毎日ひたすら纏と練   作:風馬

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爆発とオチ

私と王(コイツ)以外が戦場から離れた今、この戦いの行く末は完全に私達に委(ゆだ)ねられた

 

先程までと違って王の気を惹く為に無理に攻めたりリース達の方に戦場や流れ弾が行かないように位置取りを気にしたりしなくて良くなったので実際かなり闘い易(やす)くはなった

 

それでも当然と云うべきか私の方が攻防を重ねる度に怪我が増えていく

 

王の指先が引っ掛かるだけで裂傷が出来、掠(かす)るだけでもヤスリで削られたように血が滲(にじ)む

 

「っ痛!不思議な(マジカル)リボン、自傷自縛(じしょうじばく)!」

 

攻防の中で自然と離れた間合いの隙に対象に自動で巻き付く伸びるリボンを取り出して私の身体の傷を包帯代わりに巻き付けて縛っていく

 

本来なら相手を拘束するアイテムなんでしょうけど、こういう使い方も出来るのよね。殴り合いしながら応急処置が出来るから継戦能力に多少の足しにはなる

 

それにもう着ている服もボロボロでかなり際どい格好になってたからその点でも助かるわね。『赤裸々(ドレス・ブレイク)』なんて技を持っている私でもセンシティブな意味で服が弾けるのは御免だわ

 

権力者の前でストリップショーとかそんなコテコテなの今時・・・この国の総帥なら毎日やってそうね。てか割とこの世界ならやってる奴多そうか

 

「・・・でもそうね。アンタも世界を知らない子供のまま死ぬのは可哀想か。最後に大人の性癖(せかい)ってやつを教えて上げるわ」

 

全身に刻まれた傷もリボンのお陰で激しく動いても1分程度なら持つでしょう。だからこの1分で勝負を決める

 

王も私の戦意の高まりを感じてここからの攻防が最後の衝突(ラストインパクト)となるのを悟ったみたいで黙って構えるとそのまま距離を詰めて手刀を私の脳天に振り下ろしてきた

 

当然無防備に受ければ『堅』の防御の上でも顔面が潰れ、喉が裂けて胸から腹にかけてもいくつか内臓に指が掛かるでしょう

 

完璧なタイミングで受け流さないと大怪我じゃ済まない一撃も既に万を超える数を切り抜けてきた。王(コイツ)もそこから詰将棋のように私を最大効率で追い込める手順を頭の中で描いている

 

原作でネテロ会長の【百式観音】を完璧に見切った未来予知の如き戦略眼には届いていなくともそれをやってのけた地頭は此処にある

 

だからこそ、その王の攻撃を『赤裸々(ドレス・ブレイク)』で正面から迎撃した私に意外さと愚かさと警戒を混ぜ合わせた目を向ける

 

王は私の『赤裸々(ドレス・ブレイク)』が一瞬でとんでもなくオーラを消費する技だととっくに見抜いてる。弾かれた手刀の腕は痺れてるだろうけど私がこの場から動かずに腰を据えて迎え討つなら『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を解除する暇もない連撃で私のオーラを削りきれば勝ちだ

 

3割を超える顕在オーラを持つ私なら潜在オーラMAXの状態からでも3.3秒以内にオーラが枯渇する。ましてやこれまでの戦闘で消費した分を考えたら私が『赤裸々(ドレス・ブレイク)』を連続発動させられるのは精々あと2秒が限界でしょう。でもそれは今までと同じ『赤裸々(ドレス・ブレイク)』だったらの話。ここからは脱ぎ方を変えるよ!

 

「瞬っ間っ着脱!『赤裸々(ドレス・ブレイク)・部分脱衣(チラリズム)』!!」

 

『堅』と『赤裸々(ドレス・ブレイク)』の瞬時切り替えは今までも使用していたので重要なのは部分脱衣(チラリズム)の方

 

従来の『赤裸々(ドレス・ブレイク)』は攻防の瞬間一々『全裸』『纏』をフルパージしてたけどよくよく考えれば攻防の瞬間にその箇所だけ『纏』を解除すればオーラの消費を大幅に抑えられると思い至ったのよね

 

