毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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大変お待たせしました。キリの良い所が見当たらなくてなんかもう4万字近く書くハメになってしまいました。だ、だから投稿速度はまだしも執筆速度はここ最近のものと比べて落ちては無いのでモチベーションが下がったとかじゃないのでそこはご安心を(震え声)

読者視点でみれば投稿頻度の方が重要度高いのは承知ですが、ご容赦下さい


帰省と魔道具?

ビアーがまだ己の運命(バズり)に気付かずに飛行船に揺られて数日、ビアー達一行は彼女の地元であるコリントス市に降り立っていた

 

当然旅の間もオーラを枯渇させるまで自分を追い込む事は忘れてない。『纏』と『練』の修行はたとえ病院のベッドで療養中であろうと続けられるのが一番の利点だとビアーは考えている←休め

 

「さて、前にも言ったけどビスケもゲーム内に待たせたままだからそんなに長くは滞在できないからそのつもりでね。ほったらかしにしたら全員揃って正座で説教耐久喰らっちゃうからさ」

 

空港でタクシーを二台捕まえたビアー達はそのまま彼女の家へと向かい、道中は車内から街並みを眺めたりしながらも雑談に興じる

 

「どうかな?久々の地元は?やっぱりビアーでも懐かしがったりする?」

 

「まだここを離れてから1年半程度よ。目に見える程の変化も無いし、両親ともメールや電話でやり取りはしてたから懐かしいかと言われるとかなり微妙ね。後なに?その含みのある言い回し」

 

「子供の頃からプロハンターとして世界を飛び回っていればその程度の評価はされるでしょ。別に去年の暮れにだってあんたが帰省したいって言えばそうしてたのに結局三人旅だったしね」

 

「その分電話とかじゃ出来ない(盗聴対策)詳細な思い出話のお土産が増えるから良いじゃん。あと一応生まれ育った場所への愛郷心くらいは持ってるよ。嫌な思い出とかも無いしね」

 

「へぇ、そうなの?」

 

「逆に訊くけどポンズ姉は私がもっと小さい頃だからと云って交通事故で怪我したり人攫いに遭ったりイジメの対象になってたりすると思う?」

 

ビアーの問いにポンズは一瞬思考を挟んでからビアーに半ば責めるようなジト目を向ける

 

「あんたなら一律に相手を粉砕してそうね。全くもって憐れだわ。オーラの化身(こんなの)に関わったばっかりに今頃は・・・もう・・・」

 

「遭遇しなかったよ!?幸いにもそもそも遭遇しなかったからね、そんな場面!!」

 

幸いにもとは被害者側と加害者側のどちらにとっての幸いだったのかは議論の余地が有るだろう

 

そんな和気藹々(?)としたトークを挟みながら移動を続けること数十分でタクシーがとある二階建ての一軒家の前で停まり、ビアーが運転手に料金を支払って順次下車していく

 

「へぇ~、ここがビアーの家か~・・・何て言うか普通だね」

 

「そうね。もっと『周』で家全体が覆われてる位のものを想像してたんだけど、極めて平凡ね」

 

「二人とも私がどんな魔境で育って来たと思ってたの?そう云うのはキルアで間に合ってるから」

 

ビアーの脳裏に『強力なオーラか。生まれた時から浴びてたぜ。家庭の事情でな』というセリフが浮かんだが、彼女はそれを払うように(かぶり)を振った

 

たとえ平均的に素質の高いであろうゾルディック家でも強力なオーラ(そんなもの)を生後0ヵ月から浴びせていたら一族滅亡待ったなしである

 

もっとも原作ウィングのやったような外法を施して生後すぐにオーラを目覚めさせるだけならそこまで大きなリスクは生じないが、子供心に雑な『発』を生み出しかねないので強者の育成には向いていなかったりする

 

因みにだがビアーの実家は現代日本の一軒家よりは土地の余ってる某米の国のような広い庭付きの一軒家をイメージするとより近い

 

タクシーが立ち去りビアー達が玄関に近づくとチャイムを鳴らす前にドアが開き、ビアーの母親が一同を出迎えた

 

ビアーが飛行船の到着時刻は事前に伝えてたのでタクシーが到着した物音などで気付いたのだろう

 

「お帰りなさい、ビアー」

 

「ただいま、お母さん」

 

ビアーの顔を見て小さく微笑みを浮かべた彼女はビアーの後ろに居るレツ達に視線を移す

 

「お友達の皆さんも先ずはどうぞ上がってね。すぐにお茶を用意するわ」

 

ビアーの母親に促されてレツ達は各々『お邪魔します』と家に入っていく

 

「おお!お帰りビアー。大きくなったな。写真だとこんなに背が伸びているとは思わなかったぞ。活躍はニュースとかで色々聞いてるが、特に問題は無いか?」

 

「ただいまお父さん。強いて言うなら最近成長痛がしてるのが悩みかな?まぁコレに文句を言う訳にもいかないんだけどね・・・ところでなんでお父さんが真昼間から家に居るの?別に今日って休日でもなければ祝日ですらないよね?」

 

ビアーが平日に何故か家に居る父親の姿に純粋に疑問を呈する

 

「完全自由業のプロハンターとは違って会社勤めのサラリーマンには有給休暇という制度が在るんだよ・・・というか部長に無理やり休まされた。ビアー、悪いが後で貰ったこの色紙にサインをくれ。ヅラのズレた部長(おっさん)の泣き落としは色々と効くんだ。これで持って帰らなかったら絶望顔の上で号泣されちまう」

 

上司(おっさん)の泣き落としに屈して娘に懇願する姿にビアーからの信頼度が僅かに下がった父親であった

 

「ええ・・・私もそこそこ有名人になってきた自覚は有るけど別に芸能人って訳じゃないんだけど・・・てかお父さんの上司が私のファンなの?何て言うか、それって気まずくない?」

 

父親と同じオフィスの上司の机が自分の缶バッチやコースターなどで彩られている風景を想像して色々と複雑な気分となるビアーが心境を表す困惑したような、それでいて嫌そうな顔を浮かべる

 

「いや、今回サインをねだったのは部長のお孫さんだな。まだ3歳かそこらの小さいお子さんだが『何が何でもサインを貰ってきてね。使えないお爺ちゃんなんてキライ!』って言われたらしい」

 

「3歳程度でそんなハッキリものを言うの?」

 

普通ならまだ自我が芽生えたかどうかといった子供がそんなしっかりとした主張をするのかと疑問に思うビアーだったが、彼女の父親も同じことを思っていたようだ

 

「何でもその時はその子の母親で部長の娘さんが抱っこしてて、子供の耳元でなにか囁いていたらしき事は情緒不安定になっていた部長からなんとか訊き出した」

 

「それファンなの娘さんの方じゃん!自分の子供を使った交渉術とか腹黒だよ!発想が外道寄りだし、ソレってサインを強請(ねだ)ってるんじゃなくて強請(ゆす)ってるよね!?」

 

「そうとも云えるかもな。部長は仕事も出来るし人望も基本は(・・・)厚いんだが、奥さんと娘と孫には弱くて、それが絡むととても残念になるんだ」

 

どうやら部長の机やスマホのフォルダの中は家族愛(自身のヒエラルキーは底辺)に溢れたものとなっているようだ

 

そのマイナス面を知られて(なお)、部下に優秀だと認識されて慕われているのだから普段は(・・・)とても良い上司なのだろう

 

ヅラもズレてはいないはずだ・・・多分

 

結局ビアーも父親の頼みに仕方ないと折れてサインを書く事にしたが、おそらくはこの件の黒幕である部長の娘へのちょっとした意趣返しに孫の名前を訊き出して『〇〇ちゃんへ』と誰宛のサイン色紙なのかハッキリ明記するのだった

 

ビアーが渋々生まれて初めてのファン相手のサインを書いている内にお茶が淹れ終わったようでテーブルの上に人数分の紅茶が置かれ、皆が席に着いていく

 

流石に9人分の椅子はリビングに無かったのか幾つかは他の部屋から引っ張って来たようであり、デザインの異なるモノが幾つか置かれている

 

「いやぁ、まさかビアーがこんなにも沢山の友達を連れて来る日が来るとはな。この子は学業も飛び級で同じ年代との接点が少なくてな。かといって運動好きかと思えばスポーツジムやアスリート競技とかも目もくれず岩を背負ったり大木を背負ったり林の中を走り回ったりと、プロハンターになっても孤高(ボッチ)のままではないかと、そこだけは心配だったんだよ」

 

「そうねぇ。間違いなく良い子ではあったんだけど、心配というよりは困惑する事の方が多かったかしらね」

 

「何と云うか、簡単に想像がつきますね。私達もビアーの独特の価値観と強引な性格には振り回される事もしばしばですので」

 

「あんまりご両親に心配かけるのは良くないよ。ビアーもなにか言ったら?」

 

いきなり友人たちの前で『変な子供だった』宣言されて親愛する二人からも染み染みとした声で返事を求められたビアーは我関せずとばかりに無駄に優雅に紅茶で喉を潤し、遠くを見つめる。なおビアーの見つめる先にはキッチンのカレンダーくらいしかない―――完全なる現実逃避である

 

しかしビアーが逃避した現実に舞い戻って来る前にレツに声が掛けられる

 

「あら、『ご両親』だなんて他人行儀な言い方しなくても『お義母さん』とか『お義父さん』って呼んでくれても良いのよ。この子(ビアー)から送られてくる写真やメッセージからしても仲は良いのでしょう?私達も実際に逢ってみて貴女みたいに素直そうで可愛いくって素直そうでしっかり者で素直そうで素直な娘なら断る理由も無いわ」

 

「待ってお母さん。暗に私がまるで素直じゃないって言ってない?実の娘(わたし)から素直成分摂取出来なかったからレツにそれを求めようとしてない?私ここで育ってきて別に素直じゃ無かった訳でもないと思うんだけど?ツンデレ属性とかは発揮してなかったはずだよね?」

 

「ビアーは『ありのまま』と云う意味では素直に育ってくれたけど、『穏やかで真っ直ぐに』と云う意味では子供らしい普通な育ち方はしてくれなかったからね―――如何してこんなにも明後日の方向に育っちゃったのかしら?」

 

「それ自分の娘に面と向かって言う言葉!?」

 

「大丈夫だぞビアー。それはそれとして俺たちはビアーを愛しているからな」

 

「皆の前で恥ずかしいセリフは禁止!ってツッコミとそれをそれとして置いておかないで!ってツッコミとどっちを優先すれば良いのかなぁああ!!?」

 

珍しく顔を赤く染めて余裕の無い声を上げる年相応のビアーの姿に一同は暖かい目で見つめたりニヤニヤとした表情を浮かべたりしているようだ

 

ビアーの両親も久々の愛娘の帰還に少々テンションが高いようで、生き生きと玩具(ビアー)を弄っている

 

「それで話を戻すけどレツちゃんは如何かしら?やっぱりいきなり家族だなんて抵抗有る?」

 

「えっと、それは・・・」

 

優しく微笑みかけられたレツは薄ピンクに頬を染めながらも返答に窮してしまう。決して嫌という訳では無いし、幸か不幸かオリジナルのレツ自身の血を分けた両親は物心ついた時には既にいなかったので妙な義理感も忌避感もない。ただ目の前で自分を優しい目で見る二人をいきなりそう(・・)呼ぶのは単純に気恥ずかしいのだ

 

「いきなりも何もレツとはもう1年半は前から姉妹の契りを―――」

 

「あんたは黙ってなさい!」

 

空気の読めない義理の姉(法的)がスチールハリセンでポンズに叩かれている様子にレツも肩の力が抜ける

 

(まったくもう。ビアーももう少しこの二人の謙虚さと云うか思いやりを身に付けていたらボクも今頃はビアーの事を『お義姉ちゃん』なんて呼んでたかもしれないのに、何時も強引さ全開だからこっちも変に反発しちゃうんだよね)

 

レツはふと視線を落とした先のティーカップに注がれた紅茶の水面に映った自分の顔を見て今思った事を少し否定する

 

(いや、どこまで行ってもボクは人間じゃない。兄さんが死んだばかりのあの頃のボクだとビアーくらいの強引さが無かったら何処か一歩引いた目線のままで今日まで来てたかもね)

 

レツは顔を上げて二人の目を見つめ返し、次いで周囲の仲間たちの顔も見渡す

 

(ボクは人形で肉体的にはこのままだ。たとえ黙っていてもそう遠くない内にボクが普通じゃないことに皆気付く。ポンズやゴン達はボクの神の人形師(のうりょく)の由来や死後の念とかも知ってるし、なんというか仲間に対する判定が甘いというか大雑把だからバレても大丈夫な気はするけど、念についての事前知識が何もないこの二人が本当にボクをそのまま受け入れてくれるのかと云うと出会ったばかりのボクには確信が持てないや。ハハッ、前向きに考えちゃってるからこそ、同時に怖さも感じるのかもね)

 

