毎日ひたすら纏と練   作:風馬

96 / 96
 お盆でyoutubeや小説サイトに噛り付きたい。でもそれだと執筆が進まない・・・最近の夏が暑すぎるからって理由で学生の頃のように8月一杯休みにならないかな~?←ダメ人間(ザコ)の思考


脱落と回収

人間界で産まれた暗黒大陸由来のキメラアント。その(いま)だ名も無き王が暴威にして王威のオーラを身に纏う。仮にこの場に一般人が居たならば王の姿を目にしただけで精神が焼き切れて死に至る。(まさ)しく生きている次元が、格が違うのだ

 

そんな只人では触れることは愚かその目にする事さえ叶わぬ超常存在を前にビアーとリースが互いのオーラを触れ合わせる

 

「「『周』に『周』を足す事で今の私達は実質全身『硬』状態。そっちが100%中の100%ならこっちも攻防力100%中の100%でいくわよ」」

 

瞬間。ビアーとリース双方のオーラが足し合わされたように爆発する

 

対象に己のオーラを纏わせる『周』は本来であれば一方通行で2人が互いを同時に強化しようとしても互いのオーラが邪魔し合って上手くいかないものだ。だが【神の人形師】によって造られ、(かなめ)の目もビアー本人のものと寸分違わぬ【神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)】のコピーを使っているリースのオーラはビアーのオーラと衝突しない

 

お互いをお互いが周りから包み込む矛盾が成立するのだ

 

同時に王に突撃したビアーとリースは触れ合う程の距離でありながらお互いの動きを邪魔する事なく、それどころか時に利用しあって王へとラッシュを見舞う

 

「ぐううう!!」

 

ただ手数が増えただけではなく顕在(けんざい)オーラが2倍近くに膨れ上がっている事で王と云えどもダメージを無視して反撃に移るような雑な対処は出来ない

 

リースは最初に奇襲を仕掛けた時に片腕を落とされてしまったがその後ビアー達の戦闘を観察し、ビアーの強化率上昇をそのまま真似した事で今や王の前に立ち塞がる敵として(なん)ら不足は無いのだ

 

ゼロ距離で密着しながら攻防の役割を次々と切り替えて王に痛打を叩き込む二人の動きは一種の社交ダンスのようだ。お互いの動きの癖も思考の癖も理解している二人は異体同心と呼んで差し支えないだろう

 

「おっと、儂もダンスは最近練習した覚えが有ってのぉ。混ぜて貰おうか」

 

ネテロは愛する部下と共に(主に反抗した(トラ)(ウシ)が叩きのめされて)血の滲む努力でダンスのレッスンをした日々を思い出す

 

この爺ぃ最低(今更)である

 

「なんでもあの踊りはブレイクダンスっちゅうらしいでの。先ずはこの小指からブレイクじゃ」

 

リースの蹴りとビアーの肘打ちが同時にヒットして後ろに流れて来た王の指を1本だけ掴んだネテロはさながらブレイクダンスのような全身を使った激しい動きで捻りを加え、全体重、全筋力、全オーラ操作を駆使して王の指1本をへし折ったのだ

 

本来ならばそれ程大きな隙を晒せば指を折る前に王がネテロを切り裂いていただろうが、お互いを強化し合ったビアーとリースの猛攻がネテロの無茶を可能なものとした

 

仮にリースがお手頃人形サイズでビアーに『周』をするだけのブースト装置に徹していたら王の動きを止めるだけの手数が足りず、ネテロは今も【百式観音】でのチマチマとした攻撃を続けていた事だろう

 

たかが指1本、されど指1本。通常の蟻ならばまだしも人間を数多く取り込み産まれた王にとって指の有無は小手先の器用さに直結する。複数在る鉤爪で獲物を引っ掛ければ良いだけの女王とは指の重要度が違うのだ

 

「ほれ、もう1本」

 

ネテロは続けて折った指の隣の指を掴み力を籠めんとする

 

「ほざくな。これ以上貴様なぞにくれてやる指など爪先程も無いわ」

 

背筋に悪寒の奔ったネテロは考える間もなく掴んでいた指を放した。王が指先に『凝』をした上でネテロの指ごと手を握ろうとしたのだ

 

「っと危ねえ。へし折るどころかこっちの指が無くなるところじゃったわい。なら次こそ折ってやるかの」

 

ネテロは性懲りもなく再び王の指を掴みに掛かり捻りを加える。無論ビアーとリースの猛攻を受けていても同じ手が通じる相手では無い事は百も承知だ

 

(祈りとは、心の所作。そして儂の【百式観音】という能力そのものが祈りの産物。ならば『型』なんて動作に一々縛られる必要はねぇ!)

