

 

全ては上乗せされた相手の隙をもってしてもまだ届かないゴンの必殺技の溜め時間を捻出するため

 

『硬』ではないがオーラの攻防力のほぼ全てを右こぶしに集中させた上で更に数秒間オーラを練り上げる

 

戦闘。それも近接戦においては致命とも呼べるリスクという名の制約と誓約がゴンの拳に集まる力を通常攻撃の十数倍の領域に引き上げる

 

「遅すぎ。死ぬネ」

 

だが隙を作った上で(なお)、フェイタンの硬直が先に解けてその凶刃がゴンの首に左側から迫る。たとえ今から拳を放っても刀の迎撃もフェイタン本人の討伐も間に合わないだろう

 

次の瞬間、ゴンの『首』が肉体と泣き別れて宙を舞った

 

フェイタンは自身が斬り飛ばしたモノを視界の端に捉えて面白く無さそうに表情を歪める

 

「イカレてるネ」

 

宙を舞っているのはゴンの左手の手『首』だ

 

ゴンは少ないオーラで斬撃を防ぐ事は出来ないのも構わずに左腕を盾として使い、腕を斬られながらアッパーカットの要領で刀の軌道を逸らしたのだ

 

幻影旅団のメンバーならば必要あらば肉体も命も捨て駒のように扱うのも辞さないだろうが、ゴンほどの年齢で臆さずにソレを実行できるのは生粋の狂人か洗脳教育を受けた人間くらいだろう

 

ゴンさえ殺してしまえば追撃のヨーヨーも電撃の追加効果も痛手には成らないと斬撃を放ったが、外れた事でゴンの必殺技の準備が完全に整った

 

「ッ―――シングルブレットォオオオオオオ!!」

 

腹を狙ったゴンの渾身のパンチがフェイタンの片足に直撃する。内臓という弱点の多い腹ではなく跳躍によってヒットするポイントを足に変更したのだ。仮に腹に直撃を喰らえば気絶する可能性が高い。そう思わされるだけのオーラがゴンの拳には宿っていた

 

そしてゴンもフェイタンが足を盾にするや拳の位置を調節。相手の動きを鈍らせるのに(もっと)も効果の高い(ひざ)関節を破壊した

 

片腕と片足。一応痛み分けとも呼べる結果だ

 

だがそんな結果に一番納得しないのはフェイタンだ

 

彼は拷問が趣味という生粋のサディストであるが故に自身が傷つけられる事は許容しない。傷つくのが怖いとか痛みが我慢出来ないとかではなく『ムカつく』、その一言に帰結する

 

《クソが・・・ガキが調子に乗りやがって・・・》

 

フェイタンがゴン達には聞きなれない言語で(つぶや)くのと同時に彼の纏うオーラが跳ね上がっていく

 

「ゴン!手は回収したからサッサと離れろ!!」

 

何時の間にかヨーヨーでゴンの左手を手元に手繰り寄せていたキルアの居る場所にゴンも痛みを(こら)えながらも後退する。それと同時にフェイタンの着ている服が全身を隠す分厚い装備に変化した

 

《逃がさねぇよ。痛みを返すぜ―――》

 

「チィッ!!」

 

もうすぐ攻撃が来ると察したキルアがポケットから単二電池くらいの小型爆弾を取り出すとフェイタンに向かって投げ、地面にぶつかると小型とは思えないレベルの爆発を起こした

 

※ 旧アニメの一次試験で使っていた恐らくはミルキ印の爆弾

 

《無駄な事しやがって。土煙には毒霧で返すぜ―――【許されざる者(ペインパッカー)】》

 

フェイタンが上空に放った念弾が毒へと変化し、効果範囲内を毒で満たす。ゴンとキルアが闘いながら戦場からある程度離れていなければ敵味方関係なく毒を吸い込んでいただろう

 

キルアとゴンのスピードはフェイタンも把握しているのであのタイミングで二人が逃げ切るのは不可能だと確信する。だが爆発による煙が晴れると目の前には誰も居なかった

 

毒霧で多少視界が悪い状況ではあるが、それでも毒でのたうち回り、なんなら悲鳴を上げているはずの人間の姿を見逃すはずは無い

 

《何処行きやがった!!》

 

