毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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決闘とゲームクリア

ポンズ姉からのお仕置き(テレ隠し)を受けて私が正座から解放されたのは三日三晩経った後でした。その間誰も来てはくれず・・・いえ、カストロさんだけは何故か朝と夜に虎咬拳(ここうけん)の型を1時間くらい掛けて高速ループで何度も披露してから次の1時間は私の前で同じように黙々と正座しながら精神集中して帰っていったけど・・・

 

よく分からないけど『点』がより定まったのか『纏』の練度がどんどん高まってたわね・・・まぁ成長するのは良いことよね、はい

 

私もひたすらに一人で集中出来る環境(カストロ眼中無し)だったので覚えたての『王の律動』の素早い発動を意識して鍛えたわ

 

そう言えば私の心音が空間を響かせてる時にカストロさんが居ると型稽古や精神集中してる時でもひたすらに涙を流してたわね。感涙する程に太鼓が好きだったりしたのかな?今度和太鼓でもプレゼントしましょうか?(すっとぼけ)

 

ともあれ皆との再会(2回目)を果たしたので先ずはお互いに情報交換よ。緊急でサミットが開催されたのは三日前にポロッと口にしたので改めて説明しても驚かれはしなかったけどその分呆れられたような感じがしたわね

 

レツ達の方は残るはツェズゲラ組の独占しているカードと未だに誰も手にしていないNo.2の『一坪の海岸線』だけとの事

 

ハメ組やゲンスルー組が居なくなればカード化限度枚数までカードを入手出来るチームは限られているからね

 

「で、残るはツェズゲラ組の独占カードである『一坪の密林』と『浮遊石』と『身代わりの鎧』に情報ゼロの『一坪の海岸線』って訳ね」

 

「うん。先ずは『一坪の海岸線』を見付けたいんだけど、『道標(ガイドポスト)』で調べたソウフラビって港町には何度足を運んでも何も分からなかったんだ。正直に言って今は手詰まりかな」

 

あ〜、やっぱりそこで詰まっちゃってたか

 

イベント条件である15人以上で『同行(アカンパニー)』でソウフラビに跳ぶってのが鬼門なのよね。グリードアイランドをまともにプレイ出来る実力の持ち主がそもそも少ないからそんな大人数で徒党を組んでるチームが無い

 

ハメ組だけは可能性は有ったけど以前の彼等は目立たずコソコソと動いていたから大人数で『同行(アカンパニー)』を使うなんて基本的に無かったはずだしね。有ったとしても唯一スペルカードを買えるマサドラへの直行便くらいでしょうしね

 

う~ん。適当に理由付けて元ハメ組メンバーを大人数駆り出せば『一坪の海岸線』の情報を得ることもその先の入手も難しくはないんだけど、年明けしてちょっとしたら暗黒大陸案件のキメラアントとかち合う可能性が有るからギリギリまではビスケのマッサージ付きの修行で地力UPを狙いたいのよね。勿論初手でキメラアントの女王をなにもさせずに駆除(ハント)出来ればそれがベストだけどね―――って云うかマッサージに関してはレツの人形で再現可能だけどそれ以外のビスケの高い指導力までは再現出来ないからね

 

私はそこまで困らないけど系統別修行とかでの細かいアドバイスとかは皆の今後の成長に直結するしね

 

そんな訳で取り敢えず新年明けて暫くはソウフラビ探索組と修行組をローテーションしていく形にする。元ハメ組は徒党を組んでもまだ弱いから時間一杯基礎を叩き込みまくってから彼等も使ってローラー作戦で情報収集しましょうと提案すれば問題ないでしょう

 

時間はあまり無いけどモブでも原作レイザーの部下の死刑囚になんとか勝てる程度には出来ると思うし、将来モモの親衛隊にする事も考えたらこっちの育成も手を抜きたくはないからね

 

なによりさっさとクリアして新年1発目に同時公開される私とネテロ会長の映像作品のホットなニュースをリアルタイムで見たくないから修行という名の引き籠り期間は絶対に必要な行程なのよ!!

 

脳内で強めな語気で気合いを入れて、されど決して表には出さずに話の流れを誘導する

 

幸い情報がゼロの現状では地道に探すしかないと云う意見はその通りなので特に反対される事も無かった・・・と云う訳で修行だ修行!

 

基礎力の向上もそうだけど以前カストロさんが言っていた天空闘技場の三人(ギド、サダソ、リールベルト)も一度この目で確かめておきたかったのと問題なければ元ハメ組の指導も手伝って貰おうとゲーム内に呼び出して貰って(くじら島経由)更なる効率化を図る

 

新年近くに合流した三人は確かに原作のように『新人狩り』なんて(こす)い真似しなくてもやっていけそうな強さを持っていたわね

 

螺旋旋風のギド、幻腕のサダソ、瞬雷の蛇リールベルトの二つ名に則した彼等の『発』は模擬戦でゴン達をすら一時翻弄したからね―――え?どんな『発』でどんな試合内容だったのかって?いや~、一言二言で語り尽くせるものじゃないわね。ただ主人公組という才能の暴力に原作モブがあれだけ食らい付くとはやっぱり下手な必殺技の開発で満足せずに愚直に鍛え続ける事の重要さを改めて実感した気分だったわ。まぁ彼等も仮にも格闘家の聖地(メッカ)の最上層の闘士だからそこらの一般人と比べちゃいけないんでしょうけどね

 

私?カストロさんに「是非とも彼等に全力の『練』を魅せて下さい」と言われてその通りにしたら全部終わったとだけ言っておくわ。と言うか本当にやったのはそれだけだから他に語れる事は無いのよね・・・私の事に関しては

 

例の三人は『練』をする際の距離が近すぎたのかちょっと心停止してカストロさんに気合い注入(心臓打ち)で息を吹き返してた位ね。元ハメ組メンバーみたいに1キロくらい離れて貰ってた方が良かったかも知れない。それでも気絶者は出たみたいだけど、それは『纏』のまま見学した人達。咄嗟(とっさ)に『練』に切り替えられたメンバーは気絶しなかったからね

 

当然気絶メンバーは修行内容が更にスパルタになったみたいだけど、自業自得だ

 

まぁその日以降彼等の私を見る目に凄く純粋なキラキラとした輝きが灯るようになってちょっと引き気味になったけど、皆からは「自業自得」だと言われた。解せぬ・・・

 

