毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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な・・・難・・・産・・・Die・・・ガクっ・・・


クルクルとグルグル

[ボノレノフ&コルトピ VS レツ]

 

レツ達は片側三車線ずつ在る大通りで対峙していた。オークションの期間なのも相まって本来なら混雑しているはずの道も今は閑散としている

 

遠くでは開幕の合図としてコルトピが落としたビル群の事も有ってかパトカーや救急車などのサイレンが鳴り響いているが、レツ達の居る戦場まで来ることは無い

 

それと云うのも倒壊したビルにこそ要救助者(生存は絶望的)が居るのもそうだが、生き残りのマフィア達が決して通そうとはしないからだ。下手に刺激を加えた結果、何時また災害規模の攻撃が気分一つで降って来るか分かったものでは無いと、彼らの心情は“触らぬ神に祟りなし”という方向で一致したのだ

 

「全くもう。なんで戦闘員でもないボク(潜在オーラ約25万)が旅団(クモ)を二人も相手にしなきゃならないかな~?」

 

どう考えても彼女のアホみたいなオーラ量が理由の大半を占めている訳だが、彼女の倍以上のオーラを持つビアーの存在が如何しても彼女の思考を鈍らせる。完全に感覚が麻痺している非戦闘員(潜在オーラ約25万)である

 

世界観は違うが戦闘民族(サイヤ人)より強いナメック星の農民でも、もう少し大人しいであろう

 

「何故と云えば俺たちがお前の事を気に食わないからだな」

 

「え?ボク達って初対面だよね?もしかしてキミ達の仲間を倒したから?あれ?でもそれなら別にボクだけが対象なのは変だよね???」

 

レツはいきなりの嫌悪感を乗せて放たれるセリフに頭の中に疑問符が飛び交うが、その答えはコルトピが話してくれた

 

「僕らのメンバーに数年前、キミとよく似た能力の持ち主が居てね。ソイツは僕の能力を独創性の入る余地の無い芸術性ゼロの能力だと言ったんだよ。あと、僕自身の事も『ミステリアスや肉体美は私のコレクションに加える要素として見ても良いけど、生憎キミの様なホラーはお呼びじゃないんだ。もっと突き抜けてるならまだしも、ただの引き篭もりにも見えるしね』と言われたよ」

 

「俺は『ダンスと音楽を無理に一体化しても中途半端にしかならないよ。一つの事柄に心血を注いでこその【美】だ。だいたい何だい、そのボクサーグローブは?ミスマッチを狙うにしてもテーマを定めないと寄せ集めのハリボテよりも見るに堪えないよ』・・・と言われたな」

 

(滅茶苦茶ケンカ売ってるじゃん!なにやってるの兄さん!?そりゃ遠慮なんて殊勝な心持ってる人じゃ無かったけど、今日ほど兄さんの妹であった事実を否定したくなった日は無いよ!)

 

思わぬところでオモカゲの負の遺産まで受け継いでいた事を知ったレツであった

 

「そんな訳で半分は俺たちの憂さ晴らしの為に殺られてもらう・・・そう言えばやけに能力が似通ってるが、アイツの関係者なのか?」

 

「今更!?そこは最初に確認する所じゃないの!?ホントにただの憂さ晴らし感覚だったよ。兄さん絶対に今言ってたの氷山の一角でしょ。出会う度に無自覚に相手の神経逆撫でしてたでしょ」

 

頭を抱えて苦悩するレツにボノレノフとコルトピは目を細めて敵意とオーラを『練』り上げる

 

「キミ、オモカゲの妹なの?」

 

「丁度良い。この仕事が終わったらちょっと殺しに行くか。アイツは今どこに居る?」

 

不味いと思った時にはもう彼らのやる気は殺る気に変わっていた。いや、元々殺る気ではあったがその密度が増した。レツとしても隠す意味も無いので素直に答える

 

「兄さんは天国・・・は、有り得ないか。居るとするなら地獄に居ると思うよ。兄さんに会いたいなら自殺して地獄巡りでもしてれば何時かは遭えるかもね」

 

(かば)ってる・・・感じでも無さそうだね」

 

「―――身内にも嫌われていたんだな」

 

「あははは・・・大切にはしてもらってたけど、好きとは流石に言えなかったかな。一方通行の想いが全部報われるなら世の中のストーカーが完全勝利しちゃうし」

 

哀れ(?)ストーカーと同列視されてしまったオモカゲであった

 

だが彼は妹への愛に溢れているだけであってストーカーでは無いのだ。ただ少し妹(オリジナルのレツ)を不老不死(人形)にしようとして目玉を抉った上で死なせてしまったり、自分の目玉を貸し与えて推し(レツ)の一部になったり、見聞きしたものをリアルタイムで盗撮・盗聴したり、常に位置情報を(目玉で)把握したり、本人の意思や意見をガン無視して愛を囁いたりしていただけなのだ・・・思った以上にストーカー要素が強かった。これでもオモカゲを嫌うまでに至らなかったレツは懐が深すぎたのかも知れない

 

「そうか。お前も苦労したようだな。だがヤツが死んでいたとは良い情報だ。他の奴らも聞けばさぞや気分が良いだろう。アイツは俺たち全員に嫌われていたからな。教えてくれた礼代わりに止めを刺す時はあっさり殺してやる」