相手の凄惨な姿を観れるはずだったアテが外れた事から怒りの声を上げるフェイタンの背後から音もなく忍び寄ったキルアが二つのヨーヨーを重ねて鷲掴みにした手で目の前の後頭部に渾身の力で振り下ろし、彼の意識を奪い去った

 

「頭に血が昇ってちゃダメだぜ。暗殺者はもっとクールじゃないとな。俺は実家じゃそう教えられたぜ・・・まっ、ツマんねぇから復職する気は無ぇけど」

 

フェイタンが気絶した事で辺りを漂っていた毒霧も霧散し、効果範囲の外に逃れていたゴンが左腕を紐で縛って止血しながら戻ってきた

 

「やったねキルア。俺を逃がした上に後ろに回り込むとか本当に凄く速かったよ」

 

「まぁな。あとコイツが最後に使ったのが毒だったのも大きいけどよ。まさか素で毒が効かない俺みたいなのが居るとは思わなかったのか激おこ状態だったのと併せて注意力低下してたしな・・・まっ、訊いた話じゃ最後の攻撃も何パターンか有ったみたいだから毒を使ってくれたのは運が良かったけどな。他のやつだったらもうちょっと倒すのに時間かかってたと思うぜ・・・てかサッサとコイツ拘束して戻ろうぜ。お前の手も治療しなきゃダメなんだからよ。つか無茶し過ぎ。治すアテが有る(・・・・・・・)にしてもあんな馬鹿二度とやんな」

 

「うん、ゴメン。正直凄く痛いや。これじゃあ、ちゃんと勝ったとは言えないもんね」

 

「やっぱ隙がデカ過ぎんだよな~。ゴンの必殺技。今回も避けられること前提で手加減用の一撃だったしよ」

 

原作におけるゴンの必殺技(ジャンケン・グー)と同じ攻撃をあくまで手加減用と評すキルアにゴンも頷いて返す

 

「うん。カウンタータイプだって判ってたから必要以上のダメージは与え難かったからね。もし使ってたらキルアのアレ(・・)でも逃げ切れなかったかも」

 

「ざけんな。余裕で逃げれたっての・・・まっ、仮にそうなってたとしても俺には毒は効かなかった訳だけどな」

 

「うん。でも多分それ俺は死んじゃうよね?」

 

軽口を叩きながらキルアが主導でフェイタンの武装を解除すると強靭なロープで縛り上げ、ゴン達は他の仲間たちの居る場所に戻っていった

 

 

 

◁◁

 

クラピカとレオリオはウボォーギンにも劣らぬ体格を誇る大男であるフランクリンと対峙していた

 

こちらもゴン達と同じく戦場を少し離れた場所へと移している

 

フランクリンの能力は広範囲の制圧戦に向いているものなのでクラピカ達にしてもフランクリンにしても周囲に気を配らなくても良い環境はお互いに利が有ったのだ

 

仕切り直した両者は睨み合うのも数瞬、短い呼気とともにオーラを練り上げて能力を発動させる

 

 

俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)

 

導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)

 

 

フランクリンの両手の指全てから大量の念弾がばら撒かれてクラピカ達に殺到する

 

通常であれば連射性の代わりに念弾一発一発の威力は相応に低下するのでフランクリンと同レベル帯の相手には大したダメージを与えられなくなるものだが、彼は念弾を放出する十指の指先全てを切り落とすという狂気の制約と誓約によってその威力を格段に引き上げたのだ

 

対するクラピカは右手の薬指から伸びた鎖で嵐のような念弾の中でも危険なモノだけを的確に弾いていく

 

如何にクラピカと言えども次々と高速で迫りくる念弾の全てを見切る事は出来ない

 

それを可能としているのが振り子の動きで望む答えに導く薬指の鎖の能力だ。クラピカの技量一つで念弾を叩き落している訳ではない・・・能力も含めて彼の技量と言われればそれまでだが

 

「オレの弾丸をそれだけ連続で弾いてそれだけの操作性を維持できるとはな」

 

「ふん。私の鎖は貴様の豆鉄砲とは重み(・・)が違うという事だ」

 

まさか純粋に物理的な重さの話とは思わなかったフランクリンだが、それならばと更に弾幕の密度を上げる

 