レツの複雑な心境は知れずとも、戸惑いの雰囲気は感じ取れたのかビアーの母親はこの場では一歩引く事としたようだ

 

「大丈夫よ。まだ出会ったばかりなんだし、答えを急ぐ必要は無いわ。今は私達は受け入れ準備万端!っていう所だけ覚えておいてね」

 

「え、あ、は、はい・・・その、頑張ります・・・」

 

「ふふふ、別にこれは頑張る事ではないわよ。でも前向きなのは嬉しいわ」

 

(あ~ん♪レツちゃんって本当に素直で健気で可愛いわ~♡押してダメなら引いてみろって云うし、ここは我慢よ私。必ずホイヘンス家(うち)という沼に引きずり込んであげるわ。家の子(ビアー)もまさか11歳でプロハンターになって自立しちゃうなんて思ってなかったから構い足りなかったのよね~)

 

この親にしてこの子あり。外面(そとづら)を取り繕っただけで中身はただのビアーであった

 

それからビアーの両親・・・ラース=ホイヘンス(父親)とユイ=ホイヘンス(母親)に今までの旅の出来事やビアーの様子をレツやゴン達の視点からも詳しく話していき、ポンズやレツ、キルアなどはここぞとばかりにビアーを弄ったりしてから顔見せというイベントはお開きとなった

 

 

 

「あ~!酷い目に遭った~!!」

 

リビングでの両親を絡めた交流を適当な所で切り上げたビアー達は現在彼女の部屋に集まり直して部屋の主たるビアーは久々の己のベッドに頭からダイブして枕に顔をグリグリと押し付けている

 

「不貞腐れてるんじゃないわよ。たかが小さい頃のアルバム公開されただけじゃない」

 

ベッドの端に腰掛けたポンズがそう言いながらビアーの頭を慰めるように撫でる。普段と違い年相応な顔を覗かせるビアーには彼女も庇護欲が働くようだ

 

「う゛ぅぅ~。ポンズ姉~~!!」

 

そんな優しさを感じたビアーがポンズの腰をホールドするように抱き着くが直前で察知した彼女は自然な動作で立ち上がってその掴み技(ホールド)を回避する。虚しく空を切ったビアーの両腕が少しの沈黙の後でダラリと垂れ下がるが同情する者など居なかった。レツたちの切り替えは早い

 

渋々とベッドの端に座り直したビアーは今後のザックリとした予定の話に移る

 

「じゃあお昼はお母さんが作ってくれるから午後はこの街を案内するわね。別行動する事も多いだろうし、料理の美味しい店とか私が幼い頃に駆け回ってた林とか港の釣り場にゲーセンや図書館とかね。明日は私は役所関係の諸々で潰れると思うからさ」

 

ビアーとしては今回の帰省の理由の大半は実質それである。後回しにしたら両親からのお叱りが降りかかるのでどうせならハンター活動中に煩わしい書類のアレコレがそもそも両親の元へも届かないように一つ星(シングル)ハンターの権力を役所で振りかざす気満々だ

 

別にこの程度なら三つ星(トリプル)の習得を待つまでもなく如何にか出来るだろう

 

「OK。ゴン、テレビゲームやった事ないなら当然ゲーセンも無いんだろ?明日は一緒に行こうぜ。レツもどうだ?」

 

「う~ん、そうだね。確かに新しい刺激は必要かも。広場とかでの人形劇はまた今度にしようかな。ポンズたちは如何する?」

 

「私は図書館で最新の動植物のデータを確認しておきたいわね。ずっとG.I(グリードアイランド)で修行してたりヨークシンでも決戦に向けた準備とかばっかりだったから。後はルルとアリスタの羽伸ばしに連れてってあげようかしら」

 

「私も図書館(のパソコン)で情報収集だな。十老頭やサザンピースの幹部から得た同胞たちの目や人体収集家の情報を一度精査しておきたい」

 

「ルルやアリスタの背中に乗って無限の彼方へ飛び立つよ~♪てな訳でポンズ姉と一緒」

 

「図書館じゃねぇが本屋で医大試験向けの問題集は何冊か買いてぇな。今持ってる分は全部解いちまってるし、それが終わったらゴン達と合流しても良いかもな。『ドラムの達人』や『鋼拳』もやり込んだもんだしな」

 

それぞれが明日の探索や息抜きなどの方針を固めている内に昼食の時間となり、午後は予定通りに市街へと繰り出す一同であった

 

ビアー達が帰省した翌日は各々が予定通りに過ごし、その次の日はビアーも混ざってゲームセンターやテレビゲームを用いたゲーム大会。さらに次の日は地元の観光スポット巡りなどをして・・・と、束の間の休暇を満喫していった

 

そんな中でその日はビアーの両親も含めた男子組と女子組とで別行動する日となっていた

 

ビアーの父親たるラース=ホイヘンス率いる男子組はゴルフに、ユイ=ホイヘンス含めた女子組はショッピングの予定だ

 

因みに前日の夜の会話では

 

「親睦を深めるならスポーツが良いだろう。これでも私は接待ゴルフでどんな勝ち、負け、接戦の演出も加えられるよう練習を重ね、如何なる得点をも叩き出せる。今や社内では『演出家(プロデューサー)』の異名を持っている身だ―――連続ホールインワン記録?・・・4回。運が良かっただけさ」

 

「いやもうお父さん会社辞めてプロゴルファーになったら!?運で出せる回数じゃないからね、ホールインワン(それ)!!」

 

・・・というやり取りが有ったとか無かったとか

 

この父親。恐らくしっかり鍛えればプロハンター並みの領域に至れていたかも知れない

 

やはりビアーの両親であった

 

そういった過程も経て男子組は朝早くからゴルフ場へと向かい、女子組はショッピングモールの開店時間までのんびりと過ごしてから家を出た

 

それから家具や日用品、服などを中心に様々な店を廻りに回る

 

当然それの主なターゲットはレツだ

 

「ねぇポンズ。なんであの二人はあんなにテンション高いのかなぁ?ボク達が世界中を練り歩いてる以上はボク用のベッドとか部屋とか要らないと思うんだけど」

 

「ビアーのお蔭(?)で予算に上限が無いのも暴走に一役買ってるわね。何故か私の分の服とかもレツやビアーの部屋に置くのを前提に大量に購入してるし・・・私はまだしもこれから成長期のアンタ達とかちょっと家を空けたらすぐに着られなくなるとかも考えてないわね、アレは」

 

「あ・・・うん、そうだね・・・」

 

「?―――如何したのよ?」

 

「ううん。何でもないよ」

 

歯切れ悪く笑うレツの様子を(いぶか)しむも無理に踏み込むべきではないと打算や邪心無しで考えたポンズは「―――そう」と一言だけ返してレツと一緒に前に向き直る

 

「ほら、はぐれないように行くわよ」

 

悩める妹分の居場所も手を引く者もここに有るのだと示すように隣の小さな手を握って歩いていく

 

ナチュラルに有能な姉ムーヴを取るポンズであった

 

 

 

「―――それにしてもあの二人もうとっくにあんたに宛がわれた部屋の容量(キャパシティ)を超える量を買ってるみたいだけど、後先考えてるのかしら?」

 

「考えてないんじゃない?」

 

色んな店を梯子しながらも既にレツやポンズのだいぶ前を歩いて(荷物の山で人混みの向こうに居るのが判る)いる似た者親子の暴走は続く

 

 

 

たった数時間のショッピングで家に郵送で送った分を差し引いても山と積まれた荷物を脇に置きつつ、少し遅めの昼食を海風漂う高級レストランのテラスで頂くことにした四人は注文した品が届くまでの間に午後に買うべき物を話し合う

 

「お母さん。ここはやっぱり物置(特大)買わない?」

 

「そうね。それかいっその事増築するのも手かしら?大丈夫。いざとなればお父さんに飛び入りでゴルフの世界大会に出場して賞金もぎ取って来てもらうから」

 

「お金なら出すよ?正直使い切れないくらい稼いでるし、レツは人形作りもするんだから作業場も保管場も要るよね。いっそ豪邸を新しく建てちゃう?」

 

「成人もしてない娘から何千万~何億ジェニーも出させる気なんて無いわよ。月々3万ジェニーの仕送りだって使わずに取ってあるんだから」

 

「いやそこは使ってよ。大き過ぎる金額はお母さん達も嫌がるからって常識の範囲内での仕送りなんだから使ってよ。あとやっぱりお父さん転職した方が良いんじゃない?」

 

「お父さんは趣味と仕事を分けたいタイプだからダメね。接待ゴルフがギリギリよ。それに実は取引先の社長や幹部の機嫌を良くするお父さんの接待プレーに特別接待ボーナスが出てたりするのよ。お父さんのお蔭で成立した取引も多いんだから、レツちゃんの部屋を今の三倍にするくらいは直ぐにでも出来るわね」

 

「何時の間にそんな事になってたの!?自分の親が接待のプロでボーナス増し増しとか意味わかんないんだけど!?」

 

「年端もいかない娘にそんな非常識な事を嬉々として話す訳ないでしょう?常識で考えなさい」

 

「・・・確かに」

 

目の前で常識と非常識が混ざり合った会話を続ける親子にレツの目は既に死んでいた

 

大金を稼ぎまくっている娘にいざとなれば大金を自力(?)で稼げる夫婦

 

仕送りの金額など普通の金銭感覚を持っていながら自分(レツ)の為に平気で改築・増築しようとする親子

 

非常識(ビアー)をして非常識と言わしめる義父の職場環境

 

変なところでいきなり常識が顔を出す非常識人たち

 

まだ食事も運ばれて来てない段階で既に別の意味でお腹いっぱいであった

 

 

 

「わっ!このソーセージ美味しい♪パリっとした皮に噛むほどに肉汁が溢れて来る。でも全然くどくないや。幾らでも食べられそう!」

 

死んだ目をしていたレツだが運ばれてきた料理をノソノソと口にした瞬間から瞳に輝きが舞い戻って来て、今やキラキラと煌めいている

 

「うん。メインがソーセージって云うだけ有るね。こっちのバジルのやつも更にサッパリ感が増してるし、バジルの強い風味にも負けずに調和してる!なにこの店のソーセージ!?もはやレジェンドだよ。ソーセージ・レジェンドだよ!!―――くっ!地元にこんな名店が在ったのを今まで知らなかったなんて不覚!」

 

「仕方ないんじゃないかしら。だってコレ1本で3万ジェニーでしょ?プロハンターになる前のあんたの子供のお小遣い程度で買える金額じゃないわよ、ってそう言えばあんたはその前に天空闘技場で稼いでたんだっけ?―――あ、私はこのハムが気に入ったわね。なんなら定期購入も検討しようかしら?」

 

ビアー達は地元の名店の味に舌鼓を打ち、頬がとろけてしまいそうな感覚に思わず頬を手の平で抑えて止まない旨味を噛み締めていく。今は全員に笑みが溢れている

 

なおポンズはレツの特製帽子が出来上がるまでの繋ぎで使っている帽子の中の念空間に常人の目には映らぬスピードで料理の一部を入れ込み、中の住人たちに提供している

 

(アリスタ)だって(ルル)だって人形(リース)だってお肉くらい食べるのだ

 

(流石はハンターハンター世界。女の子が3~4口で食べれちゃうサイズでこのお値段とか高いやつはホントに高いわね。定期購入はともかくお父さんの分は確保しておくべきね。ゴンたちは・・・店の場所だけ教えとけば食べたかったら食べるでしょ。まぁお坊ちゃん(キルア)とかは実家で食べなれてそうだけどさ)

 

コリントス市は船による流通の拠点の一つであり、港近くには高級な飲食店やホテルなどがチラホラと点在しているのだ

 

ビアーの母(ユイ)も最初は高級店に入るのを固辞したが、ビアーが半ば押し切った形だ。彼女としても娘が億単位で稼いでいるのは何となく分かっているので意固地になる程ではないと仕方ないとばかりに最後にはレストランへと自ら足を向けた訳だったりする

 

「前に送ってくれたあの長い名前のロイヤルゼリーやハチミツも美味しかったけど、持つべきはプロハンターの孝行娘ね。ビアー、あなた今からでも美食ハンターでやっていかない?犯罪者を相手にするよりは食材探しの方が危険も少ないでしょう?」

 

どれだけ娘が活躍しようとも少しでも危険の少ない方面に舵を切って欲しい親心から犯罪(クライム)ハンター以外の道はどうかと訊く母親にビアーはそれは甘いと考えを正す

 

「ハチミツはまだしもこっち(ソーセージ)はお店で注文してるだけで私のハンター活動一切関係ないじゃんか。それに美食(ハンター)を舐めちゃダメだよ。あの人達平気で星を壊せるような生き物(しょくざい)を相手にするのが常みたいなもんだし、今の私程度が『グルメ』の世『界』に足を踏み入れたらたちまち餌食にされちゃって終わりね」

 

「一体どこの世界の美食ハンターの話をしてるのよ。人類はまだそこまで逞しくないわ。てかあんたで捕獲(ハント)出来ない食材ってなによ?」

 