普通私が『赤裸々(ドレス・ブレイク)』なんて使ったら基本ワンパンだから本格的に使ったのも以前ネテロ会長と試合した時だけだったし、そもそもあの時も思い付きの初出し技だったからこんな単純な事に気付かなかった

 

必要箇所の攻防力を上げるから効果としては『凝』に近いけど別に他所のオーラを集中させてる訳ではないから全身の『堅』の防御力は維持されているのが強みね・・・弱み?オーラ消費を10分の1以下に抑えたところで全力戦闘で1分持たずにガス欠になる燃費の悪さね

 

それでも超が二十個くらい付くクソ燃費から超超超クソ燃費くらいには緩和されている

 

「全脱ぎなんてナンセンス!真っ裸よりも半脱ぎやチラ見せの方が需要があるなんてのはヲタク(この)界隈(かいわい)じゃ常識よ!」

 

『オ』じゃなくて『ヲ』ね。ライ『ブ』とライ『ヴ』の違いと同じくらいに重要(ささやか)な要素だから気を付けなさい

 

私の掌底が王の胸を穿(うが)って肋骨をへし折り、同時に王の貫手が私の腹膜を破って内臓に達する

 

王のモミアゲとも触覚とも取れる顔横の管(くだ)をそれぞれ掴んで手前に引いて半ばから折り千切り、その勢いで頭突きをかまして鼻の軟骨を根こそぎ陥没させ、王は私の頭がどいた瞬間にお返しとばかりに鼻を噛み千切ろうとしてきたのでさっき内臓を突かれて込み上げてきた血反吐を目潰しに回避する

 

でも頭を逸らした代償にそのまま右肩に噛み付かれて肉を抉られるけど急所の塊の顔面が固定されてるなら好都合

 

“ブチリ”と云う肉を噛み切る音と王の顔面を掴んだ私の右手の親指が王の片目を潰す“グチュリ”と云う音が同時に響く

 

「吐き出しなさい!私の肩ロース!!」

 

王が潰れた視界に慣れる前に死角に身体を押し込み私の肩肉を噛んでる口を肘鉄で頬骨ごとクラッシュする

 

口内に拡がった衝撃が王の歯をボロボロに罅(ひび)を入れて欠けさせるけど、コイツ今喉鳴らして私の肉を呑み込ーーー

 

「させるかーーあああーーー!!」

 

呑み込んだ私の肩肉が喉を完全に嚥下(えんげ)する前にアッパーカット気味の貫手を喉に放って喉を通行中の肉を無理矢理押し戻す!

 

ドムンッ!と重低音が響いて腹に膝蹴りを受けた私が血の混じった胃液を吐き出すけど代わりに王の喉を潰してやった。これで少しの間は文字通り虫の息程度の呼吸しか出来ないでしょう

 

私と王はお互いの存在を磨り潰すようにひたすらに攻め立てる。私も王の攻撃が届く瞬間に『赤裸々(ドレス・ブレイク)・部分脱衣(チラリズム)』で防御にも力を割けば怪我も少なく済んだでしょうけど首を切っても何日も死なないとされるキメラアントの生命力の高さを鑑(かんが)みればこの最後の攻防で防御に割いて良いオーラなんて無い

 

全身全霊を賭(と)してコイツの命を狩り(ハント)する!!

 

「どっちが先にくたばるか。蟻か人間(ヒト)か。王(アンタ)か女王(わたし)か―――格付けチェックのお時間よ。チェック項目は拳で示せってね!」

 

「論ずるまでも無い。余は既に世界の王であるが故に。だが愚かな貴様には頭よりも身体で分からせてやるとしよう」

 

統治者の資質?支配力に求心力に国防力に侵攻力に交渉力。全部一括して暴力でしょ!

