レツたちが捕らえた幻影旅団を一時的に監禁していたビルが謎の襲撃者(ポンズ)に爆破された二日後、ヨークシンから離れた岩山の乱立する荒野のとある広い平面となっている山頂に二つの飛行船が降り立っていた―――『星座』によって指定された引き渡しポイントがそこだったのだ
原作ではヒソカがクロロと決闘しようとしてクロロがクラピカの鎖で念が使えないと告げられ、
ここに来るまでにビアーがビルの爆破という名のマフィアへのケンカを売った罪(?)を後々集まって来る悪党寄りの荒くれ者達に
「さっさと歩け。あの飛行船がお前たちの人生で最後の空の旅を提供してくれる地獄への乗り物だ。もっとも、窓の無い暗い部屋となるだろうから外など見れないだろうがな」
幻影旅団を縛った神字付きのロープはクラピカによって念を封じられている彼らには千切れない代物だ。原作で出て来たレッドブルさん(ウィング)謹製の『誓いの糸』と同じなので念使いなら解くのは簡単となっている
「ふっ、ならば精々ゆっくり歩くとするさ。今から脱獄した後でどのようにお礼参りをすればお前たちの顔を最大限歪めてやれるか計画を練りながらな」
「叶わぬ想像は妄想と同じだ。だがもしも貴様らが再び私の前に現れるなら、今度は間違いなく地獄へ送り届けてやろう。それまでは屈辱と退廃に満ちた日々を過ごすがいい」
「お前たちも俺たちが解き放たれる
そんな感じでギスギスとしたやり取りをする一団を迎え入れたのは底の高い下駄を履いた和装の老人であるネテロであった
「直接はお久しぶりですね。ネテロ会長」
※ ビアーは約一年半ぶり
「うむ。精力的に冒険を楽しんどるようでなによりじゃ、ビアー嬢ちゃん。そやつらが幻影旅団か。念を封じとるようじゃが確かにコレではまともな牢には容れられんの。特に厳重に拘束するよう収容先には念を押しておくとするわい」
そうしてクラピカがネテロにロープの持ち手を渡そうとしたところで待ったが掛かる
「まぁ待ちなさい。その前に色々と確認しておきたい事もあるのでな。今回そやつらを捕まえた件じゃが、流石に全部が全部ビアー嬢ちゃん一人で片付けた訳ではないんじゃろう?」
ネテロの言葉にそれもそうかと思ったビアーはざっくりと要点を纏めて説明をする。この二日間の間にビアー達はお互いにどんな事が有ったのかは把握しあっている
「・・・ふむぅ。つまり実際にビアー嬢ちゃんが捕まえたのは二人だけ(マチ&ウボォーギン)という訳じゃな。新人にも程よい刺激を与えとるようで何よりじゃ」
念を覚えたばかりの新米と一人一人がA級の賞金首集団の正面戦争を『程よい』とほざくネテロの判断基準は畜生のそれである。普通なら確殺。十二支んレベルの素養でも大半は死ぬだろう
「それでそやつらを今も生け捕りに出来ておるのはクラピカ君の功績が大きいと・・・ええじゃろ。他の者たちにはちと悪いが分かり易くコヤツ等を無力化しとる彼だけならば
「それは・・・だが私だけの功績と呼ぶにはあまりにも―――やはり私にその資格など」
クラピカは他のメンバーの功績も半ば奪うような形で自分だけが評価されそうな状況を
「受けなよクラピカ!」
そんなクラピカの葛藤を払うようにゴンの真っ直ぐな言葉が向けられる
「俺たちは別に
クラピカが言葉を濁していたのは仲間の眼と自身のプライドで天秤の針が揺らいでいたからだ
ゴンが周囲を見渡すとそれぞれが肯定の意を示す。仲間の夢や目標の為ならちょっとした自身への評価(並みのハンター1生涯分)など幾ら積んでやっても痛くも痒くもない
「別に良いよ。俺、シングルとかキョーミ無いし。ぶっちゃけ普通のライセンスだけでも性能としちゃ十分過ぎだしな」