 

「僕たち別に拷問好きって訳でもないしね」

 

「そんな後ろ向きなお礼なんて願い下げだよ。それはそれとして兄さんがホント御免なさい」

 

目の前の二人は兄と同レベルの犯罪者だ。その上でも今は何だか謝りたくなったレツであった

 

(極悪非道で通ってる幻影旅団にも嫌われてる兄さん・・・なんだろう。悲しくは無いのに虚しさだけで涙が出そうだよ)

 

レツが過去と向き合うその無情さを噛み締めていると、ふと軽快でありながら何処か情熱的なリズムが聞こえてきた

 

彼女が慌てて前方を見やると全身に巻いた包帯を解いて身体中に人為的に開けた穴からクルクルと踊る事で音楽を奏でるボノレノフが居た

 

戦闘中に踊りで音楽を奏でる。部族の伝統を組み込む誓約と音楽を伴った踊りという制約は彼の能力をより高みへと導く

 

「っさせないよ!」

 

みすみす相手の能力(メロディ)が完成するのを眺めるつもりは無いレツが正面から距離を詰めるが、ボノレノフとレツの間にコルトピが立ち塞がる

 

コルトピは幻影旅団の後方支援担当の非戦闘員。だがいざと云う時に逃げ隠れしか出来ないようではA級首(クモ)は名乗れないのだ―――彼はその場で屈むと両手を地面に着ける

 

「重なり合う物体がどんな現象を起こすのか見てみる?」

 

質問の形式を取りながらも相手の答えは聞いてない彼が“地面に地面を”ゼロ距離で重ね掛け(コピー)するとその地面が爆発、否、破裂した

 

同じ場所に異なるモノが同時に存在するという矛盾に物質の方が耐えられなかったのだ

 

これはコルトピの能力から偶然零れ落ちた裏技=『理を害するモノ(パンクハザード)』だ。一見最強の破壊技のようにも見えるが、内在オーラも含めて少しでもオーラが有るモノには通用しないので具現化した物や生物は対象外となり使い勝手は正直微妙である

 

破裂した地面は砂粒レベルにまで砕かれていたのでそこに突っ込んだレツに直接的なダメージを負わせる事は出来なかったものの、(ひる)ませて距離を取らせるには十分な効果があった

 

レツが突然の現象に困惑しているその隙にボノレノフがメロディを完成させる

 

 

戦闘演武曲(バト=レ・カンタービレ)】!!

 

 

具現化した民族衣装に仮面を被った戦士の姿となったボノレノフが同じく具現化した双刃の槍を手に砂の波濤(はとう)を受けて視界が鈍っているレツの全身にすれ違いざまに斬撃をみまう

 

「痛った~。よくも滅多打ちにしてくれたね」

 

「・・・俺は斬り刻んだつもりだったのだがな。やはり挨拶代わりの『序曲(プロローグ)』では仕留められんか。まぁ良い。ならば更にリズムを上げていくまでだ」

 

まともなダメージが通らなかった様子を見て小技では大して意味が無いと理解したボノレノフは別の踊り(メロディ)を披露しだし、彼は踊りながら無駄に器用に素早く後ろに距離を取る

 

曲が完成するまでは只管(ひたすら)に逃げる。シンプルかつ当たり前な、彼の基本戦法だと言えるだろう

 

「遠からん者は音に聞け、近くばその場で目にも見よ。この俺の美しき舞をな。これが俺のバックダンサースタイルだ」

 

「それを言うなら近くば“寄って”じゃないの!?それとその名前で良いの?後退(バック)に掛けてるんだろうけど、自ら主役の座を降りてるじゃん!近づかれたくない精神満々で普通に恰好悪いよ」

 

「・・・撤回はしなくて良い。所詮(オーディエンス)戯言(アドバイス)演者(オレ)の心には響かない」

 

「響かせようよ!パフォーマーならそこは響かせなきゃいけないところだよ!!」

 

レツが怒涛のツッコミを入れている中、ふとレツの頭上に陰が刺す。見上げると先刻マフィア達を壊滅させたビルの具現化による圧し潰し攻撃(ビル1棟)が繰り出されたところであった

 

「実戦経験は殆ど無いみたいだね。何かある度に対処や気付きがワンテンポ遅れてる。それを補う戦闘センスも大して無いみたいだし」

 

コルトピの指摘するように持ちうる才能が『人形』に(かたよ)ってるレツはビアーやゴン達とは違って素の戦闘技術を玄人(ホンモノ)と呼べるレベルに引き上げるには多くの実戦経験が不可欠だろう

 

だが経験不足(それ)をこの瞬間に(くつがえ)す手段を彼女は有しているのだ

 

普段の優しいアイスブルーの瞳から凶暴なワインレッドの瞳に変貌したレツは降って来るビルを前に(おく)す事も逃げる事も無く前に向かって踏み込み、弾丸のような速度で突撃する。そして身体中から迸っていたオーラを左腕に『凝』縮させた

 

