企みとフェイク
コリントス市からグリードアイランドの置いてあるくじら島までは私とクラピカがライセンスを受け取る以外に道中何事も無く、無事にゴンの家に辿り着いた
近場の港から早朝に出る船に乗ってお昼前に到着したのでミトさんの作る昼食をご馳走になってからゲームの世界へ跳んだ
何時もお世話になっているミトさんやお婆さんにはコリントス市の銘菓や銘茶をお土産に渡しておいた。二人が甘いものが苦手とかではないって事は事前にゴンに確認済みだ
そんな訳で戻ってきましたグリードアイランド。当たり前だけど最早感慨も何も無い
スタート地点のシソの木から皆で人の気配のしない近場の森の中まで移動して少しすると遠くから
元々大まかにゲームに戻る予定の日は伝えていたので後はビスケに定期的にバインダーで私達がゲーム内に帰還しているのか確認して貰う手筈だったのだ
バインダーはゲーム外に出て240時間経過するとカードデータは消えてしまうけど、出会ったプレイヤーたちの
バインダーの最後のページにカードを嵌めると対象指定の遠距離
因みにそれに当てはまるのは『
「全員ちゃんと揃ってるわね。見たとこ上手い事やったみたいだわね」
ビスケが両手を腰にやりながら私達を見渡して一つ頷く。私達の様子から大まかには察したようだ
「ああ、
「ちょっと待った。私がアンタ等を鍛えたのはあくまで依頼を受けたからよ。まさかタダで延長できるとは思って無いわよね?」
「無論だ。並みの理解力が有るなら確認は不要と思うが?」
うっわ。有名なクラピカ節もリアルに聴くとドン引きもんだわ
確かに見た目も含めて嘘がデフォとも云えるビスケと神経質なクラピカじゃ相性は悪そうだけど、それにしても酷い
薄汚いかは置いとくとしてもクルタ族の血筋はクラピカの代で終わりかな?クラピカの見た目に寄って来た娘が居たとして、上手くいく
思いっきり失礼な発言をした当のクラピカは頭に三段重ねのたんこぶタワーを建てながら地面に沈んでるわね。その隣ではビスケが拳の先から立ち昇る煙を吹き消している
仮にも教え子だからこそ遠慮ゼロね。あとでクラピカとレオリオの写真集でご機嫌を取っておこう
「それじゃ先ずはアンタ等のフリーポケットに
ビスケが呪文を唱えると私達の身体が高速で宙を舞い、目的地へと運ばれていく。いざ跳んでみると分かるけど移動中はエフェクトの光に包まれてるから周囲の状況は見えないみたいね
そうして時間としては短い空の旅を終えた私達は魔法都市マサドラの正門の前に降り立つ
そのまま街の中に入るとトレードショップでお金を下ろす。因みに私達がヨークシンに行ってる間にそこそこ暇だったビスケに検証して貰ったんだけど、普通はお金の預け入れはその街で清算した分しか出来ないところが50回以上買い物をしてお得意様になったトレードショップ同士でなら預けた金額を纏めて計算してくれるみたい
他の街で金策して預けたお金をマサドラで引き出せる訳だ。系列店ならそのくらいのサービスはしてくれないとね
適当にバインダーのフリーポケットを使えそうな
「さてと、それじゃ大まかな方針だけど指定ポケットのカードはお店で買えるBランクのも含めて出来るだけ自力で入手していきましょうか。時期的なイベントとかサブクエストが煩雑なやつとかは買っても良いけど、私達なら基本は正攻法で獲りに行った方が早いからね―――ゴンもジンさんからのメッセージでゲームを楽しむように言われてるんだし、私達もストーリーで楽しめるところは楽しんでいきましょ」
なにより指定ポケットカードのNo.000の入手条件はそれ以外の指定ポケットカードの入手及びその時出題されるカードに関するクイズ形式だからね
あんまりショートカットし過ぎると最後の最後で
それから私達はビスケの収集した情報を元に次々と指定ポケットカードを集めていく
常にひと塊で動くのは効率も悪いので時折2~3チームに別れてサクサクとプレイしていった
今は私達女子組でギャンブルの都市ドリアスに行ってそこのキーアイテムであるNo.25『リスキーダイス』を最初に入手するように皆を誘導してダイスを二つ以上ゲットしたら一つをゲインの呪文で元に戻して後はダイス無双の時間だ
20面中19面が大吉で1面だけ大凶のダイスで大凶が出ると今まで積み重ねた大吉分の不幸が降りかかるという中々にピーキーな性能をしているダイスだ
「ねぇビアー。本当にそのダイスを使うの?スロットくらい普通に回せば良いし、他のプレイヤーとのトレードでも良いじゃん。態々危険を
大当たりで指定ポケットNo.79の『レインボーダイヤ』が景品で貰えるスロット台でレツが後ろから不安そうに声を掛けてくる
「大丈夫でしょ。精々使って数回で大凶なんて引かないし、その程度で溜まる不幸なんて大したことないわよ」
あれ?なにか大事な事を忘れているような?