 

ネテロは王の指を捻るのとは逆回転に力が掛かるように王に【百式観音】のチョップを振り抜いたのだ

 

「はっ!これで二本目も逝ったの」

 

ネテロは体術を繰り出しつつ祈りの動作すらも必要とせずに【百式観音】を発動させてみせた

 

これはネテロが祈ってない訳でも『型』をなぞってない訳でもない。その全てを心の中で完結させているだけなので別に発動速度が早まったりはしていない

 

ただ体術と【百式観音】を真の意味で融合させただけである

 

王の身体にビアーとリースの体術に加えてネテロの体術と【百式観音】が絶え間なく襲い掛かる

 

カストロ?彼は相変わらずビアー(とリース)の体術の補助(踏み台)として活躍しており、ルルはリースに離れ際にパピヨンマスクを顔に掛けられてヒラヒラと蝶のように舞い、王に一睨みされる度にフラフラと蝶のように舞い逃げるのを繰り返している。元々愛玩・生産用であろう念獣のルルは強大な『周』の補助無しにはビアー達の戦闘速度には付いて行けないのだ

 

「消えよ」

 

突如、王の砲撃がノータイムで尻尾の尖端から発射された

 

王の怒りを糧とした念の砲撃は今まで発射前に腕が変形していた。だが今回の砲撃は既に存在している発射口を使用した為に前兆を捉えるのが難しかったのだ

 

「メヘェ!!?」

 

狙われたのはデバフ担当(ルル)だ。やはり戦いは後方支援から叩くに限る

 

念の爆発に呑み込まれたルルはヘンテコマスクと共に跡形も無く完全消滅した

 

「「パピヨンマスクゥウウウ!!?」」

 

「いやそこは羊の心配じゃないんかい」

 

ルルの本体の【金羊の皮(アルゴンコイン)】はリースの懐に在るので心配は不要ではあるが後でビアーとリースはルルの(ひづめ)の制裁を受ける事だろう

 

ネテロの(げん)を受けてビアーとリースはお互いを見合わせる

 

「ルルの(かたき)は!」

 

「私達が()つ!」

 

取って付けた様な台詞の上に勝手に死んだ事にされたルルは【本体(アルゴンコイン)】のまま激しく揺れて抗議するのだった

 

 

 

ルル(とマスク)が原子の塵すら残さずに消滅してから私達の死闘は激しさを更に増していった

 

意識を強制誘導するマスクが無くなった事で王の立ち回りが激しさを増したが、それは私達にも云える事

 

マスク装備のルルが王の視界に入る様に可能な限り動いてくれてはいたけれどマスクの効果を受けない様に気を配らなければならなかったのは私達も一緒だ

 

無論リターンの方が大きかったからマスク作戦は続行させたけど私達の動きも多少は制限されていたのも事実

 

王も私達もそれが無くなった以上、好き放題動けるようになったのよね。それでもその間に確かに刻んだダメージが王の動きから精細さを削ぎ落とす

 

ダメージの痛みで動きが鈍る事は無くても骨が折れたり腱が切れたりすれば万全の状態と同じ動きが出来なくなるのは道理だ。痛みを無視するだけでは補えないものがある

 

それにしてもネテロ会長が覚醒するのは予想外だったわね。今も彼は直接格闘しつつ祈りの動作を省略して観音の攻撃を連打してるから傍目には観音がマニュアル操作から全自動(オートマ)に切り替わったかのように見える

 

実際にはマニュアルにマニュアルを足してるだけでゲームのコントローラーを1人で2つ同時に操作するような曲芸だ

 

もっとも素手と観音じゃリーチもサイズも破壊の方向性も違うから組み合わせられる型に制限は有るでしょうけど、元々無数の選択肢が有って近付けないところに接近すれば更に追加で選択肢が増える感じね・・・うん。クソゲーだわ

 