やっている事はただの『凝』だ。だがピー助自身のオーラの操作技術は稚拙であり、『流』を用いての戦闘は出来ず、レツ自身も以前はピー助を【人形受胎(ドールキャッチャー)】で憑依させた状態ではピー助のバーサーカーとしての気質に押されて細かいオーラの操作にまで気が回らなかったのだが、グリードアイランドでの修行でその欠点が大幅に改善されたのだ

 

ピー助のオリジナルであるドラゴンよりスペックは下でも『流』を使いこなせるように成った時、総合値ではオリジナルの上を行くだろう―――今まで無秩序に振り撒かれていた破壊のエネルギーが指向性をもって放たれる

 

「鋼の竜は(つるぎ)の爪を持つ―――『鋼竜寸鉄』!!」

 

キルアの肉体操作とは違うが、部分変化で竜の爪となったレツが左腕を横薙ぎに払うと迫りくるビルが真っ二つに斬り裂かれた

 

「えぇ・・・ウソでしょ?」

 

ビルを挟んだ対角線上に居たコルトピまでの道が拓かれ、二つに割れたビルの間を駆け抜ける事で更に加速したレツが拳を腰溜めに構える

 

対するコルトピは左側の(そで)に隠した武器の一つであった毒付きの投げナイフを右手に具現化するとレツが回避出来ないであろうギリギリまで引き付けてから彼女の顔面に突き入れる。回避が無理なら自分が死ぬ確率を上げてでも一撃を入れる為に動く・・・彼にとってはそれだけの話だ

 

だがその一撃はレツがナイフの刃を噛んで受け止める事によって防がれた。ドラゴンの咬筋力(こうきんりょく)を再現できる今のレツならば出来て当たり前だと云えるだろう―――ナイフに塗られた毒も耐毒訓練とドラゴンの生命力を前にすれば舌が多少ピリピリする程度のものだ

 

「ぐっはぁ!!?」

 

いきなり切り替わった戦闘スタイルや反応速度に対応しきれなかったコルトピにボディブローを決めたレツが地面に叩き付けられるように拳を振り抜いて眼下の道路を砕きながら何度もバウンドさせ、コルトピを気絶に追い込んだ

 

「十分だ。今日はお前に(なら)って星を降らせる事にしよう。音速で圧し潰す巨大質量を前に、地に足の着いていない貴様が逃れる術はない。宇宙(しぜん)の偉大さを知れ―――『木星(ジュピター)』!!」

 

自身を中心に3階1戸建くらいの大きさの木星(オーラ)を纏ったボノレノフの攻撃にレツは何一つとして恐れも畏れも感じなかった

 

「そりゃ星も音楽も偉大だよ。でも誰かを傷付ける事でしか自分を表せないキミ個人は偉大じゃない。本物の木星に比べたらこんなの豆鉄砲にも及んでないよ。これじゃあドラゴンどころか蟲の一匹も墜とせやしないよ!」

 

レツは空中で体を捻り、踏ん張れない代わりに遠心力を加算した回転蹴りを繰り出す

 

「地竜の一歩は大地を砕く―――『地竜黄塵』!!」

 

ボノレノフの技とレツの技がぶつかり合い、ただのキックと云うよりは震脚に近いレツの攻撃は星核たるボノレノフにまで衝撃が伝播し、直後に木星(矮小)は粉々に砕け散った

 

「ふぅ。こっちとしても当てやすい攻撃だったから『硬』で蹴れたのは大きかったかな・・・ってまだ立つんだ。もう止めといたら?」

 

地面に落ちたボノレノフだが口から血を流しながらも立ち上がる。彼の大技である『木星(ジュピター)』がそのまま鎧の役割を果たした事で本体は何とか耐える事が出来たのだ。しかしそれでも片腕と片足は折れてしまっているのでまともな旋律を奏でるのは難しいだろう

 

(というか『二人羽織』をこれ以上続けるのはキツイんだよね。今の時点でも筋肉痛は確定だし。戦いが長引くと戦意がピー助に釣られてやり過ぎちゃうかも知れないしさ)

 

「自ら敗けを認めて膝を屈するなど一族の恥だ。俺に勝つつもりなら殺す事だな。俺もドラゴン退治は望むところだ。最後まで付き合ってもらおう」

 

真っ直ぐにレツを見据えるボノレノフを前にしてレツは【人形受胎(ドールキャッチャー)】を解く

 

「悪いけどキミの我儘に付き合う気は無いよ。だからお願いね、アリスタ」

 

“ドスッ!”

 

「な・・・に・・・?」

 

ボノレノフが後ろを振り向くと巨大な前足(ランス)の片方を背中に突き立てているアリスタが見えた

 

「その子はとっても頭が良くてね。ポンズの方は切り札が有るから大丈夫って事で戦場を俯瞰(ふかん)してもらってたんだよ。操作されてる訳でも無いからオーラも無いし、今の弱ったキミの意識外から毒針喰らわす程度なら問題無いからね・・・と云うかキミあれだけバトルに不向きな制約を織り込んであの威力とか素のオーラ低すぎ(レツ&ビアー基準)。ダンスの修行ばっかりで念能力の方が中途半端になっちゃってるんじゃないの?兄さんじゃないけど半端な真似したね」

 

「俺、は・・・半端・・・などでは・・・ごふっ・・・」

 