なにかが少し気になったものの既に握っていたダイスを転がす
台の上を転がったダイスは見事に“大凶”でピタリと止まった
「え・・・」
一瞬の思考の空白の後で私の座っていたスロット台が爆発を起こし、ついでとばかりに天井がその衝撃で崩壊して鉄骨が降り注ぎ、舞い上がる粉塵にショートした照明のコードの火花を火種として追撃の爆発が巻き起こった
「おいおい、あの娘死んだぞ」
「話してるの聞いてたが一発目の大凶だろ?なのになんであんな事になってんだ?」
「オメェ知らねぇのか?リスキーダイスは他のプレイヤーの使ってる全てのダイスと繋がってんのさ。可哀想に、三回分は死んだぞあの娘。あれじゃ原形すら留めてねぇだろうな」
そんなギャラリーの勝手な感想を聞きながら“ムクリ”と起き上がった私は何事も無かったものとして近場の台に座り直し、ダイスを廻して今度こそ『レインボーダイヤ』をゲットした
なんとなく恥ずかしいので爆発の煙が晴れない内にそそくさとその場を後にすると待ち構えていたレツ達に白けた視線を向けられたのを努めて無視する。次だ次!
それからはダイスで大凶が出たりする事もなく、順調に勝利を重ねてギャンブル都市でゲットできる指定ポケットカードを制覇したのだった
う~ん♪順調順調☆
「なんて脳筋な(リスキーダイスの)解決法・・・ビアーらしいけどさ」
「ある意味アンタにお似合いのアイテムだったかもね。どうやら大吉で起こせる幸運にも上限があるみたいだし、それならビアーが死ぬレベルの不幸が積み重なる前に何処かで大凶が出てリセットされるでしょうから」
「それは遠慮させて貰うわね。アレで煤だらけになっちゃったし、流石にビックリしたから」
「それで済むのはアンタ位だわさ」
そうでもないでしょ。少なくとも私達のチームであの程度で死ぬ人は居ないはずだ。死なずに耐えれるなら後はもう少し修行するだけってね
さて、ゴン達男子陣の方はどうしてるかな?