私?私とリースは普通に殴る蹴るをしているだけよ。お互いにブースト『周』を掛けて今や原作怒髪天を衝くゴンさんの必殺技(ジャジャン拳)以上の威力をマシンガン以上の連射速度で捩じ込んでるだけだからね。特別な事は何もしてないわ

 

王だってピトーの顔面を一発で凸から凹に整形させられる私達の攻撃を防いでるけど、やってる事は身体強化と念弾だけだしね。スタンド使いの真似事してる会長がやっぱり一番変なのよ

 

「奮起せよカストロ!ビアー様方の踏み台と云う大役を完璧に熟しつつも私は更にお役に立つ!立って魅せねばビアー様第一の使徒として、【ビアー様の使徒虎(エンジェル・タイガー)】を名乗れないのだ!!―――ヌゥオオオーーォオオオ!!タイガーウィング足払い!ビアー様に蹴られた反動を利用したビアー(サマ)ーソルトキック!まだまだ足りん。ビアー様と共に在るだけで私は力が(みなぎ)るのだ。どこまでも大きく成長出来る!それを技として昇華せん!ビアー(サマ)ージャンボォオオオオ!!!」

 

「サマージャンボとか後ろに『宝くじ』って付きそうな技名()めなさい!殴るわよ!!」

 

「承知!」

 

ビアーは丁度いい位置に現れたカストロの足首を掴むとそのままぶん回して王へと殴り付ける。ちゃっかりヒットの瞬間に「隠爪撃(いんそうげき)肉塊球(にくかいきゅう)!!」などと虎咬拳(ここうけん)の技を繰り出すオマケ付きだ

 

「殴る」と言ったから爪や牙を()したメイン技じゃなくて肉球アタック(猫の手掌底)だったわね・・・いや、アンタ『を』殴るって意味だったのに何時(いつ)の間にアンタ『で』殴りつつアンタ『が』殴るに置き換わってるのよ?

 

当然カストロには私とリースの合体『周』のオーラが乗ってるから無駄に良い威力が出たのもムカつくポイントね。攻撃が当たった箇所は一発で青黒く変色している

 

私とリースのお互いの動きを完全に把握しているが故のお互いの動きを阻害しない密着型体術と違って味方をそのまま武器とする攻撃は初出しだから王も『流』で防御に回すオーラ量を見誤ったわね。驚いた?私も予想外よ!

 

でもこの長物・・・カストロングソードを要所要所で使っていけば王へのダメージは更に加速して遠くない未来に王を倒す事が―――

 

(みなぎ)る」

 

え?

 

(みなぎ)る。(みなぎ)る。(みなぎ)るぞ!!」

 

え?何が?まさか叩かれ過ぎてドMにでも目覚めちゃった?―――嫌よ、Hanter x Hanterのラスボス(?)がマゾな王様になるなんて

 

「はっ!前屈みになってどうした小僧?叩かれて興奮して固くなっちまったか?」

 

別に内股で前屈みになってる訳でも無いでしょ、このセクハラ爺。声に出した瞬間セクハラがこっちにも飛んで来るから黙っておくけどね!

 

「怒りも、苛立ちも全ては貴様らが居るからだと思っておった。だが今、なによりも(ゆる)せぬのはこの世の頂点たる余がエサ(ごと)きに傷付けられている事実!なんという体たらく。なんたる惰弱(だじゃく)。なんたる虚弱(きょじゃく)。なんたる脆弱(ぜいじゃく)!―――余が真に怒りを向けるべきは今も不甲斐(ふがい)なさを(さら)す余自身を置いて他に無い!」

 

王が自分の怒りの根底に在るものを自覚した瞬間、私の前には『死』の壁が迫っていた。念弾の爆発じゃない。王自身が爆弾で爆心地だ

 

「しまっ!?全方位!!」

 

王がユピーの怒りの能力を取り込んでいる時点で原作ユピーの使ってた自分自身を中心に無差別に破壊を撒き散らす技も使えると見るべきだった。いえ、あの技は予備動作が大きいから使われても問題無いと無意識下で切り捨ててた

 

判る!この爆発の規模だとカストロの連続ワープでもワープとワープのタイムラグの間に破壊の奔流に呑み込まれる!!