「う~ん。私が安定して捕獲(ハント)出来るのは精々B〇コーン位までかなぁ?メ〇ウコーラで命懸けでワンチャンって感じ?まぁコーラ(あれ)確保するのにレシピ本必須だけど」

 

(コーラの捕獲レベルは確か90余裕で超えてたと思うけど、アレって特殊調理食材だからであってレシピさえ分かっていればかなり難易度下がるはずだしね。戦闘力だけなら何とかなると思う)

 

「だから何処の世界の話してるのよ!!」

 

暗黒大陸なんてものが存在してる以上は何時しか美味なる食材を求めて暗黒大陸で人生のフルコースとやらを完成させる猛者も現れるかも知れないが、あったとしてもまだまだ先の話である

 

「なら今食べてるこのソーセージに使われてるお肉なんかはどうかしら?確か希少なだけで凶暴とかじゃなかったはずよ」

 

「・・・そう言えばこれって何の肉なの?特に気にせず食べてたけど」

 

「使われているのは海豚(ウミブタ)の肉よ」

 

「う、海豚(ウミブタ)海豚(イルカ)じゃなくて???」

 

「なんでそこでイルカが出て来るのよ?『イルカ』は『イルカ』でしょう?―――海豚(ウミブタ)って云うのは豚の下半身が魚状になっててね。つまるところ人魚の豚バージョンよ。豚肉と魚肉の良い所を混ぜ合わせたような高級肉ね」

 

前世の日本人としての記憶が海に豚と書いたら『イルカ』と脳内変換してしまったビアーだったが、漢字を扱わないビアー以外の彼女たちからすれば海豚と言われれば海豚である

 

なお漢字を扱うジャポンから紛らわしいから改名しろと一部から要望が上がっていたりもするらしいが、一島国の意見が通る見込みは低い

 

「どっちにしろ嫌だよ残りの人生をそんなよく分からない豚だか魚だかの狩り(ハント)に費やすの!・・・美味しいけど!!」

 

ビアーの手に握られたフォークが皿に盛られた新たなソーセージに突き刺さる。彼女の脳裏に貝殻ビキニを着けた下半身魚の豚がセクシーポーズをキメてるイメージが浮かんだりもしてたが、そのマイナスを振り払う程度には旨味から来る食欲が勝る

 

気持ち勢い強めにフォークを突き刺した事で母親に“はしたない真似をしないように”と軽く叱られたビアーは少しだけむくれっ面をしてから深く息を吐き周囲に目を向ける

 

「で?アンタ等は何の用?こっちは見ての通り家族団らんの真っ最中なんだけど?」

 

ビアー達の着いていた席の周囲に半円を描くようにガラの悪い男達が立っていた

 

「へっへっへ!叫ばないのは良い判断だ。中々肝の据わってる嬢ちゃんだな。俺たちとしても出来ればコレ(・・)を使わずに穏便に済ませたいからよ。とはいえ俺たちゃ短気だからちょっとでも反抗すればすぐにブッ放しちまうぞ」

 

他の客には見えないように懐から銃をチラ見せする男に当然ビアー達は平常運転だ。一番防御力の低いポンズでさえせめてライフル弾程度は用意しなければ話にならない

 

「用があるのは金髪と緑髪の嬢ちゃんだ。大人しく持ってるお宝を差し出すなら俺たちも紳士的に帰ってやるよ」

 

お宝と言われたレツとポンズは何の事かとお互いを見やりながら思考を廻すが心当たりは思い浮かばずに同時に小首を傾げる

 

「なにか勘違いしてないかしら?私達はお宝なんて持ってないわよ?」

 

「うん。今あるのは精々財布くらいだしね」

 

一応ハンターライセンスが現状彼女たちの持ち歩いている中では一番金銭価値があるお宝と呼べるが、ビアーが除外された以上は別のなにかだと考えた彼女たちだがやはり思い当たる節は無かった

 

「とぼけても無駄だ。お前らが俺たちに隠している魔道具を渡すんだな。コイツがお前ら二人にビンビンに反応しているのが動かぬ証拠ってやつだ」

 

リーダー格らしき大き目の犬歯が目立つ男がポケットから装飾の凝った年代物のコンパスのような物をビアー達に見せ付けると確かにその針がポンズとレツの間を行き来していたが、今度は三人揃って首を傾げる

 

「えっと、魔道具って?」

 

代表としてビアーが男に問いかける

 

「とぼけている・・・訳でもないようだな。世の中にはこのコンパスのように人類の科学では解析できない超常の力が働く道具が存在しているのさ。その多くは武具や人の世の理を崩すような物でな。きっと悪魔から(もたら)された道具って事で魔道具と俺たちは呼んでいる。使い方の分からんのも多いが、闇オークションではこれが高く売れるのさ。嬢ちゃん達もそんないわくつきの物なんざ持っていたくないだろう?俺たちが安全に販売(処理)してやるから取り敢えず持ってるもん全部出しな」

 

「(えっと、オーラを感知してるのかな?あのコンパス)」

 

「(それならボク達だけじゃなくてビアーにだって反応するよね。また別じゃない?骨董品とかで見かけるオーラの籠った道具とか?ボクなら『手持ち可能な友達(ドール・ホルダー)』でポンズならその帽子とか)」

 

「(念能力者から道具を奪っても大抵はオーラの供給が無くなって機能しなくなるからもう少し限定的じゃない?銃以外にも幾つか懐に隠し持ってるみたいだし)」

 

顔を寄せ合って小声で意見をすり合わせるビアー達にいい加減自分たちが脅威に思われてないと理解し始めた男達が怒気を高めていく

 

「どうやら現実ってのを教育してやる必要があるみてぇだな。もういい。テメェ等コイツ等もお宝(・・)として連れてくぞ。警察(サツ)共を相手にするのは面倒だが、売れば中々良い値が付きそうだ。一人か二人はその前にお愉しみ(・・・・)に使っちまっても良いしな」

 

「ぃよっ!兄貴分かってるぅ!一生付いて行きやすぜぇ!!」

 

「娼館と違ってぶっ壊しちまっても良いって事だよなぁ?」

 

「なぁなぁお頭!誰だ?誰なら良いんだ?俺が選んで良いか!」

 

リーダーの言葉に部下の男達が舌なめずりをして囃し立てる

 

周囲に居た一般客も怪しい雰囲気から一気にヤバい空気に変わった事で次々と席を離れたり店員に通報を促そうとしており、それを分かっている男達も素早く次の行動に移る

 

「お前ら抵抗されないように先に鉛玉をプレゼントしてやれ。ただし急所と足は外せよ。自力で走って貰わなきゃ面倒だからな」

 

一斉に引き抜かれた拳銃がビアー達に向けられ、肩や腕に狙いを定めて躊躇なく引き金が引かれる

 

発砲音と同時に銃身から飛び出した弾丸は彼らの狙い通りの場所に突き進み―――

 

“ペシッ!”

 

“ベシッ!”

 

“ペシペシッ!!”

 

ビアー、レツ、ポンズの持つフォークに刺さったソーセージ(『周』強化)で叩き落された

 

「『・・・・・は?』」

 

柔らかいお肉が音速を超える弾丸を叩き落すというあまりにも非現実的な光景にビアー達以外の思考が止まる。彼女たちは相変わらず食事の真っ最中だったのだ

 

「んぐんぐ・・・(ゴクン)。はい。もうこれで重犯罪成立。ボコボコにされても何も文句は言えないからそのつもりでね。あとゴメンね、お母さん。こういうのってなにもさせないでガラの悪いチンピラって評価のまま警察とかに突き出すと割とすぐに釈放とかされちゃうから、決定的な犯罪のアクションが欲しかったんだ」

 

(念の籠った道具も複数所持してるみたいだし、アジトとかも含めて押収しとかないと一般人には危険だからね。それにしてもお母さん静かだったな)

 

「貴女たちが妙に落ち着いてるから大丈夫だとは思ったけど、こっちは声を出さないように緊張でガチガチだったわよ・・・その・・・ソーセージで銃をアレしたのを見たらどうでもよくなっちゃったけど」

 

多少言葉遣いが平常に戻ってはいないが未だに銃口が自分たちを向いてる今でも危険を感じる事は無いようだった。ある意味混乱したままとも云えるかも知れない

 

「いや可笑しいだろ!なんで弾丸をソーセージで弾けるんだ!!?」

 

「はぁ?そっちこそ何言ってんの?その鉛玉一発何ジェニーよ?こっちのソーセージは一本3万ジェニーよ。敵う訳無いと知りなさいっての!」

 

「市場価格の価値で勝負してる訳じゃねぇんだよ!」

 

ビアーのボケについついツッコミを入れてしまう賊は完全におちょくられている

 

「あれ?ポンズ姉はなんでそんな黄昏たような目をしてるの?」

 

弾丸を弾いてから何時の間にかポンズは遠い目をしていたようだ

 

「・・・いえね。最近私の半年以上のアドバンテージをサクサク追い抜いて行くゴン達とか幻影旅団とかアンタと会長の試合とか超人(バケモノ)に囲まれてたから実感し辛かったけど、私も十分人外になったものだと思ったのよ。なにやってるのよ私?なに普通にソーセージで弾丸叩き落としてんのよ?」

 

「ど・・・どんまい?でもポンズ姉の武器はハムだったじゃん」

 

「今そこツッコまないでくれない?どうでも良いわ」

 

言い返すのも億劫なのかポンズの声には覇気が無い

 

ポンズは間違いなくビアー達の中で身体能力も念能力も基礎は一番低く、成長率も低い。だが積み上げられた鍛錬の密度は常人の修行量を凌駕する

 

念の習得を加味すれば一般人と逸般人の境界線などすでに背後も背後。地平線の彼方に置き去りにするには十分な時間だ

 

ポンズが謎(?)に打ちひしがれている中、逆に立ち直ったのは賊の方であった

 

「そうか!コイツ等も魔道具を持っているんだ。今のはそれらの能力だろう!」

 

※ただの実力

 

「どうせこの後集まって来る連中の包囲網を突破するのにも使うんだ。お前ら!魔道具を使ってサッサと片付けるぞ!」

 

命令を受けた手下が持っていたバッグから次々と念の籠った道具を取り出して周囲の仲間たちに配っていく―――リーダーが受け取ったのは趣味の悪い黄金の仮面だった。額に赤い宝石が輝き口の部分には吸血鬼のような牙が装飾されている。それを顔に装着し、他の手下たちも順次爬虫類のような目玉の付いた紫色の眼帯や目の紋様の装飾された青いツバのある剣やら両端が黒で真ん中がピンクの帯のようなものやらを装備していく

 

「クククク。驚いたか?あのバッグは見た目以上に容量がある上に魔道具の気配も『隠』せるようでな。アレが有ればこのコンパスも自由に使える逸品―――『検知不能拡大バッグ』だ!!」

 

「いやそれハリー・〇ッターで出て来たやつ!『不可〇』を『不能』って言い換えりゃ大丈夫とか思ってんじゃないわよ!!?」

 

「でも普通に便利そうだね。あの『隠』の効果付きの拡張バッグ」

 

「そうね。少なくともアレは没収して私達の物にしましょうか。アンタかビアーが持つのが良いとして、あとはどれだけ容量が有るのかね」

 

「だね。旅の荷物は出来るだけスッキリさせたいから」

 

今まで特にやる気の無かった二人も目の前の便利道具(お宝)狩人(ハンター)の目となる。もう何があっても彼らが逃げられる未来は来ないだろう

 

「さて、あんた達の『お母さん』も一緒な訳だし、手早く終わらせましょ」

 

「強調して言わない!・・・でもポンズ。折角ならポンズも一緒に『お義母さん』って呼ばない?ビアーは当然だから置いておくとして、ボク一人でそう呼ぶのってやっぱり気恥ずかしくってさ」

 

「そんな理由で私まで家族(法的)に引きずり込もうとすんじゃないわよ!」

 

「あら、私は構わないわよ。経済的にも余裕だし、一人も二人も変わらないわ♪」

 

中身ビアー(ユイさん)は黙ってて貰えますか!ややこしくなるから!!」

 

ビアーにユイにリース。同じ話題でテンション爆上がりするのが三人も居るとか諫めたりツッコんだりする立場のポンズからすれば悪夢である

 

「余裕こいてられんのも今の内だぜ。さっさと全員縛り上げてやるヨォ!!」

 

始めに帯を持った男がその片端を持つとムチやリボンのように振るう。すると帯は意思を持ったかのように一番近くに居たレツに向かって素早く伸びて来た

 

自身へと迫る帯を屈んで回避しつつ前に出て相手との距離を詰めようとしたレツだが、避けた帯が後ろから軌道を変えて迫って来るのを気配で感じてその場から離れるように大きく跳躍して躱す。しかしそれでもなお帯は執拗にレツを追いかける

 

「なにこれ!?ずっとボクを追って来るんだけど!」

 