幻影旅団最高の肉体性能と屈指のオーラ量を誇るウボォーギンですら『堅』でガードしてもただ突っ立っているだけでは直ぐに全身に無視できないレベルのダメージを受けるだろう威力だ

 

だがクラピカの方も先程よりも力強いオーラを発して繊細(せんさい)かつ縦横無尽に鎖を操る事で念弾を弾いてゆく。一見焼き直しの様だが明らかにクラピカの方に余裕が出て来たのを両者ともに理解する

 

「オレの弾幕を前に出し惜しみたぁ舐めてくれるじゃねぇか・・・いや、手を抜いていたようには見えなかったな。自己強化系の能力か」

 

「流石の観察眼だと言っておこう。なに、先の二人を倒した時と違ってマフィアを襲っていた旅団の残りが全員この場に(つど)っているならばスタミナを温存する必要も無いからな」

 

一族の(かたき)である旅団(クモ)を前にして緋の眼を抑えておくのは難しかったが、グリードアイランドの修行期間に一番効率良くメンバーの能力を知る為にレツの能力で団長であるクロロのコピーを作っていたので、ついでにクラピカの緋の眼のコントロールの修行にも用いる事にしていたのだ

 

緋の眼状態はそれだけでも爆発的に各種能力を引き上げてくれるが、肉体に掛かる負担が大きかったのでクラピカにとっては必須科目だったのだ

 

「最終的に貴様ら全員を確実に狩り尽くす為・・・何度もそう自身に言い聞かせたものだ」

 

「なにを言ってやがる?」

 

「貴様らが知る必要のない事だ」

 

先程ノブナガとシャルナークの二人組と戦った時にもクラピカは緋の眼を発動させずに体力を温存していたのだ。そんな事をせずとも倒せると仲間の力を信じた結果だ

 

信頼できる仲間たちと共に戦う事。己だけで復讐を完遂せんとしていた昔のクラピカなら緋の眼の怒りの力を自身の負担など知らぬとばかりに使い倒していただろう

 

「おわああああああっ!!?死ぬ死ぬ死ぬぅううう!!クラピカお前弾くなら俺に飛んでくるやつもしっかり弾きやがれ!―――熱っああ!?今ケツ(かす)めたケツううう↑テメェこれでもう一つ穴が増えたら如何してくれんだオラァアアア!!」

 

頼れる(?)仲間がレオリオだけのこの状況でクラピカが緋の眼に伴う全系統の能力を100%引き出すぶっ壊れスキルである【絶対時間(エンペラータイム)】を解禁するのに微塵の躊躇(ちゅうちょ)も在りはしなかった

 

勘違いしてはいけない。クラピカはレオリオの事を間違いなく信頼している。ただ信用はしていないだけなのだ・・・マヌケ的な意味で

 

ギャグ漫画ばりに面白おかしく体を捻って弾幕を辛くも避けるレオリオはこの場で唯一の安全地帯であるクラピカの背後にカエルのジャンプのような不格好な動きで滑り込む

 

カエルがカエルジャンプしても何も変ではないが、人間がやると途端に滑稽(こっけい)となってしまう

 

「如何やらお仲間は味方の影に隠れるしか能が無ぇクズみたいだな。同情するぜ」

 

フランクリンがクラピカとレオリオの射線が重なった事で両手の銃口を絞り、クラピカに更なる集中砲火を浴びせる

 

「心配も同情も無用だ。こんなのでも役に立つ時は有るのでな」

 

クラピカがそう言い終わると同時にフランクリンの足元から二つの念弾が飛び出して彼を襲った

 

先程のレオリオのジャンピング土下座のような飛び込みの動作は彼が地面を殴りつける事も兼ねていたのだ

 

「ッチ!」

 

フランクリンはその巨体に似つかわしくない機敏な動作で横に避ける事で攻撃を(かわ)す。しかし回避動作の為に一瞬途切れた弾幕は彼らの攻守を逆転させるのに十分な隙であった

 

束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)

 

クラピカが伸ばした鎖をフランクリンの頭上に振り下ろす。先程の攻防から迎撃という選択肢を即座に排したフランクリンは更なる跳躍で鎖を回避すると彼の直ぐ隣の地面にぶつかったソレが仲間の放つ【超破壊拳(ビックバンインパクト)】のような威力でクレーターという結果を大地に刻み込んだ