そんなこんなで年が明け、初夢にアイドルコンサートの終わりに握手会代わりにファン相手に赤ちゃんプレイを個別サービスする地獄企画を夢見た気がしないでもないけれど気のせいだと自分に言い聞かせて元旦くらいはと元ハメ組も巻き込んだ全員でどんちゃん騒ぎをする

 

指定ポケットカードにある美味しいお酒が造れる『酒生みの泉』でお酒をソウフラビ探索の(かたわ)らに沢山用意したり、性別が変わる『ホルモンクッキー』やどんな声音でも出せる『ウグイスキャンディー』なんかも宴会用に確保して盛り上がった

 

子供の私達はお酒は飲めないけど参加者の殆んどが大人だからね。主催者として嗜好品(しこうひん)くらいは用意もするわよ

 

私も宇宙帝王ボイスで「私のオーラ量は7…3万です。ですが勿論フルパワーで戦う事など致しませんのでご安心を」とかやったわね。安心出来るかってツッコミも飛んできたけどさ

 

私なんてもう10年以上修行してるのにブラックビアーどころかゴールデンビアーにも至れてない雑魚なんだから(比べれば)余裕、余裕

 

私が使えるのは精々4倍界王拳くらいよ

 

常時発動可能なのは強味だけど『ずっとスーパーサイヤ人(実質50倍界王拳)状態を維持』に比べたら見劣りするからね―――ああ!私もインフレ特急に乗車したい!!

 

まぁ無い物ねだりしても仕方無いので結局のところ毎日ひたすら『纏』と『練』

 

他の人と違ってあれこれと技能を伸ばす必要がない分だけやるべき事が明確かつ単純で悩まなくて良いのは有難いわね

 

我ながら良い能力を創ったもんだわ(自画自賛)

 

そこから暫くの間皆と一緒に修行という名の終わりなきゴールへと邁進(まいしん)する日々

 

途中からキルア達が「ゲームクリアだけが救済の道」とか言ってソウフラビ探索を血眼になってやり始めたけど残念。それだけじゃ見付からないのよね

 

初めの内は『一坪の海岸線』も程なく探し出せると踏んでいたみたいだけど、全く手がかりの一つも見付からない現状にこのままずっと修行が続くのではないかと危惧したみたいだ

 

確か原作ではゴン達がグリードアイランドをクリアしたのが3月の中頃でそこからゴンが機転を利かせてクリア報酬に『同行(アカンパニー)』を使えるようにしてジンさんに会いに行こうとしたら恥ずかしがり屋の彼が弟子であるカイトの下へと跳ばす設定にしてたのよね

 

それから1ヶ月くらいカイトの居たカキンでの生態調査の仕事を手伝ってからキメラアントの情報を入手するって流れだ

 

キメラアントの女王蟻が暗黒大陸から人間界に流れ着くのがクリア時期と同じだったはずだから3月の頭にクリアしてキメラアント編の舞台である自国(NGL)に移動すれば十分間に合うわね。態々私の国の国民の大虐殺を見逃して世界の危機を煽るつもりなんて毛頭無いし、ここは原作ブレイク一択でしょう

 

そんな訳で私だけが期日(ゴール)を知る中で皆を限界まで追い詰めているとセーブアイテムの指輪からバインダーが突如として飛び出す

 

≪他プレイヤーがあなたに対して『交信(コンタクト)』を使用しました≫

 

バインダーから放たれた定例文音声に続く形で知らない男性の声が響く

 

≪初めましてだな。俺はツェズゲラと云う者だ≫

 

その自己紹介の内容に周囲に居た皆の注目が集まる。マネーハンターとして一ツ星(シングル)の称号を持ち、私達が出張ってくる以前はゲームクリアの最有力として名が挙がっていた人だから関心も一入(ひとしお)

 

私達もゲームクリアの為には彼のチームから独占カードを入手する必要がある

 

「もう既に気付いてる事と思うが我々は先日『一坪の海岸線』を手に入れた」

 

ほわっつ?

 

思わず周囲を見渡すけど皆一様に首を横に振るばかり。そりゃここ最近ずっと修行浸けだったからね。ぶっちゃけ他のプレイヤーへの関心が下がってたのは否めない

 

「これで我々が残すところは『大天使の息吹』のみ。対して君達は我々から4つのカード(一坪の密林、一坪の海岸線、浮遊石、身代わりの鎧)を奪わなくてはならない訳だ」

 

確か『一坪の海岸線』以外はツェズゲラ組が独占してたはず

 

私達の台頭に焦った二軍のプレイヤー達が15人以上の徒党を組んでソウフラビで情報を入手してツェズゲラ達に情報を売ったのかしらね

 

人が集まればコッソリおこぼれに(あやか)ろうって人も居るでしょうし、確か他に『奇運アレキサンドライト』も原作では入手してなかったけど、あのカードは持ってるチームは上位ランカー以下でも普通に居るので普通に奪うかトレードで入手出来るでしょう

 

『一坪の海岸線』はゲームマスターのレイザーとその配下相手にスポーツの勝負で8勝しなければならないし、実際はレイザーとレイザーが念で造り出した念獣7体による8対8のドッジボールで勝利しなければならない

 

つまりレイザーを引きずり出すのに3~4人とレイザーと戦う8人はそれなりの使い手が欲しいイベントだ

 

ツェズゲラ組は全部で4人。残る7~8人は他の上位ランカーと手を組んで揃えたでしょうね

 

報酬はお金か一部独占カードの分配かってところか・・・『身代わりの鎧』辺り?

 

原作のレイザー戦と違ってゴン抜きで戦ったなら彼等だけでも十分勝機は有るゲーム難易度だっただろうしね。流石に無傷ではなかっただろうから回復に何日か置いてから連絡してきてるだろうから私達が情報を既に入手してる前提で話してるわね。それで『大天使の息吹』を独占所持している私達との決戦交渉を仕掛けたい、と

 

・・・ごめんレイザー。キミ、空気になったわ

 

まぁ私をカキンまで跳ばした罰だとでも思っといて

 

≪そこで提案だ。お互いに足りないカードを賭けて勝負をしないか?こちらは4枚そちらは1枚。無論SSカード1枚とSカード2枚の差分はこちらの有利な条件を呑んで貰うがね≫

 

「随分と明け透けね」

 

≪ここまで来ればスペルカードでやりあったところで千日手だろうからな。勝負は代表者三名を選び一人一勝負での1 on 1。先に2勝した方の勝ちだ。SSカード1枚とSカード1枚分のハンデとしてそちら側の代表者からビアー=ホイヘンスとクラピカを外して貰う≫

