毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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やっと旅団編も終わりだけど、次はどうしよう?もはやゲンスルーとか雑魚だしな~・・・分からん!!


勝者と敗者

ネテロ会長が本調子になってちょっと凶悪な顔付きでこちらに闘志を向けて来るようになり、これまでに何度もオーラの塊(わたし)が叩き付けられたことで当初は平たな荒野風だったのが今や岩礁地帯へと変貌してしまったその戦場で今まで距離を取るよう戦ってきたネテロ会長が今度は自分から距離を詰めて来た

 

それで良い。何時だって新しい己を切り開くには一歩踏み出すところからしか始まらないなんてのは私以上に経験してきてるでしょうね

 

原作で人類の存亡背負って身体に爆弾埋め込んでたような成長の後ろ髪を引っ張る要素は今は無いんだから存分に己を試すが良い!!(謎の上から目線)

 

こちらに迫って来たネテロ会長の発動した百式観音の攻撃が具現化し、私の真上からの叩き付けを繰り出して来た

 

今までのように遠くへ弾くタイプじゃなくてその場に縫い留める一撃にはビックリしたけど、それは悪手だ。何故なら私は攻撃が当たる直前に両腕をクロスした状態で上に掲げて防御姿勢に移行していたからね

 

ネテロ会長の百式観音の予備動作である祈りのポーズは彼の肉体性能を置き去りにした積年の感謝バフ特盛なアホみたいな速度を誇るけど、そこから百式観音をマニュアル操作する時のモーションはワンランク速度が落ちる・・・それでもブレては見えるけど、それはつまり走馬灯に頼らなくてもギリ目で追えるって事なのよね―――反応できるなら対処も出来る

 

原作でも蟻の王(メルエム)が言ってったっけ?両手を合わせる動き『だけ』がアホほど迅いって

 

ネテロ会長の動きに慣れて来た今なら防御が間に合う可能性はそこそこ高い

 

頭上から圧し潰さんとする巨大な手の平の重圧を感じながら私も前に出る―――観音が消えてから動き出したんじゃ次の観音が何処から飛んでくるか分らないからね

 

こっちも同じだ。一度掻い潜った程度で受け身に回ったら動きのキレの増した会長にまた何百と打撃を浴びせられる。流石にそこまで行くとダメージも無視できないレベルで蓄積しちゃうからね

 

百式観音の大きな手の平の範囲から抜け出て視界が開けたと思った瞬間、その視界一杯にネテロ会長の足の裏が広がって繰り出された顔面スタンプで勢いを殺された私は観音の魔手から逃れる最後の一歩を踏み出せずに手の平と地面でサンドイッチされた

 

「ふぶっ!?」

 

進行方向はズラして飛び出たのにピンポイントで踏みつけて来た!?

 

「お主の小賢しい動きなど手に取るように判るに決まっとるじゃろうが。伊達に他人を手玉に取る(おちょくる)人生送って来とらんわ」

 

手に取るようにって事は観音を『円』代わりに?いえ、感覚共有とかの機能が付いているとも思えないし、膨大な経験則から来る勘の方と考えるべきね。流石にそこはまだ私じゃ勝てない部分だ

 

「―――だとしても女の子の顔面を素足で踏んづけた代償はこっちの提示額で支払って貰うわよ!具体的には死ねぇええええ!!!」

 

倒れた状態から四足獣の如き初動で爆発するような衝撃波を撒き散らしながら目の前のクソ爺(ネテロ)に飛び込み、虎咬拳(ここうけん)で心臓付近を根こそぎ抉り取る!

 

手玉に取るぅ?ネコ科だって(たま)転がしには一家言あんのよ!!