「無駄だ!コイツは対象に『まきつく』まで止まる事はねぇ。大人しくお縄につきな。後でたっぷりと取り調べてやるからよぉ!へっへっへっへ!!」

 

「自分で言うのもあれだけどボクみたいな子供相手にその返しは本当に気持ち悪いよ!」

 

レツが椅子やテーブルを帯にぶつけてみたりステップを踏むようにして小刻みに避けたりしていると紫色の爬虫類のような目玉の付いた眼帯を装備している男が溜息を吐く

 

「馬鹿野郎。そういうちょこまか動く手合いは俺の魔道具の出番だろうが。まぁいい。邪魔されねぇようにこっちを動けなくしたらソイツも俺がやってやるよ。代わりにこの後のお愉しみはお前より俺が先だからな」

 

男はビアーとユイを視界に納めると気合を『発』する

 

「いくぜ!お前らはもう動けねぇ。ヘビに睨まれたカエルみてぇにな―――『へびにらみ』!」

 

男の眼力がビアーとユイの二人の姿を射抜き、二人はその場でピクリとも動かなくなる

 

「どうだ驚いたか?突然全身が『まひ』しちまった感想はよ?『こんらん』しちまって声すら出せねぇか?多少面倒だが担いで連れてってやるさ」

 

既に勝ち誇った笑みを浮かべる男だが、その横合いから本来あり得ないはずの声が男の耳を打つ

 

「ねぇビアー。あの人はなんで何も無い所(・・・・・)に話し掛けてるの?あといきなり移動しててビックリしたのだけど」

 

「今のはただの『こうそくいどう』を応用した『かげぶんしん』ってやつかな。残像って言えば分かる?忍忍♪」

 

人差し指と中指を立てて手の平を合わせるポピュラーな手印を結んで楽し気に笑う娘を見てユイはただただ状況に納得した・・・うっすらと背景に宇宙猫が浮かんではいたが、娘相手にキレる訳にもいかないなら受け入れるより他にないのだ

 

「それって確かジャポニーズNINJAだったかしら?あんたハンターだったんじゃなかったの?何時の間に転職したのよ?」

 

「私の職業履歴にはプロハンター以外の項目は無いよ。細かい事は気にしない!」

 

緊張感の無い親子の会話を唖然としたまま聞いていた男だがようやく脳の処理が正常に向かう事で逆に蜃気楼のように消えていくビアー達の人影から目を離せず、たっぷり数秒掛けてから油を注してないロボットのように声の聞こえてきた方向に振り向いた

 

三人の視線が交ざり合い、僅かな沈黙の後で再び男が眼力を籠めようとしたが、それよりも早く男の天地がひっくり返って後頭部から地面に落された

 

ビアーが攻撃の“意”の前兆とも云える微かな気配のゆらぎを感じ取って一瞬で近づき、素早く足払いを掛けるのと同時に首元を押して柔術の要領で“クルリ”と半回転させたのだ

 

男が突如として頭に奔った衝撃に目を白黒させている間にその決して趣味が良いとは言えないデザインの眼帯を奪ったビアーは戦利品であるソレをマジマジと見つめる

 

「う~ん。中二チックに言うなら【金縛りの魔眼】ってところかしら?それか邪悪そうな見た目だし邪眼?蛇って言ってたし蛇眼?あとは蛇関連なら【石化の魔眼(キュベレイ)】・・・上等過ぎるわね―――流石に非念能力者(いっぱんじん)くらいにしか瞬時には効かなそうだけど、刑務所の囚人とか動物病院で暴れる動物を大人しくさせるとか使い道はそれなりに有りそうね。まぁ病院の先生がこんな眼帯してたら嫌だけど、今度チードルさんかミザイストムさんと出会った時にでも売りつけ先の相談でもしようかな。私だと覇王色モドキ使えるから要らないしね。それかレツにプレゼントする?一応これも“目”だし、ワンチャン喜んでくれるかも?」

 

ビアーは掲げた眼帯を目の前でプラプラと揺らす。こんなのを貰って喜ぶ女子は普通居ない

 

「ないよ!ボクが“目”なら何でも良いような節操無しだったら今頃兄さんと一緒に“緋の目”(とそれ以外のレアな目)でも求めて三千里してたよ!」

 

迫りくる帯をサイドステップで避けながらも案の定というべきかレツのツッコミが飛ぶ。他所の会話に耳を傾けられる程度には余裕な証拠だ

 

そんな周囲の戦況を軽く見渡していたポンズは目の前の残る二人の賊に向き直る

 

「さて、私の相手は金仮面のあなた?それとも荷物持ちの後ろの奴かしら?別々でも同時でも構わないけど安心しなさい。ビアー(あの子)の故郷であんまり酷い流血沙汰にはしないわ。精一杯手加減して上げるわね」

 

あからさまな挑発を受けた賊のリーダーだが彼もまた余裕の様を崩さない。よほど自身の着けた金仮面に自信が有るのだろう

 

「キキキキキッ!確かにお前たちは見た目からは想像も出来ない程に動けるようだ。自身も含めた味方の身体能力を底上げする類の魔道具か?」

 

※ただの筋力です

 

「だが幻覚だろうが身体強化だろうが空間を埋め尽くす攻撃には対処できまい。一つ良い言葉を教えてやろう―――『戦いは数なのだよ!』」

 

「ぃよっ!兄貴~!(あったま)良い~♪」

 

カバン持ちの男が合いの手を入れ、ついでに鞄から取り出したのであろうピーヒャラ笛(パーティーグッズ)で何処か抜けた音を奏でる。荷物持ちな上に(はや)し立て要員である彼は一味の中では一番の新米であったりするが、如何でも良い話である

 

しかしそんな如何でもいい話とは裏腹に如何でもよくない事態は近づきつつあった

 

街の特定の方角が(にわ)かに騒つき始め、その喧噪(けんそう)が徐々にポンズ達の居る場所へと迫って来ていたのだ―――その方角に居る人々に目を向ければその多くが空を覆う黒い影を指差している様子が見れたであろう

 

その正体は夜を支配する闇の王たる吸血鬼の忠実なる下僕であるコウモリの群れ

 

コウモリ限定で彼らの主となれるのが金仮面の能力なのだ

 

彼らの集めた道具の中でも破格の性能を持つその仮面に幾度も世話になって来た賊たちは故にこそ己達の最終的な勝利を疑わない

 

地元の武装した警察などとぶつかった事も当然あったが、彼らは犯罪者や暴徒相手の訓練はしていても空を覆う無数のコウモリの相手など当然想定していない。大抵は逆にパニックとなって隊列も命令も崩れてしまい、その間に賊たちは悠々と逃げ(おお)せて来たのだ

 

物量に加えて制空権。この二つが揃った脅威の軍団はしかして今回ばかりは相手が悪かったのだと云えるだろう

 

ポンズが被っていた帽子を逆さまに取り外して指で数度弾くと噴火のような勢いで大量の痺れ槍蜂(シビレヤリバチ)が帽子の被り口から飛び出してくる

 

念を知らなかった時にも帽子の中に蜂を飼って自衛の手段としてはいたが、帽子の中に倉庫レベルの念の空間を創り出せる今のポンズが使役する蜂の総数は桁違いに跳ね上がっているのだ

 

数で勝ろうと体格では大きく劣るポンズの飼っている蜂達(アリスタは例外)だが、ただ操られているコウモリとポンズのオーラという頑強な装甲を身に纏った蜂では真正面からの『たいあたり』ですら性能の差が浮き彫りになってしまう

 

そこから繰り広げられるのは軽自動車が大型ダンプを撥ね飛ばすが如き理不尽な光景

 

痺れ槍蜂(シビレヤリバチ)たちは己が武器である『どくばり』どころか牙による『かみつく』すらも使う必要はないとばかりに極めて原始的かつ単純な戦法で戦果を挙げていき、ポンズと賊二人の近くに“ボトボト”とコウモリという名の黒い雨が降り積もる

 

後で片付けが楽なように出来るだけ一か所に落ちるように調整までされている舐められ具合だ

 

「悪いわね。量でも質でもこっちの方が上なのよ。レベル違いだから出直していらっしゃい。もっともまた私達の邪魔をしたらかなり痛い目を見てもらうでしょうから、刑期を終えたら慎ましく目立たず生きる事をお勧めするわ」

 

賊のリーダー?強力な道具?そんなもの経験不足を差し引いても既にプロハンターの中でも中堅クラスだと太鼓判を押せるポンズの前では誤差もいい所だ

 

「クソったれが!何なんだ?何なんだよ、お前らはよォオオオオ!!?」

 

仮面で表情こそ見えないものの全身で激昂してる様が判る男だが、それも無理からぬことだ

 

念の存在は基本的にトップシークレットであり、低レベル帯のものであっても表の人間が出会う機会などほぼ無い

 

天空闘技場など一部の例外こそ有るが、そこの観客たちも具現化した者などは除きオーラそのものが見えている訳でも無い

 

念の籠った道具を扱おうとも彼らにとって念は未知の存在のままなのだ。もしも彼らが判らない力を分からないままにせずにおけば、念を習得してビアー達を見た時に何もせず逃げる選択肢も取れたかも知れない。何せ彼らは幾度も念の籠った道具を扱ってる影響で常人よりは精孔(しょうこう)が開き掛けている半覚醒の状態なのだから

 

だが彼らはそのIF(もしも)を選ばなかった。それだけの話なのだ

 

「さて、私達には敵わないことは十分に理解できたでしょ。大人しくその仮面を外して地面にうつ伏せになって捕まる事ね。でないと痺れ槍蜂(この子達)が一斉にあんたの全身に針を突き立てるわよ。ああ、解毒薬は有るから安心しなさい。死ぬほど痛くて運が悪ければ死ぬ程度の話よ」

 

ポンズの周囲でホバリングする大量の蜂の群れに襲われたなら解毒薬でも解毒しきれない量の毒を流し込まれるのではないか?それ以前に兎に角痛そうだ。そんな恐怖心が賊のリーダーの頭に(よぎ)

 

コウモリを操る仮面も肝心のコウモリが全ロスした今となってはただの頑丈なだけの仮面だ。仮に抵抗すれば顔面以外の全身が腫れあがる悲惨な末路を辿るだろう

 

打つ手なし。賊とは云えリーダーの彼には敗北を理解する頭は有ったようで身体から力が抜ける

 

しかし賊のリーダーは敗北を受け入れながらも武装解除(仮面を外す)ことはせずにむしろ両手を前に突き出してポンズに制止を懇願する

 

「い、いや、待ってくれ!外せない。この仮面は一度使うと外すのに条件がいるんだ!」

 

敗北を認めた上で蜂に刺されたりしたら(たま)らないと早口に説明する。信じて貰えなければ全身が逆ハリネズミになってしまうので声が必死さで震えている

 

「ふ~ん。確かにかなりの範囲に能力が届いてたみたいだし、装着者のオーラも消費してないなら何かしらの制約か誓約は必要でしょうね」

 

何らかのリスクが有る事に理解を示しつつポンズは一般人(あいて)が反応しきれない程度の速さで近づくと賊の仮面の端に手を掛けて引っぺがそうと力を込める

 

「イダダダダダダ!?顔が剥がれる!剥がれるゥウウウ!!?」

 

手加減こそしていても容赦は無い力の籠め具合に賊の額の辺りから“ビリッ!”と小さく、しかし決して無視できない音が響く

 

「ほぅわぁあああ!!?無理無理無理無理無理!剥がれる!マジで剥がれちまうゥウウウ!!」

 

賊の被る仮面の端の額付近から血が一筋垂れたのを見たポンズは仮面から手を放す。いきなり解放された賊は引けていた腰の反動で後ろに吹っ飛ぶようにして尻餅をついてそのままの姿勢で“カサカサ”とポンズから距離を取った

 

「どうやら本当に外れないみたいね。もしも嘘だったら両手の指の爪と肉の間に痺れ槍蜂(この子達)の針を刺し込むところだったわ。正直者な自分に感謝しときなさい」

 

「全身刺されるって言われた時よりも背筋に悪寒が奔ったぞ!なんだその妙に具体的で生々しい痛みを想像可能なぶっ刺し宣言はよ!」

 

(わめ)くんじゃないわよ、(やかま)しいわね。そもそも犯罪者に人権なんて有る訳無いじゃない」

 

「犯罪者にだって人権くらい有るわ!無かったら弁護士すら呼べないじゃねぇか!」

 

「驚いたわね。まさか発言の自由が残ってると思ってるだなんて」

 

「お前の中の犯罪者下げはどこまで行くんだよ!?」

 

ビアーと旅をする中で彼女の広大な『円』により山賊を始めとした犯罪者と沢山出会って来たポンズは少し彼らに対する扱いがぞんざいとなっているようだ

 

この世界で人権を法的に保障されてないのは流星街の住民くらいである。もっとも彼らは自分たちが不当に扱われる事に対して関係者全員一人一殺笑顔で自爆(最高にイカれた報復)をする事で“暗黙の了解(人権のようなもの)”は最低限持っていると云えるが・・・

