毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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吸収と生誕

東ゴルドーの首都ペイジンまでアリスタ便で潜入し、情報収集でキメラアントの巣の場所を大まかに把握した私達は道中ピトー率いる人間狩りの部隊を発見して交戦状態となり、明らかに突き抜けて強いピトーを私が担当して皆には周囲の兵隊蟻の殲滅と運ばれている人達の安全確保を優先させて手が空いた人から加勢して貰う事になった

 

結果として皆の加勢前にピトーをボコしちゃった訳だけど誤差の範囲でしょう。

しかし実際に戦ってみると戦闘経験の無さが如実に伝わって来たわね。オーラの動きとか殺気とかで次の一手が手に取るように判ったからパーフェクトゲーム余裕だったわ

 

なにより念の事をまだよく知らないみたいでまともな『発』も無しに仕掛けて来たからね。原作の身体能力を無理矢理解放するだけでなく体をマリオネットのように動かす事も出来るであろう【黒子無想(テレプシコーラ)】を会得していたら生け捕りは難しかったでしょう

 

取り敢えず今のところ判ったのは護衛軍三匹以外に念を使える蟻は居ないらしいって事ね。原作と違って狩られた念能力者なハンターも少なければ念の攻撃を受けて念に目覚めた実例も無い上に情報を搾り取る為のR-18な脳クチュシーンもカットされてればそんなものって事か

 

「成る程な。何より好都合なのは女王が王を産む準備に入ったばかりという点だな。一度その段階に入った女王蟻が方針を変えるとも思えん。これから先は兵隊蟻は減ることは有っても増える事は無いと考えられる。一気呵成に攻め込むにはタイミングとしては一番良い時期だろう。無論ピトーと同格の護衛軍が後二匹居る以上無策で突っ込める程楽観は出来ん。正直ソイツのオーラを肌で感じた時は死ぬかとも思ったぞ。俺一人では100回戦って1〜2回だけでも勝ちを拾えれば御の字だったろうな」

 

ピトーから巣の内情を聞いたカイトが難しい顔で言うけど護衛軍相手にタイマンで勝ちを拾えると冷静に分析出来るのは十分強いと思う。しかもまだまだ若いから伸び代も残ってるしね

 

まぁ水を差すような事を言えば実際に1回1回経験値加算式で100回戦ったら凄い勢いで成長していくだろうピトー相手に勝率は更に下がるだろうって事ね。言わないけど

 

「ねぇ、助けたこの人達はどうするの?皆毒で動けないみたいだけど」

 

ゴンが白目剥きながらピクピク痙攣してる主に軍人の集団を指差す。人を指差しちゃいけませんって注意すべきかしら?

 

「放って置いても良いんじゃない?元より軍の進行ルートでドンパチしてたんだし、軍の本部も把握してるでしょう。すぐに偵察部隊が様子見に来るわよ」

 

「そうね。それに救助に人を割いてくれた方が有り難いわ。この国の『あの』総帥直下の人達とか接触しても良いこと無いわ」

 

確かにね。助けたら助けたで上も下も文句しか言わなそうなのは実際に聴こえてくるようだわ

 

「寧ろ今回の騒動の責任全部おっ被せて来るんじゃね?」

 

「あり得るな。静かに問題を片付けてさっさとこの国を去るのが吉だろう」

 

「キメラアントの事もそっちのけで嬉々としてオレ等を攻撃して来るってか?いや、あの総帥ならやりかねねぇな。オレ等を犯罪者に仕立て上げるより先にやるべき事はごまんと有るだろうによ」

 

「あははは。まぁボク達も無実かと問われれば不法入国者では有るんだけどね」

 

そう言えば私達ガッツリ犯罪者だったわね。しかしその点は何一つ問題にならないわ

 

「レツ、何時だったか言ったと思うけどバレなきゃ犯罪じゃないのよ」

 

「義妹になんて教育施してんだよ。仮にでも犯罪(クライム)ハンターのセリフじゃ無いんだよなぁ」

 

キルアは教育環境に関しては一家言有るもんね。でも実際この程度は世間一般の処世術の範囲よ

 