 

そうして刹那にも満たない時間の後、私達は目の前がまっしろになった

 

 

 

「・・・う・・・くぅぅ・・・あ」

 

王の一撃(ばくはつ)(さら)されたビアーは(かす)む視界と耳鳴りの中で意識を取り戻した

 

(意識が途切れたのは一瞬ね。爆発の中で気を失って地面に落ちた衝撃で目が覚めたってところかしら。でないと今頃は(あいつ)の胃袋の中だったろうし)

 

ビアーは立ち上がると瞬間的に『円』を拡げてリース、ネテロ、カストロの生存を確認する

 

(生きてるけど全員虫の息ね。そのまま死ぬんじゃないわよ。こっちには借りが有るんだから)

 

王が自爆したその瞬間。彼等は生き残る事よりもこの戦いに勝つ事を優先する為にビアーの盾となったのだ

 

ビアーに抱きつく形でリースが、その二人を背に羽根を広げたカストロが、更にビアー達を観音の慈愛の掌衣(しょうい)で包み込み爆発に向けて全オーラ消費の光弾を放つ事で少しでも威力を削ったネテロがビアーに立ち上がるだけの余力を残してくれたのだ

 

なお一番前に居たカストロはビアーとリースの『周』の補助で。ネテロはオーラの防御こそほぼ無くなったものの立ち位置的にはビアーの更に後ろに居た為に致命傷で済んでいる

 

リースはカストロの守りが剥がされた瞬間に『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を発動させた事でオーラがほぼ底を突き、早急にレツにオーラを補充して貰わねば動けないどころかただの人形に戻ってしまい兼ねない状況だ。今は節電ならぬ節オーラの為にぬいぐるみサイズでへばっている

 

「動けるのは貴様だけか。つくづく生き汚い事よ。よもや貴様1人動けたところで余に万が一にでも勝てると思い上がってはおるまいな?」

 

「愚問ね。アンタこそさっきの一撃はだいぶ無理したみたいじゃない。特大の爆発に(ともな)う身体の膨張(ぼうちょう)を私達に(さと)らせない為に外骨格の内側に筋肉全部無理やり詰め込んだんでしょ?全身プレス機にでも掛けられたみたいに色んなところが内出血してるわよ」

 

ビアーの言う通り自傷行為(リスク)をバネとして技の溜めを隠蔽(いんぺい)し、かつ己に対する真の怒りで威力も増した一撃は王自身へも無視出来ないダメージと消耗を刻んだ

 

両者共に満身創痍。しかし状況はビアーの方が悪かった

 

王とビアーでは王の方がダメージを負っているが王にはキメラアントとしての異常な生命力が有り、加えてビアーは倒れているリース達を気に掛けながら戦う必要がある

 

(それでも、やるしかないわね)

 

踏み込みの()こりを最小限に、肉体の加速は最大限に王の懐まで飛び込んだビアーは鋭い一打を放つ。ビアーのオーラはリースとの『周』の掛け合いで元来の限界以上の顕在(けんざい)オーラとも呼べるものを経験した事で今や潜在オーラの3割を超えていた

 

念を習って1年程とは云えパワータイプの原作主人公のゴンが蟻編で潜在オーラの1割も顕在(けんざい)オーラとして『発』っする事が出来ていなかった事を考えると破格と呼べる

 

400%を超える強化率と合わさればビアーの顕在オーラは実質的に潜在オーラ量をすら上回ると云う人としての限界を超えた領域に片足を踏み入れているのだ

 

ビスケのマッサージを乱用した超高密度の修行と王との戦いの中での急成長も相まってビアーの潜在オーラ量は約77万オーラ。すなわち顕在オーラ換算で125%・・・否、130%に届くビアーの実質的な顕在オーラは遂に100万の大台に乗ったのだ

 

原作でオーラ量を数値化していたモラウの弟子の漢気ヤンキー(ナックル)も「お前が『堅』で体外に留めておける顕在オーラ(AOP)は目算で約100万オーラ!!」などと言っていたらそのまま回れ右して全力ダッシュした事だろう

 

その破格の一撃を王はただ普通に受け止めた

 

「威力は確かに増している。だが貴様だけでは所詮この程度よ」

 

ビアー単体の力が(いく)ら先程までよりも上昇していようとも己の分身とも呼べるリースとの本来あり得ない相互協力(ジョイント)型の『周』で倍近い出力を誇っていた時と比べたら力不足は(いな)めない

 

衝撃は有る。傷付いた身体で受け止める事に痛みが無い訳でも無い。だがビアー以外が脱落した今、脅威でもないのだ

 

