毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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サブタイトルぇ・・・どうしてこうなった?


セクシーとモッコリ

ビアーが屋敷の外から針人間たちの襲来を感じ取る少し前、ヨークシンシティのとある巨大ビルを中心とした半径500メートルは関係者以外は人っ子一人入れない厳戒態勢が敷かれていた

 

厳密に言えば一番外側で交通整理をしているのはマフィアと癒着している警察グループな訳だが、その少し後ろではマフィア達が銃弾どころかロケットランチャーであっても数発程度なら防げそうな分厚い壁を設置したり、拳銃どころかサブマシンガンやミニガン、中にはバズーカまでをも最初から装備している輩も居る始末だ

 

迷彩柄の軍服か黒のスーツかの違いだけで、これから何処ぞの軍隊が攻めてきても暫くは持ち堪えられる程度の武器・弾薬が揃っている此処はそこだけ見れば戦場の最前線と言われても納得してしまう程だろう

 

そんな彼らの上空。本来なにもないはずのソコに(たたず)む一団が居た

 

「おもしれぇ能力だなぁ団長。空中を歩ける靴を具現化すんのか」

 

その中の一人であるフィンクスが自身の履いている近未来的デザインの靴を見ながら楽し気に笑う

 

「ああ。空中だけでなく壁でも天井でも水上でもマグマの上でも、あらゆる場所を好きに歩行する事が可能な【適応快適歩行靴(テクテクランランブーツ)】だ。だが言った通り一歩でも走れば能力が解除される。能力者本人(オレ自身)はまた靴を具現化すれば良いが、お前たちは真っ逆さまだ。奴らを見つけても(はや)るなよ」

 

右手に他人の能力を盗んで具現化した本の中に保管し、自由に使用する【盗賊の極意(スキルハンター)】のページを開いたクロロが忠告する。今使っている能力は一度上空まで上れば同じように歩いて下るか、能力を強制解除しての自由落下でしか移動が出来ず、見つかれば格好の的となってしまうのだ

 

「わーってるよ。てか「テクテクランラン」とか団長が口にすると笑えるな」

 

「ふっ、文句ならこの能力を創ったヤツに言え。尤も生きているだけで口は利けなくなっているかも知れんがな」

 

クロロがここで無駄な嘘を言う理由もないのできっと元の能力の持ち主は心身に癒えない恐怖と傷を負わされたのであろう

 

彼らにとっては至極ありふれた日常の一コマだ

 

「さぁ、開幕だ。コルトピ、行けるな?」

 

「何時でもOK」

 

同じ空中で周囲に建っていた高層ビルに結ばれた糸を左手で持つコルトピがリーダーのGOサインを待ち、軽く頷いたクロロは眼下のマフィア達のバリケードを無慈悲に見下ろす

 

「やれ」

 

そのたった一言が殺る気に満ちて警戒に当たっていたマフィア達を数秒後には絶望一色へと変える合図となった

 

「『流星害(ギャラクシーダスト)』」

 

コルトピが少しずつ右手の角度と方向を変えながら【神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)】を連続で発動させる。それによってマフィア達の守るバリケードの大半が潰される配置で高層ビルが上空に建ち並ぶ非現実的な光景が顕現した

 

「ごみ捨てはキミ達だけの特権じゃないんだよ」

 

粗大ごみと呼ぶにはあまりにも大き過ぎるソレらが重力に従って地面に落ち、ヨークシンシティの一角に巨大な粉塵を巻き上げた

 

 

 

 

巨大質量たるビル群が空から落ちた影響はオークション会場と外周バリケードの間に陣取っていたレツたちにも轟音と振動、その後に視界を埋め尽くす粉塵という形で現れた

 

いきなりビルが空に現れて落ちて来るなんて念能力だとしても非常識な現象もそうだが、津波のように押し寄せて来る粉塵に呑まれるのは避けたいところだ

 

「皆、ここはボクに任せて」

 

仲間たちの前に立ち、『人形受胎(ドールキャッチャー)』でピー助の翼を片翼(省エネ)だけ生やしたレツが『かぜおこし』で自分たちを吞み込まんとする粉塵を受け流す

 

