戦場のヴァルキュリアのSS   作:鈴木颯手

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今回はジークヴァル会戦から遡ってガリア公国での話です。1はアニメ版を参考にしてます


帝国の悪魔とヴァルキュリア3・帝国の悪魔、ガリア公国へ

「全く……。何故俺がこんなことを……」

 

 帝国の皇子であるルートヴィヒは礼装に身を包みながらそう愚痴る。しかし、周囲を気にしてかその声は低く、近くにいても聞き取れないほどだった。普段なら嫌なことははっきりと言ってしまう彼だが借りてきた猫のように大人しかった。

 彼がここまで大人しい理由は周囲を見れば明らかだった。帝国の皇子が歩く姿を物珍しげに眺める貴族と思わしき人々。彼が入ろうとしている城の頂上にはガリア公国の国旗が掲げられていた。

 彼が現在いるのは帝国でも連邦でもなくガリア公国だ。そこで行われるコーデリア姫主催の晩餐会に招待されたのだ。しかし、帝国はガリア公国と戦争中であり少し前にはバリアス砂漠にて盛大にやりあっていた。

 それにも関わらず、ルートヴィヒが参加しているわけはガリア公国のボルグ宰相のたっての頼みと言う事で渋々参加することになったのだ。ルートヴィヒは宰相の狙いが分かっていたため憂鬱な気持ちになっていたのである。

 

「何故敵国のご機嫌取りの為に参加しなければいけないんだ。……いっそのこと帰るか」

「それを行った場合、殿下は罰せられるかと」

「……帰るの危険」

 

 城に入っただけで帰ろうとするルートヴィヒを付き添いで来た双子が止める。何処か凛々しさを与えていた軍服ではなく可愛らしいドレスを着た二人を見てルートヴィヒが運用するヴァルキュリアの末裔だとは誰も信じないだろう。

 双子は踵を返そうとするルートヴィヒに抱きつくことで無理矢理前進させる。はた目には両サイドから麗しい双子の少女に抱きつかれながら歩いているという状態であり老人と呼べる年代の人は微笑ましく、年が近いもの達(特に男)は嫉妬の視線を浴びせていた。

 ルートヴィヒは帰ることを諦めたが無理矢理作った笑顔の裏では憂鬱な気持ちを燻らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、ウェルキン。あの人たちって……」

「あれは帝国の人かな?」

「性格には帝国の皇子だな。連邦方面で暴れていると聞いたがまさかここで出会うことになるとはな」

 

 そんな三人を遠くから眺める五人組がいた。今回の晩餐会で表彰される事が決まっているガリア公国義勇軍の第一小隊の隊長ファルディオ・ランツァートと第七小隊のウェルキン・ギュンター。その付き添いのラマール・ヴァルト、アリシア・メルキオット、イサラ・ギュンターである。彼らは礼装のルートヴィヒを見て帝国の人かと予想していた。その答えはファルディオが持っていた。

 

「確か連邦の猛攻の前に敗退する帝国軍の中で唯一と言って良いほど勝ち続けているらしい」

「そんなにすごい人なのか?」

「ウェルキン……」

 

 ウェルキンらしい言葉にアリシアは呆れるがファルディオは真剣な表情で続ける。

 

「この前バリアス遺跡で遭遇したマクシミリアンの兄である皇太子に気に入られている人物だ。普通なら警戒される彼の功績も手放しで称賛される程らしい」

「それが一体何の意味があるんだい?」

「マクシミリアンがここに彼がいるって分かったら全軍を用いてランドグリーズごと殺そうとするくらいには仲が悪いって事さ。何事も起こらないといいが……」

「……そうだね」

 

 ファルディオの言葉にウェルキンは呟いてルートヴィヒの方を見た。連邦の大使の挨拶に顔をひきつらせながら乾杯する彼とワインをちょびちょびと飲む顔の似た二人の少女。帝国との戦いが長引けばいずれ戦場で遭遇する可能性もあるだろう。ウェルキン達はそうならないことを祈りつつ表彰を受けるべくコーデリア姫がいる玉座へと歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わった……。漸く終わった……」

「お疲れ様です。殿下」

「おつかれ」

 

 ルートヴィヒはげんなりしたようすでランドグリーズ城を出る。そんな彼を双子は慰める。晩餐会では寄り添ってくる宰相や嫌みをチクチク飛ばしてくる連邦の大使との会話をそつなくこなしていったルートヴィヒはもう二度と参加したくないという気持ちを心に刻み込んだ。

 

「それにしても、マクシミリアンの玩具もいたとはな」

「確かに、私も驚きました」

「……びっくり」

 

 晩餐会の途中で見つけたセルベリアという女性。彼女は双子と同じヴァルキュリアの末裔であるが最も成功した存在だったが研究所からの逃亡中にマクシミリアンに拾われ彼のもとで軍人をしていた。

 

「全く、あいつの顔を見たか? 俺には射殺さんばかりの視線を向けてきたのにお前らには複雑な視線を向けてたぞ」

「……逃げ出した彼女が今更」

「……あいつ、嫌い」

 

 双子が眉を潜めながらそう言った。セルベリアが脱走し、マクシミリアンの元に向かった影響でその後の研究所ではセルベリア並のヴァルキュリアを産み出そうとより苛烈になった。それを受けていた双子は原因となったセルベリアを恨んでいたのだ。

 それでも今のところは味方のため襲ったりすることはなかったが徹底的に避けたり無視したりしていた。セルベリアも自分が去ったあとの事は聞いていた為双子の気持ちも分からなくはないため声をかける事が出来なかった。

 

「まあ、途中でいなくなったから俺としては良かったがな。それよりも、さっさと帰るぞ。そろそろトイフェルの開発が最終段階に入るからな。俺の戦車だ、開発の様子を見ておきたいからな」

「そのときは私も同行します」

「私も」

「勿論だ。二人は俺の大事な玩具だ。絶対に手放さないし壊れても修復してボロボロになるまで使い倒してやるよ」

「はい。私たちも期待に応えられるように頑張ります」

「私も」

 

 双子の言葉にルートヴィヒは口角を上げて笑みを浮かべるとランドグリーズを離れていくのだった。

 




書きはじめて知ったけどコーデリア姫の誘拐未遂が7月でジークヴァル会戦が10月だった。危なくジークヴァル会戦後の話として書くところでした。7月って4だとクロードとラズの夜間哨戒前の時期なんですよね。そしてジークヴァル会戦後辺りで帝国のガリア公国からの撤退。こういう時系列をまとめているサイトが欲しい……
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