「良いのよ。犯罪(クライム)ハンターはあくまで私の一側面でしか無いんだし、逆にキルアはプロハンターとして何を狩るかとか朧気(おぼろげ)でも無いの?ファミリーハンター以外で」

 

ハンター試験で闇の家族を泣く泣く(?)狩り(ハント)する息子(オレ)ってドラマチックとか何とか言ってたらしいじゃない

 

「もしもこの先本当に家族をぶっ倒す時が来たとしてもそんなハンター名は名乗らねぇよ。なぁ?親父狩りのゴンさんよぉ?」

 

「キ〜ル〜ア〜??確かにジンは親父だし今も追い掛けてるけどオレだって絶対にそんなの名乗らないからね」

 

見知らぬ震える親父(おっさん)捕まえて釣り竿(エモノ)で地面をピシピシ叩きながら恫喝して金目のモノを搾り取るゴンとか誰も見たくないわね

 

それとキルアもイルミの針を抜いて記憶が戻ってるなら危険な能力で幽閉されてる妹/弟(アルカ)助け(ハント)に行くんだし、妹狩り(シスターハンター)のキルアは確定事項だから親父狩りのゴンと大して変わらないわよ。二人揃って肩書からは犯罪臭がプンプンするわね

 

「わぁーったよ。じゃ、コイツ等は此処に置いてくって事でさっさと先に進もうぜ」

 

「「「異議なし」」」

 

普段他国(ひと)様に迷惑掛けてばっかりなんだからゴミのように放置される位は許容して貰わないとね。もっとも許容なんてするはず無いから知らぬが仏ってやつだろうけどさ

 

「ならピトーは一先ず私の帽子の中に入れておくわね。どうせこの怪我じゃ戦力に数えられないし、だからと言って病院に担ぎ込む訳にもいかないからね」

 

「にゃにゃ!この程度の怪我なんて動けない理由にはならな゛い゛の゛に゛ゃあああ゛ぎぎぎぃ!!」

 

ピトーが起き上がろうと全身に力を入れると身体の各所から噴水のように血が噴き出る。青い体液なのがホラー味を加速させるわね

 

慌ててレオリオが全身に包帯を巻いたり添え木で固定したりと処置を施していく。紅いスズランなどの造血作用の有る薬とかもこの青い血液にどんな効果をもたらすか未知数だからかあくまでも止血に留めている形ね。レツのコピーした念糸縫合なら表面上の出血は止められるでしょうけど粉砕した骨とか潰れた筋繊維とか捻れた内蔵とかは外側から診ても分からないからね。本気で治療(なお)そうと思ったら全身みじん切りにしてもう一度くっつける手間が必要になる

 

―――ツギハギ人間(フランケンシュタイン)もビックリだ!

 

「誰のせいだと思ってるのさ!この子が生命力抜群のキメラアントじゃなかったらその治療法を真剣に検討しないといけないところだよ!!」

 

「ご主人様の為に動けるようになるなら今すぐミャーを細切れにして捏ねくり廻して繋ぎ直して欲しいのにゃ!」

 

「やだこの子の忠誠心狂信者(カストロさん)並!?怖いんだけど!!」

 

むしろ本能に忠誠心が一種のシステムとして刻み込まれているピトーと比較されるカストロさんはなんなの?

 

流石にそんなスプラッタな治療をしたら怪我が治っても今度は失血死しかねないと云う意見も有って結局安静にするのが一番だとピトーはポンズ姉の帽子の中に押し込まれる

 

「中に居る()達をオヤツ代わりに食べないようにするのよ」

 

「畏まりましたにゃ。出来ればその辺に転がってる人間(ニク)を頂ければ回復も早くなりますのにゃ!」

 

「人を喰べるのはこの先禁止よ。これを機に人間の食事も覚えなさい」

 

「にゃ〜。ならさっき食べた―――」

 

「チュールは別に箱(段ボール(大))で買ってある訳じゃないから一度のオヤツ分程度の量しかないわよ」

 

無慈悲!今のピトー、今までで一番の絶望した表情覗かせたわよ

 