「おお!やるじゃねぇかレツ。でも煙をどうにかするだけならあの眼鏡っ娘ちゃんの掃除機で良かったんじゃねぇか?そっちの方がすっきりしただろ?」

 

レオリオの疑問にレツは翼を仕舞いながら軽く首を横に振って答える

 

「それはダメだよ。あのビルはコルトピって能力者の手で具現化された物だろうからね。粉塵の何割かは掃除機(デメちゃん)じゃ吸い込めなかったと思うよ。そういう制約が有るから―――さてと、どうやら役者も揃ったみたいだね。気合を入れて皆、開演だよ」

 

レツたちが改めて正面を見据えると五つの人影が悠々と歩いて来るのが判った。先程レツの起こした爆風で上空に居たクロロたちはレツたちの居場所を見つけられたのだ

 

レツたちもクロロたちも今回の戦いでの決着を望んでいる以上はただの挨拶のようなものである。(もっと)も昨夜に引き続き、替えの利く兵隊とはいえ一瞬で約半数がミンチになったマフィアも都市再生に兆ジェニー規模の予算を今後回す必要のあるヨークシン市長も涙目である

 

「随分と五月蠅い開幕のブザーだね。舞台に緊張して音量調整ミスっちゃった?」

 

「なに、暴れるのが好きな連中が多くてな。お前たちがあいつらを何処に隠したかは知らんが、せめて気分だけでもお裾分けしてやろうと思ったのさ。もし死んでても聞こえるくらいのものをな。まぁ(たたかい)に参加出来ずに今は『俺も暴れてぇ』と駄々でも捏ねている頃だろうがな」

 

「貴様らは・・・そんな理由で昨日も今日も、今までも!何十何百という命を奪ってきたと言うのか!答えろ。何故そのような非道な真似ができるんだ!!?」

 

レツたちの中で一番幻影旅団に対する激情を抱えているクラピカが緋色(いかり)に染まった瞳で()える。射殺すような眼光を受けても平然としているクロロはマイペースに感想を述べる

 

「その目・・・成程、クルタ族か。偶々集落から離れていたのか?生き残りが居たとはな」

 

 

“ズドオオオオオオンッ!!”

 

 

「答えろと言っているんだ!!」

 

クラピカの【束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)】がクロロのすぐ隣に叩き付けられて地面を割る

 

対してクロロもこの一撃で仕留める気が無かったのを見切ってその場から一歩も動かずに眉一つ動かす事すら無かった

 

「理由か・・・改めて問われると言語化は難しいな。だが、やはり関係ないからじゃないか?」

 

「つーかそんなの気にした事無かったな」

 

「考えた事も無いことだからね」

 

「う~ん♦ボクは自分が愉しければ後はどうでもイイや♥」

 

「俺も一族の誇り(つよさ)を世に知らしめられれば、それで良い」

 

「優先順位の問題じゃない?知人も他人も毎日のように死んでいく環境だったから、他人の命なんて気にしないのが当たり前だったし」

 

「・・・成程よく分かった。貴様らが自分本位というものを煮詰めた輩だという事がな。やはり命に替えても此処で全員捕縛する」

 

何処までも他人が眼中にないという幻影旅団共通の価値観を聴いたクラピカが大きく鎖を唸らせて鞭のように空間を蹂躙し、鎖を回避する為に大きく避けた旅団員たちを分断する事に成功した

 

人数は互いに6人ずつ。だが非戦闘員(コルトピやパクノダ、ポンズ)や練度の低い者(レオリオ)、一人だが実質一人じゃない者(レツ)など、能力をお互いにある程度分かっている為に素直に1対1×6とはならなかった

 

クロロ        VS クラピカ

ボノレノフ&コルトピ VS レツ

フィンクス      VS キルア&レオリオ

ヒソカ        VS ゴン

パクノダ       VS ポンズ

 

以上5つの戦場でそれぞれの戦いの火蓋が切って落とされる

 

 

▽[パクノダ VS ポンズ]

 

ポンズとパクノダはビル群の間を駆け抜けながら互いに攻撃を繰り出していく

 