 

「シャアアアアッ!!!」

 

「殺したら負けのルール忘れとらんか!?と言うか人間性も忘れとるじゃろ!!」

 

「存じ上げないわねェ⤴⤴そんなせせこましいルール!あと可愛い女の子は軽率にケモ耳を生やせばイイと思う人生だった!ただしチードルさんはNG!却下!同僚の卯(ピヨン)を見習え!!!」

 

「訊いとらんわそんな事!ワシもチードルがあの恰好になった時は内心吹き出したがな!!」

 

因みに戦闘が始まってからここまで色々やり取りしてるけど実際に声に出しての会話はほぼ皆無だ

 

私としても初めての経験だから途中まで気付かなかったけど、相手の伝えたい事を(おそらくは)オーラを介して聞き取るこれが原作でも言ってた心滴拳聴(しんてきけんちょう)ってやつなんでしょう

 

やはりオーラだ。オーラは全てを解決する

 

今の過去一番の瞬発だってそうだ。元々虎咬拳(ここうけん)で低い姿勢での動きに慣れていたのも有るけど、『硬』の使えない私は脚だけでなく手の平でも地面を『蹴る』事でより多くの『堅』のオーラを推進力に変換できる―――勿論人体の構造上単純な筋力による推進力はかなり下がるけど、そのマイナスを払しょくするオーラの爆発が有れば良い

 

走り続けるならまだしも一足飛びの範囲だけならこの獣染みたクラウチングスタート(?)の方が上になる・・・まぁ立った状態から伏せた体勢に移行するロスを考えたら一概にどっちが良いとは言い切れないけど、丁度地面に叩き付けられた姿勢だったからね

 

私の虎の爪を模した指先がネテロ会長の胸に当たる直前に彼の掌底が私の手首を捉える形で軌道がズラされる。それに加えて会長自身も逸らした方とは逆側に身体ごと回避したけど、私の飛び込みが予想を上回っていたのか完全には避け切れずに胸元に三本の赤い線が奔った

 

結構深めに切り裂いたと思うけど当然その程度で動きが鈍るはずも無く、受け流したのとは反対側の拳を固めたコンパクトなフックでこっちの顔面を狙ってきた

 

だったらヘッドバットでその拳をカチ割る!

 

そうして私の頭突きとネテロ会長の拳がぶつかる寸前に彼が人差し指と中指を立ててその先端に全オーラを乗せた突きに技を変更―――私の眼球に二本の指先が迫る

 

「わひゃっ!!?」

 

ギリギリで頭の位置を下げて回避したけどネテロ会長の手が私の頭を掴んで更に下に落し、落ちる頭とは逆に天を突くような鋭さで放たれた膝蹴りが顎を襲う

 

「ぐっ!?」

 

咄嗟(とっさ)に手の平を割り込ませて防御したけど嫌な衝撃が脳を揺さぶって来る。でもそれを努めて無視しながら私の目の前を通過中のネテロ会長の脹脛(ふくらはぎ)を逃がさないように掴む!!

 

 

【百式観音!!】

 

 

あとちょっとで私の勝ち確のゼロ距離ファイトに持ち込めたってところで今度はまた遠くに吹き飛ばすタイプの仏像チョップを喰らって距離を取られてしまった

 

近接格闘と百式観音の合身攻撃(マリアージュ)!―――百式観音でこっちの隙を作ってからの肉弾戦と近接の肉弾戦で生じる隙を百式観音で埋める戦法の可変式!!

 

・・・けど

 

「流石に初めての(こころ)みで完璧に(こな)すとはいかないみたいですね」

 

私が腕を一振りすると地面に赤い肉片が落ちる

 

完全では無かったとはいえ掴んだ足を勢いに任せて無理やり引っこ抜いた形だったから足の皮膚の部分がズル剥けたのだ―――原作でフィンクスに足を掴まれたキルアが抜けだした時みたいな感じ?いや~、見ているだけで痛々しいわね

 

「ふん。今ので調整したわい。次からは触れさせもせずにボコボコにしてやるわ。そういうお前さんこそガッカリじゃ。どうやらその『堅』に余程自信を持っとったようじゃが、小手先の技(目潰し)を前にするだけであっさり避けおっての。この分なら案外簡単に攻略出来そうじゃの~」

 

完全に目が嗤ってるニヨニヨ顔という無茶苦茶殴りたくなる表情(かお)しやがるわねこの老害

 