「はぁ・・・人を食べないってちゃんと約束出来るならこの先オヤツ分のチュールくらいは世話してあげるわよ」

 

「誓うのにゃ!ミャーはもう人間は食べないのにゃ〜!!」

 

なんとも安くて重要な取り引きが成立したわね。流石は別名グルメアント。グルメには(うるさ)かったか

 

改めてピトーをポンズ姉の帽子に詰め込むと次はいよいよキメラアントの本山に殴り込みだ。ピトーであのレベルなら王さえ産まれなければ問題無い

 

東ゴルドーが最初からバイオハザードの情報を外に発信して各国が救援を進んでしてくれるだけの国交を結んでいたならもっと早期にネテロ会長とかも動けたんでしょうけど、少なくとも最大の懸念点である王の出産までの時間を遅延させただけ原作のNGLよりはマシね

 

キメラアントの女王なんてのは精々普通の熊やライオンよりは強い程度でしょうし、プチっと潰して終わりにしちゃいましょう

 

 

 

キメラアントの城では今、騒然とした空気となっていた。軍団長のピトーと共に女王へと捧げる供物を回収しに向かっていた部隊からの連絡が断末魔と共に途切れたからだ

 

恐るべき強さを誇る人間達が仲間達の身体を叩き潰して蹂躙劇を巻き起こしており、軍団長すらも苦戦を強いられているのだと乱雑に飛び交う救難信号を根気強く拾い続けて纏めた事で浮かび上がった結論である

 

もっとも最初の内は本当に何を言っているのか訳が分からずゴン達が兵隊蟻達の数を減らしていった事で信号の混線も減り、蹂躙されていると云う内容を拾う事が出来るようになった形なのは皮肉であるが

 

人間をその『我』ごと取り込んだ弊害で眼前に迫る死の気配に平静さを失わせてしまったのだ。要するにパニックである

 

当然それを受け取った場内警備や雑用係の蟻達も半ばパニックとなるのだが、逆に普段と変わらぬ振る舞いの蟻達も居た

 

「全く困りましたね。護衛軍の我々はテレパシーが使えないので彼女(ピトー)の現状が判りません。外に出陣()ていた師団長以下の兵隊はどうやら全滅したようですが、彼等の報告では敵勢力の脅威度を測るには物差しとして不足です」

 

「アイツ等弱えぇからなぁ。まぁでもピトー(アイツ)も帰ってくるだろ。もし別の奴が来たなら俺達が戦えば良いだけだ」

 

二匹は王を産む準備に勤しんでいる女王蟻の部屋の近くで警戒にあたっている。一匹は理知的な佇まいで今は背中に折りたたんでいるが蝶の羽のようなもので空を飛べる軍団長の一角だ

 

もう一匹は筋肉質な身体と粗暴な顔付きで原始的な暴力性を感じさせる軍団長である。こちらは軍団長も含めた蟻達の中でも唯一メインのエサである人間ではなく魔獣と蟻との混成となっている

 

魔獣は人間と同等の知能を有し、一部の魔獣は人間と取り引きをしたりと関わりも有るのでこの軍団長もヒトの言葉は普通に分かるようである

 

「事はそう単純ではありませんよ。もしも本当に『敵』がここまで攻め込んで来た場合我々自身が負けなかったとしても女王のお命が奪われる可能性は十分有ります。少なくとも手練れが複数居るのは間違い無いようですし、我々だけで手が足りるかどうか・・・」

 

「ああ?そんなの相手が何人居ようが女王を死んでも御守りすれば良いだけだろうが」

 

見事なまでの脳筋根性論である。それを聞いた彼も細かい調整や頭脳労働は己が担当すれば良いのだと思考を切り換える

 

別にそれは相方を馬鹿にしているなどと云う話ではない。蟻というコロニーにおいて様々な役割が有るという本能(こと)を各々の得手不得手に置き換えているのだ

 

不満や不毛なやり取りなど蟻の社会(ほんのう)を据えれば機械的に切り捨てて当然の行為だ

 