ポンズの操る痺れ槍蜂が彼女の指揮に合わせて時にバラバラに、時に編隊飛行でパクノダに襲い掛かるのを彼女の持つ銃の乱射でその(ことごと)くを撃ち落としていく

 

パクノダの銃撃は高レベルの念能力者には効き辛いが、オーラが尽きるまでは弾数無制限なので雑魚狩りには十分な性能を持つ。ただの蜂など言わずもがなだ

 

「だったらこれは如何かしら!」

 

ポンズの投げた神字ブーストの閃光弾が強烈な光を発し、その光が止まない内に蜂たちがパクノダに殺到する。一連の攻防の中で既に投げていた発煙弾に一種のフェロモンを混ぜ込んであり、蜂たちはそのフェロモン目掛けて真っ直ぐに獲物(パクノダ)に向かう事が可能なのだ

 

「残念。丸見えよ」

 

常人では失明しても可笑しくない光量の中で余裕の声が響き、パクノダの撃つ弾丸が正確に蜂達の体を貫いていく

 

「っ!随分と都合よくサングラスなんて持ってたものね」

 

「あら、知らなかったの?長身スーツとサングラスの組み合わせにハズレは無いのよ」

 

レオリオが聞いていれば『お嬢さん。今度俺とデートでも如何ですか?』と歯を(きら)びかせながら口説いて返事に眉間に弾丸を貰いそうな真理(?)を口にしながら邪魔な(ハチ)を排除したパクノダがポンズ本人に向かって連続で引き金を引く

 

「痛ったいわね!」

 

できるだけ半身となりつつ体の前面(側面)を『凝』で防御力を高めたポンズは後ろに在ったビルの窓ガラスを背中で割りながら中に転がり入り、パクノダの射線から逃れる。それでも並みのライフル弾よりは強い攻撃を受けて裂傷や擦過傷からの出血やアザなどの内出血が出来る。一瞬でも足が止まって弾丸の雨に(さら)されれば深刻なダメージを受けるだろう

 

「追いかけっこはもう終わりかしら?・・・ああ、そう言えば貴女はトラップを使うんだったわね。実は追い込まれたフリをしてこの場所にはトラップを(あらかじ)め仕込んでいたりする?それともあの大きな蜂の待ち伏せとか?」

 

『凝』と研ぎ澄まされた五感で周囲を警戒しながらもポンズの入ったとあるオフィスに踏み込んだパクノダが銃口を向けながら問いかける。普通なら知っているはずのない情報まで筒抜けであると圧を掛けるのも忘れない。だがそれにポンズは軽く笑ってみせる

 

そもそもの話、手の内がある程度バレている事など百も承知で圧足り得ないのだ

 

「ご期待に沿えなくて残念だけど、A級首の幻影旅団相手にそこまで上手く立ち回れる程には私自身は強く無いわ。まぁそれでも貴女の言うように事前にトラップを仕込んでいたなら頑張って誘導しようともしたんでしょうけど、私って無駄遣いは嫌いなのよ」

 

「・・・何が言いたいのかしら?」

 

「貴女相手に相棒(アリスタ)は必要ないって話よ。悪いけど、私にとって強さは手段であって目的じゃないの。ここからは圧倒的な反則で完封試合してあげるから覚悟しときなさい」

 

ポンズの勝利宣言と共に圧倒的なオーラが(ほとばし)る。幻影旅団の誰であろうと届かない濃厚なオーラに空間が歪んで見える程だ

 

あの子(ビアー)のように魅せ場(ハイライト)なんて言わないわ。ここからはただのコマ送り(カットシーン)よ」

 

ポンズが胸ポケットから秘密兵器とも呼べる切り札を取り出す。今ここにパクノダの敗北の未来が確定する!