「へぇ?そっちこそ世界最高の武人だの武神だのと言われてる割には小賢しくも剥き出しの内臓(めだま)狙いでなければまともなダメージも期待出来ないなんて、磨き上げた拳とやらも大したこと無いわね。あっ、そう言えばもう枯れ木なんだったっけ?ポキポキ折れちゃうのかな~?ウケる~♪しっかり毎日牛乳飲まないとダメよ、お爺~ちゃん?」

 

喰らえ、渾身のメスガキムーブ!これはワカらせたくなるね!勿論そんな事レツとポンズ姉以外には許さないけど

 

「殴りてぇ、このメスガキ」

 

「それは何百発と打撃喰らわせといて今更過ぎるわね!」

 

私達は互いに勝つ為にこの拮抗した状態だからこそ試せる『新しい自分』を考え、高めていく

 

別に新しい能力を開発したり既存のスタイルの真逆を行ったりする訳じゃない。そんな真似しなくたって私達のピークはまだまだ先に在るんだから!

 

 

 

ビアーとネテロがほぼ常にクロスレンジでの攻防を繰り広げるようになった事でビアーが今までより直接的に地面にぶつかる頻度が増え、始めはレツたちの居る岩山と同じ標高であったはずのステージは見る間にその頂きを削り取っていく事となった

 

最硬の『堅』使いであるビアーという名の砲弾を最速の打撃使いであるネテロが放つ形となっているのだ。自称強化系を極めた漢の必殺技(ビッグバンインパクト)以上の衝撃を地面に向かってガトリングガンの如き速度で乱射するような暴挙にたかが人間界の自然物が耐えきれるはずもない

 

人間二人の試合でスプーンで(すく)われるプリンのように容易く山の形が変わっていくなど直接その目で見た者以外は信じられないだろう

 

これが人類の頂点。これが最強の人類

 

しかし二人の強さの頂はまだまだ高い位置に在る

 

ネテロは百式観音よりはダメージの通りの良い直接攻撃を当てる為に当初よりも激しく戦場を動き回るようになり、オーラという動力により圧倒的な速度を誇るビアーの攻撃を避けたり、逆に観音に比べればリーチの短い直接攻撃を命中させる為に百式観音を習得する前に限界まで鍛えた自系統以外の念の基礎を戦術に織り込むようになった

 

放出系による空中加速や急制動に受け流しを行う際にオーラを分厚い手袋や足袋(たび)のように変化させることで微かにリーチを伸ばしたりといった具合だ

 

やっている事一つ一つは決して難しいものでは無いが、今までの全力(・・)戦闘の最中(さなか)に別物のオーラの操作技術を他のパフォーマンスを維持したまま捻じ込む難易度は生半可なものではない

 

無論それによって得られる違いは一見してほんの僅かだが、超が付く達人級の領域で繰り広げられる二人の攻防劇ではその僅かが重要となるのだ

 

 

ビチャビチャビチャビチャッ!

 

 

―――しかしそれだけの事を成し遂げてなおネテロの全身からは血が滴り落ちている。それはつまりビアーがネテロの反応と予測と成長を上回る動きを披露したが故だ

 

「ハーッ!ハーッ!ハーッ!ハーッ!ハーッ!!」

 

だがそれを為した当人であるビアーは先程までとは打って変わって疲労を前面に押し出している

 

これは本来在り得ないことだ。ビアーの潜在オーラから換算すれば激しく動き回る戦闘であることを加味してもまだまだ彼女のスタミナは続くはずである。だと云うのに大きく肩で息をしている様子は紛れもない事実だ。それを見てネテロは重傷にも関わらず笑みを浮かべる

 

「く、くくくっ、俺も今まで色んな奴らと闘ってきたがよ。お前さんみてぇなバカな使い手は初めて見たぜ。さっきからお漏らしばっかじゃねぇか。オムツのCMとやらもそっちが適任なんじゃねぇのか?」

 

「ふぅ・・エロ親父の下品なトークほど面白くないのも然う然うないわね。寧ろそっちの方が(血を)お漏らししてるじゃない。降参するなら病院までそこの無免許医師(レオリオ)付けてあげましょうか?」

 

「要らねぇよ。こんなもん(つば)でも付けときゃぁ治るわい」

 

