プロローグ部分。
カゲヤシへの進化
秋葉原。
戦後の高度経済成長時代から現代に至るまで、常に時代の最先端で、人々の欲望を満たし、また生み出してきた特異な地域。
そんな秋葉原に、いくつもの噂が……。
「美男美女によるオタク狩りが行われている」
「あの老舗メイド喫茶には裏メニューが存在し、注文すると……何か凄いサービスがある」
「どこかに非公式なバイトを斡旋する男がいる」
「どんな情報でも入手する凄腕のハッカー集団がいて、金以外の特殊なものが依頼に必要」
「気を扱い、とんでもない身体能力を有する者がいる」
「夜になると人を襲い、血を吸う奴らがいる」
どれも総じて嘘っぽく、しかし、どこか嘘だと言い切れない……そんな噂の数々。
人々は冗談半分にその話をささやいていた。
大学受験の失敗を機に、予備校の友人と秋葉原に繰り出す日々……そんな夜、友人から俺に一本の電話が入った。
『ユ…ユウト、聞こえるか!?』
「ああ、ヒロか、どうした?こんな遅くに」
何かに追われ、追い詰められてるかのような声だ……。
『今俺はアキバで……あの噂は……いや』
「ヒロ?」
『それより俺のPCを……PCのDドライブを消し……!!』
それだけを言い残して電話は途切れてしまった。
「……何なんだ一体?」
この後、ヒロは失踪してしまった。
「調べてみる必要があるな……」
俺こと
「お前のためだ……許せよヒロ」
そう自分に言い聞かせながら友人のPCを漁る……俺だったら絶対にやだね。いくら友人だろうがPCのDドライブとか見られるの。
「……お?珍しいな。二次元にしか興味のないあいつには珍しい三次の女の子の写真だ」
場所は秋葉原だな……しかし俺も三次にはあまり興味ないが、この写真に写っている女の子は結構可愛い気がした。
ヒロのPCのDドライブと秋葉原自警団の皆が集めてくれた情報から手がかりを掴んだ俺は、早速ヒロが居るであろう、とある路地裏に足を踏み入れた。
今思えば……ここが俺の人生の転換期だったのだろう。
「オラァ!!」
いきなり銀髪の男に顔面を殴られ、倒れこむ。頬に来る激痛が、これが悪夢……夢ではないことを伝えている。
「おおっと……やり過ぎちまったかぁ?悪いなぁ、人間に丁度いい手加減なんて器用なマネ、出来なくてなぁ?」
そう言うことはお前は人間じゃないのか……?
「えーっと、何だっけお前。あー、友達を探しにわざわざこんな路地裏まで来たんだっけか?」
「…知ってん…のか……?」
「へへっ……そうだな。最近ここで吸血したといえば……一人だけだなぁ。確かそこら辺に……ハッ、まだあるじゃねぇかぁ。そこぶっ倒れてんのが、お前の探してた奴じゃねえの?」
あれは確かにヒロか……ケガはあまりないみたいだな。というか俺のほうがやべーなこれ。
「よーく見ておけぇ?オレが血を吸えば、すぐお前も同じようになる」
血を吸う……?
「待って、兄さん」
そんな時女の子の声が聞こえた。兄さんと言った事はコイツの妹なのか?しかもあの写真の子だ。
「ああ?何だ瑠衣。お前、何しに来た」
「その人を逃がしてあげて」
「はぁ?おまっ、何言ってんだよ」
「今月は既に十分な人数を吸血してるはず……彼の地まで吸う必要は!」
「相変わらず訳分かんねぇ奴だなぁ。ここまでやって、何もしないで放り出すわけないだろ?」
とりあえず今のうちに……くっ、結構ダメージがやばいな………!
「お前が無駄話してるから起き上がっちまったぞ。このままだと逃げられ……くくっ、立つだけで精一杯ってかぁ?」
ホント情けないな俺の体は……!