何か言い返そうとしても既に全身に毒が回った彼は口から今度は泡を吹き、全身を痙攣させながら倒れ伏した

 

「一族の誇りと強さを世界に魅せたいって云うならプロハンターにでも成る道も有ったのにさ。半端か如何かは兎も角として、バカでは有ったかもね・・・ああ、アリスタの毒は大体1日で死に至る神経毒だから治療と解毒は後でね―――じゃあ行こっか、アリスタ」

 

≪スピッ!≫

 

コルトピとボノレノフを縛り上げたレツたちは未だ続く戦闘音に向かって歩き出すのだった

 

 

 

 

 

 

「・・・あ、もう結構筋肉痛でプルプルきてる。アリスタ、ちょっと運んでもらっても良い?」

 

≪すぴ~・・・≫

 

アリスタに少しばかり呆れられながらも首根っこを咥えられたレツは人形のようにゆらゆら揺れながら戦場が見える安全圏へと運ばれて行くのだった

 

 

 

[フィンクス VS キルア&レオリオ]

 

「オラオラどうしたぁ!折角誘い込まれてやったんだからサッサと掛かって来いよォ。そんでもってとっとと死ねェ!!」

 

キルア達3人はとあるビルの一階のロビーで戦いを繰り広げていた。キルアやフィンクスは兎も角としてレオリオにとっては障害物がそこそこに在る閉鎖空間の方が『発』の真価が発揮し易いのだ

 

昨夜の交戦記録をパクノダの『記憶弾(メモリーボム)』で覗いていたフィンクスだが彼にとっては敵の能力が知れただけで十分であり、態々戦場をえり好みする理由には弱い

 

広い外で戦ってチマチマと遠距離攻撃ばかりが飛んできたらウザイと感じるし、そもそも近接一択の彼としても閉鎖空間での戦闘には利が有るのだ

 

「ちっ、気軽に言ってくれるぜ。なにがヤベェって握力がヤベェ。大して力を籠めてる感じでも無いってのにさっきからパカパカ何でも握りつぶしやがって。あんなのに掴まれたら俺たちでも投げ技なんて面倒な真似されずに直接抉り取られるぜ―――おいキルア。お前も心臓(にく)の掴み取りは得意だったよな?アイツと取っ組み合ったら勝てるか?」

 

「無理だね。つーか一緒にすんじゃねぇよ。俺のは技術でアイツのはただの力任せ。あのやり方で心臓抜き取っても一山幾らの(くず)肉にしかならねぇよ」

 

人の肉を容易に引き千切る事も可能な二人だが、少なくともフィンクスのやり方では『暗殺』には向いていないだろう・・・(もっと)も本人は気にしないであろうが

 

「そうかい。だが何時までもチマチマとやり合うってのも性に合わねぇってなぁああ!!」

 

「ああもう!死んでも骨は拾ってやらねぇぞ!!」

 

レオリオが吼えながらフィンクスに正面から挑みかかり、キルアは遮蔽物の多いロビーという空間と子供としての体の小ささを利用して柱、椅子、ゴミ箱、観葉植物などに身を隠してフィンクスに自身の位置を度々見失わせて奇襲の連打を放つ

 

レオリオは放出系であるのに格闘戦を選んでいるが、元々彼の能力は直接戦闘に向いている力では無い。足りない部分は体術(からだ)で補うのだ―――幸いにして放出系は強化系と隣り合っているので近接戦闘と掛け合わせるのは決して悪い選択肢ではない

 

「オラアア!!」

 

レオリオが気合の入ったパンチをフィンクスの顔面に放つが避けられてしまう。しかしフィンクスの後ろの壁に当たった拳の衝撃は反撃せんとしていたフィンクスの死角から飛び出してくる

 

それを察知して体を強引に捻って避けながら掴み掛ろうと伸ばした手はレオリオの放ったただの念弾に弾かれてしまう

 

レオリオは確かに他の仲間たちに比べたら能力の練度は低い。しかしそれは才能の化身たちが集うビアー達のパーティの中での話だ。半年を超える修行漬けの日々を生き抜いた彼のテクニックが生半可な範疇に収まっているはずも無いのである

 

「クソが。うぜぇ」

 

レオリオの『流』による力の乗ったパンチに間合いの伸びる拳から放たれる念弾による弱パンチ。ワープパンチによる全方位から飛んでくるパンチと3種類の攻撃による三重奏は同じ近接格闘をしながらもレオリオの間合いからは外れられないイヤらしさが有るのだ

 

無論フィンクスならばただの念弾の一発二発程度ならば多少弾かれたところで軌道修正してレオリオを掴んだり殴ったりも出来ただろう。身体能力、オーラ量、戦闘経験の全てにおいてフィンクスが上回っているので固有スキルを駆使してもレオリオは程無く殺られる未来が待っていたはずだ

 

だがその僅かな隙を虎視眈々と狙って来る暗殺のプロ(キルア)が居るとなれば話は変わって来る

 

(銀髪のガキの方は僅かでも隙を見せれば静かで重い殺気を飛ばして来やがる。どの位置、どんな体勢からでも俺の命に手を届かせられるって事だ。殺しの引き出しの多さが尋常じゃねぇ)

