「お、瑠衣からメールか」
メールによると鈴の事を助けれくれてありがとう……って事と、もうすぐ妖主が秋葉原に来ることと、俺と会いたいという事が書かれていた。キミの顔が見たい……ね。
「まー俺様イケメンだからな!女の子からの呼び出しとあらば馳せ参じようではないか!」
恐らく、瑠衣は妖主が来ると自由に動けなくなることを懸念してこのメールを送ったんだろうし、これはもしや……デート的なアレがくるんじゃないですかねぇ!
俺が屋上に着くと、すでに瑠衣がいた。
「……あ、来てくれたんだ。こういう状況だから、来てくれないかなって少し思っちゃってたけど、待ってて良かった」
瑠衣は俺を笑顔で迎えてくれる……ふーむ、そんなに嬉しかったんだな!
「そういや瑠衣に訊きたいことがあるんだがいいか?」
「ん、何?」
「今、ダブプリの二人はどうしてる?」
俺がそう訊くと少し嫌な顔をされる……あんまり話したくないか?
「……姉さんたちは今、母さんを受け入れるためにエージェントを牽制したり、散会していた末端達も集めて、これから一度しっかりと統制を取ろうとしてる感じかな。二人とも母さんには従順だからそりゃもう必死なんだ……計画が頓挫しちゃったし、体裁でも保とうとしてるのかな」
「……あの後の二人はどうしてた?」
「……?キミのことを兄さんや私に訊いてきたかな?あ、名前しか知らないって言っておいたよ……まあ他にもイベントの情報を漏らしたのを疑われたりしたけど……誤魔化しておいたよ」
まあ、実際事実だしな……。
「……瑠衣は大丈夫なのか?その……」
「姉さんたちに疑われたり責められたりする事?んー、慣れちゃったかな。それに、逃げる方法もいくらでもあるし……もしかして、心配してくれてる?」
「………まあ」
「そっか……ありがとね」
俺もさすがに瀬那にイベントの情報を瑠衣から聞いたことを漏らしていない。これはバレると瑠衣の身に危険が及ぶし、何より、妖主が来る準備をしているあいつらの手を煩わせることはしたくない。
「あ、それと鈴から聞いたんだけど、兄さんが鈴を助けてくれたの」
「だろうな」
「あれ?ユウト、何か知ってるの?」
「ああいや、そうなんだって意味で……どうした?不思議そうな顔をして」
瑠衣は何か考えるかのような仕草で俯く……しばらくして顔を上げ、俺に訊いてきた。
「なんで兄さんは鈴を助けたんだろう?」
「カゲヤシがカゲヤシを助けるのは普通じゃないか?エージェントに追われているなら尚更だと思うが」
それでも納得がいってないような瑠衣……そんなに優は信用できないのか。まあ俺が瀬那に情報を流して、それで手を打ったって事だけど……まだ瑠衣には言えないな。話題を変えよう。
「それより瑠衣、俺に何か用事があるんじゃないか?」
「あ、そうだったね。よし、ユウト」
「おう」
「そろそろ本題?に入るね」
「何故に疑問形」
「まあまあ……それじゃ、今日は折角ユウトに会えたんだし、遊びに行かない?」
俺の予想は当たっていたようだ……まあそうだよな。俺みたいに魅力的でイケメンな男が、女の子からデートに誘われないわけないもんな。
「この間さ、秋葉原で鈴と遊んだんだよね。もちろん人間のフリをして。今までも食事とか買い物はしてたんだけど、遊ぶってしたことなかったからね。おじさんからお金貰って一日遊び歩いちゃった。どうかな、ユウト。私と、行ってみない?」
「もちろん良いぞ。いい息抜きができるといいな」
「うん!それじゃ行こう!」
そうして瑠衣とのデートが始まったのだった。
「ここは……ゲームセンターか」
「ここさ、お金かかるけど、いろいろできてすごく楽しいんだよ。ユウトは来たことあった」
「ゲーセンは俺もたまに行くぞ」
「楽しいよね、ここって」
といわけで瑠衣と一緒にゲーセンへと入る。すると、瑠衣は勝手知ったるや、奥の方にある格ゲーの筐体へと向かって行く。
「私のオススメは『サムライ☆キッチン』っていう対戦格闘ゲーム。面白いよ、一緒にやろう!」
「お……おう」
この画面を見て俺は……そこはかとないクソゲー臭を感じてしまっている。
「ふ~……勝ったぁー!」
「参りました……」
このゲームをやってみたが……案の定、その……クソゲーだった……というか未完成じゃないか?