逆にビアーは王が反撃で放った拳を避け、受け流し、横合いから飛んできた尻尾を咄嗟(とっさ)に受け止めるが踏ん張った地面を削りながら何メートルも押し込まれ肺の中の空気が押し出される

 

それでも構うものかとばかりにビアーは王へ突貫しては致命傷だけは何とか受けないようにしつつ攻防を積み重ねていく。しかし格上の敵を前にお互いに小細工抜きの殴り合いをしていれば順当により強い方が相手にダメージを与えていく

 

ビアーは王の肘打(ひじう)ちを手の平で受け止めつつ後ろに跳んで威力を減衰させ、超至近距離の間合いが完全に離れる前に置き土産とばかりに王の側頭部に蹴りを入れ込むが防がれてしまい、お返しとばかりに深く踏み込んだ王の側頭部を狙った水平チョップで扇風機のように5回転はしつつ吹き飛んでしまう

 

吹き飛ぶ途中で絶妙な力加減で地面をタッチする事で体勢を整えて着地するが痺れた三半規管が視界も揺らし、()ぜて()れた血が首元まで伝っていく

 

(血が目に入った訳でもないのに視界が半分赤い。ダメージの回復の(ため)にもう少し間合いを広く取っても不自然じゃ―――)

 

「成程。ただ必死に戦っている様に見せてその実、あの死にかけ共の居る場所から遠ざかっている訳か。余の気を惹く為に多少無理にでも攻撃を重ねる。愚行極まるな。余を(たお)そうと云うだけでも()(がた)いと言うのに、この()に及んでまだ他者の命まで救わんとするとは・・・よもや貴様、まだ己が死なないとでも思っているのか?」

 

「ひょっとして私に足りないのは危機感とでも言うつもりかしら?如何(いか)にもB級妖怪(モンスター)の言いそうなセリフね―――仲間を見捨てる?知らないなら教えて上げる。それは雑魚の思考よ。アンタこそ王の器に程遠いんじゃない?」

 

「たわけ。王とは唯一にして絶対の存在。どれだけ見捨てたところで余に平伏(ひれふ)す有象無象など掃いて捨てる程に湧いて来るわ。自己以外の命に優劣を付ける程度の視座しか持たぬ者が王を語るなど笑止」

 

王は薄ら笑いを浮かべるとこれ見よがしに念弾を造り出しリース達が倒れている方向へ発射した

 

「―――っ!性格悪いわね!!」

 

少し軌道をズラした程度では念弾が着弾した時の余波で皆が巻き込まれると判断したビアーは瞬時に追い付いた念弾に瞬間的に『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を発動させて蹴り飛ばす

 

「貴様は頭が悪いようだな。使えぬ仲間など見捨てて余に向かって来ておれば一撃くらいは入れられたものを―――余に背を(さら)した代償は高くつくぞ」

 

今度は連続で王の念弾が発射され、その全てをビアーは弾き飛ばしていく

 

(くっ!怒りを籠めた念弾じゃないから弾けるけど『赤裸々(ドレス・ブレイク)』をこんなに連続で使ってたらすぐにオーラが枯渇する!王がどうたら言ったところでやってる事が一々姑息(こそく)なのよ蟻ん子が!!)

 

いくら悪態を()いたところで状況が良くなるはずも無く莫大な量を誇るビアーのオーラの残量がグングンと減り続けていく。(むし)ろオーラ消費の激しい『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を多用しながらもオーラが枯渇していないビアーの『堅』と『赤裸々(ドレス・ブレイク)』の切り替え技術が異常と云えるだろう

 

だがこのままでは王が雑に念弾をリース達の倒れている場所に向かって放ち続けるだけでビアーが力尽き、勝敗が決定的なものとなってしまう。それがこの戦場における共通認識だ

 

だからこそ彼らが動くべきと判断したのはこの瞬間であった

 

「うおおおオラアアアアアアアアあ!!人造人間(セ〇)っぽい見た目しやがって!テメェを吹き飛ばすならこれ以上の技は無ぇぜ!―――か〇はめ波ぁあああーーーああああーーー!!!」

 

気合を入れつつかなり遠くから派手に念の砲撃(ビーム)を放ったチキンなのか勇敢なのか判らないレオリオの全霊を賭した一撃を王は一瞥(いちべつ)しただけで興味を無くす

 

