調整された少女
キアラ・ロジーノにとってこの日は永遠に忘れられない日になるだろう。
何故なら彼女は愛する存在を手にかけたのだから。
「あ……、あ……」
キアラはか細い声を出しながら目の前の光景を見る。立っている事さえ出来ない彼女はその場にへたり込む。目の前の光景の衝撃が強すぎたのか彼女を囲むように黄色い水たまりが生成される。
彼女ともう一人、二コラ・グレフを幼少期に拾いここまで育て上げた存在。ハインリヒ・ベルガーは真っ赤な血の海にその体を沈め物言わぬ亡骸となっている。
それは不幸な事故だった。キアラはとある任務に失敗し調整を受ける事になっていた。自我が崩壊しつつあるとはいえキアラは恐怖のあまり抵抗をした。本来ならそんな行動はとる筈がないがまだ理性が辛うじて残っていた事と調整に対するトラウマから思わず抵抗をしたのである。
キアラは力を込めてベルガーを突き飛ばした。予想外の抵抗を受けてベルガーは驚きそのまま机にぶつかる。それだけならベルガーは背中を強打しただけでありキアラがよりきつい調整を受けるだけだったが机にはキアラが使っているボウガンDunkelが装填された状態で置いてあった。机にぶつかった衝撃でボウガンは射出、毒の塗られた矢がベルガーの体を貫通した。そのままベルガーは倒れキアラは衝撃でへたり込んだのである。
「そ、そんな……。ベルガー様ぁ……」
自身が起こした抵抗で敬愛する存在を殺してしまった事実にキアラは声にならない悲鳴を上げて泣き出した。それに気づいた二コラが扉を開けて部屋に入って来る。
「キアラ?どうか、した……」
「に、二コラ……」
二コラは目の前に広がる光景に驚き目を見開く。一方のキアラは二コラに知られた事で絶望とも取れる表情で固まっている。
「これは……、どういう事ですの?」
「わ、私が……。てい、こうなんてし、たせいで……」
「……成程」
二コラはキアラの言葉と部屋の様子から状況を把握すると動き出した。先ずは部屋の中の資料を集めるとベルガーの遺体の傍に置いていく。二コラの行動の理由が分からないキアラは涙を流しながら眺めている。
やがて紙の束を作った二コラは火をつけるとベルガーの遺体ごと燃やし始めた。
勢いよく燃えていく様子にキアラは声を上げた。
「二コラ!?何を!」
「逃げますわよ」
「え……?」
「ベルガー様が死んだ今私達を支えてくれる人はいないですわ。そうなれば私達は帝国の技術者を殺した責任を取らされる可能性が高いですわ」
「そうならないうちに、逃げるという訳か?」
「そうですわ。……本来ならキアラを差し出せば私には関係ないですがベルガー様がいない以上ここにいる理由もありませんので、その、キアラを助けてあげようと思っただけですわ……」
「あ、ありがとう。二コラ」
その後二人は荷物をまとめると建物ごと燃やす勢いの火災に紛れてその場を離れていった。二人は帝国にいるのは危険と判断して連邦へと亡命していった。彼女達の素早い行動とベルガーが焼け消えた事で彼女たちを捜索する者は誰一人として現れなかった。
二人はヨーロッパ大陸を離れ連邦加盟国であるビンランド合衆国に渡る。自身に依存しつつあるキアラを支えながら二コラは様々な仕事をして生計を立てていくことになる。
5年後、第二次ヨーロッパ大戦がはじまる頃にはとある小さな町に褐色の肌と純白の肌をした二人の美女が有名になった。その二人はまるで恋人のようにふるまうが時には主人に捨てられたくない飼い犬の如きいびつさを周囲に見せつけているが当の本人たちは全く気にしてはいなかった。
二コラとキアラは戦場のヴァルキュリア4で一番好きなキャラですね。DLCで手に入れてからはずっと使ってる