▽
ゴン達一行は都市の上空に浮かぶ巨大な顔付きのハートマークが≪アイーーーーン、アイーーーーン≫と繰り返す恋愛都市アイアイを訪れていた
何故彼らがこの都市を担当したかと言えばレオリオが聳え立つ程に手を挙げて参加表明をしていたから・・・とかは関係なく、ビアーがこの街に来たら街が崩壊し兼ねないとの理由からだ
アイアイではプレイヤーの男女関係なく様々なシチュエーションでの出会いと恋と愛を楽しめる・・・と言えば聞こえは良いが、ようは街中で日夜ナンパが巻き起こっていると言っても過言ではない場所なのだ
イケメンNPCがいきなりレツやポンズの前に現れて「モデルを探してたんだけどキミ、俺の理想にピッタリだね♪写真撮らせてよ。お礼にオレと一緒に喫茶店に行こう。好きなもの奢ってあげるよ☆」・・・などと声を掛けてこようものならビアーの怒りの鉄拳が炸裂してNPCはカードと化し、発生したソニックブームが一々街を抉るだろう。それでもめげずに様々な出会いをプレイヤーに提供するNPCに三歩進むごとにエンカウントしていたら攻略どころではなくなるというのが街の仕様を聴いたレツたちの共通認識だったのだ
当のビアーは「そんな事しないよ!・・・最初の2~3人程は殴っちゃうかもだけど、ちゃんと『がまん』を覚えるから」などと口にしていたが、当然改めてアイアイの出禁宣言を仲間たちから突き付けられた形だ
もしもこの会話をゲームマスターが聴いていたら「よくやった」と深く感謝してくれた事だろう
ちなみにこの街の攻略はキルアが主導で動く事となった。それと云うのも他のメンバーが直ぐに下心を出して好感度を下げるレオリオにベタな設定やセリフに無意識に辛辣な
5人以上のNPCとデートイベントにまで漕ぎ着けてゲット出来るNo.34『なんでもアンケート』やアイアイのお城に住んでいるお姫様と付き合う事でゲット出来るNo.7『身重の石』などの為に最高効率でキルアが相手に合わせてキザなキャラや熱血漢キャラ、生真面目キャラ等をロールプレイをするハメとなったのだ
一応ゴン達もビスケの事前入手の情報に無かった街の秘密の地下通路で密輸されそうになっていたパンダを助ける事でNo.99『メイドパンダ』を入手したりしていた
彼らもちゃんと活躍してたのだ
もっともその秘密の通路もお城でお姫様とお茶会及び散策をしていたキルアが暗殺者として磨かれた持ち前の超人感覚で発見したものだが・・・やはりキルアの貢献度が高過ぎである
他にもレオリオが女性NPCと始めは外面良く仲良くなってから直ぐにメッキが剥がれて恋愛ゲームなら常に好感度が下がるような選択肢を選び続ける
街を出る時のキルアとレオリオは憤慨しながら「「二度と来るかこんな街!!」」と吐き捨てたのだった―――なお、後で話を聴いたビアー達は誰もレオリオには同情しなかった
そんなこんなでビアー達はその後も一ヵ月ほどカード集めに奔走し、Sランクのカードも含めてカードの入手枚数は70枚を優に超えたのだった
▽
大分指定ポケットカードが集まってきたわね。やっぱりこれだけの実力者が揃ってると攻略も早い
今は10月の半ば辺りだから原作で言えばゴン達がトンネル堀りをしている頃かな?いや、モンスターカードのゲットに勤しんでる頃ってところでしょう
今の私達はマサドラの宿の一室で話し合いの最中だ
「かなりカードも集まって来たね~。これならもう一ヵ月くらい頑張ればクリアまで行けちゃったりしないかな?」
ゴンが楽観的な意見を述べるがクラピカが頭を振って否定する
「それは甘いぞ、ゴン。このゲームは主に二つの理由から他のプレイヤーを先にクリアさせたくないと考えてる連中が
怨念という名の圧を振りまくビスケに皆が小さく頷いた。肯定しなければ“やる気を出せ、でなければ死ね”と滅茶苦茶説教されそうな剣幕ね
態々大蛇が出る事が確定してる
「2つ目の理由はこのゲームをプレイしている大半のプレイヤーは大富豪バッテラに雇われているという事だ。彼はゲームクリアの報酬として500億ジェニー支払うと周知している。彼が何のカードを求めているかは判らないが、500億に関しては先着1名(チーム)だと考える方が自然だろう。無論これも絶対とは言えないが、最初のクリア者を目指す理由にはなっても諦めて2番目、3番目のクリアで妥協する理由にはならない」
