私としては暗黒大陸渡航は欠片も急ぐ要素は無いので安値で買い叩かれても問題は無いし、
課長は私が持ち運んだモノの中にはパプの犠牲者の干からびた死体も含まれているからちゃんと『本物』だと信じてくれたみたいだった
ここに在る国際環境許可庁の地下施設には別のパプの犠牲者の死体が保管されているはずだから検証が必要だと口で言いつつ心情的には確信を持ってる感じだ
直ぐに内線で防疫装備の部下を呼ぶと渡した荷物を回収し、私達も血液検査やらスパイス鉱山からここまでの道順やらといったところまで詳しく訊かれた
同じ五大厄災のゾバエ病ほど極端でなくとも未知のウィルスとかの可能性を考えなきゃいけないのが彼の立場だからそこは仕方ない
結局2週間ほど缶詰めにされたけど取り敢えず結果は白って事で納得してくれたみたい。まぁ盛大な健康診断だったと思うことにしましょう
検査員の人達が私の運動機能を診る時なんかはエイリアンを見る目をしてた気がするけど気にしたら負けだ
「長らく拘束してしまって済まなかったね。その間にキミが持ってきたあれ等も本物だと確認が取れて今は研究者の者達が寝食も忘れて解析に勤しんでいるよ」
課長さんは一応今のところ純粋に協力しかしていない私に多少態度は軟化しているのかな?この人も私と一緒に缶詰め状態ではあったでしょうに・・・まぁ不意打ちで生首ぶつけた所で彼の職場には五大厄災の被害者の凄惨かつ歪で異形な死体や
「さてそれでは人類滅亡の可能性を何割か削る偉業を成した英雄をもてなさせて欲しいのだが、どうかね?外を観れば絶景の広がる当タワー自慢の一室で歓待させてもらうよ。キミとは是非ともきっちり話をしたい」
私はそのお誘いに笑顔で返事をする
「お断りしますね。それではお仕事頑張って下さい」
何で態々缶詰めから解放されたお祝いに一度顔を合わせただけのオッサンの招待を受けてやらなきゃならないのよ
「待て待て待ちなさい。若くとも社会人がそのようにドライでどうする。そのような事では成功するものも成功・・・しているな、うむぅ」
自分で言っててその理屈は私には弱いと思ったのか唸るようにして言葉が途切れる。パプ討伐はトッコー所属の彼からしたら成功以外の何モノでもないからね。私が
「―――良いだろう。キミ相手なら正直に話した方が良さそうだ。人間界のとは云え、五大厄災の一角を崩し、あまつさえ
「処遇?
「そうだな。こちらが始めに提示した金額は救世の英雄に対して支払うには安過ぎるくらいだった。そこから始まる交渉劇はさぞ苛烈になるだろうと身構えていたうちの経理は肩透かしを喰らっていたよ。あとキミは一般人ではない」
安過ぎると云っても5億ジェニーは貰ったけどね
希少性は抜群だけど目先の有用性には乏しいパプの死骸はまだしもパプの被害者の身体の中から転げ落ちて洞窟の水滴がヒットする事で私を感電死させかけた無尽石まで含めて5億ジェニー・・・改めて考えなくても安過ぎね。まぁ言ったようにそこから交渉合戦をやる腹積もりだったみたいだけど、缶詰期間中に私が防疫装備で書類とか持って来た担当者に「じゃあそれで」とさっさとサインしたら唖然としてたっけ
「(サイン済みの)今だから聞きますけど国際環境許可庁としては最大どれくらい出せるつもりだったんですか?」
「そうだね。最悪分割払いを視野に入れる程度には、と答えておこう。庁として直ぐに動かせる金には限界が有るが
へぇ、随分と譲歩する事も考えてたのね。最悪でも私を敵に回したくはないって事かな?それにしては最初の金額が安過ぎるけど、私の性格とかを計る
「しかしキミの無欲とさえ云える回答が逆にトッコーに出資・支援している各国の上層部の興味を強く惹いてしまったようでね。是非とも直接話を聞きたいそうだよ」
五大厄災の情報を共有してるのとか上層部の中でも上澄みじゃないですか、やだ~!