 

暴力(ちから)で勝てない奴なんて結局家畜になるしかないのよ。皆口に出さないだけでね

 

慈悲も余裕も平和も小競り合いも『この世界』を席巻した人間(強者)の玉座(特権)。残念だけど残虐性がデフォのアンタ等に座らせるつもりは無いわ

 

メビウス湖に逃げた弱者(井の中の蛙)にだって譲れないもんが有んのよ。暗黒大陸(それ)すら知らずに世界の王とかイキってるガキに敗けてたまるか

 

どっかの第四王子の言ってた七つの大罪のもう一つの罪

 

無知の不知―――まさにコイツの事じゃない

 

「初めて意見が合ったわね。そうね。身体で分からせてあげないとね!!」

 

私が殴り王が蹴る

 

私が蹴り王が叩く

 

私が引っ掻き王が切り裂く

 

やっている事は単純な暴力の応酬だ。それにも関わらず突き抜けた衝撃が、拡がる衝撃が大地を割り岩盤を持ち上げ大木もへし折る突風を巻き起こす

 

数百メートル吹き飛ばす攻撃が当たってもそれに追い付いてビタ付きで攻防を繰り返すから私達の戦闘の軌跡が地上を抉る

 

コイツは此処で磨り潰す。どれだけ致命傷を与えようが四肢や内臓を欠損させようが質の良い念能力者(エサ)を食べるだけで完全回復しかねないのが蟻の王(コイツ)だ

 

下手したら私自身が回復薬になりかねないとなれば尚(なお)の事妥協(だきょう)は出来ない

 

殴る。蹴る。血を吐く

 

刺す。抉る。血を流す

 

私の赤い血と王(コイツ)の青い血が地面に落ち切る前に攻防の余波で霧散し、決して交わらないその様はキメラアントと人間の種としての在り方そのもののよう

 

「いい加減にくたばりなさいよ!しつこい男は嫌われるわよ!!」

 

「戯(たわ)け!矜持(きょうじ)も執着も持てぬ王など飾り物にも劣るわ」

 

王(コイツ)はもう片腕の肘(ひじ)から先が無いし片足は甲の部分を潰したし尻尾は尖端の針を噛み砕いて中間の辺りを半ば断ち切ってる

 

顔面は片目も鼻も潰れてそこから更に何発も何十発も打ち込んだ事でピカソみたいに顔のパーツがなんかズレてるし鼓膜も破って全身の骨も折るか罅を入れてる。潰した喉も今は穴が空いてるし内臓もボディブローの度に量の増える吐血からしてかなり大きく傷付いてる。てか破裂してるし腹の裂傷を押し拡げたのも一度や二度じやない

 

並の人間どころか念能力者でも大半はとっくにお陀仏なダメージだ・・・私?王(コイツ)の半分以下だけど、こちとらか弱い人間のか弱い乙女。総合的には互角でしょう

 

耐久値(HP)で勝る王(コイツ)と攻撃力で勝る私

 

さっきの自爆は今の怪我だらけの状態で使用すれば膨張を無理に抑え込めば不自然に血が噴き出すから避けるのは難しくない―――となればやっぱり削り合いだ

 

私達の削り合いは周辺一体の地表の削り合いと同義。既に東京ドーム換算で幾つ分の土地が灰燼(かいじん)に帰したか判らない

 

今、この戦場に足を踏み入れられる存在などネテロ会長やリース(と何故か私の攻撃を耐えれる離脱(ワープ)持ちの変態(カストロ))が脱落した今となってはもう居ない

 

「―――そう思っていたんだけどね」

 

全身血塗れになりながらも自然と口元に笑みが浮かぶ

 

他事に気を回す余裕なんて1ミリも無い激闘の最中、私が捉えた気配は私や多分王の『円』の探査範囲の遥か上空。それでも私が間違えるはずなんてない

 

私は王の片手を掴んで尻尾を踏み付けるとゼロ距離で殴り掛かる。お互いに逃げられない気合と根性の殴り合い―――ワンハンドシェイクデスマッチだ

 

「愚かな。自ら死に急いだな」

 

お互いの生命力(いのち)が今まで以上にゴリゴリ削れてただでさえ短い決着までの猶予が更に削れる

 

さっきは王の肋骨を砕いたけど今度は私の肋骨が折れて内臓に突き刺さる

 

王の顔面に幾度となく打ち込んだ拳の衝撃が崩れ掛けた頭蓋骨を突き抜け王の脳を直接傷付ける。生物としてより深刻なダメージを与えているのは私だ

 

それでも尚(なお)。それでも尚(なお)だ。王の強靭過ぎる生命力が壁となって立ち塞がる。自分でも死にかけの身体で振るう腕がプルプル震えて威力が落ちて来ているのが判る

 

人間(わたし)に無い尻尾と云う武器を封じる為に使用した脚1本分の不安定さが互角でやり合っていた私達の天秤を僅かに王へと傾けたのだ

 