「結果として他のプレイヤーのクリア阻止を第一に考えて動く奴らが出て来るって訳か。確かに500億ジェニーが手が届きそうな位置に在ったらどんな手でも使いたいもんだぜ」
「金をエサに雇われてる連中はそうかもな。特に自力でのカード入手に行き詰った連中とかはその傾向が強くなるんじゃねぇの。まっ、そのレベルの奴らが最終的にカードを全部集められるとも思えねぇけどよ」
確かにね。原作で「
彼らは99種の指定ポケットカードが場に出た後でしか動けない事を考えるとあのやり方も結構リスキーよね。最後の一枚が都合よく全
まぁNo.000が何の情報も無い時点で結局ギャンブルにしかならないんだけど
「でも如何するの?多分あと10枚くらいは私達でも普通にプレイして行けばゲット出来ると思うけど、カード化限度枚数の上限に達してるカード。その中でも独占されてるカードなんかは交渉でも手に入り辛いわよ?」
「うん。だからその交渉のテーブルに着く為にも私達もカードの独占はしたいところだね。Sランクまでのカードは
因みに私達は
「だとしても何十人ものプレイヤーが次々と押し寄せて来るなんてのは正直鬱陶しいから遠慮したいわよ。ハメ組単体では問題なくてもその隙を突いて有能なプレイヤーが漁夫の利を得ようとする可能性だってゼロじゃないし、彼らのせいで私達も
「ビスケ。ハメ組の人達が行動を起こすのって年末の辺りなんだって?」
レツが前にビスケが言っていた情報を改めて確認する
「ええ、そう言っていたわね。それもカードの集まり具合で多少前後はするでしょうけど」
「誰も入手してないカードがある中でどうやって最後まで護りきるつもりよソイツ等・・・」
ホント如何やって逃げ回るつもりなのかな?幾ら分散してカードを護ろうとしても格上相手じゃ絶対限界有ると思うんだけど・・・
「だから向こうが襲って来る前にこっちから攻め込むのも一つの手かなって思うんだよね。彼らが居なくなるタイミングが分かればボク達も『大天使の息吹』をお金の力で入手できるでしょ?」
「居なくなるって、何するつもりなんだわさ?」
「ハメ組の人達もそれだけ大所帯ならアジトとか全員とはいかなくても定例会議みたいに多くの人達が集まるタイミングが有ると思うんだよね。そこに何人かが『挫折の弓』を持って突撃して片っ端からプレイヤーを島外へ跳ばすんだよ。
うわぁ・・・エゲつないわね。彼らの5年間の努力(笑)を無に帰す作戦だ。でも確かにそれなら私達で『大天使の息吹』を独占出来るメリットは大きいわね
最終的にこのゲームでは独占カードを保持している個人ないしチーム同士の戦いになる
こちらが向こうの欲しいカードを持って無ければ相手側に戦うメリットが無いから基本は逃げの一手を打たれるし、逃げられないように追い詰めて強引にバトルに持ち込もうとする作戦はゴンが嫌がるでしょうからね。どうせ最後の相手はゲンスルー組(3人)かツェズゲラ組(4人)なんだからゲームのルールに則って
「良いんじゃねぇか?第一ハメ組は作戦の内容を隠してない。要は全プレイヤーに向けて『もうちょっとしたら人海戦術で襲いに行くぜ』って宣戦布告してるも同義なんだ。それを阻止する意味でもこっちから先手を打ったって文句言われる筋合いは無ぇよ」
「キルアの意見には賛成ね。でも如何やって連中のアジトを割り出すの?ビスケを勧誘しに来た人の場所に『
「それなら簡単だよ。ボクの『
「・・・やっぱり【神の人形師】の性能は頭可笑しいわね」
「「「「それな」」」」
何度だって言える。この能力は完全なるバランスブレイカーだ
その気で振えば世界の均衡だって崩せるでしょう
人間のコピーを造るのに直接見る、触る、血や髪の毛などの媒体を用意する等の制約無しで他にも多数の『発』を扱えますとか凡百の念能力者が聴いたら発狂案件だ
「文句は兄さんに言ってよ・・・じゃあ改めて情報は早い方が良いよね。ビスケは勧誘してきた人を思い起こしてくれる?―――いくよ、『
レツの手作りの人形を核にして能力を発動させるとソレが光に包まれ、籠められたオーラによって肉付けされた姿が顕わになる
「―――ありゃ」