「はぁ・・・仕方ないですね。ただこちらも本業も有りますし可能な限り手短にお願いしますよ」
「それについては問題ないさ。既に関係者は全員集まっている。話し合いはこの後すぐに始まる予定だ」
この課長さんだけのお誘いなら断ったけど、トッコー関連のお偉いさんが集まるとなるとビヨンド抑止力を効果の一つとして見込んでいる私としては悪印象を持たせるのは余り良い事とは言えないからね。まぁお偉いさんと云っても各国のトッコー支部を管理してる環境省の副大臣とか副大臣補佐とかそこら辺でしょう。サインをしたのだって一昨日の事だし緊急で集まっただけなら大臣どころか支部長クラスかも知れないわね
・・・などと考えていた時期が私にも有りました。課長さんに案内して貰った部屋は確かに簡単な条件さえ整えれば見晴らしも良いはずの大部屋でした
その簡単な条件である窓を開け放つという行為が固く禁止されている事は防弾ガラスの外側に更に存在する分厚いシャッターによる二重防壁とV5の首脳陣が勢揃いな絵面を観れば判ろうと云うものだ。各国のトップがこの場に5人・・・一応私を入れたら6人か。ともかくそれだけ揃っていたら色々と警戒しなくちゃいけないのは頷ける。まぁ私も国主なのはそもそも知られてないけどね
「集まったようだな―――それではこれよりV5首脳会議を開催する」
首脳陣の視線が入室した私と課長に注がれ扉が閉まった辺りでデカっ鼻の人がそう宣言した
う~ん。早くも帰りたくて仕方ないわね
てか小娘を原稿も無しのアドリブで突っ込む
∇
V5(近代5大陸)―――ベゲロセ連合国、サヘルタ合衆国、オチマ連邦、ミンボ共和国、クカンユ王国からなるその一つ一つが人間界において世界地図の一割を越える莫大な国土とそれに伴う経済力・軍事力を持つ世界の覇者達
200年より更に昔に暗黒大陸へと挑戦し続けるも辿り着く事すら出来ずに全滅。約200年前に暗黒大陸を不可侵とする条約がV5を始めとする加盟国全てで(表向き)結ばれた
条約締結後にもV5が秘密裏に暗黒大陸への挑戦を続けていた事から当時は送り出した調査団が音信不通となるだけの暗黒大陸
条約締結後も近代の科学技術の著しい進化が自信へと変換され、V5各国が圧倒的な国力を惜しみ無く投入するも暗黒大陸の五大厄災を前に
当時の先端技術に各分野のプロフェッショナルを数も質も揃えてリターンを求め、しかし五つのルート全てでまともな情報すら持ち帰る事すら出来なかった人外の魔境
≪あそこはまだ人類には早過ぎる≫―――これが大国として持てる知恵と力の全てを暗黒大陸へとぶつけた彼らが自ずと辿り着いた
だからこそプロハンターと云えどもただの個人が暗黒大陸の攻略と同価値の成果を上げてきたと云う情報は多忙なスケジュールを背負わされた彼等の重たい腰を軽くするのに十分なカンフル剤として機能したのだ
首脳会議の宣言がなされて初めにトッコーの課長が事の経緯を詳しく、しかし可能な限り簡潔となるよう無駄を省いて説明する
もっともその無駄=事前知識を持たずに五大厄災ってなに?リターンってなに?と一々補佐役に小声で訊いている首脳はある意味図太い性格と云えるだろう。資料読んでこい
一通りの状況説明が終わるとビアーが課長の隣に呼ばれて立つと首脳陣の視線がビアーただ一人に集まる
「ビアー=ホイヘンス君。先ずは謝罪をしよう。いきなりこのような場に呼び立てて済まなかったね。我々としてもスケジュールに空きが有る訳ではないので可能な限り迅速かつ情報を秘匿して集まる必要があったのだよ。我々もそこそこ有名人なのでね」
アメリカンな顔立ちの男性が冗談っぽく言うと眼鏡を掛けた黒人の女性がその先を引き継ぐ
「次に感謝の意を示しましょう。人間界に巣くった五大厄災の討伐。これは暗黒大陸から新たなリターンを持ち帰る事よりもある意味で重要な事であると言えます」
「キミが単純な金銭や権力への興味が薄いのは理解出来た。故に我々が訊きたいのは今回パプと相対したキミが暗黒大陸そのものへの興味をどれだけ抱いているのかだ。今回の
最後に5人の中で一番皺の寄せた男性がビアーを刺すような視線で問い掛ける
大国を背負う者として若者であるビアーが調子付き、世界を危機に陥れる可能性は看過できる事柄では無かった。パプの件が
ビアーは知らない事だがこの部屋の監視カメラは体温や発汗量、心臓の鼓動などもキャッチ出来る最新式を導入し、簡易ではあるが嘘発見器の役割を持つ