「俺も構わんぜ。だがど~しても気になるってんなら今回支払われる報酬のクラピカの取り分を分けてくれりゃ良いさ。やっぱり誠意も恩義も現ナマで返すのが一番ってなもんよ」
「クラピカはこれから『緋の眼』の回収に大量のお金を必要とするはずなんだから今回は貸し一つとかにしておきなさい」
「そうだね。じゃあボクも貸し一つって事で」
「ああ、キッチリ返すとも。改めてキミらに誓おう。私は同胞たちの奪われた眼を回収し、私の因縁のすべてを清算すると」
青春の1ページを繰り広げる若人たちをネテロとビアーが暖かい目で見つめる。因みに幻影旅団は放っておくと五月蠅いのでクロロ以外はガムテープ(神字付き)で口を塞いである状態だ
「お主はあっち(青春)側に居らんで良いのかの?」
「今回決戦の時は直接現場に居なかったからね。それにほら私って保護者ポジションだから」
「何歳のつもりなんじゃお主は?」
「ごくごく一般的な13歳に決まってるじゃないですか。ボケちゃったんですかお爺ちゃん?」
「お主が一般の枠に収まる訳なかろう。もしそうなら人類はとっくに暗黒大陸を制覇しとるわい・・・まぁそれは置いといてお主は昇格は如何するつもりじゃ?弟子たるクラピカが星を得るならお主が協会の上官職に就けば
「う~ん。そうですね。出来るだけ縛られる事の少ないお勧めの役職とかって有ります?無ければ保留でも良いんですけど」
ネテロは少し考えるようにふさふさの髭を撫でつける
「問題は無いじゃろう。元々上官職と云うてもハンターなんてのは基本世界中を長期間飛び回って活動しとる輩が多い性質上、そこまで束縛されたり書類の山が詰み上がったりするもんは少ないからの。今の協会のハンター最高幹部である十二支んにしてもワシが動けんような有事の際には協会の運営ごと権限を放り投げたりはするが、それ以外の時は基本自由にやっとる。立場を仕事に最大限活用する奴も居れば、逆に名前だけ
それで良いのか最高幹部。だが確かに
「それでも強いて挙げるなら協会の広告塔とか如何じゃ?今のお主なら話題性も後押ししてピッタリじゃろ。年に1~2回くらい適当にカメラに向かって愛想笑いを浮かべておけばOKじゃ。元々宣伝なんぞせんでも毎年万単位の受験者がプロのハンターを目指す上に、活動の内容が多岐に渡るから無難な売り文句のポスターや雑誌の表紙を飾るだけで十分じゃからの」
「だとしてもそんなに少ないもんなんですか?」
「そりゃ全部が全部を誰か一人のモデルで廻す訳にもいかんじゃろ。じゃが専属で、ある程度素材を提供してくれるもんが居れば広報の奴らは助かるじゃろうの。予算が少ない関係でモデル代もプロのハンターにとっては小遣いにもならん額しか支払えんので被写体探しにも苦労しとるでな」
ハンター協会があまりにも有名過ぎるが故の弊害だった。ハンター試験でさえ全世界の腕自慢たちが毎年大量の死傷者を出す現状で『あなたもプロハンターを目指してみませんか?とってもホワイトな職場です♪』と宣伝する訳にもいかないのでただでさえ少ない予算は何かに付けて切り詰められていたりする可哀そうな部署なのだ
「まぁそれで良いならそこにしときますね」
ビアーは別に写真を撮られたりする事に抵抗はない。目立とうが目立たまいが本気でマスコミなどから隠れようと思えば簡単に出来るからだ
「うむ。じゃが仮にもプロハンターとしては最高峰の証である
ニヤニヤと笑みを浮かべて上から目線で挑発するネテロ。どう考えても嫌がらせである
(この愉快犯爺さん!絶対に私が他の上官職を希望しても何かと理由を付けて面倒臭い状況に追いやるつもりでしょ!)