キャラは二人しかいないし、ステージは選択画面あるのに一種類しか選べない……なぜリリースを……?
「もう一回する?」
「もう降参で」
しかも瑠衣はこのゲームが好きなのか、結構やりこんでいる。普通に強かった。これ以上は俺はあんまやりたくないので降参しておく。
「楽しかったね」
「お、おう」
「あ、そうだ。ユウトってアレは得意?」
そう言って瑠衣が指差したのはクレーンゲームの筐体。
「鈴と二人して頑張ったのがあるんだけど、全然ダメだったのがあるんだよね……んーっと、あ、この箱のが欲しいかな」
寄りにも寄って箱!俺はクレーンゲームはまあまあできる方だと思っているが、箱のは経験ないな。けど、ホントに欲しそうに見つめる瑠衣を見てるとつい。
「そうだな、俺も手伝うよ」
つい、助け船を出したくなるのだった。
「それじゃ、私が操作するから、ユウトは横を見て、いい感じになったら、言って……頼りにしてるからね」
女の子にそこまで言われちゃ、頑張るしかないな。俺は頼られるの大好きだし。
「よーし、任せておけ!」
「そうこなくっちゃ!それじゃ、行くよ!」
そう言ってお金を入れ、操作を始める瑠衣……真剣な表情で筐体と向き合ってるな。俺も本気で応えてやらないと!
「縦位置はここ、で……ユウト、出番!」
「もうちょい……そこだ!」
「よーし、いけ……そのまま、そのまま……よし、よし、よーし!」
お、一発でクリアか!?と思ったとき、出る所付近でアームが景品を手放す。
「「!」」
一瞬失敗かとびっくりしたけど、出る所に近かったおかげか、何とか景品をゲットすることに成功した。
「やったー!!獲れたぁ!!」
「まあ、危なかったけどね」
でもまあ、喜んでくれるなら良いかな。というか普通にデートしてるなぁ……。
「鈴はこういうの慌てちゃって全然ダメだったんだよね」
「想像できるな」
「なんだかユウトとならどれでも獲れちゃいそうな気がしてきた」
いや、この流れ……アカン、俺の財布が死ぬ!妹に貢ぐ分は死守せねば!
「いや、ゲーセンで遊ぶなんていつでもできる。また今度にしよう」
「そうだね……また今度にしよう。きっと、次もこうして。ユウトと遊びに来られるよね」
「もちろん」
「楽しみにしてるよ」
そうしてゲーセンで遊ぶのは終わり、外へ出る。今は……十一時、まだまだ昼めしは早いな。
「うーん、ご飯にはちょっと早いよね……それじゃあさ、ユウトの話を聞かせてよ」
「俺がイケメンでカッコよくて最強な話?」
「いや、そういうのじゃなくて……ユウトの身の回り?ていうのかな。そんな話」
「そーだな……俺には妹がいるんだ。とっても可愛くて俺の愛しの天使さ」
「へ…へー、そんな妹がいるんだ……」
……あれ、引いてない?妹自慢はここまでにしとくか。何より、妹とはいえ、デート中に他の女の話はタブーだった。反省反省。
「妹の件は置いといて、後は自警団かな。俺の大切な仲間たちだよ」
「あの時、駆け付けてきた人達かぁ。サラさんから一応話は聞いてるけど、あんまり詳しくは知らないかな。何か、みんな楽しそうな人だね」
「おう、みんないい奴だしな」
そうして会話が途切れる。瑠衣は何かを考える顔をして、数秒後、顔をあげて、とんでもない事を訊いてきた。
「あのさ……会っちゃ、ダメかな」
「……どう、なんだろうなぁ……」
「何か、ユウトが話してくれたおかげかもしれないけど、会ってみたくなって。サラさんもいるし、ヤタベさんは何度か会ったことあるし……いっそ全部話しちゃってさ、そうしたら……ユウトが私と仲良くしてくれるんだから、みんなとも……やっぱりマズイよね?問題ある……よね」
「……よし、自警団の秘密基地へ行こう」
「え?」
俺は瑠衣の手を引き、自警団アジトへ向かうことにした。そりゃ俺だって自警団のみんなと瑠衣が仲良くしてくれるなら大歓迎さ。