 

「昨日のゴンの時といい今日のレオリオといい。俺のフォローが光り過ぎじゃね?―――これで最下位は無いな」

 

「けっ!そう思うんなら精々フォローを頑張れよサポーター君。判断すんのはビアーだぜ。見事、死闘の果てにコイツを直接とっ捕まえた俺様と『俺、手伝い頑張りました』って主張するお前のどっちが高評価だろうな~?」

 

戦闘中でありながら器用に非常にウザイ顔芸を披露するレオリオにキルアは鼻で笑って返す

 

「はんっ、安心しろよ。嘘の報告が出来ないようにクラピカの小指(ジャッジメント)で判定してもらうからさ」

 

嘘を口にした次の瞬間には一生嘘が吐けない体(死体)になるだろう

 

「そこは薬指(ダウジング)で良いだろ!?俺を殺す気かテメェこのガキャアアア!!」

 

「語るに落ちてんぞ。虚偽の報告する気満々じゃねぇか!」

 

「嘘を言う気はねぇよ。虚偽じゃなくて虚飾だ!相対的にお前が低く見られるように俺の功績をこれでもかと盛り付ける事の何が悪りぃってんだ!」

 

「割と全部悪いだろ。寧ろ良い点が一つも無えよ!」

 

途中からフィンクスそっちのけで言い争いを始めた二人に短気な彼は額に血管を浮かび上がらせる

 

「いいぜテメェ等。もう面倒臭ぇ事は止めだ。下らねぇ小細工ごと全部ぶっ壊してやるよ」

 

フィンクスが二人から距離を取り右腕を大きく縦に廻す。だがその腕が一回転もしない内にキルアとレオリオが追いついて左右から挟撃した事で彼の腕を廻す程に拳の威力を増大させる『発』である【廻天(リッパー・サイクロトロン)】はキャンセルされてしまう

 

「残念だけど、その技はもう知ってるぜ」

 

「誰がそんな予備動作バリ高の攻撃をむざむざ見逃すってんだ!」

 

「テメェ等どこで・・・そうか。パクに見せられた中に居た金髪のチビか。情報まで引き抜けるとは面倒クセェ『発』だな―――あ~、なんか俺が被りモン外す度に『もう取ってしまうのかい?キミは個性が薄いのだから被るにしろ外すにしろもっと一貫性を持った方が良いと思うよ』とか毎度五月蠅いクソ野郎が居たな。思い出したらムカついてきた。オメェ等もアイツも絶対殺す」

 

フィンクスの殺意が一瞬明後日の方向に向き、同時にアリスタに抱えられていたレツは風邪でもないのに唐突にクシャミをしたが関連性は不明である

 

「だがな。団員の情報の抜き取りだってんならこっちは知らねぇだろうがよ!!」

 

フィンクスが腕を引き絞ってから素早く突き出すとその拳には先程までの格闘戦で繰り出された『流』の攻撃よりも数段強いオーラが宿っており、慌てて避けたキルアとレオリオだが拳が当たって砕けた床の破片と衝撃が二人を襲う

 

「イデデ!?ああ、くそっ!昨日に引き続き今日も俺のスーツに穴開けやがって。これだって決して安くはねぇんだぞ、この野郎!!」

 

「遺言はそれで良いな?思い残す事が無ぇならさっさと死になァアア!!」

 

「心残りなんざ胸いっぱいに腐る程抱えてるわ!若者の際限なく溢れる欲望舐めんじゃねぇぞ!年季の入った油汚れよりも生きる意思(しつこさ)満点じゃゴラぁああ!!」

 

若さを引き合いに出したいのに年季を持ち上げる辺りレオリオの本質は中年(レオリオ)なのだ

 

「はいはい。それでその生きる気持ち花丸なレオリオは当然気付いたんだよな?アイツの今の攻撃のカラクリによ」

 

「あ?・・・と、と、と、ト~ゼンだろ?あれは・・・アレだろ。制約と誓約でアレがあ~して何か強くなったんだ。キルアの方こそ解ってんのか?俺が採点してやるぜ。言ってみな★」

 

“バチコーン!!”と擬音が聞こえそうなレオリオのウィンクの視線とキルアのジト目の視線が交じり合って数秒後、レオリオの方が耐えきれずに視線を逸らした

 

「わりぃ、キルア。教えてくれ」

 

「後でチョコロボくん(おご)れよな―――アイツはパンチを打つ直前に(ひじ)を軸に横回転させながら腕を引いてたんだよ。多分(すき)も威力も少ない代わりに出が早い技かな。あの腕ごとグルグル廻す能力の簡易版ってとこじゃね?」

 

キルア達の会話にフィンクスは拳を“ボキボキ”と鳴らしながら割り込んでいく

 

「まっ、廻天(あっち)を知ってるならバレるわな。名前だけ教えといてやるよ―――『渦天(リッパー・トルネイヴ)』ってなぁああ!!」

 

再度フィンクスが横倒しにした円錐(えんすい)のような軌跡で右腕を廻して(オーラ)をチャージすると二人に向かって素早く殴り掛かる。一撃で死ぬことは無くとも上手く防御しても骨折は(まぬが)れない威力の攻撃が次々と襲って来るのは脅威だ