軽口を叩き合いながらお互いに予感している決着に向けて身体の調子を整えていく―――ビアーは疲労こそ(ぬぐ)えないまでも呼吸の乱れは最小限に抑え、ネテロは気合一発で出血量を捻じ伏せる

 

ネテロも強化系の頂きに立つ念能力者。回復専用の『発』が無くとも筋肉を締めて破れた血管を一時的に塞いでしまえば後は(みなぎ)るオーラでその場での止血程度は可能なのだ

 

(もっと)も彼の目の前にはかすり傷程度とはいえ、この実際の戦闘時間としては短い攻防の中で生まれた怪我の大半がすでに治りかけているオーラを究めていたら勝手に自動回復系の『発』(オートリジェネ)を実質習得しているバカも居るので比べれば至って普通である・・・普通とは?

 

・・・だが

 

 

「痛つつつ・・・流石にまだまだ骨折が治るまでには時間が掛かるわね」

 

左腕を(さす)るビアーは肘の関節部分は彼女の言葉の通り骨折してしまっていた。彼女が手をどければドス黒く変色した部分が(あら)わになる事だろう

 

ネテロは途中からビアーへの攻撃を可能な限り左腕の一点に絞ったのだ。今までのような百式観音一辺倒の戦術であれば簡単にカウンターを喰らってネテロは今頃地に伏せて居ただろうが、体術による小手先の技術を折り込めるようになったとなれば単純なパワーやスピード以外に読み合いや小細工の比重が高くなる

 

無論ビアーを除けば世界最強クラスの身体能力(オーラ含む)という基礎有ってのものだが、老練の武術家であるネテロの鋭利に磨かれた牙は確かにビアーに大きな傷を刻んだのだ

 

(アレだけ儂の攻撃を喰らってようやく腕一本とはの。百式だけで闘っとったらもう千発以上はぶち込まんと同じだけのダメージは与えられとらんかったじゃろ―――面白れぇ。思えば純粋な『武』でここまで心躍ったのは何時ぶりだろうな。こんな事なら勝負服(心Tシャツ)を着て来るんじゃったわい。もう何年もあやつはタンスの奥で防虫剤と仲良しなっとるからな。出来ればもっと闘って(あそんで)いたいが、ここまで来るのに血を流し過ぎた。むこうもバテとるし、そろそろ終局じゃな)

 

ネテロは格闘家として先程の目突きのような局部破壊などの弱点狙いの攻撃などを卑怯だなどとは微塵も思わない。しかし彼が百式観音を会得して以降はそういった小細工を使う機会も理由も潰れてしまったのだ

 

それが今は覚えるだけ覚えて磨き切る事が出来なかった『武』の引き出しすらもおっぴろげて奥に眠らせていた刃を研ぎ、常に己の全力以上をぶつけなければ置いて行かれる(・・・・・・・)相手が現れた

 

ネテロの胸中には今、感謝の念が満ちていた。この時間にしてわずか数分の決闘の中で己の『技』に確かな成長を実感できたからだ

 

『心』・『技』・『体』の全てが(そろ)ってこその武の道。『心』も『体』も己だけでも鍛錬は可能だが、『技』だけは試合にしろ実戦にしろ、覚えた『型』を『技』へと昇華させるための相手と経験が必要になる

 

それも当然。武術とはなんであれ(あいて)が居る事を前提としたものだからだ

 

武術家として才能も努力も経験も実戦も十分に積み上げてきたネテロに唯一足りなかった強敵という存在―――かつて彼は百式観音という新しい入り口に立っただけで戦闘の全てが実質雑魚狩りと化してしまったのだ

 

無双ゲームをプレイしてプレイヤースキルを上げようとしても難しいように、彼がそこで足踏みしてしまうのも無理はない・・・と、そんな訳でネテロに内心感謝されている当のビアーは逆に少しモヤモヤしたものを抱いていた

 

もうすぐ決着なのは構わない。だが白黒つける前に一つ、意地を張りたい事柄が浮かんできたのだ

 

他人が聴けば『何をバカな』と『止めておけ』と(いさ)めるだろう。だがビアーにとってはこの戦闘の中で失態とも呼べる動きをしてしまったのだ

 

(なら、借りはさっさと返さないとね!)