仮に王が無防備にその攻撃を受けたとしても問題にもならない攻撃だと瞬時に理解したからだ

 

「十分過ぎる働きだぜ、レオリオ」

 

絶対の王に一瞥(いちべつ)というワンアクションを使わせた。そんな(すき)とも呼べない意識の間隙(かんげき)を雷光を纏ったキルアが駆け抜ける

 

キルアの【神速(カンムル)】は素早さの極致(きょくち)。一切の無駄のない動きを反射で繰り出す為、相応に単純なスピードも増しはするがあくまでも本質は初動の早さ。王やビアーとの戦闘に巻き込まれないギリギリの位置からでは(いく)らキルアの【神速(カンムル)】でも王の隙を突ける程に瞬時に接近など出来ない

 

「オレのスケボー。ライフルよりも速いぜ」

 

その距離という概念を一瞬で埋めたのはキルアが具現化系の『発』で創り出したスケートボードだ。某頭脳は大人な小学生探偵のアレを思い浮かべたら大体合っているが、その性能は桁違いだ

 

具現化系としてこのスケボーに付与された特殊能力に『電気を磁力に変換して動力・推進力とする』という制約がある。大量の電気を用意出来なければただのスケボーと成り下がるこのアイテムもキルアが扱うならば話は別だ

 

「リニアモーターカーって知ってっか!!」

 

先程はスケートボードと説明したが正確にはキルアが今乗っている板には車輪が付いておらず形としてはスノーボードに近い。そのボード自体の磁力と僅かに放出系を練り込んでボードの周りに独立して発生させた磁場を利用した超高速移動術

 

かつてゴンとキルアが幻影旅団のフェイタンと戦った時に彼の無差別広範囲カウンター技である【許されざる者(ペインパッカー)】の効果範囲から一瞬で離脱したのはこのスケボーもとい【スカイボード】によるものである。名前から察せられる通り空も飛べる便利アイテムだが自身の充電の残量を把握出来ないキルアなので調子に乗って大空を舞っているとパラシュート無しのスカイダイビングイベントが突如として始まるので注意が必要である

 

「『導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)』!ついでに『雷掌(イズツシ)』も添えてやるぜ!!」

 

キルアは王に接近はするが流石に直接雷撃を叩き込んだりはしないでその手から伸ばした『鎖』で王に拘束と電撃の麻痺を加えていく

 

キルアがクラピカの鎖の能力を使っているのはクラピカの鎖の能力を一時的に鎖を繋いだ相手も使えるようにする『紡ぐ人差し指の鎖(メモリーチェーン)』によるものだ。当のクラピカは遠くでキルアに繋げた鎖から流れ込んで来る電撃を受けて気絶しないように踏ん張っている。一番地味で一番可哀そうで一番身体を張っているのは彼かも知れない

 

本当ならば拘束した対象を『絶』にする『束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)』を使いたいところだがアレはA級以上の賞金首(・・・・・・・・)相手にしか使用できないので却下だ―――所詮キメラアントはB級なのである

 

※関係ない

 

「ゴン!!」

 

「うん!―――滅殺のトリプルブレットッッッ!!バーストォオオ!!!」

 

王が雷撃の中で拘束を引き千切ろうと力を込めたのを見てこれ以上の足止めは不可能と断じたキルアが上空に向かって呼び掛けるとアリスタに運ばれながらその両腕にオーラを溜めていたゴンが飛び降り、王の顔面に 3連+3連の6連ツイン釘パンチ 『滅殺のトリプルブレット・バースト』をかます

 

「よっしゃゴン!蜂のように刺したら後は逃げっぞ!!」

 

発電所の供給を切ってゴンが王を殴っている間にアリスタを小脇に抱えたキルアが反対側の小脇にゴンを捕まえるとスカイボードに足下から電気を流してフルスロットルで離脱する。茂みの奥で今や膝立ち状態で口から煙を上げて白目を剥いているクラピカはゴンがすれ違いざまに釣り竿で釣り上げて逃走一直線だ

 

なおレオリオはビームを放った後はわき目も振らず自力で回れ右をしている

 

「ビアー!!リースやネテロさん達はレツ達が回収してるからね~!!」

 

最後にゴンがビアーにリース達の状況を教える。ゴン達が王に奇襲を仕掛けた一番の理由はリース達を回収する隙を作るためであったからだ

 