「ひょっひょっひょ♪別にお主が十老頭と話を付けた事で世界情勢が変化するのに伴い、暫くワシが判子を押す書類が一山ほど増えそう・・・などと云う事は一切関係なく、若人の背を優しく押してやろうという親心じゃ。キラキラの服でも着せて、いっその事歌って踊るアイドルの真似事でもするよう提案しておこうかの」
「ぶち殺しますよ?」
ネテロは確かにビアーの背を押そうとしている。ただその場所が断崖絶壁の崖っぷちなだけだ
この苦難を乗り越えた時、ビアーの知名度は確かに高まるだろう。だがそんな事は別に望んでないし、ネテロもそれは分かっている。ビアーのドスの利かせた声や反応も愉しんでいるだけだ
職権乱用なんのその。汚い、流石ネテロ、汚い
「まっ、お主がど~~~してもと頼むのであれば考え直す事もやぶさかではないがのう?」
殴りたい、この笑顔
「良いですよ。しっかりと誠意を籠めて
(根っこが武術家なんだから
「なんの。まだまだ若いもんには負けんわい・・・と言いたい所じゃがワシも昔に比べれば枯れ木のようになってしもうた。だがもしそんな年寄りに負けたとしたらそやつは若木にもなっとらん新芽もとい赤子じゃったという事じゃな。おお、そうじゃ!お主が負けたらどこかの商社の赤ん坊グッズのCMへの出演も追加じゃ。哺乳瓶でミルクを飲む姿を撮影してお茶の間に流れるように仕組んでやるわい。大ウケすること間違いなしじゃ」
羞恥心が振り切れるバブみCM。“あの会社はイカれてやがる”と伝説になること間違いなしだ
これにはビアーも額に怒りマークが浮き出て『纏』の状態にも関わらず足下に亀裂が入る。普通ならばただの『纏』でこれ程の影響は出せないが、ビアーの『纏』を一般的な枠組みに入れてはならないのだ。単純な話、出力が違う
「へぇ・・・なら会長が負けたらオムツのCMに出演して貰いましょうか。介護役はチードルさんにお任せしましょう。きっと喜んで引き受けてくれますよ?」
並び立っていたはずが何時の間にか向かい合う形で闘志をぶつけ合う二人の様子に途中から気付いていたレツたちだが誰一人として口を挟めない
下らない会話の内容とは裏腹に二人の瞳の奥に好奇の光が見えたからだ
ネテロもそうだがビアーも以前ピー助のオリジナルと対峙した時に全力で
戦闘狂のネテロと違ってバトルジャンキーではないビアーも偶には全力をぶつけたい時も有るのだ
先程のやり取りなど単なる口実に過ぎず、実際に罰ゲームをして欲しい訳でも無いだろう。二人はビアーの肉体年齢は兎も角、いい大人なのだ
「ならお主が負けたらおしゃぶりとガラガラも追加じゃ!もちろん実際に装備してもらうぞい!」
「はっ!ならそっちもオムツ一丁でキレッキレのブレイクダンスを披露して貰いましょうか!漏れないアピールのヨボヨボ会長と伸縮性と履き心地アピールのキレキレ会長で二側面から如何にオムツが素晴らしいかを熱~く語って下さいね!!」
ダメだ。ここにはガキしか居ない
それから二人の戦いで飛行船が壊れたりオーラに中てられた幻影旅団が死んだりするのを防ぐ為に
真面目な性格のクラピカは気を取り直して「そんな事をしている場合か」と的確なツッコミを入れたがネテロとビアーは「「それじゃつまらない(じゃろ)」」と一蹴してしまった
頑張れクラピカ。負けるなクラピカ。お前の意見はきっと正しかった
▽
ネテロ会長と大体直径で300メートルくらいの広さの岩山の山頂にそれぞれジャンプ(100メートル以上)して降り立つとそこの中央辺りで10メートル程の距離を空けて向かい合う。この程度の距離など私達にとってはゼロに近い