 

 

 

 

 

 

 

 

「やん♡ちょっ!どこ触ってんのよバカ!あっ♡変なとこに潜り込もうとするなぁああ!!」

 

・・・(むし)ろハイライトは今からかも知れない

 

 

 

▽[ヒソカ VS ゴン]

 

クラピカの攻撃範囲から外れた先のとある中層ビルの屋上でゴンとヒソカはお互いに笑みを浮かべていた。ゴンは真っ直ぐとした視線を向け、ヒソカはネットリとした視線を相手に向けている。視線の質こそ正反対と呼んでいい二人だが、浮かべる笑みは同質な好戦的なものであった

 

ハンター試験での借りを返したいゴンと、ゴンの成長を愉しみたいヒソカ。互いの願いを叶える為の手段は拳を交える事以外に在りはしない

 

「クククク♠今日という日を待ち望んでいたよ♥団長との闘いも魅力的だけど、キミとの闘いも決して手をヌイたりしないよ♦」

 

「そんなの、こっちだって抜かせてやるつもりなんて無いもんね!」

 

ヒソカはこの戦いでゴン達と約束を交わしていた。それは前々から戦おうとお互いが決めていたゴンとの勝負でゴンがヒソカの顔面にまともなパンチをぶち込む事が出来れば、以降は旅団を狩る側に回るというもの

 

旅団は基本的にはワンマンプレイをすることが多いので離れた見えない場所で戦えば途中からヒソカが裏切ったとしても気付かれ難いのだ

 

だがそれはソレ、これはこれ

 

ヒソカにとってクロロもゴンも極上の果実だ。心底から愉しむ為にも全力を賭す

 

もしもその間にクロロが狩られたらその程度の相手だったと思うだけであり、暫く経ってもゴンが自分に一撃すら真面(まとも)に入れられないようなら彼に失望し、ゴンを殺して後は好きに立ち回るだろう

 

ヒソカにとってはただそれだけの話である

 

「やっ!」

 

様子見など無いゴンの右ストレートが始まりの合図となった。先ずは顔面。狙うは顔面。流石のゴンもこれだけで勝負が決まるとは思って無いが、そもそも狙わなければ話にもならない。故に最初の一打は一種の意思表示(ボディランゲージ)

 

(絶対に殴り飛ばしてやる!)

 

対してヒソカは顔面をまともに殴られたらアウトという縛りは有るものの、二人の実力差を考えたら丁度良いハンデだと思っている

 

僅か半年で目まぐるしい程の成長を魅せているゴンを前に何処かで(かせ)を着けなければ彼が成熟する前に思わず殺してしまいそうだからだ

 

(ゴン!ゴン!!!だからこそ簡単には終わらせてあげないよ♠キミの全てをボクに(さら)け出してくれるまではね♥)

 

四角いビルの屋上を一種のリングと見立てた戦場の中でゴンは縦横無尽に走り回って全方位から蹴りやパンチを放ち、ヒソカは中央付近からは極力動かずに回避や迎撃を優先して立ち回る

 

さしものヒソカも動き回りながら積極的に攻撃を仕掛けたら顔面にカウンターを喰らいかねない。それ程までにゴンの基礎スペックは磨かれているのだ

 

ゴンのキックとヒソカのパンチが交差し、さりとて紙一重でガードし合った二人はその反動を利用して距離を取り、一息ついて仕切り直す

 

「そう言えばあの釣り竿は使わないのかい?試験の時も使ってたけど、珍しい武器だよね♦」

 

「トランプ武器にしてるヒソカに言われたくないよ。それにヒソカだって素手のままじゃんか―――別に、釣り竿は不意打ち(ハント)には向いてるけど正面きっての戦いには向いてないってだけだよ」

 

「そっか♣残念♦伸び縮みするところとか少し似ているとも思ったのに♠」

 

「似てる?何にさ?」

 

「フフ♥」

 

ゴンの疑問にヒソカはオーラの圧を高めて不気味に笑う事で応える

 

(ヒソカの『発』!?何かやって来る!!)

 

ゴンは何が来ても動けるように腕をクロスさせて腰を落とし、回避も防御も出来るように構える

 

“ドウッ!!”

 

ヒソカの強烈な踏み込みでビルの屋上に蜘蛛の巣状の(ヒビ)が入り、抜け落ちる寸前となった床を置き去りにしてゴンへと高速で迫る

 

(迅い!けどこれならまだ反応できる。攻撃がトリガーなら回避?いや!きっと今ならこっちからも決まる!!)

