1939年。我が国の西に位置するゲルマニア帝国はついにその牙を欧州全土に向けた。その最初の標的に選ばれたのは我が国とゲルマニアに挟まれた中小国、リヴォニアだった。リヴォニアはゲルマニアの宣戦布告と同時に長年関係を密接にしていたブリタニアとテルミドールに援軍を要請した。
両国はゲルマニアの野望を阻止するべく宣戦布告し、リヴォニアへと軍を派遣するも一歩間に合わずに陥落。ゲルマには東の安全を確保すると翌年にはテルミドールへと侵攻を開始した。ゲルマニアによる戦車と航空戦力を併用した電撃戦は拮抗すると予測されていたテルミドールを完膚なきまでに叩き潰し、その領土を奪い取ってしまっていた。
現状、欧州において我が国以外にゲルマニアと対等に戦える国は存在しない。そして、同盟国であるロムルス連邦との間に位置し、円滑な補給を阻害してしまっている小国、エイルシュタット公国にその牙をむけようとしていた。
欧州の情勢は激しく動いている。我が国も何時までも立場を不明瞭にしているわけにはいかないだろう。故に我らは決めなければならない。
ゲルマニアと結び、欧州の二大覇者として君臨するか、ゲルマニアを下し、欧州へと進出するか、を。
「エイルシュタットは余程焦っていると見える。我が国にまで支援を求めるくらいだからな」
「ゲルマニアとの国力差を考えれば仕方ないの無い事でしょう。エイルシュタット等ゲルマニアの前ではひとたまりもありますまい」
リヴォニアの東、欧州のはずれに位置する東ヨーロッパ帝国連合、その帝都であるシュヴァルツグラードの王城にてこの国の最高権力者たちが一堂に会していた。この国の頂点に君臨する皇帝とその一族を筆頭に元帥や将軍等の武官に宰相等の文官等が勢ぞろいしている様子に護衛の兵士たちは緊張で喉を鳴らす。仮にこの場の全員が死ねば帝国は機能不全に陥り滅びてしまうだろう程には権力を持つ者達が集まっているのだ。
「エイルシュタットは支援の見返りとして何を提示してきているのだ?」
「はっ! 大使の話では国内への企業の誘致や関税などの調整を、と申しております」
「話にならないですね。エイルシュタットを支援して得られる利益が少なすぎます。父上、私としては予定通りにテュルクへの侵攻を行うべきと提案します」
エイルシュタットへの支援をするべきではないと声を上げたのは皇太子であった。次期皇帝である彼の発言はこの場の中で2番目に高い。彼の提案を断れるのは皇帝くらいだがそれに待ったをかけた人物がいた。
「兄上、俺はエイルシュタットを支援するべきだと思いますよ」
「ほう? ルートヴィヒ、お前が発言するとは珍しいな」
皇太子は何処か嬉しそうに声を上げた人物、ルートヴィヒを見る。彼はあくどい笑みを浮かべて理由を話した。
「単純な話ですよ。エイルシュタットに支援をして向こうに多額の恩を売るのですよ。そうすればゲルマニアとの”戦いの後の戦い”で橋頭堡が出来るはずです」
「ルートヴィヒ。無駄に話すのは止せ。フィーネ公女が目当てなのだろう?」
「ああ、兄上は分かりますか」
「あれだけ熱烈なアプローチをしていればな」
エイルシュタット公国のオルトフィーネ公女は欧州一の美女と呼ぶに相応しい程の美貌を持っているだけではなく、国の上に立つ者として相応しい胆力と頭脳を有していた。それ故にルートヴィヒは幼少の頃よりフィーネに熱烈なアプローチを繰り返しており、その中には帝国による多大な支援も含まれていたが色よい返事をもらう事は出来ていなかった。
ルートヴィヒはこの状況こそフィーネを手に入れる絶好のチャンスと踏んでいたのだ。