それでも相手は攻撃速度では世界最速の念能力者。お互いに取っ組み合った状態から始めるのでもない限り、先手の有利は向こう側と見るべきでしょう
因みに今のネテロ会長は和装の上着と下駄を脱いで例の勝負服である『心』Tシャツでは無いものの動きやすい恰好になっている。この世界で直接は見てないけど多分ゴン達とボール遊びをした時の格好とほぼ同じだ
「さて、始める前に一応最低限のルールは決めておきましょうか。意地を張って死んじゃったりしたら笑えないですしね」
「それもそうじゃの。ならば気絶と降参、それと相手を死なせてしまった場合も負けとするかの」
「あとついでにこの岩山から落ちての場外負けも加えときましょうか。折角場所を移したのに戦場の範囲無制限にしちゃ意味ないですし」
ネテロ会長は仮に死んでも納得しそうだけど、流石に私の方はそこまで今回の人生を謳歌しきったとはとてもじゃないけど言えないからね。殴り合いは兎も角、殺し合いはノーサンキューだ
「うむ。では始めるとしようかの」
ネテロ会長の言葉に合わせて遠くのポンズ姉に向けてを手を大きく振る。開始の合図として
遠くでポンズ姉が閃光弾を空高く投げるのを見ると意識をネテロ会長に戻し、閃光弾の効果が花開く瞬間を待つ
最初から全力でオーラを『練』り上げて集中すると強化された身体機能が体感時間をどこまでも引き延ばしていき、ゆっくり流れる時間の中でスタートダッシュを決める為に全身の力を抜いて脱力からの加速に備える
脱力という技術は正直に言えば前世でも知ってはいたものの、そこまで大した力が出るようなものって認識は無かった
でもこの前世目線からすれば超人の集まりであるHunter x Hunter の世界では少し違う
見た目は華奢と言っても良い私の筋力は素の状態でも試しの門を4まで(片側16t)なら開けられるはず・・・にも関わらず私の体重は一般的な13歳女子の域を出ない
この世界じゃ
脱力によって得られる僅かな
詰まりは何が言いたいかっていうと、パワーはまだしもスピードには結構な違いが出るって事よ!
私の瞳が閃光弾の輝きを捉えた瞬間に踏み込みで大地を置き去りにし、続く音響が耳を打つ前に私の拳がネテロ会長の顔面に迫る
一瞬ネテロ会長の両腕がブレた次の瞬間に視界一杯に黄金の巨大な掌の掌底突きが現れて私の拳とぶつかり合うと僅かに宙に居た私は勢いに押されて後方の地面にめり込むように吹き飛ばされ、対するネテロ会長の百式観音も腕が弾かれていた
原作で百式観音の腕が弾かれる描写は無かったけど、おそらくは力比べをしたがった彼が私の拳に敢えて真正面からぶつかった結果かな?キメラアントの王との戦いとか身体能力やオーラ量から考えたら全部側面から弾き飛ばすような攻撃してたはずだし
様子見かつ遊びの一撃だったんでしょうけど、それで
地面に『周』を掛ける事で慣性エネルギーを無理やり押し留める
いきなり堅くなった地面に一瞬私も息が詰まり掛けるけど、多少のダメージは最初から覚悟の上だ
弾かれるように・・・というか実際に倒れた状態から腕の力だけで身体を弾いて距離を詰めつつ体勢を整え、今度はしっかりと地面を踏みしめてネテロ会長に走り寄る
この人を前に削れるロスは可能な限り排除しなくては近づく事すらままならないからね!
ネテロ会長は私が弾いた観音の手と連動するように左腕が後ろに流れてしまっている。百式観音が能力者の動きに合わせて動くなら逆もまた然りって訳だ。その程度のリスクは有るでしょうね
まぁ動きのフィードバックを強制するだけで仮に観音像を壊せたとしても本体にダメージまでは行かないとは思うけどさ
次の合掌が決まる前にこっちの攻撃が向こうに届く!!