「情けねぇなぁ人間は……覚悟しろ!」
「兄さん!」
「!」
今度は回し蹴りを顔面に食らい、倒れる。不思議と痛みは感じない……いや、痛覚すらマヒるほどやばい状態なのだろう。
「おおっと、やっちまったかぁ?まあ所詮人間なんてこんなものさ。こんぐらいで死んじまうんだよ!」
「そんな……」
意識が朦朧とする。ホントにマズイ。俺……死ぬのか?
「に…なら……」
「……?……!」
意識を失いそうになる瞬間俺が記憶していたのは、あの写真の子が俺に口づけをしているところだった……ってどういう状況!?
「……ここは?」
目が覚めると知らない場所にいた。というかこの状況……パイプ椅子に体を縛られ、パンツ一丁の姿、薄暗く、無機質な雰囲気を醸し出している部屋……すぐに俺が監禁されていることには気づけた。
あれから一体どれくらい時間が過ぎたんだ?腹が減ってないことを感じるにあまり時間がたっている訳ではないようだが……だが俺は重傷を負ったはず、しかし俺の体に傷らしい傷は見当たらない。
それと、妙に五感が敏感になったような……と、あの扉越しに声が聞こえるな。
「どうだ、彼は目覚めたか」
「はい、たった今」
「検査結果は?」
「時間の都合上簡易的なものですが、間違いありません、カゲヤシ化しています。それもかなり劇的な変態の仕方をしており、傷ももう完全に塞がっています」
「さすがは眷族の血か。どれ、直接この目で見てみるとしよう」
扉が開き、そこから壮年の男とそっちよりは若い女が入ってきた。
男は入ってくるなり、俺を一瞥して嘆いた。
「なるほど。確かに、これは並ではないな」
「……何だお前ら」
俺は警戒しつつコイツらを問いただすことにした。
「そう身構えるな、楽にしろ。少し、話をしよう」
「……」
「私は瀬嶋隆二。我々は『国内情報統制機構』という組織の者だ。通称は……何だったかな?」
それに答えたのは隣の女だ。
「National Intelligence and Research Organizationからイニシャルをとって、通称『
「ああそうだった、確か、そんな名だったな」
「瀬嶋さん……!」
「構わんだろう……ちなみに彼女は御堂聡子。私の部下だ。一般には公開されてない組織だ。まあ、日本を守るための特殊任務を帯びた組織だとでも思ってくれ」
……胡散臭いな。
「さて……まず君は今非常に特殊な状況にいることを理解してもらいたい」
そりゃあこの状況はどう考えてもおかしいだろ。
「特に今、君の身体に起こっている変化が特殊なんだよ」
「身体……?」
「順を追って説明しよう」
俺はこの男から今での経緯について聞いた。
カゲヤシと呼ばれる吸血鬼……そいつに俺は襲われ重傷を負った事、別のカゲヤシが俺に血を飲ませた事で俺の体がカゲヤシ化し、傷が治ったこと。あの少女にキスされたのは血を飲ませる為だったのか。
他にも奴らに吸血された者は引きこもりになる事。この秋葉原で『引きこもり化計画』なるものを行っているという事。そしてNIROがカゲヤシを駆逐している事を聞いた。
「我々は情報調査機構とあるが建前でね……実際には武力をも行使可能な組織なのだよ。無論銃などの目立つ武器は使えん。だがそのせいで身体能力の高いカゲヤシ達に対抗するには我々は分が悪い」
「……」
「そこで頼みだ。四葉ユウト君……どのような理由からは分からないが君はカゲヤシの娘の血を摂取させられ、これにより一時的にだが、君の体はカゲヤシ化を始め、大きな力を得ているわけだ」
「……」
「その力が、損耗の激しい我々にとってはとても魅力的なんだよ。分かるだろう?我々NIROに協力し、カゲヤシから秋葉原を守ってはくれないだろうか?無論、タダでとは言わない。仕事に見合った報酬はやろう……どうかね?」