「最後に耐えきれず逸るとは―――大局を見据えれぬ者に王たる器はない」

 

「はっ!国も臣下も民も居ない、未だ自分の手で何一つ成してない裸の王様が生意気(ナマ)言ってんじゃないわよ!」

 

私なんてなんちゃって女王だけど、それでも『王』が『個』の力だけで存在を完結させてるのは間違ってるって分かるわよ

 

相手は産まれて約10分?知るか!親元離れて自立してるなら責任も相応よ

 

「登り詰める(頂く)のが王じゃないわ。信任を得る(戴く)のが王なのよ!」

 

何が言いたいって?―――解任決議のお時間よ!

 

「それが弱者の繰(く)り言(ごと)だと言うのだ!」

 

王が元々半分千切れてた尻尾を無理やり完全に自切して脇腹に内臓を揺さぶる一撃を放ってきた

 

衝撃で内臓が反対側の脇腹に纏めて押し付けられ、鳩尾を殴られる臓腑が捻れるような苦痛を何倍にもしたような感覚が奔る

 

血反吐以外に胃液もシェイクされたソレが込み上げて来るのを無理矢理飲み込んで前に出る。拳を振り上げるのも億劫?なら私の奥の手をここで切るまで

 

残りのオーラをここで吐き出す!

 

「『赤裸々(ドレス・ブレイク)・全装脱衣(フルパージ)』!!」

 

やっている事は従来の『赤裸々(ドレス・ブレイク)』だけど『部分脱衣(チラリズム)』に名付けたからにはこっちにも専用の呼び名が必要でしょう

 

全身からオーラを留める事なく垂れ流し、そしてそのまま前に脚を踏み出す

 

私にとって最強の攻撃とは何か?

 

パンチ?キック?噛みつき?頭突き?いいや違う。答えは『たいあたり』だ。それもクロスした腕や肩やなんなら脳天みたいな頑丈な部位をぶつけるテクニカルなものじゃなくてもっと下手くそな、ただ体全体でぶつかるような『たいあたり』だ

 

『練』未満の『赤裸々(ドレス・ブレイク)』に体術未満の『たいあたり』を掛け合わせるただの前進

 

力(パワー)を求め続けて副次的に体術やオーラ操作技術なんかのテクニックを会得し、結局辿り着いた答えはテクニックが介在する余地の無い『たいあたり(パワーアタック)』

 

やはりパワー。パワーは全てを凌駕する!

 

ズドン!ともバギョン!とも取れないような山の先まで低く響く衝突音と共に王の全身にオーラの塊(わたし)がぶつかる

 

必然、王も全身を『堅』くしなければならないから相対的に防御力も下がり全身の骨が砕ける音がした。しかし今ので私のオーラも底を突き、遠のきそうになる意識を片膝を突きながらも必死に押し留める

 

「膝を突いたな。決着の時、相手を見下すのは勝者(王)の特権だ。貴様があの程度で余を倒せるなどと思いあがったその瞬間に―――」

 

「ええ、キメラアント(アンタ)相手に思ってないから私『達』の勝ちなのよ」

 

私と視線を絡(から)めた王は直後に真上に顔を向ける。空気を引き裂いて歪んだ大気を背景に置き去りにしながら飛んできたのはレツだ

 

「どんなに死闘を演じてようが、あの子の気配を間違える私じゃないのよ」

 

落下してくるレツは王に存在がバレたから『隠』していたオーラを解放する

 

「『人形受胎(ドールキャッチャー)・二人羽織(ににんばおり)・十二単衣(じゅうにひとえ)』!!」

 

レツの『人形受胎(ドールキャッチャー)』は合体した人形の能力を、二人羽織はそれに加えてオーラをレツに上乗せする。そして元々『人形受胎(ドールキャッチャー)』は複数の人形を取り込む事が可能だ

 

本来なら必要に応じてその都度人形(のうりょく)を切り換えるものだけど、今のレツはピー助以外にも保有しているマチとかシズクとかビスケとかのオーラを上乗せしている超強化状態

 

最後に頼るのは圧倒的なオーラ量と己の肉体のみ!―――やはりオーラ。オーラは全てを解決する

 