 

「うおっ!?マジかよ。これじゃ受け流すのも命懸けだぞ。コイツのそのまんまなネーミングセンスにツッコム暇もねぇ!!?」

 

「そこまで口にしてたらツッコんでんのと変わんねぇよ!―――節電なんて言ってらんねぇ。漏電覚悟で手早く片付けるぜ」

 

キルアが全身に電気を纏って激しくスパークする。原作の【神速(カンムル)】のような超スピードの付加能力は無いが触れるだけで強制的に麻痺させられるというだけで近接では凶悪過ぎる能力だ

 

だが触れたらアウトな状態を維持し続けて長時間戦うにはキルアの蓄電(オーラ)容量はまだ未熟だ

 

「殺るなら即行!!」

 

掛け声と共に速攻で距離を詰めたキルアがそこらのナイフよりもよっぽど切れ味の鋭い手刀を繰り出すとフィンクスはそれを大きく避ける。直接キルアの体に触れなくともスパークしている電気に触れてしまえばそれだけでも即効性の高い電撃が全身を襲うからだ

 

「オラァアアア!!」

 

「ぐっ!!」

 

しかし大きく避けるという事は相応の隙を晒してしまう事を意味する

 

フィンクスの背後に回ったレオリオのパンチが背中に直撃して踏鞴(たたら)を踏み、そこへキルアの放った電撃が追撃として襲い来る

 

「舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

フィンクスは彼の直ぐ近くに在った建物の柱を手を払うようにして抉るとその中に仕込まれていた鉄筋を掴み取りキルアの電撃に向かって投げつけ、避雷針代わりとして受け流す

 

「嘘だろ!?あんな頭悪そうな見た目してんのに『殴る』『蹴る』『投げる』『掴む』以外にも『作戦』なんてコマンドが有るなんて!!1.2.のポカンで忘れろよ、そこは!」

 

「いや理不尽だな。やってるのは『掴む』と『投げる』だけだろ。そりゃ俺もポ〇モンの物忘れの清々しさにはツッコミたいけどよ」

 

「聞こえてんぞ。何ならついでにもう一つ頭使ってる所を見してやるぜ。見たら死ね」

 

次の瞬間ロビー全体に“ジリリリリリッ!!”と、けたたましい警報音が響き渡るとスプリンクラーが作動してフロアを水浸しにする。先程の電撃を受けた鉄筋が天井のスプリンクラーのセンサーの近くに突き刺さっており、電熱や火花などの影響で作動させたのだ

 

「やべっ!?」

 

「ぶっ飛びやがれ!!」

 

フィンクスは咄嗟(とっさ)に電撃を止めたキルアに肉薄し、よりリーチの長い蹴りを繰り出す。肉体的なダメージよりも相手に確実にダメージを与えて精神を揺さぶる一撃を放つ事を優先したのだ。無論旅団内でも二番目に強い肉体を持つ彼の蹴りのダメージが浅い訳でもない

 

(っち!ガードした腕も骨の内までジンジン響く。何発も喰らってらんねぇな。何よりこんなに水浸しじゃ迂闊(うかつ)に電撃は使えねぇ。アイツにも当たるだろうがレオリオも巻き込んじまったら連携の意味が無くなっちまうし、本気の電撃放ってレオリオだけが気絶でもしたら目も当てられねぇ。デメリットの方が大きい)

 

「どうしたどうしたぁああ!(こら)えの利かねぇ早漏野郎だと恥ずかしくもイキってた上にもう打ち止めかぁああ!?そんなんじゃ誰も満足しねぇぞゴラァアア!!」

 

「ああ?何言ってやがんだテメェ??・・・レオリオ。ホントにアイツ何言ってんだ???」

 

キルアからの突然のキラーパスを受けたレオリオはつい視線を彷徨(さまよ)わせる。不意打ちで下ネタを仲間に説くのは(はばか)られたのだ

 

「あ~。まだまだガキだなって言ってるみたいだな」

 

「そりゃまだガキな事は否定しねぇけどよ。俺まだ12歳だぜ。無理に大人って主張する方がガキっぽくね?」

 

ゴン程にそっち方面の知識がゼロな訳では無いが、家出するまでは毎日暗殺の訓練ばかりだったキルアは遠まわしな表現やスラングにまでは明るくないのだ・・・純粋な暴力的な表現なら触れて来てるのだが、今それを云っても(せん)無き事だろう

 

「分かってんじゃねぇか。それにアイツもさっき堪え性が無ぇっつってたが人の事は云えないみたいだぜ。(ほとばし)るパワーってのは溜めて溜めてイッきに解放する方が良いってのに数回の我慢(タメ)でもう解き放ってやがる。自分の一品(のうりょく)も満足に扱えて無い証拠だぜ」

 

「ア゛ア゛ッ!?誰が能力を扱えて無いってんだ!!」

 

「お前だよ。惜しいな。お前は黄金長方形の軌跡に腕を廻してねぇ。だから精々6~7回転程度で限界を感じちまってるんだ。黄金の回転エネルギーをモノにした時、お前の拳は無限のパワーを得る事が出来たはずなのにな」

 