(しかし実際どうするべきか。例え彼女(ピトー)が敵を斃したとしても人間の側に我々の脅威となり得る存在が確認された以上は手を(こまね)いているだけと云う訳にもいきません。女王が王を産む準備に入られている中では移城したところで新たに城を建てる為の人足(にんそく)が足りませんし、隠密に場所を移さなければ意味が有りません。ああ!悩ましい!けれども女王とまだ見ぬお仕えする王の為にひたすらに思い悩み、想いを募らせる今この瞬間に酔っていたい。しかしそんな不忠は赦されない。それだけの事)

 

※この間1秒

 

彼は頭の回転は速いが雑念も多いタイプなのだ

 

「軍団長殿。女王様がお呼びです」

 

そんな彼の思考が色んな意味で深みに入らんとした所へ連絡係の蟻がストップを掛け、呼ばれた二匹はそのまま女王の間へと足を向ける

 

女王の命令に迷う余地など有りはしない

 

素早く女王の前まで赴いた二匹は片膝をついて深く頭を垂れる

 

「女王様の命により馳せ参じました。何か御用でありましょうか」

 

《うむ。今外に遠征に出ている軍団長含む部隊が壊滅または壊滅の危機に陥っているのは知っているな?》

 

女王はテレパシーを扱える。それ故に師団長含む兵隊蟻達の断末魔は彼女も受信していたのだ

 

「ハッ!女王様に要らぬ御心労をお掛けした事、同じ軍団長として深く御詫び致します」

 

通訳を介して女王の言葉が届けられ、同志の不手際に二匹は心からの謝意を示す

 

《良い。今は今後の事が急務である。これより、我が()を産む》

 

女王の発した言葉に二匹は堪らず目を白黒させる。今の軍団長にとって女王の言葉は絶対に近しいものが有るが、それだけで素直に頷くにはあまりにも非常識な提案であったからだ

 

「お、お待ち下さい女王様!まだ王は赤子ほどにしか育っておりませぬ。時間でしたらば我等が身命を賭してでもお作り致します故、何とぞご再考のほどを!」

 

(王は完全!王は無二!全ての生物の頂点として君臨すべき王の生誕を、我等の不甲斐無さを理由に穢すことなど有って良いはずがない!)

 

《分かっている。私も我が愛し子をただ産み落とさんとしている訳では無い。お前達の何れか片方。その身を捧げて私に喰われよ。人間達を喰う時も強い生命エネルギーを持つ個体は腹の中の王の成長に繋がっておるのを確かに感じる。お前達ならば片方だけでも普通の人間にして数万を超える程の栄養となろう》

 

護衛軍の最優先事項は王を護る事。女王の最優先事項は強い王を産む事。その二つの認識の差が現れた形である

 

それを聴いた護衛軍の二匹はお互いに顔を見合わせると間髪入れずにクロスカウンター気味な形で相手の顔面を殴り付けた

 

「ぐはっ!」

 

「ぶふぉっ!?」

 

そこから腹の底に響くような重低音を奏でながらノーガードの殴り合いが繰り広げられる

 

お互いに分かっているのだ。自分こそが王の身体の一部となり共に世界を統べるこの上ない献身を捧げたいと思い、それがお互いに譲れない想いなのだと

 

相手を気絶させ、その間に自分が女王に喰われるのが最善手であるのだと直感したのである

 

完璧にして完全なる王の血肉となる事。ある意味で最高の守護の形だ

 

果たして決着の時、立っていたのは粗暴な見た目の護衛軍の方であった。同じ護衛軍で同じ狂信を持つ者同士。変化系の彼が操作系の相方に勝つのは当然の成り行きだ

 

やはり強化率(パワー)暴力(パワー)は全てを解決する、この世で最も強い(Power)!!