 

清々しい程に分かりやすく星持ちハンターを排除しに来たわね。ビスケは知らない感じかな?彼女のストーンハンターとしての功績は派手とは言い難いし、加えてそれも昔の記録だからね。ビスケはバインダーにもフルネームで登録してる訳でも無いし

 

ツェズゲラ組は全部で4人だけど確か1人は探索・追跡系の能力だし4人だと引き分けの可能性も出てきちゃうから奇数にした感じか

 

「残るSカード1枚分の要求(ハンデ)はなにかしら?」

 

≪決闘日にそちらの先鋒、中堅、大将が誰なのか事前に教えて貰おうか。こちらは相談の上で決めさせて貰う≫

 

成る程そう来ますか。念での戦闘は純粋な格闘技よりもパッと見で得られる情報は念能力が千差万別な以上、相対的に少ない

 

でも相手は慎重さが売りの星持ちハンターでグリードアイランドの選考会で数多の念能力者を観察してきた彼なら原作カキン第一王子の部下の観察眼の人(ヒュリコフ)並みに情報収集も可能かも知れない。と云うか観察眼に自信が無いならこんな提案してこないわよね

 

そして観察()た上で誰が誰と戦うか決めようって腹積もりな訳だ。カード差によるアドバンテージを最大限活かしてくるわね。らしいと云えばらしいけど

 

「OK.交渉成立ね。場所と日時は?」

 

≪ソウフラビから南西20キロ地点に無人の村が在る。そこから北に5キロの荒野としよう。時間は明後日の朝9時。お互い万全を期そうではないか≫

 

この交渉を含めてね。まぁゲームクリアを放っぽってた私が悪いんだけど

 

「じゃあ明後日に」

 

そこまで言ったところで『交信(コンタクト)』の時間制限となったので自動的に通信は切れた

 

皆に相談しようにもゴンやレツ達全員がこの場に居た訳でも無ければ急ぎの話でも無いので夜になって皆が自然と集まってから話題を切り出す

 

ツェズゲラと残りのカード賭けて決闘する事になったわ。クラピカと私は不参加ね!

 

「―――ビアー、別に異論が有る訳じゃないけどボク達に一言くらいは事前に相談すべき案件じゃないの、それ?」

 

「そうね。急ぎでもないなら相談なさい。凡ミス一つで一気に状況が苦しくなる事なんて幾らでも有るんだから」

 

ごもっとも。別にその場で返事する必要があったかと問われればNOと言わざるをえない

 

「そんな事よりメンバー決めようぜ。元ハメ組は流石にこの戦いを任せられる程育ってねぇしカストロ、ギド、サダソ、リールベルトはそもそもゲームプレイしてねぇ。結局は何時ものメンバー(ビアー、クラピカ除く)だな」

 

「私はパスね。向かい合っての決闘なんて待ちが基本の私のスタイルじゃないし」

 

「ワタシもパスだわさ。ツェズゲラってあんまり好みの顔してないのよね~。モチベーション上がらないわよ」

 

おお、これで一ツ星(シングル)二ツ星(ダブル)三ツ星(トリプル)と星持ちハンター全員不参加ね

 

「はいはい!オレ戦いたい。ジンも「ゲームを楽しめ」って言ってたし、これが最後なら参加したいや!」

 

「そうね。ゴンは確定で良いんじゃない?後はレツかキルアかレオリオね」

 

「ん~。ボクも遠慮しとこうかな。観客として観る方が劇のネタを考え易いしさ」

 

レツも辞退ね。となると自動的にキルアとレオリオが参加枠だ

 

「なら後は戦う順番ね。大将に据えちゃうと戦えなくなるかもだし先鋒はゴンで行くわよ」

 

「「なら中堅はオレね/だな」」

 

セリフの被ったキルアとレオリオがバチバチと視線をぶつけ合う

 

「大将はレオリオだろ。トリックタワーの時もそうだったじゃん。オレは謙虚に中堅でお茶を濁してるよ」

 

「完勝して白星上げようとしてる奴がなに言ってんだ?ゴンも勝つとしてそこで白黒はっきり付けようって魂胆にお茶を濁すなんて表現使わねぇんだよ。大将席でゆっくり辞書でも引いて勉強してこい。その間に俺がお前の分も含めてぶっ飛ばしてやるからよォ」

 

二人ともゴンも自分も敗けるなんて考えてないもんだから三番手の大将を押し付け合ってるわね―――あ、ビスケの脳天カチ割りチョップが炸裂した

 

それからビスケの「じゃんけんで決めなさいな!」との一声に従い二人がじゃんけんを行った結果中堅がレオリオで大将がキルアに決まった

 

大将になったキルアは崩れ落ちてたけど普通は名誉な位置付けなはずなのよね。だからそんなに落ち込むなって

 

「じゃんけんで決まった大将に名誉もクソも有る訳ねぇじゃん」

 

「ごもっとも」

 

 

 

ビアーがツェズゲラからの決闘の申し出を受けて二日後。特筆すべきものは何もない無人の荒野だった場所にビアー達とツェズゲラ達は向き合い立っていた

 

グリードアイランドが世に出て既に10年以上

 

指定ポケットNo.000の詳細は未だ不明ながらも今日こそがゲームクリアを迎える日となるのだとその場に集った者達は強く感じていた

 

その晴れの舞台に相応しい威容を放つ闘技場(コロッセオ)では観客たちが始まる前から冷めやらぬ興奮に包まれていた

 

そんな観客=ほぼ元ハメ組メンバーを見上げてツェズゲラ達は諦観したような長い息を吐く

 

「なぁツェズゲラ。こんな場所にこんな建物無かったよな?」

 

「ああ、俺達全員の記憶違いでさえなければな。しかしなんの為に?」

 

闘技場(コロッセオ)もそうだが応援団でこっちの気勢を削ごうって作戦か?」

 

「それだけの為にこんな大掛かりな事するか?」

 

ベテラン故に思考放棄したいのを我慢して頭の中に疑問符を積み重ねていくが納得出来るような答えは出なかった。それもそのはず、この闘技場(コロッセオ)は決闘からハブられたビアーが軽いノリでそこら辺の岩山をくり貫き加工してそれっぽく仕上げた即席DIYに過ぎないのである。観客はポップコーンとビールやジュースを持参済みだ

 

ガヤガヤとギャラリーが騒ぐ中、その騒音を上回る機械を通した拡声音声が闘技場(コロッセオ)に響き渡る

 