「舐めるな小娘っ!!」
再び突き出した私の右拳をネテロ会長も残る右腕を使い、柔拳の要領で受け流す
ならばとネテロ会長から見て右隣を通り過ぎようとする自身の身体を左足を踏み込む事で強引にショルダータックルへと攻撃を変更。しかし刹那の差で祈りの動作を許してしまい、側面からの衝撃で十数メートル吹っ飛ばされてしまった
両足と片腕で地面を削りつつ減速して漸く止まった私は一息つく
「あ~あ。折角一番のチャンスが初手で巡って来たのになぁ。ネテロ会長ちょっと迅過ぎでしょ」
「逆にお主は『堅』過ぎじゃな。なんで超重量超高速の打撃を受けてピンピンしとるんじゃ」
お互いに口の端を吊り上げて笑い合う。歯ごたえのありそうな
強者との戦いなら先日もゾルディック家と繰り広げたけど、足手纏い(
お互いの心から油断や慢心が消え去ったのと同時に先程の閃光弾の音響がようやく私の鼓膜に届く。この間1秒経ってない
ファーストインパクトの感触はまずまずといったところ。続くセカンドインパクトの
原作で
私は私のやり方でやらせて貰うわよ!!
▽
ポンズの出した戦闘開始の合図からまだ10秒と少し程。観戦席となった飛行船の置いてある隣の岩山の端ではレツ達が次元の違うバトルを前に必死に目を『凝』らしていた
彼らのすぐ横で縛られている幻影旅団も当初はしっかり観ようとしていたが念も使えない今の彼らでは大して見応えも参考にもなりそうになかったので今はもう見る価値無しと足先で地面を削ってマルバツゲームに興じていたり、縛られていても指先程度は動かせるのでアッチ向いてホイをしたりしている。相変わらずのマイペースっぷりだ
「スゴイ!スゴイ!!凄いねキルア!ビアーもネテロさんもオレの必殺技より凄い威力の攻撃を凄い早さで凄いいっぱい打ってるよ!」
「確かにすげぇはすげぇけどよ。土煙が酷過ぎてビアーの姿は殆ど見えねぇな。それとお前の精神年齢がすげぇレベルで下がってっぞ。3歳児かよ?さっさと失った9年間を取り戻して来いよ」
ゴンは年相応(?)に無邪気にはしゃぎ、キルアはそんなゴンのあんまりな反応に呆れ顔となるがそれでも視線はしっかりと戦場に固定されたままだ
今のキルアではあの場所に割り込んだら一瞬で挽き肉とされてしまう。その上でどうすれば自分もあの領域に足を踏み入れる事が出来るのか―――彼が己の答えを出すのはまだ少し先の話だ
「にしても会長の後ろに見えるのは仏像か?仏さん使って相手をぶん殴るとか見方によっちゃあ罰当たりだな・・・二つの意味で」
レオリオの言うように敵対者に対する仏罰とも仏様をそんな事に使うな!というネテロへの非難とも取れる光景だ
「そうね。でも見た感じただの打撃みたいだし、能力の構造そのものは至ってシンプルね。あれだけ攻防を続けて特殊効果が乗ってるようにも見えないから大仰な割に
「ならばあそこから何か奥の手が隠されている可能性が高いと云う事か。まったく、並みの念能力者ならば特別重いリスクを背負うか数人掛かりの
「でもあれだけネテロさんの攻撃がヒットしてるビアーが普通に動けてるって事は、ボク達が思うよりもあの仏像の破壊力は低いんじゃないかな?」
レツたちは冷静に初めて見るネテロの能力値を分析する・・・が、それに待ったが掛かる
「一撃でクレーターが出来る会長の攻撃が弱い訳無いだろ。常識でもの言えよ。あんなん喰らったら当たり所が悪けりゃ一撃であの世行きだってんだ!」
「え?あれならボクでも耐えるだけならそこそこは持つと思うけど?ピー助を憑依させてる時なら消耗はまだしもダメージはほぼゼロに抑えられそうだしさ」
「・・・ツッコむ相手を間違えたぜ」
ケロリと小規模とはいえクレーターを穿つ攻撃を問題無しとするレツにレオリオが力無く肩を落とすが彼はまだ気づいていない。常識的な念能力者ならばネテロの百式観音を喰らえば下手をしなくとも一発でミンチになる事を―――
ネテロの一撃 = 小型ミサイル(?)を生身で耐えられるのは十分常識の範囲外だ。ターミ〇ーターだってもう少しは脆いはずである
レオリオの中の常識は
▽
ネテロ会長の猛攻をもう数百発以上は受け続けて流石に全身が擦り傷だらけになってきた
ずっと時間が凝縮された感覚の中で嵐に舞う木の葉のようにぶっ飛び続けてるから正確にはどれだけ時が過ぎたかは判らないけど、きっと秒数に直せば大した数値にはなってないと思う