「まぁ、そんなわけで完全な私情になりますが許可してくれるなら支援は私の懐のみで行いますよ」
「ふ、その様子だと言っても聞かなさそうだな。父上、提案しておいてなんですが、可愛い弟の為にエイルシュタットの要請を受け入れるべきと考えます」
「そうだな。余としても息子の願いを聞いてやらない程薄情ではない。ルートヴィヒよ」
「はっ!」
「後ほど帳簿を作らせる。その範囲内での支援を許可しよう。ただし、我が帝国に利あるものにせよ。それが条件である」
「お任せください。例え婚約が出来なくともエイルシュタットが返せない程の恩を売りつけてきましょう」
「お主には期待しておる。それと並行し、テュルクへの侵攻準備を進めよ。一部作戦を変更する必要はあるが問題は無いだろう」
「了解しました」
こうして、ルートヴィヒの言葉によりエイルシュタットへの支援は決定された。しかし、これによりエイルシュタットはゲルマニアに侵攻される以上の地獄に叩き落とされる事となるがそのことに本当の意味で気づく者はまだ誰もいないのであった。
世界観について
紀元前にヴァルキュリアが欧州全土を支配していたがやがて滅亡。色んな国が出来る。その際に生き残りのヴァルキュリアの一部が魔女(終末のイゼッタに出てくる一族)となって隠れ住んでいた。
東ヨーロッパ帝国連合はロシアと同様の歴史を歩むがロシア領では独自のエネルギーであるラグナイトが大量に産出され、帝国はそれらを用いて独自の文化と技術を生み出していった。第一次世界大戦ではロシア革命のような反乱が発生せずに順調に戦勝国となった結果ゲルマニア帝国大頭後も警戒される国家となった。
ヴァルキュリアは最早伝説上の存在とされているが東ヨーロッパ帝国連合や海の向こうのアトランタ合衆国(終末のイゼッタの登場国家)では研究が続けられ、帝国ではヴァルキュリア人の力を持った者達を育成することに成功しており、それを兵器として運用している。
軽い国家説明
東ヨーロッパ帝国連合
通称”帝国”。基本は同じ。立ち位置としては史実のソ連並に警戒されている。
エイルシュタット公国
終末のイゼッタの主な舞台。リヒテンシュタイン公国にオーストリア西部を足した領土となっている。フィーネ可愛い。近衛兵可愛い。
ゲルマニア帝国
通称”ゲール”。まんまナチスドイツ。作中の様子だとナチスドイツよりも軍部はぎすぎすしてない?
ブリタニア王国
史実のイギリスと同じ。ほぼほぼ空気。
テルミドール共和国
ゲルマニアと拮抗すると言われていたのにあっさり負けた国。史実のフランスと同じ。空気。
ロムルス連邦
ゲルマニア帝国の同盟国。史実イタリア。エイルシュタットへの侵攻はロムルス連邦との補給を円滑にするため。なのにアニメだと一切出てこない国。多分エイルシュタットをゲルマニア帝国と南北から挟み込めば勝てたんじゃないかな?知らんけど。
リヴォニア
史実のポーランド。この世界でも無事に第二次世界大戦のきっかけとなったよ。ちなみに東ヨーロッパ帝国連合の為に史実のポーランド東部は持っていかれました。
テュルク
この作品のオリジナル国家。史実のトルコと同じだが唯一の違いとして第一次世界大戦時にトルコの北東部に帝国の傀儡国家が建国されたこと。黒海を自国の領域とするためにボスボラス海峡を狙っており、そのために帝国は侵攻準備を整えつつある。
地図です
【挿絵表示】
赤:東ヨーロッパ帝国連合とその属国
紫:リヴォニア宣戦布告前のゲルマニア領とその支配地域
薄紫:現在のゲルマニアの占領地
緑:ロムルス連邦領
肌色:その他ゲルマニア帝国の同盟国たち
青:まだ無事な同盟諸国(史実の連合国)領
黄:中立国