≪さあ~いよいよグリードアイランドに挑んだ多くのプレイヤーが待ちに待った日がやって来たぁあああ!!指定ポケットカード全100種の内99種コンプリート!この戦いに勝利したチームが前人未到のその栄光と未だ地平線に沈んだNo.000の正体を知る権利が与えられるぅううう!!この世紀の一戦。実況はこの俺、プーハットと解説は隣の頭でっかち野郎でお送りするぜ!≫

 

≪仮にも実況ならば私情は交えずマイクにのみ意識を向けたらどうだ?解説のアベンガネだ。立候補の実況と違い皆に選ばれた解説という役割を十全にやり遂げてみせよう≫

 

観客席から少し突き出た見晴らしの良いバルコニーに座るのはしゃくれた顎が特徴のおじさん顔のプーハットと紳士風の黒人スーツなアベンガネだ

 

二人とも元ハメ組としては一番新参のグループだが優秀かつよくいがみ合って(プーハットの独り相撲)目立っていた二人である。プーハットが立候補すれば相方?であるアベンガネに自然と白羽の矢が立つのだ

 

ツェズゲラ達も今は目の前の試合に集中すべきと精神を切り替えたのかビアーに伝えられた出場者であるゴン、レオリオ、キルアを観察()て相談タイムに移行している

 

『纏』の状態からしか得られる情報はないが、そこはツェズゲラの観察眼が試されるところだ

 

「先鋒のゴンという少年だが明るく活発な性格をしている。ああいった手合いは強化系が多く、全身に纏うオーラも全体的に淀みない。パンチやキック、果ては頭突きから噛みつきまでその時々でやれると思えば満遍なく全身を使ってくるタイプだろう」

 

野生児であるゴンへの評価としては中々に的を射た分析だ。一ツ星の称号は伊達や酔狂で贈られるものではないのである

 

「次に中堅のレオリオだな。こちらは両手のオーラがやや強い。加えて先程から周囲の仲間とのじゃれ合いも反論やツッコミにユーモアが無く、思ったままを口に出しているだけ・・・高確率で放出系だな。両手が念能力発動のキーとなっているようだ」

 

憐れ出会って直ぐのツェズゲラにユーモアを否定されたレオリオであった

 

「大将はキルアと云ったか。明らかに三人の中で(たたず)まいにもオーラにも隙がない。オーラに偏りも見られないから変化系か強化系の可能性が高いな。正直正面からの戦闘では一番戦いたくない手合いだ。先鋒以上に何が飛び出してくるか分からん」

 

ツェズゲラのそこまでの分析を聴いた仲間の内の1人である重量級のレスラーのような黒人が提案する

 

「なら大将戦はオレが行こう。オレなら距離を取って戦えるし格上相手でも逆転の目は持てるからな。あいつ等全員オレ達より格上ならお前が戦える機会は確保しとかないとな、ツェズゲラ」

 

「ドッブル・・・分かった。大将は任せたぞ」

 

「なら先鋒は俺が適任だな。俺もインファイターだ。向こうが子供の直感ならこっちは大人の堅実さで勝負だ―――しかしまさかあいつ等全員がこうもレベルが高いとはな」

 

短髪で彼等の中では一番優男な顔をしているバリーが先鋒を名乗り出る。ツェズゲラ程でなくとも彼等もベテランとして観察眼はそれなりに有るつもりである。その彼等はゴン達のオーラが自分達を上回っている事は『纏』の状態でも十分見て取れたのだ

 

「ああ、『交信(コンタクト)』での交渉であれだけ不利な条件を重ねてもアッサリと承諾(しょうだく)したのは自信の表れだったという訳だ。それに周りに居るハメ組の連中までもが一皮剥けた雰囲気を纏っている。今はまだ俺達に遠く及ばない者が殆んどだが、たかだか数ヶ月見てない内にこの変わりようは恐ろしいものを感じるな」

 

ツェズゲラは改めて周囲を見渡して目を細める。スペルカードの売っている魔法都市マサドラでハメ組の姿を見る機会は幾らでも有った

 

その時の彼等は大半が敵にもならないカスの集まりであったが今では雑兵と呼べる程度には実力を上げているのだ。中には舐めて掛かれば今の彼らであっても足下を(すく)われ兼ねない実力者もチラホラとだが存在している

 

一ツ星(シングル)ハンターとその仲間にそう思わせる程の成長を凡才の彼等がこの短期間で成すにはブートキャンプの教官が青い顔で止めに来るレベルの壮絶なシゴキが必要であっただろうと彼はアタリを付けた

 

(彼等を鍛えた―――いや、導いたのはビアー=ホイヘンスと考えるのが妥当だろう。これだけの人数の(くすぶ)っていた心に火を着けるとは、あの若さで三ツ星の称号を得るだけ有ると云う事か。なんというカリスマだ)

 

※半ば洗脳

 

勘違いな部分も有りながらツェズゲラはビアーへの評価を上方修正しつつも(おく)したりはしない

 

実は彼等が最初に『一坪の海岸線』の入手に挑んだのは新年となる少し前でゲームマスターのレイザーに敗れ、そこから数ヶ月は鈍った身体と鈍った勘を徹底的に鍛え直したのだ

 

相手の戦力を削り自分達のコンディションを整えた。ならば後は自信と覚悟以外の感情など必要ないのだ

 

ツェズゲラ達が力強く頷き合い先鋒であるバリー以外がその場を離れた事で彼等の準備が完了した事がうかがい知れた。それを見ていたビアー達もゴンを残して選手用の席へと移動していく

 

≪さぁ~ツェズゲラチームの話し合いも終わり、いよいよ試合が始まろうとしているぅうう!我らが女神(ビアー)チームの先鋒を務めるのは元気一番の野生児ゴン!対するツェズゲラチームからはバリーが先鋒に選ばれたようだァアアア!≫

 

二人は闘技場の中央で10メートル程の距離に近付いた所で自然と立ち止まり、重心を低く構える

 

≪この試合では気絶かギブアップ。または場外10カウントで敗北となる。注意事項として対戦相手を殺すのは、賞品である指定ポケットカード紛失の恐れが有るため禁止となる。無論真剣勝負ゆえに死の危険は(ぬぐ)いきれないが、その場合殺した方の選手に黒星がつくので留意する事だ≫

 

ゴン達は事前に聞いていた事だが観客への解説と選手への最終確認の意味も含めてアベンガネの説明が入る

 