 

ポンズは尻餅を突いた状態の賊の前にしゃがみ込むと仮面越しに賊の目を覗き込む。僅かながらも敵意を意図して織り交ぜたオーラは相手の心から余裕を奪う

 

ちょっとした尋問や反抗心を折る程度ならただの『練』でも十分な効果を期待出来るのだ

 

「弁護士を呼ぶ自由を残して欲しいならこの先もその調子で続けなさい。結局その仮面はどうやったら外せるのかしら?」

 

「新月の夜だ。その時になるとコイツは自然と外れるしコウモリだって喚べなくなるんだよ。初めてと二回目にコイツを使った時にはまだ外し方が全く分かってなくて仮面の隙間から無理やり差し込んだストローで何とか流動食を(すす)る事で命を繋なぐハメになったんだ・・・グスン 」

 

もしかしたらこの先一生仮面を外せずに生きていくハメになるかもと恐怖したかつての記憶が蘇ったのか嗚咽(おえつ)を漏らす賊のリーダーは見えない仮面の下で確かに涙を流していた

 

完全密着のゴテゴテの仮面に隙間?・・・仮面の鼻の部分の通気孔から食道へと通じる道が人間には二つ在るのだ

 

賊のリーダーはその頃鼻から食事する一発芸を持った売れない芸人になる夢を繰り返し見たらしいが、仮面の誓約(呪い)は全く関係なかったりする。単に彼の心が弱っていたのだ

 

「後半は聞いてないし泣いてんじゃないわよ・・・能力的にはモロにバンパイアを意識してるわね。他にはニンニクでもぶつけてやれば外れたりするかしら?ってそれだと制約として弱すぎるか。まぁでも新月って確か今夜だったわね。あんた達も大胆な犯行に及ぶ時は直ぐに外せる(そういう)日を選んでる訳か。一応信憑性は高そうね」

 

 

“―――ズガンッ!!―――”

 

 

顎に軽く指を添えて思案顔をしていたポンズの背後から突如として銃声が鳴り響いた

 

荷物持ちの下っ端が自分に背中を向けるポンズの姿を好機と見たのか先刻彼女たちにソーセージで弾かれたものより口径の大きな銃をバックから引き抜いて彼女の後頭部へと狙いを定め、そのまま引き金を引いたのだ

 

「ほんぎゃあああああああ!!?」

 

当然そんな殺気まる出しの一撃などポンズは視ずとも頭の位置をズラすだけで容易に回避する。仮に念を知らない頃の彼女でも対処は難しくなかっただろう

 

そうしてターゲット(ポンズ)の頭の位置を素通りしてしまった銃弾は当然そのまま慣性に従って真っ直ぐに大気を切り裂いて突き進み、賊のリーダーの仮面の額に在る紅い宝石にクリーンヒットしたのだ

 

威力の高い弾丸をいきなり受けた事で賊のリーダーの頭が勢いよく仰け反る。下手をすれば首の骨がイカれていたし、仮面が無ければ一発確定であの世行きだったであろう

 

「おまっ!お前なに―――「なにを弱腰になってる(芋引いてる)んスか兄貴!!」」

 

叱責する言葉を遮るように下っ端が叫ぶ。明らかに状況を正しく認識していない目をしていた

 

素人が背後からなら銃が当たると思うのは仕方ないとしても、軽く避けられた時点で彼も敗北を受け入れるべきだったのだ・・・もっと言えば上が諦めた時点で諦めるべきではあるが

 

「捕まえられないならコイツ等殺して身を隠す(ガラをかわす)しかないでしょ!ほら兄貴もさっさとこの回転式拳銃(レンコン)構えて弾丸(マメ)を撃ち込むんだよ!テメェも逃げても無駄だぜ。こちとら回転式拳銃(レンコン)だけじゃなく手榴弾(パイナップル)も大量に仕入れてんだ。そんな蜂どもなんざ幾らでも吹き飛ばせるんだからな!」

 

彼は銃を片手で持って空いてる方の手でバックからもう一丁の殺傷力重視の拳銃を取り出すと兄貴分へと投げつける―――兄貴と呼びつつリスペクト精神の欠片も見受けられない

 

「ねぇ。あんたの手下馬鹿なの?あとヤクザ(マフィア)の業界用語使いすぎでしょ。同業ならまだしもパイナップルとか言っても大半の相手には伝わらないわよ」

 

「本人は裏で取引とかする時に舐められないように勉強中とか言ってたな。あと多分だがアイツは俺たちの下でこき使われてるだけでまだ大して美味しい思いをした経験が少ねぇからここでの敗北を受け入れたくねぇんだろう。アイツ以外の俺たちは今までタップリ愉しんで来たからなぁ。キキキキキ♪」

 

何を思い出しているのかねっちょりとした下卑た笑みを仮面の下で浮かべている賊のリーダーは一転して低い声となる

 

「だが馬鹿でもアホでも納得いかなくても裏稼業の俺たちの中で上下関係を蔑ろにしたんだ。豚箱の中では今まで以上に可愛がってやらねぇとな。毎日ブヒブヒ啼かせてやるぜ」

 

「あらそう?まぁ好きにすると良いわ」

 

半面ポンズは興味無さ気だ。不快感は有るが私怨は無いし、捕まえたのなら後は警察などの仕事だ。さっさと引き渡して忘れるに限る

 

ポンズが下っ端に向き直って無機質な目を向けると彼は銃を構えたまま後退る。どれだけイキっていてもやはり色々素人なのだ

 

「な、なんだ?回転式拳銃(レンコン)くらい怖くないってハッタリか?い、いいぜ。そこまで馬鹿にするなら闇市で掘りだしたとっておきのスーパーレンコンをぶち込んでやるからよォ!」

 

下っ端が泡を飛ばしながらバックの奥に手を突っ込んで何かを取り出そうとするが、かなりの重量が有るのか片手では中々引き出せないようだ

 

「スーパーレンコンってそんな隠語無いし、アホの子っぷりが駄々洩れてるわね。なにが出て来るかは大体想像できるけど・・・」

 

ポンズが残念過ぎるネーミングセンスに思わず半目となっている内になんとか男は目当ての得物を引っ張り出す。出て来たのは回転式多銃身機関銃(ガトリングガン)携帯(ミニマム)版であるミニガンだ

 

大口径の弾丸を撃ち出す六つの銃身を束ねた殺意の黒筒。こと対人においては最高峰の火力と評しても良いだろう。人間を殺すのに対戦車バズーカなど(普通は)要らないのだ

 

「どぉぉおおおだぁあああ!まさかミニガン(こいつ)を避けれるとも防げるとも言わねぇよなぁ!そんな奴が居るとしたらただの化け物だぁあああ!!」

 

一瞬遠くにいたビアーがイラついたように目元がヒクついたが、彼女はポンズに任せるようにしたようだ。ポンズに見えるように首を掻っ切るジェスチャー付きではあったが・・・

 

「全くあの子は・・・確かに私だと避けるのは兎も角防ぐのは難しそうね。私もそこまで人間辞めてないし」

 

「いや避けられはすんのかよ」

 

「あれだけ取り回し辛そうにしていれば避けるのはそこまで難しくないわよ」

 

賊のリーダーからのツッコミをサラリと受け流して淡々と状況を分析する

 

むしろ今一番危ないのはポンズの近くで座り込んでいるままの賊のリーダーの方だろう

 

「舐めんなよ!だったら今から試してやるぜ!!」

 

下っ端がミニガンを構え直すが、撃てば乱射の反動に耐えられず照準がブレまくってハチの巣になること間違いなしだ。現に今もプルプルと腕が震えている

 

「待て待て待て待て、撃つな。絶対撃つなよ!フリじゃないからな!!」

 

今の下っ端なら本当に引き金を引きかねないとリーダーは心底焦って制止を促す

 

「兄貴!ここで俺がメッチャ活躍すればこれからは兄貴の次に偉いのは俺って事でOKっスよね!」

 

「仮にこの場から逃げられたとしてもお前をNo.2に据える事なんざ天地がひっくり返っても有り得ねぇよバカ野郎!」

 

「そんな!?なんでなんスか兄貴!!」

 

「お前がバカだから以外に理由なんざ要るかァア!!」

 

「バカって言う方がバカなんスよ、バカァアアアアア!!」

 

下っ端が凄まじく低レベルな返しをする中で彼の手元から微かに“カチリ”と金属音が鳴る。どうやら叫ぶのと同時に指にも力が入ってしまったようだ

 

 

“ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルル!!!!”

 

 

連続した重低音が空間を蹂躙し、ミニガンの銃身から大量の弾丸が吐き出されて下っ端の足元には排出された薬莢(やっきょう)が銃撃音とは逆に甲高い音を響かせて床を跳ねる

 

オーラ量はまだしも肉体強化に不向きな操作系かつ基礎体力(筋力)も仲間内ではまだ低いポンズでは耐えきれるものではない

 

「何やってんのよ!」

 

先程ポンズも言っていたが、ビアーの故郷(こんなところ)で人死にを出すつもりの無いポンズは咄嗟に隣の賊のリーダーを蹴り飛ばす(助ける)―――手加減(優しく)する余裕は流石に無かったようだ

 

“ボキッ!!”

 

「ぐぁああああああああああああ!!?」

 

何かが折れたような音を響かせながらも死地から逃れた男はテラスの柵を超えて数回バウンドし、道路の真ん中でやっと止まった。騒ぎのお蔭で車なども通ってないので轢かれる事も無いだろう

 

因みにポンズが賊を蹴る時はその箇所だけただの『纏』にまでオーラを抑えているので下手に念に目覚めたりもしない。というか念を籠めて蹴っていたら今頃道路には色々と(・・・)散乱していただろう

 

だが敏捷性に優れたゴンやキルアや存在が最早バグになり掛けてるビアーと違ってポンズにとっては強力な銃弾が迫る中での人助けは彼女から無傷という選択肢を奪った

 

無論彼女も直ぐにその場から離れたが腕や足に擦過傷が出来、特に賊を蹴った方の足はオーラのガードが完全には間に合わなかったので太めのナイフで切りつけられる程度のダメージを受けてしまったのだ・・・それで済む辺り十分彼女も人間を辞めているとは言ってはいけない

 

しかし忘れてはいけない。この場にはそんなポンズがやっぱり一般人だったと誤認するだけのバグ的な存在が複数居るのだと

 

攻撃を避ける為に跳躍したポンズが地面に着く前に二つの影がポンズの横を通り過ぎる

 

一人はレツで追尾型帯の検証の為にチマチマ闘っていた相手を近くの椅子を投げつけて倒し、一瞬で人形のマチを『人形受胎(ドールキャッチャー)』で憑依させてポンズの足に出来た深めの傷を縫い合わせる。辻斬りならぬ辻縫いだ・・・恐ろしく速い縫合。中堅以上のフロアマスタークラスじゃないと見逃しちまうね

 

もう一つの影は当然ビアーであり、ポンズの身体に出来た傷の全てに素早くかつ繊細に消毒液を吹き付けて清潔な布で優しく拭い、朱いスズラン加工の傷薬を染み込ませたガーゼで処置をしていく

・・・恐ろしく速い治療。幻影旅団クラスじゃないと見逃しちまうね

 

怪我をしたと思った次の瞬間にはコマ送りのように治療が完了したポンズは着地と同時にまたもや半目となって振り返る

 

「ビアーはまだしもレツまで一緒になにやってるのよ?」

 

ポンズもビアーのよく分からない暴走は何時もの事と流すところだが、レツまで似たような行動をするとは思っていなかったようだ

 

「いやぁ、だってこうでもして怒りを治めないとビアーがユイさんの前なのも忘れてスプラッタ映画のワンシーンを再現し兼ねないと思ってさ」

 

「ああ、成程、確かにね・・・でもスプラッタまで行かなくてもそろそろ止めた方が良いわよ」

 

ポンズが“ツイッ”と視線を送り、レツもまた同じ方向を向くと下っ端の首を片手で“ギリギリ”と締め上げてもう片方の手でひたすら腹パンをキメるビアーが居た

 

「私は!お前が!謝る!まで!殴るのを!止めない!!」

 

つい先程まで下っ端の相手はポンズに任せるかと思っていたのは何処へやら

 

既にミニガンはただの鉄クズと成り果てて下っ端も物言わぬ肉塊に成り掛けている

 

「うわぁ・・・首絞めながら言うセリフじゃないでしょ。あれじゃ声出ないよ」

 

「ええ、それとアイツも不自然な痙攣を繰り返してるし、多分無駄に繊細な指の力加減で血反吐も塞き止めてるわね。普通に地獄だと思うわよ、アレ」

 

「ああ、スプラッタを力業で捻じ伏せてるんだ」

 

降参したくとも出せない声。津波の如く押し寄せる連続した嘔吐感。微かな生理反応の隙間を縫って何故か可能となる苦しい呼吸

 