人形のシルエットが鮮明となり、光が収まるとそこに立っていたのは背が高くて色素の薄い金髪ツンツン頭にグラサン装備の男の姿だった―――私の小さな呟きに気付かなかったレツは早速とばかりに目の前の人物(人形)に向かって質問を飛ばす
「じゃあハメ組のアジトの場所と大まかな予定を訊かせてくれる?」
グラサンの奥に虚ろな瞳を覗かせる彼は抑揚の無い声で訊かれた事に正直に答える
「アジトはルビキュータ(スタート地点南の街)から南西20キロ辺りの森林地帯の奥に在る洞窟の更に奥。予定はオレに騙されてるハメ組のクズ共を既に仕掛けた爆弾で脅して全てのカードを奪い、皆殺しにする」
再現された原作にてグリードアイランド編のボスを勤めたゲンスルーがこの世界でも変わらずクズである事を証明してくれる
前半は真面目に情報を聴いていた皆も今は呆けていたり顔をしかめたり眉間に寄ったシワを指で解したりしている
まぁいきなりこんな事(
ビスケは流石に人生経験が豊富なのか至って平静だ。他にはキルアも普通にしてるわね
彼の家庭事情を鑑みれば納得ではあるけどね
人生経験の量で言ったらビスケが一番でしょうけど、濃さで言ったらキルアが一番でしょうからね
私も異世界へ転生とか特殊さで言ったら一番かもだけど、日常が鍛錬と殺しと拷問と大富豪生活だったキルアと張り合える気はしない
「それで、如何するの?」
ビスケがこのチームのリーダーである私に方針を訊ねる。ゲームを提供してるのは私だからね
「う~ん。そうね~・・・」
知っちゃった以上は完全に無視するのもアレだし、かと言って完全な一般人が巻き込まれてるとかならまだしもプレイヤー相手に旨味も無しでボランティアってのも違うでしょうしね~
少し考えてから私が出した結論は・・・
▽
オレの名はゲンスルー。オレのゲームに来るずっと以前からの仲間であるサブとバラと共にこのゲームの世界に入り込み、500億ジェニーの報酬を目指すプレイヤーだ
だが実際にこのゲームで情報を集めていくと
俺たち三人は自惚れではなく高い戦闘力を有している。少なくともこのゲーム内に蔓延る雑魚共程度なら多対一の戦闘に陥ったとしても正面から返り討ちに出来るだけの差が間違いなくあった
だがそれはあくまでも単純な戦闘力の話。このゲームでは割と序盤から誰でも使えるようになる
そこで確実に俺たちがゲームクリアする為に最も必要なのは『
このカードを使えば指定ポケットカード1ページ(9枚分)が他の
だが問題はその『
そう考えた俺は大して実力も無いクセに500億の魅力を前に引き際すら見定められないバカ共に声を掛け、さも全員でアイディアを出し合ったかのように誘導して俺を含めた10人でグループを立ち上げた―――その際に俺の本当の仲間であるサブとバラとは一旦距離を取り、二人にはゲーム内やゲーム外それぞれでの情報収集や下手に勘のいい奴の始末などの裏方を任せる事にした
自分たちは頭が良いんだと勘違いしたバカ共や自分たちはまだ敗けてないと吠える負け犬連中に混じって笑顔を顔面に張り付ける日々はストレスだったが、それもようやく終わりだ
今はおおよそ月に一度(集まれる日がまちまちな為)の定例会議でアジトにクズ共が集合している
その中で体格と声と態度のデカさからハメ組のリーダーに推したニッケスが演説を行っている―――もうすぐ勝てる。俺たちなら勝てると妄信している奴らの顔が等しく歪む様を想像すると笑みが零れるな。もっとも周囲の奴らは俺だけが別種の笑みを浮かべているなどと露ほども思っちゃいないだろうがな
さて、ニッケスの馬鹿話もやっと一区切りとなったようだし、そろそろ本命の種明かしを行う為に腰掛けていた岩から立ち上がると前へ出る
「一つ、俺からも良いか?」
苦楽を共にした(と向こうが勝手に思い込んでる)このグループの初期メンバーたる俺に快く演説の場を譲ったニッケスを尻目に他の奴らの視線・関心を全身に浴びる。ここからは
ニッケスも、他の初期メンバーの
先ず最初に俺がプレイヤーキラーとして有名な『
自分の命が危ないと知った途端に案の定騒ぎ出すバカ共を諫めて爆弾の解除方法を語ろうとした時、初期メンバーであり俺を除いたハメ組の中では最強の
“ボムッ!!”