竜の力を纏って放つ一直線のキック。竜と龍の違いは有れどあの技を私は知っている

 

「行っけぇえええ!レツーーウウウーー!!ドラゴンライダーキックゥウウウーーウウウ!!!」

 

声を張り上げるだけでも意識がまた飛びかけたけど、妹の出番(ハイライト)に声援を送らずにいられるか

 

王もさっきの私の『たいあたり』で回避する余力も残ってないようで咄嗟に腕をクロスして防御の体勢を取ったが、オーラもまともに廻せない防御などレツの一撃は紙のように喰い破り、王の左肩から先と右手に心臓を含めた胴体の左半身を抉り取った

 

例えキメラアントでも通常の医療では死亡確定の致命傷だ

 

原作では護衛軍が己を細分化させて細胞に直接自分を食べさせる事で致命傷の王の回復を図ってたけど、胃袋も一緒に吹き飛んでる今の王が喰えるモノは無い

 

「それでも油断出来ないからトドメは刺さないとなんだけど・・・レツ、動ける?」

 

「ごめんビアー・・・ちょっと無理そう・・・あとドラゴンライダーキックってなに?そこはかとなくダサいんだけど」

 

レツはライダーキックの勢いで地面を跳ね回ってからお尻を突き出したちょっとはしたない姿で突っ伏してそのまま動けてない。私のようなオーラの枯渇じゃなくて自分の限界を超えたオーラによる反動ね。ピー助の憑依だけでもかなり負担が大きいんだから当然か

 

「ドラゴンライダーキックはキルアのお父さんとお爺さんの合体必殺技よ。以前戦った時に(ゼノが)叫んでた」

 

「・・・訊いといてアレだけど知りたくなかったかも」

 

まぁ技名にドラゴンって付くとそこはかとなくダサいわよね。カッコよさを狙い過ぎてる感じがするからかしら?

 

「クククククッ!余に・・・これ程の辛酸を・・・舐めさせるか」

 

掠(かす)れた声に顔を向けると膝どころか背中を大地に着けて思い通りにならない世界をただ見上げるしか無くなった王が未だ燃える瞳で私達を睨(にら)む

 

「認めよう。貴様ら人間はエサでは無く余の敵足りうると。故(ゆえ)に余もここで命を懸けて貴様らを討ち、泥を啜(すす)ってでも生き延び、勤勉かつ周到に貴様らを皆殺しにしてくれる」

 

王の瞳の奥に見えるのは純粋な殺意

 

グルメアントなんて呼ばれる種族の王が最早私達を食料と見なしておらず、その殺意を現すかのように王の肉体がどんどんと肥大化していく

 

間違いなく『じばく』の兆候だ

 

今の空っ欠の王が爆発してもそこまでの威力にはならないでしょうけど、肉体がデカくなるって事は王との距離が縮まると云う事。流石に目の前で爆発されたら今の私達に成す術(すべ)は無い

 

「全くこれも運命なのかしらね?」

 

「そうだ。余が産まれた時点で貴様らの命運は決まっていたのだ」

 

「そこまで言うならこれから起こる運命も受け入れなさいな。どっかの『薔薇(バラ)』程派手じゃないけど、姉(ポンズ)の大事なお手製なんだから」

 

王の視線の反対側から放物線を描いて飛んできたソレは神字入り手榴弾に『周』で更に効果を倍増させた特製品。私の姉は狩れる時にはサクッと狩るハンターなんだから

 

きっと威力は原作のゴンの覚えたてのジャジャン拳と大して変わらない。それでもHPが1しか残ってないような状態の王の顔面で弾けたらどうなるか?さぁさ皆さんご唱和下さい

 

 

 

 

「―――爆発オチなんてサイテ〜」

 

・・・名も無きキメラアントの王が最後に聴いたのは爆音だったのか、はたまたこの定例文だったのか?答えは知らない方が良いでしょうね

 

 

 

「―――『そこは汚ねぇ花火だ』じゃないのかしら?」

 

「あれは打ち上げ花火限定じゃない?」

 

「二人とも色々酷すぎない?それはそうとビアーはすぐに(マチ人形で)念糸縫合(ちりょう)するよ」

 