気絶すらも赦されない責め苦に下っ端の心は既に砂塵と化していた

 

「全く、ビアーが出しゃばるから痺れ槍蜂(あの子達)の出番が無くなっちゃったじゃない」

 

報復(はんげき)する気は満々だったんだ・・・でもああして殴られるのと全身を注射針みたいな毒針でめった刺しにされるのとどっちがマシかなぁ?」

 

「さぁね。少なくとも私はどっちも御免だわ。って、無駄な会話してないで取り敢えずはビアーを止めましょ。あの男ビアーに殴られる度に顔が赤だったり青だったり土気色だったりと見事に点滅してるから」

 

ポンズが言うように最早下っ端は内臓も脳も神経も正常に機能してないのかあらゆる方向に筋肉が引き攣り、下手なホラーよりもホラーな挙動を繰り返す有様となっている

 

生きたまま鉄板で焼かれる魚ですら今の下っ端よりよっぽど正常で生き生きとしているだろう

 

その後レツとポンズはなんとかビアーの凶行を止めて倒した賊たちをロープで縛り上げる事とした

 

「あ~あ、結構色々転がっちゃってるね。この翼っぽいデザインの付いた杖とかどんな効力が有ったんだろ?」

 

「仕方ないでしょ。私じゃああするしか無かったのよ。アレじゃない?振れば魔法でも使えるんでしょ」

 

「絶対テキトー言ってるよね。確かに魔法のステッキみたいだけどさ」

 

※ 振れば火炎放射的な魔法(?)を放てるステッキ。ただし魔法は尻から出る

 

「振ったりするのは止めておきなさい。持ち主のオーラで効果が増減されるタイプだったらあんたやビアーは下手に振らない方が良いわ。私ですら危ういんだからね」

 

「え?・・・うん。そうだね。止めておくよ」

 

ちょっとノリで杖を振りかけていたレツは大人しく手を下ろした

 

後に賊から訊き出した杖の性能を訊いたレツは顔を青くしたり赤くしたりしていたらしい

 

なお、持ち主のオーラによる威力の増減の検証は誰もしなかったようだ。と云うかその場でビアーが杖を破壊した

 

「あら、あのコンパスもこんな場所に落ちてたのね」

 

ポンズが『凝』で周囲を見渡しながら歩いていると死角となっていた場所に賊のリーダーが彼女たちに最初に見せて来た羅針盤のような道具を見つけたので近づいて拾うとその針はポンズに向かって強い反応を示す

 

「ひょっとしてこういう事かしら?」

 

ポンズは帽子の中から神字で加工を施した小道具を取り出して羅針盤と接触させるも針の向きは一定で変化する事は無く、続いてその日は彼女の腰のポーチに入っていたルルの本体の毛皮を接触させると今度は針が狂ったように“グルグル”と廻りだした

 

「成程ね。コレは死者の念関連のモノを感知してるんでしょう。レツにも反応してたのはレツのお兄さんから念を継承してるせいかしら?」

 

「あ・・・うん、そうかもね」

 

(と云うかボクの身体ってある意味一から十まで死者の念の塊みたいなものだからね。今にして思えばボクってもしかして除念師が天敵?除念で成仏させられちゃうのかな?)

 

仮にレツに除念が効くとして、最低でも幻影旅団クラスの才能を持つ除念師は必要であろう。確実に祓おうとするなら“今後の人生全て投げ打つ(もうこれで終わってもいい)”ブーストが必要だ

 

「これも如何使うのが正解かしらね?ヨークシンのオークション市とか展示されてる物なら念使いなら直接見た方が早いし、他人の家の中に反応する物が有ったとしても押し入る訳にもいかないし、遺跡とかで使うのが一番無難かしら?―――レツはどう思う?」

 

ポンズは眺めていたコンパスをレツへと放る。アンティーク調の精緻なデザインのソレはレツのような芸術家肌の人間ならよく見てみたいだろうと思ったからだ

 

「あ、うん、ボクは―――」

 

“ボンッ!!”

 

セリフの途中でコンパスをキャッチしたレツだったが、コンパスはレツに触れた瞬間に先程【金羊の皮(アルゴンコイン)】に反応したものよりも過剰に反応を示し、1秒と経たずに爆発したのだ

 

今はバネでオモチャが飛び出してくるビックリ箱のように辛うじて残っていた針の部分がバネの中心で“ビヨンビヨン”と揺れている。念の道具というのも抜きにしても修復は不可能だろう

 

「・・・・・ボクは壊せば良いと思うって?まぁ今回みたいに変な奴らに渡っても嫌なのは解るけど、判断が早いわね」

 

「違うよ!?今のはボクの意思じゃないからね!!?」

 

「さっすがレツ♪まさかリアルで『ボク何かやっちゃいました?』シチュを披露してくれるだなんて!やっぱりレツは色々持ってるわね。実は何処かの主人公やヒロインだったりしない?」

 

※劇場版ヒロイン

 

「あ、ビアー。そっちはもう全員縛り上げたんだ」

 

「無視は酷い!・・・けどそうね。そっちも全部拾ったなら後は警察にでもアイツ等突き出してアイツ等が隠してるだろう念具も頂いて終了かな」

 

「だね。パトカーのサイレンも大分近づいてるし、丁度良かったや」

 

「なら私はさっさと【ゾン・ビー】で盗れる情報は引き抜いておくわね」

 

「うん。お願いするね。ポンズ姉」

 

ポンズが手早く必要な情報を絞り出している内に賊たちの持っていた荷物を収納バッグごと回収し、ビアーは後から駆けつけて来た街の警察にハンターライセンスパワーで事情聴取などの面倒ごとを回避(最低限の説明はした)すると野次馬たちが集まって来る前にその場を後にした

 

 

 

賊たちと闘り合ったお店から皆で離れて喧騒も聞こえなくなった頃、お母さんが悩まし気な顔をしていたのに気が付いた私は如何したのかと訊ねてみた

 

「あのお店は今後大丈夫かと思ったのよね。お父さんの給料だと頻繁に通う訳にはいかないけど、とっても美味しかったから偶の贅沢には最適かと思ってたから・・・」

 

お母さんもお店の味はかなり気に入ったようだ

 

う~ん。お金が有り余ってる身としては何時まで経ってもこの手の話題は反応し辛いわね

 

まぁ子供に無制限に(たか)る毒親でなくて良かったと思うべきか・・・

 

「一応お店には修繕費兼休業分の代金として500万ジェニーは小切手で渡しておいたから何とかなるんじゃない?丁度店長さんが居たし」

 

他にも保険とかも入ってるだろうし、実質被害は柵とかテーブルとかが幾つか壊れた程度だから直ぐに手配すればそう遠くない内にお店は再開できるはずだ

 

一応被害ゼロで瞬殺(殺しはしない)する事も出来た訳だからこちらの落ち度も含めた迷惑代も込みで支払っている・・・支払い義務とかは無いけどね。お母さんじゃないけど、美味しいお店は潰れて欲しくはないからさ

 

少なくとも資金面での援助をしたと聴いたお母さんも“多分大丈夫だろう”と安心してくれたみたいだ。店長さんも私への感謝に偽りは感じなかったからお金の持ち逃げとかも無いでしょうしね

 

「500万の小切手って、そんなのまで持ってるなんてプロハンターは違うわね」

 

「まぁね。正確には白紙の小切手だけど」

 

今回みたいに咄嗟(とっさ)にそこそこの金額を動かす時なんかは小切手の方が便利だったりする時も有るのよね。特に嵩張る物でも無いから一応私も持ってはいるのだ

 

「・・・プロハンターは違うわねぇ」

 

「ユイさん。普通のハンターライセンスだと白紙の小切手までは発券してもらえませんからね。確かに許可は下り易くはなりますけど、ライセンスだけで許可を下ろせるのは一ツ星(シングル)以上のハンターだけです」

 

確かにポンズ姉の言う通りで白紙の小切手は私が一つ星(シングル)となった時に得たライセンスの追加機能だ。まぁ称号無しの大半のプロハンターが白紙の小切手を扱いきれるかと問われればNoと答えるから妥当だと思う

 

一ツ星(シングル)以上のハンターなら最悪でもライセンスを売っ払えば金は工面できるからね

 

え?私のノーマルのライセンスは如何したのかって?アレはもう役目を終えてただの板切れになってるわよ。協会側がアクセスコードを書き換えれば完全に使用不可だしね

 

嵩張る訳でもないから一応記念に持ってはいるけどね。使わないなら実家の自分の部屋の引き出しにでも仕舞っておいても良いんだけど、万が一が有っても嫌だから止めておいた。物探しに長けた念能力者がライセンスを狙う可能性とかも考えると家には置いとけない・・・今度三ツ星(トリプル)のライセンスを手にしたら抱き合わせでオークションにでも売っちゃうのも手かもね

 

元々ハンター協会の方針がライセンスの完全なる自己管理(再発行無し)だし、使えるライセンスカードが何枚もあるなんて甘い話は無いみたい

 

もっとも例えジンさんのようにライセンスを手元に持って無くても星持ちハンターならいざとなれば普通に身分証明さえすれば幾らでも権力を行使できると云っても過言じゃないのよね

 

特にハンターって専門職が多いし、その道の人達からの覚えは自然と良くなる。私もさっき警察の代表が「ご協力感謝いたします。ホイヘンス様!」とか言ってさり気に握手求めて来たし、応じて上げて離れたら後ろから「警部補だけズルいですよ」「そーだ、そーだ!」「ええい、さっさと仕事に戻れ!」とか部下たちに羨ましがられる一幕も展開されてたから私の知名度もかなり上がって来たみたいだ。私はこれといってメディア系への承認欲求とかは大して無いからエゴサとかもしてないんだけどね

 

※致命的

 

「そう言えばポンズ姉。このバッグには他にどんな秘密道具入ってたの?アイツ等から一通りは訊いたんでしょ?」

 

「あ、それボクも気になる。さっきのステッキとかどんな効果だったのかな?」

 

「ステッキって云うとコレのこと?」

 

検知不能拡大バッグは私が持っていたので中をまさぐってレツが言っているのであろう水色の翼なデザインをした片手で振るのに丁度いいサイズの杖を取り出す

 

「ああ・・・それは振るとお尻(の辺り)から火炎放射が出る―――“バギィッ!!”」

 

おっといけない。何故かステッキを持つ手に力が入ってしまって肝心のステッキが真っ二つになってしまった。しかし問題は無いわね。こんな色んな意味で使えねぇ杖なんてこの世から消えてしまうべきだ・・・誰ですかコレを具現化してあまつさえこの世に留めるだけの何らかの思い入れを籠めたバカは!!?

 

一応続きの有ったポンズ姉の説明によると単純に背後を盗られた時とか逃走中に殿(しんがり)(つと)める奴が使って炎上網を敷いて追跡を撒くとかって用途で使われてたみたい

 

“ただし魔法(念)は尻から出る”って制約と誓約は中々に威力を底上げしてそうなのがまた・・・もう壊したけどね

 

「じゃあこの出来の悪いパピヨンマスクみたいなのは?」

 

次に取り出したのは紫色をした小学生の描いた絵みたいな蝶の形をしたマスクだ。直接的な戦闘力が有るようには見えないけど、どんなものかな?

 

「それは着けると注目度が上がるマスクだそうよ。相手の視界に入っていれば如何しても気になっちゃうんだって」

 

「そりゃ変なマスク(こんなの)着けてりゃね!」

 

マスクに付随した念の効果なのか単に変なデザインの効果なのか判断が難しいよ!次だ次!!

 

マスクをバッグに戻して次に取り出したのは打ち出の小槌みたいな道具だ。振れば振る程にお金でも湧き出て来るのか対象を大きくさせるような効果が有るのか、はたまたこの小槌自体が大きくなる純粋な武器なのか、夢が広がるね

 

「貸しなさい、ビアー」

 

私が少しワクワクしてるとポンズ姉が実演してくれるみたいなので素直に小槌を渡すとソレを手に取った彼女はそのまま私の頭に振り下ろして来た

 

“ピコン!”

 

・・・全くダメージを感じなかった上に何その気の抜ける音?

 

予想外の効果音に反応に困っているとポンズ姉は連続して私の頭に小槌を振り下ろす

 

“ぴよぴよ♪”

 

“ズガーン!!”

 

“バリバリバリバリ!”

 

“ピーポーピーポー!”