だが所詮は自力でのカード集めも
気配だけで背後のガキの顔面を掴むとそのまま容赦なくその顔を爆破してやった
「やれやれ、説明の順序が狂ってしまったな」
しかし問題は無い。
顔面を爆破されたジスパーは未だに煙を立ち昇らせながら手足を痙攣させている。アレでは今後の交渉が済む前に死ぬだろうな
近くに居た他の初期メンバーのガキ共も倒れたジスパーの周囲に群がって声を掛けたり俺を警戒しながら庇うようにして立ち塞がったりとしている―――無駄だと云うのにご苦労な事だ
今の俺の体捌きを見た上でそんなチャチなナイフや鎖を構えたところで威嚇にすらなりやしねぇと理解すら・・・ナイフはまだしも鎖だと?コイツそんな武器を使ってたか?
立ち塞がった二人の内一人の持つ武器に
俺は全体に向き直ると俺の有する二つの能力である『
俺が掴んだ箇所に小規模爆発を起こす『
“―――――チッ、チッ、チッ、チッ”
「作動したね」
見渡す限りのプレイヤー全員の身体にカウント付きの爆弾が具現化された
『
自分の身体にピッタリと貼り付いた爆弾に顔を青ざめさせる者が続出する中で最後の仕上げに爆弾の一斉解除と引き換えにコイツ等の集めた指定ポケットカード全種を要求する
もっとも一斉解除なんてのは嘘だがな
相手への説明を必要とする俺の能力で一度爆弾を取り付けた相手を生かしておくメリットなど皆無だからな
すると一番最近勧誘したうちの一人が全員で俺に襲い掛かって解除ワードを言えば良いと言う。確かにそれなら爆弾を解除するだけなら成功する奴も居るだろう
だがここまで計画を練ってきた俺がそんな半端な逃げ道を残す訳もない
「ブック!」
呪文を唱えてバインダーを出現させ、フリーポケットから『
『
俺は『
「『
ゲーム外に出てしまえば仲間が待機してる上に追って来れる者も限定される。それは実質追って来れないという事!精々生き残る為に
「・・・・・『
クソッたれ!如何なっている!?バグか?俺は呆けている雑魚共が再起動する前に素早くバインダーの最後のページの
「・・・っぷ」
「ククククク」
「アハッ、わ、笑っちゃダメだよね?」
「笑っても良いでしょ。仮にダメだと思うなら嗤っときなさい」
後ろから聞こえてきた嘲笑に一瞬で
「何故だ!?なんでお前らに『
バカな!初期メンバーは真っ先に爆弾を取り付けたんだぞ!現にニッケスには能力が発動している。何故コイツ等だけが―――
「いや待て。お前も何で普通に立ってやがるジスパー!?」
お前はさっき間違いなく顔面を爆破してやったはずだろう!!?
「は?あんなもんでやられる訳ないじゃん。こっちが今まで何回鉄の塊でもプリンみてぇに握り潰せるアイアンクローから必死に身を護って来たと思ってんだよ―――あ~あ、ジャンケンで負けてなきゃやられ役なんて演じなかったのによ~」
演技だと?まさか俺は今までコイツの実力を見誤っていたとでも云うのか―――コイツも俺と同じように本来の実力を隠してやがったって事か畜生!