中央の二人が小さく頷き合い、用意された銅鑼(ドラ)の音が会場に響き渡った

 

 

何故かショップに売ってた銅鑼(ドラ)を元ハメ組のリーダーであったニッケスさんが上半身裸の鉢巻き装備でぶっ叩いた

 

ハメ組の小難しい運営やらリーダーの重圧やらから解放された反動か、カストロさんのハード訓練にも笑顔で参加するようになったみたい―――白い歯ぁ見せんな

 

・・・人生楽しんでるようでなにより

 

とまぁそんな事は置いといて始まった試合はゴンが猛攻を仕掛けているところね

 

バリーって人はオーラの大部分を脚に廻してボクシングのフットワークのような細かく素早いステップでゴンの間合い半歩手前を維持するように立ち回っている

 

ああしないと避けられないとは云え強大なオーラが絶えず目の前を掠めていくのは冷や冷やものでしょうに、流石に小さい肝っ玉はしてないようね

 

時折繰り出されるパンチもゴンの攻撃を逸らす為の防御の為の一手ね。ほぼ『凝』のみの自分と『流』を用いるゴンじゃ彼の精神が摩耗しない限りは消耗に差が出るからオーラ量に勝るゴンに敢えての長期戦で攻防力と集中が下がるまで粘るつもりかな

 

格上殺しの『発』は持ってない感じ?いえ、多少威力を底上げ出来る能力が有ったとしても彼のオーラで今のゴンのオーラを突破するのは難しいから有ったとしても使えないわね

 

それからは予想通りと云うかひたすら攻めるのとひたすら避けるので膠着(こうちゃく)状態となる。バリーって人は虎視眈々とゴンが調子を崩すのを待っているけどゴンは相手が凄い事をすればするだけテンションが上がってアドレナリン全開で疲れを感じなくなるタイプ

 

ゴンを相手に長期戦は単純に時間が味方となる『発』まで揃えてやっと効果的となる戦術だ

 

それから30分後。実況のヤジも飛ぶ中(集中して聴こえてないでしょうけど)頑張ってたけど身体が温まってきたとばかりに体力全開の時より動きにキレが増したゴンの攻撃に対処出来なくなってK.O敗けを喫した

 

ゴンの精神がただの子供らしく未熟なだけであったなら逆転を何処かで狙えたかもだけど、生憎バトル漫画の主人公の精神は普通の枠に収まらないのよ

 

まぁそれでも実力差を考えれば大健闘よね。ゴンは単にギアを上げただけだけど、バリーって人は極限状態のジャンプアップ効果でレベルアップしてたからね―――もっともそれくらいでなければゴンの動きに喰らい付けなかったでしょうけど

 

実際バリーさんも介抱されてる中で敗けた悔しさとレベルアップの充足感の両方を混ぜたような表情してるし、敗けたにしたって本人の今後のためになる敗け方をしたんじゃないかしら?

 

偏向実況のプーハットは途中で殺気叩き付けて公正な実況をするように促したし(隣のアベンガネがニヒルに笑ってた)、お次はいよいよツェズゲラさんの試合だ

 

あの人原作では結局どんな能力持っているのか分からず仕舞いだったのよね

 

内心ワクワクしながら開始の銅鑼(ドラ)を用意したポップコーンとコーラを楽しみつつ待っていると遂にその時が来た

 

腹の底に響くような重低音が耳を打つと同時にレオリオは距離を詰めて殴り掛かる。いや、アンタ放出系でしょと言いたくもなるけど放出系は強化系の隣の系統。強化系と放出系の二系統は実質遠近両方が得意距離なのが強みの一つだ

 

「まぁだとしても様子見なら普通念弾からだと思うけどね」

 

私の呟きに周りの皆は小さく頷く。駆け引きで初手近接を選んでるならまだしもレオリオは取り敢えず殴りに行ってるだけだからね、アレ

 

「ツェズゲラさんヨォオオオ!!ハントは全部金の為なんだってかぁ~?その通りだぜ。世の中金、金、金だ!金持ってる奴が自由に夢を見られるんだってよォオオ。アンタとは良い酒飲めそうだぜェエエエ!!」

 

なんでレオリオはヒャッハーなテンションになってんのよ?修行漬けの日々から解放されると思って振り切れてるの?

 

「悪いがお前のような酒癖の悪そうな輩と交わす盃は持っていない」

 

すげなく断りを入れたツェズゲラさんは片膝を突いて何かを肩に担ぐ体勢を取るとロケットランチャーが次の瞬間その手に握られていた

 

「は?」

 

レオリオがフリーズする中でランチャーに搭載されたロックオンシステムが標的を捉える電子音が響く

 

「そうだな。金が有れば夢想を現実に出来る。まぁキミなら死なないだろうから此方も遠慮なく行くぞ」

 

無情に引かれた引き金に合わせて鉄筒の奥に鎮座していた砲弾が炎と煙の尾を引きながら空中を突き進みマトリックスのように上半身を逸らして避けたレオリオの背後の地面に弾頭が突き刺さると同時に爆炎と衝撃を撒き散らす

 

「そら、次々行くぞ」

 

あくまで淡々と具現化したランチャーを使っては消し、使っては消しを繰り返すツェズゲラさんにレオリオが避けながらも地面を殴って彼の足下からアッパーが飛び出る形で能力を使う

 

「チィ!」

 

重たい武器を担いだままでは避けられないと悟ったツェズゲラさんがその場を飛び退くとレオリオが好機とばかりに再びダッシュする

 

「はっ!ロケランを具現化出来たところで空中じゃ狙いも付けらんねぇだろ!」

 

ガドォオオオン!!

 

「ぶへぇえええええ!!!?」

 

レオリオの拳がツェズゲラさんに当たる寸前に巨大な楯が現れて拳の衝撃が伝わると同時にこれまた爆発が巻き起こりレオリオをふっとばした。いえ、アレって楯じゃなくて壁かしら?