更にいざとなればバズーカでも壊せない分厚い隔壁が幾重にも下ろせるように準備されており、サミットを警護する武装隊も指令が下ればビアーの敵となるだろう
もっとも装甲隔壁を素手で貫き個人が携帯可能な銃火器程度では今や避けるまでもないビアー相手にどれだけ効果が有るかはお察しだが、それを念能力者でもない彼等に察しろと云うのも酷な話ではある。常識と云うフィルターは時として未知への評価を曇らせるのだ
「私としては法を破ってまで手を出す程の興味は無いですね。暗黒大陸ツアーか友人と巡るご当地スイーツツアーかと言われたら後者を選びます。パプ相手にも楽勝という訳でも無かったですし、仮に要請を受けたとしてももう少し実力を付けてからでないと危なっかしくて嫌ですね。実際今回のパプも出会いが一年後とかなら楽に狩れてたと思いますし―――私は命懸けの冒険より気楽なツアーを楽しみたい
ビアーの返答を訊いた眼鏡の男性は静かな笑いを溢す
「ふっ、確かに暗黒大陸ではスイーツ巡りは望むべくもないからな。キミが狡猾な野心家や無謀で自己満足の冒険家では無いようで安心したよ」
「私はハンターです。安全に獲物を狩れればそれがベストですよ。困難に立ち向かうのは必要に駆られた時だけで十分です」
ビアーのバイタルに変化が有ればサインが送られるようになっているが、質問に対して至って平常のままなので一先ず安堵の感情が彼等に巡る。無論嘘発見器の精度を十全に信じている訳ではないが、判断要素の一つにはなるだろう
「では仮に貴女が十分な実力を身に付けたと判断した時に私達が暗黒大陸攻略を要請したら応えても良いと云う事?」
補佐役からあれこれ説明を受けていた女性は漸く全体像が見えてきたのか国益に繋がる問いを投げ掛ける
「あれ?暗黒大陸の件は基本不可侵ではなかったんですか?」
ビアーが白々しく
「仮にと言っただろう?それに条約とは情勢に合わせて変化するものだよ。未来がどうなっているかまでは流石に今の段階では保証しかねるがね」
「なら仮にと云う事でお答えしますね。仕事として依頼するなら報酬次第ってとこですかね。今回は偶然ハントしたものを提出しただけですし、無尽石とかも私が持ってても仕方ないですからね。ですが別に安く見られたい訳でも侮られたい訳でもないんですよ。雇うのならば誠意は見せてください。それが健全な人間関係ってものでしょう?」
「全くもって正論だな。立場のある者は報酬を支払えないと逆にモヤモヤするものだ。キミがその辺りも配慮出来る人物で安心したよ―――では次に我々が手にした初めてのリターンについて」
「嘘ですよね」
議題が次に移ろうとしたその時、ビアーの口から出た言葉に一同の動きが止まる
「なにがかね?」
「人類がリターンを手にするのは記録ではこれで
クスクスと笑いながら告げるビアーに大国を預かる首脳達は背筋に薄ら寒いものを感じる。この小娘はどこまで深い事情まで知っているのかと―――なお約一名「ドン=フリークスって誰?三原水ってなに?」と小声で話しているのはご愛敬?だ
「一体どこでそれを?使い道こそないが、だからこそ新大陸紀行よりも手に入り難い情報のはずだ。機密施設への侵入となれば―――」
「ええ。だから侵入なんてしてませんよ。これはただの推測です」
あっけらかんと否定するビアーに皺の寄った男性は苦い顔をする
「カマ掛けか。ならばどうしてそう思ったのか訊かせて貰おうか」
「ただの消去法ですよ。新大陸紀行が販売された当初は筆者の空想として扱われていたそうですね。でも人類は本に記されたリターンを求めて幾度も暗黒大陸へと挑戦している。なら当時の人達に本の内容を信じるだけの根拠が後に示されたのは明白です。ならそれは何か?万病を治す香草?残念ですが傍目には判りにくいでしょう。究極の長寿食ニトロ米?これも効果を確認出来るまでに時間が掛かりすぎるのでパフォーマンスには向いてません。今回提供した無尽石も300年前は石炭と蒸気の時代です。電気に着目する者は居たでしょうが、強力過ぎて逆に扱えません。国益を求めて動くには100年以上は早いです。となると残るは錬金植物メタリオンとあらゆる液体の元となり得る水の三原水。確かV5が一番最近挑戦したのがメタリオンでしたね。過去に贈られたのがメタリオンなら実を付けるまである程度時間が掛かるだろう事もそうですが、育成のノウハウが欠片でも残っているはずです。ならそんなメタリオンへの挑戦を最後にする意味がない。そんな訳でもっともパフォーマンスに適しているのは三原水と考えられた訳です。確信したのはさっきですけど」