 

※小並感

 

原作においてモントゥトゥユピーと呼ばれた者と同じ姿をした彼は勝利の余韻を噛み締めながら目の前で倒れる同士を見てこれで良いと納得する

 

殴り合いの最中は考えてもいなかったが心に余裕の出来た今は頭の悪い自分より頭の良い同士の方が産まれてくる王の助けとなるのだと、勝者である彼は敗者を前に内心負けを認めたのだ

 

(だからこそ、オレが喰われなきゃなんねぇ。だから王の事は―――)

 

「頼んだぜ」

 

最後にそれだけを口にした彼は女王に自らの肉体を差し出した

 

女王に生きたまま喰われながら泣くほど嬉しい気持ちを抑えられずに歓喜の表情のままに事切れる彼の姿を意識の戻った軍団長が血涙を流しながらハンカチを噛み締めて悔しがっている

 

大変に気持ち悪い絵面だがそこには根底には愛しか存在しなかった・・・やはり気持ち悪かった

 

 

 

ピトーをポンズ姉のペットにする事に成功して意気揚々とキメラアントの巣に移動している中で不意に遠くの空、地平線の向こう側に意識が向く

 

「「「なにか有った(の)?」」」

 

私の纏う空気感の僅かな変化から付き合いの一番長いレツとポンズ姉、それと野生の勘に秀でているゴンが訊ねてきた

 

「あ〜。勘だけど多分王が産まれたわね」

 

「バカな!?ピトーの話では女王が王を産む準備に入ったのはつい先日の事だろう!幾ら何でもあり得ない!!」

 

「ビアー。何故そう思ったんだ?勘と言ったが何かは感じ取ったのだろう?曖昧でも良い、話してくれないか」

 

カイトが信じられないと否定しクラピカは理由を訊ねてくる。この辺りは積み重ねた信用の差が出ているなぁ・・・なんて現実逃避をしている場合じゃ無かったわね。王が産まれたとなれば攻略難易度に天と地の差が出るわよ

 

「カイト以外には話したけど私ってこの間五大厄災のパプとケンカしたじゃない」

 

あまりの爆弾発言にカイトが「待て」と口を開きかけたが何とか自重したみたい。そのまま大人しくしててね

 

「他にも同じく五大厄災のゾバエも(気配と原作で)見知っている訳だけど」

 

カイトが話の腰を折らないように自制心を総動員して百面相してるわね。ちょっと愉しい

 

「それと似たようなイヤな感じが漂って来たのよ。単体で人類の脅威となるようなザワつき・・・みたいな?でも遠いせいか気配が不安定で確信持てないのよね。もしかしたら産まれる予兆みたいなのを拾ったのかも知れないし」

 

王が産まれたか産まれる直前か

 

流石にただの勘違いって事は無いでしょうけど、同時に勘違いであって欲しいものね

 

「なら急ぐか?ビアーの勘違いでないとして産まれる直前の可能性がまだ残ってるなら速攻を掛ける価値はゼロじゃないんだろ?」

 

「言いたい事は色々有るが、レオリオの案はあまり意味が無い。キメラアントは兵ならば繭、王ならば女王の胎内で成長しきってから産まれる。仮に産まれる間近の女王を殺せたとしても100%の状態で産まれる王が99か98になる程度だろう。慎重さをかなぐり捨てて得られるリターンが少なすぎる」

 

「カイトに賛成。軍団長であの強さだろ?今なら初見じゃねぇし、ビアーとリースを除いた俺達全員なら勝てるだろうけど、二匹以上同時はキツイぜ。最低でもその二人は王に専念して貰わなきゃいけねぇし、王の産まれが不可避っつぅなら贅沢言えばもちっと戦力欲しいよな」

 

慎重なキルアらしい意見だけど王が産まれると兵隊蟻達が無秩序に野に散って・・・ってそれは女王が死んだ場合でその可能性が高いのを知っているのは私だけか

 

結局のところこの場の戦力だけで何とかしないといけない訳ね。悠長にしてる暇は無いのがキツイ

 

「ほっほっほ!ならこの老いぼれの手などは要らんかね?」

 

突然響いた声に皆が一斉に臨戦態勢となり、直ぐに呆れの空気となる

 

「・・・こんな所で1人でなにやってるんですか、ネテロ会長?ついに老化から徘徊癖が付いちゃったんです?」

 

120歳を超えてるんだし更年期障害もやむ無しか

 

「良い感じに登場したワシに対して当たり強くないかの?」

 