 

「ッ冗談じゃねぇぞオイ」

 

超破壊拳(ビックバンインパクト)】並みの破壊力。それ自体は驚くに値しない。威力の増加など制約と誓約でどうとでもなるからだ。だがその攻撃が連続で襲い掛かって来るとなれば話は別だ

 

叩き付けられた地面から舞い上がる粉塵の奥から操作された鎖がフランクリンを追いかける

 

いきなり地面にクレーターが出来、未だ足が地面に着いていない事で次の回避が間に合わないと悟ったフランクリンは両手を合掌させ鎖に向けて突き出し、90度手首を捻る

 

横薙ぎに迫る鎖に対して彼の念弾を余すところなく叩き込む事で着地までの時間を稼ぎ、辛くも次の攻撃も避け切った

 

「うらあああああ!!俺を忘れて貰っちゃ困るぜ。ツギハギ耳たぶリングフィンガーアクセサリーチェーン野郎!!属性過多も大概にしろやアアア!!!」

 

そこへレオリオがフランクリンへ突撃をかます。何にキレてるかは不明だ

 

(マヌケが好機と見て(はや)ったな。大人しくあの鎖野郎の後ろから援護でもしてりゃ良かったもんを―――アイツは明らかに鎖野郎よりもオーラ量も練度も低い。ハチの巣にして目の前に転がしてやれば多少の動揺は誘えるかもな)

 

フランクリンはクラピカの【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)】に今度は片手の銃口だけを向け、もう片方の手の銃口をレオリオに向ける

 

さっきの一回で鎖の速さや念弾のピンポイント射撃にも慣れた彼は片手だけでも鎖の猛攻を数度だけなら問題無く(しの)げると確信している。圧倒的な戦闘センスと言える所業であろう

 

そうして放たれた念弾は的確にターゲットに向かい、両側から(・・・・)念弾を弾く音が彼の耳に入る

 

「なに!?」

 

クラピカの鎖を警戒していたフランクリンがレオリオの方に視線を移すと無傷のまま右腕(・・)を真っ直ぐにフランクリンに伸ばしていた。そして直ぐに片腕に何かが巻き付くような感覚が走り、咄嗟に『凝』を発動するとレオリオの右腕にクラピカの扱う鎖が巻き付いていたのだ

 

レオリオが鎖を引っ張るとバランスを崩さないようにその場で踏ん張りを利かせる事を強要されるが、その隙にクラピカの鎖が容赦なく全身を拘束する。捕らえた相手を強制的に『絶』にするその能力によってフランクリンは完全に無力化されたのだった

 

 

 

 

「いや~。上手くいって良かったぜ・・・で、コイツどうすんだ?鎖で猿轡(さるぐつわ)してるからこのままじゃ尋問も出来ねぇぜ?」

 

「先ずはゴン達と合流すべきだろう。色々と吐かせるにしてもコイツ等が全員揃った場所でやる方が効率も良い・・・あまり期待は出来んがな」

 

「そうだな。じゃ、さっさと連れていくか・・・あいつ等も無事だろうな?」

 

「なに、レオリオが無事ならば他の皆も無事だという事だ。心配いるまい」

 

「俺が一番ザコって言いてぇのか、この野郎!!」

 

「あまり当然の事を何度も確認しない事だ。馬鹿だと思われるぞ?ああ、済まない。馬鹿で間違いなかったな。私も少々疲れているようだ」

 

 

 

二人の何時ものじゃれ合い(?)から始まる追いかけっこで鎖で繋がれたフランクリンは全身を強打するハメとなり、静かに殺意を募らせるのだった

 

 




ゴンの必殺技はスクライドの主人公の技名から取ってますね。本編でも言ってるように奥義レベル1みたいな感じで奥義レベル2を使った時に技名の由来や性質は詳しく書けると思います

キルアが使った移動技は原作の神速とは別物ですね。これも詳しいお披露目は少し先かな?

レオリオがクラピカの鎖を使ってたのはクラピカの人差し指の能力で名前は【メモリーチェーン(紡ぐ人差し指の鎖)】です。詳しい制約と誓約などは旅団編の終了時に一度主人公たちのステータスを書くのでお待ちください
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