 

“私の”

 

“戦闘力は”

 

“53万です”

 

叩かれた僅かな衝撃すらも感じない代わりに小槌が私の頭にヒットする度に色んな音が鳴り響く。てか最後に宇宙帝王も居なかった?そういうのもアリなのか

 

「聞いての通りに叩くと持ち主の思った通りの音が出せるみたいね。一度に流せる音の長さには制限が有るみたいだけど」

 

般若心経(はんにゃしんきょう)を暗記してても一発で詠唱させる事は出来ないって事ね

 

「これも使い方によっては逃亡の手段として役に立ちそうだね。ねぇ、コレはボクが貰っても良い?人形劇で場を盛り上げる効果音として丁度良さそうだしさ」

 

「モチロン。じゃあコレはレツの物って事で良いよね?ポンズ姉」

 

「ええ、私も否は無いわ。上手く使いなさい」

 

「うん♪有難う、二人とも!」

 

あ~♪レツの輝く笑顔に心がポヤポヤするんじゃ~♡これだけでアイツ等を倒した甲斐も有ったってもんよ

 

「じゃあこの擦れば三回ほど何でも願いを叶えてくれる魔人が飛び出て来そうなランプは?」

 

お次に取り出したのはディ〇ニーのア〇ジンに登場する魔法のランプみたいな道具だ。グリードアイランドにも1000の願いの中からランダムで3つ叶えてくれるNo.15『きまぐれ魔人』なんてのが在ったけど、流石にそんな破格の性能はしてないでしょうね

 

「それは普通にランプはランプよ」

 

ありゃりゃ?アンティークのただのランプを仕舞ってただけ?オーラは籠ってるけど、単に名の有る職人さんが作成したやつかな?

 

「ただし火を灯すと持ち主にしかその灯りは見えないらしいわ」

 

それ何処の『栄光の手』?またハリーなポッターに出て来そうな道具ね

 

「そのランプは出来れば私が貰いたいわね。幻蟲ハンターとして活動する時に役に立ちそうよ。夜行性の小動物には光に寄って来るのも居れば直ぐに逃げちゃうのも居るし、私としてはかなり助かるから」

 

当然断る理由など皆無だったのでこのランプの所有権はポンズ姉に決定した

 

ランプをポンズ姉に渡して最後に取り出したのは白っぽい巻物だ。他はアイツ等の持ってた普通の銃とか手榴弾とかちょっとした非常食とかのようね

 

巻物を見たレツが「巻物(スクロール)?」って疑問符を浮かべてたから日本もといジャポンやジャポン近隣で一昔前に使われてたスクロールだと答えておいた。和風な感じだし

 

さてさて、本日最後の目玉商品の正体や如何に!

 

「それはトイレットペーパーね」

 

Oh! マジで(レアリィ)!?

 

「よく見なさい。切り易いように一定間隔でミシン目が有るでしょう。それに消臭効果も折り紙付きで何時までも使える旅のお供だそうよ・・・自然回復で補充されるし巻物の本体から切り離された部分は暫くすればオーラが散って無くなる訳だからとってもエコな道具ではあるわね」

 

「エコだけども!?触り心地も絹みたいに滑らかで可能なら今すぐ全国のトイレに配備すれば自然破壊問題解決の一助になるレベルの神アイテムだけども!!」

 

「紙だけに?」

 

「紙/神だけに!!」

 

私は半ばヤケクソ気味に叫ぶ

 

このアイテムが具現化された当時ってまさか相当に切羽詰まった状況で必死に神/紙頼みしたら具現化しちゃったとかじゃないよね!?祈りたくなる位に切実な状況ではあるだろうけども!

 

「気に入らないなら要らないかしら?」

 

「要るよ!便利だもん!でもなんか納得したくないこの感情を如何にかしてよ、ポンズ姉!!」

 

「ビアー・・・人生諦めが肝心よ」

 

「凄く雑な締め方したね、ポンズ。もっともコレに関してはボクも同じ意見だけどさ。ビアーも余計な葛藤(かんじょう)はさっさと水に流しちゃえば?」

 

「紙だけに?」

 

「紙だけにね」

 

「一度はノった私も悪いけど、別に上手い事言ってないよ二人とも。内容ペラッペラだよ!」

 

「「紙だけに?」」

 

「そう紙だけn・・・ってもう良いよ!!」

 

天丼(ネタ被せ)はもうお腹一杯だよ!

 

 

 

私達は家に戻ると直接持って帰った荷物の荷解きをして服やアクセサリーで色々と着飾って写真を撮ったり沢山食べる男子組も帰って来るのを見越して晩御飯の下ごしらえでキッチンに立ったりしているとお父さんたちが帰って来たので皆で食卓を囲む事となり、今日の出来事を話し合った

 

「・・・って感じで色々と面白いのも手に入れたよ。明日には賊のリーダーが被ってた仮面も警察署に行って回収しとかないとね。正直アレは要らないけど、放置は流石に危ないから」

 

「・・・そうか。天空闘技場の200階クラスの闘士たちは超能力をよく使ったりするらしいが、似たような道具までも存在するなんて、世界は広いな」

 

「そうよね。でも私もどこまでも伸びる紐とか突然集まって来たコウモリとかを見ちゃうと本当なんだと納得せざるを得なかったわ」

 

お母さんには不思議道具を見られたしお父さんも言ってるように“超能力っぽいのが在る”というのは最初から認識してたから特別隠す事なく肯定はしておいた。勿論詳細を伝えたりはしてないけどね―――“世の中不思議な力や不思議な道具はちゃんと存在してるんだよ~”程度な感じだけど

 

「つーかビアーも普通に道具をぶっ壊してんじゃねぇか。ケツから火が出るステッキとか宴会芸に使えそうだってのに勿体ねぇな」

 

「そのような品性を欠いた下賤な芸を喜ぶバカなどこの場には一人しか居ないぞバカリオ」

 

「へぇ~、誰だろうな~?そう言えば人様の名前を未だに間違えて呼ぶバカがたった今この場に一人居たような気がするがな~」

 

「止めろよバカリオ。返しが低レベル過ぎて泣けてくるぜ。折角の料理なのにこのままじゃ塩気が効きすぎちまうじゃねぇか」

 

キルアとレオリオが近距離でメンチを切りそうになったのをゴンが「まぁまぁ」と収める

 

あと2秒遅かったら二人は急な眠気(物理)に襲われて少なくとも明日の昼過ぎまではぐっすりだったでしょうに

 

「オレたちの方は事件は無かったけど楽しかったよ。オレ、ゴルフなんて初めてやったけど最後の方はそこそこ打てるようになってたもんね!」

 

いやいやゴンよ。そもそも事件は普通楽しいもんじゃないからね?

 

「ゴンは一発目なんかは全力でフルスイングしてクラブもボールも芝も破壊してたからな。力加減考えろっての」

 

「二発目は二発目でクラブにオーラを纏わせて打とうとしていたな。慌てて止めたがそうでなければ二個目のボールまでもが天寿を全うしていただろう」

 

それ天寿を全うって言わないんじゃ?天に召されてはいるけど・・・って、まだ壊れて(死んで)ないのか

 

それから彼らの話を聞いていくと、如何やらキルアは実家で遊びを含めた修行の一環としてゴルフはやった事が有ったみたいで超絶上手くて父さんと接戦を繰り返し、レオリオはたしなむ程度にプレイした経験が有るようで普通に上手くて、クラピカはクラブ二刀流から繰り出される【パワフル・ハリケーン・チョーガ・ザンビル】を披露し、皆の度肝を抜いたらしい

 

「なにその必殺技!?超気になるんだけど!!?」

 

そもそもクラブを二刀流してる時点で意味不明なんだけど!?

 

「残念だけどよビアー。あのショットはとても言葉で言い表せられるもんじゃねぇんだよ」

 

「ふっ、あれこそが我らがクルタ族の底力と云うやつだ」

 

「スコアじゃ当然俺の方が上だったけどよ。あのショットの時だけは確かに俺の上を行ってたぜ、クラピカはよ。認めるぜ。あの一打に関しちゃ完敗だ」

 

「うん。よく分からなかったけど凄かった!」

 

「父さんもああいったトリックショットを会得すれば取引先の社長たちの覚えも更に良くなるかな?もっともあのショットを真似出来る気は全くしないけどな」

 

「出来なくて良いから絶対やめて!?せめて回転を掛けた普通のトリックショットの延長とかに留めといて!」

 

流石の私も嫌だよ、自分の父親が大道芸接待ゴルフでその界隈で名を馳せる未来なんて!!

 

「ん?しかしクラピカ君のショットは回転に回転を加えられた確かなトリックショットだったぞ?ボールを中心につむじ風が巻き起こり、まるで小さなハリケーンのようだったな。障害物に当たる度にピンボールのように跳ねまわって最終的にホールへと吸い込まれた時は思わず歓声を上げてしまったよ」

 

見たかった!なにボールも打った本人も超次元なスポーツ漫画に出て来るような一幕をそこらの日常で垂れ流してんのよ。ある意味こっちよりも濃い時間過ごしてるじゃない!

 

可笑しいわね。結果だけ語るなら向こうは普通にゴルフをプレイして来ましたで終わるはずなのに、内容がカオス過ぎて全然普通じゃない

 

徹頭徹尾普通だったのがレオリオしか居ないってどゆこと?お父さんはお父さんでさり気にそこらのプロゴルファーなんて才能で軽く捻じ伏せるだろうキルアと張り合ってるし、今日のプレイだけで何回ホールインワンを出したのよ?

 

本日の撮れ高(ハイライト)は絶対にクラピカ謎ショット(そっち)でしょ。張り合う気は無いけど勝てる気しないわ

 

そうして仮にも一つの事件を終わらせてきた時よりも無駄に疲れを感じながら晩御飯も終わらんとしている時、リビングでBGM代わりに流していたバラエティ番組が終了(クラピカがイントロクイズで盛大に誤爆したりしてた)して次の番組が流れ始める

 

そろそろお風呂に入ろうかと席を立とうとしたらテレビの向こうに見覚えのある顔が映っていた

 

「あ!ネテロさんだ!」

 

ゴンが声を上げたように映っていたのはネテロ会長だ。とはいえ会長は会長で有名人だから時々テレビで紹介されたりゲストとして出演したりするのは可笑しい事じゃない。最強の武闘家として天空闘技場で4年に一度開催されるバトルオリンピアとかじゃ何時も(テキトーに)挨拶とかしてるし、テレビだって10年に1~2度くらいは顔出ししてるんじゃないだろうか?

 

絶対面倒臭がって基本はのらりくらりと逃げてるとは思うけど

 

テレビの向こうでネテロ会長が喋り始めた事で全員の視線が集中する。やっぱりこういうのって知り合いが居ると気になるよね

 

≪それではネテロ氏が最近注目しているハンターはどなたか居られますか?プロ・アマ、どちらでも構いませんが≫

 

≪うむ。ハンターとしての向上心を忘れぬ者であれば誰でも歓迎じゃがの。最近よく目に留まるのはまずはボトバイかのぉ≫

 

≪ボトバイ氏と云えばハンター協会では最高幹部である十二支んの御一人で三ツ星(トリプル)ハンターでもあるボトバイ氏ですか?≫

 

≪そうじゃな。あ奴も最近若い芽に刺激を受けたのか若い頃の我武者羅な闘志が燃え上がってきたようじゃわい。上の奴が張り切っとる御蔭で内外問わず、何人か触発されて挑んだ(疲れてる所を暗殺)りとかもしてるようじゃしのぉ≫

 

≪成程。ハンター協会そのものに良い風が吹き始めているのですね≫

 

≪うむ、そうじゃ。きっかけとなったビアーの嬢ちゃんには感謝せねばのぉ≫

 

いやいやいや、あんたそんなんで一々感謝とかする(たち)じゃないでしょうに―――番組向けのリップサービスか何か?

 

あとお父さんは私の名前が出て来た途端にリモコンの録画ボタン押さなくていいから

 

≪新しい風はビアー=ホイヘンス氏ですか。彼女の事は当番組でも幾度か取り上げております。今や知名度で言えばプロハンターの中でもトップクラスと呼べる程であるのは以前街中でのインタビューでも立証されていますね≫

 

≪ボトバイと違ってピッチピチじゃからのぅ。人気が出やすいのはそりゃそうじゃろうの。十二支んにもギリギリピチピチの(うさぎ)も居るが活動内容が古文書収集とか言語学とか一般人相手に刺さるもんでは無いからの。無論実力も実績も高くはあるんじゃがな≫

 

ギリギリでピチピチとか後で絶対怒られる発言サラッとしてるわね。ネテロ会長ならば死なないという信頼の下、次に(うさぎ)の人(ピヨン)と出会ったら殺意MAXな攻撃が問答無用で放たれるんじゃないかしら?それと会長大好きクラブな十二支ん(例外有)なのを踏まえると会長直々にピチピチ判定受けた私にまで(うさぎ)のヘイトが向いて来そうなんだけど・・・

 

≪確かにホイヘンス女史は派手な功績が多い印象が有りますね。次に彼女がどのような形で世間を賑わすのか、私個人としても楽しみではあります≫

 

それって私がトラブルに巻き込まれるのを期待してるって言ってるのとほぼ同義じゃない?