ノヴがネテロ達を回収する為のワープゲートを設置しその間にモラウがネテロを、カイトがカストロを、ポンズがリースを回収してノヴの【4次元マンション(ハイドアンドシーク)】内に退避したのだ。なおレツはマンション内で体力回復のビスケ人形と外傷回復のマチ人形を(そろ)えて待機していたので今頃はネテロはマッサージを受け、カストロは千切れ欠けている四肢を縫い合わせ、リースはオーラの補充を受けている頃だろう

 

ビアーはゴンの言葉を受けて笑みを浮かべると鎖を引き千切った王に向き直る

 

「ねぇねぇ、どうかしら王 様(お・う・さ・ま)?私の自慢の有象無象(なかま)達に良いようにやられた気分は?祝辞でも述べてくれても良いのよ」

 

「下民にくれてやる言葉など無いわ。貴様が代わりに奴らに届けてやると良い―――貴様の(あわ)れな慟哭(どうこく)と断末魔をな!」

 

 

ビアー=ホイヘンスと名も無きキメラアントの王

 

戦場に最後に残った超人(バケモノ)怪物(バケモノ)がこの戦いに決着を付けるべく大地を踏み砕きながら駆け出した




ネテロ達の脱落とその回収。戦場がスッキリしたところで次回で決着ですね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

暗殺者のうちが何でハンターにならなあかんねん(作者:幻滅旅団)(原作:HUNTER×HUNTER)

流星街出身の暗殺者、ラミナ・ハサン。19歳。▼幻影旅団とは昔馴染みで、ある日彼らに借りを作ってしまったラミナは幻影旅団団長クロロに『ハンター試験受けてこい』と言われてしまう。▼そして、ラミナは287期ハンター試験を受験する。


総合評価:20439/評価:8.46/連載:153話/更新日時:2022年06月11日(土) 19:30 小説情報

流星街の解体屋ジョネス(作者:流浪 猿人)(原作:HUNTER×HUNTER)

事故で死んだ男は、気付けばゴミ山にいた。▼地獄のようだが、どうやら地獄ではなく、別の世界に転生してしまったらしい。▼偶然にも得た二度目の生。なら後は全身全霊でこの世界を生きるだけだろう?▼男は駆け出した。その体が原作のかませ犬とも知らずに……。


総合評価:21528/評価:8.49/連載:69話/更新日時:2024年06月14日(金) 06:00 小説情報

オレが目指した最強のゴンさん(作者:pin)(原作:HUNTER×HUNTER)

転生したのはオリ主でもモブでもなく主人公。▼多くの苦難が待ち受け、最後は全てを犠牲にしてリタイアする。▼しかしその一瞬のきらめきは、どうしようもなくファンを惹きつけた。▼「オレは、最強のゴンさんになる!」▼ ▼作者の妄想の中で最強のゴンさんを目指します。▼ご都合主義、独自解釈にご注意下さい。


総合評価:46246/評価:8.91/完結:117話/更新日時:2024年12月27日(金) 02:13 小説情報

どうしてこうなった?(作者:とんぱ)(原作:HUNTER×HUNTER)

 オリ主がHUNTER×HUNTERの世界にトリップして四苦八苦しつつも楽しく過ごすお話です。基本はギャグですが、たまにダークな表現やシリアスもあります。▼ この小説はArcadia様にも投稿しています。題名をほんの少し変えただけで内容に変化はありません。各話の見直しが終わり次第投稿していきたいと思います。▼ 挿絵が入りました。※が付いている話のあとがきにあ…


総合評価:43716/評価:8.69/完結:86話/更新日時:2015年11月08日(日) 20:00 小説情報

実に下らない話だが、神はダイスを振るらしい(本編完結)(作者:ピクト人)(原作:HUNTER×HUNTER)

神様の手違い(?)で死んでしまった主人公は、異世界で第二の人生をスタートさせる。彼女にあるのは神様から性能を底上げしてもらった身体と、(半ば押し付けられた)二つの特殊能力。これらテンプレ能力を駆使し、主人公は世界を巡っていく。▼なお、生まれたときにやらかしていた模様。▼現在、外伝にてIF√のお話を投稿中です。▼https://syosetu.org/nove…


総合評価:35956/評価:8.61/完結:37話/更新日時:2019年09月20日(金) 22:31 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>