「良い感じに登場してる時点でタイミング見計らってたでしょ。オムツダンスが世界でバズってるお爺ちゃん」

 

「お主こそアイドル動画よりも赤ん坊プレイ動画の方が再生数の伸びが良いんじゃぞ?これからは広報係としてより適性のある方に力を注いで貰おうかの。会長命令じゃ。世界中の変態(ひとびと)の心をハントせい!」

 

「ぶっ殺しますよ。枯れ木ジジイ」

 

第一あれはコラボ広報であってプロハンターの広報としては落第も良いところじゃないですか。ハンターの何たるかを1ミリも伝えてないわよ

 

「会長。お戯れは程々に願います。そろそろ我々も紹介して下さい」

 

なんかネテロ会長の胸元辺りからこの場に居ない男性の声がした

 

「おお、そうじゃったのう。二人とも出て来て良いぞよ」

 

ネテロ会長が懐から折り畳んだ布を取り出して広げるとそこに描かれた魔法陣のような紋様から如何にもエリートって感じのメガネスーツの人とそれとは真逆のガラの悪そうな角張った顔のグラサンの人が現れた。居ないと思ったらそうやって持ち運んでたのね

 

てかゲートの出口それでも行けるんだ。流石作中最高峰の便利能力

 

「全く。会長が我々の隠形では気付かれるから(別空間に)隠れてろなどとおっしゃるから何かと思えばイタズラの為とは」

 

「しかしまぁ納得だ。実際に目にして観りゃあ分かる。この嬢ちゃんは完全に会長と同じ側の人間だぜ―――っと、自己紹介だったな。俺はモラウってもんだ。で、コイツが」

 

「ノヴと申します。我々3人が巨大キメラアントの確認及びハントの為に協会から派遣された形です。皆さん以後お見知りおきを」

 

煙使いのモラウと空間使いのノヴ。サポート能力として原作でも有能オブ有能の名を欲しいままにしている二人だ

 

まぁ原作ノヴさんの方は護衛軍のオーラを間近で見てハゲ散らかしてリタイアしたけどアレは『絶』状態だったのも問題だからね

 

こっちは大半子供だけど侮りは見えないから実力に見合った観察眼は持ち合わせてるみたいね

 

こんな場所で合流するなんてとは思ったけど、原作でもカイトとピトーが戦って原作カイトが首チョンパされた直ぐ後にNGLに来ていたし、タイミング的には何も可笑しい事は無いわね

 

「まぁ良いわ。仮に王が相手になってもネテロ会長が私の『サポート』に入ってくれるならかなり戦いやすくなるから助かるわ」

 

「あ?」

 

「中距離技+ノックバック効果+手数+速度の『弱』連打。私の『補助』として有用よね」

 

「あ゛あん?」

 

「そんな訳だから王と戦う時は期待してるわよ、会長。私の『下』として出しゃばらないようにね、ネテロ会長」

 

あら?何でネテロ会長は額に怒りマークを浮かべてるのかしら?

 

前回試合した時は不本意ながらもほぼ互角だったけど、あれから半年くらいは経ってるんだし若くて最強の能力(確信)である【一念発氣】で鍛え上げた私の方が格段に強くなっているのなんて確定的に明らかじゃない

 

ハメ技系の『発』が有るならまだしも私とネテロ会長はどっちも直接攻撃系だし、『純粋に強い方』が主役(メイン)を張るのは当然の流れでしょ

 

「ぶわっはっはっはっはっは!言われてるぜ爺さん。直接出会って爺さんが以前より妙に迫力が増してるとは思っちゃいたが、こんな生意気なガキが出て来たんなら、そりゃ負けてられねぇって思うよな」

 

「たわけ!ワシゃあ何時でもピッチピチの全盛期じゃわい。まだまだ若いもんには負けんぞ」

 

「いえ、会長の仰る『若い世代』は少々範囲が広すぎるのでそろそろ後進に席を譲られる事を考えて頂いてよろしいかと―――(何で此処に来て全盛期を更新しているんですかこの妖怪ジジイ)」

 

「鉄面皮被っても何を考えとるか分かるぞい。お主も広報部送りにしてやろうかの。ん?」

 

「それだけはご勘弁を」

 

「仮にも私の所属部署を罰ゲーム部屋みたいに言わないでくれない?」

 

そうなった原因100%会長だからね?

