戦場のヴァルキュリアのSS   作:鈴木颯手

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"帝国の悪魔とヴァルキュリア"の続きです


帝国の悪魔とヴァルキュリア2・ジークヴァル会戦

 銃声響き渡る戦場にて、ルートヴィヒは愛用する戦車に乗り駆け抜けていた。「勝利の壁(ジークヴァル・ライン)」を突破しようと群がってくる連邦の兵士達を次々と引き殺していくその姿は帝国にとっては心強く、連邦には悪魔の如く写ったであろう。

 

「っ! 右30度、敵戦車!」

「はっ!」

 

 ルートヴィヒは連邦の戦車、通称「ミニット」と呼ばれるそれを見つけると直ぐ様砲主に伝える。ルートヴィヒが計画から建造、試運転に至るまで口を出し、予算を惜しまずに投入して作られたこの戦車「トイフェル」はその(悪魔)に恥じぬ性能を誇っていた。

 軽やかな動きで砲塔が回り、敵戦車に標準がつけられ、放たれた。ルートヴィヒが先に見つけ、戦車の性能などから連邦戦車は逃げる行動すら起こせずに砲弾が直撃し大爆発を起こした。内側から弾けるように爆発した戦車は誰もが乗員は生きてはいないと思わせる様相だった。

 

「なんだ、連邦は弱いな。このままだとこの周囲から連邦はいなくなるぞ」

「殿下、あまり敵を侮らない方がよろしいのではないですか?」

「それもそうだか……、っと」

 

 そんな話をしているとトイフェルの後方に砲弾が直撃した。「勝利の壁(ジークヴァル・ライン)」と平行に走行していた為後方への砲撃が可能だったのだろう。

 ルートヴィヒはすぐに後方を確認する。トイフェルの後を追うように三両の連邦戦車が向かってきていた。それを確認したルートヴィヒは次に戦車の損傷を確認するが小さな凹み以外に損傷は見受けられなかった。ふんだんな予算と帝国中の技術を集約して作られたトイフェルは帝国が新たに開発した主力戦車「ケーファー」の至近距離からの砲撃すら耐え抜く装甲を持っていた。

 たかが三両の連邦戦車に負けるトイフェルではなくルートヴィヒは直ぐに反撃に転じた。

 

「後方三両の連邦戦車を叩く。90度回転!」

「っ! 了解!」

 

 

 ルートヴィヒの指示に従い車体が滑るように回転する。車輪がイカれてしまう様な動きに対してもトイフェルはなんの問題もなく耐えきり正面を向かってくる連邦戦車に向けた。

 

「まずは左の戦車だ! 撃てぇっ!」

 

 トイフェルの砲撃が放たれる。全身を震わせるような重い砲撃は連邦戦車の中央に直撃し、車体を貫通して地面へと落ちる。中の乗員全ての命を砲弾で抉りとった事にルートヴィヒは感じる興奮と高揚感を抑え次の標的を定める。しかし、その前に連邦戦車の砲撃が行われ片方が地面に、片方が正面装甲に当たった。ゴンッ!という鈍い音の後に爆発音が響くがそれでもトイフェルの装甲は健在だった。

 その事にルートヴィヒは笑みを浮かべる。そして、反撃とばかりに砲撃を放ち中央にいた連邦戦車の左のキャタピラーを破壊し尽くして身動きを封じる。「勝利の壁(ジークヴァル・ライン)」近くで動けなくなったその戦車は濃厚な壁からの砲撃で完全に破壊されるだろう。

 

「はっはっはっ! その程度の戦車で倒せるわけがないだろうが!」

 

 ルートヴィヒの叫びと共に最後の一両に砲撃が放たれた。砲塔付近に当たった為中の砲弾が誘爆して一番派手な爆発を起こした。連邦戦車を難なく撃破したルートヴィヒは満足げに笑みを浮かべたがそんな彼に通信主からの報告が入った。

 

「殿下! 勝利の壁(ジークヴァル・ライン)の一部を突破されました! 現在は持ちこたえていますがこのままでは挟み撃ちにされる部隊が出てきます!」

「なんだと!? よし、我らも向かうぞ! 俺の部隊を召集しろ!」

「はっ!」

 

 ルートヴィヒの戦果すら霞むように帝国防衛の要、「勝利の壁(ジークヴァル・ライン)」で行われている「ジークヴァル会戦」は連邦の優勢で進み始めているのだった。

 しかし、そんな状況でもルートヴィヒの動きは帝国に勇気と活力を与え、補給線が延びきり物資が心もとない連邦に少しずつ打撃を与えていくことになる。

 

 そして、

 

「やつらか……。あいつらを殺せ!」

「っ! 帝国の新手だ! E小隊、迎撃開始!」

 

 後に「帝国の悪魔」と呼ばれ、国内外から恐れられるようになるルートヴィヒと、シュヴァルツグラードでの一件から「決断出来なかった男」と呼ばれる事になるE小隊隊長クロード・ウォレスはジークヴァル会戦にて最初の邂逅を果たすことになる。

 




トイフェル
全長8.8m 全幅4.2m
全高3.6m 重量58t
速度50km/h 出力1100hp/2400rpm
武装:カイゼル Z-005 78口径91mm砲
   ウラヌス 9mm戦車機銃
帝国の皇子ルートヴィヒ専用の戦車。最大で五人乗り。本編にもある通りルートヴィヒが潤沢な予算と帝国中の技術を集約した上であれこれ口出しして完成した戦車。この後に完済した帝国主力戦車「ケーファー」に性能で圧倒的に勝っている(なんならその後に登場する決戦戦車より強い)。更にルートヴィヒが優秀な戦車乗りを集めた為乗員の技術面も問題なくしている。連邦戦車の砲撃すら効かない装甲を持っているにも関わらず速度や出力は高い。
最大の弱点と言えるラジエーターにも装甲を加えるなどの改良も施している。
簡単に言うと「主力戦車より強くてヴルガン(4に登場した特殊戦車)より弱い戦車」

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