 

二人の体格差もあってヒソカは振り下ろすタイプのチョップを繰り出し、ゴンはクロスした腕をそのまま上に持ち上げての防御姿勢に入る

 

(ここだ!!)

 

クロスさせた腕に攻撃が当たる寸前に片腕だけを残してヒソカのチョップの勢いを削ぎ、全身を這うように沈み込ませたゴンがヒソカの股下を潜り抜ける。身長の低いゴンに威力の乗った攻撃を当てる為に足を広げて重心を低くした事で子供のゴンには十分抜け出せるだけの穴となったのだ

 

ヒソカの背面に抜けたゴンは素早く半回転しながら跳躍し、振り向きつつあるヒソカの顔面に『凝』で固めた渾身のパンチをぶち込んだ

 

 

 

「・・・う~ん。危ないアブナイ♣あとちょっとで終わっちゃうところだったよ♥それとボクの能力を知っている・・・感じじゃ無かったかな?だとしたら今のは偶然かい?やっぱりキミ、勝負勘というかハンターとしての勘って言うのかな?持ってるよね♦」

 

確かに顔面を殴られたはずのヒソカは小揺るぎもせず呑気に感想を口にするだけであった。これでは到底『顔面に一撃』の条件を満たしたとは言えない。無論強烈に主張すればその限りではないが、ゴンが納得する事は無いだろう。ヒソカもそれを分かっているので一々口にはしない

 

結果よりも過程を重んじる二人にとって納得は何よりも優先されるべき事柄であるからだ

 

ヒソカがゴンの拳の端から覗く瞳を“ニタリ”と歪ませるとゴンの背筋に“ゾワッ”とした悪寒が奔る

 

「がっ!!?」

 

一瞬筋肉が“ブルリ”と震えた瞬間に(あご)を下から蹴り上げられるが、なんとか手の平を間に差し込んだ事で脳が完全に揺さぶられるのは避けられ、数瞬視界が歪む程度に抑えられた

 

(危なかった。完全に決まったと思って気が緩んじゃった)

 

「ん~、ダメダメ♦逃がしてあげないよ♣」

 

しかし高い観察眼と歴戦の経験を併せ持つヒソカはゴンのオーラの僅かなブレから内部にダメージが通ったのを見抜き、己の能力を発動させる

 

伸縮自在の愛(バンジーガム)】!!

 

先程のチョップでぶつかったヒソカの右手とゴンの左腕の間に伸びたオーラが一気に縮むと宙を舞っていたゴンの体は簡単に引き寄せられてヒソカの左フックがゴンの右頬を捉えた

 

「っ!!?」

 

床に叩き付けられたゴンにヒソカはこれ見よがしに右手をプラプラさせ、ゴンも『隠』されていたオーラを『凝』で視認する

 

ゴンが股抜けをした直後は【伸縮自在の愛(バンジーガム)】も一緒に股抜けしてしまったので下手に発動させられなかったのだ。仮に発動させてたらヒソカの股間に狙いが逸れたゴンの拳か顔面が直撃していただろう・・・変態(ヒソカ)なら悦びそうである

 

「これ、【伸縮自在の愛(バンジーガム)】って言うんだ♠ガムとゴム両方の性質を持っててね♦『凝』に加えてゴムの衝撃吸収力を合わせれば大抵の打撃技はボクの芯にまでは届かない♥もっとも前にあの子(ビアー)に殴られた時は一撃で何か所か骨がイッちゃったけどね♣」

 

それを聞いたゴンは小さく笑いながら顔を上げる

 

「そっか。だったらビアー並の攻撃が出来れば良いって事だよね?」

 

「ククククク♠キミがそれを魅せてくれるのかい?」

 

「そのつもりだよ。まぁまだ未完成なんだけど・・・っね!!」

 

ゴンは会話の終わりと共にダッシュで距離を詰める。問答よりも先ず行動。強化系の鑑である

 

「フフフ♣さぁ、来なよゴン♠」

 

「やあああああああ!!―――」

 

