私がグリードアイランドのシステムバグとも云える現象でカキン国の王族所有の別荘に跳ばされ、ある意味元凶のカストロさんを夜空を彩る流れ星に変えてから一ヵ月ほど経過した。時期的にはそろそろ12月ね・・・この一ヵ月の間はそれはもう大変だった
PV制作の為にモモが手配した人材は一流という条件を付けた上でも王族パワーで直ぐに集まったんだけど、どんなに急がせたところでゼロからその場で作品が出来上がるはずもないのよね
勿論初日にモモとアレコレおおよそ方向性は決めてたからまだ早い方ではあったんでしょうけど・・・てか突貫作業でありながらハイクオリティを要求された職人さん達はキレても良いと思う―――王族相手にキレる命知らずは結局居なかったけどね
ハンター協会の広報って事も有ってデザインされた
アイドル衣装に満天の星空を模した
具体的には前世でとある魔術のインなんとかさんのスマホゲーム(
因みにその衣装を着て歌うのは闇を払う光のような力強さを感じさせる歌詞と曲調で【only my star light】らしい。どう聴いても【Only my railgun】です。作詞作曲家コンビ、さてはアンタ等転生者だな?
そんな転生者疑惑トリオ(?)は活き活きと作業してたけどね。あとアイドルPVの根幹をなす部分とも云える所だったし、それで創られたダンスも私なら直ぐに覚えられたからそっちの撮影はそこまで時間は掛からなかったのよ。歌だって最初からリズムも『なぜか』分かってたしね・・・問題は赤ちゃんプレイなCMの方だった
何が問題ってもちろん全部問題しかない訳だけど、一番私の
私としては当然一発撮りで成功させてオサラバしたい所なんだけど、私をあやす役として熱烈アピールで立候補したモモがいけなかった
別に私一人でも撮影は出来る内容だったけど、この恥ずかし空間を共有できる人が居た方がまだ精神的なダメージは緩和されるかなと思ってモモの参戦を許可した過去の私をぶん殴ってやりたい
いざ撮影が始まるとその度にモモが限界化して赤ちゃんモードの私と接する事に耐えられず鼻から滝のように血が流れる
なおモモの母親(セヴァンチ王妃)はモモの弟と一緒にすでに王宮に帰還済みでモモには『先に帰ってるからあんたは適当にゆっくり帰って来なさい』的な伝言が有ったみたいで、こちらとしても好都合だったのでモモの次の公務ギリギリまで粘ったところは有る
撮影そのものは数日前に全部終わったしね
当然この一ヵ月で撮影とかの時間も含めてモモには念の指導を行い、今の彼女は原作でゴン達が裏ハンター試験合格を言い渡された時くらいには育成できた
モモの生来持ってる才能から考えたら驚異的な成長スピードだけど、なんか所々『絶』を会得してた時みたいに
そんな訳も有って『纏』『絶』『練』『凝』を会得して水見式で系統も確認済みだ。念の系統についてはやっぱりと云うべきか操作系だったわね
あと途中で一度チードルさんから一言だけ「
「それではお姉様、残念ながら
今は空港のVIP用特別通路でモモが私の手を取って目をウルウルさせながら別れを惜しんでいるところだ
「うん、取り敢えず毎『時』は色々重いから止めて。あと私はハンターだから連絡着かない場合の方が多いからね。やり過ぎは困るわよ?」
その辺りの節度も守ってよ?いくら仕事用とプライベート用の電話を使い分けてるって云っても色々限度が有るからね?
「くっ!分かりましたわ。ですが逆にお姉様からの連絡であれば例え公務中であろうとも最優先で“
「それも止めて!てか今なんか凄くゾワッとしたんだけど!!?」
よく分からない悪寒が全身に奔ったわよ!?