報酬を払う?そんな事は当たり前だろ……そんな事よりコイツらに言わなきゃならんことがある。
「こうやって人を縛り付けておいて、それが人にものを頼む態度かよ?」
「言っただろう?君は今、カゲヤシの血を得たことで、極めて危険な存在になっている。ヘタに抵抗されると対処が難しい。特にこの時間帯はな」
「……そういう事か」
「フッ、理解が早いようじゃないか。カゲヤシの弱点に自力で気づくとは」
「太陽光か……吸血鬼まんまだ」
「私の部下である御堂も戦闘訓練を受けているが、それとて日の光の下でないと意味がない」
「それ故に夜間は戦闘を避けています。ですから襲われているあなたを助けることができませんでした……すみません」
ああ、確かにあの一部始終を見ていても助けに来なかったがそういう理由か……まあ仕方ないだろうさ。
「つまり、君は我々にとって危険な存在なんだ。縛り上げたことは許してもらいたい……それを踏まえた上で再度問う。我々に協力してほしい……もし協力できないというのなら、相応の覚悟をしてもらう」
……ほう、遂にこの俺を脅迫しだしたか!このNIROとかいう組織、気に食わんな。俺に協力を乞いたいのなら相応しい態度というものがあるんじゃないのか?
とはいえこの部屋、窓がありここから日光が入ってくるのは簡単に予測できる。そして今の俺の恰好……多分断ったりしようものなら俺は殺されるのだろう。
「……どうするね?」
この野郎、分かってて聞いてやがるなコイツ……仕方ない。不服だがここで死ぬわけにはいかん。
だが……素直に協力するとは言ってやらない。
「……お姉さんのスリーサイズを教えてくれ」
「はいっ…?」
俺は一種の仕返しとして、この女を辱めることにした。さすがにこの男にそれをやろうとするのはリスキーだしな。八つ当たりに近いがお前もNIROの人間……覚悟してもらうぞ。
「すりぃさいず……?わ、私のですか?……こ、こんな時に何を……え?冗談……ですよね?大体何で今そんなことを……」
「いいから早く教えろ」
「こいつ、どうやら本気のようだぞ……ふむ、何故こんなにも性欲旺盛な若者がいるのに、日本は少子化になるのだろうな」
「何真面目に考えてるんですか!」
いや、別にコイツのスリーサイズに興味があるわけではない。ただ辱めたいだけだ。
「さて、どうするね?」
「……で、ですが、何で私がそんな事を瀬嶋さんの前で……」
「まぁいいじゃないか。別に服を脱げと言っている訳じゃない」
「ああ、早く教えてくれ」
そうだ。別にコイツの体に興味はない。見る気もない。ホントはスリーサイズも興味ないが辱められるのなら構わない。
「え、えぇ~……あの、それに答えたら……私達に協力してくれる……と?」
「勿論」
まあいつか裁きを受けてもらうがな。
「だ、そうだ」
「そ、それなら……仕事ですから……分かりました……それじゃ……上から……86、59、89……ですっ!!こ、これでいいんですか!満足ですか!?」
俺は黙って静かに頷いた。
「……いいだろう。御堂君、彼の拘束を解いてやれ」
ようやく俺の拘束が解かれたか。だがNIRO、貴様らにはこの俺を脅迫した罪の報いをいつか受けてもらうぞ……!
俺はそんな事を思いながら、この秋葉原で起こる事件に巻き込まれてゆくのだった。
後書きではオリジナル展開の補足や、主人公含む登場人物の簡単な紹介をしていきます。
主人公・四葉ユウト
ゲームの主人公と、ほとんど設定は同じだが、性格はいろいろ後付けオリジナル。
基本的にナルシストでシスコン、変態である。
完全オリジナル要素として、気を衝撃波という現象で使う特殊能力持ちで、身体能力も最初から人外染みている。
ヒロ
主人公の友人、空気。
名前はゲーム上のOPでそれらしき名前が確認できるのでそれから。