 

「ネテロ会長。リベンジです。フェイント無しで真っ直ぐ行きますからしっかり狙って下さいね(・・・・・・・・・・・)

 

ビアーは分かり易く前傾姿勢を取り、鋭い眼光をネテロの片腕に向けて固定する。その視線こそが揺るぎない(ルート)だと主張するように

 

(こっちの残存オーラも残り少ない。この一撃でもしも私が一瞬でも日和(ひよ)っちゃったらオーラ切れを起こして実質敗北するし、逆に限界を見極め損ねたら目玉がR指定のグロいことになってこれまた敗北・・・でもオーラの消費の激しいこの(わざ)の完成にはこっちも一歩踏み出さないとね)

 

オーラの力強さや成長性には精神が良くも悪くも大きく作用する

 

ビアーは少し前にネテロの放った目突きを咄嗟に回避した。格闘戦において当然の選択だ

 

だがそれはオーラ無しの純粋な体術の応酬であった場合の話

 

(あの目突きは本当なら避ける必要は無かったのよね。ただの『堅』じゃ無理でも奥の手だって在った訳だし、カウンターの機会を棄てての無駄回避―――この先私がオーラを鍛えれば鍛える程人体急所とそうでない部位との『堅』さの差は相対的にはどんどん減っていくはずだし、私にはゴンのような自分の腕だって切り捨てる精神性・・・は要らないけど、その真似事はブレずに行える勇気・・・ううん。狂気が必要になる)

 

ビアーが今やろうとしているのは刹那の狂いも許されないオーラのコントロール。ただ発動するだけなら問題は無い。だが飛んでくる弾丸を瞬きでキャッチする位の繊細さと臆さない心を身に付けなければこの業の真の完成は無い

 

「―――今度は逃げるんじゃねぇぞ、小娘(ガキ)

 

ネテロも応じるように左腕を引き絞り人差し指と中指を立て、全オーラを集中させる

 

合掌こそしなくとも心の中で武への祈りを捧げるルーティーンによって他者からすれば超人であっても走馬灯でなければ踏み込めない時間の流れに身を置き、ビアーの一撃に備える

 

両者が睨み合ってから数瞬、ビアーの踏み込みで足下に掛けた『周』の範囲から外れた後方の地面が衝撃に耐えきれず爆発し、それでも辛うじて足場の役割を果たした残りのそれもビアーの足裏(オーラ)が離れた瞬間に砂塵と化し、残る岩山の崩壊が一気に進み一部の亀裂が地上にまで達する

 

赤裸々(ドレス・ブレイク)―――先程からビアーが戦闘に織り込みはじめ、先日はビアーの分身体とも云えるリースが最後にクロロの認識を置き去りにした時にも使用していた技だ

 

原理としては至極単純。ここ数か月の修行の時にもやっていたように『纏』を(もち)いない『練』という名の『練』モドキで攻防を行うだけだ

 

原作でゴンが感覚的なものだがオーラを数値化して戦うヤンキー(ナックル)と闘った時にゴンの顕在オーラは1800で最初のパンチで相手に与えたオーラは150程であると言われていた

 

これはゴンが『凝』でナックルを殴り、その一割のオーラが実際の攻撃力として使われたという事だ。ゴンが態々『堅』で殴ったとは考えにくいのでほぼ合っているだろう・・・お互いのオーラを押し付け合うナックルの能力の影響下だったのでもう少し顕著だったのかも知れないが

 

兎も角千数百のオーラが籠められていたはずが実際には一割程度だったのはオーラが体外に漏れるのを防ぐ『纏』の効果に寄るもので、仮にそれでなければ『凝』や『硬』で殴る度に全オーラが消え去ってしまう事になる。そうでなければあの時潜在オーラが2万と少しであった原作のゴンは『硬』のパンチを12発も打てばガス欠になってしまうし、強化系の基礎修行である一つの石で一日千個の石を『硬』+『周』を使って割る修行とか永遠に達成する事は出来ない

 

今回のビアーのやっている『赤裸々(ドレス・ブレイク)』の性質は原作ゴンの必殺技である【ジャジャン拳】に近い

 