こんな事を考えてる私は無駄な事に気が回せる程度には余裕が生まれて来たって証左だ
ネテロ会長は私との戦闘で鈍った牙を研ぎ直してるのか当初よりも動きが鋭くなってるみたいだけど、それよりも早く私の百式観音への対応力が高まってきている
今だって真横から打ち払うように放たれた百式観音の攻撃と私の加速しかけた腕の薙ぎ払いがぶつかって僅かに威力を相殺するのに成功。無防備に攻撃を喰らってた初期と比べたら立て直しまでの間隔が短くなってきた
「ッ体当たり解決法にも程があるじゃろ!」
「鬼畜難度の死に覚えゲーを残機1の耐久MAXでゴリ押してるだけですよ!!」
私は戦いが始まってから可能な限りずっとネテロ会長への
全方位対応の無限に近い攻撃パターンもこうなっては形無しでしょう?私の『堅』に全信頼を寄せた戦術で相手の選択肢を封殺する。どれだけ迅くとも精々数十パターンに絞り込まれた攻撃なら慣れてしまえばこちらの応手も間に合うってもんだ!・・・まだ間に合いきれてはないけどね
こんな真似が出来るのも百式観音の
デカくて 迅くて 重い ―――ここで重要なのは『デカくて』の部分ね
百式観音は当然だけど具現化されたオーラの塊。それはつまりそれだけオーラが無駄に分散してしまってるって事
勿論圧倒的な質量とそこそこのリーチは利点だけど、生体への破壊力という点では差し引きでマイナスとなってしまっている
一撃一撃が全部『凝』なら少しはマシだったんでしょうけど、見た感じ割と仏像の手の平全体にオーラが分散してしまっているわね―――仮に攻撃する手の平だけに殆どのオーラを集められたところで大の大人を余裕で飲み込む表面積なんだからオーラの密度の低下は当然の帰結だ
生命エネルギーは良くも
これまではネテロ会長の基礎能力の高さで問題にならなかったみたいだけど、今は私が居る!
今も張り手の衝撃こそ凄まじくてまた宙を舞ったものの、身体の芯まではダメージは響かなかったので瞬時に落下方向をほぼ真下に捻じ曲げて地面を軋ませながら“ズシン”と着地し、もう何度目とも知らない突進を繰り返す―――もうそろそろジャストガードも成功しそうね
「重いのぉ。お前さんそのなりで体重何トンじゃ?年頃ならもっとダイエットに精を出さんかい太っちょ娘」
・・・なんて色々考えてたら私の思考力を貫通する暴言が聴こえてきて頭から“ピキッ!”と何かが軋むような音が漏れる
「違います~⤴⤴!確かにさっきから重たい音は響いてるけど決して私の体重からなる音じゃないです~⤴⤴!!大体『太い』っていうのは見た目の話でしょう?私のポンキュッポンなボディには当てはまらない表現なんです~⤴⤴!!」
「
「遅くとも2年後にはナイスバディが確定してるからそんな必要無いだけよ!最近成長期が始まって色々デカくなって来てんの!ネテロ会長もデカいのに憧れる
それだけの質量ならオーラ不足すらも補えるでしょうに
「なんじゃその『真数千手』というのは!?」
「全長1000メートルは有る千本の手を叩きつけて来るだけのマップ破壊兵器な仏像よ!!」
某忍ばないNINJA漫画の初代な木遁使いに比べれば百式観音なんて児戯もいいとこだ
暗黒大陸の事を考えるならあの程度のインフレの領域には到達したいのよね
「そんな仏像在る訳無いじゃろ!妄想も大概にせい!!」
「
先程からまったく失礼しちゃう。私が百式観音で吹き飛ばされてもあまり飛んでいかないのは単に身に付けてる例の特製重しの効果でしかない
そう。私は今回の試合において
正直今の私が全力で身体強化すれば体術に殆ど影響は出ない。それでもその僅かなデメリットも惜しくなるのがネテロ会長という相手だが、そこに目を瞑ってでも吹き飛ばされない事によるメリットの方が大きいと思ったのだ
突撃をかます時は重しへの『周』を解き、攻撃を受ける瞬間には『周』で重量を爆上げする
今まではある程度吹き飛んでから『周』を発動出来てたけど、本当なら技を喰らう直前に踏ん張って迎撃するのが理想だ
0.1秒なんて生温い。文字通りに刹那の時間の中で『周』のONとOFFを切り替えまくるという毎日ひたすらに『纏』と『練』を高め続けてきた私だからこそ可能な瞬間切り替え技術だ
ネテロ会長は一日一万回感謝の正拳突きとかって変な修行を10年くらい続けて一つの到達点に至ったらしいけど、こっちだって伊達に10年以上『纏』と『練』を主軸とした修行を繰り返してきた訳じゃないのよ!