 

「拠点構築用迫撃砲対策爆発反応装甲壁面。高い買い物をさせてくれるな」

 

意味深な事を呟きながら今度は大量の発煙弾をばら蒔いてレオリオの視界から消えた彼は助走を着けて軽くジャンプすると着地点に良く跳ねそうなトランポリンを具現化し、彼の垂直跳びベストの16メートルだか17メートルだかを遥かに超える高度を確保する

 

レオリオが僅かな光量の変化から上だと気付いて見上げた時にはツェズゲラさんは既に巨大質量を手に重力を味方に付けて落下してくる最中だ

 

彼が具現化した固くてデカくて重たい黄色い物体。すなわち―――

 

「―――ロードローラーだァアアア!!!」

 

「ほげぇええええええ!!?」

 

本来地面をならす工事用重機によって地面に埋まる形でならされてしまったレオリオの姿に観客が湧いている

 

≪これは一体どうした事だぁあああ!?ツェズゲラ選手が次々と物を具現化して遂にレオリオ選手を発泡スチロールボックスに梱包された人形のように地面に埋めてしまった!具現化される物にも一貫性が無い。あれだけの種類の具現化をどうやって可能にしてるんだ!?≫

 

≪・・・微かだが「高い買い物」と呟いていた。言うなれば彼の能力は通販のような物なのだろう。細かい制約などは分からないが金銭を消費する事で現実に売られている物品を使い捨ての道具として具現化する能力。オンリーワンのキテレツな能力を付与した道具ではなく文明の利器を状況に合わせて使用する。ある意味無限の応用の幅の有る『発』と云えるだろう≫

 

アベンガネさんの解説になる程と思う。マネーハンターらしいとも真逆とも取れる能力だ

 

すると地面に埋まっていたレオリオが無理な体勢の中でも筋力に任せて徐々にロードローラーを持ち上げる

 

「生憎こちとらバカみてぇな重しには慣れっこなんだよ。こんなもんで俺を潰そうなんざ無駄無駄無駄だあああ!!」

 

「そうか。なら耐えきれなくなるまで重たい一撃を加えてやろう」

 

レオリオが完全に立ち上がる前にツェズゲラさんが具現化したのは巨大な鉄の柱だった

 

「“27号炸薬式破城鎚”―――予算内で倒れてくれよ」

 

そこから始まる大っきなロードローラーを間に挟んだオラ無駄ラッシュ・・・とも呼べないわね。ツェズゲラさんはお高いんであろうカートリッジを交換しながらオラオラ言ってたけどレオリオは「え?」とか「ちょっ、待っ!」とか「これが課金のぢがrボァアアア!!」とかとかって呟きを最後に再び地面に今度は深く深くまで追撃を喰らって沈んで行ったからね

 

オーラ量に差が有ったから物理的なダメージはそれ程でもなかったけど、絶え間ない衝撃の中で地中にめり込んだ影響でまともに呼吸が出来なくなって酸欠に陥っちゃったのが致命的な敗因だったわね。中堅戦はツェズゲラさんの勝ちだ

 

「あははは、完全にペースを握られちゃってたね」

 

「それが念での戦闘の怖さよね。まぁ解説の予想が正しかったとして彼がこの一戦だけでどれだけ散財したのか気になるところではあるけど」

 

「(オーラの)格下の小細工が通用するレベルの基礎スペックしか持ってなかったレオリオが悪い。医者みたいな非戦闘員を目指すなら突発の戦闘でも経験や勘が鈍った状態でも勝てるだけの基礎力が必要よ・・・1日の睡眠時間15分まで削っとくべきだったかしら?」

 

戦闘メイン職だったら?そりゃ当然基礎力を磨きに磨いて常勝の最強を目指さないとね。切り札は持ってても良いけど切り札に頼ってちゃメタを張られちゃほぼ終わりの世界だし

 

「15分とかキリンじゃないんだから私の桃色吐息(ピアノマッサージ)込みでも流石に(精神が)死ぬと思うわさ。そんな訳で精神の不調も回復させるマッサージも追加でどう?レオリオの心も私の懐もポカポカになる一石二鳥の案だわさ」

 

ポカポカになる分だけレオリオの財布が冷え冷えとしちゃうけどね、その提案

 

まぁこのゲームもいよいよ終盤も終盤だからそうはならないでしょうけどね

 

ツェズゲラさんがマネーパワーでレオリオを倒すという快挙を遂げた事でお次はいよいよ大将戦だ。こっちの大将であるキルアは3人の中では順当に一番強いけど、向こうの大将であるドッブルさんは純粋な戦闘力なら先鋒で戦ってたバリーさんの方が多分上ね

 

スピードタイプでは無さそうだしゴンとの戦いでやっていたような回避全振りで時間を稼ぐ事すら出来ないと思う

 

「んじゃ、行ってくるぜ」

 

「キルアー!頑張ってねー!」

 

「油断だけはしないようにな」

 

背中に掛かる応援に片手を軽く挙げる事で応えたキルアとツェズゲラさんに静かに一言「頼んだぞ」と送り出されたドッブルさんが開始位置で対峙する。そして試合開始の銅鑼(ドラ)の音と共にドッブルさんは大きく後ろに下がるけどキルアはそれをただ見送った

 

「先手は譲ってやるよ。ガッカリさせんなよな」

 

おお、なんて分かりやすいクソガキムーヴ。これにはドッブルさんも一瞬でピキッてるわね

 

彼は近くに落ちてたボウリング玉くらいの岩を持ち上げると大きく身体を反って砲丸投げのように渾身の力で投げ放つ

 

キルアはオーラの籠められた自分に向かって一直線に突き進む岩をその場からは動かずに身体を傾けるだけで避けた

 

しかし避けられた岩は鋭いカーブを描いて背後からキルアに再び襲い掛かる

 

「へぇ、さしずめ投擲物(とうてきぶつ)を操作する能力ってところ?でもこれだけな訳ねぇよな。さっさと奥の手までお披露目しないとこっちから仕掛けちまうぜ」

 

何度も急カーブを描いて連続で飛んで来る岩を避けながら挑発するキルアにドッブルさんも他の手頃な岩や懐に仕舞ってあった何本かの投げナイフを投げ付ける

 

しかし百や二百手数を増やしたならまだしも十や二十の増加程度ではキルアにとってアトラクションの範疇だ

 

ドッブルさんも実力差を十分に感じているが故に早々に次の一手を打つ

 

「喰らいな、オレの魔球を!【変幻自在の贈り物(フリースロー)】!!」

 

キルアの周囲を旋回していた投擲物の群れが今度は一斉に襲い掛かる。だけど幾ら隙間を小さくしようとも子供故に小柄で暗殺者としての素早しっこさを持つキルアにはこれでも全方位に逃げ道が用意されているようなものね。今だって余裕の表情を崩さない

 

でもキルアに迫り来る物体たちが突如として“巨大化”すれば話は違ってくる

 

「い゛!?」

 