放っておいたら何か色々と暴走しそうなモモに幾つか釘を刺しながらも今度こそモモと別れるとロビーに一度戻り、くじら島(の近くの空港)に行く為の飛行船の出発時間まで少し待つ
ハンターライセンスの力が有れば何時だって最高級のファーストクラスだって乗り放題だ
モモも私用船を用意するって言ってくれたけど激しく嫌な予感がしたから断っておいた
多分外見は普通(?)に王室仕様だろうけど、内装がモモの自室と同じ私グッズの山な気がしたからね。確かめたくはない
そうして次の便を待っていると見知った人影が見えたので弄っていたスマホを仕舞い、立ち上がってその人達に近づいて声を掛ける
「パーシナモンさん。アニタさん。お久しぶりですね」
そう、そこに居たのはスパイス鉱石(一応合法ドラッグ)貿易の商会長とその娘さんだった。以前イルミからの暗殺を阻止した時以来だからほぼ一年ぶりね
今日はプライベートって訳でも無いみたいで護衛も兼任してるであろう部下も三人居るわね。私の声に振り返ったアニタさんは目を見開いて驚きを
「アンタ!なんでこんなとこに居るのよ!?」
いやいや、なんでも何も空港のロビーに居る理由なんて基本は一つだけでしょうに・・・って、そんな事訊きたい訳じゃないか
「アニタ、先ずは挨拶からだ。キミと今日ここで出逢えた幸運に感謝を―――ビアー君、しばらくぶりだね。壮健そうで何よりだ」
パーシナモンさんが挨拶した事でアニタさんも気を持ち直したようで軽く咳払いを挟んでから挨拶をくれる
「久しぶり。随分暴れ回ってるみたいだったから心配はして無かったけどね。今日はあの二人とは別行動かしら?てっきり四六時中ベッタリなのかと思ってたわ」
ベッタリだったのが強制ワープで引き離されたんですよ
「ポンズ姉とレツは今は地図にも載ってないとある島でハンター活動中ね。私の方は諸事情(誤ワープ)で別の仕事(撮影)を先に片付けたりする事になったんだけど、それもやっと終わったからボチボチ合流しようかなってところよ」
「地図にも載ってないって、どんな小さな辺境の孤島よ?」
記載されてないのは別に小さくて
「私はそんな感じね。そっちは見たところ今飛行船で
「いいや、こちらも仕事が一段落した所でね。私が色々と飛び回っている間にも運航していた我が商会の
スパイス鉱山の在る場所の地図は見た事ある。海と云う天然の関所で隔絶された採取場所だからこそあのヤバイ薬の流出を防ぐ一助になっているんでしょうね
スパイス鉱石の流通を手広くやってたら破産した人達が海賊や盗賊にジョブチェンジして世界レベルでの治安の悪化も有り得たかもね
「そうだ!ビアー君。もし君の用事が急ぎでないなら一度島まで来てみないかい?島には妻の墓も在ってね。我々の命の恩人としてプリシラにも紹介したいのだよ。本当ならポンズ君とレツ君も一緒なら良かったのだが、こればかりは巡り合わせだからね」
お墓参りか~。そう言われちゃうと弱いわね
グリードアイランドもカストロさんが合流してるなら人手は足りてるでしょうし、特段急ぐ理由は無いからね。なにより『ゲームやりたいから
「構いませんよ。スパイス鉱山ってのも一度くらいは見てみたいとは思ってましたし―――そんな訳だからアニタさんにはツアーガイドをお願いしようかしらね」
「ツアーも何も観光スポットじゃないんだからお土産の一つも売ってないわよ」
特産品(スパイス鉱石)なら在るじゃん。要らないけど
「はっはっは!なぁに、長居してくれとまでは言わないさ。アニタの言う通り娯楽を提供出来る場所ではないからね。しかしその代わり、精一杯持て成させてもらうよ。これでもそこそこ稼いでいる身だ。美味しい料理くらいは提供出来るつもりだよ。腕の良いシェフも雇っているからね」
小国を買えるくらい稼いでる商人でそこそことか言ってたら世の中の大半の人が相対的に極貧層判定になっちゃうじゃない
私はパーシナモンさん達に同行する事にして飛行船の搭乗予約をキャンセルして空港のロータリーで商会が手配していたという車に乗り込んで商船の寄せてある港に向かう
パーシナモンさんは「後はお若い者同士で」と複数在った車の内、私達とは別の車に乗り込んだけどそのセリフの使い時間違ってるから
セリフは兎も角気遣いは受け取って車に乗り込んでアニタさんと気兼ねなく話す事にする
「そう言えばあの二人はあの後ハンター試験はちゃんと受かったのかしら?ニュースじゃアンタの事ばっかり取り上げられてたせいでよく分からなかったのよね」
「二人とも問題無く合格したわよ。逆にアニタさんは次のハンター試験はどうするつもり?しっかり鍛えてるみたいだから今なら合格率7割は固いと思うけど?」
見れば以前私達が別れ際にオススメしといた激重バンドを身に付けてるみたいだし、身体面だけなら合格基準は普通にクリアしてるわね。動きからして試しの門も1の扉ならギリ開けられるでしょうから念無しでも十分超人の域だ
もっともハンター試験はそれ以外の要素を観られる事も多いから精々7割止まりって評価になるんだけどね
「プロハンター様からの折角の評価だけど、まだ止めておくわ。今はまだ父さんの仕事に付いて回ってる途中だからね。知れば知る程に新しい何かが見えて来て、単に商品を売り買いして
おお~!思った以上にメンタル面も成長してるわね。まぁ元々素直な性格ではあるみたいだからしっかりと指導してくれる大人が
「なら、試験は再来年辺りにでも?」
「ええ、そうね。実際ハンターライセンスが色々と有用な事には違いないし、その時にはまた挑戦するつもりよ」
そう言えばアニタさんは元々ライセンスの恩恵狙いで試験受けたんだったわね。プロハンターでなければならない明確な目標とかは無いんだし、焦る理由も無いのか
それからはお互いの仕事の話は守秘義務が多いので訪れた街でどんな面白い事が起きたとか、珍しいものが見れたとか、美味しいものを食べたとかって話題で盛り上がった
女子トークと云えば恋バナ?なにソレ?美味しいの??