レツは肉体への反動で動けないがオーラが枯渇した訳じゃないから『十二単衣』なんて無茶な技を使っても最低限の戦力(幻影旅団級)は保険として確保出来るからね。さっすが我等がチーム最高のチート能力

 

「ええ、お願いね。流石に私も今回は限界だから暫(しばら)く寝るわ」

 

あちこちボロボロだけど逆に感覚麻痺してるから今なら寝付けそう。変に感覚戻ったら寝たくても眠れないだろうからもう目ぇ閉じるわね。お休み〜

 

 

▽

 

ビアーは気絶と云う名の睡眠を取ってノヴの能力で安全圏に回収され、念糸縫合と魔法美容師(マジカルエステ)のダブル回復術を受けた後に直通でハンター協会近くの国立病院にぶち込まれた

 

ネテロやカストロにレツ、ついでに全身黒焦げとなったクラピカも同じ扱いで入院し、リースもレツが直すまでマスコットフォーム。レオリオと怪我こそ少なくとも疲労の色が濃いモラウは護衛を兼ねた休息。残るゴン、キルア、カイト、ポンズ、ノヴでキメラアントの巣、及びその周辺の捜索と云う流れとなった

 

「よし。東ゴルトーは突然の停電で戸惑ってるとは云え、何時軍の連中がやって来るか分からん。手早く済ますぞ」

 

「ねぇカイト。なんで東ゴルトーが停電って分かるの?」

 

「・・・キルアが無駄遣いしたからだな」

 

「オレかよ!そもそも使ったのはオレでも盗ってきたのノヴ(コイツ)じゃん!」

 

「フッ。今は消費者の話ですよ」

 

「はいはい。国賊の犯人捜しは後日やりなさい。私達の今の仕事は蟻の生態日記よ。逃げた痕跡(こんせき)含めて何も居ませんでしたって記録出来れば花丸ね」

 

なお問題無し(はなまる)でなかった場合はハンター協会を上げての残党狩り(ざんぎょう)である

 

「まっ、大丈夫じゃねぇの?そもそもオレ達が戦ったあの護衛軍が残らず吸収してるっぽかったし、巣自体はレツの炎で瞬間的に丸焼けになったんだ。戦力にならねぇ雑務兵が多少居たところで逃げられねぇよ」

 

「概(おおむ)ね同意見だが裏付けにおいて決めつけは雑念となり万が一の情報を見落とす切っ掛けとなる。先入観は捨てておくんだな」

 

キルアがカイトの忠告に「へいへい」と生返事をする

 

「私もアリスタを司令塔に痺れ槍蜂(あの子達)で不審な生き物が居ないか見廻らせているわ。もっとも一番優先度が低い王とビアー達が争ってた辺りを中心にだけどね」

 

「ふむ。三叉槍大蜂(トライデント・ビー)を手懐ければそれくらいの事は出来るんですね。それとも緑色の個体(色ちがい)が特別知能が高いのか」

 

緩(ゆる)い会話を続けながらも高位のプロハンター5人による文字通り蟻の足跡一つ見逃さない警戒網で焼け落ちた巣に辿り着くとゴン達はその場所を中心として周辺の調査を行ったが、蟻の残骸以上のモノは終ぞ見つからなかったようだ

 

 

▽

 

キメラアントの王とビアーやネテロと云う人知を超越した者達がぶつかり合った戦場は破壊し尽くされた大地の何倍もの範囲で蟲の声一つとて聞こえない空間が拡がっていた

 

周囲の獣や鳥、蟲達は天変地異もかくやと云う破壊の暴挙から少しでも遠ざかる為に我先にと逃げ出したからだ。仮に逃げ遅れた個体が居たならばそれはビアー達の戦意と殺意に溢れたオーラの余波だけで絶命している

 

王が産まれた後に巣から逃げ出すキメラアントが居たところでこの戦場を突っ切るような愚かな真似はしない

 

そんな何も居ないはずの空間に敢(あ)えて向かった者の荒い息遣いが更地となった荒野に響いていた

 

「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!・・・王!王!王!王!!なんとお労しい御姿に―――私は・・・私はァ゙アアアアア!!!」

 

ゴン達と戦っていた護衛軍の一匹が蜂程の体躯で四つん這(ば)いで地面を這(は)っていたのだ

 

背中に生えた羽根は片方は折れ、片方は千切れて飛ぶ事など叶わない有り様であった

 