首脳達はビアーに対して嘘発見器を仕掛けていた。しかしビアーはその身一つでその真似事が可能なのだ
先程の「正体は三原水」の後にワンセンテンス入れたのは各人の反応を観る為。違うようなら「いえ、メタリオンかしら?」と続けていただろう
相手の反応を観察して手札を切り替える詐欺師の常套手段である
「理に叶った推測だ。だからこそ理解出来ん。何故今それを口にする必要があったのかね?」
推理は理に叶っているのに行動が理に叶っていないチグハグ具合を指摘する。三原水の事をこの場で追及する意味が有るのかと
「確かに絶対的に必要な事ではないわね。今回の件に対する報酬については蹴ってる訳だし。だからこれから言うのはただの
ビアーは指を一本静かに立てて周囲の視線と意識を集める
「かつての三原水。研究も出来ないくらいの少量は手元に残っているんでしょう?ドン=フリークスが研究用を配慮したとは思えないけど運んできた入れ物からほんの僅かなら絞り出せたはず。でも反応を視ようとすればただの違う液体に変質しちゃうし気化する事も考えたら手は出せなかったでしょうね・・・その三原水を一滴で良いから貰えないかしら?」
ビアーは缶詰にされていた時でも当然ながら『円』などで修行を行っていた。その際に国際環境許可庁の地下に厳重にビンの中に保管され、ビンの外側からなんとか解析を行おうとする研究者の動きも捕捉していたのだ
ソレが三原水だと直接的には判らず、しかしどう考えても厳重度合いが飛び抜けている扱いに当初はゾバエ病患者の体液を抽出して解析でもしているのかとも考えたが先程のカマ掛けで得た反応からその可能性に至ったのだ・・・要するに行き当たりばったりの推理と思い付きと提案である
(不意打ちでサミット招致。いえ、もはや召致(強制呼び出し)よね。大した
この部屋に来るまではそこそこのお偉いさん相手に無難に受け答えするだけだと考えていたビアーだったが折角V5のトップが揃っている状況に今だから頼めそうな好奇心が顔を覗かせたのだ。加えてビアーの事を依頼さえ出せば都合よく動かせる小娘と侮らせない効果も期待している
別にV5と政治合戦をしたい訳ではないビアーからすれば最初から『対等』と扱ってくれた方が結果として面倒が少なくて済むのだ
「たった一滴の三原水。確かに我々全員が承認すればその
「別に何にも使わないわよ。受け取った分は直ぐに返却しても良いしね」
「『は?』」
意味の分からない要求の真意を問いただそうとしたら意味の分からない返答を秒で返され、彼らの思考に空白が生まれる。コイツは何を言っているのかと生まれた空白に疑問符が満ちる
フリーズする代表各人を見渡すとビアーは肩を竦める。暗黒大陸への進出と五大厄災を始めとしたリスクにリターン。それらのハントや調査が進めば必ず将来的にビアーの預かり知らない場所でのハントが始まる
元々ビアー1人で人類国家が求める需要を満たす事など不可能なので仮に彼女がサクサクと暗黒大陸からリターンを持ち帰ったとしても大人しくしているのは最初だけだろう
何よりも重要なのは提供した素材を解析するのに彼等には足りていないものがある
どれだけお宝を持ち帰ってもそれを持ち腐れにされたまま素人(一般的プロ)が暗黒大陸へ送り込まれればまた厄災を持ち帰えさせられて人類滅亡しかねないのだ
ビアーは科学技術の発展に伴う力を軽視してはいない。前世での技術革新の中で育った経験と暗黒大陸の全貌が知りたきゃスペースシャトルや人工衛星でも造れば良いじゃんと云う身も蓋もない前世からの常識に囚われているからだ
ともあれ伸び代しかない現代技術を早急に未来へと羽ばたかせる必要性を彼女は感じ取っている
最初から有益であるリターンはまだしもリスクに関しては既存の科学的、生体学的視点とは別の見方が必要だ
「皆さん念能力をご存知ですかね?超能力と言っても良いですけど、首脳たる立場なら例えば自国の軍隊の中に異様に強い特殊部隊が居たりとか程度は耳にした事も有るんじゃないですか?」
念能力は基本的に秘匿される力だ。大国の国家元首であろうと詳細を知らない事は何も可笑しくはない。何故なら念能力者は大抵の場合現場でパフォーマンスを発揮する現場のプロフェッショナルとなる場合が多く、現場ないし小さな班のリーダー位が情報を知っている程度が丁度良いからだ