―――ここッ!!
私から見て左から脇腹を薙ぐように放たれた手刀を肘鉄で受け止める。そのまま前に一歩踏み出した私に向かって間髪入れずに右斜め上から迫りくる叩き付けを今度は首を“グリンッ!”と廻して頭で弾く
タイミングさえ掴めてしまえばオーラ同士のぶつかり合いではこちらに分がある
最強の念能力者?
基礎スペックのゴリ押しでかつてはその頂きに君臨してたんでしょうけど、強化系がその特性を全棄てした『発』で戦うとか能力そのものはしょっぱ過ぎるわよ!!
ネテロ会長の懐に入る最後の一歩を踏み出す足を軸にして貫手ならぬ貫足で最大にリーチを伸ばした足先蹴りを放つ
直前に百式観音の攻撃を頭で弾いた影響でネテロ会長の左手にはスタンが掛かっているし、最初に吹き飛ばされた感じからしてこれならタッチの差で左手の祈りの動作が間に合わない!!
―――ベギャッ!!
―――結果として私とネテロ会長の攻撃は
ネテロ会長は右手のみの祈りの動作で百式観音を発動させる事で攻撃を成立させたみたい。そういえば原作でも似たような事やっていたわね
でも痛み分けとするにはダメージの差は明白だ。こっちの怪我は軽微なのに対して向こうはお腹のシャツが破れてその下の腹筋に大きく斜めに青黒い
私の足が突き刺さった瞬間に私を真横に弾き飛ばした事でそのシックスパックをゴリゴリ削った訳だ。まぁそうでもしないと内臓が潰れてたんでしょうけどね
今まで蓄積されたダメージが有るからこれで一見イーブンだけど、一度でも小細工無しの接近を許した以上はこの試合の勝敗は見えた。たとえネテロ会長の奥の手である観音ビームを受けたとしてもアレって確か精神統一という事前の
このままなら勝てる!・・・でもお互いの体力を削り合ってズルズルと山も谷もなく、ヒヤリとする瞬間もなく決着なんて正直詰まらない。ここは一つ発破を掛けてみましょうか
「弱い!脆い!軽いってのよ、攻撃が!!
「調子に乗るなよ小娘が!!」
自分の一割程度しか生きてない私に積み上げた武をバカにされたのが余程頭にきたのかネテロ会長のオーラが一段と力強く、鋭くなった
感覚で
ネテロ会長は百式観音を会得してから苦戦と呼べるだけのものを殆ど経験してこなかったんじゃないかと思う・・・どころか本当に皆無かも知れない
私と違い武道という形で己を高めたであろうネテロ会長もまともな対戦相手が居ないんじゃ成長速度に制限が掛かって当たり前だ
「始めましょうかお爺ちゃん。少年漫画みたいに己という壁を
二人のオーラが観る者が火山の噴火を幻視するような圧倒的な圧を放ち、ステージである岩山が大きく震えだすのであった
なぜかネテロと戦うことになってなぜかネテロの強化イベントが始まった・・・なんで???