いや真面目な話、根無し草で同年代が集まる学校とかに通ってない私達にその手の機会すら巡って来る事は無いのよ。ゴン達とかほぼ全員厄ネタだし・・・もっともそれ以前に興味を持って無いのが致命的だとは思うけどね
あれこれ話してる内に車は港に到着する
到着までにこっちは一年の大半がグリードアイランドに居た事から破裂するシャボン玉を吐く馬が居たとか空飛ぶ目玉が居たとか、一軒家くらいなら丸呑みに出来そうなトカゲが居たとか話したら「どこの魔境よ?」とか言われちゃった
“どこ”と言われたら
港に到着して車から降りるとパーシナモンさんの商会の船が停泊してある場所まで歩いて向かうと商会の船員が木箱を沢山積み込んでいる最中の大きな船が見えてきた
「会長、お疲れ様です!お嬢も付き添いご苦労様です」
「「「「「「お疲れ様です!!!」」」」」」
私達が近付くと荷物を運んだりしながらも商会の人達が大きな声で二人に挨拶している。挨拶された二人も軽く返事をしたり、労いの言葉を掛けたりしてるわね
パーシナモンさんが最初に声を掛けて来た現場のリーダー的な人に話を訊くと、どうやら今積み込んでる荷物を全部乗せれば何時でも出発出来るとの事だったので先に船乗り込んで少し待っていると問題無く出航となった
帆を張った木造船が上手く風を受けてどんどん外洋へと突き進んでいく
「ねぇアニタさん」
「なにかしら?」
「そう言えば何で木造の帆船なの?
水平線上に消えていくカキンの陸地を眺めつつ話題の一つとしてちょっとした疑問をぶつける。最新鋭は言い過ぎだとしてもこの船のチョイスはレトロ過ぎない?
「ああ、その理由なら後で判るわよ」
「珍しく勿体ぶるね」
「まっ、アンタなら問題無いでしょうから、その時を大人しく待つ事ね」
アニタさんが意味深な笑みを浮かべながらもどこか楽しそうにしてるのでその場では特に追求せずに波に揺られながら丸二日ほど過ごし、かなり目的の島まで近づいてきたら微かに
「嵐が来るわね」
「あら、気付いちゃった?」
私の独り言を拾ったアニタさんが本を読んでいた手を止めて顔を上げる
「船室に居るって云うのにそこまで分かるとか流石と云うべきかしら?バレたなら言うけどこの辺の海域はよく荒れるのよ。スパイス鉱山に顔を出す時は必ず一回は嵐に巻き込まれるし、磁場とかも強力になったり不安定になったりするから機械の類も壊れやすくてね。木造船に腕利きの操舵手を雇った方が結果的に安全だしコスパも良いみたいなの」
成る程ね。そういった事情ならいつ故障するとも知れない機械仕掛けの船に乗る方が確かに酔狂だ
「そんな訳だから電子機器の類はここの金庫に今の内に仕舞っておいてちょうだい。電波とか磁場とか
アニタさんの忠告に従い一度荷物を部屋に固定されてたゴツい金庫に仕舞う。収納バッグの中なら大丈夫とは限らないしね
それから10分もしない内にどんどん海が荒れ始め、土砂降りと強風と高波と雷がバカみたいな規模で襲い掛かって来た。一応アニタさんは私は客だから休んでても良いとは言ってくれたけど、流石に大変そうだから普通に手伝う事にした
それからの船は高さ100メートル級の高波を垂直に登り切って乗り越えたり、それを可能とする
嵐を抜けた後は船体の痛んだ箇所を補修とかしながら航海を続けて夜になる手前辺りで鋭利に
「よ~し、今日はここまでだ。
「「「アイッサーーー!!」」」
嵐の中では舵輪を握っていた船長の人が号令を出すと直ぐに皆が錨を下ろしたり帆を畳んだりとキビキビ動いていく