 

もっとも私も部署の扉を叩いた事すらないけど

 

「お前さんはお前さんで一度くらいは本部に顔を出さんかい。暗黒大陸(V5)案件の話でお前さんの名前がちょいちょい挟まって向こうさんから圧が掛かって来とるんじゃよ。何とかせい」

 

いやそれ私のせいでは有っても私の責任じゃないでしょ

 

てかV5もなに?暗黒大陸を直ぐに目指すような真似はしたくないって伝えてたのに遠回しに依頼をしようって事は『偶々』危険な蛇やマリモの生息地の近場でも仕事をさせて『偶然』にも私が世界の危機に対して殺る気を出すのを期待でもしてる?

 

それかもっと平和的に三原水の増産依頼とかかな?どっちにしろ現状遠回しに依頼するしかないもんね

 

私は徐ろにバッグからカードを取り出すとスマホで読み込みを掛けて電話を繋ぐ

 

「もしもし、ビアー=ホイヘンスですけど・・・あ、◯◯首相。直で繋いでくれたんですね。早速ですけどV5と言うか環境庁からかな。ハンター協会にやんわり依頼出してます?―――やっぱりですか。私が以前皆さんに披露した三原水増産(パフォーマンス)を是非またして欲しいって事ですね?まぁ大して手間は掛からないですけど何度も足を運ぶのは面倒なので一度で済ませて下さいよ。分割払いも受け付けてますんでね。では他の首脳陣にも伝えといて下さい」

 

さようなら〜、と適当に掛けた電話を切ってスマホを仕舞う。V5の国家予算を持ち寄っても私が無尽蔵に三原水を増やしたら足りなくなるのは明白だからね。もちろんそれ以外の蛇狩りやマリモ狩りをする気は無いのだと遠まわしに圧を掛けてもおいたからこれで暫くは大人しくしているでしょう

 

 

「はい、ネテロ会長。何とかしましたよ」

 

振り向きざまにそう言うと皆が頭が痛そうにしていた。平常モードなのはネテロ会長だけだ

 

「ビアー。幾ら連絡先貰ってても普通は躊躇する相手だと思うよ」

 

「使わない連絡先なんて何の意味もないじゃない。知ってる?『在るものは全て使え』―――プロハンターの心得よ」

 

「それは間違ってないけど絶対にプロハンの方の心得でしょ!バリスタとか大砲とか落石とかシビレ罠とかをバリバリ使うプロハンターの方でしょ!!」

 

「そんな訳だから立っているものはジジイでも使えって事で改めてネテロ会長は私のサポートお願いね。書類仕事の面倒は減らしてあげたんだからそれくらいはして下さいよ」

 

「それとこれとは話が別じゃの。第一ワシに『負けた』小娘が勝者を騙るとは夢見る乙女のままでいるにはちと歳が行き過ぎではないかの?」

 

「こちとら世間で云うところの中2だが!?」

 

先日十四歳になったのよ!ピッチピチに青春学園物語を謳歌してても可笑しくない年齢なら夢女子でも問題無いでしょうが!あれか、一桁以上は女児じゃないってか

 

夢女子は意味が違う?知るか!

 

私とネテロ会長がガンをぶつけ合うと余波で地面に亀裂が奔り、周りの林から動物達が一斉に逃げ出した・・・何処かに「覇王色の衝突だ」って言ってくれる一般モブでも居ないかしらね。テンション上がるのに

 

「ビアーもネテロさんもポンズに負けたんじゃなかったの?」

 

・・・ゴ〜〜〜ン!!それは言わないお約束でしょ!!確かに気絶させられた上に罰ゲーム了承の血判書押さされたけども!