ゴンは嬉しそうに待ち構えるヒソカに全力で駆け寄り・・・

 

「―――あああぁぁぁぁぁ!!」

 

・・・全力でその横を通り過ぎて行った

 

一瞬キョトンとするヒソカを置き去りにビルの屋上に上がる為の出っ張り(塔屋(とうや))を切り取るような形で破壊して持ち上げるとヒソカと自分との間に伸びるオーラの中間地点に叩き付けた。間に障害物が挟まれば確かに【伸縮自在の愛(バンジーガム)】をただ発動させれば良い訳ではなくなる

 

伸縮自在の愛とやらも横恋慕(物理)には弱い傾向が有るのだ

 

「ふ~ん♣でもボクとキミは繋がったまま♠この程度じゃ逃げも隠れも出来ないよ♦」

 

(ゴンはまだ塔屋(かべ)の向こうに居るね♦これを壊して瓦礫に紛れて攻撃するか、ボクがコレを壊した隙に飛び込んで来るかってところかな?【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を一旦解除してもイイけど仮にもさっき顔面を殴られた手前、逃げて仕切り直すのもなんか恰好悪いよね♣)

 

「イイよゴン♠受けて勃ってアゲる♥」

 

“ツカツカ”と音を立てて塔屋(とうや)に近づいたヒソカは横殴りの裏拳で目の前の障害物を破壊する。彼にとってはこの程度は態々腰を入れて攻撃しなくとも破壊可能であり、視界を確保してゴンの次の一手に対処するには弱攻撃の方が都合が良いのだ

 

そうしてヒソカの目に映ったのは拳を腰溜めに構えたゴンが飛び込んで来る光景だった

 

(予想通りでは有るね♦しかし小細工も無しに突っ込んで来るならさっき普通に殴り掛かって来てても変わらなかっただろうに♣)

 

なにか自分をワクワクさせるような仕込みでも在るのかと思っていたヒソカは一瞬落胆し掛けるが、頭の片隅に引っ掛かった違和感が一気に膨れ上がる

 

小細工も無し?ならば何故ゴンはあれだけ気合を入れて普通のオーラを纏っている(・・・・・・・・・・・・)

 

直後にゴンの拳から莫大なオーラが(ほとばし)る。まるで数秒掛けてオーラをチャージしたかのようなエネルギーがいきなり現れたのだ

 

(これは!()えて中途半端にした『隠』で必殺技の気配(・・・・・・)を隠したのか♠壁の向こうであれだけのオーラを『発』っしていたら誰だって警戒度を跳ね上げる♣ボクの油断を誘う為にゴン自身の気配(オーラ)は残した!!ああ♥最高だよゴン!!誘い受けと見せかけての一転しての攻め♦キミになら振り回されるのも悪くない♠二言は無いよ♣受けて勃つ♥)

 

ヒソカはゴンと繋がった【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を解除する。ゴンの攻撃を防ぐのに余計な個所にオーラを廻している余裕など無いと判断したからだ

 

ヒソカは両腕を合わせながら前に突き出すと今度はその腕を肩幅くらいの位置まで離す。そうしてヒソカの手の平、前腕、(ひじ)の三か所に【伸縮自在の愛(バンジーガム)】による盾が張られた

 

「ゴムゴムの盾―――なんちゃってね♥」

 

なんとも表面積の狭い盾だがこれは死合ではなく試合だ。顔の前で盾を張ったヒソカも殴り掛かるゴンも事ここに至っては細かい事は気にせず、この一撃を[凌ぐ/通す]だけである

 

「撃滅のおおお!―――っデュアルブレットォオオオ!!」

 

放たれたゴンの攻撃はヒソカの【伸縮自在の愛(バンジーガム)】の一枚目の盾に触れ、弾けた拳圧が残る二つの(ガム)まで浸透してヒソカの顔面に伸びる形で(へこ)むが、ギリギリ鼻先に掠めるか如何かという位置で勢いが弱まる

 

足下を固定する為のガム(オーラ)も省いていたヒソカは実質的に後ろに跳ぶ形で衝撃を緩和する事になる。ちょっと両手首がイッてしまったが顔面さえ殴られなければこの愉しい時間はまだまだ続くのだ