その拳が完成した暁にはゴンの必殺技を凌駕し、ビアーですら一撃で沈める威力を持つ事だろう

 

「・・・いや、そんなエネルギー溜めまくる一撃が必要なら普通にあの腕ごとグルグル廻すやつで良いじゃん。隙が少ない技で隙を大きくしてどうすんだよ?」

 

「決まってんだろ!ロマンが有る!!」

 

「・・・あっそ」

 

長身で有る事で無駄に見栄えのいい無駄にキレイなジョジョ立ちを決める馬鹿(レオリオ)にバカを見る目を向けるキルアに自己陶酔中のレオリオ(バカ)は気付かない

 

「その顔は理解(わか)ってねぇな。良いか?円が小さくなれば成る程に一回転に掛かる時間は短くなるんだ。つまりどこかの域まで達したらあの肩ごと腕を廻してたパンチのチャージ速度を上回り、無限の彼方へ加速し続けるんだぜ。これをロマンと呼ばずになんと呼ぶってんだ!!」

 

「成程。そりゃ確かに完璧な理論だな―――不可能って点に目を瞑ればなぁああ!!」

 

仮に原子レベルで肉体を精密に操作出来たとしても無限に小さくなる円の前では何処かで限界が来てしまうのだ

 

「ったく。それで実際あの濡れジャージ野郎をどう攻めるよ?分かってんだろうけど、もう今までみてぇな電撃デバフ(サポート)は期待すんなよ」

 

「しねぇよ。お前が強い事なんざ十分知ってるが、だからってまだ酒の味も知らねぇヤツに頼り切りになる程には落ちぶれちゃいねぇぜ」

 

確かにキルアは強い。だがそれでも先程キルアが肯定したようにまだ子供ではあるのだ。たとえ自分の方が弱くともレオリオには年長者として彼らを守るべき意地と意思が有る

 

「それで作戦なんだがよ。キルア、お前俺の盾となって死ね」

 

「OK.くたばれレオリオ」

 

爽やかに笑ったキルアが敵意も殺気も含ませずに極めて自然にレオリオの後頭部に頭蓋骨陥没レベルの蹴りを放つ

 

決して殺そうとしたのではなく、ちょっとばかりツッコミに力が入ってしまっただけであり、他意は無いのだ・・・多分

 

「どうぅっわ!?(かす)った!今死神の鎌を幻視したぞ。なにしやがんだ!!」

 

「うっせぇ。バーカ、バーカッ!!もうぜってー助けてやんねぇからな」

 

「こっちのセリフだぜ。まっ、泣いて懇願(こんがん)して(みつ)ぎ物寄こすんなら考えてやらんでもないけどな」

 

「誰がすっかよ。あんな奴元々俺一人でも余裕だかんな!」

 

低レベルな(ののし)りあいをした二人は我先にとフィンクスに走り出して攻撃を繰り出そうとするがお互いの肩や腕がぶつかって(もつ)れ合いながらとなっており、先程までのキレは見る影も無い

 

「おいおい仲間割れか?いいぜ。存分にいがみ合ってろよ。その分こっちが楽になるからな」

 

「調子くれてんじゃねぇ!!」

 

フィンクスの小馬鹿にした安い挑発に乗ったキルアが正面から飛び込んで攻撃を仕掛ける。フェイント無しの真っ向勝負だ

 

(やはりガキか。それだけ前のめりに跳んできた以上はもう方向転換も他の技に繋げる事も出来ねぇだろ)

 

既に足が床から離れている上に何処かの柱にヨーヨーを巻きつけている訳でもないキルアはフィンクスが伸ばした手の平に自ら掴まりに行っているようなものだ

 

掴まれたらキルアといえども無事では済まない魔手が目前に迫る

 

「待てぃガキ。手柄は俺のもんだ!」

 

「ぷぎゃっ!!?」

 

キルアがフィンクスの間合いに入りきる(すんで)の所でレオリオがキルアの足首を掴んでフィンクスの手は虚しく宙を()き、代わりにキルアは床に顔面からダイブする形となった

 

(ちっ、空ぶったか。なら次はこいつだ)

 

フィンクスは空を切った腕の手首を反転させて裏拳のような横薙ぎの一閃に派生させ、キルアを地に落して適当に放ると代わりに前進してきたレオリオの(のど)を引き千切らんとする

 

「っ!邪魔クセェ!!」

 

しかし今度は倒れたばかりのはずのキルアが逆立ちするような形で昇拳ならぬ昇蹴りを見舞い、殺気で一早く察知したレオリオが咄嗟に身を引いて(あご)へのクリーンヒットを回避した事で代わりにフィンクスの伸ばしていた腕が蹴り上げられたのだ

 

(小僧の立て直しが早い。倒れたんじゃなくて倒れたフリか?まさかコイツ等!)