アレは顕在オーラこそ1800が2000程度になっているだけで大した上昇値に見えないが、そんな事はない

 

原作ナックルの言っていた『技を出し切るのに必要なオーラは途中の倍(2000オーラ)』というセリフに原作キメラアントの兵隊蟻でゴンが唯一『ジャン拳・チー』で斃したモブが言っていた『先程の十数倍の威力の拳』というセリフからして【ジャジャン拳】とは単に顕在オーラにブーストを掛けるだけでなく、拳に集めたオーラの全てを体内で練り上げたオーラで相手に押し付ける類の技だと推察できるのだ

 

だがビアーの『赤裸々(ドレス・ブレイク)』はゴンのソレとは違ってオーラを溜めた状態を維持出来ない

 

発動したままでは数秒で全オーラを無駄に棄ててしまうし、『凝』が使えない以上は【ジャジャン拳】程の威力の向上は見込めない上に大半のオーラを無駄にする事に変わりはない

 

初級火魔法(メラ)中級火魔法(メラミ)にする為に上級火魔法(メラゾーマ)10発分以上の魔力を消費するかのような暴挙。どれだけ潜在オーラが多かろうとオーラがほぼ割合で消費される為、軽々には扱えない脳筋(バカ)技だ

 

対峙するネテロも当然その弱点には気付いている。音なんてとっくに置き去りにしたビアーの突進に全くブレなく目突きを繰り出し、且つその一突きに緩急すらも付けてみせる

 

人間の目は視線に重なった物に対して遠近感が狂う。踏み込みの一瞬だけ『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を発動し、今はただの『堅』となっているビアーの刹那の無駄撃ち(・・・・・・・)を誘発できればネテロの勝ちが確定する

 

二つの影が交差した事を当の本人たちしか認識出来なかった攻防の結果ネテロの左腕はひしゃげて指は千切れかけ、ビアーの目は光を灯したままであった

 

これはビアーが視覚から得られる情報よりもオーラによる知覚を重視した結果だ。たとえ『円』を使わずとも自らのオーラに異物が触れればそれを感じ取る事が出来るそれでもってネテロの攻撃にカウンターを合わせる・・・やっている事は原作キルアが57センチの『円』モドキで敵の弾丸を避けたものの超シビアバージョンと呼べるだろう。今ここにビアーの新技である『赤裸々(ドレス・ブレイク)』は限りなく完成に近づいたのだ

 

だがこれで勝負の決着が付いた訳ではない。お互いに背を向け合った状態から両者は振り向きビアーの最後の一打が放たれる

 

この時ネテロは自分の敗北を強く意識した。しかしその程度で勝利への道筋を見出す事を諦める事も無く、彼の脳みそはフル回転する

 

様々な勝利への道筋を考えては結局(パワー)不足だと結論が降りて来てまた再思考を始め、延々と繰り返す内にふと気が付いた

 

すなわち今の自分が走馬灯の中に居るのだと

 

ネテロは他者に走馬灯を強いる程の圧倒的なスピードを誇る念能力者だ。だが他人が走馬灯の中に居るからと言ってもネテロ自身が走馬灯になっている訳ではない

 

(時間は出来た。ならば祈ろう(・・・)。結局オレが積み上げてきた一番のモノは『武』への感謝。百式を放つ時と同じように感謝(オーラ)を練り上げる―――山で感謝の正拳突きの修行をしていた時もそうだった。あの時も日課の正拳突き(一万回)が終わればただただ祈っていた。オレの能力の本質は祈りにこそあったのだ)

 

今のネテロは走馬灯に走馬灯を掛け合わせたような状態。その中で只管(ひたすら)祈りを捧げ、潜在オーラの全てを練り上げていく

 

オーラのチャージには時間が掛かる?なら超早くチャージすれば良いじゃないという他人が聴けば頭が痛くなる結論だ

 

自身の敗北の未来が薄れていくにつれてネテロの認識が通常(?)の走馬灯の時間軸へと戻っていき、動くようになった身体で右の拳を引き絞る

 

(改めて言うぜ。お前と出会えたこれまでの全てに感謝を―――オレはまだまだ、強く成れる!)