 

≪ほっほっほ♪そういう事ならば一つ耳寄りの情報が有るぞい≫

 

ん?なんか雲行きが急に怪しくなってきたんだけど・・・

 

≪丁度ビアーの嬢ちゃんにも通知が届いとる頃じゃが―――≫

 

“ピロリン♪”

 

まさに狙ったタイミングで私のスマホにメールが届いた。正直凄く見たくない。てかネテロ会長はそのゆったりした袖の中で携帯操作してたでしょ。生放送みたいだし

 

≪此度新たな三ツ星(トリプル)ハンターとしてビアーの嬢ちゃんがその名を連ねる事になった≫

 

うん。届いたメールを開けば『三ツ星(トリプル)の手続きが完了したからライセンスを受け取りに来るように』といった内容が綴ってある。これだけなら至極普通の事務的連絡だけど、あのネテロ会長が一人のハンターをプッシュするようなやり方をするはずがない

 

それとさり気にクラピカにも一ツ星(シングル)認定の通知が届いたみたいだけど、新しい星持ち相手には電話の一本くらいすると言っていたのは何だったのか

 

あとお母さんは『祝!三ツ星(トリプル)ハンター記念』な垂れ幕作成し始めなくて良いから!

 

≪ホイヘンス女史は現在一ツ星(シングル)ハンターでしたよね。それが一気に三ツ星(トリプル)ハンターとは会場一同、驚きを隠せません。ただ、確か二ツ星(ダブル)ハンター以上に為るにはハンター協会の要職にも就かなければならないとされていたはずですが、その辺りは如何なっているのでしょうか?≫

 

ちょっと待って!その流れは不味い!

 

てかひょっとしなくてもこの辺りは事前に打ち合わせしてやがったな!?驚いてると言いつつ(一般人の垂れ流しの)オーラに乱れを感じなかったわよ!

 

≪それも嬢ちゃんにピッタリの役職に就いてもらう事は決定しておる。広報関係に力を入れて貰う約束での。お茶の間の度肝を抜く作品を複数、一挙公開する予定じゃ!≫

 

やりやがったな、このジジイ!?そんな事したら自分にも注目が集まるでしょうに、どうせ二人とも地獄に落ちるなら私の方に少しでも世間の目が向くようにしようって魂胆!?それとも単に面白がって(開き直って)地獄の穴を悪戯にこじ開けようとしてるとか?どっちにしたってマイナス要素しか無いじゃない!!

 

どっかの(うし)が言ってたけど『シャレにならない難題を自分にも他人にも笑って吹っ掛ける』って今回の件(羞恥心CM)は精神年齢が植物レベルのそっちが断然有利じゃないの!しかも自分の宣伝はしてないし!!

 

≪成程、それは楽しみですね。今や圧倒的な知名度を誇るホイヘンス女史は見た目も相まってまさにハマリ役と云えるでしょう≫

 

≪うむ。三ツ星(トリプル)ハンターに恥じぬ大作を世に魅せ付けるのだと張り切っておったわ≫

 

「はい捏造発言100億パーセントォオオオオ!!」

 

組織のトップが全国ネットで堂々と嘘を吐くな!1ビットたりともそんな事口にしてないわよ!!

 

≪そそりますね、それは!≫

 

「勝手にそそってんじゃないわよ!あとアナウンサーなら言葉遣いもちゃんとしろ!!」

 

降板しろ、降板!ネテロ会長も一生表舞台に出てくんな!!

 

「ビアー。飾り付けの位置はこれくらいでどうかしら?左右の高さちゃんと揃ってる?」

 

「お母さんはお母さんで何でそんなに手際が良いの!?さっきの今でもう部屋の半分以上がデコレーション済みになってるんだけど!!?」

 

どこから調達したのよ。その飾り付けの数々?そんな嵩張るものとか一々タンスに仕舞い込んだりしてないでしょ?

 

「はい、ユイさん。次の輪飾りが出来たよ」

 

「こっちも文具屋で折り紙買って来たぜ。これだけ有れば足りるよな?」

 

「子供特有の無駄な行動力!!」

 

多分ゴンがお母さんに何か手伝える事は無いかって純粋な善意で訊いた感じか・・・で、キルアはそれに付き合わされている、と

 

そりゃキルアなら私がツッコミ入れてる間に買い物くらい済ませられるわ

 

「えい!」

 

“スパパンッ!”

 

ゴンはゴンで今しがたキルアが買って来た折り紙をオーラの形を変化させた刃を指先に纏わせて素早く切ってるし―――そりゃ紙を切る程度の単純な形状変化くらいは変化系の基礎修行で会得出来る範囲内だけど、原作で一度しか活躍の無かった必殺技(ジャンケン・チー)が泣くわよ。モブしか斃してないけど

 

でもあのゴンさん状態での必殺技(ジャンケン・チー)も見てみたかったな

 

強制成長だから技術の方が追いついてるかは疑問だけど、もしかしたらビルを輪切りに出来たりとかしたかもだし、必殺技(ジャンケン・パー)とか見た目も威力も完全にドラゴンボールの世界だよ・・・まぁ当然サイヤ人編とかじゃなくて少年時代編の中盤レベルだけど

 

ピッコロ大魔王?亀仙人?勝てる訳ないじゃん

 

「も~、それにしてもビアーったらそんなに凄い話が有るなら言ってくれれば良いのに・・・あら?でも先の事は守秘義務が有るから詳細は今でも話せないわね。残念だわ」

 

三ツ星(トリプル)の申請は兎も角、広報に関しては守秘義務関係無しに話題に出したくないだけなんだけどね

 

誰が好き好んでおしゃぶり咥える姿を地上波で流す事を自分の親に伝えたいと思うのよ?少なくとも私は思わないし、思いたくもない―――でも未来でバレるのが確定してる以上はこれだけは言っておかないといけないか・・・

 

「お父さん、お母さん。まだ撮影とかもしてないけど、作られるPVは罰ゲームでやらされてるだけだから。私の趣味とか意思とか夢とか一欠片も入ってないからそこの所は宜しく。はい、リピートアフタミー!“娘のPV(アレ)は罰ゲーム”!―――これから毎日10回は唱えて頭に刻み込んでね・・・ちょっとでも本気にされたら私も泣くよ?泣き喚くよ?幼児退行するよ?無駄に鎮まらない癇癪(かんしゃく)起こしてうっかりネテロ会長をミンチにするよ?ゾルディック家の当主陣を雇えるだけ雇って確殺しに行くよ?」

 

「いやいやいや、確かに罰ゲームの元凶はネテロ会長だったかもだけど、ビアーも悪ノリした結果で自分の首が絞まったんじゃん。引き分けだったあの時点ならまだ話し合いで解決も出来たはずだよね?もっと平和的にいこうよ」

 

レツは何を言っているのか

 

私は十分平和的な解決法を提示してるわよ・・・そうね、ここは人生の先達として可愛い妹の間違った認識を改めてあげないといけないわね

 

「レツ?いい?人類の最大の力は知恵であり、それを活かした相手を傷つける最大の武器は拳でも刃物でもなくて言葉なのよ?それは動物で例えるなら牙や爪や角、毒針なんかを振り回してるのと同じ事なの。だから問題解決に向けて話し合いをするだなんて野蛮な事を言っちゃダメ。もっと暴力(へいわ)的な道を探らないとね・・・そんな訳だからキルアの方からも実家に話して割引が利かないかってお願いしてみてくれない?」

 

「なんで言葉で殴り合う事を全ての前提に置いてるのさ?罵り言葉(スラング)をぶつけ合うだけが交渉じゃないってボクでも分かるよ」

 

「オレが言えた事じゃねぇけど、暗殺も暗殺依頼も犯罪だからな?気軽に犯罪の片棒担がせようとすんなよ犯罪(クライム)ハンター」

 

大丈夫大丈夫。家族とお話しするだけで犯罪になんてならないから。どっかのニャルってる邪神も言ってた。バレなきゃ犯罪じゃないんだよ

 

その点ゾルディック家の家族間通信ならセキュリティのしっかりしたやつも通ってるでしょ?

 

そんな私達のやり取りを見て私の熱意が伝わったのかお父さんもお母さんも頷きを返してくれた

 

「そこまで言われれば気にはなるが、ビアーがそこまで嫌がっているなら・・・理解(わか)った。私達はそのPVとやらでビアーの事を決して茶化したりしないさ」

 

(録画はするけど)

 

「ええ、だから安心しなさい」

 

(鑑賞はするけど)

 

「うん。有難うお父さん、お母さん」

 

如何やら分かって貰えたみたいだ。本当なら見ないでって言いたいけど、絶対周囲から伝わるからね。少なくともお父さんの上司は知ってる訳だし・・・はぁ、憂鬱だぁ~(クソデカ溜息)

 

そうして親が相手だからと油断して心音や生命エネルギーによる心理把握を怠り、この二人が実は私の特集やニュースをDVDに落とし込んだり新聞や雑誌の切り抜きを纏めた物を両親の寝室に仕舞い込んであるとしったのはだいぶ後の事だった

 

それを知った時に私は両親を問い詰めたがポンズ姉とレツには“コレクション癖は遺伝なのか”と呆れた視線を向けられた・・・解せぬ。私のはスマホやカメラの記憶媒体だけだから大して嵩張ってないはずなのに、そう弁明すると二人に殴られた・・・解せぬ。実は私の分だけじゃなくてレツやポンズ姉の活躍の記事とかが有れば全部保存してるとも知った・・・理解

 

 

 

翌朝、朝食を食べ終えた私は留置所に(おもむ)いて賊のリーダーの装着していたコウモリを操るらしき仮面を回収しに行った。流石に一般施設に置いとけないからね

 

どうやらポンズ姉の訊いた通りに夜になったら仮面は自然と外れたそうで、回収する時も抵抗は無かったそうだ。もっとも周辺のコウモリは昨日大部分斃しちゃったし、昨夜再び仮面を着けたところで大した数は集まらないだろうし、次の新月までは外せないとなれば脱獄の役に立たないどころかウザイだけだ

 

仮面も証拠品として提出するのに警察側がもっと駄々を捏ねるかと思ったけど意外とあっさり引き渡してくれた

 

こういう時はやっぱり安心と信頼の以下略だ。身分証として受付で見せたのは一ツ星(シングル)のライセンスだけど、『三ツ星(トリプル)ハンター様が危険と(おっしゃ)るならば』と偉い人が即OKしてくれた

 

そう言われた私は苦笑いが浮かんでたと思う。それを認知してるって事は広報(アレ)も認知してるって訳だからね。ホント勘弁して欲しい

 

やはりネテロ会長は次に出会ったら粉骨砕身(がんばって)粉骨砕身(グチャグチャ)にするしかないな

 

あとこれは調べれば分かる事だけど、このコリントス市が私の地元という事とハンター協会の広報部に在籍する事と肩書が犯罪(クライム)ハンターという事で“一日警察署長”的なのをやらないかと打診されもしたけど断っておいた。断ったら「ならば私の座っている署長の椅子を!いえ!上に打診して警視総監の椅子を!!」とか世迷言を発していた気もするけど後ろ手にドアを閉めてその場を立ち去った。後は知らん!

 

因みにだけど捕まえたアイツ等は実はB級の犯罪者集団として賞金も掛かってたみたい。確かに一般人の警察とかじゃ簡単には捕まえられないよね

 

それと私やクラピカの新しいライセンスはグリードアイランドに戻る道中で適当にハンター協会の支部にでも寄って受け取るつもりだ。残念ながらこの街に都合よく支部が在ったりはしなかった

 

ハンター協会は世界的に影響力を持つけどプロハンター自体は決して多い訳ではないからね

 

家に戻ると朝からポンズ姉の新しい特製帽子の仕上げの作業を行っていたレツが遂に魔改造されたソレをポンズ姉に渡したりそんな様子を写真に収めたり、渡されたポンズ姉の顔が引き攣ってたりそんな様子を写真に収めたり、“ムフーッ!”とやりきった感満載のレツが可愛かったりそんな様子を写真に収めたりして翌日には予定していた帰省も終わり、旅立ちの日となった

 

結局帰省期間中にレツが“お義父さん”“お義母さん”と呼ぶ事は無かったけど、家を出る時に小さく「行ってきます」と恥ずかしそうに口にしてたので次回はもう呼び方が変わる事でしょう

 

げっへっへ!レツの“お義姉ちゃん”呼びも近い!!

 

私も両親には元気一杯に「行ってきます!」と言ってタクシーに乗り込み、見えなくなるまで手を振って家を後にした

 

でもその時の私は思っても見なかった。次はグリードアイランドのクリアを目指すはずが、あんなバグとも呼べる事態に晒されるなんて

 

 

 

 

 

 

・・・あとなんかその時自称妹が出来た

 

 

 




自称妹!?この先どんな展開に!!?←作者「まぁた大した展望も無しに変な事ぶち込みやがったよその時の自分。詳細なにも決まってねぇよ」

ともあれまた次回から本編?に戻ると思います

今回登場してる魔道具?たちはリメイク版のアニメの冒頭で「珍獣怪獣金銀財宝魔境や秘境」とか言ってるところから形だけ引っ張ってきてますw
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