現場で働く者は誤解を恐れずに云えば末端とも表現できる。大局的な情報を処理するのが仕事の国家元首との直接的な接点が乏しくなるのは必然とも云えた
V5の首脳陣は各々に思い当たる節が有るのか確信は無いものの肯定にも似た空気を醸し出す。約一国「ハンドパワー?」「手品の話ではありません」とコント?を繰り広げている所も有ったがそれを気にする者は居なかった
「念は血液型とかみたいに生まれ持った特徴が有るんですけど、多分10人に1人くらいの確率でこういった真似が出来る人が居ます」
ビアーは配られていたコップにペットボトルの水を注ぎ込むと部屋の角に置いてあった観賞用植物(隠しカメラ付き)から葉っぱを1枚拝借して水に浮かべて軽く『練』をする
軽くとはいえ明らかに有り得ない水量がコップから零れ落ち、テーブルの上に水溜まりを作っていく光景に首脳陣の視線は釘付けとなった
「少なくともただの水なら
(
強化系の水見式は水量が変化する。しかしそもそも全ての液体が反応を示す訳ではない
もし仮にそれが出来るなら水量が増える系の強化系の能力者は実質全員三原水と同じ扱いになってしまうだろう
しかし三原水は全ての液体情報を内包している
(『練』の影響を受ける=増える情報と影響を受けない情報が混在するならただの水の何百分の一か何千分の一か、倍率は知らないけど可能性は十分に有ると思う―――そう。三原水は
首脳陣は顔を見合わせて頷くと課長に三原水を一滴分持ってくるように指示を出す
同じタワー内と云えどリターンの移送なのでお互いの監視も含めて各国首脳のSPから2人ずつ選出され課長の護衛を担当した
V5首脳の連名とはいえリターンの持ち出しには細心の注意を払う関係上時間が掛かるので一旦休息タイムだ
三原水の検証と課長の帰還が無ければ五大厄災やリターンの取り扱いについての話は先に進ませる事が出来ないのでその間に彼等はビアーを何とか自国へと取り込まんと勧誘を掛ける姿も見受けられたが当然のごとく袖にされて悉くが撃沈した
そうこうしている内に戻ってきた課長が厳重に護られた箱をテーブルの上に置き、大急ぎで作成したであろうリターン譲渡の承認書類を首脳陣全員と自分と受け取り手であるビアーにサインさせ、
中から出てきたのは小さなスポイトに入った光の角度によって何色にも見える透き通った液体である三原水だ
ビアーは用意されたコップというよりは平べったい皿に水滴を垂らすと葉っぱを被せて『練』をする。始めは一般的な念能力者の『練』レベルから徐々に出力を上げていく事にしたのだ
始めは一見変化の見受けられない様子に落胆の色が浮かんでいた周囲もビアーがそれなりの能力者=1時間の『練』持続と同じくらいの顕在オーラを出して葉っぱが震え、その下から三原水が顔を覗かせた辺りで期待と驚きの声が上がった
原作ゴンが最初にやったような『練』を会得したばかりの能力者のような増加具合だ
ビアーは続いて十二支んや幻影旅団のようなその上には突き抜けた上澄みしか居ないレベルの『練』を行うと原作でウィングがやっていたような大きめの器くらいであれば直ぐに満杯になってしまう勢いで三原水が増える
課長がきっちり用意していたボウルのような大きい受け皿に中身を移し変えると最後の確認とばかりにビアーは本気の『練』を試し、10リットル分の容器を数秒で満杯にしてみせた
(うわぁ、私の本気でこんくらいって木っ端能力者じゃ丸一日頑張っても精々お
実際に増えた三原水を見て感動という名の思考停止をしていた首脳達も再起動して利益・国益へと頭を回し始めていた
だがそんな彼等の思考を遮るようにビアーが一つ
「はいはい、話はまだ終わってないですよ。訊く気が無い人は
ガヤガヤと各々の補佐役と話して完全に
世界を代表する大国のトップ達はいつの間にか自分たちが親鳥からエサを貰う雛鳥のようになっている事に気付いていない
ビアーは始めはビヨンドが動いた時の牽制として自分の存在を印象付けられれば良かったが、今やV5は暗黒大陸関連の動きを見せるなら全ての命令系統を飛び越えてビアーに助力を乞うだろう
予定と予想を越えて印象付ける事は出来た。正直これ以上は望めないだろう
(ならサービスタイムはこの辺りで終了ね。ここから先は有料タイムへと突入しましょうか―――行くわよV5。国庫の貯蔵は十分か?
・・・いや、そんな搾り取ったりしないけどね)
実際に過去に人間界に持ち込まれたであろうリターンって何ですかね?いや現段階ではただの作者の妄想ですが