「・・・何だか勘違いしてるっぽいし、これ以上焦らしても仕方ないからそろそろ種明かしといきましょうか」
勘違い?初期メンバーの一人である
俺が記憶の片隅にどこか引っ掛かるものを感じている内にコイツ等がその紙片を更に破るとそこに居たのはハメ組の初期メンバーではなく、別の奴らが何時の間にかそこに立っていた
違う!コイツ等は何も変わってないし最初から此処に居た。変わっていたのは俺の、いや、俺達の認識だ!
「・・・『影武者切符』」
後ろに居る奴らの方から小さく漏れ聞こえたその回答にハッとして僅かに首を捻り視線だけを後ろにやる
他の奴らも発言者の方を向いていたようでさっきの奴とはまた別の黒人の新参者。確かアベンガネとかいう奴が溢した憶測だったと知れる
NO.92『影武者切符』。その切符を成り代わりたい相手に切って渡せば24時間その者の代わりを務める事が出来、それも1000枚セットで扱える代物だ
相手に渡す為に千切った根元の部分を破棄すれば24時間経つ前に効果も切れるという事だろう。1000枚も在るんだ。ゲーム内なら検証は幾らでも出来るだろう
俺はコイツ等が別人に入れ替わってる事にも気付かずに接していた。ならばこの『
「『
苦々しく吐き捨てた俺は乱雑に『
俺が『
俺は苛立ちから噛んだ唇から一筋の血が流れるのを感じる。痛みで少しでも冷静さを保たなければ怒りで頭が爆発しそうだからだ
だから俺は今も後ろから飛び掛かろうとしている雑魚共の気配も見逃してない。俺の動揺の隙を突いて爆弾の解除を試みる腹積もりだろうが、全員が同調している訳でもない
圧倒的実力差を前にすれば多少の隙など隙ではないと云う事すら判らずに愚かにも襲い掛かって来たなら『
「い、い、・・・行くぞ!!」
誰か知らんが怯える奴らに発破を掛けた事で十数人程が俺に向かって走り出し―――
先程種明かしが如何とか言っていた茶髪のガキが軽く
なんだ?今度は何が起きてるってんだ!?あのガキの重力変化か重量操作の類の『発』の発動条件を何処かで満たしちまったのか?『影武者切符』なら俺がコイツ等に爆弾を気付かれず取り付けたように厳しい制約もクリアするのは難しくないはずだ
逆に言えばこの場さえ切り抜けて仕切り直す事さえ出来れば反撃の目は残ってるはず
そう思い全身に山でも背負ってるんじゃないかって重圧の中で何とか顔を上げて脱出経路を探ろうとするが、それと同じくしてハメ組の誰かの蚊の鳴くような声が耳に届いた
「ビ、ビアー=ホイヘンス・・・」
聞こえてきた名前には聞き覚えがあった。時折現実に戻るサブとバラが以前『
※現在は
今目の前に居るのがトッププロですら手を焼く幻影旅団を壊滅させた相手と知った事で俺が
・・・ああ、そうか。やっぱりコレはただの『練』なんだな
「―――バケモノが」
そう認識してしまったからか全身の力が抜けてついでに髪の毛もパラパラと抜けていくのも他人事のように感じながら俺の意識は暗転していった
最後に少しだけ吐いた悪態が俺のせめてもの抵抗の証だったのかも知れん
サブ、バラ。すまねぇ。お前たちだけでも逃げ延びてくれ
ハメ組のアジトの場所は原作でシソの木から南南西方向?に『同行』で飛んでる描写と南に進んだ最初の街(シャルナークやシズク達が居た街)のルビキュータを掛け合わせてます
ビアーが成り代わってた設定のノームデューもゴンがバインダーを見た時(ヒソカ水浴びシーンの少し前)にニッケスの次に出会ってる3人の中から適当に選びました