 

だが勢いが殺される前に追加の衝撃が生まれ、ヒソカの眼前まで来ていた(ゴム)が顔面に突き刺さり、彼の鼻の骨を粉砕しながら向かいのビルの壁の奥まで吹き飛ばした

 

ゴンのやった事は放出系と強化系の合わせ技である

 

『練』って高めたオーラを拳に溜めて殴り掛かり、その拳が相手に当たる寸前にオーラを放出して相手に当て、直後に生身の拳による追加の衝撃を発生させる技だ

 

放出系の最大の長所たる遠距離でも作用するという部分を僅か数センチ程度のリーチに抑える事で威力を跳ね上げる。無論タイミングを見誤ればオーラが相手に届く前に霧散してしまうシビア過ぎるダブルインパクトだ。イメージするなら流浪人の剣客の親友である喧嘩屋の『フタエノキワミ、アー!』や美食屋な主人公の釘パンチ(2連)などであろうか

 

拳の衝撃の後に呪力が追いつく呪術を使わないで廻戦してる主人公の逕庭拳(けいていけん)とは順番が逆である

 

「う~ん。やっぱりタイミングが難しいや。もっとギリギリのタイミングじゃないと威力が逃げちゃうな~・・・って、ヒソカは!大丈夫なの!?」

 

発動こそしたものの十全に力が乗りきらなかった事に不満気なゴンだったが直後に派手に吹き飛んだヒソカの心配をし始めるが、当然要らない心配であった

 

「アイタタタタ♣スゴイ威力だったよゴン♠こんなに鮮烈な一撃を受けたのは久しぶりだよ♥」

 

何時の間にか向かいのビルからジャンプして戻ってたのか折れた両手をそれぞれの反対側の腕に器用に押し付ける事で無理やり元の形に戻して【伸縮自在の愛(バンジーガム)】で固定し、滝のようにダバダバと血の垂れる潰れた鼻もゴキゴキと痛そうな音を立てながら形を整えてギプス代わりのゴムを張り付けてついでにゴムで鼻血の止血もしたヒソカが歩いて来る

 

身体の芯まで突き抜けた衝撃(かいかん)で一部モッコリしてるのは・・・何時もの事である

 

「すっごいや。ヒソカの能力ってホントに便利なんだね!」

 

純真純粋なゴンは幸いそっちには目が行かなかったのかヒソカの【伸縮自在の愛(バンジーガム)】の汎用性を素直に称賛していた

 

「うん?ありがとう♠子供の頃好きだったガムから名前を取っててね♥ボクも気に入ってるよ♦」

 

「へぇ~、そうだったんだ・・・あっ、そうだ。コレ返すね」

 

ゴンはズボンのポケットからハンター試験の時にヒソカに無理やり顔面パンチと共に押し付けられたプレートを取り出して差し出すとヒソカもそれを受け取る

 

「ヒソカ・・・ヒソカなら最後の俺の攻撃は避けようと思えば避けられたよね?だから今日は勝ったとは思わないよ。もっと強くなってリベンジするからね!」

 

輝かんばかりの瞳で真っ直ぐに自分に闘志を向けて来るゴンにヒソカのモッコリ度が上昇する

 

「勿論、愉しみにさせてもらうよ♥キミはもう一人前だよ♣だからこそ次ヤル時はルール無しの世界でヤろう♦―――命を懸けて♠」

 

「うん!」

 

両者ともに満足そうな笑みを浮かべ、ここに一つの決着が付いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

ライバルとしての友情を育んでいるシーンでは有るが、片方がモッコリしているのが全てを台無しにしているのはお約束だ

 




はい。ポンズのセクシーボイスとヒソカのモッコリでしたね。まぁモッコリの方は他に居ねぇって事で予想した人も居るでしょうが、まさかポンズのセリフにハートマークを付ける日が来るとは思いませんでしたねぇ

旅団との戦いは全員揃っての乱戦はどう足掻いても私には扱いきれないのでウボォーたちとの戦闘と同じく組み分けする事になりましたね
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