いきなり子供だろうと人がすり抜けられるだけの隙間が無くなった事で驚いたキルアにそのまま容赦なく質量の塊たちが降り注ぎ土煙を巻き上げた

 

≪おおっとぉ!?ここでこの試合初のクリーンヒットだァアアア!!≫

 

実況のプーハットさんが興奮した様子で叫んでいる

 

まぁあの程度でキルアを攻略は出来ないんだけどね。回避が無理ならばと瞬時に武器の激重ヨーヨーを取り出して全ての飛来物を迎撃してたから派手に土煙が舞っただけで実際には一発も当たってない

 

プーハットさんもまだ格上の能力者の瞬間的な小細工を見抜ける域には至ってないか・・・まぁ基礎トレばっかりだったからね

 

「オレの能力、【変幻自在の贈り物(フリースロー)】。オレが投げた物体の軌道と大きさを自在に操る能力だ!」

 

≪なんとここでドッブル選手の種明かしだ!解説者要らねえなぁ、アベンガネ!≫

 

≪彼はおそらく操作系か放出系の能力者のようだな。投擲物のあの鋭い軌道は操作系か最低でも放出系でなければ不可能だろう。大きさを変化させたのは具現化系とも変化系とも取れるが、単に大きさを変えているだけならば熟練の能力者であれば二つ系統が離れている程度ならその程度の補助能力を付与するのは然程難しくはない≫

 

滅茶苦茶解説してくれるわね、アベンガネさん。煽ったプーハットさんも閉口しちゃったわよ

 

「面白い手品だったけど、ショーが終わる前にネタばらしとか白ける真似するもんじゃ無いぜ」  

 

「そう言うお前はもっとオレの言葉の意味に注視すべきだな」

 

渾身の全方位攻撃に完璧に対応された上でもドッブルさんに動揺は無い。土煙でキルアの視界が鈍った時に彼が手首のスナップだけで放ったビー玉くらいの鉄球がBB弾くらいの大きさに縮んでキルアの死角から忍び寄っていたからだ。あの能力は物体を大きくするだけじゃなくて小さくする事も可能な訳ね

 

小さくするだけでなく『隠』も使って気付かれ難くしたソレはキルアの口内に飛び込もうとしてる。入ったら逆にデカくして気道を塞ぐつもり?えげつないわね

 

しかしそんな起死回生の一手はキルアの体表付近で起こった微かなスパークと同時に(・・・)反応したキルアの噛みつきによって鉄球に籠められたオーラごと四散した

 

「ぶぺっ!なんか俺に喰わせようとしやがったな。わりぃけど俺の口はチョコロボくん以外のアポ無し訪問受け付けて無ぇんだわ」

 

そう。この試合のドッブルさんの敗因は鉄球をチョコロボくんに仕込む事前準備を怠った事・・・いや、分かるかそんな正解

 

そもそも敵の投げたチョコロボくんなんて食べる訳が・・・キルアなら毒なら平気とか思ってワンチャン食べたかも知れないわね

 

「まっ、実験の役には立ったぜ。アンタ」

 

キルアは最後に無拍子からのトップスピードで単純な動体視力だけで無く脳の認識すらもワンテンポ置き去りにする事で瞬時に距離を詰め、決着となる一撃を叩き込んだ

 

アレが原作キルアの評価を一気に作中最強格一歩手前まで押し上げた電気で肉体を反射で動かし究極の“素早さ”を体現する『神速(カンムル)』。初めて見たけどオーラのコントロールとか原作の比じゃないくらい鍛えてるから無駄な電気の消耗(スパーク)も抑えて静かに発動も出来てるわね

 

加えてオーラ量も既にイルミ超えててそもそもの充電の容量も増えてるだろうし、少なくともガチンコ勝負ならもう兄には負けないレベルだ

 

ドッブルさんも流石にその気(・・・)で動いたキルア相手じゃ力不足だったわね

 

≪決着ゥ―――!!ビアーチーム VS ツェズゲラチーム。2勝1敗でビアーチームの勝利ッッッ!終わってみれば地力の差が如実に表れた試合内容。番狂わせを起こせたのは一ツ星(シングル)の称号を持つツェズゲラのみだ―――!!≫

 

≪レオリオ選手はハンター歴1年のルーキーなので肩書きで云えばツェズゲラ選手が勝つのは可笑しい事ではない。今回は実戦の中でしか得られない経験の差が地力の差を追い抜いた形だろう≫

 

まぁツェズゲラさんも幻影旅団屈指の基礎力を誇るウボォーギンが「かなり痛てぇ」と評した火力に得意系統から離れているとは云えオーラを上乗せして連続ブッパ出来るんだから対人としては十分過剰火力を叩き出せる能力よね

 

そうして試合が終わった事で私達は再び中央で対峙する

 

「負けたよ。よもやキミ達全体のレベルがこれ程高いとは思わなかった。このカードはキミ等のものだ」

 

(いさぎよ)く手渡された『一坪の海岸線』『浮遊石』『身代わりの鎧』を受け取り皆の期待の籠った視線の中でバインダーに全ての指定ポケットカードを嵌め込むと周囲のプレイヤー全員のバインダーが実体化し、そこからアナウンスが響き渡る

 

アナウンスの内容は99種類カードを集めたプレイヤーが出たので記念として指定ポケットカードに関する全100問のクイズ大会が行われ、最高得点者にNO.000のカードである『支配者の祝福』が進呈されるといった感じね

 

試合に負けたばかりのツェズゲラさん達もこれでカードを入手出来ればまだ希望の目が有るとして少し離れた所で皆でバインダーを囲んでいる

 

こっちはゴンとキルアとレツがご飯の奢りを賭けて勝負したりクラピカも巻き込まれてたりビスケがクイズは苦手だとパスしたりまだ気絶してたりと色々だ

 

挑む皆は個人個人の力でやるみたいなので自然と私とポンズ姉もそれぞれに正々堂々と優勝を目指す形になった

 

―――ふっふっふっ!

 

正々堂々?笑止!

 

自力カード獲得率トップのツェズゲラさん達が参加してるクイズでそんな真似しても勝率は精々五分五分が良いところ

 

これで彼らがカードをゲットしても無駄にグダつくだけと分かっているのに“全力”を出さない理由なんてないわよねぇ?

 

さぁ体内オーラを練り上げて聴覚に集中集中!カンニング上等のクイズ大会の始まりよ!