 

「ふ、ふふふ、ポンズ姉に負けたなら納得せざるを得なかったわね。お互いに敗北で実質引き分け。なら次はハンターらしくどっちが獲物を先に狩れるかで決着をつけましょうか―――種目は王様狩り。乗るかしら?」

 

「ええじゃろう。ワシとて伊達にハンター協会の長を長年続けとらんわい。ここは一丁ひよっ子にハントのイロハを見せ付けてやるとしようかの」

 

「はんっ!若手なのは認めるけどこっちだって伊達にトリプルハンターやってないのよ。イロハくらい知ってるわ。狙った獲物を狩りたいなら―――」

 

瞬間。私とネテロ会長の姿がその場から掻き消えた。キメラアントの巣に向かって高速で流れる風景の中、ネテロ会長だけが直ぐ横にピッタリと付いて来ている

 

「「(イ)一番乗りで

(ロ)論ずるより先に

(ハ)ハント(実力行使)する―――王様(キング)(タマ)はワシ/私のもんだァアアア」」

 

真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす。最短距離でぶっ飛ばす。害虫駆除ならこれが結局一番だってのよぉおおお!!

 

私達は走る。皆を置き去りにして今度こそ己の明確な勝利の為に!!

 

 

 

「ビアーも会長もプロの行動としては落第過ぎない?猪突猛進にも程があるよ」

 

「あんなにムキになってる爺さん初めて見るぜ。おら、俺等もとっとと行こうぜ。雑魚を散らして波風立たせねぇのがプロとしての仕事だ。それに一念能力者としちゃあの二人の戦闘は見逃せねぇ」

 

モラウの言葉に一同は同意するように頷き二人の後を追って走り出すのであった

 

 

 

ゴン達がビアーとネテロを追い掛けるのとほぼ同時刻、キメラアントの女王の腹を突き破って王がその地に立っていた

 

女王の出産を待たずに腹から自らの意思で這い出て産声の代わりに母親の断末魔を上げさせた王は不機嫌に鼻を鳴らした

 

「ふん。あれ程美味な栄養の後に薄っぺらい肉を喰いおって。使えぬ女よ」

 

女王は軍団長を食した後に腹の中で急激に成体へと近付いていく我が子に少しでも多く、更なる栄養を与えようと確保していた人間達を食べていたのだが、一度極上の味を知った王にはそれが酷く不愉快だったのだ

 

世界最高峰のシェフが同じく最高峰の素材と設備で丁寧に作り上げた料理を堪能した直後に砂利の混じった(あわ)の飯でも流し込まれたかのような不快感は万死に値する大罪だ

 

不満を吐き捨てる際にも一瞥(いちべつ)すらしなかった女王を背後に王は思う。あの最高に美味なエサを今度は自分の口で直接喰らいたいのだと

 

「―――ほぉ。馳走が此方に向かっておるな。自ら余に喰われに来るとはエサとしての在り方を弁えているようだ」

 

『円』を使うまでもなく生物として超越した感覚で気付いた気配に生まれたての王はその口元に欲望を隠さぬ笑みを浮かべる

 

「―――食欲をそそる」

 

モントゥトゥユピーの(オーラ)を全て取り込んだ事で原作の王と同じく単身で国家レベルの武力を得た生まれながらの超越者が世界に躍動する

 

 

(王!王!王!やはり王は完璧な存在!それに比べて私はどうだ?私と王の間には天地以上の力の差が有ると云うのにこれで護衛軍?命懸けで王を御守りする?目の前に居ながら王に気付いてすら頂けないこの体たらくで?)

 

実は王が産まれてから護衛軍としての口上を述べていた彼はそのセリフすら完全スルーされていたのだ

 

(全ては王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為。王の為!!!

 

 

 

 

・・・私はどう在れば良い?)

 

悩める護衛軍を置き去りにして、種の頂点同士の会合の瞬間はすぐそこまで来ていた

 

 




ポックルで普通の人間1000人分の栄養とか言われていたのでポックルが何とか練を30分近くは維持できるとしてユピー(70万オーラオーバー)なら単純計算で普通の人間40万人分

王の身体の成長とかでロスが出るとしても原作の復活王と同じくらいにはなっても可笑しくはないのかなって事で最初から復活王です

ネテロが来たならこの程度の難易度変更は有りですよねw
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