彼は数多(あまた)の兵隊蟻を無理矢理取り込み肥大化した身体と能力で戦っていたがキルアが強力な電力のバックアップを受けてからは正に防戦一方。ダメージが限界を超えてからは次々と身体全体が崩れに崩れていき、最後にはごった煮のキメラスープを床にぶち撒(ま)けたかのようにして敗北したのだ

 

だがその残った肉塊の傘とオーラを最後の一滴まで絞り尽くした事による強制『絶』。気絶して意識が絶たれ文字通り虫けらとなった存在感が彼を生かしたのだ。言わば偶然に偶然を重ねた死んだフリであった

 

目覚めた彼は一先ず周囲の元自分の死肉を喰らってほんの僅かばかり体力を回復すると王を捜して行動を開始した。元の姿は当然ながら小さな身体の小さな羽根一つ満足に回復は出来なかったが些細な事である

 

そうしてやっと見つけた王は胴体の左半身と首から上の4割が弾け、その他様々な一目で分かる重傷を負った事切(ことき)れた姿であったのだ

 

だがそんな現実を直視出来ない彼は全力で妄想で自己の心を繋ぎ止める

 

「いや!王が死ぬはずが無い!あってたまるものか!!王の身体(パーツ)が足りないなら私が持ってくれば良い。私の能力ならそれが出来る!私の残りの身体を千切ってでも王の心臓を繋ぎ合わせ、私の頭を脳として王の身体を動かし念能力者(レアモノ)を狩り、お食事をして頂ければ何時しか必ずや!!」

 

王は死んでいる。彼の能力で無理矢理身体を動かせたところで死体は死体だ。腐り朽ちる事は有っても復活する事はない

 

仮に操れたとて王の肉体で有る事を考慮しても念を使えない兵隊長蟻程度の能力が限界だ

 

「王は絶対にして唯一無二。王の運命力を計算に入れれば死など所詮些末事。ただ少し深く眠っておられるだけなのだ!」

 

地面を這って僅かな距離を必死に縮めた彼は漸(ようや)く忠誠を捧げし王の肢体(したい)に手が届かんとしたが、そこへ大きな羽音と共に巨大な針を三つも携えたアリスタが舞い降りた

 

ポンズとしては軽い警戒とパトロールを兼ねたアリスタの派遣であり、巣の周辺調査も一番最後にはポンズ達自身が戦場跡を調べるだろう。だがその僅かな間に王の死体がこの場から消えると云うミステリーが起きようとしていたのは完全に想定外であった

 

アリスタの巨大な複眼のレンズに原作でシャウアプフと呼ばれた護衛軍の虫けらのような姿が映り込む。己の惨めな姿をアリスタの瞳の中に視た彼の沸点は一瞬で臨界点を迎える。ただでさえ王の死を前に精神を有りもしない妄想で繋ぎ止めていた彼に心の余裕など蟻ん子1匹分だって有りはしないのだ

 

「ワ、ワ、ワ、ワ、ワタシを見下すな!ただ大きいだけの下賤な虫けらがァアアアーーーアアアーーアア、ガボッ!!?」

 

小さいながらも明確な怒りと殺気を向けてしまったが故に突き出されたアリスタの巨大過ぎる針に顔面から股先(またさき)まで貫かれた彼は一切の抵抗を許されずに爆散し、今度こそ消滅した

 

仮にアリスタと遭遇せずに王の死体を操ってこの場から離れる事が出来ていたとしても近場の東ゴルトーの村や町を1つか2つ喰い散らかした辺りで異変に気付いたゴン達に処理されていただろう

 

どちらだったとしても大勢には変わりはない。だがさざ波の一つすらも世界に刻めない彼は正しくただの虫けらだったようだ

 

アリスタは数十、数百の人間の命を救った事など露知(つゆし)らず、『問題無し』として再びパトロールに舞い戻って行ったのであった




過程はともあれピトーはポンズのキングホワイトオオクワガタに陥落し、プフはポンズのペットのアリスタが刺し殺し、ユピー吸収王の頭を爆弾で吹き飛ばすと云う王と護衛軍を全滅させたポンズさんなんて凄まじい結果となりましたね。流石は幻蟲ハンターww
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