 

その後何度かの攻防で(ことごと)くお互いを邪魔しつつフォローするという芸当でフィンクスに有効打を与えていく二人に彼の苛立ちが(つの)る。伊達(だて)に男子組全員揃って半年以上ビアーに模擬戦で転がされ続けた訳ではないのだ

 

「ハッ!ケンカしてるようでボク達ホントはとっても仲良しでしたってか?気持ち悪りぃ曲芸だが、種が割れちまえばどうって事ねぇんだよ!!」

 

フィンクスのギョロギョロとした目が二人の一挙手一投足を見逃さずに次に繋がる動きを分析・予測し始める。奇抜な動きで連携が取れるといっても合理性の有る動きと比べて無駄が大きくなるのは避けられない。虚を突けなくなった時点でこの戦法のアドバンテージは殆ど消失したようなものなのだ―――フィンクスは攻撃を受ける事を前提に全身の感覚でデータを収集してゆく

 

 

“ガシィッ!!”

 

 

「そう動くよなぁああ!解ってきたぜぇええ!!」

 

フィンクスは自身の背後に抜けようとしたキルアの足首をとうとう捉えた

 

「キルア!?テメェこのジャージ野郎。キルアを放しやがれ!―――オラァアア!!これが俺様の超絶破壊王パンチだぁあああ!!?」

 

レオリオはキルアへの追撃を阻止する為に自分へ注意を引くのだと大仰(おおぎょう)な技名を咄嗟に叫びながら『硬』による渾身のパンチを繰り出す・・・天空闘技場のとある闘士のただの『硬』(ひっさつわざ)とネーミングが被っているのは偶然である

 

「はんっ。そんなに仲良しごっこがしてぇなら仲間の拳でやられちまいな。おんおん泣き(わめ)けば喜劇、いや、悲劇の真似事には成るんじゃねぇか?」

 

フィンクスが非情にも掴んだキルアをレオリオの方に向けて盾とする。攻撃が当たれば肉体(キルア)精神(レオリオ)の両方に痛撃を与える事が出来るし、レオリオが急制動を己に掛けて攻撃をキャンセルするならその隙にレオリオとキルアのどちらでも好きな方を調理する事が出来る

 

(さぁどっちで逝く?)

 

「どっせぃやぁああああ!!」

 

フィンクスがニヤリと(わら)う中、妙な掛け声と共にレオリオの躊躇(ちゅうちょ)ゼロの『硬』による全力パンチがキルアの背中に放たれた。だがフィンクスの腕に伝わって来るはずの手応えの無さと仲間を殴り、また殴られた二人の浮かべた笑みに彼は瞬時に己の失策を悟る

 

「チッ!?」

 

「遅ぇよ」

 

キルアの足を掴んでいたという事は逆にキルアもフィンクスに手を伸ばせば届く距離であるという事だ―――キルアがフィンクスの頭を掴まえると同時にキルアの腹から先程のレオリオの渾身の拳が飛び出して掴まれて固定されたフィンクスの(あご)にアッパーカットを喰らわす

 

元々医療用に患者(相手)の体内にも直接作用する事を目的として作られたレオリオの『発』はこの程度は難しい内に入らないのだ。(もっと)も相手がレオリオのオーラを拒絶した場合は一気に難易度は跳ね上がるのだが、それはまた別の話だ

 

アッパーで脳を揺らされたフィンクスだが怒りと気合で踏み(とど)まる。キルアが頭を固定していた分、拳の衝撃が十全に伝わらなかったのだ

 

しかしそれも含めてキルアの策略であり、その顔が死神のノートで新世界の神にならんとした男のように歪む

 

「ふっ、計画通り。戦果(とどめ)は俺も~らい♪」

 

確かにフィンクスは踏み止まった。だがその瞬間を狙っていたハンターを前にしてその数瞬の隙は致命的だったというだけだ

 

“コキッ”

 

先程までの激しい戦いの決着の音としては地味ながらもフィンクスの廻っていた脳みそを更に搔き廻す顎下への掌底の横一閃が決まり、脳と身体の連絡が絶たれたフィンクスは全身の力が抜けたように崩れ落ちたのだった

 

「おいキルアちゃんよォ。『俺の盾となって(油断した相手が)死ね』作戦の最後のトドメをよくも奪っていきやがったな!」

 

「何言ってんだ。相手はあの幻影旅団だぜ?より確実で堅実な手を打っただけだっつ~の・・・で、どうするよコイツ?あと数分もすりゃあ復活しちまうぜ」

 

「確かに気絶もしてねぇからな。今だってスッゲェ目でこっちを睨んでやがるし、クラピカの鎖も此処にはねぇしな」

 

多少のダメージは与えてはいるが、動けなくなるレベルではない。そこら辺の鎖で拘束したところで直ぐに引き千切られてもう一戦が始まるのは自明の理である

 

「「・・・・・」」

 

二人は(しば)し無言で見つめ合うと頷き合ってからフィンクスの方を見る

 

「「殺るか」」

 

 

 

 

 

その後医者志望と元暗殺者という人体の仕組みに詳しい二人による“後遺症の残らない骨の折られ方講座”を強制的に受講させられたフィンクスは後に獄中で語る。“アイツ等俺をより完璧に動けなくした方が評価(ポイント)が高くなるはずだと二人して競うように指の関節の一本一本まで折ってきやがった。何時かぜってぇ殺す”・・・と

 




超絶破壊王パンチな二人は数年後に偶然屋台で隣の席に座って飲み友になったりするという語る必要も無いような未来が有ったりしますかねw

因みにサブタイはクルクル(舞い)とグルグル(パンチ)ですね
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