 

 

グリードアイランドで初めて開かれたNO.000のイベントであるクイズ大会。指定ポケットカードを自力で集めなければ答えられない問題が多々ある中で4択問題という点に一縷の望みを託して過去最高に勘を働かせようと踏ん張るプレイヤーが大半の中、トッププレイヤー達は今までに得た知識を下敷きに確実に正解を積み重ねていく

 

問題の中にはカードの情報をくれるNPCの名前を問うモノだったりカードの入手場所に咲いてた花の色だったりとかなりマニアックな問題も混じっていてカードを自力で入手していても「そんなん覚えてる訳ねぇだろ!」といった声が各地で上がっており、トッププレイヤーの正答率を地味に削っていく

 

だが悲鳴にも似た(うめ)きが幾ら発せられようが問題が止まる事など有る訳もなく、最後のNO.99の『メイドパンダ』に関する問題が出題され終わると最高得点者が発表された

 

「最高得点者は100点満点中96点。プレイヤー名、ビアー=ホイヘンス様です!」

 

最高得点者として名前を呼ばれたビアーは“何故か”疲労を感じさせつつ、やりきった感を滲ませて勝利を噛み締める

 

ちなみにだがビアーの次に点数が高かったのはツェズゲラの93点だったようだがそれをプレイヤーが知る事はないのである

 

(キッッッツ!聖徳太子もビックリのマルチタスクは精神にクるわね)

 

ともあれやっている手段(こと)は凄いのにやっている内容はセコいビアーの奮闘の甲斐有って幻のNO.000のカード。正確にはそのカードを得られる城下町リーメイロへの招待状をふくろう便にて受け取り、スペルカードでその町へ跳ぶ

 

なおその前にガラの悪い兄弟がビアー達のカードを奪おうとちょっかいを掛けてくる一幕も有ったようだがビアーの一睨みで泡を吹いて倒れたようである。何しに来たんだこのモブ(ベラム)兄弟

 

たどり着いたリーメイロではお城に案内されたがビアーが案内役のゲームマスターにジンの息子という事でゴンを紹介し、NO.000の『支配者の祝福』を貰うついでにゴンにジンの昔話などを話して貰う

 

ゴンとしてはジンの友人知人の口から語られる父親の破天荒なエピソードをたっぷり聞くことが出来てクリア報酬以上のモノを手に入れられたようだ

 

そうしてゲームクリアを祝した城下町の住民(NPC)を巻き込んだドンチャン騒ぎから一夜明けていよいよログアウトの時間がやって来る

 

「じゃあカストロさんはもう少し此処で皆を鍛える訳ね?」

 

「はい。せめて彼等がランクAのモンスターを狩れるようになるまでは引き続き此処を修行場として活用していきたいと思います。条件をクリアした者から少しずつモモゼ王子と接触し、私設兵団(ファンクラブ)設立の流れを作っていく予定であります」

 

「そう・・・」

 

ランクAのモンスターを安定して狩れる実力者(最低保証)が約70人。小国の都市部程度ならほぼ無策で攻略出来る戦力である

 

大国と云えども12番目の王子の私設兵としては過剰戦力と言って良いだろう

 

「ビアー様!!」

 

ビアーがカストロの答えに生返事をしていたら元ハメ組リーダーで試合ではドラを鳴らしてたニッケスが腹式呼吸で暑苦しい声を上げる

 

「我等一同ビアー様と出会い、お声を頂き、道を正し、導きの光を賜った事に深く感謝しております。いつの日かビアー様のお力になれるよう全力で己を磨き上げて行く所存であります―――YES!ONLY MY STAR LIGHT!!」

 

「「「「YES!ONLY MY STAR LIGHT!!」」」」

 

「なにその掛け声!?アンタ等全員新年からずっとこの島に引き籠ってたはずよね!?」

 

【Only my star light】の曲名を知る者はこの場にビアー以外存在しないはずなのだ

 

「はて?この掛け声はカストロ殿が「天啓を得た!」と我等の結束を表す合言葉としたものでありますが?」

 

ビアーがもの凄い早さでカストロの方を見やると見られた本人は“うんうん”と頷いている

 

「ビアー様の星々を模した可憐な衣装と華やかな歌声。我ながら良い初夢を見たものです」

 

「新年からしれっと不正ダウンロードしてんじゃないわよ!念なの?それも念能力なの!?」

 

「?ただの初夢でございますが?さぁお前達!ビアー様のお役に立つならモタモタする暇など無いぞ!先ずは修行場まで全員逆立ちフルマラソンだ!一歩(手)進むごとに『纏』と『絶』を切り替えながら進むんだ!私のお腹(背中)に付いてこい!」

 

「「「「YES!ONLY MY STAR LIGHT!!」」」」

 

カストロを筆頭に逆立ちした集団がその場を離れていく。彼等の行く末はきっと?多分?明るいのだろう

 

毎度ながらビアーの精神にダメージが入りつつも毎度故に磨かれたレツ達のスルースキルが話題を次へと促す

 

「―――じゃあポンズ姉と私はさっき選んだこれとこれでビスケは『ブループラネット』のまま変更は無しね?」

 

「ええ」

 

「勿論だわさ」

 

グリードアイランドのクリア報酬である指定ポケットカード3枚(重複不可)をビアー、ポンズ、ビスケがそれぞれ選び全員が港から集合場所とした現実の港に順次ワープする

 

島外に持ち出す指定ポケットカードの登録の為に最後は港を利用する必要が有るのだ

 

※港からゲーム本体(ゴンの家)に出るのは無理

 

「―――それでは指輪をお返しします。お疲れ様でした」

 

「さようならエレナさん。イータさんにもよろしく~!!」

 

最後に港で出入国の管理をしているエレナに挨拶を済ませたビアーが出島し、グリードアイランドの完全クリアを果たしたのだった

 

(あと重要なのはキメラアントか~。まっ、まだ猶予は十分有るし初期の内に対処(ハント)出来るでしょ)

 

―――ビアーが己の勘違いに気付かないままに

 




ツェズゲラの念能力

【万能速達通販(トレードショップ)】 具現化系

現実で販売されている物でかつツェズゲラ自身が一度は買って手に触れた物を具現化する能力

具現化する=買うと彼の口座から自動的に販売額の倍額が匿名の寄付金という形で消え去る事になる。なお自動引き落としは神字を籠めた道具を使った操作系のサポート有りき

割高でお金を消費している分ランチャーのような遠距離武器でもその道具本来の性能から落ちる事は無いのが強み
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