その様子を眺めていると嵐の中では私達と同じように操船の為に走り回っていたパーシナモンさんが近付いてきた
「お疲れ様でした、ビアー君。お待たせしてすみませんね。あの島の周囲は迷路のように複雑な岩礁地帯に囲まれているので今居る場所を正確に見極めて海図と
彼はこっちが訊く前に疑念に答えてくれた。それは確かに薄暗い程度でも致命的だ
私が操船したなら船をオーラで
「それにしても近海の主が現れた時は焦ってしまったよ。幸い途中で引き返してくれたようだがね。過去にはアレに襲われてうちの船が沈められた事も有ったのだが、結局は船。アレからしても食い甲斐が無かったのを覚えていたのかも知れないね」
いや、割としっかり狙ってきてた気配だったけどね。しっかり殺気を送っておいたから
「因みにあの魚って美味しいと思います?」
「え?いや、どうだろうか?一応
「・・・ハンター世界のコイキングって全然最弱モンスターじゃないじゃん。見た目から違うし、アレが進化したら大型貨物船並みのギャラドスになるわよ。【はかいこうせん】が最新のゴ〇ラの光線並みになるわよ」
「ビアー君?一体なんの話かね?」
「いえ、もし美味しいなら今度は狩ってみようかなって話です」
「そんな感じの呟きでは無かったと思うが・・・だが、美味しいかどうかは実際に食べてみないと分からないな。何せ仕留めた実例が無いからね」
嵐の海域であの大きさ。加えて獰猛で滅多に会えないとなればそりゃそうか
それにパーシナモンさんの商会の船がずっと出入りしてるのに昔に少し襲われた事が有るだけって言い回しからして今回船が狙われたのも偶然っぽいしね
それから錨が海底にしっかり引っ掛かって船が固定されると乗組員も一部見張りなどを除いて思い思いに過ごしていく
夜番の為に船内に入って早々に寝る人も居れば釣り糸を垂らす人も居るし、仲間たちと馬鹿話に興じる人も居る。あとは態々海に飛び込む酔狂な人も居たわね
流石あの嵐を乗り越えられる人材だけ有ってハンター試験の予選くらいは通過できそうな人もチラホラ居る。まぁあの嵐に毎度揉まれてたらタフにもなるか
それにしてもスパイス鉱石を一つの商会が独占出来た理由が分かった気がするわね。単に海に囲まれてるってだけの50倍はヤバい所だった―――パーシナモンさんもアニタさんも私が相手だったから気兼ねなく誘ったんでしょうけど、船内で引き篭もってるの前提でも一般人じゃ来たくは無い場所ね。船内を転げ回って全身打撲待ったなしだ
それから明日までの暇つぶしにアニタさんが「ちょっと運動したい」と提案してきたので苦笑しつつも了承する。今や商会で一番強くなっちゃって力をぶつけられる相手を探してた感じね
試合が始まって甲板の真ん中で必死に襲い掛かって来るアニタさんを投げ飛ばしていると直ぐにギャラリーに囲まれて、途中からアニタさん以外にも腕に自信の有る人達も参戦してきたけど纏めて相手をした。攻撃を受け流して別の人に当てたり足払いなどで転ばせたりであまり傷つけないように配慮しつつ屍?の山を積み上げると拍手喝采を貰ったのでVサインで応えておいた
翌朝になって船はゆっくりと慎重に動き出し、クネクネとした航路を取りながら島へと向かう。『円』で感じる限り確かにかなり入り組んだ
私は目の前まで迫ったスパイス鉱山の威容を見上げる。この島そのものを包み込む異様な空気。
ああ、これはまたなんて―――
「なんて強欲な島」
限界まで人の欲望を
数日後、片方の
レツやゴン達とは別のグリードアイランド編が始まってしまった・・・まぁ良いか。ビアーにとっても赤ちゃんプレイ地獄よりはマシでしょうからね(ウソ?)