 

ネテロの突き出したただの正拳突き(・・・・・・・)とビアーの『赤裸々(ドレス・ブレイク)』のただのパンチ(・・・・・・)が正面からぶつかり、残る岩山の全てが崩れ去ったのだった

 

 

 

 

 

目が覚めたら決着が付いていた。というかネテロ会長と私の拳がぶつかって全オーラを使い果たした事で一瞬だけ気絶したっぽいんだけど、それは向こうも同じで遠くから見ていたレツたちも私達が同時に地面に落ちた様子を見ただけでどっちが先に気絶したとか地面に身体が触れたとかは判定が出来なかったみたい

 

でも私はそんな結果を認める訳にはいかない!!

 

「い~や私はあの時気絶なんてしてないです~!一瞬クラッとしただけでネテロ会長が私よりもほんの少しだけ早く地面に落ちたのも見てました~!!」

 

「そっくりそのまま返すわい小娘が!拳がぶつかった瞬間白目剥いとったマヌケ面を写メで撮っておれば良~い証拠になったんじゃがの~。残念残念・・・という訳でこの勝負はワシの勝ちで異論は無いな?」

 

耄碌(もうろく)と衝撃で夢でも見たんですか~?自分の敗けを認めたくないからって在りもしない記憶を捏造しようだなんて、やっぱりもう引退した方が身のためですね。ほらほら、最後は(いさぎよ)勝者(わたし)(こうべ)を垂れましょう?なんと言おうと事実・・・いえ、私の勝利という真実が(くつがえ)る事なんて一生無いんですから」

 

さっきからずっと私とネテロ会長は自分の勝利を主張し続けている。これは決して譲れない一線だ

 

「お前たち・・・あれだけ素晴らしい決闘をした二人がこんな醜いぶつかり合いをしないでくれ」

 

「CMに出たくないなら引き分けって事を受け入れれば良いだけじゃない。幸い引き分け(そっち)には言及して無かったんだし」

 

「ビアーもネテロ会長も負けず嫌いにも程があるよ」

 

レツ達が呆れたように頭を振ってるけど、正確には負けたくないんじゃない

 

「「こいつをCM出演(負かしたい)のよ/んじゃ―――その愉悦こそが勝利の美酒!!」」

 

「いやだから引き分けだって言ってんじゃん」

 

「あれだけ闘りあった直後でなんでそんなに元気なんだよ?てか会長も動かないでくれ。マジで今のあんた重症なんだから!」

 

「なんて言うか・・・ある意味二人とも負けてるよね、人として」

 

ゴンがそんな事言うなんて!いや!敗けてない!敗けてないったら敗けてない!!気絶したのだって絶対ネテロ会長の方が早かったはずだし(自己暗示)!!

 

それから(しばら)く低レベルな言い合いを続けに続け、ポンズ姉がまともにオーラも出せない私達の頭に容赦なく拳を振り下ろして再び目が覚めた時には《私達はポンズ姉に敗北しました。罰としてCM出演に同意します》・・・と大雑把に言えばそんな内容の血判書を押されて決着となった

 

ネテロ会長は不満そうだったけど、何時も一緒に旅してる私にとってはこれ以上ゴネてポンズ姉の不興を買うのは死活問題だし、ポンズ姉の『あら?獲物が弱った隙を見逃さずに狩るのはハンターの基本ですよね?血判書(こんなもの)押される会長が悪いんですよ。無視するならその時はコレをあの副会長とやらに郵送で送ってあげましょうか?ビアーから今の副会長はヤバいって聞いてるから、とっても愉快な事になりそうね』・・・と脅していたりもしたのは恐ろしいと感じた

 

 

 

 

未来の話だが公開されたCMは反響を呼ぶ反響となり・・・私とネテロ会長の心は死んだ

 




サブタイは勝者(ポンズ)と敗者(ビアー&ネテロ)ですね

ドレス・ブレイクはまぁ前作の影響ですかね。シルバたちと闘った時にドレスも使ってたからってのも有りますが

ステータスは次回の冒頭にでもww
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